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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】プラスチック製の食器
(51)【国際特許分類】
   A47G 19/00 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
A47G19/00 F
A47G19/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021098084
(22)【出願日】2021-06-11
(65)【公開番号】P2022189485
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000148885
【氏名又は名称】株式会社台和
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】古谷 直樹
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-008787(JP,A)
【文献】実開昭59-070570(JP,U)
【文献】登録実用新案第3068594(JP,U)
【文献】実開平05-039373(JP,U)
【文献】実開平06-005569(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 19/00-19/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製の食器であって、
容器部と、脚部分と、を有し、
容器部は、食器を伏せた状態で、上向きに凸状をなして湾曲した外面を含み、前記外面は、少なくとも容器部の頂部中心から脚部分を越えるところまで凸状をなして湾曲し、
脚部分は、容器部の頂部中心の周りに周状に前記外面に結合され、周方向の開口部によって分離され、
前記脚部分は、前記頂部中心側の内周面と、その反対側の外周面と、両端面を有し、
前記脚部分の内周面は、前記外面に接するように接続される曲面を含み、前記曲面と前記外面との間の境界線の高さが、前記内周面の周方向中央部から周方向両端部に向かって低くなっており、
前記内周面の曲面は、円弧断面によって構成され、円弧の半径は、前記内周面の周方向の中央部から前記内周面の両端部に向かって小さくなることを特徴とする、食器。
【請求項2】
前記曲面と前記外面との間の境界線は、底面視において、前記内周面の周方向中央部のところで前記頂部中心から遠い側に凹んでいることを特徴とする、請求項1に記載の食器。
【請求項3】
前記脚部分の端面の曲面と前記容器部の外面の間の境界線は、底面視において、前記頂部中心から前記開口部の周方向中心に延びる線と平行であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の食器。
【請求項4】
前記脚部分の上面付近における前記内周面と前記外周面の間の厚さは、周方向に一定であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の食器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製の食器に関わり、さらに詳細には、椀、どんぶり、皿等の脚部を有するプラスチック製の食器に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状に配置された脚部分を有する食器において、洗浄後の水を、伏せた食器の脚部分の内側に残らないように排出する切り欠きを設けたものが知られている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平05-039373号公報
【文献】実開昭59-070570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された食器では、洗浄後の水が、表面張力により、伏せた食器の脚部分の内側から十分に排出されないことがある。
【0005】
また、特許文献2に記載された食器のように、脚部分の厚さが厚くなると、プラスチック製の食器の容器部の内面に、「引け」と呼ばれる凹みが生じることがある。
【0006】
そこで、本発明は、洗浄後の水が脚部分の内側から十分に排出され且つ容器部の内面に「引け」が生じにくいプラスチック製の食器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明によるプラスチック製の食器は、容器部と、脚部分と、を有し、容器部は、食器を伏せた状態で、上向きに凸状をなして湾曲した外面を含み、脚部分は、容器部の頂部中心の周りに周状に前記外面に結合され、周方向の開口部によって分離され、前記脚部分は、前記頂部中心側の内周面と、その反対側の外周面と、両端面を有し、前記脚部分の内周面は、前記外面に接するように接続される曲面を含み、前記曲面と前記外面との間の境界線は、底面視において、前記内周面の周方向中央部のところで前記頂部中心から遠い側に凹んでいることを特徴としている。
【0008】
このように構成された食器では、境界線は、底面視において、内周面の周方向中央部のところで頂部中心から遠い側に凹んでいる。それにより、境界線における水平方向に対する外面6の傾斜が大きくなり、水を下方に移動させることが促進され、水が表面張力により頂部中心CP付近に留まることが防止される。また、境界線の位置を頂部中心CPから遠くすることにより、脚部分の厚さを厚くならないようにすることができる。その結果、食器を成形したときに、内面に「引け」による凹部が形成されることを防止することができる。
【0009】
本発明による食器の実施形態において、好ましくは、前記内周面の曲面は、円弧断面によって構成され、円弧の半径は、前記内周面の周方向の中央部から前記内周面の両端部に向かって小さくなる。
【0010】
また、本発明による食器の実施形態において、好ましくは、前記脚部分の端面の曲面と前記容器部の外面の間の境界線は、底面視において、前記頂部中心から前記開口部の周方向中心に延びる線と平行である。
【0011】
また、本発明による食器の実施形態において、好ましくは、前記脚部分の上面付近における前記内周面と前記外周面の間の厚さは、周方向に一定である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】伏せた状態の本発明による椀の正面図である。
図2図1の椀の平面図である。
図3図2の線A-Aにおける図1の椀の断面図である。
図4図2の線B-Bにおける図1の椀の断面図である。
図5図2の線C-Cにおける図1の椀の断面図である。
図6図2の線D-Dにおける図1の椀の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図6を参照して、本発明によるプラスチック製の食器の実施形態である椀を説明する。図1及び図2はそれぞれ、伏せた状態の椀1の正面図及び平面図であり、図2のように椀1を見るとき、以下の説明において、「底面視」という。また、以下の説明において、「上」、「下」、「高さ」、「頂部」等は、図1図3図6のように見たときの向きに対応する。プラスチック製の椀1は、型を用いて成形され、プラスチックは、好ましくは、PET、ABS樹脂であるが、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、AS樹脂、熱硬化性樹脂(メラミン)等であってもよい。
【0014】
図1及び図2に示すように、椀1は、容器部2と、3つの脚部分3を有する。
【0015】
図1及び図6に示すように、容器部2は、椀1を伏せた状態で、凹状をなして湾曲した内面4と、上向きに凸状をなして湾曲した外面6と、外縁6aを含む。凹状をなして湾曲した内面4及び凸状をなして湾曲した外面6は、少なくとも容器部2の頂部中心CPから脚部分3を越えるところまでの部分を構成していればよく、例えば、容器部2の外縁6aの付近に凹状をなして湾曲する外面を有していてもよい。内面4と外面6との間の肉厚は、全体的に同じであるのがよい。椀1を伏せたときの外面6の高さは、頂部中心CPが最大で、頂部中心CPから脚部分3に向かって減少する。
【0016】
図2に示すように、3つの脚部分3は、容器部2の頂部中心CPの周りに周状に外面6に結合されている。本実施形態では、容器部2の外縁6aは円形であり、3つの脚部分3は、円周状に配置されている。3つの脚部分3は、同じ形状を有することが好ましく、周方向の幅Wを有する開口部7によって互いに分離されている。幅Wは、脚部分3の内側に入れられた水が表面張力によって排出されないことがないように広く定められる。
【0017】
3つの脚部分3の各々は、周方向に延びており、頂部中心CP側の内周面3aと、その反対側の外周面3bと、両側の端面3cと、湾曲した上面3dを有している。内周面3aと端面3c、及び、外周面3bと端面3cは、曲面によって滑らかに接続されている。上面3dの高さは、周方向に一定である。また、上面3d付近における内周面3aと外周面3bの間の厚さは、周方向に一定であることが好ましい。開口部7は、隣接した脚部分3の対向する端面3cの間に形成されている。図1に示すように、端面3cは、上から下に凸状及び凹状に湾曲していることが好ましい。
【0018】
脚部分3の内周面3a、外周面3b、及び端面3cはそれぞれ、容器部2の外面6に接するように接続される曲面を含む。これらの曲面と容器部2の外面6との間の境界線5を図2に二点鎖線で示す。外周面3b及び端面3cの曲面は、比較的小さい半径の円弧断面によって構成されることが好ましい。外周面3bの曲面のかかる半径は、周方向に一定である。端面3cの曲面のかかる半径は、境界線5が、底面視において、頂部中心CPから開口部7の周方向中心に延びる線(図2においてA-A線を下方に延長した線)とほぼ平行になるように定められることが好ましい。
【0019】
内周面3aの曲面も、円弧断面によって構成されることが好ましく、かかる半径は、内周面3aの周方向中央部3aaから周方向両端部3abに向かって小さくなっている。例えば、図3図5に示すように、周方向中央部3aaである図2の断面A-Aにおける半径raは、周方向移行部である図2の断面B-Bにおける半径rbよりも大きく、半径rbは、周方向端部3abである図2の断面C-Cにおける半径rcよりも大きい。これにより、境界線5と頂部中心CPとの間の距離は、周方向中央部3aaから周方向両端部3abに向かって大きくなっている。例えば、図3図5に示すように、周方向中央部3aaである図2の断面A-Aにおける境界線5の位置5aは、周方向移行部である図2の断面B-Bにおける境界線5の位置5bよりも頂部中心CPに近く、位置5bは、周方向端部3abである図2の断面C-Cにおける境界線5の位置5cよりも頂部中心CPに近い。このことは、境界線5の高さが、周方向中央部3aaから周方向両端部3abに向かって低くなっていることを意味する。
【0020】
また、境界線5は、底面視において、内周面3aの周方向中央部3aaのところで頂部中心CPから遠い側に凹んでおり、即ち、底面視において、境界線5の周方向中央部3aaのところの位置5aは、境界線5の周方向両端部5cを結んだ線8よりも頂部中心CPから遠いところにある。
【0021】
次に、脚部分3の内側に水を注いだときの水の流れを説明する。
【0022】
水の一部分は、図6に示すように、頂部中心CPから外面6に沿って開口部7を通って流れ落ちる。水の他の部分は、図3に示すように、頂部中心CPから外面6に沿って境界線5の位置5aを通った後、向きを変えて境界線5に沿って位置5cに向かい、開口部7を通って流れ落ちる。
【0023】
境界線5の位置5aが頂部中心CPから遠いほど、水平方向に対する外面6の傾斜が大きくなるので、水を下方に移動させることが促進され、水が表面張力により頂部中心CP付近に留まることが防止される。また、境界線5の高さが、周方向中央部3aaから周方向両端部3abに向かって低くなっているので、水が確実に開口部7に向かって排出される。また、開口部7のところで、境界線5が図2のA-A線とほぼ平行になるように定められているので、水を開口部7に差し向けることを促進させる。その結果、洗浄後の水が脚部分の内側から十分に排出されることを可能にする。
【0024】
また、境界線5の位置5aが頂部中心CPから遠いことは、脚部分3の厚さが、例えば特許文献2のように厚くならないことを意味する(図3参照)。その結果、椀1を成形したときに、内面4の箇所4aのところ等に「引け」による凹部が形成されることを防止することができる(図3参照)。
【0025】
以上、本発明の実施形態を説明したけれども、他の実施形態も本発明の範囲内に含まれることは言うまでもない。
【0026】
上記実施形態では、本発明による食器は、椀であったが、どんぶり、皿、湯飲み、蓋等であってもよい。蓋の場合、蓋の本体が上記容器部に相当する。上記実施形態では、食器の外縁が円形であり、脚部分が円形の周状に配置されたが、水が排出されれば、食器の外縁及び脚部分の配置は任意であり、例えば、食器の外径や脚部分の配置が、四角形状であってもよい。上記実施形態では、脚部分は3つであったが、2つや4つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 椀(食器)
2 容器部
3 脚部分
3a 内周面
3aa 周方向中央部
3ab 周方向端部
3b 外周面
4 内面
5 境界線
6 外面
7 開口部
CP 頂部中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6