(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】電波干渉モニター装置、及び電波干渉モニター方法
(51)【国際特許分類】
H04W 16/18 20090101AFI20230710BHJP
H04B 17/345 20150101ALI20230710BHJP
G01S 5/02 20100101ALI20230710BHJP
G01S 3/16 20060101ALI20230710BHJP
H04B 17/00 20150101ALI20230710BHJP
H04W 24/08 20090101ALI20230710BHJP
【FI】
H04W16/18 110
H04B17/345
G01S5/02 Z
G01S3/16
H04B17/00
H04W24/08
(21)【出願番号】P 2021182643
(22)【出願日】2021-11-09
【審査請求日】2022-08-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 正則
(72)【発明者】
【氏名】前川 直志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 豊行
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/183967(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/200114(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S3/16
G01S3/58
G01S5/02
H04B7/24-7/26
H04B17/00
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号源(110)が同一の周波数帯域の無線信号の送受信を行う所定の空間(6)内における電波干渉情報を表示する電波干渉モニター装置であって、
前記所定の空間内で複数の測定地点にて前記複数の信号源から送信される混在した無線信号を受信する受信部(10、21、22)と、
前記各測定地点での前記混在した無線信号から、前記複数の信号源のいずれかから送信された信号を分離する信号分離処理を行い、信号分離した前記複数の信号源のそれぞれから送信される信号についての電界強度、到来方向推定、コンスタレーション及び掃引スペクトラムの各解析項目についての解析処理を行う解析処理部(23、24、25)と、
予め前記所定の空間内での前記測定地点での位置情報が記録され、前記測定地点での前記解析処理部で行った前記各解析項目の解析結果を前記位置情報に関連付けて格納するデータベース(32)と、
前記データベースに格納された前記電界強度の解析結果に基づいて、前記測定地点以外の地点については電界強度の補間処理を行うことにより、前記複数の信号源のそれぞれに対応したヒートマップを生成するヒートマップ生成部(43)と、
前記所定の空間を規定するマップ領域(51)を有するモニター画面(50)を表示する表示部(34)と、
前記マップ領域の任意の位置を指定する操作に応じて、前記任意の位置に対応する前記解析処理部で行った前記到来方向推定の結果である到来方向図が前記複数の信号源毎に前記表示部に表示され、
前記複数の信号源毎に表示された前記到来方向図のいずれかを選択し、前記解析項目及び前記ヒートマップのいずれかを選択すると、所望の前記任意の位置に対応する前記解析項目毎の解析結果及び前記ヒートマップの生成結果を前記電波干渉情報として、前記表示部にさらに表示する表示制御部(45)と、
を有することを特徴とする電波干渉モニター装置。
【請求項2】
電波干渉モニタリング対象の周波数帯を設定する設定手段(41)をさらに有し、
前記解析処理部は、前記複数の信号源のそれぞれから送信される前記設定手段により設定された周波数帯の信号を対象に前記各解析項目についての解析処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の電波干渉モニター装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記電波干渉モニタリング対象の周波数帯として、3.7GHz帯、4.7GHz帯、28GHz帯のいずれかを設定することを特徴とする請求項2に記載の電波干渉モニター装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電波干渉モニター装置を用い、複数の信号源(110)が同一の周波数帯域の無線信号の送受信を行う所定の空間(6)内の電波干渉情報を表示する電波干渉モニター方法であって、
前記所定の空間内で複数の測定地点を移動させながら前記複数の信号源から送信される混在した無線信号を受信する受信ステップ(S1、S2)と、
前記受信ステップにて受信した前記混在した無線信号から、前記複数の信号源のいずれかから送信された信号かを分離する信号分離処理を行い、
信号分離した前記複数の信号源のそれぞれから送信される信号についての電界強度、到来方向推定、コンスタレーション及び掃引スペクトラムの各解析項目についての解析処理を行う解析処理ステップ(S3)と、
前記測定地点での前記解析処理ステップで行った前記各解析項目の解析結果を、予め記憶された前記所定の空間内の前記測定地点の位置情報と関連付けてデータベース(32)に格納するステップ(S4)と、
前記データベースに格納された前記電界強度の解析結果に基づいて、前記複数の信号源にそれぞれ対応したヒートマップを生成するステップ(S6)と、
前記所定の空間を規定するマップ領域(51)を有するモニター画面(50)を表示し、前記マップ領域の任意の位置、分離した前記信号源毎の前記到来方向図、前記各解析項目及び前記ヒートマップを順に指定する操作に応じて、前記指定された任意の位置に対応する前記解析項目毎の解析結果及び前記ヒートマップの生成結果をさらに電波干渉情報として表示するステップ(S8)と、
を含むことを特徴とする電波干渉モニター方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間内の各場所での同一の周波数帯の複数の無線信号の到来方向及び相互の電波干渉状況を可視化してモニターする電波干渉モニター装置、及び電波干渉モニター方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代通信規格5Gの実用化が始まっており、5Gの多岐に渡るニーズに応えるため、自治体や地域の企業などの様々な主体が柔軟に構築、利用可能なローカル5Gの検討が進められている。
【0003】
この中で、さらなるモバイルトラヒックの急増に対応するため、高効率な周波数利用技術である帯域内全二重通信(InBand Full-Duplex:以下、IBFDという)の適用が検討されている。
【0004】
IBFDは、既存の複信方式に対して理想的には周波数利用効率を2倍にすることができるが、新たに多くの干渉が発生する課題があり、様々な干渉量を取得し、その結果からIBFDの適用可否を判定する制御技術が必要となる。その実現のためには、時空間における例えば5G無線端末あるいは他の種々規格の端末の無線状況を把握し、複数の端末から空間に発射される電波の干渉状況を高速、高精度に測定する干渉モニタリング技術が必要であり、その一環として任意の地点における電磁波の到来方向を推定するシステムが必要となる。
【0005】
到来方向推定を行う従来のシステムとしては、例えば、直交する3つの偏波信号をそれぞれ受信する複数のアンテナの同位置での受信信号に基づいて電磁波の到来方向を推定するもの(例えば、特許文献1等)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された電波到来方向推定システムでは、例えば、3つのアンテナを、順次、同一の測定位置まで移動させて、各受信信号を、順次、取得した段階で電界強度を求め、さらにその電界強度に基づき、例えば、ビームフォーマ法、MUSIC法等の探査方法を適用して電波の到来方向を推定している。
【0008】
この従来の電波到来方向推定システムでは、測定位置での受信信号から複数の信号源からの信号を分離する点、分離した各信号源からの信号毎に到来方向、及び該到来方向以外の種々の特性、例えば、電界強度、掃引スペクトラム等を求める点については明記されておらず、空間における電波の干渉状態を把握するために、求めた到来方向、及びその他の特性を測定位置に対応して分離した無線信号(信号源)毎に可視化して表示することについても何等開示されていなかった。
【0009】
このため、従来の電波到来方向推定システムにあっては、ある領域の空間における上述した種々規格の端末の無線状況を把握し、複数の端末から空間に発射される電波の干渉状況を、例えば、信号源毎の到来方向、及びその他の特性をキーとして高速、高精度に測定する干渉モニタリング技術が実現できず、IBFDの適用可否を正確に判定するのに有用な複雑な無線通信環境のモニターを行うことが極めて困難であった。
【0010】
一方近年では、複数の無線局が例えば同一周波数帯域で無線信号の送受信を行う環境における干渉モニタリング技術が望まれている。特に、上記環境において、各無線局を信号源として該信号源から混在して飛来、伝播する複数の無線信号(同一周波数)を分離し、それぞれの無線信号について当該環境の各所における到来方向、及びその他の特性を見易く表示する機能が切望されている。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、複数の信号源が同一周波数帯域で無線信号の送受信を行う環境における空間内各所での無線信号の相互干渉を容易に把握でき、複雑な無線通信環境の観測を容易に実現可能な電波干渉モニター装置、及び電波干渉モニター方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る電波干渉モニター装置は、複数の信号源(110)が同一の周波数帯域の無線信号の送受信を行う所定の空間(6)内における電波干渉情報を表示する電波干渉モニター装置であって、前記所定の空間内で複数の測定地点にて前記混在した無線信号を受信する受信部(10、21、22)と、前記各測定地点での前記混在した無線信号から、前記複数の信号源のいずれかから送信された信号を分離する信号分離処理を行い、信号分離した前記複数の信号源のそれぞれから送信される信号についての電界強度、到来方向推定、コンスタレーション及び掃引スペクトラムの各解析項目についての解析処理を行う解析処理部(23、24、25)と、予め前記所定の空間内での前記測定地点での位置情報が記録され、前記測定地点での前記解析処理部で行った前記各解析項目の解析結果を前記位置情報に関連付けて格納するデータベース(32)と、前記データベースに格納された前記電界強度の解析結果に基づいて、前記測定地点以外の地点については電界強度の補間処理を行うことにより、前記複数の信号源のそれぞれに対応したヒートマップを生成するヒートマップ生成部(43)と、前記所定の空間を規定するマップ領域(51)を有するモニター画面(50)を表示する表示部(34)と、前記マップ領域の任意の位置を指定する操作に応じて、前記任意の位置に対応する前記解析処理部で行った前記到来方向推定の結果である到来方向図が前記複数の信号源毎に前記表示部に表示され、前記複数の信号源毎に表示された前記到来方向図のいずれかを選択し、前記解析項目及び前記ヒートマップのいずれかを選択すると、所望の前記任意の位置に対応する前記解析項目毎の解析結果及び前記ヒートマップの生成結果を前記電波干渉情報として、前記表示部にさらに表示する表示制御部(45)と、を有することを特徴とする。
【0013】
この構成により、本発明の請求項1に係る電波干渉モニター装置は、複数の信号源が同一の周波数帯域の無線信号の送受信を行う所定の空間内での電波干渉モニタリングに際し、所定の空間を規定するマップ領域を有するモニター画面上で、任意の地点を指定することにより、当該指定した任意の位置に対応する各信号源毎の電波干渉情報を選択的かつ容易に確認することができる。電波干渉情報としては、電界強度、到来方向推定、コンスタレーション及び掃引スペクトラム等の各解析項目を確認可能である。また、上記補間処理を行う機能を有する構成によれば、実際に測定を行った測定地点以外の地点についても電波干渉情報(ヒートマップ)の確認が行える。これにより、既存の測定器、測定システムでは実施が困難である複雑な無線通信環境の観測を容易に実施できるようになる。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る電波干渉モニター装置は、電波干渉モニタリング対象の周波数帯を設定する設定手段(41)をさらに有し、前記解析処理部は、前記複数の信号源のそれぞれから送信される前記設定手段により設定された周波数帯の信号を対象に前記各解析項目についての解析処理を行う構成であってもよい。
【0015】
この構成により、本発明の請求項2に係る電波干渉モニター装置は、電波干渉モニタリング対象の所望の周波数帯を設定することにより、当該周波数帯の無線信号の相互干渉状態を容易にモニターすることが可能となる。
【0016】
また、本発明の請求項3に係る電波干渉モニター装置において、前記設定手段は、前記電波干渉モニタリング対象の周波数帯として、3.7GHz帯、4.7GHz帯、28GHz帯のいずれかを設定する構成としてもよい。
【0017】
この構成により、本発明の請求項3に係る電波干渉モニター装置は、3.7GHz帯、4.7GHz帯、28GHz帯のいずれかの周波数帯を選択的に設定して、当該設定した周波数帯の無線信号の相互干渉状態をモニターすることができる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の請求項4に係る電波干渉モニター方法は、請求項1ないし3のいずれかに記載の電波干渉モニター装置を用い、複数の信号源(110)が同一の周波数帯域の無線信号の送受信を行う所定の空間(6)内における電波干渉情報を表示する電波干渉モニター方法であって、前記所定の空間内で複数の測定地点を移動させながら前記混在した無線信号を受信する受信ステップ(S1、S2)と、前記受信ステップにて受信した前記混在した無線信号から、前記複数の信号源のいずれかから送信された信号かを分離する信号分離処理を行い、信号分離した前記複数の信号源のそれぞれから送信される信号についての電界強度、到来方向推定、コンスタレーション及び掃引スペクトラムの各解析項目についての解析処理を行う解析処理ステップ(S3)と、前記測定地点での前記解析処理ステップで行った前記各解析項目の解析結果を、予め記憶された前記所定の空間内の前記測定地点の位置情報と関連付けてデータベース(32)に格納するステップ(S4)と、前記データベースに格納された前記電界強度の解析結果に基づいて、前記複数の信号源にそれぞれ対応したヒートマップを生成するステップ(S6)と、前記所定の空間を規定するマップ領域(51)を有するモニター画面(50)を表示し、前記マップ領域の任意の位置、分離した前記信号源毎の前記到来方向図、前記各解析項目及び前記ヒートマップを順に指定する操作に応じて、前記指定された任意の位置に対応する前記解析項目毎の解析結果及び前記ヒートマップの生成結果をさらに電波干渉情報として表示するステップ(S8)と、を含むことを特徴とする。
【0019】
この構成により、本発明の請求項4に係る電波干渉モニター方法は、該電波干渉モニター方法を適用した電波干渉モニター装置において、複数の信号源が同一の周波数帯域の無線信号の送受信を行う所定の空間内での複数の信号源から送信される無線信号間の電波干渉モニタリングに際し、所定の空間を規定するマップ領域を有するモニター画面上で、任意の地点を指定することにより、当該指定した任意の位置に対応する各信号源毎の電波干渉情報を選択的かつ容易に確認することができる。電波干渉情報としては、電界強度、到来方向推定、コンスタレーション及び掃引スペクトラム等の各解析項目を確認可能である。また、上記補間処理を行う機能を有する構成によれば、実際に測定を行った測定地点以外の地点についても電波干渉情報(ヒートマップ)の確認が行える。これにより、既存の測定器、測定システムでは実施が困難である複雑な無線通信環境の観測を容易に実施できるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、複数の信号源が同一周波数帯域で無線信号の送受信を行う環境における空間内各所での無線信号の相互干渉を容易に把握でき、複雑な無線通信環境の観測を容易に実現可能な電波干渉モニター装置、及び電波干渉モニター方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】現状の電波干渉モニタリング対象の無線環境を説明するための概念図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電波干渉モニター装置の電波干渉モニタリング対象のエリア内での複数の測定地点を対象とする電波干渉測定手順を示す概念図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電波干渉モニター装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る電波干渉モニター装置の電波干渉モニター処理動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る電波干渉モニター装置の
図4のステップS8における電波干渉情報の表示処理動作を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る電波干渉モニター装置における電波干渉状態のモニターに用いる基本モニター画面の表示例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る電波干渉モニター装置における基本モニター画面の操作に応じて表示される到来方向図を拡大して示す図であり、(a)は信号の到来方向が0度のときの例を示し、(b)は信号の到来方向が90度のときの例を示している。
【
図8】本発明の一実施形態に係る電波干渉モニター装置における基本モニター画面から遷移可能な掃引スペクトラム確認画面の表示形態を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る電波干渉モニター装置における基本モニター画面から遷移可能なヒートマップ確認画面の表示形態を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る電波干渉モニター装置における基本モニター画面から遷移可能なコンスタレーション確認画面の表示形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る電波干渉モニター装置、及び電波干渉モニター方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0023】
(概要)
まず、本発明に係る電波干渉モニター装置、及びこれを用いた電波干渉モニター方法の概要について
図1、
図2を参照して説明する。
【0024】
現状の干渉モニタリング技術においては、例えば、
図1に示す構成を有する無線環境をモニタリング対象とするものがある。
図1に示す無線環境において、矢印付きの実線が通信信号を表し、矢印付きの点線が干渉状態を発生させる無線信号を表している。
【0025】
図1においては、基地局A0の無線サービスエリア内に所在する端末A1と端末A2とがそれぞれ基地局A0を介して図示しない相手先と通信状態にあり、かつ、基地局B0の無線サービスエリア内に所在する端末B1と端末B2とがそれぞれ基地局B0を介して図示しない相手先と通信状態にある無線環境が想定されている。このような無線環境にあっては、例えば、基地局A0及び基地局B0、端末A1、A2、B1、B2を信号源とし、各信号源から送信される信号間に各所で複雑な干渉状態が発生することがある。
【0026】
図1に示すような複雑な無線通信環境を対象とする干渉モニタリング技術について、従来は、あるエリア内の複数の測定地点で無線信号の受信、到来方向の推定処理を行う方法が存在しながらも、各測定地点で混在する複数の信号源のいずれかから送信された信号を分離し、到来方向を推定し、各測定地点に対応してその到来方向の推定結果を観測できるようになっていなかった。加えて、従来の干渉モニタリング技術では、各測定地点に対応して各信号源から送信された信号の電界強度、掃引スペクトラム等、複数の解析項目を確認容易となるように表示する点についても考慮されていなかった。
【0027】
一方、本発明に係る電波干渉モニター装置1は、例えば
図2に示すように、複数の信号源A、B、C、D(符号110で示す)が無線信号の送受信を行う電波干渉モニターエリア6の空間内をモニタリング対象としている。信号源A、B、C、Dとしては、同一の周波数帯域の無線信号の送受信を行う基地局、移動端末等が想定されている。
【0028】
電波干渉モニターエリア6を対象に電波干渉モニタリングを行う本発明に係る電波干渉モニター装置1では、電波干渉モニターエリア6の空間内の複数の地点を到来信号の測定を行う測定地点と規定し、例えば、点線矢印で示す移動a、移動b、移動c、移動d、移動eを行いつつ、これら複数の測定地点を順次移動しながら無線信号の測定を実施してその解析結果を収集する。
【0029】
さらに本発明に係る電波干渉モニター装置1では、各測定地点で収集した無線信号の解析結果を分析して電波干渉状態をモニターする指標となる複数の解析項目(電波の到来方向を含む)の電波干渉情報を生成するとともに、必要に応じて、各測定地点(あるいはその隣接地点)における複数の解析項目の電波干渉情報を表示する。
【0030】
本発明に係る電波干渉モニター装置1では、例えば
図2に示す電波干渉モニターエリア6の空間内の各地点に対応する電波干渉情報の表示制御については、例えば、後述の基本モニター画面50(
図6参照)と該基本モニター画面50から遷移可能な各解析項目用の確認画面(
図7~
図10参照)を用い、例えば、到来方向推定、掃引スペクトラム、ヒートマップ、コンスタレーション等の各解析項目についての電波干渉情報を当該地点に対応して可視化して表示するようになっている。基本モニター画面50は、本発明のモニター画面を構成する。
【0031】
次に、本発明の一実施形態に係る電波干渉モニター装置1の構成について
図3を参照して説明する。
【0032】
図3に示すように、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1は、アンテナ装置10、干渉モニタリング装置20、データ処理装置30を備えて構成されている。
【0033】
アンテナ装置10は、上述した電波干渉モニターエリア6(
図2参照)を構成する所定の空間内の各所で、複数の信号源110から送信される混在した無線信号を受信するものである。アンテナ装置10の具体的な構成としては、例えば、特許文献1に記載されているような直交する3偏波をそれぞれ受信可能な3つのアンテナを複数のアンテナ素子として回転体にて回転させる構成、あるいは、アレーアンテナの各アンテナ素子を複数のアンテナ素子とする構成がある。
【0034】
本実施形態に係る電波干渉モニター装置1は、周辺の無線環境から到来する到来信号、すなわち、電波干渉モニターエリア6内で複数の信号源110から送信される混在した無線信号をアンテナ装置10に設けられる複数のアンテナ素子で受信し、各アンテナ素子の受信信号を干渉モニタリング装置20、及びデータ処理装置30で信号処理することにより、各信号源110から送信される信号を分離して各信号源110から送信される信号の到来方向を推定するとともに、信号源110毎の電界強度等の諸特性を測定するものである。
【0035】
また、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1は、例えばローカル5G環境での使用が可能なものであり、捕捉する到来信号の周波数帯としては、例えば、4.6GHz~4.8GHz及び28.2GHz~29.1GHz等の帯域が想定されている。電波干渉モニター装置1は、ローカル5G環境での使用に限定されるものではなく、例えば、WiFiなどの他の無線システムでの使用にも適用できるものである。
【0036】
なお、電波干渉モニター装置1において、アンテナ装置10は、上述した構成に限られるものではない。上述した周波数帯でのエリア間端末間干渉、基地局間干渉等に対して到来方向、及び諸特性を網羅的に取得できるものであれば、アンテナの種別、数、配列、駆動方式、到来方向推定方法等について種々の方式が適用可能である。
【0037】
干渉モニタリング装置20は、
図3に示すように、周波数変換部21、AD変換部22、信号分離部23、到来方向推定処理部24、信号解析部25を有している。
【0038】
周波数変換部21は、アンテナ装置10により受信された受信信号(無線信号)を入力し、該受信信号を中間周波数帯の信号(IF信号)に変換する処理を行う。
【0039】
AD変換部22は、周波数変換部21で周波数変換された受信信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換して信号分離部23に出力する。AD変換部22は、アンテナ装置10、周波数変換部21とともに受信部20aを構成している。
【0040】
信号分離部23は、AD変換部22から入力するデジタル信号、すなわち、上述した電波干渉モニターエリア6の所定の空間内の各測定地点での混在した無線信号から、複数の信号源110のいずれかから送信された信号を分離する信号分離処理を行う。
【0041】
到来方向推定処理部24は、信号分離部23で分離された信号(当該測定地点への各信号源110からの到来信号)を入力し、該到来信号毎にその到来方向を推定する信号処理を行う。この信号処理において、到来方向を推定するアルゴリズムとしては、例えば、ビームフォーマ法、MUSIC法、ESPRIT法などが適用される。
【0042】
信号解析部25は、信号分離部23で分離された信号(当該測定地点への到来信号)を入力し、該到来信号を対象に電波干渉モニターに必要とされる項目について解析する信号処理を実施する。解析対象とされる項目(解析項目)としては、例えば、電界強度、掃引スペクトラム、コンスタレーション等が挙げられる。信号解析部25は、上述した信号分離部23、到来方向推定処理部24とともに解析処理部20bを構成している。
【0043】
干渉モニタリング装置20は、上述した構成を有する周波数変換部21、AD変換部22、信号分離部23、到来方向推定処理部24、信号解析部25を備えることで、全体として、電波干渉モニターエリア6の空間内で複数の測定地点を移動させながら無線信号を測定し、各測定地点での無線信号の測定結果を収集するとともに、該収集した無線信号の測定結果を対象に、測定地点毎に該測定地点に到来する到来信号についての到来方向の推定処理、及び電波干渉状態の解析処理を行うようになっている。
【0044】
データ処理装置30は、例えば、PC(パーソナル・コンピュータ)で実現され、干渉モニタリング装置20における受信信号の解析結果に基づいて電波干渉状態をモニターするための情報(電波干渉情報)を生成するデータ処理を行う。データ処理装置30は、制御部31、データベース32、入力部33、表示部34を有して構成されている。
【0045】
制御部31は、例えば、コンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、電波干渉モニター装置1の機能を実現するための所定の情報処理や、アンテナ装置10、干渉モニタリング装置20を対象とする統括的な制御を行うCPU(Central Processing Unit)、CPUを立ち上げるためのOS(Operating System)やその他のプログラム及び制御用のパラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)あるいはHDD(Hard Disc Drive)などの不揮発性メモリ、CPUが動作に用いるOSやアプリケーションの実行コードやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を有している。
【0046】
上述したコンピュータ装置は、CPUがRAMを作業領域としてROMあるいはHDDなどの不揮発性メモリに格納されたプログラムを実行することにより制御部31として機能する。具体的に制御部31では、CPUがRAMの作業領域で上記不揮発性メモリに格納された各プログラムを実行することにより、
図3に示すように、モニター条件設定部41、アンテナ制御部42、ヒートマップ生成部43、補間処理部44、表示制御部45の各機能を実現する。ここでモニター条件設定部41、アンテナ制御部42は、干渉モニタリング装置20を制御する装置制御部31aとしての機能部を構成し、ヒートマップ生成部43、補間処理部44、表示制御部45は、干渉モニタリング装置20における受信信号の解析結果に基づき電波干渉情報を生成する等のデータ処理を行うデータ制御部31bとしての機能部を構成している。
【0047】
モニター条件設定部41は、電波干渉モニターエリア6での電波干渉状態のモニター条件を設定するための機能部であり、例えば、電波干渉状態のモニタリング対象となる無線信号の周波数の設定等を行えるようになっており、本発明の設定手段を構成する。モニター条件設定部41は、電波干渉モニタリング対象の周波数帯として、例えば、5Gの運用を考慮し、3.7GHz帯、4.7GHz帯、28GHz帯のいずれかを設定する構成であってもよい。ヒートマップ生成部43は、モニター条件設定部41により設定された周波数帯の無線信号の干渉を反映した電波干渉情報を生成する処理を行うことになる。
【0048】
アンテナ制御部42は、アンテナ装置10におけるアンテナ方向などの機械的な制御を行う。
【0049】
ヒートマップ生成部43は、干渉モニタリング装置20で信号分離部23によって分離された各信号源110からそれぞれ送信される信号についての信号解析部25での電界強度の解析結果から、各信号源110のそれぞれに対応したヒートマップ(2D電界強度:二次元平面で表す電界強度)を生成する処理を行う。生成されたヒートマップ(
図9参照)は、電波干渉情報としてデータベース32に格納される。上述したヒートマップ生成処理を可能にすべく、干渉モニタリング装置20では、該ヒートマップ生成処理に先立ち、信号分離部23が各測定地点での混在した無線信号から、複数の信号源110のいずれかから送信された信号を分離する信号分離処理を行い、かつ、信号解析部25が各信号源110のいずれかから送信された信号についての電界強度の解析処理を行う。
【0050】
特に、上述した電波干渉情報の生成に関しては、干渉モニタリング装置20では、入力部33より入力された測定地点の位置情報を付加した電波干渉情報を上記各信号源110毎に生成する処理機能を有している。なお、測定地点の位置情報は、入力部33からの入力に代えて位置測位センサーで得られた位置情報を用いてもよい。
【0051】
補間処理部44は、ヒートマップ生成部43でのヒートマップの生成に際し、データベース32に格納されている電波干渉モニターエリア6内の既定の測定地点における上記各信号の電界強度の値から当該測定地点以外の地点における電界強度の値を算出し、その算出した電界強度の値を出力する補間処理を行う。補間処理のアルゴリズムとしては、例えば、最近傍補間、双一次補間、双三次補間等が適用される。ヒートマップ生成部43は、データベース32に格納されている既定の測定地点における電界強度の測定値と、上記補間処理により算出された測定地点以外の地点における電界強度の値とに基づいて上記ヒートマップを生成する。
【0052】
表示制御部45は、電波干渉モニターエリア6を規定するマップ領域を有する基本モニター画面50(
図6参照)を表示部34に表示するとともに、マップ領域の任意の位置を指定する操作に応じて、電波干渉モニターエリア6内の当該指定された位置に対応して生成された電波干渉情報を表示部34に表示する表示制御を行う機能部である。
図6に示す基本モニター画面50の構成において、電波干渉モニターエリア表示領域51は上記マップ領域を構成する。
【0053】
データベース32は、干渉モニタリング装置20によって収集され、解析された解析結果データである電波干渉情報(ヒートマップを含む)等を格納するための機能部である。
【0054】
入力部33は、コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、キーボード、マウス等の入力装置により構成されている。本実施形態において、入力部33は、到来方向推定処理に係る周波数設定、電波干渉モニター処理の開始、あるいは終了を入力する機能(操作部としての機能)を備えていてもよい。
【0055】
表示部34は、上記各種情報の入力画面や測定結果など、各種情報を表示する機能部である。本実施形態において、表示部34は、電波干渉モニターのための各種画面(
図6~
図10参照)を表示する機能を有している。表示部34は、設定パラメータやコマンドなどを入力可能とするためにタッチパネル等で構成されていてもよい。
【0056】
次に、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1の電波干渉モニター処理動作について
図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0057】
この電波干渉モニター処理を開始するには、電波干渉モニター装置1を電波干渉モニターエリア6内の最初の測定地点へと移動させる(ステップS1)。
【0058】
移動先の最初の測定地点への到着後、データ処理装置30の入力部33で電波干渉モニター処理に関する所定の開始操作が行われると、電波干渉モニター装置1では、データ処理装置30の装置制御部31aからアンテナ装置10及び干渉モニタリング装置20を制御することにより、無線信号の受信を行わせる(ステップS2)。
【0059】
ここでデータ処理装置30では、アンテナ制御部42がアンテナ装置10を対象に到来方向推定に必要な制御を行う。これに合わせて装置制御部31aが、モニター条件設定部41により予め設定した周波数帯の無線信号をアンテナ装置10で受信させ、該受信信号に基づき当該周波数帯の無線信号を測定させるように干渉モニタリング装置20を駆動制御する。この駆動制御により、干渉モニタリング装置20では、アンテナ装置10による当該測定地点での受信信号が周波数変換部21により周波数変換され、該周波数変換後の無線信号がAD変換部22でアナログ信号からデジタル信号に変換されて信号分離部23に入力する。信号分離部23は、入力する無線信号から当該測定地点でその周囲から到来する複数の信号源成分をそれぞれ分離し、該分離した信号源成分を到来方向推定処理部24、及び信号解析部25へ入力する。
【0060】
引き続き干渉モニタリング装置20は、装置制御部31aの制御下で、上記のごとく測定された無線信号を解析する解析処理を実施する(ステップS3)。ここで到来方向推定処理部24は、分離されて入力する無線信号、すなわち、当該測定地点にて受信される混在した無線信号毎にその到来方向を推定する処理を実施し、その処理結果(到来方向推定結果)をデータ処理装置30へと出力する。到来方向の推定処理については、例えば、複数の信号源110のいずれかから送信された無線信号(信号源成分)が分離された状態で特許文献1に記載されるような探査方法を適用して電波の到来方向を信号源110毎に推定することができる。また、信号解析部25は、分離されて入力する無線信号毎に、電波干渉モニターに必要とされる解析項目について解析する処理を実施し、その解析結果をデータ処理装置30へと出力する。
【0061】
ステップS3で無線信号の解析処理(信号分離、到来方向推定、解析)を実施した後、装置制御部31aは、ステップS3での解析処理による解析結果(到来方向推定結果、及び解析結果)を取り込み、当該測定地点での各信号源110から送信される混在した無線信号の解析結果データとしてデータベース32に格納させる(ステップS4)。このとき装置制御部31aは、電波干渉モニターエリア6内の当該測定地点での位置情報に関連付けて上記解析結果データをデータベース32に格納させるようになっている。ここでデータベース32は、電波干渉モニターエリア6内の各測定地点の位置情報が予め記録されている構成であってもよい。
【0062】
さらにヒートマップ生成部43では、次の測定地点が存在するか否かをチェックする(ステップS5)。具体例として、ヒートマップ生成部43では、例えば、ユーザによる入力部33からの次の測定地点が存在することを示す指令、または次の測定地点が存在しないことを示す指令(若しくはヒートマップ生成の指令)のいずれかの指令があったかによって次の測定地点が存在するか否かをチェックする。ここで次の測定地点が存在すると判定された場合(ステップS5でYES)、当該電波干渉モニター装置1を次の測定地点へ移動させた後(ステップS1)、上述したステップS2~S5までの処理を続行する。その後、次の測定地点が存在すると判定されている間(ステップS5でYES)はステップS1~S5までの処理を継続し、次の測定地点が存在しないと判定された場合(ステップS5でNO)はステップS6へと移行する。
【0063】
ステップS6において、ヒートマップ生成部43は、それまでにデータベース32に格納された解析結果データのうちの電界強度の解析結果に基づいて、測定地点以外の地点については例えば補間処理部44により上述した電界強度の補間処理を行わせることにより、複数の信号源110のそれぞれに対応したヒートマップを生成する(ステップS6)。
【0064】
ステップS6での電界強度の補間処理において、補間処理部44は、電波干渉モニターエリア6内の既定の測定地点における上記各信号の電界強度の測定値から当該測定地点以外の地点における電界強度の値を算出する。
【0065】
上述したヒートマップ、及び各解析項目の電波干渉情報の生成終了後、例えば、入力部33での電波干渉情報を表示するための所定の表示開始操作を受け付けると、表示制御部45は、各信号源110の測定地点毎の解析結果データをデータベース32から読み出し(ステップS7)、各測定地点、及び測定補間地点に対応して生成された電波干渉情報を、表示部34に、例えば、
図5に示すような基本モニター画面50を用いて表示する制御を行う(ステップS8)。
【0066】
ステップS8における電波干渉情報の表示制御の実施中、入力部33での所定の終了操作に応じて基本モニター画面50を閉じ、一連の電波干渉モニター処理動作を終了することができる。
【0067】
次に、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1の
図4のステップS8における電波干渉情報表示処理動作について、
図5に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0068】
図5における電波干渉情報表示処理は、例えば、入力部33で所定の表示処理開始操作を受け付けることにより開始される。上記表示処理開始操作を受け付けると、表示制御部45は、まず、電波干渉モニターに用いる基本モニター画面50を表示部34に表示する(ステップS21)。
【0069】
図6に示すように、基本モニター画面50は、電波干渉モニターエリア6(例えば、
図2に示す手順による電波干渉モニタリング対象領域の平面配置イメージ)を模したエリア画像51a、及び格子状に区分けされた格子状マップ画像51bが重ね合わされた電波干渉モニターエリア表示領域51と、及び各種の操作を行う操作部領域52とを有している。操作部領域52は、各種指令等に係る操作を行う部分であり、この例の場合は、電波干渉モニターエリア表示領域51に表示される情報の拡大縮小の指示操作を行う機能部で構成されている。操作部領域52は、他の操作機能を有する構成であってもよいことはいうまでもない。
【0070】
電波干渉モニターエリア表示領域51においては、格子状マップ画像51bに対して、例えば、入力部33から、電波干渉モニターエリア6内の任意の地点に対応する位置を選択的に指定できるようになっている。表示制御部45は、入力部33からの格子状マップ画像51bの任意の位置を指定する操作に応じて、電波干渉モニターエリア6内の当該指定された位置への到来信号から分離された各信号源110から送信される信号に関する電波干渉情報を表示部34に表示するようになっている。但し、指定された位置が上述した既定の測定地点以外の地点に対応する位置である場合には、表示される電波干渉情報は、ヒートマップに限られる。
【0071】
基本モニター画面50において、格子状マップ画像51bを構成する縦、横の線(点線)の交点は、電波干渉モニターエリア6における既定の測定地点(
図5のステップS1参照)に相当する。これにより、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1では、入力部33からの格子状マップ画像51bの上記交点に当たる位置を指定することで、当該指定された位置への到来信号に関する電波干渉情報を基本モニター画面50上で確認することができる。
【0072】
さらに電波干渉モニター装置1では、電波干渉モニターエリア6内における測定地点ではない地点(非測定地点)が指定された場合についても、当該指定された非測定地点への到来信号から分離された信号源成分に関する電波干渉情報(但し、ヒートマップに限られる)を基本モニター画面50上で確認できるようになっている。
【0073】
これを実現すべく、データ処理装置30の制御部31には、補間処理部44が備わっている。補間処理部44は、ヒートマップ生成部43でのヒートマップの生成に際し、既定の測定地点における分離された各信号(信号源成分)の電界強度の測定値から当該測定地点以外の地点における電界強度の値を算出し、その算出した電界強度の値を出力する補間処理機能を有している。補間処理部44がその値を補間できる電波干渉情報は、ヒートマップに限られるものとなっている。これにより、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1では、ヒートマップについては、電波干渉モニターエリア6(
図2参照)における非測定地点に相当する地点についても基本モニター画面50上で確認することが可能となる。
【0074】
上述した画面構造を有する基本モニター画面50を表示部34に表示している(ステップS21)ときに、電波干渉状態の確認を望む場合、ユーザは、電波干渉モニターエリア表示領域51上で所望の確認要求地点を指定する操作を行う(ステップS22)。
【0075】
確認要求地点が指定されると、表示制御部45は、データベース32に格納されている解析結果データのうちの当該指定された要求地点に対応する解析結果データに基づいて、当該要求地点に到来している分離した各信号源110から送信される無線信号の到来方向を示す信号源毎到来方向
図53を、電波干渉モニターエリア表示領域51に重ねて表示する(ステップS23)
【0076】
ここで信号源毎到来方向
図53について、
図7を参照して詳しく説明する。
図7は、信号源毎到来方向
図53を拡大して示す図であり、(a)は当該要求地点での信号源110から送信される信号の到来方向が0度のときの例を示し、(b)は同じく到来方向が90度のときの例を示している。
図7に示すように、信号源毎到来方向
図53は、当該測定地点を中心とする360度の方位(円)を規定する方位円
図61a上に、当該測定地点に到来する到来信号の全方位の受信電力を周方向に連続する線(雲形の線)で現す受信電力グラフ61bを表示する画面構造を有している。受信電力グラフ61bは、円の中心から周方向端部までの距離によって受信電力の大きさが表現され、中心からの距離が大きいほど電力が大きいことを示している。また、受信電力が最大である方位は当該到来信号の到来方向とされ、その到来方向は矢印61cによって示されるようになっている。すなわち、信号源毎到来方向
図53は、矢印61cが示している方向から到来信号が到来していることを表現するようになっており、到来方向の方位の角度を到来方向欄61d内に合わせ表示するようになっている。
【0077】
図6では、符号Po1で示す確認要求地点に2つの信号源110からそれぞれ送出された2つの無線信号が到来しているときの信号源毎到来方向
図53の表示例を示している。この信号源毎到来方向
図53では、左側領域に1つ目の無線信号(信号源110)に対応する
図7(a)に示す態様の到来方向
図53aが表示され、右側領域に2つ目の信号源110に対応する到来方向
図53bが表示されている。
【0078】
図7(a)を参照すると、信号源毎到来方向
図53の左側領域に表示される1つ目の信号源110については、同図の真上、すなわち方位円
図61aで「0度」に規定された方位から到来していることが判別できる。また、
図7(b)を参照すると、信号源毎到来方向
図53の右側領域に表示される2つ目の信号源110については、同図の右側、すなわち方位円
図61aで「90度」に規定された方位から到来していることが判別できる。
【0079】
図6に示す基本モニター画面50においては、信号源毎到来方向
図53の左側領域に表示された到来方向
図53aまたは右側領域に表示された到来方向
図53bのいずれかを選択する操作を行うことにより、当該選択された到来方向
図53a、または53bに対応する信号源110の電波干渉情報を基本モニター画面50上に表示して確認できるようになっている。電波干渉情報は、基本モニター画面50上に表示する構成に限らず、例えば、選択するたびに表示窓を増やすマルチウィンドウなどを用いて表示する構成であってもよい。マルチウィンドウを用いて表示する構成によれば、前に選択されている電波干渉情報を消すことなくそれまでに選択された全ての電波干渉情報間の目視比較が可能となる。
【0080】
再び
図5に戻って電波干渉情報表示処理について説明する。上記ステップS23で信号源毎到来方向
図53を表示した状態でいずれかの信号源110の電波干渉情報を確認する場合、ユーザは、信号源毎到来方向
図53における所望の信号源110に対応する到来方向
図53a、または53bのいずれかを選択する(ステップS24)。
【0081】
到来方向
図53a、または53bの選択を受け付けることにより、表示制御部45は、該選択された到来方向図に対応する信号源110に関する電波干渉情報の選択メニューを表示する(ステップS25)。選択メニューは、電波干渉情報の各解析項目(掃引スペクトラム、ヒートマップ、コンスタレーション等)を選択可能な構成となっている。
【0082】
これにより、上記ステップS25で上記選択メニューの中から所望の信号源110に対応するいずれかの解析項目の選択が行われると、表示制御部45は、該選択された解析項目の解析結果データをデータベース32から読み出し、電波干渉情報として表示部34に表示する制御を行う(ステップS26)。
【0083】
ここで表示制御部45は、ステップS25で選択された解析項目が、例えば、掃引スペクトラム、ヒートマップ、コンスタレーションの場合には、それぞれ、例えば、
図8、
図9、
図10に示す態様で当該解析項目の電波干渉情報を表示するように制御する。
【0084】
図5に示す一連の電波干渉情報表示制御によれば、所定の空間を規定する電波干渉モニターエリア表示領域(マップ領域)51を有する基本モニター画面50を表示し、マップ領域の任意の位置、分離した信号源110毎の到来方向
図53、各解析項目及びヒートマップを順に指定する操作に応じて、指定された任意の位置に対応する解析項目毎の解析結果及びヒートマップの生成結果をさらに電波干渉情報として表示することができる。これにより、マップ領域の任意の位置を指定することで、当該任意の位置での複数の信号源110に対応する各解析項目の電波干渉情報を選択的に可視化して表示し、容易に確認することが可能になる。
【0085】
次に、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1における電波干渉情報の具体的な表示形態について
図8~
図10を参照して説明する。
【0086】
図5のステップS26での電波干渉情報の表示制御において、表示制御部45は、同ステップS25での解析項目「掃引スペクトラム」の選択に応じて、基本モニター画面50上に、
図8に示す掃引スペクトラム確認画面62を用いて掃引スペクトラムを可視化表示する。掃引スペクトラムは、上述したように、マルチウィンドウなどを用いて表示するようにしてもよい。
【0087】
図8に示すように、掃引スペクトラム確認画面62は、波形表示領域62aと、共通データ表示領域62bとを有している。波形表示領域62aは、当該測定地点に対応する信号源110の掃引スペクトラム波形を表示する領域である。波形表示領域62aは、掃引スペクトラム波形の表示領域の周囲に、当該信号源110の分析に係る情報等を表示するエリアが設けられ、当該エリアにRBW等の設定データが表示される。共通データ表示領域62bは、例えば「Frequency and Time」、「Level」、「Trigger」等の欄を有し、各欄内に当該欄に対応する設定データを表示するようになっている。
【0088】
また、表示制御部45は、
図5のステップS25での解析項目「ヒートマップ」の選択に応じて、同ステップS26においては、基本モニター画面50上に、
図9に示すヒートマップ確認画面63を用いてヒートマップを可視化表示する。
【0089】
図9に示すように、ヒートマップ確認画面63は、エリア画像63aと、格子状マップ画像63bと、電波状況画像63cと、を透視可能状態に重ねて表示する画面構造を有している。エリア画像63aは、例えば、基本モニター画面50(
図6参照)の電波干渉モニターエリア表示領域51を構成するエリア画像51aに相当するものであり、格子状マップ画像63bは同じく格子状マップ画像51bに相当するものである。電波状況画像63cは、電波干渉モニターエリア6内での到来信号の電界強度が色の濃淡によって表示されるようになっている。ここで到来信号の電界強度は、例えば、色が濃いほど電界強度が強いことを示すようになっている。
【0090】
このように、ヒートマップ確認画面63は、複数の測定地点が所在する電波干渉モニターエリア6を模したエリア画像63a上に、電波状況画像63cによって、当該電波干渉モニターエリア6内での到来信号の電界強度の分布を色の濃淡によって表示できるようになっている。ヒートマップ確認画面63と基本モニター画面50との構造上の違いは、前者が電界強度(電波状況画像63c)表示の機能を有し、後者が電界強度表示の機能を有していない点にある。ヒートマップについても、ヒートマップ確認画面63を用いて表示することに限らず、マルチウィンドウを用いて他の電波干渉情報とともに表示するようにしてもよい。
【0091】
また、表示制御部45は、
図5のステップS25での解析項目「コンスタレーション」の選択に応じて、同ステップS26においては、基本モニター画面50上に、
図10に示すコンスタレーション確認画面64を用いてコンスタレーションを可視化表示する。
【0092】
図10に示すように、コンスタレーション確認画面64は、グラフ表示領域64aを有し、該グラフ表示領域64aに、当該測定地点に到来する到来信号のコンスタレーションに関する分析結果が表示されるようになっている。
【0093】
上述したように、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1は、複数の信号源110が同一の周波数帯域の無線信号の送受信を行う電波干渉モニターエリア6の所定の空間内における複数の信号源110から送信される混在した無線信号をそれぞれの信号源毎に分離した無線信号間の電波干渉情報を表示する電波干渉モニター装置であって、所定の空間内で複数の測定地点にて混在した無線信号を受信する受信部20aと、各測定地点での混在した無線信号から、複数の信号源110のいずれかから送信された信号を分離する信号分離処理を行う信号分離部23と、信号分離部23で分離した複数の信号源110のそれぞれから送信される信号についての到来方向推定を行う到来方向推定部24、電界強度、コンスタレーション及び掃引スペクトラムの各解析項目についての解析処理を行う信号解析部25と、予め所定の空間内での測定地点での位置情報が記録され、測定地点での解析処理部20b(信号分離部23、到来方向推定部24、信号解析部25から構成される)で行った各解析項目の解析結果を位置情報に関連付けて格納するデータベース32と、データベース32に格納された電界強度の解析結果に基づいて、測定地点以外の地点については電界強度の補間処理を行うことにより、複数の信号源110のそれぞれに対応したヒートマップを生成するヒートマップ生成部43と、所定の空間を規定する電波干渉モニターエリア表示領域(マップ領域)51を有する基本モニター画面50を表示する表示部34と、マップ領域の任意の位置を指定する操作に応じて、任意の位置に対応する解析処理部20bで行った到来方向推定の結果である到来方向図が複数の信号源110毎に表示部34に表示され、複数の信号源110毎に表示された到来方向
図53a、53bのいずれかを選択し、解析項目及びヒートマップのいずれかを選択すると、所望の任意の位置に対応する解析項目毎の解析結果及びヒートマップの生成結果を電波干渉情報として、表示部34にさらに表示する表示制御部45と、を有する構成である。
【0094】
この構成により、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1は、複数の信号源110が同一の周波数帯域の無線信号の送受信を行う電波干渉モニターエリア6の所定の空間内での複数の信号源110から送信される無線信号間の電波干渉モニタリングに際し、所定の空間を規定するマップ領域を有する基本モニター画面50上で、任意の地点を指定することにより、当該指定した任意の位置に対応する各信号源110毎の電波干渉情報を選択的かつ容易に確認することができる。電波干渉情報としては、電界強度、到来方向推定、コンスタレーション及び掃引スペクトラム等の各解析項目を確認可能である。また、上記補間処理を行う機能を有する電波干渉モニター装置1の構成によれば、実際に測定を行った測定地点以外の地点についても電波干渉情報(ヒートマップ)の確認が行える。これにより、既存の測定器、測定システムでは実施が困難である複雑な無線通信環境の観測を容易に実施できるようになる。
【0095】
また、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1は、電波干渉モニタリング対象の周波数帯を設定するモニター条件設定部41をさらに有し、解析処理部20bは、複数の信号源110のそれぞれから送信されるモニター条件設定部41により設定された周波数帯の信号を対象に各解析項目についての解析処理を行う構成である。
【0096】
この構成により、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1は、電波干渉モニタリング対象の所望の周波数帯を設定することにより、当該周波数帯の無線信号の相互干渉状態を容易にモニターすることが可能となる。
【0097】
また、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1において、モニター条件設定部41は、電波干渉モニタリング対象の周波数帯として、3.7GHz帯、4.7GHz帯、28GHz帯のいずれかを設定する構成である。
【0098】
この構成により、本実施形態に係る電波干渉モニター装置1は、例えば、3.7GHz帯、4.7GHz帯、28GHz帯のいずれかの周波数帯を選択的に設定して、当該設定した周波数帯の無線信号の相互干渉状態をモニターすることができる。
【0099】
また、本実施形態に係る電波干渉モニター方法は、複数の信号源110が同一の周波数帯域の無線信号の送受信を行う所定の空間内での複数の信号源110から送信される無線信号間の電波干渉情報を表示するものである。
【0100】
本実施形態に係る電波干渉モニター方法は、所定の空間内で複数の測定地点を移動させながら混在した無線信号を受信する受信ステップ(S1、S2)と、受信ステップにて受信した混在した無線信号から、複数の信号源110のいずれかから送信された信号かを分離する信号分離処理を行い、信号分離した複数の信号源110のそれぞれから送信される信号についての電界強度、到来方向推定、コンスタレーション及び掃引スペクトラムの各解析項目についての解析処理を行う解析処理ステップ(S3)と、測定地点での解析処理ステップで行った各解析項目の解析結果を、予め記憶された所定の空間内の測定地点の位置情報と関連付けてデータベース32に格納するステップ(S4)と、データベース32に格納された電界強度の解析結果に基づいて、複数の信号源110にそれぞれ対応したヒートマップを生成するステップ(S6)と、所定の空間を規定する電波干渉モニターエリア表示領域(マップ領域)51を有する基本モニター画面50を表示し、マップ領域の任意の位置、分離した信号源110毎の到来方向
図53、各解析項目及びヒートマップを順に指定する操作に応じて、指定された任意の位置に対応する解析項目毎の解析結果及びヒートマップの生成結果をさらに電波干渉情報として表示するステップ(S8)と、を含む構成を有する。
【0101】
この構成により、本実施形態に係る電波干渉モニター方法を適用した電波干渉モニター装置1において、複数の信号源110が同一の周波数帯域の無線信号の送受信を行う所定の空間内での複数の信号源110から送信される無線信号間の電波干渉モニタリングに際し、所定の空間を規定するマップ領域を有する基本モニター画面50上で、任意の地点を指定することにより、当該指定した任意の位置に対応する各信号源110毎の電波干渉情報を選択的かつ容易に確認することができる。電波干渉情報としては、電界強度、到来方向推定、コンスタレーション及び掃引スペクトラム等の各解析項目を確認可能である。また、上記補間処理を行う機能を有する構成によれば、実際に測定を行った測定地点以外の地点についても電波干渉情報(ヒートマップ)の確認が行える。これにより、既存の測定器、測定システムでは実施が困難である複雑な無線通信環境の観測を容易に実施できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上のように、本発明に係る電波干渉モニター装置、及び電波干渉モニター方法は、複数の信号源が同一周波数帯域で無線信号の送受信を行う環境における空間内各所での無線信号の相互干渉を容易に把握でき、複雑な無線通信環境の観測を容易に実現可能であるという効果を奏し、同一の周波数帯の複数の無線信号の相互干渉をモニタリング対象とする電波干渉モニター装置、及び電波干渉モニター方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0103】
1 電波干渉モニター装置
6 電波干渉モニターエリア(空間)
10 アンテナ装置(受信部)
20 干渉モニタリング装置
21 周波数変換部(受信部)
22 AD変換部(受信部)
24 到来方向推定処理部(解析処理部)
25 信号解析部(解析処理部)
30 データ処理装置
32 データベース
34 表示部
41 モニター条件設定部(設定手段)
43 ヒートマップ生成部
44 補間処理部
45 表示制御部
50 基本モニター画面(モニター画面)
51 電波干渉モニターエリア表示領域(マップ領域)
53 信号源毎到来方向図
53a、53b 到来方向図
62 掃引スペクトラム確認画面
63 ヒートマップ確認画面
64 コンスタレーション確認画面
110 信号源A、B、C、D