(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置および異常診断方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20230710BHJP
B66B 1/34 20060101ALI20230710BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20230710BHJP
H02P 29/024 20160101ALN20230710BHJP
【FI】
B66B5/02 S
B66B1/34 A
B66B3/00 R
H02P29/024
(21)【出願番号】P 2021203399
(22)【出願日】2021-12-15
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 涼介
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-285269(JP,A)
【文献】特開平9-255255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
B66B 1/34
B66B 3/00
H02P 29/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ装置の乗りかごの扉を開閉駆動するモータ、もしくは乗りかごの昇降を駆動するモータの少なくともいずれか一方に電力を供給する電源を備え、前記電源から前記モータに電力を供給するエレベータ装置において、
前記モータのトルクを計測するトルク計測装置で計測された前記モータのトルクの時系列変化を示す波形データから前記電源のリップルノイズの振幅に係る情報を抽出し、抽出した前記リップルノイズの振幅に係る情報に基づいて前記モータを駆動する前記電源に配置された平滑コンデンサの異常状態を判断する異常判断部を有
し、
前記異常判断部は、
乗りかごの扉の開閉に伴う前記電源の発熱による温度上昇に基づいて前記平滑コンデンサの周囲の環境温度を推定し、推定した前記環境温度に基づいて前記平滑コンデンサの経年劣化度を推定する経年劣化度推定部と、
前記経年劣化度推定部が推定した前記平滑コンデンサの経年劣化度が閾値を超えたか否かを判断する経年劣化度判断部と
を有するエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記異常判断部は、
前記トルク計測装置で計測された前記波形データから、前記電源を構成するスイッチングレギュレータのスイッチング周波数の波形データを抽出することで、前記リップルノイズの振幅に係る情報を抽出する波形抽出部と、
抽出した前記リップルノイズの振幅に係る情報に基づいて、前記平滑コンデンサの異常状態を判断する波形解析部を有する、
請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記波形抽出部は、前記波形データをフーリエ変換することで、前記電源を構成するスイッチングレギュレータのスイッチング動作に起因する前記リップルノイズの振幅に係る情報をスペクトル成分として抽出し、
前記波形解析部は、前記リップルノイズに対応するスペクトル成分の値が閾値より大きい場合、前記平滑コンデンサが異常状態にあると判断する、
請求項2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記電源がスイッチング周波数の異なる複数のスイッチングレギュレータで構成されている場合、
前記波形抽出部は、複数のスイッチングレギュレータそれぞれのスイッチング周波数に基づいて、複数のスイッチングレギュレータそれぞれのスイッチング動作に起因するリップルノイズの振幅に係る情報を抽出し、
前記波形解析部は、複数のスイッチングレギュレータそれぞれの前記平滑コンデンサについて異常状態にあるか否かを判断する、
請求項2または3に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
エレベータ装置の乗りかごの扉を開閉駆動するモータ、もしくは乗りかごの昇降を駆動するモータの少なくともいずれか一方に電力を供給する電源を備え、前記電源から前記モータに電力を供給するエレベータ装置において、前記電源に配置された平滑コンデンサの異常状態を診断する異常診断方法であって、
前記モータのトルクを計測するトルク計測装置で計測された前記モータのトルクの時系列変化を示す波形データから前記電源のリップルノイズの振幅に係る情報を抽出することと、
抽出した前記リップルノイズの振幅に係る情報に基づいて前記モータを駆動する前記電源に配置された平滑コンデンサの異常状態を診断することと、
を含
み、
前記異常状態を診断することには、
乗りかごの扉の開閉に伴う前記電源の発熱による温度上昇に基づいて前記平滑コンデンサの周囲の環境温度を推定し、推定した前記環境温度に基づいて前記平滑コンデンサの経年劣化度を推定することと、
前記経年劣化度推定部が推定した前記平滑コンデンサの経年劣化度が閾値を超えたか否かを判断することと、
を含む平滑コンデンサの異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置および異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置の乗りかごの扉を開閉駆動するモータおよび乗りかごを昇降駆動するモータは、電源から電力を供給されて動作する。電源に配置されている平滑コンデンサは、経年劣化に伴って容量が減少する。電源の平滑コンデンサの容量が減少すると、平滑コンデンサに蓄積されるエネルギーの不足等に起因して、モータの回転力が不十分になることがある。モータの回転力が不十分になると、扉が開かなくなったり乗りかごが停止することもあり得る。そのため、平滑コンデンサは、所定の保守期間を経過すると交換される。
【0003】
ところで、電源の平滑コンデンサには、電解コンデンサが用いられることが多い。電解コンデンサの初期の容量は、部品ごとのバラツキが大きいことが知られている。また、電解コンデンサの経年劣化の度合いは、その電解コンデンサの使用される環境温度によって変わることも知られている。
【0004】
平滑コンデンサが搭載されている電源を納入した後で、定期的に電源を回収し、電解コンデンサの容量の劣化度合いを計測することは困難である。そのため、事故防止の観点から考えると、電解コンデンサの初期の容量が規格範囲の最低容量であり、想定される最高温度を環境温度として、平滑コンデンサを交換する保守期間を決めるという考え方もある。しかし、このように最も厳しい条件で保守期間を設定することは、過剰品質となり、保守費用の高騰を招く要因となる。
【0005】
この問題を解決するために、平滑コンデンサに流れ込む電流の波形と平滑コンデンサの電圧の波形を計測し、計測した電流と電圧の波形に基づいて、平滑コンデンサの容量が規定値より減少した異常状態にあるか否かを判断する技術が開示されている。しかしながら、この技術を採用した場合、電源から出力される電流の経路に電流計を配置する必要があり、電流計で電圧降下を生じるため、電源効率の点で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の事情によりなされたもので、モータを駆動する電源の平滑コンデンサが異常状態にあるか否かを判断することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための実施形態に係るエレベータ制御装置は、エレベータ装置の乗りかごの扉を開閉駆動するモータ、もしくは乗りかごの昇降を駆動するモータの少なくともいずれか一方に電力を供給する電源を備え、電源からモータに電力を供給するエレベータ装置において、電源に配置された平滑コンデンサの異常状態を判断する。エレベータ制御装置は、モータのトルクを計測するトルク計測装置で計測されたモータのトルクの時系列変化を示す波形データから電源のリップルノイズの振幅に係る情報を抽出し、抽出したリップルノイズの振幅に係る情報に基づいてモータを駆動する電源に配置された平滑コンデンサの異常状態を判断する異常判断部を有する。異常判断部は、乗りかごの扉の開閉に伴う電源の発熱による温度上昇に基づいて平滑コンデンサの周囲の環境温度を推定し、推定した環境温度に基づいて平滑コンデンサの経年劣化度を推定する経年劣化度推定部と、経年劣化度推定部が推定した平滑コンデンサの経年劣化度が閾値を超えたか否かを判断する経年劣化度判断部とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るエレベータ装置の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るエレベータ装置の制御系を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る駆動ユニットのブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る制御ユニットの物理的ブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る制御ユニットの機能的ブロック図である。
【
図6】本実施形態に係るエレベータ制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係るトルク計測装置で計測されたトルクの波形データについて説明するための図である。
【
図8】本実施形態に係るトルク計測装置で計測されたトルクの波形データについて説明するための図である。
【
図9】本実施形態に係るトルク計測装置で計測されたトルクの波形データについて説明するための図である。
【
図10】本実施形態に係るトルク計測装置で計測されたトルクの波形データについて説明するための図である。
【
図11】本実施形態に係るエレベータ制御装置の波形抽出部の動作を説明するための図である。
【
図12】本実施形態に係るエレベータ制御装置の経年劣化度推定部の処理について説明するための図である。
【
図13】本実施形態に係るエレベータ制御装置の経年劣化度推定部の処理について説明するための図である。
【
図14】本実施形態に係るエレベータ制御装置の波形抽出部の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態を、図面を用いて説明する。説明には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を用いる。本実施形態の説明に用いる図およびフローチャートは一例を示すものである。
【0011】
本実施形態に係るエレベータ制御装置は、エレベータ装置の乗りかごの扉を開閉駆動するモータ(以後、開閉モータ)もしくは乗りかごの昇降を駆動するモータ(以後、昇降モータ)の少なくともいずれか一方に電力を供給する電源を有する駆動ユニットに配置された平滑コンデンサが異常状態にあるか否かを判断する。異常状態とは、平滑コンデンサの容量が予め設定した閾値より小さい状態をいう。
【0012】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るエレベータ装置10の斜視図である。エレベータ装置10は、商業施設や居住施設などの建築物に設けられた昇降路100の内部に配置されている。
図1に示されるように、エレベータ装置10は、乗りかご31、カウンタウエイト50、昇降モータ40、ガイドレール21~24、制御盤70(エレベータ制御装置)を有している。
【0013】
ガイドレール21~24それぞれは、長手方向をZ軸方向とする部材である。ガイドレール21,22は、乗りかご31を昇降自在にガイドするための一対の部材である。また、ガイドレール23,24は、カウンタウエイト50を昇降自在にガイドするための一対の部材である。ガイドレール21とガイドレール22は、Y軸方向に離間して配置されている。また、ガイドレール23,24も、同様にY軸方向に相互に離間して配置されている。
図1では、カウンタウエイト50のガイドレール23,24が、乗りかご31のガイドレール21,22に対してX軸方向に離間して配置されている。なお、ガイドレール21~24の配置は、
図1に示される配置に限定されるものではない。
【0014】
乗りかご31は、利用者を収容して昇降路100を昇降するユニットである。乗りかご31は、ガイドレール21,22の間に配置され、ガイドレール21,22に対して、上下方向に移動可能に取り付けられている。
【0015】
乗りかご31の+X側の側面には、内部に出入りするための開口部31aが形成されている。開口部31aは、乗りかご31の側面に沿って移動する一対の扉32によって、閉塞或いは開放される。扉32は、開閉モータ(
図1では、図示略)によって開閉される。
【0016】
カウンタウエイト50は、ガイドレール23,24に対して、上下方向に移動可能に取り付けられている。カウンタウエイト50の重量は、乗りかご31の重量に対して所定の割合になるように調整されている。
【0017】
昇降モータ40は、乗りかご31を昇降させるためのモータである。昇降モータ40は、昇降路100の上部に、回転軸がY軸に平行になるように配置されている。昇降モータ40の回転軸にはプーリー42が固定されている。
【0018】
昇降モータ40のプーリー42には、ワイヤ43が巻き回されている。ワイヤ43は、一端が、乗りかご31に固定され、他端が、カウンタウエイト50に固定されている。
【0019】
制御盤70は、昇降路100に配置されている。制御盤70には、昇降モータ40や乗りかご31に設けられた機器等を制御するための制御装置が収容されている。
【0020】
図2は、エレベータ装置10の制御系を示すブロック図である。制御系は、制御盤70に収容される制御ユニット80および駆動ユニット91と、乗りかご31に設けられる操作パネル36およびトルク計測装置39と、を含んで構成される。
【0021】
操作パネル36は、乗りかご31の内壁面に設けられている。操作パネル36は、乗りかご31の利用者から、行き先階などを受け付けるためのインタフェースである。利用者は、操作パネル36を操作することで、乗りかご31の行き先階などの登録や、扉32の開閉を行うことができる。
【0022】
トルク計測装置39は、扉32を開閉駆動する開閉モータ41のトルクを計測する。トルク計測装置39は、計測した開閉モータ41のトルクの時系列変化を示す波形データを制御盤70に送信する。トルク計測装置39は、駆動ユニット91から電力を供給されて動作する。
【0023】
上述した操作パネル36およびトルク計測装置39は、
図1に示されるケーブル44を介して、制御盤70に収容される制御ユニット80に接続されている。
【0024】
図2に示す駆動ユニット91は、昇降モータ40と、乗りかご31の扉32を駆動する開閉モータ41(
図1では図示略)に電力を供給することで、昇降モータ40と開閉モータ41とを駆動する。駆動ユニット91は、制御ユニット80からの指示に基づいて、昇降モータ40を駆動する。また、駆動ユニット91は、制御ユニット80からの指示に基づいて、開閉モータ41を駆動する。
【0025】
図3は、駆動ユニット91のブロック図である。駆動ユニット91は、コンバータ11と、平滑コンデンサ12と、インバータ13と、を有する。コンバータ11は、商用電源1から供給される交流電圧を直流電圧に変換する電源装置である。コンバータ11は、スイッチングレギュレータで構成されている。平滑コンデンサ12は、コンバータ11とインバータ13の間に配置される。平滑コンデンサ12は、コンバータ11から出力されるエネルギーを蓄積するとともに、コンバータ11の出力電圧に含まれるリップルノイズ(電源ノイズ)を平滑化する。平滑コンデンサ12には、電解コンデンサを用いる。インバータ13は、コンバータ11から供給される直流電圧を所定の周波数で所定の電圧の交流電圧に変換し、昇降モータ40および開閉モータ41に供給する電源装置である。インバータ13は、スイッチングレギュレータで構成されている。
【0026】
コンバータ11から平滑コンデンサ12に至る電流経路には、平滑コンデンサ12を充電するための充電回路14が設けられている。また、平滑コンデンサ12からインバータ13に至る電流経路には、平滑コンデンサ12からインバータ13に放電するための放電回路15が設けられている。充電回路14および放電回路15は、例えば、ダイオード、ヒューズ、サーミスタ、リレー等で構成されている。
【0027】
図4は、制御ユニット80の物理的なブロック図である。制御ユニット80は、バス85を介して相互接続されるCPU(Central Processing Unit)81、主記憶部82、補助記憶部83、およびインタフェース部84を有するコンピュータである。CPU81は、補助記憶部83に記憶されているプログラムに従って、後述する処理を実行する。主記憶部82は、RAM(Random Access Memory)等を有している。主記憶部82は、CPU81の作業領域として用いられる。補助記憶部83は、ROM(Read Only Memory)、半導体メモリ等の不揮発性メモリを有している。補助記憶部83は、CPU81が実行するプログラム、および各種パラメータなどを記憶している。また、補助記憶部83には、トルク計測装置39が計測した開閉モータ41のトルクの波形データが蓄積される。また、補助記憶部83には、平滑コンデンサ12の経年劣化度を計算するためのテーブルが記憶されている。詳細は後述する。
【0028】
インタフェース部84は、シリアルインタフェース、パラレルインタフェース、無線LANインタフェースなどを有している。操作パネル36と、トルク計測装置39と、駆動ユニット91とは、インタフェース部84を介して、CPU81に接続される。また、インタフェース部84には、キーボード、ディスプレイ等で構成された入出力装置93が接続される。
【0029】
図5は、制御ユニット80の機能的なブロック図である。制御ユニット80のCPU81は、補助記憶部83に記憶されているプログラムを実行することで、駆動ユニット制御部71と異常判断部72を実現する。
【0030】
駆動ユニット制御部71は、操作パネル36もしくは各フロアの呼びパネルからの入力に基づいて、駆動ユニット91を制御する。例えば、駆動ユニット制御部71が、駆動ユニット91を介して、昇降モータ40を正転させると、乗りかご31が上昇するとともに、カウンタウエイト50が下降する。駆動ユニット制御部71が、駆動ユニット91を介して、昇降モータ40を逆転させると、乗りかご31が下降するとともに、カウンタウエイト50が上昇する。また、駆動ユニット制御部71が、駆動ユニット91を介して、開閉モータ41を正転させると、乗りかご31の扉32および各階の乗り場に設けられた扉は戸開制御され、開閉モータ41を逆転させると、乗りかご31の扉32および各階の乗り場に設けられた扉は戸閉制御される。
【0031】
異常判断部72は、トルク計測装置39で計測された開閉モータ41のトルクの波形データに基づいて、駆動ユニット91に登載されている平滑コンデンサ12が異常状態にあるかを判断する。異常判断部72は、波形抽出部73と、波形解析部74と、経年劣化度推定部76と、経年劣化度判断部77とを有する。
【0032】
波形抽出部73は、トルク計測装置39で計測された開閉モータ41のトルクの波形データから、駆動ユニット91を構成するコンバータ11のスイッチング動作に起因するリップルノイズの情報を抽出する。例えば、波形抽出部73は、開閉モータ41のトルクの波形データをフーリエ変換することで、駆動ユニット91を構成するコンバータ11のスイッチング動作に起因するリップルノイズの情報をスペクトル成分として抽出する。
【0033】
波形解析部74は、波形抽出部73が抽出したリップルノイズの情報に基づいて、平滑コンデンサ12が異常状態にあるかを判断する。例えば、波形解析部74は、抽出されたコンバータ11のスイッチング動作に起因する部分波形のスペクトル成分のパワーを示す値が閾値より大きい場合、平滑コンデンサ12が異常状態にあると判断する。異常状態とは、平滑コンデンサ12の容量が予め設定した閾値より小さい状態をいう。
【0034】
経年劣化度推定部76は、乗りかご31の扉32の開閉に伴う駆動ユニット91の発熱による温度上昇に基づいて平滑コンデンサ12の周囲の環境温度Tenを推定し、推定した環境温度Tenに基づいて平滑コンデンサ12の経年劣化度を推定する。扉32の開閉動作に伴い昇降モータ40および開閉モータ41を駆動するために駆動ユニット91に搭載されているコンバータ11とインバータ13が起動される。コンバータ11とインバータ13が起動されると、コンバータ11とインバータ13の発熱により、平滑コンデンサ12の周囲の温度が上昇する。経年劣化度推定部76は、駆動ユニット91が配置されている場所の温度に、扉32の開閉に伴うコンバータ11とインバータ13の発熱により上昇した温度を加算して、平滑コンデンサ12が使用される場所の環境温度Tenを推定し、推定した環境温度Tenに基づいて平滑コンデンサ12の経年劣化度を推定する。
【0035】
経年劣化度判断部77は、経年劣化度推定部76が推定した平滑コンデンサ12の経年劣化度が閾値を超えたか否かを判断する。
【0036】
異常判断部72は、波形解析部74もしくは経年劣化度判断部77の何れかが、平滑コンデンサ12が異常状態にあると判断した場合、平滑コンデンサ12が異常状態にあることを入出力装置93に出力する。
【0037】
次に、
図6に示されるフローチャートを参照しながら、制御ユニット80による平滑コンデンサ12の異常診断方法について説明する。下記の制御は、補助記憶部83に記憶されたプログラムに基づいて行われ、制御の主体はCPU81である。ここでは、異常判断部72が、トルク計測装置39が計測した開閉モータ41のトルクの波形データに基づいて、平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断する場合を例にして説明する。トルク計測装置39は、扉32を開閉駆動する開閉モータ41のトルクを常時計測し、計測したトルクの波形データは、制御ユニット80内の補助記憶部83に逐次記憶される。駆動ユニット91に搭載されているコンバータ11およびインバータ13は、乗りかご31が行先階の制御をされていない場合、スイッチング動作を停止している。
【0038】
異常判断部72は、指定時間になったか否かを判断する(ステップS11)。指定時間は、任意のタイミングである。例えば、指定時間は毎日の午前零時であってもよいし、日曜日の午前零時であってもよい。指定時間でないと判断された場合(ステップS11:No)、異常判断部72は、指定時間になることの監視を継続する。一方、指定時間であると判断された場合(ステップS11:Yes)、処理はステップS12に遷移する。
【0039】
異常判断部72は、トルク計測装置39が計測した開閉モータ41のトルクの波形データを補助記憶部83から取得する(ステップS12)。
図7は、トルク計測装置39が計測した開閉モータ41のトルクの波形データの例である。
図7に示す波形データは、扉32を開閉するためのトルクと、扉32を案内するレールの歪等に起因するトルクと、駆動ユニット91のコンバータ11とインバータ13のリップルノイズとを含んでいる。
図8は、
図7に示す波形データから、扉32を案内するレールの歪等に起因するトルクと、駆動ユニット91のコンバータ11とインバータ13のリップルノイズとを削除した、扉32を開閉するためのトルクの波形データである。駆動ユニット制御部71から時間t1で扉32の開指令の信号が出力されると、開閉モータ41は、トルクを増し、扉32の開動作を加速する。扉32の開動作の速度が所定の速度に達する時間t2になると、駆動ユニット制御部71は、開閉モータ41のトルクがゼロになるように制御し、扉32は一定速度で開動作を継続する。駆動ユニット制御部71は、扉32が完全に開いた状態になる少し前の時間t3になると、扉32の開動作の速度を減速するように開閉モータ41を制御する。開閉モータ41は、扉32の開動作の速度を減速するために加速時とは逆方向のトルクを発生する。扉32は、開閉モータ41のトルクがゼロになる時間t4に完全に開いた状態で停止する。
【0040】
扉32を導くレールに歪があったり異物が付着している場合、扉32は、扉32が歪みや異物を通過する際に衝撃を受ける。この衝撃は、開閉モータ41に伝わり、トルク計測装置39は、この衝撃を含めたトルクを計測する。
図9に示す部分波形wfs1およびwfs2は、レールの歪等に起因するトルクの変動を示している。
【0041】
トルク計測装置39は、駆動ユニット91に搭載されたコンバータ11が出力する電力の供給を受けて動作する。平滑コンデンサ12の容量が減少すると、コンバータ11のリップルノイズが大きくなる。トルク計測装置39の計測値には、リップルノイズの大きさに相関した値が含まれる。
図7に示す部分波形wnは、このリップルノイズに起因する波形である。
図10は、部分波形wnの拡大図である。部分波形wnは、コンバータ11を構成するスイッチングレギュレータのスイッチング動作に起因するので、部分波形wnの波長WLは、コンバータ11のスイッチング周波数と同じ周波数である。部分波形wnの振幅Wmaxは、コンバータ11を構成するスイッチングレギュレータのリップルノイズの振幅と相関する。なお、エレベータ装置が停止している場合(乗りかご31の行先階制御がされていない場合)、コンバータ11は動作しておらず、部分波形wnは発生しない。
【0042】
図6に戻り、波形抽出部73は、
図7に示すトルクの波形データから、コンバータ11を構成するスイッチングレギュレータのスイッチング動作に起因する
図10に示す部分波形wnを抽出する(ステップS13)。例えば、波形抽出部73は、トルクの波形データをフーリエ変換することで、部分波形wnをスペクトル成分として抽出する。
【0043】
図11は、
図7に示す波形データをフーリエ変換したスペクトラムの例である。波形データには、
図8に示す扉32を動作させるトルク波形、
図9に示す部分波形wfs1およびwfs2の波形、
図10に示す部分波形wnを含む様々な周波数成分の波形が含まれている。波形抽出部73は、
図11に示す全周波数領域のスペクトル成分の中から、コンバータ11のスイッチング周波数の領域A1に属するスペクトル成分を抽出する。領域A1の範囲は、コンバータ11に使用されている部品のバラツキ、温度変動、および経年変化に起因するコンバータ11のスイッチング周波数の変動範囲に基づいて決められる。
【0044】
波形解析部74は、抽出されたスペクトル成分の中で最もパワーが大きいスペクトル成分のパワーを示す値Pm1が閾値Pth以上であるか否かを判断することで、平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断する(ステップS14)。波形解析部74は、最もパワーが大きいスペクトル成分のパワーを示す値Pm1が閾値Pth以上(正常範囲外)であると判断した場合(ステップS14:Yes)、平滑コンデンサ12が異常状態にあることを入出力装置93に出力する(ステップS19)。一方、最もパワーが大きいスペクトル成分のパワーを示す値Pm1が閾値Pth未満(正常範囲内)であると判断した場合(ステップS14:No)、処理はステップS15に移行する。
【0045】
次に、経年劣化度推定部76は、乗りかご31の扉32の開閉に伴う駆動ユニット91の発熱による温度上昇に基づいて平滑コンデンサ12の周囲の環境温度Tenを推定し、推定した環境温度Tenに基づいて平滑コンデンサ12の経年劣化度を推定する(ステップS15)。一般的に、コンデンサは、使用される環境温度Tenが高いほど早く経年劣化が進み、容量が減少する。乗りかご31の行先階制御が行われると、扉32を開閉するために、コンバータ11およびインバータ13を搭載した駆動ユニット91が動作する。駆動ユニット91が動作すると、コンバータ11およびインバータ13の発熱により、平滑コンデンサ12の周囲の温度が上昇する。つまり、扉32の開閉回数が多いほど、平滑コンデンサ12の環境温度Tenが高い時間が増加することになり、平滑コンデンサ12の経年劣化が加速されることになる。
【0046】
補助記憶部83には、
図12に示すような平滑コンデンサ12の経年劣化度を計算するためのテーブルが記憶されている。
図12に示すテーブルの1列目には、環境温度Tenの範囲が記載されている。ここでは、環境温度Tenが1℃ごとに分割されている。2列目には、20℃を基準とした各温度における経年劣化度の加速係数が記載されている。累積時間の欄には、平滑コンデンサ12の環境温度Tenが各温度に属している累積時間が、1週間ごとに記載されている。
図12に示すテーブルは、過去の扉32の開閉回数のデータに基づいて作成される。例えば、
図12に示すテーブルは、平滑コンデンサ12が搭載された駆動ユニット91が配置されている場所の年間の温度データと、曜日や季節による乗りかご31の動作頻度のデータと、扉32の1回の開閉動作に伴うコンバータ11およびインバータ13の発熱により上昇する温度のデータ等に基づいて作成されている。テーブルには、少なくとも駆動ユニット91を使い始めてから駆動ユニット91を交換する時期までの累積時間の1週間ごとのデータが記憶されている。
【0047】
経年劣化度推定部76は、
図12に示すテーブルの各温度に対応する加速係数に各温度の累積時間をかけた値を加算し、
図13に示すような加速係数の累積グラフF(x)を作成する。例えば、経年劣化度推定部76は、1月1日から1月7日までの各温度における累積時間と各温度の加速係数をかけた値を加算して、
図12に示す1月1日から1月7日までの1週間分の加速係数の累積値R1を算出する。同様にして、1週間ごとに加速係数の累積値を算出する。平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断するタイミングが時間W(例えば、7月7日)である場合、経年劣化度推定部76は、時間W(例えば、7月7日)までの1週間ごとの加速係数の累積値Rxを算出する。経年劣化度推定部76は、1週間ごとの加速係数の累積値Rxを加算することで、
図13に実線で示すように、使い始めから時間Wまでの加速係数の累積グラフF(x)を作成する。この累積グラフF(x)は、平滑コンデンサ12の経年劣化度の加速係数を累積したグラフであるので、平滑コンデンサ12の経年劣化度を示している。季節によってエレベータ装置の利用頻度が異なるので、累積グラフF(x)の傾きは、一様ではない。
【0048】
経年劣化度判断部77は、経年劣化度推定部76が推定した時間Wにおける累積グラフF(x)の値F(W)が、閾値Thを超えたか否かを判断する(ステップS16)。経年劣化度判断部77は、F(W)の値が閾値Thを超えた場合(ステップS16:Yes)、平滑コンデンサ12が異常状態にあることを入出力装置93に出力する(ステップS19)。
【0049】
一方、F(W)の値が閾値Thを超えない場合(ステップS16:No)、経年劣化度推定部76は、平滑コンデンサ12の交換時期までの時間(余寿命時間)を計算する(ステップS17)。例えば、経年劣化度推定部76は、
図12に示すテーブルに基づいて
図13に点線で示す時間W(例えば、7月7日)以後のグラフを作成する。経年劣化度判断部77は、点線で示すグラフが閾値Thに至る時間Yを算出する。そして、経年劣化度判断部77は、現在の時間Wから時間Yまでの時間Tm(余寿命時間)を計算する。そして、経年劣化度判断部77は、平滑コンデンサ12を交換するまでの時間Tmを入出力装置93に出力する(ステップS18)。
【0050】
以上に説明したように、実施形態1に係るエレベータ制御装置は、トルク計測装置39で計測された開閉モータ41のトルクの時系列変化を示す波形データからコンバータ11のリップルノイズの振幅に係る情報を抽出し、抽出したリップルノイズの振幅に係る情報に基づいて駆動ユニット91に実装されている平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断する異常判断部72を有する。この構成により、実施形態1に係るエレベータ制御装置は、開閉モータ41を駆動する駆動ユニット91に実装されている平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断することができる。
【0051】
詳細には、実施形態1に係るエレベータ制御装置の異常判断部72は、トルク計測装置39で計測されたトルクの波形データから、駆動ユニット91の電源を構成するスイッチングレギュレータのスイッチング周波数の波形データを抽出することで、リップルノイズの振幅に係る情報(部分波形wn)を抽出する波形抽出部73と、波形抽出部73が抽出したリップルノイズの振幅に係る情報(部分波形wn)に基づいて、平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断する波形解析部74を有する。部分波形wnの振幅は、電源を構成するスイッチングレギュレータのリップルノイズの振幅と相関するので、実施形態1に係るエレベータ制御装置は、部分波形wnの振幅と閾値とを比較することで、平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断することができる。
【0052】
また、実施形態1に係るエレベータ制御装置は、コンバータ11から平滑コンデンサ12までの電流経路および平滑コンデンサ12からインバータ13までの電流経路に電流計を挿入することなく、平滑コンデンサ12の異常状態を検出できるので、駆動ユニット91(電源)の電源効率を低下させることがない。トルク計測装置39は、扉32に異物が挟まったこと等を検出するために既に実装されている。したがって、実施形態1に係るエレベータ制御装置は、平滑コンデンサ12の異常を検出するための専用の計測装置を用いないで平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断することができるので、製造コストを低減することができる。
【0053】
また、実施形態1に係るエレベータ制御装置の異常判断部72は、乗りかご31の扉32の開閉に伴う駆動ユニット91の発熱による温度上昇に基づいて平滑コンデンサ12の周囲の環境温度を推定し、推定した環境温度に基づいて平滑コンデンサ12の経年劣化度を推定する経年劣化度推定部76と、経年劣化度推定部76が推定した平滑コンデンサ12の経年劣化度が閾値を超えたか否かを判断する経年劣化度判断部77と、を有する。この構成により、実施形態1に係るエレベータ制御装置の異常判断部72は、乗りかご31の動作回数を反映した平滑コンデンサ12の経年劣化度を判断することができる。
【0054】
また、実施形態1に係るエレベータ制御装置の異常判断部72は、平滑コンデンサ12を交換するまでの余寿命時間を前もって通知する。これにより、保守者は、保守計画を立てやすくなる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、扉32を開閉駆動する開閉モータ41のトルクの波形データに基づいて平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断した。しかし、昇降モータ40のトルクの波形データに基づいて平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断してもよい。この場合、部分波形wfs1,wfs2の発生要因が、扉32を導くレールの歪等ではなく、ガイドレール21の歪等となる。部分波形wnの抽出および平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かの判断の仕方は同じである。
【0056】
また、上記の説明では、コンバータ11のリップルノイズの振幅により平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断する場合について説明した。このリップルノイズに、コンバータ11のスイッチング動作によって発生するサージ雑音を含めてもよい。平滑コンデンサ12の容量が低下するのに伴って、サージ雑音も増加するからである。サージ雑音を含めて平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かの判断を行う場合、サージを組めて領域の範囲を設定する。
【0057】
また、上記の説明では、充電回路14および放電回路15とを設ける場合について説明したが、これに限定されない。充電回路14および放電回路15を設けるか否かは任意である。
【0058】
また、上記の説明では、異常判断部72が、平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断する場合について説明した。しかし、コンバータ11のリップルノイズの振幅は、コンバータ11の平滑コンデンサ111(
図3参照)の容量の減少によっても増加する。したがって、異常判断部72によって平滑コンデンサ12が異常状態にあると判断された場合、コンバータ11の平滑コンデンサ111も異常状態にあると判断してもよい。
【0059】
また、上記の説明では、過去のデータに基づいて作成された
図12に示すテーブルに環境温度ごとの累積時間のデータが記憶されており、経年劣化度推定部76がテーブルに基づいて経年劣化度を推定する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、開閉モータ41の動作の実績値により、
図12に示すテーブルの累積時間の値が更新されてもよい。また、経年劣化度を示す指標として、加速係数を累積する場合について説明したが、経年劣化度を示す指標として他の指標を用いてもよい。
【0060】
また、上記の説明では、制御盤70をエレベータ制御装置として説明したが、制御ユニット80と駆動ユニット91とが別装置に実装されている場合、制御ユニット80をエレベータ制御装置としてもよい。
【0061】
(実施形態2)
実施形態1では、トルク計測装置39がコンバータ11から電力の供給を受けて開閉モータ41のトルクを計測する場合について説明した。実施形態2では、トルク計測装置39がインバータ13から電力の供給を受けて開閉モータ41のトルクを計測する場合について説明する。他の構成については、実施形態1と同じであるので、説明を省略する。
【0062】
実施形態2に係る駆動ユニット91のコンバータ11とインバータ13とは、異なるスイッチング周波数で動作する。コンバータ11は、コンバータ11に使用されている部品のバラツキ、温度変動、経年変化を考慮した場合、領域A1の周波数範囲でスイッチング周波数が変動するように設計されている。領域A1は、例えば、10kHz乃至30KHzである。インバータ13は、インバータ13に使用されている部品のバラツキ、温度変動、経年変化を考慮した場合、領域A2の周波数範囲でスイッチング周波数が変動するように設計されている。領域A2は、例えば、50kHz乃至100KHzである。インバータ13は、出力側に平滑コンデンサ131を有している(
図3参照)。
【0063】
図14は、トルクの波形データをフーリエ変換した例である。波形抽出部73は、コンバータ11のスイッチング周波数の領域A1に属するスペクトル成分と、インバータ13のスイッチング周波数の領域A2に属するスペクトル成分とを抽出する。
【0064】
波形解析部74は、領域A1の範囲で抽出されたスペクトル成分の中で最もパワーが大きいスペクトル成分のパワーを示す値Pm1が閾値Pth以上であるか否かを判断することで、平滑コンデンサ12が異常状態にあるか否かを判断する。波形解析部74は、最もパワーが大きいスペクトル成分のパワーを示す値Pm1が閾値Pth以上(正常範囲外)であると判断した場合、平滑コンデンサ12もしくは平滑コンデンサ111が異常状態にあることを入出力装置93に出力する。また、波形解析部74は、領域A2の範囲で抽出されたスペクトル成分の中で最もパワーが大きいスペクトル成分のパワーを示す値Pm2が閾値Pth以上であるか否かを判断することで、インバータ13の平滑コンデンサ131が異常状態にあるか否かを判断する。波形解析部74は、最もパワーが大きいスペクトル成分のパワーを示す値Pm2が閾値Pth以上(正常範囲外)であると判断した場合、平滑コンデンサ131が異常状態にあることを入出力装置93に出力する。
【0065】
以上に説明したように、実施形態2に係るエレベータ制御装置では、駆動ユニット91がスイッチング周波数の異なる複数のスイッチングレギュレータを含んで構成されている場合、波形抽出部73は、複数のスイッチングレギュレータそれぞれのスイッチング周波数に基づいて、複数のスイッチングレギュレータそれぞれのスイッチング動作に起因するリップルノイズの情報を抽出する。そして、波形解析部74は、複数のスイッチングレギュレータそれぞれの平滑コンデンサについて異常状態にあるか否かを判断する。実施形態2に係る異常判断部72は、平滑コンデンサ12もしくはコンバータ11の平滑コンデンサ111が異常状態にあるか、もしくは、インバータ13の平滑コンデンサ131が異常状態にあるか、を個別に判断することができる。
【0066】
なお、上記の説明では、昇降モータ40と開閉モータ41を駆動する駆動ユニット91を区別することなく説明したが、昇降モータ40を駆動する駆動ユニットAと開閉モータ41を駆動する駆動ユニットBとが個別に設けられていてもよい。この場合、駆動ユニットAを構成するスイッチングレギュレータのスイッチング周波数と駆動ユニットBを構成するスイッチングレギュレータのスイッチング周波数とを周波数領域を分けて設定することにより、どの電源の平滑コンデンサが異常状態にあるかを判断することができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 商用電源
10 エレベータ装置
11 コンバータ
12 平滑コンデンサ
13 インバータ
14 充電回路
15 放電回路
21~24 ガイドレール
31 乗りかご
31a 開口部
32 扉
36 操作パネル
39 トルク計測装置
40 昇降モータ
41 開閉モータ
42 プーリー
43 ワイヤ
44 ケーブル
50 カウンタウエイト
70 制御盤
71 駆動ユニット制御部
72 異常判断部
73 波形抽出部
74 波形解析部
76 経年劣化度推定部
77 経年劣化度判断部
80 制御ユニット
81 CPU
82 主記憶部
83 補助記憶部
84 インタフェース部
85 バス
91 駆動ユニット
93 入出力装置
100 昇降路
111、131 平滑コンデンサ