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特許7309837義肢ソケット、および義肢ソケットの内側円周のフィッティングを制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】義肢ソケット、および義肢ソケットの内側円周のフィッティングを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/60 20060101AFI20230710BHJP
   A61F 2/80 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A61F2/60
A61F2/80
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205105
(22)【出願日】2021-12-17
(62)【分割の表示】P 2018558749の分割
【原出願日】2017-05-08
(65)【公開番号】P2022046584
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】102016108631.2
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502220838
【氏名又は名称】オットーボック・エスイー・ウント・コンパニー・カーゲーアーアー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ビル
(72)【発明者】
【氏名】ラース・ベンヤミン・フィンケ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0225824(US,A1)
【文献】特表2010-534496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0071647(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0247353(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0116917(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0112911(US,A1)
【文献】米国特許第10092424(US,B2)
【文献】米国特許第10993819(US,B2)
【文献】国際公開第2012/054700(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/60
A61F 2/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
義肢ソケットにおいて、
a.近位の挿入開口部(3)、および断端を少なくとも部分的に包囲する内側円周と、
b.前記義肢ソケットに取付可能な義肢コンポーネントのための少なくとも1つの接合装置(4)と、
c.前記義肢ソケット(1)の内側円周を変更可能である少なくとも1つのアクチュエータ(41)とを有し、
前記義肢ソケット(1)は、弾性的な復帰力を通じて前記断端で保持され、前記アクチュエータ(41)は前記弾性的な復帰力に抗して前記義肢ソケット(1)の内周を拡大するように設けられていることを特徴とする、義肢ソケット。
【請求項2】
前記アクチュエータ(41)は手動式またはモータ式に駆動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の義肢ソケット。
【請求項3】
前記義肢ソケット(1)は前記断端をそれぞれの間に収容する少なくとも2つの支持部材(5,6,7,8)を有するように多部分で構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の義肢ソケット。
【請求項4】
前記支持部材(5,6,7,8)は弾性的に構成または支承されることを特徴とする、請求項3に記載の義肢ソケット。
【請求項5】
前記支持部材(5,6,7,8)は円周方向で互いにオーバーラップするように構成されることを特徴とする、請求項3または4に記載の義肢ソケット。
【請求項6】
前記義肢ソケットに前記アクチュエータにより変更可能な容積部が配置または構成され、これを通じて内側円周を変更可能であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の義肢ソケット。
【請求項7】
少なくとも1つの締付装置(11,12,13)が前記義肢ソケット(1)にその内側円周を変更するために配置されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の義肢ソケット。
【請求項8】
前記締付装置(11,12,13)は引張手段、空気圧式もしくは液圧式に駆動される拡張手段もしくは締付手段、長手方向スライド可能な拡張部材もしくは閉止部材、移動可能なリング、揺動部材、または代替可能な操作部材として構成されることを特徴とする、請求項7に記載の義肢ソケット。
【請求項9】
前記締付装置(11,12,13)は鳩目(21)の中、通路の中、および/または少なくとも1つの方向転換ロール(22)の周りで案内されることを特徴とする、請求項7または8に記載の義肢ソケット。
【請求項10】
複数の締付装置(11,12,13)は互いに独立して前記義肢ソケット(1)の近位・遠位方向に沿って配置されることを特徴とする、請求項7から9のいずれか1項に記載の義肢ソケット。
【請求項11】
少なくとも1つの前記締付装置(11,12,13)は前記断端の円周方向で作用することを特徴とする、請求項7から10のいずれか1項に記載の義肢ソケット。
【請求項12】
閉じた状態のとき前記断端に対して印加される圧着力(p)が近位方向に減少していくことを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の義肢ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近位の挿入開口部と、断端を少なくとも部分的に包囲する内側円周と、義肢ソケットに取付可能な義肢コンポーネントのための少なくとも1つの接合装置と、義肢ソケットの内側円周を変更可能である少なくとも1つのアクチュエータとを有する義肢ソケットに関する。同じく本発明は、このような義肢ソケットの内側円周のフィッティングを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
義肢ソケットは、たとえば切断端などの断端を収容する役目を果たすとともに、残存する四肢に他の義肢コンポーネントが確実に保持されることを保証する。断端への義肢ソケットの確実な固定を保証するために、さまざまな取付コンセプトが開発されている。1つのコンセプトは、実質的に閉じた、挿入開口部を備える形状安定的なスリーブを意図しており、その中へ義肢ライナーを付与された断端が挿入される。そして義肢ソケットが、負圧を通じてライナーに保持される。
【0003】
さらに別の選択肢の要諦は、義肢ソケット内部の収容部へ挿入されてそこで形状接合式にロックされる、たとえばピンなどの機械的なロック装置を義肢ライナーに装備することにある。これら両方の取付コンセプトに共通するのは、義肢ソケットの内側輪郭が、ライナーの追加分を含めた断端の外側輪郭にできる限り正確に対応しているのがよいことである。これを実現するために、断端の型が取られて断端の正原型が作成され、この原型を用いて、個別の義肢ソケットが通常は繊維強化プラスチックから製作される。
【0004】
このように円周方向で閉じたソケットの他、半径方向で調節可能なように施工された義肢ソケットも知られている。特許文献1は、遠位の端部片と、人工膝関節のための取付装置と、半径方向に締付可能なスリーブと、断端に合わせてスリーブの収容スペースをフィッティングするための締付装置とを有する義肢ソケットに関する。このスリーブは、支持フレームと結合されるとともに互いに区域的に重なり合う少なくとも2つのセグメントを有する。締付装置は、各セグメントを過伸長させる、調節装置によって作用長に関して調節可能である少なくとも1つのワイヤロープを有している。
【0005】
特許文献2は、柔軟な内側ソケットと、安定的な外側ソケットとを有する義肢ソケットに関するものであり、外側ソケットは遠位の端部片を有し、これを起点として、近位に向かって延びる、それぞれの間で中間スペースを形成するシェルセグメントが延びている。シェルセグメントは、弾性的な抵抗に抗して初期位置から旋回可能なように、遠位の端部片と結合されていてよい。それぞれのシェルセグメントの間に、相対的な旋回運動を制限する引張部材が、それぞれのシェルセグメントの間の中間スペースを橋渡しするために設けられていてよい。引張部材を通じての圧着力のフィッティングは行われず、引張部材は、シェルセグメントが互いに離れていく強すぎる外方旋回を防ぐにすぎない。
【0006】
特許文献3は、治療プログラムを有する矯正器に関する。この矯正器、特に腰椎矯正器は締付手段のための締付装置を有し、ならびにモータ式の駆動装置を有する。締付装置は、2つの矯正器セグメントを互いに近づくように変位させるか、または締付装置が締付けを解除して、印加される復帰力によりそれぞれの矯正器セグメントが互いに離反できるようになる。矯正器セグメントは腹領域で面ファスナーを介して相互に連結され、背領域には、矯正器を自動的に締め付けたり締付解除をする締付装置が配置される。締付けを測定するために圧力センサが矯正器に配置される。利用者の位置の変化も検知され、締付装置の締付けが自動的に適合化される。締付装置の周期的な締付けと緩和によって、マッサージ機能を提供することができる。
【0007】
特許文献4は、靴、姿勢矯正装置、リュックサック、被り物、または矯正器のためのモータ式の締付システムに関する。モータがたとえばケーブルやコードなどの締付手段を通じて所望の締付けを調整する。締付けは遠隔操作を通じて調整することができる。
【0008】
断端への、場合によりライナーへの義肢ソケットの固定は、特に、手動式の操作に関して制約のある、複数個所で処置を受けている患者にとって困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】ドイツ特許出願公開第102010019843A1号明細書
【文献】ドイツ特許出願公開第102006046928A1号明細書
【文献】国際公開第2013/191933A2号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0068838A1号明細書
【発明の概要】
【0010】
本発明の課題は、簡単な装着を可能にする義肢ソケットおよび方法を提供することにある。
【0011】
本発明によるとこの課題は、主請求項の構成要件を有する義肢ソケットによって解決され、ならびに、副請求項の構成要件を有する方法によって解決される。本発明の好ましい実施形態や発展例は、従属請求項、発明の詳細な説明、および図面に開示されている。
【0012】
近位の挿入開口部と、断端を少なくとも部分的に包囲する内側円周と、義肢ソケットに取付可能な義肢コンポーネントのための少なくとも1つの接合装置と、義肢ソケットの内側円周を変更可能である少なくとも1つのアクチュエータとを有する義肢ソケットは、制御装置と結合された少なくとも1つのセンサを意図しており、制御装置はアクチュエータと接続されるとともに、受信したセンサ信号に依存してこれを作動化または不作動化させる。
【0013】
義肢ソケットの内側円周を変更するためのアクチュエータを制御装置を介してセンサと結合し、受信されたセンサ信号に依存してアクチュエータが作動化または不作動化されるようにすることで、義肢ソケットまたは断端への義肢ソケットの当付け力の自動的な締付けまたは締付け解除が可能となり、それにより、たとえば導出や導入を簡易化して自動的な装着を可能にするために、義肢ソケットを開いたり閉じたりすることができる。これに加えて、断端の内部における容積変動を自動的または意図的に補償することが可能であり、それは、たとえば着用期間中に断端容積が増大している場合に、圧着力を下げるために内側円周が拡大されることによる。同様に、特別な負荷が検知された場合に、たとえばスポーツの場合に、内側円周を縮小して、断端への義肢ソケットのいっそうしっかりした当接を提供することが可能である。これに加えて、マッサージ効果を実現するために、内側円周の周期的な変更を行うことができる。たとえば座っている間の休止期が検知された場合には、内側円周を自動的に拡大することができる。このように、義肢ソケットの開放と閉止を自動的に行うことができる。
【0014】
アクチュエータは、ポンプ、スライド部材、レバー、引張手段のための巻付装置、拡張部材、伝動装置のための駆動装置として、形状記憶合金もしくは電場応答性高分子を活性化させるための駆動装置として、または切換可能な磁石として構成されていてよい。特にアクチュエータはモータとして構成されていてよく、たとえば、たとえばベルト、コード、テープ、ケーブル、または素線などの引張手段を有し、その有効長を拡大または縮小させ、それにより、義肢ソケットをその内側円周に関して変更する締付装置を駆動することができる。原則として、たとえばスイッチによってアクチュエータを手動で作動させることができ、または手動で制御することができることも意図され、それにより、制御装置やセンサが存在する必要がなくなる。少なくとも1つのアクチュエータはポンプを駆動することもでき、このポンプを通じて、義肢ソケットの表面または内部に配置または構成される変更可能な容積が変更される。たとえば義肢ソケットが閉じているとき、外面のリザーバに配置される圧縮空気または油圧液で充填することができる、内面に配置された容積部が存在していてよく、そのようにして内側円周を変更する。そのために義肢ソケットは、たとえば閉じた断面によって、または硬質の締付装置もしくは制限装置によって、たとえば固定的に設定された引張手段によって提供される受け部を必要とする。同様に、互いに相対的に変位可能な複数の支持部材を備える多部分からなる義肢ソケットの場合には、容積変更を通じて内側円周変更が具体化されることが可能である。このことは、変化する容積により、たとえば膨らませることにより、支持部材に変位力が印加されることで行うことができ、または、受け部に対して押圧をする容積部が充填されることで、あるいは内面での容積拡大によって行うことができる。同様に、たとえば、たとえばスライダが変位したときに起立して容積壁に対して押圧し、それによって容積部の容積変化を惹起する、リンク式に支承されたレバーや繊維を起立させることで、容積を機械的に拡大することが可能である。同様に、義肢ソケットの周囲に位置するリングが長手方向スライド可能に支承されることが可能である。義肢ソケットの円錐形の構成によって、または外面にあるリングガイドの円錐形の構成によって、多部分からなる義肢ソケットの部分である支持部材を長手方向スライドによって互いに近づくように変位させ、または互いに離れるように動かすことが可能である。それにより、内方を向く旋回または外方を向く拡張運動を具体化することができる。義肢ソケットの多部分からなる構成の他、これを一体的に構成し、場合によりオーバーラップする側辺を有するスリットを付与して、義肢断端の完全な包摂を可能にすると同時に、円周変化を可能にすることも可能である。このとき義肢ソケットは螺旋状に構成され、内側円周の変更は、両方の側辺の巻き角または重なり角が変更されることによって実現される。
【0015】
同様に、アクチュエータが切換可能な磁石として構成されることが可能であり、これを通じて機械式、磁性流体式、またはその他のコンポーネントの相応の位置調節を行うことができる。
【0016】
本発明の1つの変形例では、近位の挿入開口部と、断端を少なくとも部分的に包囲する内側円周と、義肢ソケットに取り付けられる義肢コンポーネントのための少なくとも1つの接合装置とを有する義肢ソケットが少なくとも1つのアクチュエータを有しており、これを通じて義肢ソケットの内側円周を拡大可能であることが意図される。アクチュエータは手動式またはモータ式に駆動可能であってよく、または駆動されていてよく、それにより、義肢ソケットの内側円周の拡大を、すなわち義肢ソケットの開放を、センサなしでも実行することが可能である。センサとの関連で円周拡大について上に行った説明は、このような義肢ソケットについて相応に当てはまるが、センサと制御装置が設けられている必要はない。モータ式の駆動は、義肢ソケットの内側円周を拡大するために、スイッチ、遠隔操作などによって義肢利用者により作動化または不作動化することができる。アクチュエータの手動式の操作または操作可能性は義肢ソケットの重量を低減させ、アクチュエータの手動式の調節または操作による内側円周の簡単な拡大を可能にする。
【0017】
特に、内側円周を拡大させるアクチュエータを有するこのような義肢ソケットは、弾性的な復帰力を通じて断端で保持される義肢ソケットで採用されることが意図される。弾性的な復帰力は義肢ソケット壁そのものによって、または支持部材によって形成される。同様に、支持部材または義肢ソケット壁の弾性的な支承により、弾性的な復帰力を断端へと向かう方向に、内側円周が縮小する方向に印加することができる。所望の内径は、義肢ソケットの開放の度合いによってアクチュエータにより調整されて実現される。開放は手動式にも、手動式に制御されるモータ式にも行うことができる。同様に、ソケット内での姿勢、位置、ソケットの位置、圧力、圧力の時間、圧力変化、酸素飽和度、血流、温度などの相応のセンサ値の検知後に、開放が自動的に行われることが可能である。開放の後に、特に完全な開放の後に、義肢ソケットを断端の上に引きつけ、すなわち断端を義肢ソケットに挿入することができる。開放のために印加された力の、たとえば相応に方向転換される引張力の減衰によって、または間隙に沿って移動する拡張部材によって、または円錐形に成形されたソケットに沿って移動するリングによって、断端に印加される当付け力が調整されて、ソケットが断端にフィッティングされる。このように、能動的な操作はソケットの開放の方向にのみ行われ、断端へと向かう方向の復帰、すなわち内側円周の縮小は、支持部材または義肢ソケット壁の弾性的な構成または支承によって受動的に行われる。
【0018】
義肢ソケットは、特に、断端をそれぞれの間に収容する少なくとも2つの支持部材を有するように多部分で構成され、支持部材は断端を全面的に取り囲むか、または、断端が義肢ソケットの中で固定的に収容されるように少なくとも部分的に包囲する。それぞれの支持部材が互いにオーバーラップするように構成されていてよい。
【0019】
少なくとも1つの締付装置が義肢ソケットに、その内側円周を変更するために配置されていてよい。締付装置は引張手段、空気圧式もしくは液圧式に駆動される拡張手段もしくは締付手段、長手方向スライド可能な拡張部材もしくは閉止部材、移動可能なリング、揺動部材、またはこれらに代替可能な操作部材として構成されていてよい。それぞれの締付手段はアクチュエータによって、場合により力伝達装置などの伝動装置を介在させた上で、作動化または不作動化される。
【0020】
たとえば締付装置の手動式またはモータ式の駆動装置としてのアクチュエータは、義肢ソケットの緊締を大幅に簡易化する。高いコストのかかる紐通し、締付装置の操作、機械式の取付装置のロックなどを手で行わなくてすむ。むしろモータ式のアクチュエータでは内側円周が、たとえば締付装置または変更可能な容積部または拡張装置を通じて、所望の締付けに合わせて調整され、手作業による力が消費される必要がない。
【0021】
少なくとも1つの締付装置はベルト、コード、テープ、ケーブル、もしくは素線として構成されていてよく、またはそのような締付部材を有することができる。原則として、引張力を伝達するあらゆる締付部材を有意義に適用可能であり、ロッド、締め金、リングなどの耐圧性の締付装置または締付部材なども含まれる。柔軟な締付装置は、変化する円周に合わせていっそう簡便にフィッティングすることができ、全体としていっそう容易に取扱可能であるという利点がある。非弾性的であるのが好ましい柔軟な締付装置の他、歯付きベルト、穴付きベルト、またはチェーンを締付装置または締付部材として利用することもできる。
【0022】
引張力を伝達する少なくとも1つの締付部材は、たとえばテークルに類似する力・ストローク変換を実現するために、鳩目の中、通路の中、および/または少なくとも1つの方向転換ロールの周りで案内されていてよい。柔軟な締付部材の方向転換によって、締付力の作用点を定義することができる。多数の方向転換ロールによって締付力を多重式に配分することができ、そのようにして均等な圧力分布を実現することができる。これに加えて方向転換ロールにより、ただ1つの締付装置を用いて締付力を複数の個所で印加することが可能であり、それによって部品数を減らすことができ、簡易化された組付けを具体化することができる。ソケットの内部にあってよい、たとえば支持部材にあってよい通路の内部での案内により、衣類その他の物品が締付装置と支持部材の間に挟み込まれるリスクが最小化される。同様に、締付部材の方向転換により義肢ソケットの拡張を惹起することが可能であり、それにより、操込みまたは巻付けによって内側円周拡大が惹起される。そのために締付部材は、巻き付けられていない自由端が取り付けられている取付個所の向こう側に位置する方向転換個所の周りを案内される。それにより、巻き付けられたときにたとえば1つ支持部材が他の支持部材から離れるように引っ張られる。
【0023】
複数のアクチュエータまたは締付装置が互いに独立して義肢ソケットの近位・遠位方向に沿って配置されていてよく、それにより、ソケット内側円周を変更することで、断端に対するさまざまな圧着力を互いに独立して調整することができる。
【0024】
少なくとも1つの締付装置は断端の円周方向に作用するように配置されるのが好ましく、そのようにして、断端に対して半径方向に作用する1つの支持部材または複数の支持部材の圧着力を惹起する。支持部材としてのソケット壁を有する義肢ソケットの一体的な構成では、締付装置は巻付けまたは重なり合いが増大するように作用し、それによって内側円周が縮小し、またその代替として、これと反対方向に運動すると内側円周が少なくとも部分領域で拡大され、それによりソケットが緩められ、または開放される。
【0025】
支持部材またはソケット壁そのものは弾性的に構成されていてよく、それにより、たとえば締付装置が締付解除されたときに復帰力を提供し、この復帰力によって、義肢ソケットが自動的に開き、そのようにして患者が義肢ソケットから容易に導出できることが可能になる。同様にしてこれとは逆に、断端に対して作用する初期応力がソケット壁または支持部材によって印加されていてよく、この初期応力が拡張装置により解消され、それによってソケットから導出し、または断端に作用する圧力を低減する。支持部材は、たとえばばね力に抗してリンク式に、端部片に弾性的に支承されていてもよい。同様に、支持部材が端部片と一体的に構成されており、義肢ソケットの閉止のために、または義肢ソケットの装着のために、互いに離れて位置している初期位置から互いに近づくように動かすことが可能である。
【0026】
できる限り均等に断端に対して作用するソケット壁または支持部材の圧着力を実現するために、これらは円周方向で互いにオーバーラップするように構成されていてよく、それにより、少なくとも義肢ソケットが当て付けられて締め付けられた状態のときに断端の周囲に全面的に当接し、いわば閉じた断面を形成する。それにより、内側円周が縮小されると、それぞれ支持部材の間の自由空間またはソケット壁の自由空間を通して断端の一部が押し出される。
【0027】
ソケット壁または支持部材は互いに離れる方向へばね力によって付勢されていてよく、または、締め付けられていない状態のとき近位方向で円錐形に拡張するように配置されていてよく、それにより、ソケットへの導入または断端への義肢ソケットの当接が簡易化される。このように締め付けられていない状態では、断端の挿入を容易にする漏斗状または円錐形に拡張する形状がもたらされる。義肢ソケットへの断端の挿入後に初めて、締付装置がアクチュエータを通じて締め付けられ、または拡張装置が引き戻され、それによって内側円周が縮小されて、たとえばばね力に抗して、または材料変形に基づく弾性的な復帰力に抗して、支持部材が互いに近づくように動き、そのようにして義肢ソケットが断端にしっかりと当接する。
【0028】
義肢ソケットには、挿入された断端を検知するために遠位の接触スイッチまたはセンサが配置されていてよい。遠位の接触スイッチまたは遠位のセンサは、断端が義肢ソケットへ完全に、または少なくとも所定の点まで挿入されたかどうかを検知する。接触スイッチまたはセンサが断端の相応の位置を検知したときに限り、内側円周を縮小するためにアクチュエータを自動的に作動化または不作動化させることができ、それにより、自動閉止式または自動当接式の義肢ソケットを具体化することができる。そして義肢ソケットが、断端の外側輪郭に合わせて自動的にフィッティングされる。遠位の接触スイッチまたはセンサは、断端の挿入空間の遠位の閉鎖部も形成する端部片に配置されるのが好ましいが、その上方に配置されていてもよい。
【0029】
本発明の1つの発展例は、支持部材によって断端に対して印加される圧力を検出するために、少なくとも1つのモータ電流センサまたは内側に位置する圧力センサがソケット壁または支持部材に配置されることを意図する。内側に位置する圧力センサは、断端への支持部材の圧着力を判定する。そのために、圧力センサを内側に、すなわち断端のほうを向いているソケット壁または支持部材の側に配置するのが有意義である。直接的な圧力測定の代替として、モータトルクと比例し、それに伴って締付装置が締め付けられる力または内側円周が縮小される力にも比例するモータ電流を、モータ電流センサを通じて測定することが可能であり意図される。それにより、断端への支持部材の圧着力またはソケット内圧を推定することができる。1つまたは複数のセンサを通じて、最適化された圧力分布およびこれに伴って断端への義肢ソケットの最適化された据え付けを実現することが可能である。特に、モータ式の駆動装置を作動化させる遠位の接触スイッチとの関連で、義肢ソケットへの断端の簡単な挿入後に、自動的な閉止または開放を実行することが可能である。圧力センサまたはモータ電流センサは断端への圧力を検出する。この圧力が設定値を超えると、またはこれに達すると、制御装置を通じて、締付装置のそれ以上の締付けまたは拡張の縮小がストップされる。このようにして義肢ソケットの導入時または当接時に、所定の圧着力が常に実現される。たとえば長時間の負荷や位置変化に基づく容積変化によってソケット内圧が変化すると、そのことが圧力センサまたはモータ電流センサを通じて検出される。その場合には、締付装置または拡張装置または内側円周を変化させるその他の装置を相応に緩めたり締めたりして、断端での容積増大や容積減少を補償することが可能である。
【0030】
複数の圧力センサが近位・遠位に配分されてソケット壁または少なくとも1つの支持部材に配置されていてよい。複数のモータの場合、複数のモータ電流センサが義肢ソケットに配置されていてよく、それにより、義肢ソケットの近位・遠位方向にわたって互いに独立してフィッティングされた圧力を調整可能である。圧力センサとモータ電流センサとを組み合わせて適用することもできる。さらに、酸素飽和度センサ、血流センサ、および/または温度センサを適用することができる。
【0031】
原則として、1つの締付装置または複数の締付装置はモータを通じて締め付けることが可能である。互いに独立して調整可能な締付装置の締付けが、義肢ソケットに配置された複数のモータを通じて行われるのが好ましい。1つのモータを用いて、互いに独立して反応する締付装置を位置調節することはできるが、締付装置の及ぼされる締付力は互いに独立しておらず、伝動装置を介して締付装置のそれぞれ異なる位置調節ストロークを具体化することはできるものの、ただ1つのモータの場合、これらの位置調節ストロークは互いに組み合わされている。複数のモータによって複数の締付装置の個別的な調整が可能であり、それにより、さまざまな圧力分布特性曲線、圧力パターン、あるいは着用中に交代する圧縮力を具体化することができる。
【0032】
義肢ソケットには、少なくとも1つのアクチュエータを、特にモータを、作動化および不作動化させるための少なくとも1つの制御装置が配置されていてよい。制御装置は、たとえばボタンを押すことに応じて開放機能または閉止機能を実行するために、スイッチによって直接的に、ジェスチャー制御によって、または遠隔操作によって制御可能であってよい。制御装置はこれ以外の信号を通じて、たとえば音響信号、運動パターン、あるいはその他の方式の遠隔操作を通じて作動化させることもできる。
【0033】
義肢ソケットまたはこれに接合される義肢コンポーネントには、制御装置と結合される少なくとも1つの位置角度センサ、角度センサ、加速度センサ、スイッチ、酸素飽和度センサ、血流センサ、温度センサ、および/または慣性センサが配置されていてよい。これらのセンサを通じて義肢の現在の使用条件を検出し、使用条件に依存して圧力のフィッティングを行うことができる。たとえば特別に高い活動性が検知されると、圧着力が強化されて締付装置が締め付けられ、それにより最善の保持を保証する。活動の休止時には圧着力を低減することができる。同様に、危険のある利用者については、たとえば糖尿病患者については、一定の時間後に圧着力を自動的に低減することが可能であり、それにより、高すぎる圧力が長すぎる時間にわたって断端に及ぼされるのを回避する。それによって特定の着用時間制限を具体化することができる。圧力の低減をたとえば光学式、音響式、または触覚式に表示または出力することができる。患者への応答メッセージシステムがソケットまたは別途のコンポーネントに、たとえばタブレット、携帯電話、表示部材、または警告装置などに存在していてよい。応答メッセージシステムはアプリ、ランプ、振動発生器などとして、応答メッセージを患者に出すことができる。断端に対する高すぎる圧力に関する、または長すぎる時間に関する応答メッセージは、特に部分的に痛覚の低下があり血管狭窄の高いリスクを抱える糖尿病患者にとって重要である。着席時にも圧着力を自動的に低減させることができ、義肢が再び使用されると、たとえば下肢の義肢の場合には起立と歩行がなされると、圧力が自動的に高められる。ソケット内の断端の位置を検出するために圧力センサまたは接触センサを利用することができ、後者はタッチスクリーンに類似する。
【0034】
設定された位置でのロックを機械的に惹起するために、アクチュエータまたは締付装置にラチェットまたは締付レバーが付属していてよい。
【0035】
さらに、たとえばアクチュエータやモータへのエネルギー供給が故障した場合に義肢ソケットの取外しを可能にするために、機械式のロック解除装置を義肢ソケットに配置することが可能である。閉じた状態のとき、圧力をかけるように印加される圧着力を近位方向に減少させていくことができ、それにより、断端の遠位領域での望ましくない血流停滞を回避する。
【0036】
本発明の1つの発展例では、義肢ソケットが3D印刷法で製作されることが意図される。端部片、存在している場合における支持部材、および/またはソケット壁が3D印刷法で製作される。
【0037】
同様に、義肢ソケットのその他のコンポーネントも3D印刷法で製作することができ、それはたとえば引張糸、ベルト、レバーなどの締付部材、締付部材を案内するための鳩目またはトンネル、ガイド、拡張部材、アクチュエータ、アクチュエータの収容部などである。それにより、多数のコンポーネントを義肢ソケットに統合することができる。
【0038】
上に説明したような義肢ソケットの内側円周のフィッティングを制御する方法は、断端の事前設定された位置が検知されたとき、たとえば義肢ソケット内部での特定の空間姿勢または特定の位置、および/または断端もしくは少なくとも1つのセンサに及ぼされる圧縮力が検知されたとき、アクチュエータが自動的に作動化または不作動化されることを意図する。締付装置がたとえば自動的にモータで締め付けられ、または締付解除される。それにより、義肢ソケットの装着と取外しが自動化されて簡易化される。
【0039】
本発明の1つの発展例は、規定された圧着力までのみ締付装置が締め付けられ、たとえば直接的な圧力センサまたはモータ電流センサによって、圧着力がセンサで監視されることを意図する。
【0040】
断端への支持部材の圧着力を検出することができ、活動性、時間量、義肢ソケットの位置、または圧着力変化に依存して圧着力が変更される。たとえばスポーツ時の強められた活動性によって義肢ソケットに対する高い加速度力が発生すると、圧着力を高めることができる。特定の圧着力が特定の時間帯にわたって印加されているときには、断端組織の損傷を回避するために、時間信号を通じて圧着力低減を開始することができる。義肢ソケットが特定の位置にあり、たとえば下肢の義肢ソケットの場合には水平方向の位置にあり、その位置が特定の時間帯にわたって維持されているときには、たとえば着席や横臥などの特定の活動性が推定されるので、圧着力の低減を行うことができる。たとえば容積拡大や容積縮小によって圧着力が閾値を超えて変化しているときには、いったん規定されたできる限り最適化された圧着力への近似を実現するために、同じく圧着力のフィッティングを実施することができる。
【0041】
義肢ソケットを開くために、アクチュエータによって支持部材を互いに離れるように変位させることができ、それにより、内側円周を拡大するために、アクチュエータによって義肢ソケットが能動的に開放される。同様のことは、義肢ソケット壁を有する実施形態でも行うことができ、それは、アクチュエータによってソケット壁が離れるように引っ張られ、離れるように動き、離れるように押圧され、または拡張され、それによって間隙が拡大し、または重なり合いが縮小することによる。その代替または補足として、円周変更をするために、支持部材またはソケット壁の弾性的な初期締付力に抗して作用する締付装置を締付解除することができる。このとき義肢ソケットは、支持部材、ソケット壁、またはその支承部の弾性的な挙動によって拡大し、内側円周が拡大する方向に向かって初期締付力で付勢されていてよい。
【0042】
その補足または代替として、義肢ソケットを閉じるために、または内側円周を縮小するために、支持部材または義肢ソケットのソケット壁がアクチュエータにより、またはその弾性的な挙動により、拡張した位置から、初期位置に比べて縮小した内側円周を有する締め付けられた位置へと相互に変位する。閉止は、閉止装置を操作して支持部材を互いに近づくように変位させる、またはソケット壁を閉じるように動かすアクチュエータによって能動的に行われる。このことは締付部材、少なくとも1つのスライダ、締め金、またはリングのスライドによって行うことができる。その代替または補足として、支持部材、ソケット壁、またはその支承部は、拡張力またはロックが消滅したときに内側円周が弾性的な挙動によって縮小するように弾性的に構成される。
【0043】
本発明の1つの変形例では、義肢ソケットの内側円周をフィッティングするために、たとえば支持部材がアクチュエータにより互いに離れるように変位することによって、ソケット壁が離れるように引っ張られることによって、または円周変更のために支持部材もしくはソケット壁の弾性的な初期応力に抗して作用する締付装置が締付解除されることによって、義肢ソケットが開かれることが意図される。このように、変化する内側円周を有する義肢ソケットの開放は手動式またはモータ式に、義肢ソケットのコンポーネントの、たとえば変位可能な支持部材の、互いに離れていく能動的な変位によって行われ、またはソケット壁が離れるように引っ張られることによって行われ、たとえば間隙の拡張によって、もしくは互いにオーバーラップするソケット壁の重なり角の低減によって行われる。同様に、円周変更のために締付装置が締付解除されることが可能であり、締付装置はソケット壁の支持部材の弾性的な初期応力に抗して作用する。このように、義肢ソケットの開放をセンサなしでも行うことができる。
【0044】
アクチュエータは拡張部材、引張手段、締付装置などを通じて、義肢ソケットの円周縮小をさせる方向に作用する初期応力に抗して能動的に作用するのが好ましい。ソケットは、支持部材またはソケット壁の弾性的な復帰力によって断端に保持される。必要な圧着力または保持力は復帰力によって印加される。圧着力または最善の内側円周の調整は、内方に向かって作用する初期応力に抗してのフィッティングされた開放によって、またはアクチュエータの追従によって惹起される。義肢ソケットが十分に、特に完全に開放されると、断端を内側円周に挿入することができ、引張力の低減、拡張部材の移動、またはロックの解消によって、ソケットが断端に復帰力によりフィッティングされて圧着される。義肢ソケットは能動的に開放され、復帰は初期応力によって受動的に行われる。
【0045】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施例について詳しく説明する。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】義肢ソケットを示す平面図と圧力分布特性曲線である。
図2】締付装置とモータを有する開いた義肢ソケットである。
図3図2の閉じた義肢ソケットである。
図4】複数の締付装置とモータとを有する開いた義肢ソケットである。
図5図4の閉じた義肢ソケットである。
図6】回路図である。
図7】ソケットを開くための装置を示す模式図である。
図8】義肢ソケットを閉じた位置で示す詳細図である。
図9】開いた位置で示す図8の機能原理である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1には、図示した実施例では大腿断端を収容するための大腿ソケットとして構成された義肢ソケット1が平面図で示されている。原則として、義肢ソケット1を下腿ソケットとして、または上肢のための義肢ソケットとして構成することも可能である。義肢ソケット1はその遠位端に、断端のための収容スペースの遠位の閉鎖部を形成する端部片2を有している。遠位の端部片2は近位の開口部3に向かい合う。義肢ソケット1は実質的に漏斗形に構成されており、図示しない断端を実質的に全周で取り囲んで下側の閉鎖部を形成し、それにより断端を、場合により断端に被されるライナーとともに、遠位の端部片2までのみ挿入可能である。
【0048】
遠位の端部片には他の義肢コンポーネントのための接合手段4が配置され、または取り付けられる。接合手段4は、たとえばピラミッドアダプタ、形状接合式の収容部、ねじ式収容部、ボルト、またはその他の装置であって、それにより他の義肢コンポーネントを義肢ソケット1に取り付けることができるものである。大腿ソケットとしての義肢ソケット1の実施例では、遠位の端部片2に人工膝関節が接合手段4を介して固定される。
【0049】
下腿ソケットとしての義肢ソケットの実施形態では、他の義肢コンポーネントとして義足または下腿管が接合手段4に固定され、前腕ソケットとしての実施形態では義手が固定される。
【0050】
端部片2は平坦なプレートとして、または皿状の収容部として、かつ義肢ソケット1の閉鎖部として構成されていてよい。たとえば金属、プラスチックなどからなる端部片2の好ましい形状安定的な実施形態の他、端部片2が柔軟に構成されていてもよい。端部片2には近位方向で支持部材5,6,7,8が後続し、これらは端部片2と一体的に構成されるか、または別個に製作されてこれに取り付けられる。支持部材5,6,7,8は、それぞれの間に収容スペースを形成し、その中に図示しない断端を挿入開口部3を通して挿入できるように配置される。支持部材5,6,7,8は断端を全面的に包囲する。支持部材5,6,7,8のセグメント式の構成に基づき、および端部片2への可動の支承または内在的な弾性に基づき、たとえば端部片2の領域での材料選択もしくは材料脆弱化に基づき、支持部材5,6,7,8を互いに離れるように、および互いに近づくように変位させることが可能であり、それにより義肢ソケットを拡張し、または挿入開口部3および収容スペースを縮小する。義肢ソケット1の内側円周は、アクチュエータの作動化または不作動化の結果としての支持部材の変位によって変更される。
【0051】
図示した実施例の義肢ソケット1の前面には3つの締付装置11,12,13が配置されており、これらを通じて少なくとも側方の支持部材6を中央の支持部材5に向かう方向へ変位させることができる。支持部材7は実質的に前面を向いており、さらに別の支持部材8はヒンジを用いて端部片2に固定されて、改善された前面支持のための役目を果たす。側方の支持部材6が別の支持部材8に取り付けられていることが可能である。
【0052】
締付装置または締付部材11,12,13は、図示した実施例では紐、ケーブル、またはコードとして構成され、同様に、図示しているワイヤ形状の締付装置11,12,13に代えて、これらがベルト形状で、またはロッド形状、チェーン形状、穴付きベルト形状、またはその他の引張手段形状で構成されることも可能である。重要なのは、支持装置を互いに近づくように変位させるために、すなわち引張力を印加するために締付装置が適していることであり、その際には締付装置11,12,13の柔軟かつ好ましくは非弾性的な構成に基づき、主として円運動の力が作用する。支持部材5,6,7,8の互いに近づく変位によって、義肢ソケットの内側円周が縮小される。
【0053】
締付装置11,12,13は、支持部材5,6の互いに向き合う縁部にある鳩目の中で案内されて、靴紐のような形式で配置されている。全体として、近位・遠位方向で互いにオフセットされて配置された3つの互いに独立する締付装置11,12,13が義肢ソケット1に配置されており、それにより、それぞれ異なる高さでそれぞれ異なる圧力が断端に及ぼされることが可能となる。
【0054】
締付装置11,12,13はアクチュエータを通じて、本実施例ではモータを通じて締付可能であり、そのために締付装置は、たとえば伝動装置を介してモータと結合されたロールに巻き付けられており、それにより、回転数の高い比較的小型のモータを使用することができ、このことは設計スペースと重量を削減する。図示しないモータが作動化すると、それぞれの締付装置11,12,13が巻き付けられ、支持装置5,6,7,8が互いに近づくように動いて、義肢ソケット1が断端の周りで閉止される。
【0055】
さらに義肢ソケット1には制御装置40が配置されており、これを通じて複数のアクチュエータもしくはモータが制御され、またはアクチュエータもしくはモータが1つしか使われない場合には1つのアクチュエータもしくはモータが制御される。制御装置40はアクチュエータと接続されている。さらに制御装置40はスイッチ45と接続されており、これを通じて義肢ソケット1の開放や閉止をスイッチオンすることができる。前面の支持部材7の近位の端部にあるスイッチ45による義肢ソケットの手動式の操作と作動化の他、収容スペースの遠位領域には接触センサ30が配置され、図示した実施例では収容スペースの遠位の端部領域に配置されている。接触センサ30に触れると信号が制御装置40に送られ、それにより、締付装置11,12,13を閉じるために、1つのアクチュエータ/モータまたは複数のアクチュエータ/モータの作動化が自動的に行われる。接触センサ30が単純なスイッチとして構成されていてもよい。
【0056】
少なくとも1つの支持部材5に沿って圧力センサ31,32,33が配置されており、これらを通じて支持部材5,6,7,8の圧着力が監視される。プリセットされた圧力に達すると、制御装置40を通じてそれぞれのアクチュエータが不作動化される。遠位の領域で高い圧力が印加され、近位方向に向かって減少していく、図1の右側のグラフに示すような圧力分布が調整されるのが好ましい。
【0057】
さらに、慣性センサ35が義肢ソケット1に取り付けられていてよい。慣性センサ35は空間における義肢ソケット1の姿勢を検出する。これを通じて、たとえば活動性レベルに関わるさまざまに異なる情報を得ることができ、それにより、そのつど検知された活動性に依存して、締付装置11,12,13の開放または閉止によって内側円周を変更することで圧着力の調節を行うことができる。
【0058】
たとえば重力などの固定的な基準量に対する向きを検知する図示した慣性センサ35または慣性角度センサの他、位置センサ、加速度センサ、またはその他のセンサが義肢ソケット1に配置されて制御ユニット40と結合されていてよく、それにより、これらを通じて現在の活動性に関する情報を取得する。同様に、時間切換装置が制御ユニット40に格納されていてよく、これを通じて締付装置11,12,13の時間制御式のフィッティングまたは締付解除を開始することができる。
【0059】
図2は、本発明の変形例を開いた状態の模式的な図で示している。同じ符号は同じコンポーネントを表す。図2から見て取れるように、両方の横の支持部材5,6が中央・側方に向かって開放回動しており、それにより、拡張された挿入開口部3が生じている。複数の別々の締付装置11,12,13に代えて、ただ1つの締付装置11がケーブルまたは紐の形態で義肢ソケット1の外側円周に配置されている。中断のないこの締付装置11は、近位・遠位方向でさまざまな平面または高さに配置された方向転換ロール22に沿って案内されている。締付装置11はホース状にメアンダをなすように方向転換ロール22の周りを案内され、モータの形態のアクチュエータ41が相応の回転方向で駆動されると、締付装置11がロール46に巻き付けられる。モータ41には、印加されるモータ電流を計測するモータ電流センサ44が付属している。モータ電流を通じて、締付装置11が締め付けられるモータトルクおよびこれに伴って力を検知することが可能である。締付装置11の締付力を通じて、断端に対する支持部材5,6,7,8の印加される圧着力を推定することができる。
【0060】
モータ電流センサ44の他、図示しない制御ユニット40のさらに別の測定値を伝送できるようにするために、前面の支持部材7の内側に圧力センサ31が配置されている。
【0061】
同じく中央および側方の支持部材5,6とオーバーラップするように端部片2に配置されている裏側の支持部材は図示しておらず、それによって図示しない断端の全面的な包囲がもたらされる。
【0062】
端部片2における収容スペースの底面に、遠位の接触センサ30が配置されている。支持部材5,6,7,8は外方に向かって初期応力をかけられ、または弾性的に構成されており、それにより、ロール46からの締付装置11の巻出しによる締付装置11の締付解除後に義肢ソケット1が開放される。
【0063】
図3は、図2の義肢ソケット1を閉じられた状態で示す。図示しない断端が挿入開口部3を通して収容スペースへ挿入されており、接触センサ30が作動化している。図示しない制御ユニット40の作動化信号に基づき、モータ41が作動を開始している。締付装置11がロール46に巻き付けられており、それは、モータ電流センサ44または圧力センサ31が信号を制御ユニット40に伝送するまで、所望の、またはプリセットされた限界圧力に達するまで行われる。制御ユニット40がモータ41をスイッチオフし、締付装置11を締付状態のままに保つ。締付装置11は中央の支持部材4に沿って垂直に近位・遠位方向へ案内され、支持部材5,6,7,8の下側の領域を前面側で横切り、方向転換ロール22によって方向転換させられ、それによりジグザグ状の配置またはジグザグ状の推移が中央の支持部材5と側方の支持部材6の間で生じている。近位の端部領域で、締付装置11は再び前面側で横切ってロール46と結合され、そこで巻き付けられる。モータ41への保持電流の恒常的な供給の他、機械式のロック装置が締付装置11に付属していることが可能であり意図され、それにより、モータ41を無通電に切り換えることができる。そしてロック解除をするために、機械式のロック装置をロック解除してモータ41を反対の回転方向に作動化させることができ、それによって義肢ソケット1を開く。
【0064】
図3の実施形態の変形例が図4に示されている。ただ1つのモータ41に代えて、3つのモータ41,42,43が近位・遠位方向にそれぞれ異なる高さで義肢ソケット1に固定されている。各々のモータが、締付装置11,12,13に付属する。モータ41,42,43のそれぞれの高さに、圧力センサ31,32,33が義肢ソケット1の内面で収容スペースに配置されており、図示した実施例では前面の支持部材7に配置されている。圧力センサ31,32,33がこれ以外の支持部材5,6,7,8に配置されていてもよく、同様に、複数のセンサ31,32,33が各々の支持部材5,6,7,8に配置されていてよく、同様に、センサがそれぞれ異なる高さで異なる支持部材に配置されていてよい。同様に、複数のセンサに追加して、複数のモータ電流センサがそれぞれのモータ41,42,43に付属することが可能である。
【0065】
すべてのモータ41,42,43が図示しない制御ユニット40と接続される。センサ30または接触スイッチ30が作動化すると、モータ41,42,43が作動化して、締付装置11,12,13がたとえばモータシャフトに巻き付けられるようになっている。
【0066】
図5には、モータ41,42,43が締付装置11,12,13を締め付けた後の閉じた状態が示されている。それぞれのセンサ31,32,33が所定の圧着力を表示するまで、支持部材5,6,7,8が互いに近づくように動いている。そしてモータ41,42,43が相応にスイッチオフされて、義肢ソケット1が閉じられる。
【0067】
図6は、モータ制御のスキーム図を示す。制御ユニット40は1つのモータ41または複数のモータと接続されている。遠位のソケットスイッチ30、手動スイッチ45、1つまたは複数の圧力センサ31、および慣性センサ35が同様に制御ユニット40と接続されている。これ以外のセンサやスイッチも、同じく制御ユニット40と接続されていてよい。各センサによる情報またはスイッチによるコマンドに基づいて制御ユニット40がモータを作動化させて、それぞれ付属の締付装置を締め付けたり締付解除する。
【0068】
本発明による義肢ソケットは、1つまたは複数の締付装置と、たとえば1つの紐システムまたは複数の紐システムと接続された1つのアクチュエータまたは複数のアクチュエータの相応の作動化または不作動化によって、自動式の開放と閉止を可能にする。巻き付けられたり巻き出されたりする引張手段の操作に代えて、センサデータを踏まえた内側円周変化を惹起するために、レバー、ピニオンとラック、スライダ、スピンドル、ウェッジエクスパンション、リング、締め金などの別の作用部材をアクチュエータが操作して変位させることもできる。互いに変位可能な複数の支持部材を含む義肢ソケットの多部分からなる構成の他、義肢ソケットは、スリットを有する、または松明に類似して螺旋状に巻き付けられた、ただ1つの一体的なソケット壁を有するように構成されていてもよい。円錐形の構成の場合、義肢ソケットの開放または閉止は、ソケットの長手方向に沿ったリングまたは締め金のスライドによって行うことができる。内側円周を変更するためのこれ以外の方策は、すでに上で述べたとおりである。この義肢ソケットは、特に、断端容積に変動が生じたときや相違する断端でも、断端に合わせた義肢ソケットの正しいフィッティングが行えるという利点を有する。したがって、個別に型取りされた義肢断端を準備することは必要なくなる。基本状態のとき義肢ソケットは開いており、すなわち、それぞれの支持部材がチューリップ状に開いている。遠位のソケットスイッチが作動化されると、断端へのソケット壁または支持部材のプリセットされた標準圧着力に達するまで、1つのアクチュエータまたは複数のアクチュエータが作動し、このとき遠位のスイッチは接触スイッチ、プッシュスイッチ、機械式のスイッチ、または近接スイッチとして構成されていてよい。この標準モードのときに、たとえば下肢の装具の場合には歩いたり階段を上るなど、通常の活動を実行可能である。
【0069】
たとえば義肢ソケットまたは義肢に配置された加速度センサによって高い加速度が特定の時間帯にわたって検知されると、制御ユニットを通じて1つまたは複数のアクチュエータが作動化され、それにより内側円周を縮小し、場合により1つの締付装置または複数の締付装置を再締付けする。この変更プロセスまたは締付プロセスは、たとえばスポーツ時などに検知される負荷モードについて適当と考えられる、プリセットされた圧着力に達するまで継続される。
【0070】
高い加速度または力が検知されなくなり、特別な負荷の非存在が特定の時間帯にわたって確認されるとただちに、標準圧力に再び達するまで締付装置が解除され、容積が低減され、磁石が作動化または不作動化され、形状記憶合金が作動化または不作動化され、あるいはその他の変更が行われることによって、圧着力が低減される。義肢ソケットは、支持部材またはソケット壁に内在する弾性に基づいて、または、たとえば義肢ソケットを断端から離れるように力で付勢するばねなどの別個の復帰装置に基づいて開く。
【0071】
また、特別に低い負荷が検知されたときも、あるいは、たとえば断端内部での容積増大に基づき、義肢または義肢ソケットの内部の高い加速度値によって引き起こされるのではない圧着力上昇が検知されたときも、1つのアクチュエータまたは複数のアクチュエータが標準モードから締付装置または内側円周を変更するその他の手段を締付解除し、それにより義肢ソケットは、拡大された内側円周に基づいて低い圧着力を有する締付解除モードになる。このことは、たとえば着席しているときや横臥しているときに起こり得る。そのような状態を加速度センサ、位置センサ、および慣性センサを通じて検知することができる。たとえば加速度センサを通じて運動開始が検知されると、標準圧力に達するまで、複数のモータまたは1つのモータが1つの締付装置または複数の締付装置を再び締め付け、または膨らませることが可能なクッションの容積をポンプが変化させる。圧着力を再び圧力センサを通じて、またはモータ電流センサもしくはその他のセンサを通じて間接的に判定することができる。
【0072】
義肢ソケットを開くために、場合により、1つの締付装置または複数の締付装置を最大限に締付解除する、または最大限の内側円周拡大のためにアクチュエータを作動化させる、手動式のスイッチが操作される。複数のアクチュエータ/モータおよび/または1つのアクチュエータ/モータが故障したときのために、機械式のロック解除装置が設けられていてよく、これを通じて締付装置を完全に締付解除することができ、または内側円周を拡大させることができ、それにより義肢ソケットからの導出を可能にする。
【0073】
断端または四肢が完全に挿入されたことが遠位の1つのソケットセンサまたは複数のソケットセンサを通じて表示されると、ただちに義肢ソケットが閉じられるのが好ましい。閉止装置の自動的な作動化の代替または補足として、別個の閉止ボタン、磁気スイッチ、スマートフォン、タブレット、遠隔操作などを通じてソケットを閉じることができ、そのために制御ユニットは受信モジュールまたはスイッチとの相応の接触部と接続される。義肢ソケットを開閉するために、音声制御が同じく意図されていてよい。
【0074】
それぞれの締付装置の交互の締付と締付解除によって、収容されている断端のためのマッサージ作用を提供することができ、このことは義肢利用者にとって快適であり得る。
【0075】
活動性を踏まえた上でのフィッティングの他、断端組織の望ましくない押圧個所や損傷を回避するために、締付装置の締付または締付解除を時間プログラムの枠内で行うことができる。そのつどの活動性を検出するためのセンサは、義肢ソケットだけでなく、これに接合される義肢装置にも配置されていてよく、そこにあるセンサ、たとえば慣性角度センサ、加速度センサ、ジャイロスコープ、または角度センサは、たとえば締付装置の締付や締付解除によって、内側円周のフィッティングされた変更を惹起するために利用することができる。
【0076】
図7は、3つの支持部材5,6,7を有し、そのうちそれぞれ2つが互いにオーバーラップするように配置された義肢ソケット1の模式図を詳細図として示す。支持部材5,6は、収容されるべき断端の、または義肢ライナーとともに収容されるべき断端の、外側円周よりも小さい義肢ソケットの内側円周を構成するように配置されている。このことは、断端に向かう方向への支持部材5,6の変位を惹起する相応の予備変形によって、または初期応力によって惹起することができる。これは、たとえば端部片にリンク式に支承された支持部材5,6を図示しない断端に向かう方向へ変位させる、または初期応力をかけるばね力であってよい。第3の支持部材7には、ケーブルの形態の締付部材11が取り付けられたロール46と結合されたモータの形態のアクチュエータ41が配置されている。同様に、アクチュエータ41が取り付けられた支持部材7には、ロール46の互いに向き合う側に位置決めされた1組の方向転換部材22が配置されている。ケーブル11はロール46に取り付けられるとともに、方向転換部材または方向転換ロール52の周囲を案内されており、ロール46に取り付けられていないケーブル11の自由端は、ロール46に向かう方向へ再び戻るように案内されている。このように、ケーブル11の案内はU字型である。それぞれの自由端が、それぞれの方向転換ロール22を覆う支持部材5,6に取り付けられている。義肢ソケットが2つの支持部材だけで構成される場合、すなわちソケット壁との間に第2の支持部材7で覆われる間隙またはスリットが構成される場合、自由端は、ロール46の両側の互いに向き合うエッジの領域でそれぞれ固定される。
【0077】
図8は、図7の拡張装置の構造を開いていない状態で示す。ケーブル11は、互いに間隔をおいて配置された両方の方向転換ロール22の周りで反対方向に案内されて、再び両方の変位可能な支持部材5,6のエッジへと戻るように案内される。そこでケーブル11の自由端が、それぞれ取付個所で取り付けられている。ケーブル11は最大限巻き出されており、すなわち、支持部材5,6は互いに近づくように最大限動いており、それにより、義肢ソケットの最小の内側円周が生じている。そして内側円周を広げたいときは、モータの形態のアクチュエータ41が作動化され、その様子が図9に示されている。アクチュエータ41の作動によってロール46が回転し、ケーブル11が巻き付けられ、ケーブル11の自由端を有する取付個所がそれぞれの方向転換ロール22に向かう方向へ引っ張られる。それにより、両方の支持部材5,6の間の間隙もしくは間隔が拡大し、または義肢ソケット壁の間隙が拡大し、それによって内側円周が拡大されて、義肢ソケットへの導入が簡易化され、または導出が簡易化もしくは可能化される。義肢ソケット1を閉じるには、これと逆の運動がアクチュエータ41によって惹起され、ケーブル11が巻き出されて、両方の支持部材5,6が図9の矢印と反対方向へ再び近づくように動く。それにより内側円周が縮小され、義肢ソケットの内部に配置された断端に対する圧力が上昇し、改善された適合形状が実現される。
【0078】
原則として、上に説明した各実施例をセンサなしで、かつ制御装置なしで機能させて作動させることが可能であり意図され、このときアクチュエータ41はモータ式または手動式に操作される。特に、モータの作動化による、またはたとえばラック、スライダ、ねじ山、ロールのようなアクチュエータ、もしくはリングや締め金のような拡張部材の位置調節部材の手動式の操作による、センサと制御装置なしでの手動式またはモータ式の開放が、内側円周を拡大することを可能にする。復帰は、開いた義肢ソケットに印加される弾性的な復帰力によって行われるのが好ましい。センサのない実施形態は1つの独立した解決法であり発明である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 義肢ソケットにおいて、
a.近位の挿入開口部(3)、および断端を少なくとも部分的に包囲する内側円周と、 b.前記義肢ソケットに取付可能な義肢コンポーネントのための少なくとも1つの接合装置(4)と、
c.前記義肢ソケットの内側円周を変更可能である少なくとも1つのアクチュエータと、
d.制御装置(40)と結合された少なくとも1つのセンサ(30~35)とを有しており、前記制御装置(40)は前記アクチュエータと接続されて、受信されたセンサ信号に依存してこれを作動化または不作動化させる、義肢ソケット。
[2] 前記アクチュエータはポンプ、スライド部材、レバー、引張手段のための巻付装置、拡張部材、伝動装置、形状記憶合金もしくは電場応答性高分子を活性化させるための駆動装置として、または切換可能な磁石として構成されることを特徴とする、[1]に記載の義肢ソケット。
[3] 前記義肢ソケット(1)の遠位の端部領域には挿入された断端を検知するためのスイッチ、接触スイッチ、またはセンサが配置されることを特徴とする、[1]または[2]に記載の義肢ソケット。
[4] 支持部材(5,6,7,8)により断端に印加される圧力を検出するために少なくとも1つの内側に位置する圧力センサ(31,32,33)および/またはモータ電流センサ(44)が支持部材(5,6,7,8)に配置されることを特徴とする、[1]から[3]のいずれか1項に記載の義肢ソケット。
[5] 前記制御装置はスイッチにより直接的に、ジェスチャー制御により、または遠隔制御により制御可能であることを特徴とする、[1]から[4]のいずれか1項に記載の義肢ソケット。
[6] 少なくとも1つの前記センサは位置センサ、角度センサ、加速度センサ、慣性センサ、圧力センサ、またはスイッチとして構成されることを特徴とする、[1]から[5]のいずれか1項に記載の義肢ソケット。
[7] 義肢ソケットにおいて、
a.近位の挿入開口部(3)、および断端を少なくとも部分的に包囲する内側円周と、 b.前記義肢ソケットに取付可能な義肢コンポーネントのための少なくとも1つの接合装置(4)と、
c.前記義肢ソケットの内側円周を変更可能である少なくとも1つのアクチュエータとを有している義肢ソケット。
[8] 前記アクチュエータは手動式またはモータ式に駆動可能であることを特徴とする、[7]に記載の義肢ソケット。
[9] 前記義肢ソケットは断端をそれぞれの間に収容する少なくとも2つの支持部材(5,6,7,8)を有するように多部分で構成されることを特徴とする、[1]から[8]のいずれか1項に記載の義肢ソケット。
[10] 前記支持部材(5,6,7,8)は弾性的に構成または支承されることを特徴とする、[9]に記載の義肢ソケット。
[11] 前記支持部材(5,6,7,8)は円周方向で互いにオーバーラップするように構成されることを特徴とする、[9]または[10]に記載の義肢ソケット。
[12] 前記義肢ソケットに前記アクチュエータにより変更可能な容積部が配置または構成され、これを通じて内側円周を変更可能であることを特徴とする、[1]から[11]のいずれか1項に記載の義肢ソケット。
[13] 少なくとも1つの締付装置(11,12,13)が前記義肢ソケット(1)にその内側円周を変更するために配置されることを特徴とする、[1]から[12]のいずれか1項に記載の義肢ソケット。
[14] 前記締付装置(11,12,13)は引張手段、空気圧式もしくは液圧式に駆動される拡張手段もしくは締付手段、長手方向スライド可能な拡張部材もしくは閉止部材、移動可能なリング、揺動部材、または代替可能な操作部材として構成されることを特徴とする、[13]に記載の義肢ソケット。
[15] 前記締付装置(11,12,13)は鳩目(21)の中、通路の中、および/または少なくとも1つの方向転換ロール(22)の周りで案内されることを特徴とする、[13]または[14]に記載の義肢ソケット。
[16] 複数の締付装置(11,12,13)は互いに独立して前記義肢ソケット(1)の近位・遠位方向に沿って配置されることを特徴とする、[13]から[15]のいずれか1項に記載の義肢ソケット。
[17] 少なくとも1つの前記締付装置(11,12,13)は断端の円周方向で作用することを特徴とする、[13]から[16]のいずれか1項に記載の義肢ソケット。 [18] 閉じた状態のとき断端に対して印加される圧着力(p)が近位方向に減少していくことを特徴とする、[1]から[17]のいずれか1項に記載の義肢ソケット。 [19] [1]から[6]、および[1]から[6]のうちいずれか1項を引用する[9]から[18]のいずれか1項に記載の義肢ソケットの内側円周のフィッティングを制御する方法において、断端の事前設定された位置および/または断端に及ぼされる圧縮力が少なくとも1つのセンサによって検知されたときに自動的にアクチュエータが作動化または不作動化されることを特徴とする方法。
[20] 前記義肢ソケット(1)を開くために支持部材(5,6,7,8)が前記アクチュエータ(41)によって互いに離れるように変位し、ソケット壁が離れるように引っ張られ、または円周変更のために前記支持部材(5,6,7,8)もしくは前記ソケット壁の弾性的な初期応力に抗して作用する締付装置(11,12,13)が締付解除されることを特徴とする、[19]に記載の方法。
[21] 前記義肢ソケット(1)の支持部材(5,6,7,8)またはソケット壁が前記アクチュエータ(41)によって、またはその弾性的な挙動によって、拡張した位置から、初期位置に比べて縮小した内側円周を有する締め付けられる位置へと互いに近づくように変位することを特徴とする、[19]または[20]に記載の方法。
[22] 義肢ソケットの内側円周をフィッティングする方法において、前記義肢ソケット(1)を開くために支持部材(5,6,7,8)がアクチュエータ(41)によって互いに離れるように変位し、ソケット壁が離れるように引っ張られ、または円周変更のために前記支持部材(5,6,7,8)もしくは前記ソケット壁の弾性的な初期応力に抗して作用する締付装置(11,12,13)が締付解除されることを特徴とする方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9