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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】自動装置のための拡張装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
G05B19/05 F
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021527251
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2019079381
(87)【国際公開番号】W WO2020104141
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】18208144.8
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】クラウセン,ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】ドレウス,ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】フランク,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】マッハー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ソレール ガリード,ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】トーン,インゴ
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-46873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/04 -19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業システム(100)の自動装置(DEV)のための、1つ以上の計算処理(C1,…,Cn)を可能にし及び/又は加速する拡張装置(MI)であって、
当該拡張装置(MI)は、少なくともバックプレーン通信により又は前記産業システム(100)のバスシステムを通して、前記自動装置(DEV)と接続され、
前記1つ以上の計算処理(C1,…,Cn)の1つ以上の結果(R1,…,Rn)を得て(S2)、当該結果(R1,…,Rn)は前記産業システム(100)の1以上の状態(S1,…,Sn)を表し、
前記産業システム(100)を監視し及び/又は制御する前記自動装置(DEV)と共有するプロセス状態モデル(PM)を介して前記1つ以上の結果(R1,…,Rn)を提供する(S3)ように作動する、拡張装置(MI)。
【請求項2】
当該拡張装置(MI)は、1つ以上の人工ニューラルネットワークを計算処理するように構成されたニューラル処理ユニットである、請求項1に記載の拡張装置(MI)。
【請求項3】
前記計算処理(C1,…,Cn)の中間結果及び/又は前記1つ以上の状態(S1,…,Sn)にロジックを適用するように作動する、請求項1又は2に記載の拡張装置(MI)。
【請求項4】
前記プロセス状態モデル(PM)の少なくとも一部を前記1つ以上の結果(R1,…,Rn)で更新するように作動する、請求項1~3のいずれか1項に記載の拡張装置(MI)。
【請求項5】
前記計算処理(C1,…,Cn)を実行するように構成された処理ユニット(PU)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の拡張装置(MI)。
【請求項6】
前記計算処理(C1,…,Cn)の少なくとも一部をSIMDアーキテクチャで実行するように構成された処理ユニット(PU)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の拡張装置(MI)。
【請求項7】
ニューラルネットワーク加速アーキテクチャに基づく処理ユニット(PU)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の拡張装置(MI)。
【請求項8】
0.1以上のTOPS/ワットで前記計算処理(C1,…,Cn)を提供するように構成された処理ユニット(PU)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の拡張装置(MI)。
【請求項9】
前記プロセス状態モデル(PM)を介して産業データ(DATA)を取得するように作動する、請求項1~8のいずれか1項に記載の拡張装置(MI)。
【請求項10】
前記プロセス状態モデル(PM)を介して前記自動装置(DEV)からデータ(ID)を検索し及び/又は提供するように構成された制御ユニット(CU)を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の拡張装置(MI)。
【請求項11】
前記自動装置(DEV)と当該拡張装置(MI)との間で前記プロセス状態モデル(PM)の少なくとも一部を交換するように作動する通信インターフェイス(CI)を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の拡張装置(MI)。
【請求項12】
前記プロセス状態モデル(PM)が、前記自動装置(DEV)の入力及び/又は出力の状態表現を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の拡張装置(MI)。
【請求項13】
当該拡張装置(MI)に接続されるデータソース(DS)への接続機能を提供するように作動する周辺接続システム(PS)をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の拡張装置(MI)。
【請求項14】
1つ以上の自動装置(DEV)を含むと共に請求項1~13のいずれか1項に記載の拡張装置(MI)を1つ以上含むシステム(10)であって、
前記自動装置(DEV)のうちの少なくとも1つが、1つ以上の前記拡張装置(MI)によって実行される1つ以上の計算処理(C1,…,Cn)の1つ以上の結果(R1,…,Rn)に従って産業システム(100)を監視し及び/又は制御するように作動し、前記1つ以上の結果(R1,…,Rn)は、プロセス状態モデル(PM)を介して前記自動装置(DEV)に提供される、システム(10)。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の拡張装置(MI)の1つ以上によって実行される1つ以上の計算処理(C1,…,Cn)の1つ以上の結果(R1,…,Rn)に基づいて産業システム(100)を制御するように作動する自動装置(DEV)であって、
前記1つ以上の結果(R1,…,Rn)がプロセス状態モデル(PM)を介して当該自動装置(DEV)に提供される、自動装置(DEV)。
【請求項16】
産業システム(100)において計算処理(C1,…,Cn)の結果(R1,…,Rn)を提供する方法であって、
拡張装置(MI)によって、1つ以上の計算処理(C1,…,Cn)の1つ以上の結果(R1,…,Rn)を得る過程(S2)と、
前記産業システム(100)を監視し及び/又は制御する自動装置(DEV)と共有するプロセス状態モデル(PM)を介して前記1つ以上の結果(R1,…,Rn)を提供する過程(S3)とを含み、
前記拡張装置(MI)は、少なくともバックプレーン通信により又は前記産業システム(100)のバスシステムを通して、前記自動装置(DEV)と接続してあり、
前記結果(R1,…,Rn)は、前記産業システム(100)の1以上の状態(S1,…,Sn)を表す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業システムの1つ以上の自動装置のための拡張装置に関する。本発明は、とりわけ、1つ以上の人工ニューラルネットワークに基づいてデータ処理を実行することができる産業データ処理ユニットに関する。本発明は、システム、自動装置、及び方法にも関係する。
【背景技術】
【0002】
AI技術(人工知能技術、機械知能としても知られる)の信頼性が高まり、産業システムでの応用が一般化する中、産業用AI機器への要求が高まっている。プログラマブルロジックコントローラ(PLCとしても知られる)などの標準的自動装置には、AI技術に必要な計算能力がない。クラウドベースのAIソリューションを利用可能であるが、現場ソリューションに実装するのは容易ではない。つまり、クラウドベースのAIソリューションの結果は、現場で容易に利用可能ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、産業システムの又は産業システムにおける1つ以上の計算処理を可能にし及び/又は加速することを目的とし、それによって、産業システムへの人工知能の統合を容易にする。本発明は、人工知能を使用してデータを処理することができる拡張装置と自動装置との間のデータ交換を簡単にするという別の目的ももつ。計算処理は計算(計算式)からなり得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は拡張装置によって解決され、この拡張装置は、システムの1以上の状態を表す1つ以上の計算処理の1つ以上の結果を得るように作動する。さらに拡張装置は、産業システムを監視し及び/又は制御する自動装置と共有するプロセス状態モデルを介して1つ以上の結果を提供するように作動する。その制御には、実際の開ループ又は閉ループ制御、設定値、制限値の変更、産業プロセスの停止、開始、一時停止、又は更新が含まれるが、これらに限定されない。
【0005】
拡張装置は、例えばPLCである自動装置の隣に(例えばプロファイルレールに)取り付けることができる物理モジュールとすることができる。拡張装置は、既存の自動装置用のプラグインモジュールとして構築することもできる。拡張装置を自動装置に集積することも可能で、例えばプラグインソリューションや直接のハードウェア集積で可能である。
【0006】
計算処理は、例えば、人工ニューラルネットワーク(ANN)とも呼ばれるニューラルネットワークの計算処理及び/又は計算である。
【0007】
結果は、例えばアプリケーションの計算処理の結果であり、この計算処理は産業システムに直接的又は間接的に由来するデータに対して実行される。この結果には、産業システムで起きた事象あるいは起こりそうな事象の分類が含まれる(ただし、これらに限定されない)。一例をあげると、このような事象は、例えば生産ラインやプロセスオートメーションラインで使用されるセンサ及び作用機器のデータに現れる異常なパターンである。異常パターンをもって生産された製品を示す品質指標を算出することもできる。異常パターンは、実際に事象が発生する前に障害又は低品質を示し得る。
【0008】
産業システムは、例えば、プロセス産業システム、オートメーション産業システム、ビルディングオートメーションシステムなど、専門的産業環境で使用されるものとして理解されるべきである。
【0009】
産業システムの1以上の状態は、例えば、システム全体の1つ以上の全体的指標や、自動コントローラ、入出力デバイス、センサ、作用機器など単一のエンティティの1つ以上の指標、又は、1つ以上のエンティティグループの状態である。この状態は、次のうちの少なくとも1つに基づいた、値又は他のパラメータであり得る:1つ以上の検知データ、1つ以上の予測データ、又は1つ以上の計算データ。データは、これによって、記述されたエンティティの状態を表し得る。例をあげると、モータが、回転速度、トルク、温度、電流、電圧、健全状態、稼働時間、保守指標のうちの1以上の状態を含んだ作用機器である。これらの状態の各々は、より詳細な状態に細分することが可能であり、例えば温度は、ロータ温度、ステータ温度、又はモータ全体の温度の中央値とし得る。また、状態は、産業システムで生産される製品の状態、例えば、品質指標でもあり得る。可能な態様において、状態のいずれかはバイナリで、例えば、「1」の場合、製品は全品質要件を満たしているとして認定され、「0」の場合、製品は次のプロセスへ進められないと認定され、したがって廃棄又は修復しなければならない。
【0010】
プロセス状態モデルは、概して言えば、自動装置と拡張装置との間で共有されるデータ構造であり、拡張装置から提供される結果を自動装置が直接使用することを可能にする。プロセス状態モデルは、好ましくは、産業システムを制御し及び/又は監視する自動装置によって使用される、1以上の、好ましくは全ての、現在の状態の実際表現を含む。一つの態様において、プロセス状態モデルは、入力及び出力デバイスの二進表現を表す。プロセス状態モデルの一形態は、PLCで一般的に使用され知られているプロセスイメージ(又はドイツ語で「Prozessabbild」)として知られている。プロセス状態モデルは、産業システムを制御し及び/又は監視するために必要とされる状態に関する中間ストレージとして機能する。これには、プログラムで特定の機能を実行するときに、入力及び/又は出力をレジスタから読み出したりレジスタに書き込んだりする必要がない、という利点がある。
【0011】
本発明は、プロセス状態モデルを介して通信することが、拡張装置(例えばニューラル処理ユニット)と自動装置との間でデータを交換するのに有益であることを示している。このことは、1つ以上の計算処理の1つ以上の結果を、プロセス状態モデルを介して拡張装置から自動装置へリターンすることを含むが、ただし、これに限定されない。自動装置は、プロセス状態モデルを介して交換された結果に直接アクセスすることができ、拡張装置と通信するための別のAPIにアクセスする必要がない。このような通信のエンジニアリングは、したがって単純化され、プロセスに特化され、あらゆる他のモジュールを含むために如何なる方法であれ必要とされる。すなわち、エンジニアリングで、個別のカスタムインターフェイスを作成する必要がない。
【0012】
プロセス状態モデルの全体又はその一部を、割り込みなどのイベントによって定期的に更新することもできるし、部分的に定期的に更新することも、部分的にイベントトリガーすることもできる。
【0013】
セキュリティ(機密保護)及び/又は安全に関して、プロセス状態モデルは、拡張装置と部分的にのみ共有することができ、このときの拡張装置は、その計算処理に関連するデータへのアクセスと、拡張装置がその結果を入れることができるプロセス状態モデルの部分へのアクセスとができるのみである。結果は、自動装置によるさらなる処理のために、直接的に状態として又は生形式で提供することができる。データの大きな部分を送信するために、プロセス状態モデルは、「送信準備完了」インジケータをもつことができる。サイドチャンネルを使用し、例えばデータレコードを介して、データのより大きな部分を送信することができる。
【0014】
別の態様において、拡張装置は、ニューラル処理ユニットである。ニューラル処理ユニットは、特に、1つ以上の人工ニューラルネットワークを演算するように構成することができる。これにより、産業システムにおけるAIアルゴリズムの直接的使用が可能になり、産業環境におけるAIの使用が促進される。
【0015】
別の態様において、拡張装置は、計算処理の中間結果にロジック(論理演算)を適用することによって、1つ以上の結果を得るように作動する。場合によっては、実際の産業プラントからの実際のデータは、ロジックを適用することによって、複数のクラスに分ける(セグメント化)ことができるか及び/又は分ける(セグメント化)べきである。セグメンテーションは、例えば、「if-then」構造又は他のより複雑なセグメンテーション技術を適用することによって達成され得る。ロジックは、計算処理に提供される前に生データへ適用できる。計算処理が生データに対して直接実行され、この後にロジックへ供給され、さらに別の計算処理へ供給される。最初に計算処理を実行し、後続のステップとして、自動装置へ結果を提供する前にロジックを実行することもできる。
【0016】
別の態様において、結果を便利な方法で提供するために、拡張装置は、プロセス状態モデルの少なくとも一部を、結果のうちの1つ以上で更新するように作動する。自動装置は、これらの結果をそれ以上遅延することなく使用し、さらに処理することができる。プロセス状態モデルの更新は、プロセス状態モデルの適用可能な部分に変数を書き込み、より古い既存の結果を上書きし、及び/又は、自動装置において拡張装置と交換されるべき新しい部分をプロセス状態モデルに生成することによって実施することができる。自動装置と拡張装置との間の通信インターフェイスを介して不必要なデータが送信されるのを避けるために、拡張装置及び自動装置によって更新されるべきプロセス状態モデルの部分をそれぞれ定義することが有利であることが実証されている。
【0017】
別の態様において、拡張装置は、1つ以上の計算処理を実行して結果を提供するように作動するプロセッサを含む。好ましい態様では、プロセッサは、好ましくは並列処理能力を備え、効率的な方法でニューラルネットワークを演算するように構成される。プロセッサは、1つ以上の処理ユニット、1つ以上の制御ユニット、1つ以上の揮発性及び不揮発性メモリ、及び/又は1つ以上の周辺インターフェイスを備え得る。
【0018】
別の態様において、拡張装置は、1つ以上の計算処理を実行するように構成された処理ユニットを含む。処理ユニットは、例えば、(自動装置と比較して、)より高い効率及び/又はより高速で計算処理を実行するように構成される。処理ユニットは、ニューラルネットワーク加速アーキテクチャを含み得る。これらは、コンボリューションの演算や行列乗算などに特化した特定のサブプロセッサとすることができる。処理ユニットは、そのようなサブプロセッサの異なるもの又は同一のものを複数含むことができる。
【0019】
別の態様において、拡張装置は、SIMDアーキテクチャを伴う計算処理の少なくとも一部を実行するように構成された処理ユニットを含む。SIMDアーキテクチャは、単一の命令、複数のデータを意味し、複数のデータ点上で同じ操作を同時に実行する複数の処理要素を有する計算処理を記述する。AI目的に特化した現代の処理ユニットは、SIMDベースの計算処理に特化した複数の処理コアをもっている。処理ユニットは、処理ユニットのSIMDアーキテクチャを制御するプログラムを実行するように構成された別個の制御ユニットと通信することもできる。処理ユニットは、プロセッサの一部とすることができる。
【0020】
別の態様において、拡張装置は、ニューラルネットワーク加速アーキテクチャに基づく処理ユニットを含む。この目的のために処理ユニットがニューラルネットワーク加速アーキテクチャを備えることができる。このアーキテクチャは、コンボリューションや行列乗算等の演算に特化した特定のサブプロセッサ/サブ処理ユニットとすることができる。処理ユニットは、それらサブプロセッサの異なる又は同一のものを複数含むことができる。アーキテクチャは、統合プロセッサ及び/又はSoCの一部とすることができる。
【0021】
別の態様において、拡張装置は、0.1以上のTOPS/ワットで計算処理を提供するように構成された処理ユニットを含む。TOPS/ワットは、消費されるエネルギーあたりの処理効率の尺度を記述し、AIユニット(別名NPU-ニューラル処理ユニット)やテンソル処理ユニットなどの処理能力を記述する既知のパラメータである。TOPS/ワットは、消費されるエネルギー1ワットあたりのテラ演算(1012又は10^12演算)を表す。プロセッサは、好ましくは、0.1,0.5,1,又は2以上のTOPS/ワットを提供する。無制限の処理能力は利用できないが、本願に説明するように本発明に最も適した1つ以上の処理ユニットを有する処理ユニット又はプロセッサを当業者が選択するであろうことは明らかである。上述の値は、おそらく時代後れとなるのは時間の問題であろう現在利用可能なプロセッサ/処理ユニット(例えば、Intel Movidius Myriad X、Google's Cloud TPUs)を記述している。すなわち、将来的に、当業者は、本発明の範囲から離れることなく、将来の最先端の処理ユニット/プロセッサを選択することができる。エネルギー効率の高い処理ユニットを使用することは、必要な有効消費電力を減らし、全体的な消費電力を減らすという大きな利点がある。
【0022】
処理ユニットの上記態様の特徴の1つ以上を、単一のプロセッサ及び/又は処理ユニットに組み合わせることができる。
【0023】
別の態様において、拡張装置は、少なくとも10GFLOPS、好ましくは毎秒20、50又は100以上の浮動小数点演算のGFLOPSの処理速度で計算処理を提供するように構成された処理ユニットを含む。
【0024】
別の態様において、拡張装置は、プロセス状態モデルを介して産業データを得るように作動する。産業データは、能動的又は受動的な方法で産業システムから取得することができる。産業データを能動的に取得するには、自動装置から直接データを要求するか及び/又は自動装置に接続されている装置にデータを要求する。データを受動的に取得するのは、プロセス状態モデルを介して自動装置により提供されるデータを読み取ることになり得る。
【0025】
別の態様において、拡張装置は、プロセス状態モデルを介して自動装置からデータを検索し及び/又は提供するように構成された制御ユニットを含む。この好ましい態様では、制御ユニットは、プロセス状態モデルを介した通信を制御するユニットである。これには、実際の処理ユニットが通信及び管理オーバヘッドから解放され、結果の実際の計算処理に集中できる、という利点がある。制御ユニットは、プログラマブルとすることが可能であり、拡張装置のためのオペレーティングシステムを提供することができる。制御ユニットは、計算処理を制御するように構成することができる。制御ユニットは、アプリケーションを実行して、計算処理を実行する処理ユニットを制御することができる。制御ユニットは、拡張装置のサブシステム間の編成とサブシステムの構成とを実行することができる。これには、拡張装置自体の設定、プロセス状態モデルからデータ処理コンポーネントで実行されているアプリケーションへのデータのルーティング、アプリケーションの起動、停止、ローディング、加えて自動装置と拡張装置との間の通信プロトコルの実行、が含まれるが、ただし、これに限定されない。制御ユニットは、接続されているカメラに「撮影」コマンドを送信するなど、周辺機器と直接対話することもできる。
【0026】
別の態様において、拡張装置は、自動装置と拡張装置との間でプロセス状態モデルの少なくとも一部を交換するように作動する通信インターフェイスを含む。好ましくは、通信インターフェイスは、自動装置と拡張装置との間の直接通信のためのバックプレーンインターフェイスとして構成される。プロセス状態モデルを介した通信は、PROFINETや他の産業用通信規格など、他の通信技術にも適用できる。共通リソースへのアクセスを制御するためにアクセス制御メカニズムを適用することは、この場合、プロセス状態モデルに大きな利点があることが実証されている。一般に知られているアクセス制御メカニズムの1つの例は、ハードウェアベースでのセマフォ又は類似のメカニズムの使用である。
【0027】
別の態様において、プロセス状態モデルは、自動装置の入力及び/又は出力の状態表現を含む。バイナリ入力の状態表現は、例えば、論理ハイの場合は「1」、論理ロウの場合は「0」とすることができる。例えば、入力が8ビット解像度のDACの場合、状態表現は0~255の範囲の値であり得る。これらの例は、もっと複雑なデータにもなり得る状態表現の基本原理を示している。プロセス状態モデルを使用する態様によれば、自動装置は、全てのサイクルで入力を読み込む必要がないし、全てのサイクルで入力を書き出す必要もなく、ハードウェアベースのI/O処理が実際のアプリケーションから分離される、という利点がある。これにより、一システムとして協働する自動装置と拡張装置のプログラミングが簡素化される。この態様及びプロセス状態モデルを介して通信する拡張装置の大きな利点として、結果を自動装置の入力及び/又は出力のように扱うことができ、そして、同等に簡単且つ高速に処理することができる、ということがある。自動装置と拡張装置との間で共有されるプロセス状態モデルの部分は、入力及び/又は出力の状態表現のいずれも含むこともできる。
【0028】
別の態様において、拡張装置は、データソースへの接続機能を提供するように作動する周辺接続システムを含む。データソースは拡張装置に直接接続されるのが好ましい。この好ましい態様では、拡張装置は、カメラ、センサ、及び/又はさらに別のデータソースといった周辺デバイスに直接接続する能力を提供する。このことは、高データレート機器が使用される場合に大きな利点である。例えば、産業機器の品質保証のための高速度カメラを用いたコンピュータビジョンは、通常、産業システムにおいて使用するのに十分な速度で処理されなければならない大量のデータを生成する。拡張装置が、このような高速及び/又は高帯域幅のデータソースに直接接続することができる専用の処理ユニット及び周辺接続システムを提供することにより、実際の自動装置は、それらデータソースからの不必要なデータ負荷でストレスを受けなくて済む。周辺接続システムは、USB3.0/3.1インターフェイスとして提供できるが、これに限定されない。Ethernet(GigE Vision など)(Ethernetは登録商標)や光ファイバ接続など、また別のインターフェイスも可能である。
【0029】
上記課題は、拡張装置を構成するように作動するエンジニアリングシステムによっても解決される。エンジニアリングシステムは、自動装置及び拡張装置をプログラムし及び/又は構成するシステムである。エンジニアリングシステムは、産業システム全体を設計する実現性をさらに提供する。よく知られたエンジニアリングシステムに、SIEMENS Totally Integrated Automation Portal (TIA Portal)がある。
【0030】
上記課題は、本発明に係る1つ以上の自動装置及び1つ以上の拡張装置を含んだシステムによっても解決される。自動装置のうちの少なくとも1つは、拡張装置のうちの1つ以上によって実行される1つ以上の計算処理の1つ以上の結果に従って、産業システムを監視し及び/又は制御するように作動する。1つ以上の結果は、プロセス状態モデルを介してコントローラに提供される。
【0031】
上記課題は、本発明に係る1つ以上の拡張装置によって実行される1つ以上の計算処理の1つ以上の結果に基づいて産業システムを制御するように作動する自動装置によっても解決される。1つ以上の結果は、プロセス状態モデルを介してコントローラに提供される。
【0032】
上記課題は、産業システムにおいて計算処理の結果を提供する方法によっても解決される。該方法のステップは、1つ以上の計算処理の1つ以上の結果を得る過程と、プロセス状態モデルを介してその1つ以上の結果を提供する過程とを含む。結果を得る過程は、本発明に係る拡張装置によって好ましくは実行される。結果は、産業システムの1以上の状態を表し、産業システムを監視し及び/又は制御する自動装置と共有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の上述の態様及び具体例とさらに別の態様及び具体例とを、次の図面を参照して以下に説明する実施形態において示す。ただし、本発明はこれに限定されない。
図1】産業システムにおける、拡張装置をもつ自動装置。
図2】拡張装置とデータソースをもつ自動装置。
図3】より詳細に示した拡張装置をもつ自動装置。
図4】接続モジュールをもつ拡張装置。
図5】複数の拡張装置をもつ自動装置。
図6】本発明に係る方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、産業システム100内において、拡張装置MIを有する自動装置DEVを含んだシステム10を示す。自動装置DEVは例えばPLCである。拡張装置MI及び自動装置DEVは、レールベースの取り付けシステムで、例えば、互いにすぐ隣に、又は、少なくとも同じバックプレーン通信上に、取り付けることができる。自動装置DEVへプラグインする拡張装置MIのプラグインソリューションが可能であるが、図には示されていない。産業的耐久性(堅牢性)が拡張装置MIの利点である。産業システム100はセンサS及び作用機器Aをさらに含む(これらは産業システム100のその他の構成要素の一例を示すだけである)。ほとんどの使用事例における産業システム100は、図示よりもはるかに複雑であり得る。センサSと作用機器Aは、産業用バスPNを介して自動装置DEVに接続される。産業用バスPNは、例えば、PROFINET、PROFIBUSなどの産業用バスシステムであり、他のI/Oモジュール、センサ、作用機器、HMIデバイス、…に接続できる。
【0035】
自動装置DEVと拡張装置MIは、通信リンクCOMを介して接続される。通信リンクCOMは、両方の装置MI,DEVを囲む破線で図示されている。通信リンクCOMは、両装置DEV,MIの間でプロセス状態モデルPMを共有することを可能にする。通信リンクCOMは、両装置DEV,MIのそれぞれにある内のバックプレーン通信ASICにより提供されるバックプレーン通信とし得る。このようなASICは、産業用途で一般に知られている。
【0036】
プロセス状態モデルPMは、産業システムの状態を表し得る状態S1,…,Snを示す。これには、自動装置DEVのI/O(入出力)の又は装置DEV自体の状態S1,…,Sn、産業システム100のデバイスの状態S1,…,Sn、産業システム100で生産される製品の状態S1,…,Sn、製品の品質保証の状態S1,…,Sn、産業システム100で使用される機械やツールなどの機器の健全状態の状態S1,…,Snが含まれるが、これらに限定はされない。状態S1,…,Snは、産業システム100を制御し及び/又は監視する自動装置によって使用することができる。結果R1,…,Rnは、好ましくは1つ以上の人工ニューラルネットワークを計算処理することによって得られる。
【0037】
一例において、センサS及び作用機器Aは、それぞれ、自己の状態(オン、オフ、温度、…)を表す状態S1,…,Snを提供することができる。これらの状態S1,…,Snは、自動装置DEVに供給することができ、及び/又は、自動装置DEV自体によってポーリングするか又は測定することができる。
【0038】
拡張装置MIは、1つ以上の計算処理C1,…,CnのS2の1つ又は複数の結果R1,…,Rnを得る過程S2を可能にする。さらに拡張装置MIは、プロセス状態モデルPMを介して1つ以上の結果R1,…,Rnを提供する過程S3を実行する。一実施形態において、拡張装置MIは、特定の状態S1,…,Snを結果R1,…,Rnで直接更新することができる。破線で示す選択肢として、状態S1,…,Snの少なくとも1つに基づいて計算処理C1,…,Cnを実行するために状態S1,…,Snを得る過程S11が示されている。
【0039】
通信リンクCOMは、好ましくは、例えば、拡張装置MIにおいて現在利用可能なプロセス状態モデルPMと比較して、自動装置DEVにおいて現在利用可能なプロセス状態モデルPMにおいて異なる値を状態S1が有する、といったデータ不整合を避けるためにプロセス状態モデルPMへのアクセスを制御するアクセス制御メカニズムをサポートする。このような共通リソースへのアクセス制御メカニズムの一例として、セマフォの使用がある。
【0040】
一例において、作用機器Aはモータであり、センサSは、モータの外側に接続された温度センサである。この場合の自動装置DEVは、温度状態としてセンサ値を読み取り、これをプロセス状態モデルPMを介して拡張装置MIに提供することができている。そして、拡張装置MIの訓練済みニューラルネットワークは、予測される状態S1,…,Snを表す結果R1,…,Rnを提供することができている。この例においてこれらの結果は、モータの健全状態、モータの異なる位置の温度、モータの負荷指標であり得る。結果R1,…,Rnは、好ましくは拡張装置MIの人工ニューラルネットワークなどによって計算処理される。
【0041】
図2は、図1のシステムに類似したシステム10を示し、同じ要素の参照に同じ参照符号を使用してある。拡張装置MIは、概略的に示されているように、周辺インターフェイスPIを介してデータソースDSと直接的に接続される。少なくとも部分的にデータソースDSからのデータに基づいて計算処理C1,…,Cnを実行するために、データソースDSからデータを取得する過程S12は、拡張装置MIによって実行することができる。周辺インターフェイスPIは計算処理C1,…,Cnと接続しており、これは、データソースDSのデータを(前処理なしで又は前処理の何らかの方式を適用しながら間接的に)計算処理C1,…,Cnに供給できることを示す。プロセス状態モデルPMを介して提供される状態S1,…,Snから計算処理C1,…,Cnへの破線は、状態S1,…,Snが計算処理C1,…,Cnで直接又は間接的に使用可能であることを示している。これは図1にも示した。状態S1,…,Snは、1つ以上の計算処理C1,…,Cnの実行をトリガするために、又は、拡張装置MIで利用可能な各種計算C1,…,Cn(例えば、別々の、予め訓練済みのニューラルネットワーク)を切り替えるために、使用することもできる。
【0042】
本発明の1つの利点は、図1及び図2の実施形態があらゆる方法で組み合わせ可能であることである。例えば、産業用バスPNを介して接続されたセンサS及び作用機器Aは、高速データソースDSからのデータに基づく計算処理C1,…,Cnのために又は計算処理C1,…,Cnの中で使用することができる。これにより、産業用アプリケーションに必要とされる場合が多い柔軟性のレベルが確保される。
【0043】
図3は、自動装置DEV及び拡張装置MIを含むシステムのより詳細な図を示す。自動装置DEVは、通信リンクCOMを介して拡張装置MIの通信インターフェイスCIと接続する通信インターフェイスCIを備える。図1及び図2から分かるように、通信リンクCOMは、プロセス状態モデルPMを拡張装置MIと自動装置DEVとの間で共有することを可能にする。
【0044】
拡張装置MIはプロセッサAICPUを含み、プロセッサAICPUは、サブユニット及びサブインターフェイスをさらに含む。制御ユニットCUは、通信インターフェイスCIと接続すると共に管理ユニットとして機能し、自動装置DEVへの接続を管理し、そして、プロセス状態モデルPMを介して受信されるデータを提供する。また、制御ユニットCUは、アプリケーションを実行するための実行環境を提供することができる。拡張装置MIで実行されるアプリケーションは、計算処理と結果を提供する機能を実行する。アプリケーションは、制御ユニットCUと処理ユニットPUの両方で実行することができ、この場合、実際の計算処理C1,…,Cnは処理ユニットPUで実行される。アプリケーションの管理部分を制御ユニットで実行し、実際の計算処理部分を処理ユニットPUで実行できるのは利点である。
【0045】
処理ユニットPUは、エネルギー効率及び時間の点で最適な方法で計算処理を実行するための実際のハードウェア実装を提供する。メモリMEMは、RAM(好ましくはDDR-RAM)などの揮発性高速メモリと、図示したSDカードSDなどの不揮発性メモリとを含む。他のタイプの不揮発性メモリも可能である。高速メモリは、計算処理のためのデータを処理ユニットに直接提供するために使用することができる。不揮発性の又は永続的なデータストレージには他の用途もある。このような使用は、限定するものではないが、処理ユニットPUにより実行されるデータからサンプルを記憶すること、データ処理(計算処理C1,…,Cn)に際し制御ユニットCUを介するデータ及び結果の流れを動的に制御するアプリケーションを記憶すること、アプリケーション(訓練済みニューラルネットワークなど)のためのデータを記憶すること、及び、バックプレーンバス、USB又はイーサネット(イーサネットは登録商標)などの通信機能を介して又は直接的にメモリへ又はメモリからコピー/変更される記憶データ/アプリケーションのストレージを提供すること、である。
【0046】
処理ユニットPU(言い換えると、データ処理サブシステム)は、実際に計算処理を実行するアプリケーションを実行する。処理ユニットPUは、典型的には、AI及びニューラル計算処理を効率的に実行するための特化したハードウェアを提供する。例えば、SIMD能力を備えたベクトルプロセッサ、又は行列演算やコンボリューションを実行する専用ハードウェア、及びその他のプログラマブル処理ユニットである。制御ユニットCUは、計算処理を制御するユーザアプリケーションの一部を実行することにより、処理ユニットPUを制御することができる。
【0047】
制御ユニットCUは、周辺インターフェイスPIへのアクセスを提供することができる。この実施形態では、周辺インターフェイスPIは、2つのUSBポートとイーサネットポートETHを含む。周辺インターフェイスPIは、結果を提供する計算処理に使用することができるデータを提供する各種のデバイスと接続できるように構成される。例えば、複数のデータソースDSとの無線通信が可能であり、例えば既設の産業プラントに対する改修ソリューションに特に有用である。
【0048】
処理ユニットPUと制御ユニットCUとメモリMEMとの間の実線の接続で示すように、これらのユニット(又はサブユニット)の各々は、他の要素に直接又は制御ユニットCUを介してアクセスすることができる。一実施形態において、各ユニットPU,CU,MEMの一部のみが他の要素からアクセス可能であってもよい。制御ユニットCUの指揮する汎用コンセプトがアプリケーションを実行しながら機能し、該アプリケーションに提供される計算処理C1,…,Cnを伴う処理ユニットPUの動作を制御する。処理ユニットPUは、制御ユニットCUが提供するデータを処理するために、メモリMEM、特にDDR-RAMのような高速メモリに、アクセスする。
【0049】
カメラCAMが周辺インターフェイスPIに接続されている。カメラCAMからのデータは、周辺インターフェイスPIを介して制御ユニットCUに提供される。カメラCAMは、イーサネット(GigE Visionなど)、USB3.0/3.1、又は以下にあげる規格を介して接続できる。
【0050】
プロセッサAICPUは、上記の全てのユニットを提供する単一のSOC(システムオンチップ)として設計することができる。プロセッサAIPUは、1つのハードウェアチップにグループ化されたいくつかのサブユニットを含むと共に独立型(スタンドアロン)の処理ハードウェアとして提供される他のユニットを含む、処理基板として構築することもできる。
【0051】
具体例において、典型的な計算処理C1,…,Cnは次のとおりで、その各過程は通例の実行順であるが、入れ替え、繰り返し、スキップすることもできる。
1.) 自動装置DEV(例えばPLC)がプロセス状態モデルPMを継続して更新し、拡張装置MIから入力を読み出し、拡張装置MIに出力を書き込む。これらは全て、自動装置DEVの1サイクルで行うことができる。
2.) 自動装置DEVのトリガイベントは、組織化ブロック(自由に実行されるか、又は、定期的な割り込み/トリガなどにより正確に時刻指定される)の実行開始とすることができる。組織化ブロックは、それぞれ連続タスク又は定期タスクと呼ばれることもある。
3.) 自動装置DEVは、拡張装置MIでコマンドをトリガする。これは、プロセス状態モデルPMにフラグをセットすることで実行できる。
4.) 選択的に及び/又は追加して、データレコードを自動装置DEVから拡張装置MIへ並行して送ることができる。データレコードは、自動装置で一般的に使用される直接データ転送の一方式である。
5.) 拡張装置MIでトリガが処理されるときに、制御ユニットCUは、拡張装置MIで処理するアプリケーションの関数を呼び出している。
a. 選択的に、周辺インターフェイスPIを使用して、カメラCAMなどの外部データソースDSから追加データの収集を実行できる。拡張装置MIは、画像のキャプチャが終わり、これからの処理-例えば処理ユニットPUによる-に利用できるようになったことのインジケータを、プロセス状態モデルPMを介して提供することができる。該インジケータは状態S1,…,Snとすることができる。
b. 別の過程において、収集したデータは、データ処理のニーズに応じて前処理される。この過程では、例えば、一定レベルのコントラスト及び/又は輝度が達成されるように1つ以上の画像を正規化することができるし、又は、1つ以上の画像を次の処理に適した解像度にスケーリングすることができる。ロジック(論理演算)をデータに適用して、不要なデータを除去したり、後続の前処理のためにデータを選択したりすることができる。
c. その後、全てのデータ(例えば、プロセス状態モデルPMを介して得られた自動装置DEVからの状態S1,…,Sn、データソースDS、作用機器A及び/又はセンサSからの値)は、データ処理アプリケーションのような方式でパックされ、例えば、テンソル/ベクトルが処理ユニットPUによりニューラルネットワークによって処理されることが待たれる。
d. 次の過程では、処理ユニットPUによるアプリケーションのデータ処理部が規定する1つ以上の数学関数を実行する。
e. 後処理過程において、1つ以上の数学関数の1つ以上の結果が自動装置DEVへ戻すべく集約され準備される。
f. 全ての機能の適用後、1つ以上の結果R1,…,Rnが収集され、制御ユニットCUに通知される。
6.) 次に、制御ユニットCUは、プロセス状態モデルPMを介して、処理の結果を自動装置DEVに提供する。
7.) 1つ以上の結果は、産業システムを監視し及び/又は制御する自動装置DEVで処理される。計算処理には数サイクルかかる場合があるので、新しい結果が利用可能になることは、プロセス状態モデルPMの状態ビット(例えば、バイナリ状態)によって示され得る。
【0052】
図4は、接続モジュールCMと接続された拡張装置MIを含むシステムである別の実施形態を示す。接続モジュールCMは、バスインターフェイスPNIを介して産業用バスシステムPNへの接続を提供する。産業用バスシステムPNは、自動装置DEVへの接続を提供する。接続モジュールCMは、拡張装置MIの通信インターフェイスCIと接続された通信インターフェイスCIを含む。通信インターフェイスCIは、先の実施形態で説明した通信リンクCOMを提供する。プロセス状態モデルPMは、産業用バスシステムPNと接続モジュールCMを介して、自動装置DEVから拡張装置MIへ拡張されている。接続モジュールCMにより、図1図2及び/又は図3の実施形態の全てを図4に示す形態に適用できる。別の実施形態において、接続モジュールCMは、拡張装置MIの一部(プラグインモジュールなど)である。
【0053】
図5は、複数の拡張装置MIをもつ1つの自動装置DEVを示す。上記実施形態で説明したプロセス状態モデルPMが全ての装置DEV,MIにわたって拡張される。この形態は、異なる目的のための複数のニューラルネットワーク(例えば、カメラ品質検査のための1つと、産業システムの全般的な健全状態のための1つ)を計算処理する必要がある場合、及び/又は、より多くの処理能力が必要とされる場合に、利点をもつ。また、複数の拡張装置MIに大きなニューラルネットワークを分散させることもできる。このことは、本発明に係るプロセス状態モデルPMを介した通信が可能とする柔軟性を示している。
【0054】
図6は、拡張装置MIに適用可能な方法の実施形態についてフローチャートを示す。提示した順番どおりとすることもできるし、本発明の範囲から外れることなく順番を変更することもできる。過程S11,S12,S2,S3のいずれかをスキップすることも可能であるし、1回以上実行することもできる。
【0055】
第1の過程は、状態S1,…,Snの少なくとも1つに基づいて計算処理C1,…,Cnを実行するために状態S1,…,Snを得る過程S11からなる。第2の過程は、計算処理C1,…,Cnを実行するためにデータソースDSからデータを得る過程S12からなる。計算処理C1,…,Cnは、データソースDSからのデータに少なくとも部分的に基づいており、拡張装置MIにより実行される。これら取得過程S11,S12は選択的なものであり、複数回行うこともできる。
【0056】
第3の過程は、拡張装置MIによって1つ以上の計算処理C1,…,Cnの1つ以上の結果R1,…,Rnを得る過程S2からなる。結果R1,…,Rnは、産業システム100の1以上の状態S1,…,Snを表す。
【0057】
第4の過程は、産業システム100を監視及び/又は制御する自動装置DEVと共有するプロセス状態モデルPMを介して、1つ以上の結果R1,…,Rnを提供する過程S3からなる。
【0058】
本発明は、産業システム100における1つ以上の自動装置DEVのための拡張装置MIに関する。本発明は、具体的には、1つ以上の人工ニューラルネットワークに基づいてデータ処理を実行することができる産業用データ処理ユニットPUに関する。産業システム100において1つ以上の計算処理C1,…,Cnを可能にし及び/又は加速し、それにより産業システム100への人工知能の統合を簡素化し、そして、人工知能を使用してデータを処理することができる拡張装置MIと自動装置DEVとの間でデータ交換を簡単にするために、本発明は、1つ以上の計算処理C1,…,Cnの1つ以上の結果R1,…,Rnを取得S2し、その結果R1,…,Rnは産業システム100の1以上の状態S1,…,Snを表し、産業システム100を監視し及び/又は制御する自動装置DEVと共有するプロセス状態モデルPMを介して1つ以上の結果R1,…,Rnを提供するS3ことを提案する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6