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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】スラスト軸受装置及びターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20230710BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
F02B39/00 L
F16C17/04 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021562249
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047402
(87)【国際公開番号】W WO2021111543
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】二江 貴也
(72)【発明者】
【氏名】矢野 正義
(72)【発明者】
【氏名】横山 真平
(72)【発明者】
【氏名】桝田 翼
(72)【発明者】
【氏名】小島 優也
(72)【発明者】
【氏名】段本 洋輔
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160967(JP,A)
【文献】特開2014-070514(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099600(WO,A1)
【文献】特開2015-224676(JP,A)
【文献】特開2019-078363(JP,A)
【文献】特開2019-148307(JP,A)
【文献】特開2014-181774(JP,A)
【文献】特開2000-199520(JP,A)
【文献】特開2015-140909(JP,A)
【文献】特開2019-158033(JP,A)
【文献】米国特許第3895689(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F16C 17/04
F01C 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に嵌合された、第1スラスト面を有するカラー部材と、
前記回転軸が挿通される挿通孔、及び、該挿通孔の周囲に設けられて前記カラー部材の前記第1スラスト面と対向する第2スラスト面を有するスラスト部材とを備え、
前記第1スラスト面は、前記カラー部材の全周にわたって形成された環状の平面又は円錐面を含み、前記環状の平面又は前記円錐面と前記第2スラスト面との間の距離が前記回転軸の回転に伴って周期的に増減するように、前記回転軸の軸線と直交する面に対して傾斜するように構成されている
スラスト軸受装置。
【請求項2】
前記第1スラスト面の外周縁のうち前記第2スラスト面との前記距離が最も小さくなる第1外周位置が存在する角度位置を第1角度位置と定義し、
前記第1角度位置における前記第1スラスト面の内周縁である第1内周位置と、前記第1角度位置と180度異なる第2角度位置における前記第1スラスト面の内周縁である第2内周位置とを通過する仮想線を第1仮想線と定義した場合に、
前記第1スラスト面は、前記第1仮想線と前記回転軸の軸線とを含む断面において、前記第1外周位置が、前記第1仮想線を挟んで前記第2スラスト面の反対側に位置するように構成される
請求項1に記載のスラスト軸受装置。
【請求項3】
前記第1スラスト面は、前記第2スラスト面に対して摺動するように形成された前記円錐面を含んでいる、
請求項2に記載のスラスト軸受装置。
【請求項4】
前記第2スラスト面において、前記第1スラスト面の外周縁と対向する径方向位置を第1径方向位置と定義し、
前記第2スラスト面において、最も径方向内側の位置を第2径方向位置と定義した場合に、
前記第2スラスト面は、前記第1径方向位置が前記第2径方向位置よりも、前記第1スラスト面から離れて位置するように構成される
請求項1乃至3の何れか一項に記載のスラスト軸受装置。
【請求項5】
前記第2スラスト面は、前記第1径方向位置よりも径方向外側に位置する領域の少なくとも一部において、前記第1径方向位置よりも前記第1スラスト面に近づいて位置するように構成される
請求項4に記載のスラスト軸受装置。
【請求項6】
前記スラスト部材は、前記第2スラスト面において、凹部と、前記凹部の径方向外側に形成された外側堰部と、前記凹部の径方向内側に形成された内側堰部とが、周方向に複数設けられている
請求項1乃至5の何れか一項に記載のスラスト軸受装置。
【請求項7】
複数の前記凹部のそれぞれは、連通孔を介して前記挿通孔と連通しており、
前記連通孔のそれぞれは、前記回転軸の周方向における前記凹部の中心位置に対して前記回転軸の回転方向上流側にオフセットされて配置されている
請求項6に記載のスラスト軸受装置。
【請求項8】
前記スラスト部材は、前記第2スラスト面において、周方向に延在する円環溝を有し、
前記円環溝は、前記円環溝の内周縁の径が前記第1スラスト面の外周縁の径よりも小さく、前記円環溝の外周縁の径が前記第1スラスト面の外周縁の径よりも大きい
請求項1乃至7の何れか一項に記載のスラスト軸受装置。
【請求項9】
前記回転軸の一方端に取り付けられたタービンインペラと、
前記回転軸の他方端に取り付けられたコンプレッサインペラと、
請求項1乃至8の何れか一項に記載のスラスト軸受装置と、
を備える
ターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラスト軸受装置及びターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばターボチャージャの回転軸には、回転軸を軸方向に移動せしめる力(スラスト力)が作用する。このため、ターボチャージャには、回転軸を軸方向に支持するためのスラスト軸受装置が備えられている。このようなスラスト軸受装置の一例として、例えば特許文献1に示されているスラスト軸受装置が挙げられる。
ターボチャージャにおけるスラスト軸受装置では、特許文献1に記載のように、カラー部材(スラストブッシュ10)とスラスト部材(スラストディスク11)とが摺接することで回転軸に作用するスラスト荷重を負担している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-2136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばターボチャージャにおけるスラスト軸受装置では、スラスト軸受装置における機械損失を抑制してターボチャージャの過渡応答性を向上させるために、スラスト荷重を負担する摺接面の面積を小さくすることが望ましい。しかし、スラスト荷重を負担する摺接面の面積を小さくするとスラスト荷重の負荷能力が低下して接触や摩耗のリスクが高まるおそれがある。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、スラスト軸受装置における機械損失の抑制と、スラスト荷重の負荷能力の低下の抑制とを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るスラスト軸受装置は、
回転軸と、
前記回転軸に嵌合された、第1スラスト面を有するカラー部材と、
前記回転軸が挿通される挿通孔、及び、該挿通孔の周囲に設けられて前記カラー部材の前記第1スラスト面と対向する第2スラスト面を有するスラスト部材とを備え、
前記第1スラスト面は、前記第1スラスト面と前記第2スラスト面との間の距離が前記回転軸の回転に伴って周期的に増減するように、前記回転軸の軸線と直交する面に対して傾斜するように構成されている。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャは、
前記回転軸の一方端に取り付けられたタービンインペラと、
前記回転軸の他方端に取り付けられたコンプレッサインペラと、
上記(1)の構成のスラスト軸受装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、スラスト軸受装置における機械損失の抑制と、スラスト荷重の負荷能力の低下の抑制とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係るターボチャージャにおいて、その回転軸の軸線方向に沿った断面を示した断面図である。
図2図1におけるa部付近の拡大図である。
図3】一実施形態に係るスラスト軸受装置の模式的な断面図である。
図4】一実施形態に係るスラスト軸受装置において回転軸が回転したときの様子を模式的に示した断面図である。
図5】カラー部材の他の実施形態についての模式的な断面図である。
図6】カラー部材のさらに他の実施形態についての模式的な断面図である。
図7】カラー部材のさらに他の実施形態についての模式的な断面図である。
図8】スラスト部材についての他の実施形態についての模式的な断面図である。
図9】スラスト部材についてのさらに他の実施形態についての模式的な断面図である。
図10】第2スラスト面におけるパッドの一実施形態についての図である。
図11】第2スラスト面におけるパッドの他の実施形態についての図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
(ターボチャージャ100の全体構成)
図1は、本開示の一実施形態に係るターボチャージャにおいて、その回転軸の軸線方向に沿った断面を示した断面図である。
本開示の一実施形態に係るターボチャージャは、特に限定されないが、例えば自動車用エンジン等に搭載されるターボチャージャである。
本実施形態のターボチャージャ100は、図1に示したように、回転軸2の一端側に設けられたタービンインペラ103を収容するタービンハウジング102、回転軸2の他端側に設けられたコンプレッサインペラ105を収容するコンプレッサハウジング104、及び回転軸2を回転可能に支持するラジアル軸受装置110と、回転軸2のスラスト力を支持するスラスト軸受装置1とを収容する軸受ハウジング106、の3つのハウジングからなる。
【0012】
タービンハウジング102の外周部には、渦巻き状のタービンスクロール流路113が形成されている。そして、タービンスクロール流路113の中心部分にはタービンインペラ103が配置されている。タービンインペラ103は、円錐体の頭部を底面に平行な面で切り取った截頭円錐状のタービンハブ103aと、タービンハブ103aの周面から径方向の突出して設けられる複数のタービン翼103bとからなる。タービンインペラ103のタービンハブ103aは、回転軸2の一端部と例えば溶接によって接合されている。そして、タービンスクロール流路113を流れてタービンインペラ103に作用した排気ガスは、回転軸2の軸方向に開口する排ガス流出口111からタービンハウジング102の外部へと排出される。
【0013】
コンプレッサハウジング104の外周部には渦巻き状のコンプレッサスクロール流路117が形成されている。そして、コンプレッサスクロール流路117の中心部分にはコンプレッサインペラ105が配置されている。コンプレッサインペラ105は、円錐体の頭部を底面に平行な面で切り取った截頭円錐状のコンプレッサハブ105aと、コンプレッサハブ105aの周面から径方向の突出して設けられる複数のコンプレッサ翼105bとからなる。コンプレッサインペラ105のコンプレッサハブ105aの中心部には、回転軸2の他端側が嵌挿される嵌挿孔(不図示)が形成されている。コンプレッサインペラ105は、この嵌挿孔に回転軸2の一端側が嵌挿された後、コンプレッサハブ105aの先端からナット116を締め付けることで、回転軸2の他端部に固定されている。そして、回転軸2の軸方向に開口する吸気流入口115を流れ、コンプレッサインペラ105によって圧縮された吸気ガスが、コンプレッサスクロール流路117を流れて不図示のエンジンへと供給される。
【0014】
軸受ハウジング106は、タービンハウジング102とコンプレッサハウジング104との間に配置され、一端側がタービンハウジング102に連結され、他端側がコンプレッサハウジング104に連結されている。軸受ハウジング106の内部には、回転軸2を軸方向に挿通可能とする内部空間が形成されており、この内部空間に上述したラジアル軸受装置110、スラスト軸受装置1が収容されている。また軸受ハウジング106の上部には、上述したラジアル軸受装置110、及びスラスト軸受装置1に対して潤滑油を供給するための入口油路112が形成されている。入口油路112から軸受ハウジング106の内部に導入された潤滑油は、ラジアル軸受装置110、及びスラスト軸受装置1を潤滑した後、軸受ハウジング106の下部に形成されている出口油路114から軸受ハウジング106の外部に排出される。
【0015】
(スラスト軸受装置1の概要)
図2は、図1におけるa部付近の拡大図であって、本発明の一実施形態に係るスラスト軸受装置を示した断面図である。図3は、一実施形態に係るスラスト軸受装置の模式的な断面図である。図4は、一実施形態に係るスラスト軸受装置において回転軸が回転したときの様子を模式的に示した断面図である。図5は、カラー部材の他の実施形態についての模式的な断面図である。図6は、カラー部材のさらに他の実施形態についての模式的な断面図である。図7は、カラー部材のさらに他の実施形態についての模式的な断面図である。図8は、スラスト部材についての他の実施形態についての模式的な断面図である。図9は、スラスト部材についてのさらに他の実施形態についての模式的な断面図である。図10は、第2スラスト面におけるパッドの一実施形態についての図である。図11は、第2スラスト面におけるパッドの他の実施形態についての図である。
【0016】
幾つかの実施形態に係るスラスト軸受装置1は、図2図9に示したように、回転軸2と、カラー部材としてのコンプレッサ側スラストカラー3及びタービン側スラストカラー9と、スラスト部材4と、を備えている。
幾つかの実施形態では、図2に示したように、オイルディフレクタ5と、オイルディフレクタ5及びスラスト部材4を回転軸2の外周側において保持するように構成されたリテーナ7とを備える。
幾つかの実施形態では、リテーナ7は環状部材であり、その外周部にはスラスト部材4側に突出した突出部71が形成されている。突出部71の内、スラスト部材4及びオイルディフレクタ5と当接する部分には、先端面71aが形成されている。そして、先端面71aにより、オイルディフレクタ5の外周縁部及びスラスト部材4の外周端部を軸受ハウジング106の内周凸部106Aの一端面106aに押し付けることで、スラスト部材4及びオイルディフレクタ5を回転軸2の外周側に保持している。また、突出部71の後端面71bは、軸受ハウジング106の内周溝に嵌合された環状の移動規制部材73と当接している。そして、この移動規制部材73により、リテーナ7がスラスト部材4側に押し付けられている。
【0017】
(コンプレッサ側スラストカラー3)
コンプレッサ側スラストカラー3は、図2図9に示したように、円筒状のカラー本体部31及びカラー本体部31よりも大径に形成されたフランジ部32を有している。そして、回転軸2と共に回転可能なように回転軸2の外周に装着される。
フランジ部32におけるタービン側の面である一端面32aには、図3図9に示したように、コンプレッサ側第1スラスト面310が形成されている。コンプレッサ側第1スラスト面310の詳細については、後で説明する。
【0018】
(タービン側スラストカラー9)
図示した実施形態では、コンプレッサ側スラストカラー3よりもタービン側の回転軸2の外周面に、タービン側スラストカラー9が装着されている。タービン側スラストカラー9は、円筒状のカラー本体部91及びカラー本体部91よりも大径に形成されたフランジ部92を有している。そして、タービン側スラストカラー9のカラー本体部91の先端面91aが、コンプレッサ側スラストカラー3のフランジ部32の一端面32aと当接している。
フランジ部92におけるコンプレッサ側の面には、図3図9に示したように、タービン側第1スラスト面910が形成されている。タービン側第1スラスト面910の詳細については、後で説明する。
【0019】
(スラスト部材4)
幾つかの実施形態に係るスラスト部材4は、図2図11に示したように、回転軸2が挿通される挿通孔41を有する環状のプレート状部材である。幾つかの実施形態に係るスラスト部材4における、コンプレッサ側の面(一端面4a)には、図3図11に示したように、コンプレッサ側スラストカラー3のコンプレッサ側第1スラスト面310と対向するコンプレッサ側第2スラスト面430が形成されている。そして、回転軸2にコンプレッサインペラ105側からタービンインペラ103側に軸方向力が作用した時に、コンプレッサ側第2スラスト面430と、コンプレッサ側第1スラスト面310とが摺接することで、挿通孔41に挿通された状態で回転する回転軸2を軸方向に支持するように構成されている。
【0020】
図示した実施形態では、スラスト部材4の内周側には、上述したタービン側スラストカラー9のカラー本体部91が位置している。すなわち、スラスト部材4の挿通孔41には、回転軸2と、回転軸2の外周に装着されているタービン側スラストカラー9のカラー本体部91とが挿通されている。スラスト部材4の外周端部は、軸受ハウジング106に固定されている。そして、スラスト部材4の内周面と、タービン側スラストカラー9のカラー本体部91の外周面とが、回転軸2の回転に伴って摺接するように構成されている。
幾つかの実施形態に係るスラスト部材4における、タービン側の面(他端面4b)には、図3図11に示したように、タービン側スラストカラー9のタービン側第1スラスト面910と対向するタービン側第2スラスト面490が形成されている。そして、回転軸2にタービンインペラ103からコンプレッサインペラ105側に軸方向力が作用した時には、タービン側第2スラスト面490と、タービン側第1スラスト面910とが摺接することで、挿通孔41に挿通された状態で回転する回転軸2を軸方向に支持するように構成されている。
【0021】
また、スラスト部材4の内部には、供給油路43が形成されている。供給油路43は、スラスト部材4の他端面4bに入口側開口が形成され、スラスト部材4の内周面(挿通孔41)に出口側開口が形成されている。そして、出口側開口から供給された潤滑油が、スラスト部材4の内周面とタービン側スラストカラー9のカラー本体部91の外周面との間、スラスト部材4のコンプレッサ側第2スラスト面430と、コンプレッサ側スラストカラー3のコンプレッサ側第1スラスト面310との間、及び、スラスト部材4のタービン側第2スラスト面490と、タービン側スラストカラー9のタービン側第1スラスト面910との間に供給されるように構成されている。
【0022】
なお、以下の説明では、コンプレッサ側スラストカラー3のコンプレッサ側第1スラスト面310とタービン側スラストカラー9のタービン側第1スラスト面910とを特に区別する必要がない場合には、コンプレッサ側第1スラスト面310及びタービン側第1スラスト面910のことを単に第1スラスト面10とも呼ぶことがある。また、以下の説明では、コンプレッサ側第1スラスト面310及びタービン側第1スラスト面910の双方について言及する場合にも、コンプレッサ側第1スラスト面310及びタービン側第1スラスト面910のことを単に第1スラスト面10とも呼ぶことがある。
同様に、以下の説明では、スラスト部材4のコンプレッサ側第2スラスト面430とタービン側第2スラスト面490とを特に区別する必要がない場合には、コンプレッサ側第2スラスト面430及びタービン側第2スラスト面490のことを単に第2スラスト面20とも呼ぶことがある。また、以下の説明では、コンプレッサ側第2スラスト面430及びタービン側第2スラスト面490の双方について言及する場合にも、コンプレッサ側第2スラスト面430及びタービン側第2スラスト面490のことを単に第2スラスト面20とも呼ぶことがある。
【0023】
例えばターボチャージャ100におけるスラスト軸受装置1では、スラスト軸受装置1における機械損失を抑制してターボチャージャ100の過渡応答性を向上させるために、スラスト荷重を負担する摺接面である第1スラスト面10及び第2スラスト面20の面積を小さくすることが望ましい。しかし、単に第1スラスト面10及び第2スラスト面20の面積を小さくするとスラスト荷重の負荷能力が低下して接触や摩耗のリスクが高まるおそれがある。
【0024】
(各実施形態に共通する特徴について)
そこで、図3図9に示したように、幾つかの実施形態に係るスラスト軸受装置1では、第1スラスト面10は、第1スラスト面10と第2スラスト面20との間の距離Lx(図3参照)が回転軸2の回転に伴って周期的に増減するように、回転軸2の軸線AXと直交する面(直交面)S(図3参照)に対して傾斜するように構成されている。
すなわち、図3図9に示したように、幾つかの実施形態に係るスラスト軸受装置1では、コンプレッサ側第1スラスト面310は、コンプレッサ側第1スラスト面310とコンプレッサ側第2スラスト面430との間の距離Lx1(図3参照)が回転軸2の回転に伴って周期的に増減するように、回転軸2の軸線AXと直交する直交面Sに対して傾斜するように構成されている。
同様に、図3図9に示したように、幾つかの実施形態に係るスラスト軸受装置1では、タービン側第1スラスト面910は、タービン側第1スラスト面910とタービン側第2スラスト面490との間の距離Lx2(図3参照)が回転軸2の回転に伴って周期的に増減するように、回転軸2の軸線AXと直交する直交面Sに対して傾斜するように構成されている。
【0025】
なお、図3図9に示した幾つかの実施形態に係るスラスト軸受装置1では、コンプレッサ側スラストカラー3のフランジ部32の全体及びタービン側スラストカラー9のフランジ部92の全体が直交面Sに対して傾斜している。しかし、実施形態に係るスラスト軸受装置1では、第1スラスト面10が直交面Sに対して傾斜しているのであれば、コンプレッサ側スラストカラー3のフランジ部32の全体及びタービン側スラストカラー9のフランジ部92の全体が直交面Sに対して傾斜していなくてもよい。
【0026】
図3図9に示したように、幾つかの実施形態に係るスラスト軸受装置1によれば、第1スラスト面10と第2スラスト面20との間の距離Lxが回転軸2の回転に伴って周期的に増減することで、第1スラスト面10と第2スラスト面20との間でスクイズ効果が生じて、スラスト荷重の負荷能力を高められる。そのため、スラスト荷重を負担する摺接面の面積、すなわち第1スラスト面10及び第2スラスト面20の面積を抑制してもスラスト荷重の負荷能力の低下を抑制できる。したがって、図3図9に示したように、幾つかの実施形態に係るスラスト軸受装置1によれば、第1スラスト面10及び第2スラスト面20の面積の抑制による機械損失の抑制と、スラスト荷重の負荷能力の低下の抑制とを両立できる。
【0027】
なお、図3において、第1スラスト面10が直交面Sに対して傾斜していない、すなわち直交面Sと平行である場合のコンプレッサ側スラストカラー3のフランジ部32x及びタービン側スラストカラー9のフランジ部92xを2点鎖線で示している。
また、図4では、図3に示したスラスト軸受装置1において第1スラスト面10と第2スラスト面20との間の距離Lxが回転軸2の回転に伴って周期的に増減する様子を実線及び破線によって模式的に示している。図4では、実線で示したコンプレッサ側スラストカラー3及びタービン側スラストカラー9が軸線AXを中心に180度回転したときのコンプレッサ側スラストカラー3のフランジ部32及びタービン側スラストカラー9のフランジ部92の状態を破線で示している。
【0028】
図3図4、及び図6図9に示したように、幾つかの実施形態に係るスラスト軸受装置1では、コンプレッサ側スラストカラー3のカラー本体部31及びタービン側スラストカラー9のカラー本体部91は、回転軸2の軸線AXと平行に延在している。すなわち、図3図4、及び図6図9に示したように、幾つかの実施形態に係るスラスト軸受装置1では、コンプレッサ側スラストカラー3のカラー本体部31の軸線AX1及びタービン側スラストカラー9のカラー本体部91の軸線AX2は、回転軸2の軸線AXと平行である。そして、上述したように、第1スラスト面10が直交面Sに対して傾斜している。
【0029】
しかし、図3図4、及び図6図9に示した幾つかの実施形態では、例えば図5に示した一実施形態のように、コンプレッサ側スラストカラー3のカラー本体部31の軸線AX1が回転軸2の軸線AXに対して傾斜していることでコンプレッサ側第1スラスト面310が直交面Sに対して傾斜するようにしてもよい。同様に、図3図4、及び図6図9に示した幾つかの実施形態では、例えば図5に示した一実施形態のように、タービン側スラストカラー9のカラー本体部91の軸線AX2が回転軸2の軸線AXに対して傾斜していることでタービン側第1スラスト面910が直交面Sに対して傾斜するようにしてもよい。
なお、図5に示した一実施形態では、コンプレッサ側第1スラスト面310は、コンプレッサ側スラストカラー3のカラー本体部31の軸線AX1についての径方向に対して平行となるように延在していてもよく、タービン側第1スラスト面910は、タービン側スラストカラー9のカラー本体部91の軸線AX2についての径方向に対して平行となるように延在していてもよい。
すなわち、図3図4、及び図6図9に示した幾つかの実施形態では、図5に示した一実施形態のように、回転軸2が貫通する貫通する貫通孔をコンプレッサ側スラストカラー3のカラー本体部31の軸線AX1に対して傾斜するように形成することで、コンプレッサ側第1スラスト面310を直交面Sに対して傾斜させてもよい。同様に、図3図4、及び図6図9に示した幾つかの実施形態では、図5に示した一実施形態のように、回転軸2が貫通する貫通する貫通孔をタービン側スラストカラー9のカラー本体部91の軸線AX2に対して傾斜するように形成することで、タービン側第1スラスト面910を直交面Sに対して傾斜させてもよい。
【0030】
なお、図2図9に示した幾つかの実施形態に係るスラスト軸受装置1では、図3図5、及び図7図9に示した実施形態のように、コンプレッサ側スラストカラー3のフランジ部32は、一端面32aと該フランジ部32の外周面32bとの間にC面取り又はR面取りが施された傾斜部32cを有していてもよい。なお、傾斜部32cは、スラスト荷重を負担しない部位である。同様に、図示はしないが、タービン側スラストカラー9のフランジ部92は、スラスト部材4の他端面4bを向いた面、すなわちタービン側第1スラスト面910とは反対側の面と、該フランジ部92の外周面との間に、上述した傾斜部32cと同様に傾斜部を有していてもよい。
本開示では、上述した傾斜部32cや該フランジ部92における不図示の傾斜部は、スラスト荷重の負担に貢献しないため、第1スラスト面10には含めないこととする。
【0031】
図6及び図7に示した実施形態について)
説明の便宜上、図6及び図7に示した実施形態について説明するにあたり、第1角度位置、第2角度位置、及び第1仮想線を以下のように定義する。
すなわち、図6に示すように、回転軸2の軸線AXを中心とした角度位置に関し、第1スラスト面10の外周縁11のうち第2スラスト面20との距離Lxが最も小さくなる第1外周位置13が存在する角度位置を第1角度位置θ1と定義する。
第1角度位置θ1と180度異なる角度位置を第2角度位置θ2と定義する。
第1角度位置θ1における第1スラスト面10の内周縁15である第1内周位置17と、第2角度位置θ2における第1スラスト面10の内周縁15である第2内周位置18とを通過する仮想線を第1仮想線VL1と定義する。
【0032】
図6及び図7に示した実施形態では、第1スラスト面10は、第1仮想線VL1と回転軸2の軸線AXとを含む断面、すなわち図6に示した軸線AXに沿った断面及び図7に示した断面において、第1外周位置13が、第1仮想線VL1を挟んで第2スラスト面20の反対側に位置するように構成される。
したがって、図6及び図7に示した実施形態では、第1外周位置13が、第1仮想線VL1よりも第2スラスト面20から離れているので、第1外周位置13の近傍において第1スラスト面10が第2スラスト面20と接触し難くなる。これにより、スラスト軸受装置1の信頼性及び耐久性を高めることができる。
【0033】
図6及び図7に示した実施形態では、第1スラスト面10は、第2スラスト面20に対して摺動するように形成された円錐面12を含んでいる。
図6及び図7に示した実施形態では、円錐面12は、円錐の頂部側をスラスト部材4の方に向けるように形成されている。図6及び図7に示した実施形態では、第1スラスト面10が平面である場合と比べて、第1スラスト面10の外周縁11を第2スラスト面20から離すことができる。これにより、外周縁11の近傍において第1スラスト面10が第2スラスト面20と接触し難くなり、スラスト軸受装置1の信頼性及び耐久性を高めることができる。
なお、円錐面12は、図6及に示した実施形態のように、第1スラスト面10の内周縁15から外周縁11にかけて形成されていてもよく、図7に示した実施形態のように、第1スラスト面10の外周縁11側の一部の領域に形成されていてもよい。
【0034】
図8及び図9に示した実施形態について)
説明の便宜上、図8及び図9に示した実施形態について説明するにあたり、第1径方向位置、及第2径方向位置を以下のように定義する。
すなわち、図8及び図9に示すように、第2スラスト面20において、第1スラスト面10の外周縁11と対向する径方向位置を第1径方向位置21と定義する。なお、第1径方向位置21は、第2スラスト面20において周方向に沿って全周に存在する。
また、第2スラスト面において、最も径方向内側の位置を第2径方向位置22と定義する。
【0035】
図8及び図9に示した実施形態では、第2スラスト面20は、第1径方向位置21が第2径方向位置22よりも、第1スラスト面10から離れて位置するように構成される。
すなわち、例えば図8に示した実施形態では、第2スラスト面20は、第2径方向位置22から径方向外側に向かうにつれて、第1スラスト面10から離れるように傾斜している。また、例えば図9に示した実施形態では、第2スラスト面20には、第1径方向位置21において円環状の凹部25が形成されている。したがって、図9に示した実施形態では、第1径方向位置21が凹部25の底面25aについての径方向位置と同じであるため、第1径方向位置21が第2径方向位置22よりも、第1スラスト面10から離れて位置することとなる。
【0036】
したがって、図8及び図9に示した実施形態では、第2スラスト面20の第1径方向位置21が第2径方向位置22よりも第1スラスト面10から離れるので、第1径方向位置21の近傍において第1スラスト面10が第2スラスト面20と接触し難くなる。これにより、スラスト軸受装置1の信頼性及び耐久性を高めることができる。
【0037】
図9に示した実施形態では、第2スラスト面20は、第1径方向位置21よりも径方向外側に位置する領域27の少なくとも一部において、第1径方向位置21よりも第1スラスト面10に近づいて位置するように構成される。
すなわち図9に示した実施形態では、円環状の凹部25よりも径方向外側の領域の少なくとも一部は、凹部25の底面25aよりも第1スラスト面10に近づいて位置している。
したがって、図9に示した実施形態では、第1径方向位置21よりも径方向外側に位置する領域27の少なくとも一部において軸方向に沿ったスラスト部材4の寸法が第1径方向位置21における軸方向に沿ったスラスト部材4の寸法よりも大きくすることができる。例えば、図示した各実施形態のようにスラスト部材4が径方向に沿って延在する板状の部材であれば、図9に示した実施形態に係るスラスト部材4と同様とすることによって、第1径方向位置21よりも径方向外側に位置する領域27の少なくとも一部においてスラスト部材4の厚さを大きくしてスラスト部材4の強度を確保できる。
【0038】
(パッド200の一実施形態について)
図10を参照して、第2スラスト面20におけるパッド200の一実施形態について説明する。なお、図10では、スラスト部材4を軸方向から見た状態を表している。
図2図9に示した幾つかの実施形態では、スラスト部材4は、図10に示したパッド200を備えていてもよい。図10に示したパッド200は、第2スラスト面20に形成されている。
【0039】
図10に示したパッド200は、第2スラスト面20において、凹部211と、凹部211の径方向外側に形成された外側堰部213と、凹部211の径方向内側に形成された内側堰部215とが、周方向に複数設けられている。
図10に示したパッド200では、複数の凹部211のそれぞれは、連通孔217を介して挿通孔41と連通している。連通孔217のそれぞれは、回転軸2の周方向における凹部211の中心位置211Cに対して回転軸2の回転方向上流側にオフセットされて配置されている。なお、図10では、回転軸2の回転方向を矢印Rによって示している。
図10に示したパッド200では、周方向で隣り合う2つの凹部211の間にランド部219が形成されている。
【0040】
図10に示したパッド200では、凹部211が周方向に複数配置されているので、直交面Sに対して傾斜するように構成された第1スラスト面10が軸線AXを中心に回転する際にスクイズ効果がより効果的に得られる。また、図10に示したパッド200によれば、エンドミル等によって凹部211を容易に形成できるので、加工が容易である。
【0041】
図10に示したパッド200では、挿通孔41から複数の連通孔217のそれぞれを介して複数の凹部211のそれぞれに潤滑油が流入するが、この潤滑油は、回転軸2の回転の影響により、回転方向下流側に向かう速度成分を有する。そして、連通孔217のそれぞれが回転軸2の周方向における凹部211の中心位置211Cに対して回転軸2の回転方向上流側にオフセットされて配置されているため、複数の凹部211のそれぞれに潤滑油が流入し易くなる。これにより、それぞれの凹部211に流入した潤滑油が凹部211から第1スラスト面10と第2スラスト面20との間の隙間(第1スラスト面10とランド部219との隙間)に流れ込みやすくなり、スラスト軸受装置1の負荷能力を確保し易くなる。
【0042】
(パッド200の他の実施形態について)
図11を参照して、第2スラスト面20におけるパッド200の他の実施形態について説明する。図11では、スラスト部材4を軸方向から見た状態を表している。図11では、後述する円環溝45についての説明の便宜上、コンプレッサ側スラストカラー3の各部と寸法を対比するために、コンプレッサ側スラストカラー3についての軸線AXに沿った断面図を併記している。なお、図11に示したコンプレッサ側スラストカラー3は、説明の便宜上、コンプレッサ側第1スラスト面310は上述した直交面Sに対して傾斜させていない。
【0043】
図2図9に示した幾つかの実施形態では、スラスト部材4は、図11に示したパッド200を備えていてもよい。図11に示したパッド200は、第2スラスト面20に形成されている。
図11に示したパッド200は、第2スラスト面20においてテーパ部221とランド部229とが周方向に複数設けられたパッド200であり、いわゆるテーパランド型スラスト軸受のパッド200である。図11に示したパッド200では、それぞれのテーパ部221の径方向外側に外側堰部223が形成されている。
【0044】
(円環溝45について)
図2図9に示した幾つかの実施形態では、スラスト部材4は、図10及び図11に示したパッド200の径方向外側の領域において図11に示した円環溝45を備えていてもよい。図11に示した円環溝45は、一端面4a及び他端面4bの何れに設けられていてもよい。すなわち、図2図9に示した幾つかの実施形態では、スラスト部材4は、第2スラスト面20において、周方向に延在する円環溝45を有していてもよい。円環溝45は、円環溝45の内周縁45aの径が第1スラスト面10の外周縁11の径よりも小さく、円環溝45の外周縁45bの径が第1スラスト面10の外周縁11の径よりも大きい。
【0045】
図11に示した円環溝45によれば、円環溝45によって第1スラスト面10の外周縁11近傍の領域と第2スラスト面20との接触を抑制しつつ、円環溝45に溜まった潤滑油によってスクイズ効果がより効果的に得られる。
【0046】
本開示の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャ100は、回転軸2の一方端に取り付けられたタービンインペラ103と、回転軸2の他方端に取り付けられたコンプレッサインペラ105と、上述した何れかの実施形態に係るスラスト軸受装置1と、を備える。
これにより、ターボチャージャ100の耐久性を確保しつつ、ターボチャージャ100の良好な過渡応答性を確保できる。
【0047】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述したような、直交面Sに対して傾斜するように構成された第1スラスト面10は、コンプレッサ側スラストカラー3又はタービン側スラストカラー9の何れか一方にだけ設けられていてもよい。
【0048】
上述した幾つかの実施形態では、スラスト軸受装置1は、ターボチャージャ100における回転軸2のスラスト力を支持するための軸受装置であったが、ターボチャージャ100以外の他の回転機器における回転軸のスラスト力を支持するための軸受装置であってもよい。この場合、潤滑用の流体は、潤滑油でなく他の液体であってもよく、気体であってもよい。
【0049】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るスラスト軸受装置1は、回転軸2と、回転軸2に嵌合された、第1スラスト面10を有するカラー部材としてのコンプレッサ側スラストカラー3及びタービン側スラストカラー9と、回転軸2が挿通される挿通孔41、及び、該挿通孔41の周囲に設けられてカラー部材の第1スラスト面10と対向する第2スラスト面20を有するスラスト部材4とを備える。第1スラスト面10は、第1スラスト面10と第2スラスト面20との間の距離Lxが回転軸2の回転に伴って周期的に増減するように、回転軸2の軸線AXと直交する直交面Sに対して傾斜するように構成されている。
【0050】
上記(1)の構成によれば、第1スラスト面10と第2スラスト面20との間の距離Lxが回転軸2の回転に伴って周期的に増減することで、第1スラスト面10と第2スラスト面20との間でスクイズ効果が生じて、スラスト荷重の負荷能力を高められる。そのため、スラスト荷重を負担する摺接面の面積、すなわち第1スラスト面10及び第2スラスト面20の面積を抑制してもスラスト荷重の負荷能力の低下を抑制できる。したがって、上記(1)の構成によれば、第1スラスト面10及び第2スラスト面20の面積の抑制による機械損失の抑制と、スラスト荷重の負荷能力の低下の抑制とを両立できる。
【0051】
上述したように、第1スラスト面10の外周縁11のうち第2スラスト面20との距離Lxが最も小さくなる第1外周位置13が存在する角度位置を第1角度位置θ1と定義する。
また、第1角度位置θ1における第1スラスト面10の内周縁15である第1内周位置17と、第1角度位置θ1と180度異なる第2角度位置θ2における第1スラスト面10の内周縁15である第2内周位置18とを通過する仮想線を第1仮想線VL1と定義する。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、第1スラスト面10は、第1仮想線VL1と回転軸2の軸線AXとを含む断面において、第1外周位置13が、第1仮想線VL1を挟んで第2スラスト面20の反対側に位置するように構成される。
【0052】
上記(2)の構成によれば、第1外周位置13が、第1仮想線VL1よりも第2スラスト面20から離れているので、第1外周位置13の近傍において第1スラスト面10が第2スラスト面20と接触し難くなる。これにより、スラスト軸受装置1の信頼性及び耐久性を高めることができる。
【0053】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、第1スラスト面10は、第2スラスト面20に対して摺動するように形成された円錐面12を含んでいる。
【0054】
上記(3)の構成によれば、上記円錐面12が円錐の頂部側をスラスト部材4の方に向けるように形成されていれば、第1スラスト面10が平面である場合と比べて、第1スラスト面10の外周縁11を第2スラスト面20から離すことができる。これにより、外周縁11の近傍において第1スラスト面10が第2スラスト面20と接触し難くなり、スラスト軸受装置1の信頼性及び耐久性を高めることができる。
【0055】
第2スラスト面20において、第1スラスト面10の外周縁11と対向する径方向位置を第1径方向位置21と定義する。
また、第2スラスト面20において、最も径方向内側の位置を第2径方向位置22と定義する。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、第2スラスト面20は、第1径方向位置21が第2径方向位置22よりも、第1スラスト面10から離れて位置するように構成される。
【0056】
上記(4)の構成によれば、第2スラスト面20のうち、第1スラスト面10の外周縁11と対向する第1径方向位置21が第2径方向位置22よりも第1スラスト面10から離れるので、第1径方向位置21の近傍において第1スラスト面10が第2スラスト面20と接触し難くなる。これにより、スラスト軸受装置1の信頼性及び耐久性を高めることができる。
【0057】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、第2スラスト面20は、第1径方向位置21よりも径方向外側に位置する領域27の少なくとも一部において、第1径方向位置21よりも第1スラスト面10に近づいて位置するように構成される。
【0058】
上記(5)の構成によれば、第1径方向位置21よりも径方向外側に位置する領域27の少なくとも一部において軸方向に沿ったスラスト部材4の寸法が第1径方向位置21における軸方向に沿ったスラスト部材4の寸法よりも大きくすることができる。例えば、スラスト部材4が径方向に沿って延在する板状の部材であれば、上記(5)の構成によって、第1径方向位置21よりも径方向外側に位置する領域27の少なくとも一部においてスラスト部材4の厚さを大きくしてスラスト部材4の強度を確保できる。
【0059】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、スラスト部材4は、第2スラスト面20において、凹部211と、凹部211の径方向外側に形成された外側堰部213と、凹部211の径方向内側に形成された内側堰部215とが、周方向に複数設けられている。
【0060】
上記(6)の構成によれば、凹部211が周方向に複数配置されているので、直交面Sに対して傾斜するように構成された第1スラスト面10が軸線AXを中心に回転する際にスクイズ効果がより効果的に得られる。また、上記(6)の構成によれば、エンドミル等によって凹部211を容易に形成できるので、加工が容易である。
【0061】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、複数の凹部211のそれぞれは、連通孔217を介して挿通孔41と連通している。連通孔217のそれぞれは、回転軸2の周方向における凹部211の中心位置211Cに対して回転軸2の回転方向上流側にオフセットされて配置されている。
【0062】
上記(7)の構成によれば、挿通孔41から複数の連通孔217のそれぞれを介して複数の凹部211のそれぞれに流体が流入するが、この流体は、回転軸2の回転の影響により、回転方向下流側に向かう速度成分を有する。そして、連通孔217のそれぞれが回転軸2の周方向における凹部211の中心位置211Cに対して回転軸2の回転方向上流側にオフセットされて配置されているため、複数の凹部211のそれぞれに流体が流入し易くなる。これにより、それぞれの凹部211に流入した流体が凹部211から第1スラスト面10と第2スラスト面20との間の隙間に流れ込みやすくなり、スラスト軸受装置1の負荷能力を確保し易くなる。
【0063】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、スラスト部材4は、第2スラスト面20において、周方向に延在する円環溝45を有する。円環溝45は、円環溝45の内周縁45aの径が第1スラスト面10の外周縁11の径よりも小さく、円環溝45の外周縁45bの径が第1スラスト面10の外周縁11の径よりも大きい。
【0064】
上記(8)の構成によれば、円環溝45によって第1スラスト面10の外周縁11近傍の領域と第2スラスト面20との接触を抑制しつつ、円環溝45に溜まった流体によってスクイズ効果がより効果的に得られる。
【0065】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャ100は、回転軸2の一方端に取り付けられたタービンインペラ103と、回転軸2の他方端に取り付けられたコンプレッサインペラ105と、上記(1)乃至(8)の何れかの構成のスラスト軸受装置1と、を備える。
【0066】
上記(9)の構成によれば、上記(1)乃至(8)の何れかの構成のスラスト軸受装置1を備えるので、ターボチャージャ100の耐久性を確保しつつ、ターボチャージャ100の良好な過渡応答性を確保できる。
【符号の説明】
【0067】
1 スラスト軸受装置
2 回転軸
3 コンプレッサ側スラストカラー(カラー部材)
4 スラスト部材
9 タービン側スラストカラー(カラー部材)
10 第1スラスト面
11 外周縁
12 円錐面
13 第1外周位置
15 内周縁
17 第1内周位置
18 第2内周位置
20 第2スラスト面
21 第1径方向位置
22 第2径方向位置
25 凹部
27 領域
32 フランジ部
41 挿通孔
45 円環溝
92 フランジ部
100 ターボチャージャ
103 タービンインペラ
105 コンプレッサインペラ
200 パッド
211 凹部
213 外側堰部
215 内側堰部
217 連通孔
219 ランド部
310 コンプレッサ側第1スラスト面
430 コンプレッサ側第2スラスト面
490 タービン側第2スラスト面
910 タービン側第1スラスト面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11