(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】道路舗装の凹凸を認識する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B60W 40/06 20120101AFI20230710BHJP
B60W 40/10 20120101ALI20230710BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230710BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20230710BHJP
【FI】
B60W40/06
B60W40/10
G08G1/00 J
G01M99/00 Z
(21)【出願番号】P 2021566048
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(86)【国際出願番号】 IB2020054196
(87)【国際公開番号】W WO2020225699
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】102019000006613
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ ボルドリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ アレバ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドラ マグリオッツィ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットリオ ニコロシ
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-095135(JP,A)
【文献】特開2017-223640(JP,A)
【文献】特表2018-524223(JP,A)
【文献】特開2004-237881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0244065(US,A1)
【文献】特開2018-120409(JP,A)
【文献】特開2017-021584(JP,A)
【文献】特開2013-079889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 40/00 ~ 40/13
B60W 60/00
G08G 1/00 ~ 1/16
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装道路における凹凸を認識する方法において、
(A)予備的試験ステップであって、順次に、
- 自動車の異なる速度で異なる凹凸上において空気タイヤを走行させる及び/又は衝撃を受けさせることによって試験を実施するサブステップ、
- 試験中に垂直方向加速度を取得するサブステップ、及び
- 実施した試験に関する垂直方向加速度の標準偏差を舗装道路の凹凸に関連付けるための少なくとも第1モデルを構築するサブステップ、
を含む、該予備的試験ステップと、
(B)実認識ステップであって、順次に、
- 前記垂直方向加速度を取得するサブステップ、
- 垂直方向加速度の高域通過フィルタ処理を遂行するサブステップであり
、高域通過フィルタにおける最小フィルタ処理閾値を0.1Hz以下とし、高域通過フィルタ処理のサブステップは、直線的2~25メートルの長
さを有する可変長さの舗装道路の基準区域上で実施する、該垂直方向加速度の高域通過フィルタ処理サブステップ、
- 前記垂直方向加速度を高速フーリエ変換によって処理するサブステップ、
- 前記処理した垂直方向加速度の前記標準偏差を関連周波数での高速フーリエ変換によって計算するサブステップであって、前記関連周波数は
、1.5Hz~3Hzである前記自動車のサスペンションシステムの第1振動周波数レンジを有する、該計算サブステップ、及び
- 前記第1モデルと、前記関連周波数での高速フーリエ変換によって処理した垂直方向加速度の標準偏差との比較に基づいて前記舗装道路における凹凸の存在及び寸法を認識するサブステップ、
を含む、該実認識ステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記垂直方向加速度を取得するサブステップは、少なくとも10Hzのサンプリング・レートで実施する、方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、前記関連周波数は、自動車シャシーの第2振動周波数レンジを含む、方法。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか1項記載の方法において、前記ステップ(B)は、さらに、GPS信号によって車両位置に関する情報を取得するサブステップ、及び前記車両位置に基づいていかなる凹凸をも位置付けするサブステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項記載の方法において、前記ステップ(A)は、さらに、異なるタイプの自動車における異なるタイプの空気タイヤを走行させる及び/又は衝撃を受けさせることによって前記試験を実施するサブステップ、及び前記垂直方向加速度の標準偏差を空気タイヤのタイプ及び/又は自動車に関連付けるため、多数のモデルを構築するサブステップを含む、方法。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1項記載の方法において、
前記ステップ(A)は、以下のサブステップ、すなわち、
- 前記実施される試験中に、前記ホイール速度及び自動車の速度を取得し、実施される前記試験に関する正規化したホイール速度を、前記自動車のホイール速度と対応するそれぞれの自動車の速度との間における比によって計算するサブステップ、及び
- 前記正規化したホイール速度の標準偏差を前記舗装道路の凹凸に関連付けするため、少なくとも1つの第2モデルを構築するサブステップ
を含み、
前記ステップ(B)は、以下のサブステップ、すなわち、
- 前記自動車のホイールにおけるステアリング角度を取得するサブステップ、
- 前記自動車のホイールにおけるステアリング角度を高速フーリエ変換によって取得するサブステップ、
- 前記高速フーリエ変換によって処理される前記ホイールにおけるステアリング角度の周波数成分内で最小閾値を決定するサブステップ、
- 前記ホイール速度を取得するサブステップ、
- 前記自動車の速度を取得するサブステップ、
- 前記ホイール速度とそれぞれに対応する前記自動車の速度との間における比によって、前記正規化したホイール速度を計算するサブステップ、
- 前記ホイール速度又は前記正規化したホイール速度の高域通過フィルタ処理を前記最小閾値の適用により実施するサブステップ、
- 前記正規化したホイール速度の標準偏差を計算するサブステップ、
を含み、
前記舗装道路における凹凸の存在を認識するサブステップは、前記第1モデルと、前記関連周波数での高速フーリエ変換により処理した垂直方向加速度の標準偏差との間の比較、及び前記第2モデルと前記正規化したホイール速度の標準偏差との間の比較の双方を使用することを含む、方法。
【請求項7】
舗装道路における凹凸を認識するため、取得デバイス(11)及び処理デバイス(12、12
*、12
**)を備えるシステム(1、1
*、1
**)であって、
前記取得デバイス(11)は、
・空気タイヤを装着した2つ又はそれ以上のホイールを設けた自動車(2)に車載して据え付けられる、
・前記自動車(2)の車両バス(20)に接続される、及び
・以下をするよう構成される、すなわち、
- 前記車両バス(20)から垂直方向加速度を表している信号を取得する、並びに
- 前記垂直方向加速度を表している振幅を出力として供給する
よう構成されており、
前記処理デバイス(12、12
*、12
**)は、
・舗装道路における凹凸を認識するための少なくとも1つのモデルを記憶し、また前記取得デバイス(11)から前記垂直方向加速度を表している振幅を受信するよう構成され、
・以下のことをするようプログラムされる、すなわち、
- 前記垂直方向加速度に関する振幅を処理し、また前記垂直方向加速度に関する振幅の標準偏差を計算し、
- 高速フーリエ変換により前記垂直方向加速度に関する振幅の標準偏差を処理し、
- 前記モデルと前記垂直方向加速度に関する振幅の標準偏差との間における比較に基づいて舗装道路の凹凸の存在及び寸法を認識する
ようプログラムされている、システム。
【請求項8】
請求項7記載のシステムにおいて、前記取得デバイス(11)は、前記自動車(2)のシャシーに固着/連結され、この固着/連結は
、前記自動車(2)のシャシーが受けるのと同一の振動を前記取得デバイス(11)が受けるように行われる、システム。
【請求項9】
請求項7又は8記載のシステムにおいて、前記取得デバイス(11)は、前記自動車(2)のOBDコネクタ近傍に配置される、システム。
【請求項10】
請求項7~9のうちいずれか1項記載のシステムにおいて、前記処理デバイス(12
*)は、前記取得デバイス(11)に対して遠隔無線接続されるクラウド型コンピューティング・システム(12
*)である、システム。
【請求項11】
請求項7~9のうちいずれか1項記載のシステムにおいて、前記処理デバイス(12
**)は、前記自動車(2)に車載して据え付けられた電子制御ユニット(12
**)である、システム。
【請求項12】
請求項1記載の方法において、前記高域通過フィルタ処理のサブステップは、直線的5~10メートルの長さを有する可変長さの舗装道路の基準区域上で実施する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装道路の凹凸を認識する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路上で走行する自動車用の安全性及び快適性に関する要件を満たすため、ほぼ規則正しくまた変形がほとんどない転がり面を確保するよう設計しなければならない。既知のように、実際、舗装道路上における任意な障害物(例えば、歩道、道にできた穴(pothole)又はスピード防止帯(speed ramp))に対する自動車のホイールの衝撃は、ホイールの空気タイヤ、とくに、空気タイヤのカーカス(すなわち、ケーシング)に損傷を与えるおそれがある。
【0003】
より具体的には、空気タイヤの側面で外部から見える隆起は、歩道の縁石(curbs)、スピード防止帯及び道にできた穴のような対象物上での走行が個別のコードを破損させ得る衝撃に起因して、カーカス内で幾つかのコードが破損していることを示す。
【0004】
損傷した空気タイヤ(例えば、幾つかのコードが破損している空気タイヤ)は即座に検出されず、またしたがって、早急には修理又は交換されずに、損傷した空気タイヤでの走行を継続する場合、空気タイヤのカーカスを完全に破損/破壊する、及びホイールリム及び/又はサスペンションを破損するリスクがある(例えば、損傷した空気タイヤが他の障害物にさらに衝突する場合)。
【0005】
これまでは、主にメンテナンス作業の企画立案目的で個別道路の規則性レベルをモニタリングするためシステムが周期的に遂行されてきた。代表的には、このようなモニタリングシステムは、道路舗装の凹凸(irregularity)に対する国際的指標を表す国際ラフネス指数(IRI)の計算に基づく。
【0006】
しかし、近年、自動車分野では潜在的障害物(例えば、歩道、道にできた穴又はスピード防止帯)の存在を自動的及び連続的に検出でき、またそのことをこのような自動車のドライバに即座に報告できる道路表面検出技術に対する強い必要性が存在していた。
【0007】
舗装道路の凹凸を認識する幾つかの方法は、例えば、特許文献1(米国公開特許公報第2017284824号)並びに非特許文献1(Perttunen Mikko et al: “Distributed Road Surface Condition Monitoring Using Mobile Phones” (2011-09-02))及び非特許文献2(Intelligent virtual agent; Anonymous: “Resonance and Natural frequency - Pico Technology” (2017-09-22))に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国公開特許公報第2017284824号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Perttunen Mikko et al: “Distributed Road Surface Condition Monitoring Using Mobile Phones” (2011-09-02)
【文献】Intelligent virtual agent; Anonymous: “Resonance and Natural frequency - Pico Technology” (2017-09-22)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点がなく、またとくに、実現が容易かつ安価である、舗装道路の凹凸を認識する方法を得るにある。
【0011】
本発明の他の目的は、従来技術の欠点がなく、またとくに、実現が容易かつ安価である、舗装道路の凹凸を認識するシステムを得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、添付した特許請求の範囲内で決まる発明に従って舗装道路の凹凸を認識する方法及びシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下に、例示的で非限定的な実施形態を示す添付図面を参照して、本発明を説明する。
【
図1】本発明の目的である舗装道路の凹凸を認識する方法を実現するシステムの第1実施形態を概略的に示す。
【
図2】
図1のシステムの第1変更例を概略的に示す。
【
図3】
図1のシステムの第2変更例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願人は、正規化したホイール速度(すなわち、取得/測定したホイール速度と対応する自動車速度との間の比)は、舗装道路における凹凸で走行する又は衝撃を受けるホイールに相関することを経験的に実証している。以下の文節において用語「凹凸(irregularity)」は、舗装道路上に潜在的に存在する任意な障害物(例えば、歩道、道にできた穴、歩道の縁石、スピード防止帯、等々)に言及する。
【0015】
実施した試験結果に基づいて、本願人は、以下の文節で記載する舗装道路の凹凸を検出する革新的な技術を設計及び開発してきたが、これには、予備的なステップと、及び実際の凹凸検出ステップと、が含まれる。
【0016】
より具体的には、この技術を最適化するための予備的ステップは、自動車の異なる速度で異なるタイプの凹凸で走行する又は衝撃を受ける空気タイヤを予測する試験を実行することを伴う。この予備的試験ステップは、さらに、特定の特性(圧力、サイズ及び剛性の観点における)を有する異なるタイプの空気タイヤ、及び特定の特性(例えば、衝撃吸収材の剛性の観点における)を有する異なるタイプの車両で行われる。
【0017】
とくに、少なくとも3つの試験キャンペーン、すなわち、
(i) 舗装道路の状態及び舗装道路の凹凸タイプ、
(ii) 自動車のタイプ及び空気タイヤのタイプ、
(iii) 自動車の速度
に対する応答を研究するために実施した。
【0018】
図1は、ブロック図により、舗装道路の凹凸を認識するシステム1の機能的アーキテクチャを概略的に示す。
【0019】
とくに、舗装道路の凹凸を認識するシステム1は、2つまたはそれ以上のホイールを装着した自動車に車載した取得デバイス11を備え、各ホイールは、空気タイヤを装着し、また該自動車の車両バス20に接続する(例えば、標準コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)バスに基づく)。
【0020】
好適な変更例によれば、この取得デバイス11は、自動車のシャシーに固着/結合する。とくに、取得デバイス11は、自動車のシャシーが受けるのと同一振動を取得デバイス11が受けるように、自動車のシャシーに連結する。
【0021】
好適には、取得デバイス11は、自動車のOBDコネクタの近傍に配置する。
【0022】
舗装道路の凹凸を認識するシステム1は、さらに、有線又は無線モードで取得デバイス11に接続される処理デバイス12を備える。
【0023】
取得デバイス11は、車両バス20から、自動車の速度及び自動車のホイール速度を表している信号(都合よくは、1時間あたりのキロメートル又はマイルとして表現される速度信号)を取得するよう構成される。さらにまた、取得デバイス11は、自動車の速度及び自動車のホイール速度を表している測定値を出力に供給するよう構成される。
【0024】
取得デバイス11は、さらに、車両バス20から、自動車の走行にリンク付けされる信号を取得するよう構成される。とくに、取得デバイス11は、車両バス20から、垂直方向加速度、ヨー・レート、ピッチ及びロール(ジャイロスコープによる)、車両のステアリング角度、並びに車両位置に関する情報(GPS信号による)のような信号を取得するよう構成される。
【0025】
第1実施形態によれば、処理デバイス12は、取得デバイス11から、自動車の速度及び自動車のホイール速度を表している測定値を受信するよう構成される。加えて、処理デバイス12は、取得デバイス11から、車両のステアリング角度、並びに車両位置に関する情報(GPS信号による)のような測定値も受信するよう構成される。
【0026】
より詳細には、ホイール速度に関する信号取得は、少なくとも50Hzのサンプリング周波数で実施する。好適には、ホイール速度に関する信号取得は、100Hzのサンプリング周波数で実施する。
【0027】
処理デバイス12は、自動車ホイールのステアリング角度を表している測定値の解析を行うことを意図しており、その解析のため、測定値分布を変更する変換を使用する。とくに、処理デバイス12は、可変長さの舗装道路の基準区域上における自動車ホイールのステアリング角度を表している測定値のFFT(高速フーリエ変換)を実施する。舗装道路の基準区域は、可変及び/又は調整可能長さを有し、舗装道路の基準区域は、直線2~25メートルの間における長さ、好適には、直線5~10メートルの間における長さを有する。
【0028】
FFTによるこの解析は、ホイールのステアリング角度を表している測定値の周波数成分の識別を可能にし、さらに、この解析は、基準区域内における自動車ドライバの運転スタイルに従って変動する最小閾値を強調することができる。
【0029】
処理デバイス12は、したがって、自動車のホイール速度を表している測定値のフィルタ処理を実施するよう構成される。自動車のホイール速度を表している測定値のフィルタ処理は、舗装道路の基準区域上で実施する。
【0030】
フィルタ処理は少なくとも高域通過タイプであり、好適には、フィルタ処理は帯域通過タイプとする。ホイールのステアリング角度を表している測定値の解析による先の区域中に決定した最小閾値は高域通過フィルタ内で使用され、このようにして、車両ドライバの運転スタイルではなく舗装道路の凹凸に関する情報を含む信号部分のみを解析することができる。
【0031】
処理デバイス12は、この場合、自動車の速度及びそのホイールの速度を表している測定値に基づいて、自動車の速度に対するホイール速度の比(好適には、百分率比)を表している正規化したホイール速度を計算するよう構成される。
【0032】
代案として、処理デバイス12は、自動車の速度及びそのホイールの速度を表している測定値に基づいて、自動車速度に対するホイール速度の比(好適には、百分率比)を表している正規化したホイール速度を計算し、またその後に舗装道路の基準区域上で正規化したホイール速度のフィルタ処理を実施するよう構成される。
【0033】
処理デバイス12は、この場合、舗装道路の基準区域上で該正規化したホイール速度の標準偏差を計算するよう構成される。
【0034】
上述した予備的ステップは、舗装道路に凹凸が存在する基準区域上での正規化したホイール速度の標準偏差を舗装道路の凹凸存在に関連付けるため、実施した試験結果に基づいて、1つ又はそれ以上の所定モデルを決定するステップを伴う。基本的に、予備的試験ステップは、順次に、異なる凹凸上において自動車の異なる速度で空気タイヤを走行させ及び/又は衝撃を受けさせることによって試験を実施するサブステップ、実施する試験中にホイール速度及び自動車速度を取得し、また実施されるそれら試験に関して、ホイール速度とそれぞれに対応する自動車速度との比によって正規化したホイール速度を計算するサブステップ、及び正規化した速度の標準偏差を舗装道路における凹凸と関連付けるための少なくとも1つのモデルを構築するサブステップを含む。好適には、予備的試験ステップは、空気タイヤのタイプ及び自動車のタイプに基づいて多数のモデルの構築を伴う。
【0035】
正規化したホイール速度の標準偏差は、予備的試験ステップ中に発現した所定モデルと比較し、またこれを使用して舗装道路における凹凸存在を認識する。そのとき認識された凹凸は、車両位置(GPS信号による)に関連する情報によって位置付けすることができる。
【0036】
他の実施形態によれば、処理デバイス12は、取得デバイス11から、垂直方向加速度(z軸に沿う)を表している測定値を受信するよう構成される。さらにまた、処理デバイス12は、取得デバイス11から、ステアリング角度を表している測定値及び車両位置(GPS信号による)に関連する情報を受信するよう構成される。取得デバイス11は、さらに、自動車の走行に関する信号を、車両バス20から取得し、また処理デバイス12に送信するよう構成される。とくに、この取得デバイス11は、車両バス20からヨー・レート、ピッチ及びロール(ジャイロスコープによる)のような信号を取得するよう構成される。
【0037】
より詳細には、垂直方向加速度に関する信号取得は、少なくとも10Hzのサンプリング周波数で実施する。
【0038】
処理デバイス12は、この場合、初期的に垂直方向加速度を表している測定値のフィルタ処理を実施するよう構成される。垂直方向加速度を表している測定値のフィルタ処理は、可変長さの舗装道路における基準区域上で実施する。舗装道路における基準区域は可変及び/又は調整可能な長さを有し、舗装道路における基準区域は、直線的2~25メートルの長さ、好適には、直線的5~10メートルの長さを有する。
【0039】
フィルタ処理は、好適には高域通過タイプであり、高域通過フィルタの最小閾値は、0.1Hz以下とする。
【0040】
高域通過フィルタ処理を実施した後、処理デバイス12は、その測定値の分布を変更させる変換によって垂直方向加速度を表している測定値の解析を意図する。とくに、処理デバイス12は、基準区域上における垂直方向加速度を表している測定値のFFT(高速フーリエ変換)を実施する。
【0041】
FFTによるこの解析は、基準区域上における垂直方向加速度を表している測定値の周波数成分の識別を可能にする。
【0042】
処理デバイス12は、この場合、基準区域上における垂直方向加速度を表している測定値の標準偏差を計算するよう構成される。とくに、処理デバイス12は、基準区域上におけるまた関連周波数で垂直方向加速度を表している測定値の標準偏差を計算するよう構成される。好適には、この関連周波数は、自動車サスペンションシステムにおける第1振動周波数レンジを含み、好適には、この第1振動周波数レンジは1.5Hz~3Hzである。好適には、関連周波数は、さらに、自動車シャシーの第2振動周波数レンジも含む。
【0043】
0.1Hz以下である高域通過フィルタの最小閾値及び自動車サスペンションシステムにおける振動周波数レンジ(1.5Hz~3Hz)は、処理デバイス12の計算上の負担を超えることなく信頼性の高い結果が得られるようにできることが経験的に実証された。同様に、信頼性の高い結果の観点で最良結果は、道路表面の基準部分が直線2~25メートルの間における長さ、好適には、直線5~10メートルの間における長さを有するときに得られることが経験的に実証された。
【0044】
上述した予備的ステップは、基準区域上における及び関連周波数での垂直方向加速度を表している測定値の標準偏差を舗装道路の凹凸存在及びサイズに関連付けるため、実施した試験結果に基づいて、1つ又はそれ以上の所定モデルを決定するステップを伴う。
【0045】
基本的に、予備的試験ステップは、順次に、自動車の異なる速度で異なる凹凸上において空気タイヤを走行させる及び/又は衝撃を受けさせることによって試験を実施するサブステップ、実施する試験中に垂直方向加速度を取得するサブステップ、及び垂直方向加速度の標準偏差を舗装道路における凹凸の存在及びサイズと関連付けるための少なくとも1つのモデルを構築するサブステップを含む。
【0046】
好適には、予備的試験ステップは、空気タイヤのタイプ及び自動車のタイプに基づいて多数のモデルの構築を伴う。
【0047】
基準区域上での垂直方向加速度を表している測定値の標準偏差は、予備的試験ステップ中に発現した所定モデルと比較し、またこれを使用して舗装道路における凹凸存在を認識する。そのとき認識された凹凸は、車両位置(GPS信号による)に関連する情報によって位置付けすることができる。
【0048】
先の文節で上述した第1及び第2の実施形態は、舗装道路における凹凸存在を認識するために、二者択一的に使用することができる。先の文節で上述した第1及び第2の実施形態は、舗装道路における凹凸存在をより高い精度かつより高い信頼性で認識するために、同時かつ並列的に使用することができる。
【0049】
図2は、舗装道路における凹凸を認識するための第1変更例であるシステム1
*を概略的に示し、この場合、処理デバイス12は、取得デバイス11に遠隔無線接続される(例えば、GSM、GPRS、EDGE、HSPA、UMTS、LTE、LTEアドバンスド、及び/又は5世代(又はそれをも超えた世代)の無線通信システムのような、1つ又はそれ以上の移動通信技術による)クラウド型コンピューティング・システム12
*で実装/実施される。
【0050】
これとは対照的に、
図3につき説明すると、舗装道路における凹凸を認識するための第2変更例であるシステム1
**においては、処理デバイス12は、自動車2における車載の自動車用電子制御ユニット(ECU)12
**で実装/実施される。この電子制御ユニット12
**は、都合よくは、舗装道路における凹凸を認識するのに専用特化された制御ユニット、又は舗装道路の凹凸認識をも含む種々のタスクに専用化された制御ユニットとすることができる。