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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】車両用の温調システムおよび温調方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/22 651B
B60H1/22 651C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022148223
(22)【出願日】2022-09-16
【審査請求日】2023-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】足立 知康
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 徹三
(72)【発明者】
【氏名】中川 信也
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕之
(72)【発明者】
【氏名】野山 英人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 克弘
(72)【発明者】
【氏名】森下 昌俊
【審査官】嶋田 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-079169(JP,A)
【文献】特開2019-085102(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011016070(DE,A1)
【文献】国際公開第2019/203675(WO,A1)
【文献】特開2017-077880(JP,A)
【文献】特開平08-197937(JP,A)
【文献】特開2018-124021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の温調システムであって、
圧縮機、高圧側熱交換器、減圧部、および低圧側熱交換器を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路と、を備え、
前記熱媒体回路は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器と、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器と、
前記熱媒体によって加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器と、
前記室外熱交換器から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路と、
前記熱媒体の流れを切り替え可能に構成される複数の流路切替弁と、を含み、
前記熱媒体回路は、
前記複数の流路切替弁の少なくとも1つによる前記熱媒体の流れの切替により、
前記低圧側熱交換器を含む低圧側回路と、前記高圧側熱交換器を含む高圧側回路とを並列的に設定可能に構成されるとともに、
直列に配置される前記低圧側熱交換器および前記高圧側熱交換器を含む直列回路を設定可能に構成され、
前記温調システムは、
前記直列回路を用いる運転モードとして、
前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が、前記温調機器を経由して前記低圧側熱交換器に流入し、さらに前記室外バイパス経路を通り、前記高圧側熱交換器に流入する圧縮機熱源モードを備える、車両用温調システム。
【請求項2】
前記複数の流路切替弁のうちの一つとして、前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体と、前記低圧側熱交換器から流出した前記熱媒体との両方が流通可能に構成されている両方流通弁を備え、
前記圧縮機熱源モードにおいては、
前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が、前記両方流通弁を介して前記低圧側熱交換器に流入し、又は前記両方流通弁を迂回して前記低圧側熱交換器に流入し、さらに前記両方流通弁を迂回して前記高圧側熱交換器に流入する、
請求項1に記載の車両用温調システム。
【請求項3】
前記低圧側熱交換器から前記熱媒体を迂回させる低圧側バイパス経路と、
前記低圧側熱交換器と前記低圧側バイパス経路との前記熱媒体の流量比を調整可能に構成される低圧側流量調整弁と、を備える、
請求項1または2に記載の車両用温調システム。
【請求項4】
前記高圧側熱交換器から前記熱媒体を迂回させる高圧側バイパス経路と、
前記高圧側熱交換器と前記高圧側バイパス経路との前記熱媒体の流量比を調整可能に構成される高圧側流量調整弁と、を備え、
前記直列回路を用いる運転モードとして、
前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が、前記低圧側熱交換器に流入し、さらに前記室外熱交換器を通り、前記高圧側熱交換器および前記高圧側バイパス経路のうち少なくとも前記高圧側バイパス経路に流入する起動時圧縮機熱源モードを備える、
請求項1または2に記載の車両用温調システム。
【請求項5】
前記起動時圧縮機熱源モードは、前記低圧側熱交換器から流出した前記熱媒体を前記室外熱交換器に流入させる、
請求項4に記載の車両用温調システム。
【請求項6】
前記温調機器から前記熱媒体を迂回させる温調バイパス経路を備える、
請求項4に記載の車両用温調システム。
【請求項7】
前記温調機器に空気を送る送風機を備え、
前記起動時圧縮機熱源モードは、前記送風機を停止させる、
請求項4に記載の車両用温調システム。
【請求項8】
1つ以上の温調対象の一つとしてのバッテリーと、
前記熱媒体を前記バッテリーに供給可能に構成される熱交換経路と、を備える、
請求項1または2に記載の車両用温調システム。
【請求項9】
前記温調機器に空気を送る送風機を備え、
前記温調機器は、
前記送風機による空気流の風上側に配置され、前記低圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が流入可能に構成される第1熱交換器と、
前記空気流の風下側に配置され、前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が流入可能に構成される第2熱交換器と、を備える、
請求項1または2に記載の車両用温調システム。
【請求項10】
前記冷媒回路は、
前記温調機器としての温調熱交換器と共に1つ以上の温調対象のうちの少なくとも1つの加熱または冷却に供される冷媒熱交換器を含み、
前記圧縮機、前記高圧側熱交換器、前記減圧部、および前記冷媒熱交換器を前記冷媒が循環可能に構成される、
請求項1または2に記載の車両用温調システム。
【請求項11】
前記冷媒熱交換器および前記温調機器に空気を送る送風機を備え、
前記冷媒熱交換器は、前記送風機による空気流の風上側に配置され、
前記温調機器は、前記空気流の風下側に配置され、前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が流入可能に構成される、
請求項10に記載の車両用温調システム。
【請求項12】
前記冷媒回路は、
前記圧縮機、前記高圧側熱交換器、前記減圧部としての第1減圧部、および前記低圧側熱交換器を前記冷媒が循環可能に構成される第1冷媒回路と、
前記減圧部としての第2減圧部を含み、前記圧縮機、前記高圧側熱交換器、前記第2減圧部、および前記冷媒熱交換器を前記冷媒が循環可能に構成される第2冷媒回路と、を備える、
請求項10に記載の車両用温調システム。
【請求項13】
前記第1減圧部および前記第2減圧部のいずれも、膨張弁である請求項12に記載の車両用温調システム。
【請求項14】
車両用の温調システムを用いる温調方法であって、
前記温調システムは、
圧縮機、高圧側熱交換器、減圧部、および低圧側熱交換器を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路と、を備え、
前記熱媒体回路は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器と、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器と、
前記熱媒体によって加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器と、
前記室外熱交換器から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路と、
前記熱媒体の流れを切り替え可能に構成される複数の流路切替弁と、を含み、
前記熱媒体回路は、
前記複数の流路切替弁の少なくとも1つによる前記熱媒体の流れの切替により、
前記低圧側熱交換器を含む低圧側回路と、前記高圧側熱交換器を含む高圧側回路とを並列的に設定可能に構成されるとともに、
直列に配置される前記低圧側熱交換器および前記高圧側熱交換器を含む直列回路を設定可能に構成され、
前記温調方法は、
前記直列回路を用いる運転モードとして、
前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が、前記温調機器を経由して前記低圧側熱交換器に流入し、さらに前記室外バイパス経路を通り、前記高圧側熱交換器に流入する圧縮機熱源モードを実施する、車両用温調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に装備される温調システム、およびそれを用いる温調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や、エンジンおよび電動機から車両走行用の駆動力を得る所謂ハイブリッド自動車等の車両においては、熱源が不足しがちな中、冷暖房、除湿、換気等の車両に要求される空調機能の他、バッテリー等の車載機器の熱管理や排熱利用が要求される。そうした要求に対して、従来、ヒートポンプシステムに加え、バッテリーを冷却するチラーやバッテリーを加温するヒータを含むシステム、あるいは、ラジエーターの排熱により加温された水をポンプで温調対象に搬送するシステム等の複数のシステムが用いられてきた。
【0003】
空調および機器の熱管理を統合可能な車両用熱管理システムとしては、冷媒が冷凍サイクルに従って循環する一次ループと、一次ループの冷媒に対して熱を授受する熱媒体(水等)をポンプにより車載機器に搬送する二次ループとを備えたシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の熱管理システムは、冷媒回路の蒸発器および熱媒体外気熱交換器が配置される第1熱媒体回路と、冷媒回路の凝縮器および車室空調ユニットのヒータコアが配置される第2熱媒体回路とを備えている。第1熱媒体回路と第2熱媒体回路とは、第1切替手段および第2切替手段による流路の切り替えにより、非連結の状態(非連結モード)と、低外気温を想定した連結の状態(連結モード)とに切り替えられる。
非連結モード時には、外気の熱を第2熱媒体回路の熱媒体へ汲み上げるヒートポンプ運転が行われる。連結モード時には、蒸発器から流出した熱媒体を熱媒体外気熱交換器へ流入させることなく、凝縮器から流出した熱媒体と合流させ、蒸発器および凝縮器に対して熱媒体を並列に流入させる。第1熱媒体回路と第2熱媒体回路との連結により熱媒体が昇温し、暖房に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6083304号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1における連結モード時には、蒸発器から流出した熱媒体と、凝縮器から流出した熱媒体とが混合されることで、混合前のそれぞれの熱媒体の温度の中間の温度となって蒸発器および凝縮器に流入する。そのため、非連結モードと比べて、凝縮器より流出する熱媒体の温度上昇に時間がかかる。また、室内熱交に流入する熱媒体の流量が低下するので、加熱能力には改善の余地がある。
本開示は、外気温が低いため熱源の確保が難しい状況であっても加熱能力を担保することが可能な車両用の温調システムおよび温調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、車両用の温調システムであって、圧縮機、高圧側熱交換器、減圧部、および低圧側熱交換器を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路と、冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路と、を備える。
熱媒体回路は、冷媒と熱媒体とを熱交換させる高圧側熱交換器と、冷媒と熱媒体とを熱交換させる低圧側熱交換器と、外気と熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器と、熱媒体によって加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器と、室外熱交換器から熱媒体を迂回させる室外バイパス経路と、熱媒体の流れを切り替え可能に構成される複数の流路切替弁と、を含む。
熱媒体回路は、複数の流路切替弁の少なくとも1つによる熱媒体の流れの切替により、低圧側熱交換器を含む低圧側回路と、高圧側熱交換器を含む高圧側回路とを並列的に設定可能に構成されるとともに、直列に配置される低圧側熱交換器および高圧側熱交換器を含む直列回路を設定可能に構成される。
温調システムは、直列回路を用いる運転モードとして、高圧側熱交換器から流出した熱媒体が、温調機器を経由して低圧側熱交換器に流入し、さらに室外バイパス経路を通り、高圧側熱交換器に流入する圧縮機熱源モードを備える。
【0008】
また、本開示は、車両用の温調方法にも展開することができる。
【発明の効果】
【0009】
圧縮機熱源モードにおいて、熱媒体は、外気への放熱を避けて室外バイパス経路を流れつつ、圧縮機の動力により発生した熱を冷媒から受け取り温調対象に搬送する。圧縮機熱源モード時には、高圧側熱交換器から流出した熱媒体が低圧側熱交換器に流入し、さらに低圧側熱交換器から流出して高圧側熱交換器に流入するため、高圧側熱交換器と低圧側熱交換器とは直列に接続されている。
こうした直列接続によれば、高圧側熱交換器と低圧側熱交換器とに対して熱媒体を並列に流入させる場合と比べて、高圧側熱交換器から流出した熱媒体の温度を早く上昇させることができる。また、温調機器の熱媒体循環量が大きいため、熱媒体と温調対象との熱交換量が大きくなる。
また、圧縮機熱源モードでは、高圧側熱交換器および温調機器を経た熱媒体が低圧側熱交換器により冷媒へと放熱されることにより、外気から熱媒体に吸熱する場合と比べて冷媒回路の低圧が上昇し、それに伴い圧縮機に吸入される冷媒の密度が増加することで、冷媒の循環流量が増加する。冷媒循環流量の増加により熱交換能力が向上するので、加熱能力を向上させることができる。
以上より、外気温が低いため熱源の確保が難しい状況であっても加熱能力を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る車両用温調システムを示す回路図である(冷房モード)。
図2図1に記載のシステムのヒートポンプモードによる運転状態を示す図である。
図3図1に記載のシステムの第1ヒータモードによる運転状態を示す図である。
図4図1に記載のシステムの第2ヒータモードによる運転状態を示す図である。
図5】第1実施形態の第1変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(第1ヒータモード)。
図6】第1実施形態の第2変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(第2ヒータモード)。
図7】第1実施形態の第3変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(第2ヒータモード)。
図8】第1実施形態の第4変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(第2ヒータモード)。
図9】第1実施形態の第5変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(第2ヒータモード)。
図10】第1実施形態の第6変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(除湿暖房モード)。
図11図10に記載のシステムの第2ヒータモードによる運転状態を示す図である。
図12】第2実施形態に係る車両用温調システムを示す回路図である(ヒートポンプモード)。
図13図12に記載のシステムの第1ヒータモードによる運転状態を示す図である。
図14図12に記載のシステムの第2ヒータモードによる運転状態を示す図である。
図15】第2実施形態の第1変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(第1ヒータモード)。
図16】第2実施形態の第6変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(除湿暖房モード)。
図17図16に記載のシステムの第2ヒータモードによる運転状態を示す図である。
図18】第2実施形態の第6変形例の一部改変に係る車両用温調システムを示す回路図である(第2ヒータモード)。
図19】第3実施形態に係る車両用温調システムを示す回路図である(冷房モード)。
図20図19に記載のシステムの第1除湿暖房モードによる運転状態を示す図である。
図21図19に記載のシステムの第2除湿暖房モードによる運転状態を示す図である。
図22図19に記載のシステムのヒートポンプモードによる運転状態を示す図である。
図23図19に記載のシステムの第1ヒータモードによる運転状態を示す図である。
図24図19に記載のシステムの第2ヒータモードによる運転状態を示す図である。
図25図19に記載のシステムの直暖第2ヒータモードによる運転状態を示す図である。
図26】第3実施形態の第6変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(第2ヒータモード)。
図27】第3実施形態の第7変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(冷房モード)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1に示す車両用の温調システム1は、例えば、エンジンを備えておらず走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車、あるいは、エンジンおよび電動機から車両走行用の駆動力を得る所謂ハイブリッド自動車等の図示しない車両に装備されている。温調システム1は、乗員が搭乗する車室8の冷暖房、除湿、換気等の空調の他、車両に搭載されているバッテリー装置(電源装置)、走行用モータ、発熱する電子機器等の車載装置の熱管理、排熱回収等を担う。適切な温度や湿度に空調したり、車載装置を適温に管理したりすることを「熱管理」と総称するものとする。
温調システム1、および車載装置に備わる電動機器や電子機器には、車載のバッテリー装置に蓄えられた電力が供給される。車載のバッテリー装置は、車両停止時に外部電源から充電される。
【0012】
〔全体構成〕
温調システム1は、冷媒が循環可能に構成される冷媒回路10と、冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路20と、温調システム1を所定の運転モードに設定し、運転モードに応じて温調システム1の運転状態を制御する制御装置7とを備えている。
その他、温調システム1は、例えば、外気温、車室8内の温度(室温)等を検知するセンサを含むことができる。
【0013】
温調システム1は、乗員によりあるいは制御装置7により選択される下記の複数の運転モードを備えている。
・冷房モードM1(図1
・ヒートポンプモードM2(図2
・第1ヒータモードM3-1(図3
・第2ヒータモードM3-2(図4
温調システム1は、後述するように、少なくとも第2ヒータモードM3-2により、外気温が0℃を大幅に下回る場合でも加熱能力を担保することが可能である。
【0014】
温調システム1に要請される運転モードは、車両が使用される地域によって変わる。例えば、温調システム1は、冷房モードM1を備えていなくてもよい。また、温調システム1が、図1図4にそれぞれ示すモードM1,M2,M3-1,M3-2以外の運転モードを備えていてもよい。
【0015】
〔冷媒回路の構成〕
冷媒回路10は、図1に構成の一例を示すように、圧縮機11と、凝縮器12と、膨張弁13と、蒸発器14とを備えている。冷媒回路10には、冷凍サイクルに従って冷媒が循環する。
冷媒回路10に封入される冷媒としては、公知の適宜な単一冷媒あるいは混合冷媒を用いることができる。例えば、本実施形態の冷媒として、R410A、R32等のHFC(Hydro Fluoro Carbon)冷媒や、R1234ze、R1234yf等のHFO(Hydro Fluoro Olefin)冷媒、あるいは、プロパン、イソブタン等の炭化水素(HC)系冷媒を用いることが可能である。特に、本実施形態の冷媒としてR1234yfを用いることが好ましい。
【0016】
上記に列挙したフロン系または炭化水素系の冷媒を用いる場合は、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルが構成される。
冷媒として二酸化炭素(CO)を用いる場合は、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える遷臨界冷凍サイクルが構成される。その場合でも、本実施形態の凝縮器12と同様に高圧側熱交換器により冷媒が放熱し、本実施形態の蒸発器14と同様に低圧側熱交換器により冷媒が吸熱する作用が得られるから、二酸化炭素冷媒のように遷臨界冷凍サイクルを構成する冷媒も冷媒回路10に採用することができる。
【0017】
圧縮機11は、図示しないバッテリー装置から供給される電力により駆動されるモータを備えた電動圧縮機に相当する。圧縮機11は、図示しないハウジング内に吸入される冷媒を圧縮機構により断熱圧縮して吐出する。
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された冷媒ガスを熱媒体と熱交換させる。
膨張弁13(減圧部)は、凝縮器12から流出した冷媒を減圧させることで断熱膨張させる。膨張弁13としては、制御装置7からの指令に基づき開度を制御可能な電子膨張弁を採用することが好ましい。但し、温度式膨張弁を採用したり、膨張弁13の代わりにキャピラリーチューブを採用したりすることも許容される。
【0018】
蒸発器14は、膨張弁13から流出した冷媒を熱媒体と熱交換させる。蒸発器14により蒸発した冷媒は、圧縮機11により吸入される。
蒸発器14と圧縮機11との間には、図示しないアキュムレータ(気液分離器)を設けることができる。
【0019】
凝縮器12には相対的に高い冷媒圧力(高圧)が与えられ、蒸発器14には相対的に低い冷媒圧力(低圧)が与えられる。冷媒は、高圧と低圧との圧力差に基づき冷媒回路10を循環する。
図1において、低圧側の冷媒の流れは太い実線により示され、高圧側の冷媒の流れは太い破線により示されている。図2以下でも同様である。
【0020】
圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、蒸発器14、およびそれらの要素を接続する冷媒配管は、車室8の外に設置することができる。
【0021】
〔熱媒体回路の構成〕
熱媒体回路20は、凝縮器12および蒸発器14により冷媒と熱を授受可能な熱媒体が循環可能に構成されている。熱媒体は、少なくとも1つ以上の温調対象の冷却または加熱に用いられる。本実施形態における温調対象の一つは、車室8内の空気に相当する。
熱媒体回路20に封入される熱媒体は、液相の状態を維持して熱媒体回路20を循環する水やブライン等の液体である。ブラインとしては、例えば、水およびプロピレングリコールの混合液、あるいは、水およびエチレングリコールの混合液を例示することができる。
【0022】
熱媒体回路20は、図1に構成の一例を示すように、凝縮器12と、蒸発器14と、第1ポンプ21および第2ポンプ22と、室外熱交換器23と、室外バイパス経路24と、室内熱交換器25と、複数の流路切替弁としての第1切替弁31(両方流通切替弁)、第2切替弁32、および第3切替弁33と、配管401~412とを備えている。
【0023】
本実施形態において、第1切替弁31および第2切替弁32は四方弁であり、第3切替弁33は三方弁に相当する。図1に示す冷房モードM1において、第1切替弁31には、蒸発器14から流出した熱媒体と、凝縮器12から流出した熱媒体との両方が流通する。
ここで、各運転モードにおいて、「蒸発器14から流出した熱媒体」は、蒸発器14から流出した後、蒸発器14または凝縮器12に流入する前までの熱媒体を意味する。同様に、「凝縮器12から流出した熱媒体」は、凝縮器12から流出した後、凝縮器12または蒸発器14に流入する前までの熱媒体を意味する。
【0024】
熱媒体回路20は、ポンプ21,22の吸い込み側が大気圧になるようにする機構として、図示しないリザーブタンクを備えることができる。リザーブタンクによれば、熱媒体の昇温による体積膨張によって熱媒体の圧力が増加しても、ポンプ21,22の吸い込み側が大気圧に保たれるので、熱媒体回路20を熱媒体が安定して圧送される。
ポンプ21,22のそれぞれの吸い込み側に個別にリザーブタンクを設けることもできるが、配管401と配管406とに連通する1つのリザーブタンクだけを設けることもできる。その場合、配管401,406とリザーブタンクとを連通する経路には、配管401,406の一方のみをリザーブタンクに連通させるための弁を設けると良い。その弁を後述する直列回路CCの使用時に閉じることにより、連通経路を通じて熱媒体が圧力差により移動することを避けることができる。
【0025】
室内熱交換器25を除く熱媒体回路20の各要素、つまり、凝縮器12、蒸発器14、第1ポンプ21、第2ポンプ22、室外熱交換器23、室外バイパス経路24、および第1~第3切替弁31~33は、車室8の外に設置することができる。
【0026】
凝縮器12には、高圧側冷媒が流れる流路と、熱媒体が流れる流路とが形成されている。高圧側冷媒と熱媒体とが流路の壁を介して接触することで熱交換される。
【0027】
蒸発器14には、低圧側冷媒が流れる流路と、熱媒体が流れる流路とが形成されている。低圧側冷媒と熱媒体とが流路の壁を介して接触することで熱交換される。
【0028】
熱媒体回路20は、凝縮器12から熱媒体を迂回させる凝縮器バイパス経路12Aと、蒸発器14から熱媒体を迂回させる蒸発器バイパス経路14Aとを備えることが好ましい。その場合、熱媒体回路20は、凝縮器12と凝縮器バイパス経路12Aとの熱媒体の流量比を調整可能に構成される凝縮器流量調整弁12Vと、蒸発器14と蒸発器バイパス経路14Aとの熱媒体の流量比を調整可能に構成される蒸発器流量調整弁14Vとを備えることが好ましい。
【0029】
凝縮器流量調整弁12Vおよび蒸発器流量調整弁14Vのいずれも、制御装置7からの指令に基づき開度が制御可能な電動弁であって、三方弁に相当する。なお、流量調整弁としての三方弁は、いずれも流量調整可能な2つの二方弁、または流量調整可能な単一の二方弁に置き換えることができる。例えば、一方の二方弁を凝縮器バイパス経路12Aに配置し、他方の二方弁を配管410に配置することができる。あるいは、単一の二方弁を凝縮器バイパス経路12Aおよび配管410の一方に配置することができる。
蒸発器流量調整弁14Vについても、上記と同様である。
【0030】
凝縮器流量調整弁12Vは、第1切替弁31と、凝縮器12と、凝縮器バイパス経路12Aとに個別に通じるポートを有している。凝縮器12側のポートと凝縮器バイパス経路12A側のポートとのそれぞれの開度に応じて、凝縮器12を流れる熱媒体の流量と、凝縮器バイパス経路12Aを流れる熱媒体の流量とが所定の比率に調整される。配管409から配管410と凝縮器バイパス経路12Aとに分配された熱媒体は、凝縮器バイパス経路12Aの終端で合流する。凝縮器12を流れる熱媒体の流量と、凝縮器バイパス経路12Aを流れる熱媒体の流量との一方は、0であってもよい。
【0031】
蒸発器流量調整弁14Vは、第1切替弁31と、蒸発器14と、蒸発器バイパス経路14Aとに個別に通じるポートを有している。蒸発器流量調整弁14Vにより、上記の凝縮器流量調整弁12Vと同様にして、蒸発器14を流れる熱媒体の流量と、蒸発器バイパス経路14Aを流れる熱媒体の流量とが所定の比率に調整される。配管404から配管405と蒸発器バイパス経路14Aとに分配された熱媒体は、蒸発器バイパス経路14Aの終端で合流する。蒸発器14を流れる熱媒体の流量と、蒸発器バイパス経路14Aを流れる熱媒体の流量との一方は、0であってもよい。
【0032】
第1ポンプ21および第2ポンプ22はいずれも、図示しないモータにより駆動される電動のポンプに相当する。第1ポンプ21および第2ポンプ22にそれぞれ接続されるモータは、図示しないバッテリー装置から供給される電力により駆動される。
第1ポンプ21は、蒸発器14と第2切替弁32とを接続する配管401に設けられている。第1ポンプ21は、蒸発器14から流出した熱媒体を吸入して吐出することで熱媒体を圧送する。
第2ポンプ22は、凝縮器12と第3切替弁33とを接続する配管406に設けられている。第2ポンプ22は、凝縮器12から流出した熱媒体を吸入して吐出することで熱媒体を圧送する。
【0033】
室外熱交換器23は、車室8の外側の外気と、熱媒体とを熱交換させる。室外熱交換器23は、例えば、車両の空気導入口の付近に配置されるラジエーターに相当する。室外送風機23Aは、室外熱交換器23に向けて外気を吹き付ける電動送風機に相当する。車両の走行と、室外送風機23Aの動作とによって室外熱交換器23に供給される外気は、外気と熱媒体との温度差に基づいて、放熱または吸熱する。
【0034】
室外バイパス経路24は、室外熱交換器23から熱媒体を迂回させる。本実施形態の室外バイパス経路24は、第2切替弁32の位置から室外熱交換器23を迂回し、凝縮器流量調整弁12Vと第1切替弁31との間で配管409に接続されている。
【0035】
室内熱交換器25は、室内送風機25Aにより送られる空気と熱媒体とを熱交換させることで車室8内に空調空気を与える。室内送風機25Aは、車室8内の空気(内気)または外気を室内熱交換器25に向けて吹き付ける電動送風機に相当する。
HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)ユニットUは、室内熱交換器25と、室内送風機25Aと、室内送風機25Aにより送られる空気が流れる図示しないダクトとを含んで構成されている。
【0036】
第1~第3切替弁31,32,33の少なくとも1つにより熱媒体の流れが切り替えられることで、熱媒体回路20は、低圧側回路C1および高圧側回路C2を並列的に設定可能に構成されるとともに、直列回路CCを設定可能に構成される。
【0037】
凝縮器12から流出して凝縮器12に戻る熱媒体の高圧側回路C2と、蒸発器14から流出して蒸発器14に戻る低圧側回路C1とは、互いに分離している。以下において、低圧側回路C1および高圧側回路C2のことを並列回路C1,C2と称する場合がある。
並列回路C1,C2が設定されるとき、例えば図1に示すように、凝縮器12から流出した熱媒体と、蒸発器14から流出した熱媒体との両方が第1切替弁31を流通するが、第1切替弁31の内部には、凝縮器12から流出した熱媒体が流れる流路と、蒸発器14から流出した熱媒体が流れる別の流路とが設定されている。本実施形態の第2切替弁32には、蒸発器14から流出した熱媒体のみが流通する。本実施形態の第3切替弁33には、凝縮器12から流出した熱媒体のみが流通する。
【0038】
つまり、凝縮器12から流出した熱媒体と、蒸発器14から流出した熱媒体とは、複数の切替弁31~33のいずれについても、同一の切替弁の同一の流路を同時に流れることがない。熱媒体回路20において、凝縮器12から流出した熱媒体と、蒸発器14から流出した熱媒体とが合流する配管接続部は存在しないため、凝縮器12を含む高圧側回路C2の熱媒体と、蒸発器14を含む低圧側回路C1の熱媒体とは相互に混合されない。
【0039】
並列回路C1,C2を示す図1および図2において、低圧側回路C1を循環する相対的に低温の熱媒体(低温熱媒体)の流れが実線で示され、高圧側回路C2を循環する相対的に高温の熱媒体(高温熱媒体)の流れが一点鎖線で示されている。このとき、熱媒体回路20上の位置Aから位置Bまでは低温媒体のみが流れ、位置Cから位置Dまでは高温媒体のみが流れる。低温熱媒体および高温熱媒体のいずれも圧送されていない経路は、破線で示されている。
【0040】
一方、直列回路CCは、直列に配置される蒸発器14および凝縮器12を含む一つの連続した回路に相当する。直列回路CCが設定されるとき、例えば、図4に示すように、凝縮器12から流出した熱媒体が蒸発器14に流入し、さらに凝縮器12に流入する。
直列回路CCを示す図3および図4においても、相対的に低温の熱媒体の流れが実線で示され、相対的に高温の熱媒体の流れが一点鎖線により示されている。図4を参照すると、並列回路C1,C2が設定される場合とは異なり、蒸発器14から流出し、凝縮器12に流入するまでの熱媒体の流れが実線で示され、凝縮器12から流出し、蒸発器14に流入するまでの熱媒体の流れが一点鎖線で示されている。これは、熱媒体が蒸発器14に流入すると、冷媒への放熱により熱媒体の温度が低下することを表し、熱媒体が凝縮器12に流入すると、冷媒からの吸熱により熱媒体の温度が上昇することを表している。
【0041】
直列回路CCが設定されるとき、熱媒体は、凝縮器12による温度上昇および蒸発器14による温度低下を繰り返しながら、凝縮器12と蒸発器14とを循環する。このとき、熱媒体回路20には、一つの連続した回路が形成されるので、第1ポンプ21および第2ポンプ22の少なくとも一方のみによって、熱媒体を圧送することができる。つまり、第1ポンプ21および第2ポンプ22のいずれか一方の作動を停止させることができるから、仮に温調システム1が並列的な回路C1,C2を用いる運転モードを備えていない場合は、第1ポンプ21および第2ポンプ22の一方のみを備えていれば足りる。
なお、直列回路CCを用いる運転モードでも、2つのポンプ21,22を作動させることで、熱媒体回路20における熱媒体の循環流量を十分に得ることができる。
【0042】
並列的な回路C1,C2のいずれも用いられる場合は、言うまでもなく、熱媒体回路20は2つのポンプ21,22を備え、第1ポンプ21により低圧側回路C1の熱媒体を圧送するとともに、第2ポンプ22により高圧側回路C2の熱媒体を圧送する必要がある。
【0043】
第1~第3切替弁31~33のいずれも、制御装置7からの指令に基づき開閉制御が可能な電動弁であり、熱媒体の流路を切り替え可能に構成される。
第1切替弁31は、凝縮器12と、蒸発器14と、室外熱交換器23と、室内熱交換器25とに個別に接続されるポートを有している。
第2切替弁32は、蒸発器14と、室外熱交換器23と、室外バイパス経路24と、室内熱交換器25とに個別に接続されるポートを有している。
第3切替弁33は、凝縮器12と、室外熱交換器23と、室内熱交換器25とに個別に接続されるポートを有している。
【0044】
第1~第3切替弁31~33は、必要な運転モードの実現に必要な経路を熱媒体回路20に設定するために、適宜な構造の適宜な数の電動弁に代替可能である。
【0045】
制御装置7は、熱負荷に応じて圧縮機11の回転数等に関して駆動制御を行い、冷媒の循環流量を増減させることで、冷房能力または暖房能力を増減させることができる。
また、制御装置7は、例えば、室温、外気温度、熱媒体温度、冷媒の温度または圧力等、室温に相関する物理量をセンサにより検知し、検知された値と目標値との偏差を解消させるように圧縮機11の回転数等をフィードバック制御することにより、室温を目標温度に調整することができる。
【0046】
〔運転モードの説明〕
次に、運転モード毎に温調システム1の作用を説明する。
(並列回路の運転モード)
冷房モードM1(図1):
熱媒体回路20には、第1~第3切替弁31~33、凝縮器流量調整弁12V、および蒸発器流量調整弁14Vに対する制御指令に基づいて、冷房モードM1に対応する回路が設定される。冷房モードM1において、室外バイパス経路24は使用されないので、第2切替弁32の対応するポートは閉じられている。
他の運転モード時にも同様にして、各モードに対応する回路が設定される。
【0047】
圧縮機11、第1ポンプ21、第2ポンプ22、室外送風機23A、および室内送風機25Aは、図示しないバッテリー装置から供給される電力により駆動される。他の運転モード時にも、特に言及しない限り、基本的には同様である。
【0048】
運転モードによらず、第2切替弁32には、蒸発器14から流出した熱媒体のみが流通する。第3切替弁33には、凝縮器12から流出した熱媒体のみが流通する。
【0049】
冷房モードM1時に温調システム1は並列回路C1,C2を使用して運転される。蒸発器14から配管401に流出した熱媒体(低温熱媒体)は、実線の矢印で示すように、第2切替弁32の内部に設定された流路に従って配管402を流れ、室内熱交換器25に流入する。車室8内は、室内送風機25Aにより室内熱交換器25に送られる空気が熱媒体により吸熱され、ダクトから吹き出すことで冷却される。空気から吸熱した熱媒体は、配管403を流れ、第1切替弁31の内部に設定された流路に従って配管404に流出し、蒸発器14へと戻る。
図1および図2に示す例では、蒸発器流量調整弁14Vによる流量調整により、配管404を流れた熱媒体の全量が、蒸発器バイパス経路14Aへは流入せずに、配管405を通じて蒸発器14へと流入する。
【0050】
一方、凝縮器12から配管406に流出した熱媒体(高温熱媒体)は、一点鎖線の矢印で示すように、第3切替弁33の内部に設定された流路に従って配管407を流れ、室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23を流れる熱媒体は、室外送風機23Aにより送られる外気に放熱され、配管408を流れる。そして、第1切替弁31の内部に設定された流路に従って配管409に流出し、凝縮器12へと戻る。
図1および図2に示す例では、凝縮器流量調整弁12Vによる流量調整により、配管409を流れた熱媒体の全量が、凝縮器バイパス経路12Aへは流入せずに、配管410を通じて凝縮器12へと流入する。
【0051】
冷房モードM1によれば、冷媒が熱媒体を介して外気に放熱されることにより、冷媒回路10の高圧の上昇を防ぎつつ、温調システム1を安定して運転させることができる。
【0052】
ヒートポンプモードM2(図2):
ヒートポンプモードM2は、車室8内を暖房するモードに相当し、熱源としての外気から、外気温よりも温度が高い高温熱媒体に熱を汲み上げて車室8まで搬送することで、車室8内を暖房する。
【0053】
ヒートポンプモードM2時にも、温調システム1は並列回路C1,C2を使用して運転される。ヒートポンプモードM2時は、冷房モードM1時とは逆に、高温熱媒体が室内熱交換器25に供給され、低温熱媒体が室外熱交換器23に供給される。
つまり、蒸発器14から流出した低温熱媒体は、実線の矢印で示すように、第2切替弁32および配管411を経由して室外熱交換器23へと流入する。外気から吸熱した熱媒体は、第1切替弁31および蒸発器流量超接触弁14Vを経由して蒸発器14へと戻る。
蒸発器14に流入した熱媒体からの吸熱により冷媒は蒸発し、圧縮機11へと吸入される。圧縮機11から吐出された冷媒は、凝縮器12で熱媒体への放熱により凝縮し、これに伴い熱媒体は昇温する。
【0054】
凝縮器12から流出した高温熱媒体は、一点鎖線の矢印で示すように、第3切替弁33および配管412を経由して室内熱交換器25へと流入する。車室8内を温めた熱媒体は、第1切替弁31および凝縮器流量調整弁12Vを経由して凝縮器12へと戻る。
【0055】
ヒートポンプモードM2は、外気を熱源の一部として利用することにより、外気温が氷点下、例えば-10℃程度まで低下したとしても、圧縮機11やポンプ21,22等の動力増加を抑えつつ、暖房能力を担保することができる。
【0056】
(直列回路を用いるヒータモード)
次に、いずれも直列回路CCを用いる運転モードである第1ヒータモードM3-1および第2ヒータモードM3-2について説明する。外気温が0℃を大幅に下回る場合、例えば-20℃以下にまで外気温が低下した場合は、上述のヒートポンプモードM2により外気から熱媒体に吸熱することができる熱量が少なくなるとともに、圧縮機11の吸入冷媒密度が低下し、圧縮機11の動力が小さくなる。そうした場合でも、第2ヒータモードM3-2により、圧縮機11を熱源として暖房運転を行うことができる。
【0057】
例えば車両が長時間停止した後に温調システム1が起動される場合を想定して、第1ヒータモードM3-1および第2ヒータモードM3-2を説明する。温調システム1の起動後、制御装置7は、第2ヒータモードM3-2に先行して第1ヒータモードM3-1を実施することが好ましい。そうすることで、暖房運転をより早期に立ち上げることができる。
【0058】
第2ヒータモードM3-2は、圧縮機11の動力を温調対象の加熱に用いる。熱媒体から外気への放熱を避けるため、熱媒体を室外熱交換器23から室外バイパス経路24へと迂回させる。
【0059】
車両の長時間停止後の温調システム1の起動時に外気温が0℃を大幅に下回る場合、熱媒体の温度も外気温と同様に低い。そのため、温調システム1が始動された直後は、熱媒体により冷媒が冷却されることで冷媒回路10の低圧が降下し、冷媒の蒸発温度は外気温よりも低くなる。そのため、温調システム1の起動時には、第1ヒータモードM3-1により、車室8内の暖房に優先して、室外熱交換器23により外気から熱媒体に吸熱させた熱を冷媒に伝達することで冷媒を加温すると良い。その後、冷媒回路10の低圧が所定値まで上昇し、冷媒回路10が定常運転することで、圧縮機11の動力から熱媒体に取り出した熱により温調対象を加熱することが可能となるので第2ヒータモードM3-2に移行すると良い。
【0060】
第2ヒータモードM3-2は、例えば抵抗加熱式の電気ヒータと同様に、供給電力に相応の熱量の熱が温調対象に供給される。そのため、「ヒータ」モードと称するが、第2ヒータモードM3-2の名称は、必ずしもこれに限られない。
第1ヒータモードM3-1は、第2ヒータモードM3-2への移行を前提とするモードであるため、第2ヒータモードM3-2と同様の名称を使用するが、第1ヒータモードM3-1の名称も、必ずしもこれに限られない。
【0061】
第1ヒータモードM3-1(図3):
図3を参照し、熱媒体の具体的な流れと共に、第1ヒータモードM3-1の作用を説明する。第1ヒータモードM3-1では、室外熱交換器23により外気から熱媒体に吸熱させるため、室外熱交換器23に熱媒体を流入させる。また、冷媒の昇温を車室8内の暖房に優先させるため、凝縮器12に熱媒体を流入させずに凝縮器バイパス経路12Aへと迂回させることで、冷媒の熱媒体への放熱を防ぐ。そして、蒸発器14において熱媒体から冷媒へと放熱させる。
さらには、室内熱交換器25における空気と熱媒体との熱交換を抑えるために、室内送風機25Aの作動を停止させることが好ましい。
【0062】
第1ヒータモードM3-1では、凝縮器12から熱媒体を迂回させているため、凝縮器12を熱媒体が流れる場合と比べて熱媒体の圧力損失が小さい。
【0063】
蒸発器14から流出した熱媒体は、第2切替弁32を経由して室外熱交換器23へと流入し、外気から吸熱する。図3では、外気からの吸熱により昇温した熱媒体を一点鎖線で示している。室外熱交換器23から流出した熱媒体は、第1切替弁31、凝縮器流量調整弁12Vを経由して凝縮器バイパス経路12Aに流入することで、凝縮器12を迂回する。凝縮器バイパス経路12Aから流出した熱媒体は、第3切替弁33を経由して室内熱交換器25に流入する。しかし、室内送風機25Aが停止しているため、室内熱交換器25における熱媒体と、未空調の冷たい空気との熱交換は抑えられている。室内熱交換器25から流出した熱媒体は、第1切替弁31、および蒸発器流路調整弁14Vを経由して蒸発器14へと戻る。そして、蒸発器14により冷媒へと放熱され、低温熱媒体となって蒸発器14から流出する。
【0064】
室外熱交換器23の出口から、凝縮器バイパス経路12Aおよび室内熱交換器25を経て蒸発器14の入口までの間に亘り、熱媒体と冷媒との間の熱の授受、および熱媒体と空気との間の熱の授受は抑えられている。外気から吸熱した熱媒体は、凝縮器バイパス経路12Aと室内熱交換器25とを通過して、冷媒が流れる蒸発器14まで熱を搬送する。
【0065】
外気温が氷点下の非常に低い状態で車両が停止している間に、熱媒体および冷媒のそれぞれの温度は外気温と同程度にまで下がっている。そのため、温調システム1の起動により圧縮機11の起動が開始され、冷凍サイクルが始動した直後は、冷媒が熱媒体を冷却する。しかし、第1ヒータモードM3-1によれば、外気から熱媒体に吸熱した熱を冷媒に継続的に伝達することで、冷媒回路10の低圧が次第に上昇し、蒸発温度も上昇する。その過程で、冷媒と熱を授受する熱媒体の温度も上昇する。
【0066】
熱媒体の温度が外気温を超えると外気からの吸熱が不十分となるので、制御装置7は、熱媒体が外気温に近づいた時に温調システム1を第2ヒータモードM3-2に移行させると良い。例えば、外気温(例えば-20℃)に対して所定の温度差αだけ低い閾値Tを熱媒体の温度が上回った時に第2ヒータモードM3-2に移行させるとよい。外気温と閾値との差は、運転モードを切り替える指令に対して熱媒体の流れが切り替わるまでに要する時間に対応する温度差等により決定される。
【0067】
第1ヒータモードM3-1における冷媒への入熱量を増加させるため、第1、第2ポンプ21,22のそれぞれのモータの回転数を例えば最大回転数にまで増加させることができる。そうすると、外気から熱媒体を介して冷媒に与えられる熱量に加えて、第1、第2ポンプ21,22の動力に相応の熱量を熱媒体から冷媒に与えることができるとともに、熱媒体の循環流量の増加により熱媒体から冷媒への放熱が促進されるので、冷媒回路10の定常運転への移行が促進される。そのため、起動時から第1ヒータモードM3-1を経て第2ヒータモードM3-2に移行するまでの所要時間を抑えて、車室8内の暖房を早期に開始することができる。
【0068】
図3に示す第1ヒータモードM3-1のとき、外気温や運転状態によっては、凝縮器流量調整弁12Vにより凝縮器12に少流量の熱媒体を流入させたり、蒸発器流量調整弁14Vにより蒸発器バイパス経路14Aに少流量の熱媒体を流入させたりすることは許容される。
【0069】
第2ヒータモードM3-2(図4):
次に、図4を参照し、熱媒体の具体的な流れと共に、第2ヒータモードM3-2について説明する。第2ヒータモードM3-2では、熱媒体から外気への放熱を防ぐため、室外バイパス経路24を通じて室外熱交換器23から熱媒体を迂回させる。このとき室外送風機23Aの作動は停止させてよい。
制御装置7は、第1切替弁31、第2切替弁32、蒸発器流量調整弁14V、凝縮器流量調整弁12V、室外送風機23A、および室内送風機25Aに指令を送ることで、第2ヒータモードM3-2に対応する経路を熱媒体回路20に設定するとともに、室外送風機23Aの作動を停止させ、室内送風機25Aの作動を開始させる。
また、制御装置7は、ポンプ21,22の少なくとも一方のモータを適宜な回転数で作動させる。
【0070】
凝縮器12により冷媒から吸熱した熱媒体は、第3切替弁33を経由して室内熱交換器25へと流入して車室8内の暖房に供される。そして、室内熱交換器25から流出した熱媒体は、第1切替弁31および蒸発器流量調整弁14Vを経由し、蒸発器14および蒸発器バイパス経路14Aのうち少なくとも蒸発器14に流入して冷媒へと放熱される。
蒸発器14から流出した熱媒体は、第2切替弁32から室外バイパス経路24に流入し、第1切替弁31と凝縮器流量調整弁12Vとの間で配管409に合流した後、凝縮器12および凝縮器バイパス経路12Aのうち少なくとも凝縮器12に流入して冷媒から吸熱する。第1ヒータモードM3-1から第2ヒータモードM3-2への切り替え後、凝縮器流量調整弁12Vにより、凝縮器12に流入する熱媒体の流量を次第に増加させると良い。
【0071】
第2ヒータモードM3-2において、熱媒体は、外気への放熱を避けて室外バイパス経路24を流れつつ、圧縮機11の動力により発生した熱を冷媒から受け取り温調対象に搬送する。第2ヒータモードM3-2によれば、外気との熱の出入りがない系により運転されるので、外気温によらず、車室8内の暖房を継続して行うことができる。
【0072】
図4に示す第2ヒータモードM3-2のとき、一点鎖線で示す高温熱媒体は第1切替弁31を通過する。一方、実線で示す低温熱媒体は、室外バイパス経路24の終端24Aが第1切替弁31よりも下流の配管409に接続されているため、第1切替弁31を通過しない。そうすると、第1切替弁31に低温熱媒体と高温熱媒体との両方が通過する場合(冷房モードM1やヒートポンプモードM2)とは異なり、第1切替弁31の内部を流れる熱媒体には温度の異なる熱媒体との間接的接触による熱の出入りがない。そのため、蒸発器14において、冷媒と熱媒体との温度差が低下しないので、加熱能力を担保することができる。
【0073】
乗員の操作により又は温調システム1により暖房運転が選択される場合、制御装置7は、検知された外気温が閾値T(例えば-10℃)に対して高い場合には上述のヒートポンプモードM2を選択することができる。また、制御装置7により、室外熱交換器23に流入する熱媒体の温度が外気温未満であるか否かを判定し、当該熱媒体の温度が外気温未満である場合にのみヒートポンプモードM2を選択することによれば、外気から確実に吸熱することができる。
さらに、制御装置7は、検知された外気温が、閾値Tよりも低い閾値T(例えば-15℃)に対して高いのならば、第2ヒータモードM3-2を選択し、閾値Tに対して外気温が低いのならば第1ヒータモードM3-1を選択することができる。
【0074】
検知された外気温が閾値Tに対して低く、かつ温調システム1の起動直後であるならば、制御装置7は、外気温と閾値Tとを比較することなく、第2ヒータモードM3-2に先行して第1ヒータモードM3-1を選択することができる。あるいは、外気温が閾値Tに対して低い場合の起動直後には、先ず第2ヒータモードM3-2を選択し、そのときに検知された熱媒体や冷媒の温度に所定の閾値を適用することで、第2ヒータモードM3-2を続行するか、第1ヒータモードM3-1に切り替えるかを判定しても良い。
【0075】
第2ヒータモードM3-2に先行して第1ヒータモードM3-1が行われる場合、制御装置7は、温調システム1を第1ヒータモードM3-1にて運転させながら、冷媒回路10が定常状態となるまで待ち、例えば熱媒体の温度が所定の閾値Tを超えると、起動用の第1ヒータモードM3-1から、定常状態の第2ヒータモードM3-2へと運転モードを切り替えることができる。
【0076】
上記の例では、閾値として外気温や熱媒体、冷媒の温度を用いているが、温度の閾値が示す熱媒体や冷媒の状態と同様の状態を示す圧力等の物理量を用いることも可能である。
【0077】
〔本実施形態による主な作用効果〕
【0078】
直列回路CCを用いる第2ヒータモードM3-2のとき、凝縮器12と蒸発器14とは直列に接続されているので、凝縮器12と蒸発器14とに対して熱媒体を並列に流入させる場合と比べて、凝縮器12から流出した熱媒体の温度を早く上昇させることができる。また、室内熱交換器25の熱媒体循環量が大きいため、熱媒体と空気との熱交換量が大きくなる。
【0079】
また、第2ヒータモードM3-2のとき、凝縮器12および室内熱交換器25を経た熱媒体が、蒸発器14により冷媒へと放熱されることにより、ヒートポンプモードM2と比べて冷媒回路10の低圧が上昇し、それに伴い圧縮機11に吸入される冷媒の密度が増加することで、冷媒の循環流量が増加する。冷媒循環流量の増加により熱交換能力が向上し、暖房能力を向上させることができるから、車室8内の温度を早期に目標温度まで到達させることができる。
【0080】
温調システム1によれば、少なくとも第2ヒータモードM3-2を備えることにより、外気温が低いため熱源の確保が厳しい状況であっても、熱源確保に必要な電力を圧縮機11等に供給しながら、加熱能力を担保することができる。
【0081】
加えて、第1ヒータモードM3-1を備えることにより、外気温が氷点下を大幅に下回る状況下で、冷凍サイクルが始動した直後は冷媒が熱媒体を冷却するとしても、外気から吸熱した熱媒体により冷媒を加温することで冷媒回路10の低圧の降下を抑えることができる。そのため、冷媒回路10を定常状態に早期に移行させることができる。
したがって、外気温が0℃を大幅に下回る場合の温調システム1の起動時には第1ヒータモードM3-1から開始し、冷媒回路10が定常状態に移行した状態で第2ヒータモードM3-2に運転モードを切り替えることで、起動直後から第2ヒータモードM3-2で運転する場合と比べて温調対象を早期に目標温度まで到達させることができる。
【0082】
本実施形態の熱媒体回路20には、流量調整弁12V,14Vを除くと、合計で3個の切替弁31~33のみが使用されている。本実施形態の温調システム1によれば、熱媒体回路20の流路切替弁の数を抑えることで、熱媒体回路20の部材コスト、配管接続に要するコスト、および整備に要するコスト等を抑えて簡素に構成しつつ、種々の運転モードを実現することができる。
【0083】
また、本実施形態の温調システム1は、第2ヒータモードM3-2のとき、蒸発器流量調整弁14Vにより蒸発器14とバイパス経路14Aとの熱媒体の流量比を調整することによって、暖房能力を一定にまたは可変に制御することができる。
【0084】
例えば、蒸発器14から流出した冷媒の圧力等の物理量pが所定の閾値Tに対して小さい場合は、蒸発器14に流入する熱媒体の流量が増加するように、蒸発器流量調整弁14Vにより、蒸発器14および蒸発器バイパス経路14Aをそれぞれ流れる熱媒体の流量を調整する。蒸発器14を流れる熱媒体の流量が増加すると、熱媒体から冷媒への放熱量が増加し、冷媒回路10の低圧が上昇することで冷媒循環流量が増加するので暖房能力を増加させることができる。
一方、物理量pが所定の閾値Tに対して大きい場合は、蒸発器14に流入する熱媒体の流量が減少するように、蒸発器流量調整弁14Vにより、蒸発器14および蒸発器バイパス経路14Aをそれぞれ流れる熱媒体の流量を調整すると良い。
閾値Tを増減させることで、暖房能力を増減させて室温を調整することが可能となる。
【0085】
以下、上記実施形態と相違する事項を中心に説明する。既に説明した構成要素には同じ符号を付している。
【0086】
[第1実施形態の第1変形例]
図5に示す車両用の温調システム1-1は、特に第1ヒータモードM3-1に関して、室内熱交換器25から熱媒体を迂回させる室内バイパス経路26を備えている。この室内バイパス経路26に熱媒体を流入させるため、第3切替弁33-1として四方弁が採用されている。
【0087】
第1ヒータモードM3-1のとき、上述したように、室内送風機25Aの作動を停止させることが好ましい。しかしながら、乗員等による操作によって室内送風機25Aが作動した状態のまま第1ヒータモードM3-1を運転する場合があり得る。
そのため、制御装置7は、運転モードとして第1ヒータモードM3-1を選択する場合は、第2切替弁32に指令を送り、熱媒体を室内熱交換器25には流入させないで室内バイパス経路26に流入させるように熱媒体の経路を設定する。室内バイパス経路26には、室内送風機25Aから空気が送られない。
【0088】
したがって、第1実施形態の第1変形例によれば、室内送風機25Aの作動/停止の状態に関わらず、外気から吸熱した熱媒体が車室8内の冷たい空気に放熱されるのを避けることができる。そのため、外気温が低い場合の低圧降下を抑えて冷媒回路10を早期に定常状態に移行させることができる。
【0089】
[第1実施形態の第2変形例]
図6に示す車両用の温調システム1-2は、第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置を上記実施形態(図4等)におけるポンプ21,22の位置から変更したものである。第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置は、第1切替弁31を挟むように、図6の紙面における上方に変更されている。第1ポンプ21は配管408に設けられ、第2ポンプ22は配管403に設けられている。
【0090】
図6に示すように第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置が変更されても、上記実施形態について記載した全ての運転モードM1,M2,M3-1,M3-2は正常に動作する。図6に示す第2ヒータモードM3-2のとき、第1ポンプ21は、熱媒体回路の不使用区間、具体的には第2切替弁32から室外熱交換器23を経由して第1切替弁31までの区間に配置されている。そのため、制御装置7から指令を送って第1ポンプ21の作動を停止させると良い。つまり、第2ヒータモードM3-2のときは、第2ポンプ22のみによって熱媒体回路20の熱媒体が圧送される。
【0091】
[第1実施形態の第3変形例]
図7に示す車両用の温調システム1-3も、第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置を上記実施形態(図4等)におけるポンプ21,22の位置から変更したものである。第1ポンプ21は配管409に設けられ、第2ポンプ22は配管404に設けられている。
図7に示すように第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置が変更されても、上記実施形態について記載した全ての運転モードM1,M2,M3-1,M3-2は正常に動作する。いずれのモードM1,M2,M3-1,M3-2においても、第1ポンプ21および第2ポンプ22は、凝縮器12、蒸発器14、室外熱交換器23、および室内熱交換器25等の要素に向けて熱媒体が圧送される区間に配置されている。
【0092】
第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置は、図示する例には限らず、各運転モードの熱媒体の経路を考慮し、第1ポンプ21および第2ポンプ22の少なくとも一方により熱媒体を圧送することができる範囲で、第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置を適宜に定めることができる。
【0093】
[第1実施形態の第4変形例]
図8に示す車両用の温調システム1-4は、第1の温調対象としての車室8内を冷暖房する他、第2の温調対象としてのバッテリー装置6の温度を調節する。
このシステム1-4の熱媒体回路20は、蒸発器14から流出した相対的に低温の熱媒体をバッテリー装置6に供給可能に構成されるとともに、凝縮器12から流出した相対的に高温の熱媒体をバッテリー装置6に供給可能に構成される。
【0094】
バッテリー装置6は、具体的な図示を省略するが、蓄電池であるバッテリー本体と、必要に応じてバッテリー本体に設けられるバッテリー用熱交換器や放熱部材とを備えている。バッテリー用熱交換器は、例えば、熱媒体と空気とを熱交換させる熱交換器であり、バッテリー本体に向けて空気を送る送風機と共に設けられる。
バッテリー装置6は、バッテリー本体の出力や充電効率を安定させ、かつ劣化を抑えるため、所定の温度範囲内に維持されることが好ましい。
例えば、適温の熱媒体をバッテリー用熱交換器に供給することで温調された空気をバッテリー本体に吹き付ける、あるいはバッテリー本体に熱的に結合させたチューブに適温の熱媒体を供給することにより、バッテリー装置6の温度は適温に調整される。
【0095】
熱媒体回路20は、バッテリー装置6と熱媒体とが直接的にまたは空気等を介して間接的に熱交換可能に構成される熱交換経路414,415と、熱交換経路414,415にそれぞれ対応し、開路/閉路を切り替える四方弁としてのバッテリー用切替弁34,35とを備えている。
第1バッテリー用切替弁34は、例えば、第1切替弁31と蒸発器流量調整弁14Vとの間に配置される。第1バッテリー用切替弁34により、熱媒体が配管404から第1熱交換経路414に流入してバッテリー装置6に供給される状態と、熱媒体が第1熱交換経路414には流入しないで配管404を蒸発器14に向けて流れる状態とに熱媒体の流路を切り替え可能である。
【0096】
第2バッテリー用切替弁35は、例えば、第1切替弁31と凝縮器流量調整弁12Vとの間に配置される。第2バッテリー用切替弁35により、熱媒体が配管409から第2熱交換経路415に流入してバッテリー装置6に供給される状態と、熱媒体が第2熱交換経路415には流入しないで配管409を凝縮器12に向けて流れる状態とに熱媒体の流路を切り替え可能である。
【0097】
冷房モードM1およびヒートポンプモードM2時には、第1バッテリー用切替弁34が位置する第1切替弁31と蒸発器流量調整弁14Vとの間には低温熱媒体が流れ、第2バッテリー用切替弁35が位置する第1切替弁31と凝縮器流量調整弁12Vとの間には、高温熱媒体が流れる。
第2ヒータモードM3-2時には、上記とは逆に、第1バッテリー用切替弁34が位置する第1切替弁31と蒸発器流量調整弁14Vとの間には高温熱媒体が流れ、第2バッテリー用切替弁35が位置する第1切替弁31と凝縮器流量調整弁12Vとの間には、低温熱媒体が流れる。
【0098】
第2ヒータモードM3-2を示す図8を参照し、バッテリー装置6の温度調整の2つのパターンを説明する。
第1パターン:
凝縮器12から流出した高温熱媒体が、室内熱交換器25、第1切替弁31を経由し、第1バッテリー用切替弁34から第1熱交換経路414の往路414Aを流れてバッテリー装置6に供給される。バッテリー装置6と熱交換された熱媒体は、復路414Bを流れて第1バッテリー用切替弁34に戻り、蒸発器14に向けて流れる。この例では第2熱交換経路415は使用されていない。
【0099】
第2パターン:
上記の第1パターンとは逆に、第1熱交換経路414は使用されず、蒸発器14から流出した低温熱媒体が第1切替弁31を経由し、第2バッテリー用切替弁35により、第2熱交換経路415の往路415Aを流れてバッテリー装置6に供給されていてもよい。その場合、バッテリー装置6と熱交換された熱媒体が復路415Bを流れて第2バッテリー用切替弁35に戻り、凝縮器12に向けて流れる。
【0100】
制御装置7は、例えば、バッテリー装置6の温度と、バッテリー装置6の目標温度とに基づき、上記の第1、第2パターンから択一的に選択される温度調整を行うことができる。
【0101】
冷房モードM1(図1)およびヒートポンプモードM2(図3)も、低温熱媒体および高温熱媒体のいずれか一方をバッテリー装置6の温度調整に使用することができる点で、第2ヒータモードM3-2と同様である。
【0102】
なお、温調システム1-4は、第1バッテリー用切替弁34・第1熱交換経路414と、第2バッテリー用切替弁35・第2熱交換経路415とのうち、いずれか一方のみを備えていてもよい。
【0103】
[第1実施形態の第5変形例]
図9に示す車両用の温調システム1-5は、図8の第4変形例に対し、室内熱交換器25から熱媒体を迂回させる室内バイパス経路26を加えたものである。
【0104】
室内バイパス経路26を備えることによれば、ヒートポンプモードM2および図9に示す第2ヒータモードM3-2のときに、室内熱交換器25に熱媒体を供給しないで、つまり車室8内の空調を行わずに、バッテリー装置6のみを温度調整することができる。このとき、図9に示す四方弁としての第3切替弁33の室内熱交換器25に通じるポートは閉じられ、室内バイパス経路26に通じるポートは開かれる。
【0105】
室外熱交換器23から熱媒体を迂回させる室外バイパス経路24-1の終端24Aの位置は、図8に示す位置であっても、図9に示すように、室外熱交換器23と第1切替弁31との間であってもよい。後者の場合は、ポンプ21,22の位置が図6に示す位置に変更されたとしても、第2ヒータモードM3-2時に第1ポンプ21を使用することができる。図6に示す構成の場合、第2ヒータモードM3-2時には第2ポンプ22のみが使用される。
【0106】
[第1実施形態の第6変形例]
図10および図11に示す車両用の温調システム1-6は、ヒートポンプモードM2に基づく除湿暖房モードM4により除湿暖房を行う。そのため、温調システム1-6は、2つの室内熱交換器としての第1熱交換器25-1と第2熱交換器25-2とを備えている。
第1熱交換器25-1は、室内送風機25Aから送られる空気の流れの上流側(風上側)に配置され、第2熱交換器25-2は、同じ空気の流れの下流側(風下側)に配置されている。
【0107】
図10に示す除湿暖房モードM4のとき、第1熱交換器25-1には、蒸発器14から流出し、第2切替弁32を経由した熱媒体が供給されるとともに、第2熱交換器25-2には、凝縮器12から流出し、第3切替弁33を経由した熱媒体が供給される。
【0108】
除湿暖房モードM4のとき、室内送風機25Aから送られる空気は、第1熱交換器25-1を流れる低温熱媒体との熱交換により露点以下に冷却されて除湿された後、第2熱交換器25-2を流れる熱媒体との熱交換により加温されて車室8内に吹き出される。温調システム1-6は、除湿暖房モードM4のときに第1熱交換器25-1に低温熱媒体を流すための配管416,417を備えている。
【0109】
図11は、温調システム1-6の第2ヒータモードM3-2を示している。第2ヒータモードM3-2のとき、凝縮器12から流出した熱媒体が第2熱交換器25-2に供給されることで暖房が行われる。このとき第1熱交換器25-1には熱媒体が供給されていない。
温調システム1-6の図示しない冷房モードM1のときは、蒸発器14から流出した熱媒体が第1熱交換器25-1に供給されることで冷房が行われる。このとき第2熱交換器25-2には熱媒体が供給されていない。
【0110】
HVACユニットUは、第2熱交換器25-2に導入される空気の流量を調整する開度調整が可能な図示しない電動ダンパーを備えていることが好ましい。特に除湿暖房モードM4のとき、制御指令に基づくダンパーの開度調整により、第1熱交換器25-1を通過した空気の流量全体に対する第2熱交換器25-2への導入流量の比率を変化させることで、HVACユニットUから吹き出される空気の温度を室温の目標温度に調整することができる。
【0111】
以上で説明した第1実施形態の第1~第6変形例から、適宜に2つ以上を選択して組み合わせることが可能である。
【0112】
[第2実施形態]
次に、図12図14を参照し、本開示の第2実施形態に係る車両用の温調システム2を説明する。第1実施形態(図1~4)では、第1ポンプ21の吐出側に第2切替弁32が配置されているとともに、第2ポンプ22の吐出側に第3切替弁33が配置されている。それに対して、第2実施形態では、第1ポンプ21および第2ポンプ22の吐出側に第1切替弁31が配置されている。第1~第3切替弁31~33の位置は、第1実施形態に対し、紙面上でほぼ上下反転している。
低温熱媒体の流れを切り替える第2切替弁32は、第2実施形態では三方弁として構成されている。高温熱媒体の流れを切り替える第3切替弁33は、第2実施形態では四方弁として構成されている。
【0113】
第2実施形態の温調システム2も、第1実施形態の温調システム1と同様に下記の運転モードを備えることができる。第1実施形態と同様、冷房モードM1およびヒートポンプモードM2は、並列回路C1,C2を用いる運転モードに相当する。第1ヒータモードM3-1および第2ヒータモードM3-2は、直列回路CCを用いる運転モードに相当する。
・冷房モードM1(図示省略)
・ヒートポンプモードM2(図12
・第1ヒータモードM3-1(図13
・第2ヒータモードM3-2(図14
【0114】
第2実施形態の冷媒回路10および熱媒体回路20は、基本的に第1実施形態と同様に構成されている。第2実施形態の温調システム2によれば、冷媒回路10および熱媒体回路20の構成に基づいて第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。冷媒回路10および熱媒体回路20の構成の説明は繰り返さない。
【0115】
各運転モードを簡単に説明する。
ヒートポンプモードM2(図12):
図12に示すヒートポンプモードM2のとき、一点鎖線で示す高温熱媒体が高圧側回路C2を流れるのと並行して、実線で示す低温熱媒体が低圧側回路C1を流れている。このモードM2では、外気から低温熱媒体に吸熱しつつ、冷媒回路10により維持される冷凍サイクルを介して高温熱媒体に伝達された熱を車室8内に供給する。
【0116】
第1ヒータモードM3-1(図13):
図13に示す第1ヒータモードM3-1のときの熱媒体の流れを説明する。
蒸発器14から流出した熱媒体は、第1切替弁31を経由して室外熱交換器23へと流入し、外気から吸熱する。室外熱交換器23から流出した熱媒体は、第3切替弁33を経由して凝縮器バイパス経路12Aに流入し、さらに第1切替弁31を経由して室内熱交換器25に流入する。室内送風機25Aは停止しているため、室内熱交換器25における熱媒体と空気との熱交換は抑えられている。室内熱交換器25から流出した熱媒体は、第2切替弁32を経由して蒸発器14へと戻り、冷媒へと放熱されて蒸発器14から流出する。
【0117】
第2ヒータモードM3-2(図14):
図14に示す第2ヒータモードM3-2のときの熱媒体の流れを説明する。
凝縮器12により冷媒から吸熱した熱媒体は、第1切替弁31を経由して室内熱交換器25へと流入し、車室8内を加温する。さらに、熱媒体は第2切替弁32を経由して蒸発器14に流入し、冷媒へと放熱される。その後、熱媒体は、第1切替弁31を通らずに室外バイパス経路24に流入し、さらに第3切替弁33を経由して凝縮器12に流入すると、冷媒から吸熱する。
【0118】
第2実施形態の温調システム2によっても、外気温が低い場合の低圧降下を抑えて冷媒回路10を早期に定常状態に移行させることができるとともに、熱源確保に必要な電力を圧縮機11等に供給しながら、加熱能力を担保することができる。
その他、第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0119】
上述の第1実施形態の第1~第6変形例は、第2実施形態に対しても適用することが可能である。以下に説明する第1~第6変形例はそれぞれ、第1実施形態の同一番号の変形例と対応している。第2実施形態の各変形例について簡単に説明する。
【0120】
[第2実施形態の第1変形例]
図15に示す車両用の温調システム2-1は、室内熱交換器25から熱媒体を迂回させる室内バイパス経路26-2を備えている。この室内バイパス経路26-2に熱媒体を流入させるとき、四方弁としての第2切替弁32-2の室内バイパス経路26-2に通じるポートが開かれ、第2切替弁32-2の室内熱交換器25に通じるポートは閉じられる。室内熱交換器25に熱媒体を流入させるときは、第2切替弁32-2のポートの開閉状態が上記とは逆に切り替えられる。
【0121】
室内バイパス経路26-2を備えることにより、室内送風機25Aの作動/停止の状態に関わらず、第1ヒータモードM3-1による運転状態のときに、外気から吸熱した熱媒体が車室8内の冷たい空気に放熱されるのを避けることができる。そのため、外気温が低い場合の低圧降下を抑えて冷媒回路10を早期に定常状態に移行させることができる。
【0122】
[第2実施形態の第2変形例](図示省略)
第2実施形態(図12図14)においても、第1実施形態の第2変形例(図6)と同様に、第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置を変更することができる。
具体的には、第1ポンプ21および第2ポンプ22の間に第1切替弁31を挟むように、第1ポンプ21を配管407に設置し、第2ポンプ22を配管402に設置することができる。
その場合、図14に示す第2ヒータモードM3-2のとき、第1ポンプ21は、熱媒体回路の不使用区間に配置されているので、第1ポンプ21の作動を停止させると良い。つまり、第2ヒータモードM3-2のときは、第2ポンプ22のみによって熱媒体回路20の熱媒体が圧送される。
【0123】
[第2実施形態の第3変形例](図示省略)
また、第1実施形態の第3変形例(図7)と同様に、第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置を変更してもよい。
具体的には、第1ポンプ21を配管404に設置し、第2ポンプ22を配管409に設置することができる。
【0124】
[第2実施形態の第4変形例](図示省略)
温調システム2は、第1実施形態の第4変形例(図8)の熱交換経路414,415およびバッテリー用切替弁34,35と同様の温度調整機構を備えることができる。
【0125】
第2実施形態において、第1バッテリー用切替弁34は、例えば、第2切替弁32と蒸発器流量調整弁14Vとの間に配置される。
第2バッテリー用切替弁35は、例えば、第3切替弁33と凝縮器流量調整弁12Vとの間に配置される。
【0126】
例えば、バッテリー装置6の温度を示す熱媒体の温度と、バッテリー装置6の目標温度とに基づいてバッテリー用切替弁34,35による流路の切り替えを行うことにより、低温熱媒体および高温熱媒体のいずれか一方または両方を用いてバッテリー装置6を温度調整することができる。
【0127】
[第2実施形態の第5変形例](図示省略)
温調システム2は、上記第4変形例と同様にバッテリー装置6の温度調整機構を備えるとともに、第1実施形態の第5変形例(図9)と同様に、室内バイパス経路26を備えていてもよい。
【0128】
室内バイパス経路26を備えることによれば、ヒートポンプモードM2および第2ヒータモードM3-2のとき、室内熱交換器25に熱媒体を供給しないで、つまり車室8内の空調を行わずに、バッテリー装置6のみを温度調整することができる。
【0129】
[第2実施形態の第6変形例]
図16および図17に示す温調システム2-6は、第1実施形態の第6変形例(図10および図11)と同様に、2つの室内熱交換器としての第1熱交換器25-1と第2熱交換器25-2とを備え、ヒートポンプモードM2に基づく除湿暖房モードM4により除湿暖房を行う。
【0130】
図16に示す除湿暖房モードM4のとき、第1熱交換器25-1には、蒸発器14から流出し、第1切替弁31を経由した熱媒体が供給されるとともに、第2熱交換器25-2には、凝縮器12から流出した熱媒体が供給される。温調システム2-6は、除湿暖房モードM4のときに第1熱交換器25-1に低温熱媒体を流すための配管416,417を備えている。
【0131】
除湿暖房モードM4のとき、室内送風機25Aから送られる空気は、第1熱交換器25-1を流れる低温熱媒体との熱交換により露点以下に冷却されて除湿された後、第2熱交換器25-2を流れる熱媒体との熱交換により加温されて車室8内に吹き出される。
【0132】
図17は、温調システム2-6の第2ヒータモードM3-2を示している。第2ヒータモードM3-2のとき、凝縮器12から流出した熱媒体が第2熱交換器25-2に供給されることで暖房が行われる。このとき第1熱交換器25-1には熱媒体が供給されない。
室外バイパス経路24は、上記第2実施形態(図14等)と同様に、第1ポンプ21の吐出側に直接的に接続されている。そのため、第2ヒータモードM3-2のとき、蒸発器14から流出した熱媒体は、第1切替弁31を通らずに室外バイパス経路24に流入し、凝縮器12へと向けて流れる。第2ヒータモードM3-2のとき、第1切替弁31には、凝縮器12から流出した熱媒体、蒸発器14から流出した熱媒体のいずれも流通しない。
【0133】
温調システム2-6の図示しない冷房モードM1のときは、蒸発器14から流出した熱媒体が第1熱交換器25-1に供給されることで冷房が行われる。このとき第2熱交換器25-2には熱媒体が供給されていない。
【0134】
[第2実施形態の第6変形例の一部改変]
図18に示す温調システム2-7は、上記第6変形例(図16および図17)と同様に、ヒートポンプモードM2により除湿暖房を行う。第7変形例の温調システム2-7は、第6変形例の温調システム2-6に対し、熱媒体回路20の一部の経路のみが相違する。
【0135】
第7変形例では、室外バイパス経路24が第1切替弁31を介して第1ポンプ21の吐出側に接続されているので、第2ヒータモードM3-2のとき、蒸発器14から流出した熱媒体は、第1切替弁31を通って室外バイパス経路24に流入し、凝縮器12に向けて流れる。このとき、第1切替弁31には、凝縮器12から流出した熱媒体が通らないので、蒸発器14から流出した熱媒体のみが流れる。そうすると、第1切替弁31の内部を流れる熱媒体には、温度の異なる熱媒体との間接的接触による熱の出入りがないので、熱損失を抑えることができる。
【0136】
以上で説明した第2実施形態の第1~第6変形例から、適宜に2つ以上を選択して組み合わせることが可能である。
【0137】
[第3実施形態]
次に、図19図25を参照し、本開示の第3実施形態に係る車両用の温調システム3を説明する。温調システム3は、冷媒回路10を循環する冷媒が供給される冷媒熱交換器14-2を室内側に備えている。
【0138】
温調システム1の冷媒回路10-3は、第1実施形態の冷媒回路10(図1)と同様に、圧縮機11、凝縮器12、第1減圧部としての第1膨張弁13-1、および蒸発器14-1を冷媒が循環可能に構成される第1冷媒回路R1と、圧縮機11、凝縮器12、第2減圧部としての第2膨張弁13-2、および蒸発器としての冷媒熱交換器14-2を冷媒が循環可能に構成される第2冷媒回路R2とを備えている。
【0139】
第1冷媒回路R1および第2冷媒回路R2は、それぞれ単独で冷凍サイクルを形成することができる。第1冷媒回路R1および第2冷媒回路R2の両方が同時に使用されるとき、第1冷媒回路R1および第2冷媒回路R2のそれぞれの膨張弁および蒸発器は、並列に接続される。
第2冷媒回路R2は、凝縮器12の冷媒流出側に接続される配管501と、蒸発器14の冷媒吐出側に接続される配管502とを備えている。
【0140】
膨張弁13-1,13-2に代えて、キャピラリーチューブを採用することも許容される。この場合は、冷媒回路R1,R2の一方が使用される運転モード時に、使用されない他方の冷媒回路のキャピラリーチューブを閉じるために開閉弁が必要となる。
【0141】
なお、室外バイパス経路24の終端24Aは、室外熱交換器23と第1切替弁31との間に設定されているが、その限りではない。室外バイパス経路24の終端24Aは、第1実施形態(図4)と同様に、第1切替弁31と凝縮器12との間に設定されていてもよい。
【0142】
温調システム3は、例えば、下記の複数の運転モードを備えている。
・冷房モードM1(図19
・第1除湿暖房モードM4-1(図20
・第2除湿暖房モードM4-2(図21
・ヒートポンプモードM2(図22
・第1ヒータモードM3-1(図23
・第2ヒータモードM3-2(図24および図25
上記のヒートポンプモードM2、第1ヒータモードM3-1、および第2ヒータモードM3-2は、第1実施形態の同一名称のモードと同様の作用を奏する。
【0143】
温調システム3に備わる熱媒体回路20は、第1実施形態(図1)の熱媒体回路20とほぼ同様に構成されている。但し、第2切替弁32は四方弁から三方弁に変更されている。
【0144】
冷媒熱交換器14-2は、冷媒熱交換器14-2および室内熱交換器25に空気を送る室内送風機25Aによる空気流の風上側に配置されている。室内熱交換器25は、空気流の風下側に配置されている。
【0145】
冷房モードM1、第1除湿暖房モードM4-1、第2除湿暖房モードM4-2、およびヒートポンプモードM2のとき、蒸発器14から流出した後に蒸発器14に流入する熱媒体の低圧側回路C1と、凝縮器12から流出した後に凝縮器12に流入する熱媒体の高圧側回路C2とが分離している。但し、冷房モードM1および第1除湿暖房モードM4-1のとき、低圧側回路C1は使用されない。そのため、低圧側回路C1の熱媒体を圧送する第1ポンプ21の作動は停止させてよい。
【0146】
一方、第1ヒータモードM3-1および第2ヒータモードM3-2のときは、直列回路CCが用いられるので、凝縮器12から流出した熱媒体が蒸発器14に流入し、さらに蒸発器14から流出して凝縮器12に流入する。
【0147】
〔運転モードの説明〕
運転モード毎に温調システム3の作用を説明する。
冷房モードM1(図19):
冷房モードM1は、第1冷媒回路R1および第2冷媒回路R2のうち第2冷媒回路R2のみを使用する。そのため、第1冷媒回路R1の第1膨張弁13-1は閉じられる。
また、冷房モードM1のとき、高圧側回路C2のみが使用され、低圧側回路C1は使用されない。そのため、低圧側回路C1の熱媒体を圧送する第1ポンプ21の作動は停止させてよい。
【0148】
第2冷媒回路R2の冷媒の流れを説明する。圧縮機11に吸入された冷媒ガスは、圧縮機11により断熱圧縮されて吐出され、凝縮器12における熱媒体との熱交換により液化する。さらに、冷媒は配管501を通じて第2膨張弁13-2に流入し、第2膨張弁13-2による減圧により断熱膨張するので、これにより温度低下した冷媒が冷媒熱交換器14-2へと流入する。冷媒熱交換器14-2を流れる冷媒により、室内送風機25Aから送られる空気が冷却されることで、車室8内の冷房が行われる。冷媒熱交換器14-2を冷却した冷媒は、配管502を流れて圧縮機11に吸入される。
【0149】
熱媒体の流れとしては、高圧側回路C2の熱媒体は、凝縮器12により冷媒から受け取った熱を室外熱交換器23に搬送する。室外熱交換器23により外気へと放熱した熱媒体は、第1切替弁31を経由して凝縮器12へと戻る。
【0150】
温調システム3の冷房モードM1によれば、冷熱源である蒸発器としての冷媒熱交換器14-2に供給される冷媒により、熱媒体を介さずに温調対象を直接的に冷却することが可能となる。そのため、冷房能力を向上させることができるとともに、温調対象や外気の温度変化に対する制御の追従性も向上させることができる。
【0151】
第1除湿暖房モードM4-1(図20):
第1除湿暖房モードM4-1は、空調負荷として相対的に冷房負荷が高い場合の除湿暖房に適する。第1除湿暖房モードM4-1では、冷房モードM1と同様に、第1、第2冷媒回路R1,R2のうち第2冷媒回路R2を使用し、低圧側回路C1および高圧側回路C2のうち高圧側回路C2を使用する。
【0152】
第2冷媒回路R2の冷媒の流れは、冷房モードM1と同様である。
高圧側回路C2の熱媒体は、凝縮器12に対して並列に接続された経路である第1ループL1および第2ループL2を流れる。
第1ループL1は、冷房モードM1のときの熱媒体の流れと同様である。つまり、凝縮器12により冷媒から吸熱した熱媒体は、室外熱交換機23で外気へと放熱され、凝縮器12へと戻る。
【0153】
第2ループL2は、凝縮器12から第3切替弁33を経由して室内熱交換器25へと流入し、第1切替弁31を経由して凝縮器12へと戻る。
室内送風機25Aにより送られる空気は、冷媒熱交換器14-2における冷媒との熱交換により露点以下まで冷却された後、室内熱交換器25における熱媒体との熱交換により加温されて車室8内に吹き出す。
【0154】
第1除湿暖房モードM4-1によれば、高圧側回路C2により外気へと放熱することで、冷房負荷が高い場合でも空調することができる。
【0155】
第2除湿暖房モードM4-2(図21):
第2除湿暖房モードM4-2は、空調負荷として相対的に暖房負荷が高い場合の除湿暖房に適する。第2除湿暖房モードM4-2では、第1、第2冷媒回路R1,R2の両方を使用するとともに、低圧側回路C1および高圧側回路C2の両方を使用する。
【0156】
低圧側回路C1および高圧側回路C2のそれぞれの熱媒体の流れは、第1実施形態のヒートポンプモードM2(図2)のときの熱媒体の流れと同様である。
低圧側回路C1の低温熱媒体は、蒸発器14-1から流出すると、第2切替弁32を経由して室外熱交換器23に流入し、外気から吸熱した後、第1切替弁31を経由して蒸発器14-1へと戻る。
高圧側回路C2の高温熱媒体は、凝縮器12から流出すると、第3切替弁33を経由して室内熱交換器25に流入し、冷媒熱交換器14-2により除湿された空気を加温した後、第1切替弁31を経由して凝縮器12へと戻る。
【0157】
第1冷媒回路R1の第1膨張弁13-1・蒸発器14-1と、第2冷媒回路R2の第2膨張弁13-2・冷媒熱交換器14-2とは、並列に接続される。
そのため、圧縮機11から吐出され、凝縮器12により熱媒体へ放熱した冷媒は、第1膨張弁13-1と第2膨張弁13-2とにそれぞれ流入する。第1膨張弁13-1から流出した冷媒は、蒸発器14-1で熱媒体から吸熱する。一方、第2膨張弁13-2から流出した冷媒は、冷媒熱交換器14-2にて空気を冷却する。圧縮機11には、蒸発器14-1から流出した冷媒と、冷媒熱交換器14-2から流出した冷媒とが吸入される。
【0158】
第2除湿暖房モードM4-2によれば、低圧側回路C1により外気から吸熱することで、暖房負荷の高い場合でも空調することができる。
【0159】
ヒートポンプモードM2(図22):
ヒートポンプモードM2は、通常の暖房を行う。ヒートポンプモードM2では、第1冷媒回路R1を使用するとともに、低圧側回路C1および高圧側回路C2の両方を使用する。
使用されない第2冷媒回路R2の第2膨張弁13-2は閉じておく。
【0160】
低圧側回路C1および高圧側回路C2のそれぞれの熱媒体の流れは、上記の第2除湿暖房モードM4-2と同様である。低圧側回路C1により外気から吸熱した熱媒体は、蒸発器14で冷媒に放熱される。高圧側回路C2の冷媒は、凝縮器12で冷媒から吸熱し、室内熱交換器25に供給される。室内送風機25Aにより送られる空気が熱媒体により加温されることで、車室8内が暖房される。
【0161】
第1ヒータモードM3-1(図23):
第1ヒータモードM3-1は、外気温が0℃を大幅に下回る状況下の温調システム3の起動時に適する。
第1ヒータモードM3-1では、第1冷媒回路R1を使用するとともに、熱媒体回路20の直列回路CCを使用する。
【0162】
熱媒体回路20の熱媒体の流れは、第1実施形態の第1ヒータモードM3-1(図3)のときの熱媒体の流れと同様である。
蒸発器14から流出した熱媒体は、室外熱交換器23で外気から吸熱すると、第1切替弁31を経由して凝縮器バイパス経路12Aに流入する。凝縮器バイパス経路12Aから流出した熱媒体は、室内熱交換器25に流入するが、室内送風機25Aは停止している。つまり、車室8内は暖房されない。室内熱交換器25から流出した熱媒体は、第1切替弁31を経由して蒸発器14へと戻り、冷媒を加温する。
【0163】
第2ヒータモードM3-2(図24):
第2ヒータモードM3-2は、外気温が0℃を大幅に下回る状況下の暖房に適する。
第2ヒータモードM3-2では、第1冷媒回路R1を使用するとともに、熱媒体回路20の直列回路CCを使用する。
【0164】
熱媒体回路20の熱媒体の流れは、第1実施形態の第2ヒータモードM3-2(図4)のときの熱媒体の流れと同様である。なお、室外バイパス経路24-1の終端24Aは、第1実施形態の第5変形例(図9)と同様に、室外熱交換器23と第1切替弁31との間に設定されている。
【0165】
凝縮器12により冷媒から吸熱した熱媒体は、室内熱交換器25へと流入し、車室8内を加温する。さらに、熱媒体は第1切替弁31を経由し、蒸発器14に流入して冷媒へと放熱される。その後、熱媒体は室外バイパス経路24-1に流入し、第1切替弁31を経由して凝縮器12へと戻る。
【0166】
直暖第2ヒータモードM3-2-1(図25):
直暖第2ヒータモードM3-2-1は、外気温が0℃を大幅に下回る状況下の暖房に適し、冷媒を温調対象に直接的に供給する。
直暖第2ヒータモードM3-2では、第1冷媒回路R1及び第2冷媒回路R2を使用するとともに、熱媒体回路20の直列回路CCを使用する。
【0167】
第2冷媒回路R2の冷媒の流れは、冷房モードM1と同様である。
熱媒体回路20の熱媒体の流れは、第2ヒータモードM3-2(図24)と同様である。
【0168】
上述の第2ヒータモードM3-2(図24)時には室内熱交換器25に供給される熱媒体のみによって空気が温められており、冷媒熱交換器14-2には冷媒が供給されていない。直暖第2ヒータモードM3-2-1によれば、冷媒熱交換器14-2に冷媒が供給されることにより、室内熱交換器25に供給される熱媒体と、冷媒熱交換器14-2に供給される冷媒とによって空気を加温することができるので、暖房能力をより一層向上させることができる。
【0169】
温調システム3は、必ずしもヒータモードM3-1,M3-2を備えていなくても良い。この場合、温調システム3は、並列回路C1,C2の運転モード(M1,M4-1,M4-2,M2)のみを備えていても良い。
【0170】
上述の第1実施形態の第1~第5変形例は、第3実施形態に対しても適用することが可能である。以下に示す第1~第5変形例はそれぞれ、第1実施形態の同一番号の変形例と対応している。
【0171】
[第3実施形態の第1変形例](図示省略)
温調システム3は、特に第1ヒータモードM3-1に関して、第1実施形態の第1変形例(図5)と同様に、室内熱交換器25から熱媒体を迂回させる室内バイパス経路26を備えていてもよい。
【0172】
[第3実施形態の第2変形例](図示省略)
第3実施形態においても、第1実施形態の第2変形例(図6)と同様に、第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置を変更することができる。
【0173】
[第3実施形態の第3変形例](図示省略)
また、第1実施形態の第3変形例(図7)と同様に、第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置を変更してもよい。
【0174】
[第3実施形態の第4変形例](図示省略)
温調システム3は、第1実施形態の第4変形例(図8)の熱交換経路414,415およびバッテリー用切替弁34,35と同様の温度調整機構を備えることができる。
【0175】
[第3実施形態の第5変形例](図示省略)
温調システム3は、上記第4変形例と同様にバッテリー装置6の温度調整機構を備えるとともに、第1実施形態の第5変形例(図9)と同様に、室内バイパス経路26を備えていてもよい。
【0176】
[第3実施形態の第6変形例]
図26に示す温調システム3-6においては、第1ポンプ21および第2ポンプ22の吐出側に第1切替弁31が配置されている。第1~第3切替弁31~33の位置は、第3実施形態(図19図25)に対し、紙面上でほぼ上下反転している。低温熱媒体の流れを切り替える第2切替弁32は、本変形例では四方弁として構成されている。
【0177】
[第3実施形態の第7変形例]
必ずしも2つの膨張弁13-1,13-2が必要ない。図27に示す温調システム3-7のように、冷媒回路R1,R2の使用を切り替えるための開閉弁15,16と、1つの膨張弁13とを備えていることにより、例えば、冷房モードM1および第1除湿暖房モードM4-1を運転可能である。
【0178】
以上で説明した第3実施形態の第1~第7変形例から、適宜に2つ以上を選択して組み合わせることが可能である。
【0179】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本開示の温調システムは、温調機器としての室内熱交換器25に加えて、あるいは室内熱交換器25に代えて、バッテリー装置6等の他の温調機器を備えていてもよい。その場合、熱媒体回路20は、他の温調機器を熱媒体により冷却または加熱するための経路を含む。
【0180】
[付記]
以上の開示により、以下に記す構成が把握される。
〔1〕車両用の温調システムであって、
圧縮機(11)、高圧側熱交換器(12)、減圧部(13)、および低圧側熱交換器(14)を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路(10)と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路(20)と、を備え、
前記熱媒体回路(20)は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器(12)と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器(14)と、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器(23)と、
前記熱媒体によって加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器(6,25)と、
前記室外熱交換器(23)から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路(24)と、
前記熱媒体の流れを切り替え可能に構成される複数の流路切替弁(31~33)と、を含み、
前記熱媒体回路(20)は、
前記複数の流路切替弁の少なくとも1つによる前記熱媒体の流れの切替により、
前記低圧側熱交換器を含む低圧側回路(C1)と、前記高圧側熱交換器を含む高圧側回路(C2)とを並列的に設定可能に構成されるとともに、
直列に配置される前記低圧側熱交換器(14)および前記高圧側熱交換器(12)を含む直列回路(CC)を設定可能に構成され、
前記温調システムは、
前記直列回路(CC)を用いる運転モードとして、
前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が、前記温調機器(6,25)を経由して前記低圧側熱交換器(14)に流入し、さらに前記室外バイパス経路(24)を通り、前記高圧側熱交換器(12)に流入する圧縮機熱源モード(M3-2)を備える、車両用温調システム(1~3)。
【0181】
〔2〕前記複数の流路切替弁(31~33)のうちの一つとして、前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体と、前記低圧側熱交換器(14)から流出した前記熱媒体との両方が流通可能に構成されている両方流通弁(31)を備え、
前記圧縮機熱源モードにおいては、
前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が、前記両方流通弁(31)を介して前記低圧側熱交換器(14)に流入し、又は前記両方流通弁(31)を迂回して前記低圧側熱交換器(14)に流入し、さらに前記両方流通弁(31)を迂回して前記高圧側熱交換器(12)に流入する、
〔1〕項に記載の車両用温調システム。
【0182】
〔3〕前記低圧側熱交換器(14)から前記熱媒体を迂回させる低圧側バイパス経路(14A)と、
前記低圧側熱交換器(14)と前記低圧側バイパス経路との前記熱媒体の流量比を調整可能に構成される低圧側流量調整弁(14V)と、を備える、
〔1〕または〔2〕項に記載の車両用温調システム。
【0183】
〔4〕前記高圧側熱交換器(12)から前記熱媒体を迂回させる高圧側バイパス経路と、
前記高圧側熱交換器(12)と前記高圧側バイパス経路との前記熱媒体の流量比を調整可能に構成される高圧側流量調整弁と、を備え、
前記直列回路(CC)を用いる運転モードとして、
前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が、前記低圧側熱交換器(14)に流入し、さらに前記室外熱交換器(23)を通り、前記高圧側熱交換器(12)および前記高圧側バイパス経路のうち少なくとも前記高圧側バイパス経路に流入する起動時圧縮機熱源モードを備える、
〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
【0184】
〔5〕前記起動時圧縮機熱源モードは、前記低圧側熱交換器(14)から流出した前記熱媒体を前記室外熱交換器(23)に流入させる、
〔4〕項に記載の車両用温調システム。
【0185】
〔6〕前記温調機器(25)から前記熱媒体を迂回させる温調バイパス経路(26)を備える、
〔4〕または〔5〕項に記載の車両用温調システム。
【0186】
〔7〕前記温調機器(25)に空気を送る送風機(25A)を備え、
前記起動時圧縮機熱源モードは、前記送風機(25A)を停止させる、
〔4〕から〔6〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
【0187】
〔8〕1つ以上の温調対象の一つとしてのバッテリー(6)と、
前記熱媒体を前記バッテリー(6)に供給可能に構成される熱交換経路(414,415)と、を備える、
〔1〕から〔7〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
【0188】
〔9〕前記温調機器(25)に空気を送る送風機(25A)を備え、
前記温調機器(25)は、
前記送風機(25A)による空気流の風上側に配置され、前記低圧側熱交換器(14)から流出した前記熱媒体が流入可能に構成される第1熱交換器(25-1)と、
前記空気流の風下側に配置され、前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が流入可能に構成される第2熱交換器(25-2)と、を備える、
〔1〕から〔8〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
【0189】
〔10〕前記冷媒回路(10)は、
前記温調機器としての温調熱交換器(25)と共に1つ以上の温調対象のうちの少なくとも1つの加熱または冷却に供される冷媒熱交換器(14-2)を含み、
前記圧縮機(11)、前記高圧側熱交換器(12)、前記減圧部(13)、および前記冷媒熱交換器(14-2)を前記冷媒が循環可能に構成される、
〔1〕から〔9〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム(3)。
【0190】
〔11〕前記冷媒熱交換器(14-2)および前記温調機器(25)に空気を送る送風機(25A)を備え、
前記冷媒熱交換器は、前記送風機(25A)による空気流の風上側に配置され、
前記温調機器(25)は、前記空気流の風下側に配置され、前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が流入可能に構成される、
〔10〕項に記載の車両用温調システム。
【0191】
〔12〕前記冷媒回路(10)は、
前記圧縮機(11)、前記高圧側熱交換器(12)、前記減圧部(13)としての第1減圧部(13-1)、および前記低圧側熱交換器(14)を前記冷媒が循環可能に構成される第1冷媒回路(R1)と、
前記減圧部(13)としての第2減圧部(13-2)を含み、前記圧縮機(11)、前記高圧側熱交換器(12)、前記第2減圧部(13-2)、および前記冷媒熱交換器(14-2)を前記冷媒が循環可能に構成される第2冷媒回路(R2)と、を備える、
〔10〕または〔11〕項に記載の車両用温調システム。
【0192】
〔13〕前記第1減圧部(13-1)および前記第2減圧部(13-2)のいずれも、膨張弁に相当する、
〔12〕項に記載の車両用温調システム。
【0193】
〔14〕前記第1減圧部(13-1)および前記第2減圧部(13-2)は、同一の前記減圧部である、
〔12〕または〔13〕項に記載の車両用温調システム。
【0194】
〔15〕車両用の温調システムを用いる温調方法であって、
前記温調システムは、
圧縮機(11)、高圧側熱交換器(12)、減圧部(13)、および低圧側熱交換器(14)を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路(10)と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路(20)と、を備え、
前記熱媒体回路(20)は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器(12)と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器(14)と、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器(23)と、
前記熱媒体によって加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器(6,25)と、
前記室外熱交換器から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路(24)と、
前記熱媒体の流れを切り替え可能に構成される複数の流路切替弁(31~33)と、を含み、
前記熱媒体回路(20)は、
前記複数の流路切替弁(31~33)の少なくとも1つによる前記熱媒体の流れの切替により、
前記低圧側熱交換器(14)を含む低圧側回路(C1)と、前記高圧側熱交換器(12)を含む高圧側回路(C2)とを並列的に設定可能に構成されるとともに、
直列に配置される前記低圧側熱交換器(14)および前記高圧側熱交換器(12)を含む直列回路(CC)を設定可能に構成され、
前記温調方法は、
前記直列回路(CC)を用いる運転モードとして、
前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が、前記温調機器(6,25)を経由して前記低圧側熱交換器(14)に流入し、さらに前記室外バイパス経路(24)を通り、前記高圧側熱交換器(12)に流入する圧縮機熱源モード(M3-2)を実施する、車両用温調方法。
【符号の説明】
【0195】
1,2,3 温調システム(車両用温調システム)
6 バッテリー装置(温調対象、バッテリー)
7 制御装置
8 車室
10,10-3 冷媒回路
11 圧縮機
12 凝縮器(高圧側熱交換器)
12A 凝縮器バイパス経路(高圧側バイパス経路)
12V 凝縮器流量調整弁(高圧側流量調整弁)
13 膨張弁(減圧部)
13-1 第1膨張弁(第1減圧部)
13-2 第2膨張弁(第1減圧部)
14,14-1 蒸発器(低圧側熱交換器)
14-2 冷媒熱交換器
14A 蒸発器バイパス経路(低圧側バイパス経路)
14V 蒸発器流量調整弁(低圧側流量調整弁)
15,16 開閉弁
20 熱媒体回路
21 第1ポンプ
22 第2ポンプ
23 室外熱交換器
23A 室外送風機
24,24-1 室外バイパス経路
24A 終端
25 室内熱交換器(温調機器、温調熱交換器)
25-1 第1熱交換器
25-2 第2熱交換器
25A 室内送風機
26 室内バイパス経路(温調バイパス経路)
31 第1切替弁(流路切替弁、両方流通切替弁)
32 第2切替弁(流路切替弁)
33 第3切替弁(流路切替弁)
34 第1バッテリー用切替弁
35 第2バッテリー用切替弁
401~412 配管
414 第1熱交換経路
414A 往路
414B 復路
415 第2熱交換経路
415A 往路
415B 復路
416,417 配管
501,502 配管
C1 低圧側回路
C2 高圧側回路
CC 直列回路
L1 第1ループ
L2 第2ループ
M1 冷房モード
M2 ヒートポンプモード
M3-1 第1ヒータモード(起動時圧縮機熱源モード)
M3-2 第2ヒータモード(圧縮機熱源モード)
M4 除湿暖房モード
M4-1 第1除湿暖房モード
M4-2 第2除湿暖房モード
R1 第1冷媒回路
R2 第2冷媒回路
U HVACユニット
【要約】
【課題】外気温が低いため熱源の確保が難しい状況であっても加熱能力を担保することが可能な車両用の温調システムおよび温調方法を提供すること。
【解決手段】車両用の温調システムは、冷媒回路と熱媒体回路とを備える。熱媒体回路は、低圧側熱交換器を含む低圧側回路と、高圧側熱交換器を含む高圧側回路とを並列的に設定可能に構成されるとともに、直列に配置される低圧側熱交換器および高圧側熱交換器を含む直列回路を設定可能に構成され、温調システムは、直列回路を用いる運転モードとして、高圧側熱交換器から流出した熱媒体が、温調機器を経由して低圧側熱交換器に流入し、さらに室外バイパス経路を通り、高圧側熱交換器に流入する圧縮機熱源モードを備える。
【選択図】図4
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