(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20230710BHJP
C08G 63/181 20060101ALI20230710BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20230710BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
G03G9/08 381
C08G63/181
G03G9/087 331
G03G9/097 365
(21)【出願番号】P 2022211746
(22)【出願日】2022-12-28
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2021213894
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南日 優里
(72)【発明者】
【氏名】加納 邦泰
(72)【発明者】
【氏名】新谷 貫太
(72)【発明者】
【氏名】岡内 伸曉
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-121411(JP,A)
【文献】特開2008-040464(JP,A)
【文献】特開2007-127928(JP,A)
【文献】特開2005-141144(JP,A)
【文献】特開2005-049394(JP,A)
【文献】特開2011-118094(JP,A)
【文献】特開2018-013589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)~(3)を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
工程(1):離型剤と、ポリエステル樹脂(A)を90質量%以上含む樹脂粒子の分散液とを混合し、乳化させて離型剤粒子の分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた前記離型剤粒子の分散液と、結着樹脂としてのポリエステル系樹脂(B)の分散液とを混合し、凝集させ、凝集粒子を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた前記凝集粒子を融着させて、融着粒子を得る工程
前記工程(1)において前記離型剤と前記ポリエステル樹脂(A)の質量比「離型剤/ポリエステル樹脂(A)」が、1以上100以下であり、
前記ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分の80モル%以上が、炭素数3以上6以下かつ樹脂(A)中にアルキル分岐構造を形成する脂肪族ジオールである、
静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】
前記脂肪族ジオールが1,2-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、及びネオペンチルグリコールから選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂(A)を構成するカルボン酸成分が、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
工程(1)において界面活性剤の使用量が離型剤の合計量100質量部に対して0.1質量部未満である、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
前記離型剤粒子の体積中位粒径D
50が0.05μm以上1μm以下である、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項6】
前記ポリエステル系樹脂(B)の総量100質量部に対する前記離型剤粒子の量が、4質量部以上30質量部以下である、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項7】
前記離型剤の使用量が、得られるトナー粒子中、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項8】
前記離型剤の融点が、60℃以上100℃以下である、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項9】
前記離型剤が、パラフィンワックス及びエステルワックスから選ばれる少なくとも1種である、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項10】
前記ポリエステル系樹脂(B)を構成するアルコール成分の80モル%以上が、炭素数3以上6以下かつ樹脂(B)中にアルキル分岐構造を形成する脂肪族ジオールである、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項11】
工程(2)において、凝集前に更に結晶性ポリエステル樹脂(C)を加える、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項12】
前記工程(2)において、前記凝集の前に、更に着色剤粒子の分散液を混合することを含む、請求項1
又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した電子写真用トナーの開発が求められている。高画質化に対応して、粒径分布が狭く、小粒径のトナーを得る方法として、微細な樹脂粒子等を水系媒体中で凝集、融着させてトナーを得る、凝集融着法(乳化凝集法、凝集合一法とも呼ばれる)による、所謂ケミカルトナーの製造が行われている。
【0003】
特許文献1には、界面活性剤及び分散安定剤を含有する極性溶媒に、ポリエステル樹脂及び有機溶媒を撹拌しつつ添加する段階と、前記段階で得られた混合物を加熱して、残留有機溶媒の含有量が10,000wtppm未満であるポリエステル樹脂分散液を製造する段階と、前記ポリエステル樹脂分散液に、着色剤分散液及びワックス分散液を混合する段階と、前記段階で得られた混合液に凝集剤を添加してトナー粒子を凝集させる段階と、前記凝集されたトナー粒子を合一させる段階と、を含むトナーの製造方法が記載されている。
特許文献2には、離型剤と、脂肪族カルボン酸由来の構成成分を含むポリエステルを樹脂中90質量%以上含有し、体積中位粒径が0.02μm以上0.05μm以下である樹脂粒子(A)の分散液とを混合・乳化させて、離型剤粒子の分散液を得る工程と、離型剤粒子の分散液と、ポリエステルを樹脂中90質量%以上含有する樹脂粒子(B)の分散液とを混合・凝集させて、凝集粒子を得る工程と、凝集粒子を融着させて融着粒子を得る工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記離型剤粒子の分散液中の界面活性剤の含有量が離型剤100質量部に対し0.5質量部以下である、静電荷像現像用トナーの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2014-512571号公報
【文献】特開2015-45840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたトナーの製造方法では、ワックス分散液の調製に界面活性剤を用いるため、ワックスがトナー中に内包されにくく、また内包できたとしてもトナーの表面に露出し、定着時のホットオフセットが発生しやすく、また、良好な耐久性を有するトナーを得ることが困難であった。また、特許文献2に記載されたトナーの製造方法では、ポリエステルが芳香族ジオール由来の構成成分を含むため、定着時のホットオフセット性に改善の余地があった。
本発明は、定着時のホットオフセットの発生が抑制され、かつ、良好な耐久性を有する静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、離型剤を水系媒体中に分散させる際に、アルコール成分の80モル%以上が、炭素数3以上6以下かつ樹脂中にアルキル分岐構造を形成する脂肪族ジオールであるポリエステル樹脂を90質量%以上含む樹脂粒子を用いることで、界面活性剤などの分散剤を使用しなくても離型剤粒子の分散液を作製でき、この離型剤粒子と、結着樹脂としてのポリエステル系樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させるケミカル法により製造されたトナーは、定着時のホットオフセットの発生が抑制され、耐久性が良好であることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕に関する。
〔1〕下記の工程(1)~(3)を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
工程(1):離型剤と、ポリエステル樹脂(A)を90質量%以上含む樹脂粒子の分散液とを混合し、乳化させて離型剤粒子の分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた前記離型剤粒子の分散液と、結着樹脂としてのポリエステル系樹脂(B)の分散液とを混合し、凝集させ、凝集粒子を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた前記凝集粒子を融着させて、融着粒子を得る工程
前記工程(1)において前記離型剤と前記ポリエステル樹脂(A)の質量比「離型剤/ポリエステル樹脂(A)」が、1以上100以下であり、前記ポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分の80モル%以上が、炭素数3以上6以下かつ樹脂(A)中にアルキル分岐構造を形成する脂肪族ジオールである、静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、定着時のホットオフセットの発生が抑制され、かつ、良好な耐久性を有する静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[静電荷像現像用トナーの製造方法]
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)の製造方法は、離型剤と、ポリエステル樹脂(A)(以下、単に「樹脂(A)」ともいう)を90質量%以上含む樹脂粒子の分散液とを混合し、乳化させて離型剤粒子の分散液を得る工程(1)、工程(1)で得られた前記離型剤粒子の分散液と、結着樹脂としてのポリエステル系樹脂(B)(以下、単に「樹脂(B)」ともいう)の分散液とを混合し、凝集させ、凝集粒子を得る工程(2)、及び工程(2)で得られた前記凝集粒子を融着させて、融着粒子を得る工程(3)を含む。
工程(1)において離型剤とポリエステル樹脂(A)の質量比「離型剤/ポリエステル樹脂(A)」が、1以上100以下である。また、離型剤粒子は、離型剤と、樹脂(A)とを含有する。そして、樹脂(A)を構成するアルコール成分の80モル%以上が、炭素数3以上6以下かつ樹脂(A)中にアルキル分岐構造を形成する脂肪族ジオールである。
以上の製造方法により、定着時のホットオフセットの発生が抑制され、かつ、良好な耐久性を有するトナーが得られる。
【0009】
本発明の製造方法により、定着時のホットオフセットの発生が抑制され、耐久性が良好なトナーが得られる詳細なメカニズムは定かではないが、次のように考えられる。
ケミカル法によりトナーを製造する場合、離型剤を水系媒体中に分散させる際に界面活性剤を用いると、界面活性剤の高い分散力により、離型剤がトナー中に内包されにくく、また内包できたとしてもトナー粒子の表面に露出しやすくなる。これを防ぐには、界面活性剤を極力使用せずに離型剤を媒体中に分散させることが望ましい。本発明においては、工程(1)において、離型剤の表面にポリエステルを構成するアルコール成分の80モル%以上が、炭素数3以上6以下かつ樹脂(A)中にアルキル分岐構造を形成する脂肪族ジオールであるポリエステル樹脂(A)を90質量%以上含む樹脂粒子を付着させることで離型剤粒子を分散させている。得られた離型剤粒子は、表面に存在する樹脂粒子がポリエステル樹脂(A)を90質量%以上含むため、結着樹脂に用いたポリエステル系樹脂(B)と適度な親和性を示し、工程(2)及び(3)の凝集・融着過程においてトナー中に良好に内包されるため、得られたトナーの耐久性が良好になると考えられる。一方、離型剤粒子の分散剤として用いた樹脂粒子に含まれるポリエステル樹脂(A)を構成するアルコール成分は、炭素数3以上6以下かつ樹脂(A)中にアルキル分岐構造を形成する脂肪族ジオールを80モル%以上含むため、ポリエステル樹脂(A)はエステル基濃度が高く、極性の低い離型剤との極性差が大きい。離型剤と分散剤として用いた樹脂粒子に含まれるポリエステル樹脂(A)は、極性差が大きく非相溶であり、定着時に良好な分離性を示すため、得られたトナーは定着時のホットオフセットの発生が抑制されると考えられる。
【0010】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
明細書中、ポリエステル系樹脂のカルボン酸成分には、その化合物のみならず、反応中に分解してカルボン酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下のものである。非晶性樹脂とは、吸熱ピークが観測されないか、観測される場合は、結晶性指数が0.6未満又は1.4超のものである。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
炭化水素基に関して、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」を括弧とする記載は、これらの接頭辞が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの接頭辞が存在しない場合には、ノルマルを示す。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味する。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を意味する。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種を意味する。
「スチレン系化合物」とは、無置換又は置換のスチレンを意味する。
「主鎖」とは、付加重合体中で相対的に最も長い結合鎖を意味する。
【0011】
本発明の一実施態様に係るトナーの製造方法は、
工程(1):離型剤と、ポリエステル樹脂(A)を90質量%以上含む樹脂粒子の分散液とを混合し、乳化させて離型剤粒子の分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた前記離型剤粒子の分散液と、結着樹脂としてのポリエステル系樹脂(B)の分散液とを混合し、凝集させ、凝集粒子を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた前記凝集粒子を融着させて、融着粒子を得る工程
を含む。
以下、当該実施態様を例にとり、本発明について説明する。
【0012】
[工程(1)]
工程(1)では、離型剤と、樹脂(A)を90質量%以上含む樹脂粒子の分散液とを混合し、乳化させて離型剤粒子の分散液を得る。樹脂(A)を含む樹脂粒子の分散液は、水分散液であることが好ましく、離型剤と樹脂(A)を含む樹脂粒子を用いて離型剤粒子を調製することで、樹脂(A)により離型剤が安定化され、界面活性剤を使用しなくても離型剤を水系媒体中に安定に分散させることが可能となる。離型剤粒子の分散液中では、樹脂(A)を含む樹脂粒子が、離型剤の周囲に多数付着した構造を有していると考えられる。
【0013】
離型剤粒子の分散液は、例えば、離型剤と樹脂(A)を90質量%以上含む樹脂粒子の分散液と必要に応じて水系媒体とを、離型剤の融点以上の温度で、ホモジナイザー、高圧分散機、超音波分散機等の強いせん断力を有する分散機を用いて分散することによって得られる。
分散時の加熱温度は、好ましくは離型剤の融点以上かつ80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは、樹脂(A)の軟化点より10℃高い温度未満かつ100℃以下、より好ましくは98℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
【0014】
離型剤粒子の分散安定性を向上させる観点、離型剤の脱離及び露出を抑制する観点、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点、融着工程の加熱後でもトナー中に離型剤を含有させる観点、並びに、ホットオフセットの発生の抑制及びトナーの耐久性の向上の観点から、離型剤と樹脂(A)の質量比「離型剤/ポリエステル樹脂(A)」は、1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上であり、そして、100以下、好ましくは70以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは50以下である。
【0015】
本工程において界面活性剤を用いると、界面活性剤の高い分散力により、離型剤がトナー粒子の表面に露出しやすくなる。そのため、界面活性剤を使用しないことが好ましいが、界面活性剤を使用する場合、その総使用量は離型剤の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部未満、より好ましくは0.05質量部以下、更に好ましくは0.01質量部以下である。
このような界面活性剤としては、例えば、特開2016-197207号公報の段落[0074]に示される界面活性剤等が挙げられる。
【0016】
<離型剤粒子>
離型剤粒子は、離型剤と、樹脂(A)を90質量%以上含む樹脂粒子とを含有する。
【0017】
離型剤粒子の体積中位粒径D50は、工程(2)において均一な凝集粒子を得る観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.10μm以上、更に好ましくは0.20μm以上であり、そして、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.50μm以下、更に好ましくは0.30μm以下である。
離型剤粒子の体積中位粒径D50の測定方法は実施例に記載の方法による。
【0018】
〔離型剤〕
離型剤としては、ワックスが挙げられる。ワックスとしては、例えば、炭化水素ワックス、エステルワックス、シリコーンワックス、脂肪酸アミドワックスが挙げられる。
炭化水素ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物又は石油系炭化水素ワックス;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックス等のポリオレフィンワックス等の合成炭化水素ワックスが挙げられる。
エステルワックスとしては、例えば、モンタンワックス等の鉱物又は石油系エステルワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系エステルワックス;ミツロウ等の動物系エステルワックスが挙げられる。
脂肪酸アミドワックスとしては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
これらの中でも、トナーの離型性の観点から、好ましくは炭化水素ワックス及びエステルワックス、より好ましくはパラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、及びエステルワックスから選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはパラフィンワックス及びエステルワックスから選ばれる少なくとも1種である。
離型剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
離型剤の融点は、トナーの離型性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させ、定着可能温度範囲を広くする観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下である。離型剤を2種以上併用する場合、いずれの融点も60℃以上100℃以下であることが好ましい。すなわち、離型剤を2種以上併用する場合、融点が60℃以上100℃以下である離型剤の少なくとも2種を含有することが好ましく、いずれの離型剤の融点も65℃以上95℃以下であることがより好ましい。
本発明において、離型剤の融点は、実施例に記載の方法によって求められる。離型剤を2種以上併用する場合、融点は、得られるトナーに含有される離型剤中、最も質量比の大きい離型剤の融点を、本発明における離型剤の融点とする。なお、全てが同一の質量比の場合は、最も低い融点の離型剤の融点を本発明における離型剤の融点とする。
【0020】
離型剤の使用量は、トナーの離型性の観点から、トナー粒子中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0021】
〔樹脂粒子〕
樹脂粒子は、ポリエステル樹脂(A)を90質量%以上含む。樹脂(A)の含有量は、離型剤の分散性向上及び離型剤粒子と樹脂(B)との親和性の観点から、好ましくは92質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは97質量%以上、そして、100質量%以下であり、好ましくは100質量%である。
樹脂粒子に含まれる、樹脂(A)以外の成分としては、樹脂(B)やその他ポリエステル樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0022】
≪ポリエステル樹脂(A)≫
ポリエステル樹脂(A)は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であり、アルコール成分の80モル%以上が、炭素数3以上6以下かつ樹脂(A)中にアルキル分岐構造を形成する脂肪族ジオールである。ポリエステル樹脂(A)は、非晶性であることが好ましい。
炭素数3以上6以下かつ樹脂(A)中にアルキル分岐構造を形成する脂肪族ジオールとしては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、4-メチル-2,3-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール等が挙げられ、好ましくは1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、及びネオペンチルグリコールから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは1,2-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、及びネオペンチルグリコールから選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはネオペンチルグリコールである。
アルコール成分中、炭素数3以上6以下かつ樹脂(A)中にアルキル分岐構造を形成する脂肪族ジオールの含有量は、離型剤の分散性向上及び離型剤粒子と樹脂(B)との親和性の観点から、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、好ましくは100モル%である。
【0023】
炭素数3以上6以下かつ樹脂(A)中にアルキル分岐構造を形成する脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、例えば、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、直鎖の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。
芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物としては、好ましくは式(I):
【0024】
【化1】
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはそれぞれ独立にエチレン又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含むことが好ましい。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのプロピレンオキシド付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキシド付加物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
【0025】
直鎖の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-ブテンジオールが挙げられる。
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン〕、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド付加物(平均付加モル数2以上12以下)が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0026】
カルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物、3価以上のカルボン酸化合物が挙げられる。
これらの中でも、カルボン酸成分は、帯電性と耐久性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは、芳香族ジカルボン酸化合物を含む。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中では、上記観点から、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、帯電性と耐久性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下であり、より好ましくは100モル%である。
【0027】
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよいコハク酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸としては、オクチルコハク酸やドデセニルコハク酸(テトラプロペニルコハク酸)等が挙げられる。
これらの中でも、フマル酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、離型剤の分散性向上及び離型剤粒子と樹脂(B)との親和性の観点から、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下であり、そして、好ましくは0モル%以上、より好ましくは3モル%以上である。
【0028】
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸が挙げられる。これらの中でも、トリメリット酸及びその無水物が好ましい。
3価以上のカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、離型剤の分散性の観点から、好ましくは60モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは10モル%以下であり、0モル%以上である。
アルコール成分は1価のアルコールを、カルボン酸成分は1価のカルボン酸化合物を、適宜含有してもよい。
【0029】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0030】
(ポリエステル樹脂(A)の製造方法)
樹脂(A)は、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分を含む原料モノマーを重縮合することにより製造してもよい。
【0031】
アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、120℃以上250℃以下程度の温度で行うことができる。
エステル化触媒としては、例えば、酸化ジブチル錫、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)等の錫化合物、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)等のチタン化合物が挙げられる。エステル化触媒とともに用い得るエステル化助触媒としては、例えば、没食子酸が挙げられる。
エステル化触媒の使用量は、樹脂(A)の原料モノマーであるアルコール成分、及びカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下である。
エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分、及びカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上1質量部以下である。
また、重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコール等のラジカル重合禁止剤が挙げられる。
重合禁止剤の使用量はアルコール成分、及びカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上1質量部以下である。
【0032】
(ポリエステル樹脂(A)の物性)
樹脂(A)の軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下である。
樹脂(A)のガラス転移温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0033】
樹脂(A)の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
樹脂(A)の軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、樹脂(A)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
【0034】
〔ポリエステル樹脂(A)を含む樹脂粒子の分散液の製造方法〕
樹脂(A)を含む樹脂粒子は、樹脂粒子の水系分散液として製造してもよい。水系分散液に用いる水系媒体としては、水を主成分とするものが好ましい。
【0035】
分散は、公知の方法を用いて行うことができるが、転相乳化法により分散することが好ましい。転相乳化法としては、例えば、樹脂(A)の有機溶媒溶液又は溶融した樹脂(A)に水系媒体を添加して転相乳化する方法が挙げられる。樹脂(A)の有機溶媒溶液に水系媒体を添加して転相乳化する方法が好ましい。例えば、樹脂(A)の有機溶媒溶液に水系媒体を添加して転相乳化することで、樹脂(A)を含む樹脂粒子の水系分散液を製造することができる。
転相乳化に用いる有機溶媒としては、樹脂(A)を溶解し、水溶性であれば特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトンが挙げられる。
有機溶媒溶液には、中和剤を添加してもよい。中和剤としては、例えば、塩基性物質が挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等の含窒素塩基性物質が挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましい。
樹脂粒子に含まれる樹脂の中和度は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。
なお、樹脂粒子に含まれる樹脂の中和度は、下記式によって求めることができる。
中和度(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{樹脂粒子を構成する樹脂の加重平均酸価(mgKOH/g)×樹脂粒子を構成する樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
【0036】
有機溶媒溶液又は溶融した樹脂を撹拌しながら、水系媒体を徐々に添加して転相させる。
水系媒体を添加する際の有機溶媒溶液の温度は、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは樹脂粒子に含まれる樹脂のうち最も高いガラス転移温度を有する樹脂のガラス転移温度以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
【0037】
転相乳化の後に、必要に応じて、得られた分散液から蒸留等により有機溶媒を除去してもよい。また、濾過等によって樹脂粒子を単離してもよい。本発明の凝集させる工程及び融着させる工程では、転相乳化の後に得られた分散液から有機溶媒を除去した樹脂粒子の水系分散液を用いることが好ましい。この場合、有機溶媒の残存量は、分散液中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは実質的に0質量%である。
【0038】
分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径D50は、低温定着性に優れ、かつ、帯電量分布の狭いトナーを得る観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.08μm以上であり、そして、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下である。
【0039】
樹脂粒子の水系分散液の固形分濃度は、離型剤粒子の分散液の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
なお、固形分は不揮発性成分の総量である。
【0040】
[工程(2)]
工程(2)では、工程(1)で得られた離型剤粒子の分散液と、結着樹脂としてのポリエステル系樹脂(B)の分散液とを混合し、凝集させ、凝集粒子を得る。工程(2)では、凝集前に着色剤粒子の分散液、その他添加剤を加え、離型剤粒子及びポリエステル系樹脂(B)と共に凝集させてもよい。
工程(2)において用いられる樹脂(B)の総量100質量部に対する、離型剤粒子の量は、離型剤の分散性をより安定化し、画像濃度に優れるトナーを得る観点から、好ましくは4質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは12質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0041】
<ポリエステル系樹脂(B)>
工程(2)においてポリエステル系樹脂(B)は、離型剤粒子との親和性の観点から、非晶性のポリエステル樹脂(A)を含んでいてもよい。また、ポリエステル系樹脂(B)は、樹脂(A)以外の非晶性ポリエステル系樹脂B1を含んでいてもよく、非晶性のポリエステル樹脂(A)と非晶性ポリエステル系樹脂B1を含んでいてもよい。ポリエステル系樹脂(B)は、トナー中に離型剤粒子を良好に内包し、耐久性の良好なトナーを得る観点から、非晶性のポリエステル樹脂(A)であることが好ましい。すなわち、ポリエステル系樹脂(B)は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であり、アルコール成分の80モル%以上が、炭素数3以上6以下かつ樹脂(B)中にアルキル分岐構造を形成する脂肪族ジオールであることが好ましい。
【0042】
≪非晶性ポリエステル系樹脂B1≫
非晶性ポリエステル系樹脂B1(以下、単に「樹脂B1」ともいう)は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合物を含む。
樹脂B1としては、例えば、ポリエステル樹脂、変性されたポリエステル系樹脂が挙げられる。変性されたポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂のウレタン変性物、ポリエステル樹脂のエポキシ変性物、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、及びポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む複合樹脂である。
【0043】
樹脂B1のアルコール成分としては、例えば、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物としては、上述した樹脂(A)における式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が例示され、好ましい範囲も同様である。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、より好ましくは100モル%である。
【0044】
直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
【0045】
脂環式ジオール及び3価以上の多価アルコールとしては、上述した樹脂(A)における脂環式ジオール及び3価以上の多価アルコールが例示され、好ましい範囲も同様である。
【0046】
樹脂B1のカルボン酸成分としては、上述した樹脂(A)で例示したカルボン酸成分が同様に例示され、具体的には、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物、3価以上のカルボン酸化合物が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。
【0047】
脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは25モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
【0048】
3価以上の多価カルボン酸を含む場合、3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは8モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0049】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0050】
樹脂B1が複合樹脂である場合、付加重合樹脂セグメントとしては、例えば、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物が挙げられる。
スチレン系化合物としては、例えば、無置換又は置換スチレンが挙げられる。スチレンに置換される置換基としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、スルホン酸基又はその塩が挙げられる。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
付加重合樹脂セグメントの原料モノマー中、スチレン系化合物の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0051】
スチレン系化合物以外の原料モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニル等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル又は(メタ)アクリル酸ステアリル、より好ましくは(メタ)アクリル酸ステアリル、更に好ましくはメタクリル酸ステアリルである。
【0052】
付加重合樹脂セグメントの原料モノマー中、(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
付加重合樹脂セグメントの原料モノマー中における、スチレン系化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの総量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0053】
樹脂B1は複合樹脂の場合、好ましくは、ポリエステル樹脂セグメント及び付加重合樹脂セグメントと共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位を有する。
「両反応性モノマー由来の構成単位」とは、両反応性モノマーの官能基、付加重合性基が反応した単位を意味する。
付加重合性基としては、例えば、炭素-炭素不飽和結合(エチレン性不飽和結合)が挙げられる。
両反応性モノマーとしては、例えば、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが好ましく、カルボキシ基を有する付加重合性モノマーがより好ましい。
カルボキシ基を有する付加重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。これらの中でも、重縮合反応と付加重合反応の双方の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマーがカルボキシ基を有する付加重合性モノマーである場合、両反応性モノマー由来の構成単位の量は、樹脂B1のポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分100モル部に対して、好ましくは1モル部以上、より好ましくは5モル部以上、更に好ましくは8モル部以上であり、そして、好ましくは30モル部以下、より好ましくは25モル部以下、更に好ましくは20モル部以下である。
【0054】
樹脂B1が複合樹脂である場合、樹脂B1中のポリエステル樹脂セグメントの含有量は、好ましくは35質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
【0055】
樹脂B1が複合樹脂である場合、樹脂B1中の付加重合樹脂セグメントの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
【0056】
樹脂B1が複合樹脂である場合、樹脂B1中の両反応性モノマー由来の構成単位の量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
【0057】
樹脂B1が複合樹脂である場合、樹脂B1中の、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントと両反応性モノマー由来の構成単位の総量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下、そして、更に好ましくは100質量%である。
【0058】
上記量は、ポリエステル樹脂セグメント、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー、両反応性モノマー、ラジカル重合開始剤の量の比率を基準に算出し、ポリエステル樹脂セグメント等の質量は、重縮合により生じた水の質量を除いた質量を基準とする。なお、ラジカル重合開始剤を用いた場合、ラジカル重合開始剤の質量は、付加重合樹脂セグメントに含めて計算する。
【0059】
(非晶性ポリエステル系樹脂B1の製造方法)
樹脂B1がポリエステル樹脂である場合、樹脂B1は上記ポリエステル樹脂(A)の製造方法と同様の方法により行うことができ、反応条件等も同様である。
【0060】
樹脂B1がポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む複合樹脂である場合、樹脂B1は、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合させる工程Aと、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーを付加重合させる工程Bとを含む方法により製造してもよい。
工程Aの後に工程Bを行ってもよいし、工程Bの後に工程Aを行ってもよく、工程Aと工程Bを同時に行ってもよい。
工程Aにおいて、カルボン酸成分の一部を重縮合反応に供し、次いで工程Bを実施した後に、カルボン酸成分の残部を重合系に添加し、工程Aの重縮合反応及び両反応性モノマー又は両反応性モノマーに由来する構成部位が有するカルボキシ基との重縮合反応を更に進める方法が好ましい。
【0061】
工程Aでは、必要に応じて、上記ポリエステル樹脂(A)の製造方法に記載したエステル化触媒及びエステル化助触媒を、同様の使用量で用いて重縮合してもよい。
また、重縮合にフマル酸等の不飽和結合を有するモノマーを使用する際には、必要に応じて、上記ポリエステル樹脂(A)の製造方法に記載した重合禁止剤を、同様の使用量で用いてもよい。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0062】
工程Bの付加重合のラジカル重合開始剤としては、例えば、ジブチルパーオキシド等の過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。
付加重合の温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは210℃以下である。
【0063】
(非晶性ポリエステル系樹脂B1の物性)
樹脂B1の軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは125℃以下である。
樹脂B1のガラス転移温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0064】
樹脂B1の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
樹脂B1の軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、樹脂B1を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
【0065】
工程(2)において、低温定着性に優れるトナーを得る観点から、凝集前に更に結晶性ポリエステル樹脂(C)(以下、単に「樹脂(C)」ともいう)を加え、離型剤粒子及びポリエステル系樹脂(B)と凝集させてもよい。
≪結晶性ポリエステル樹脂(樹脂(C))≫
樹脂(C)は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
アルコール成分は、好ましくはα,ω-脂肪族ジオールを含む。
α,ω-脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。
【0066】
α,ω-脂肪族ジオールの量は、アルコール成分中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
【0067】
アルコール成分は、α,ω-脂肪族ジオールとは異なる他のアルコール成分を含有していてもよい。他のアルコール成分としては、例えば、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のα,ω-脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオール;ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0068】
カルボン酸成分は、好ましくは脂肪族ジカルボン酸を含む。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、直鎖の飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく、セバシン酸、ドデカン二酸、及びテトラデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0069】
脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
【0070】
カルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸とは異なる他のカルボン酸成分を含有していてもよい。他のカルボン酸成分としては、例えば、ステアリン酸等の1価のカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上用いてもよい。
【0071】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0072】
(樹脂(C)の物性)
樹脂(C)の軟化点は、耐熱保存性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
樹脂(C)の融点は、耐熱保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
【0073】
樹脂(C)の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
【0074】
樹脂(C)の軟化点、融点、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。それらの値は、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、樹脂(C)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、融点、及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
【0075】
樹脂(C)は、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合により得られる。重縮合の条件は、例えば、前述の樹脂(A)における重縮合で示した条件を適用することができる。
【0076】
トナーの樹脂成分において、結着樹脂として使用する樹脂(B)及び樹脂(C)の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは98質量%以下である。
【0077】
樹脂(C)を用いる場合、樹脂(C)と樹脂(B)との質量比率[樹脂(C)/樹脂(B)]は、好ましくは1/99以上、より好ましくは5/95以上、更に好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上であり、そして、好ましくは50/50以下、より好ましくは40/60以下、更に好ましくは30/70以下である。
【0078】
〔ポリエステル系樹脂(B)を含む樹脂粒子の分散液の製造方法〕
ポリエステル系樹脂(B)の水系分散液は、樹脂(B)を含む樹脂粒子の水系分散液である。樹脂(B)を含む樹脂粒子は、結晶性ポリエステル樹脂(C)等の樹脂(B)以外の樹脂を含んでもよい。樹脂粒子中の樹脂(B)の含有量は、離型剤粒子との相溶性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは100質量%である。
水系媒体としては、水を主成分とするものが好ましく、樹脂(B)を含む樹脂粒子の分散液の分散安定性を向上させる観点、及び環境性の観点から、水系媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、更に好ましくは100質量%である。水としては、脱イオン水又は蒸留水が好ましい。水系媒体に含まれうる水以外の成分としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の総炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、メチルエチルケトンが好ましい。
【0079】
分散は、公知の方法を用いて行うことができるが、転相乳化法により分散することが好ましい。転相乳化法としては、例えば、樹脂の有機溶媒溶液又は溶融した樹脂に水系媒体を添加して転相乳化する方法が挙げられる。樹脂の有機溶媒溶液に水系媒体を添加して転相乳化する方法が好ましい。
転相乳化に用いる有機溶媒としては、樹脂を溶解すれば特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトンが挙げられる。
有機溶媒溶液には、中和剤を添加することが好ましい。中和剤としては、例えば、塩基性物質が挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等の含窒素塩基性物質が挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましい。
樹脂(B)を含む樹脂粒子に含まれる樹脂の中和度は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。
なお、樹脂(B)を含む樹脂粒子に含まれる樹脂の中和度は、下記式によって求めることができる。
中和度(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{樹脂粒子を構成する樹脂の加重平均酸価(mgKOH/g)×樹脂粒子を構成する樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
【0080】
有機溶媒溶液又は溶融した樹脂を撹拌しながら、水系媒体を徐々に添加して転相させる。
水系媒体を添加する際の有機溶媒溶液の温度は、樹脂(B)を含む樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは樹脂(B)のガラス転移温度以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
【0081】
転相乳化の後に、必要に応じて、得られた分散液から蒸留等により有機溶媒を除去してもよい。この場合、有機溶媒の残存量は、分散液中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは実質的に0質量%である。
【0082】
分散液中の樹脂(B)を含む樹脂粒子の体積中位粒径D50は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.08μm以上であり、そして、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下である。
【0083】
樹脂(B)を含む樹脂粒子の水系分散液の固形分濃度は、トナーの生産性を向上させる観点、及び樹脂(B)を含む樹脂粒子の水系分散液の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
なお、固形分は不揮発性成分の総量である。
【0084】
(着色剤粒子)
工程(2)では、着色剤粒子は、着色剤を水系媒体に分散させた着色剤粒子分散液として添加することが好ましい。
着色剤としては、顔料及び染料が用いられ、トナーの画像濃度を向上させる観点から、顔料が好ましい。
顔料としては、シアン顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、黒色顔料が挙げられる。
シアン顔料は、フタロシアニン顔料が好ましく、銅フタロシアニンがより好ましい。イエロー顔料は、モノアゾ顔料、イソインドリン顔料、ベンズイミダゾロン顔料が好ましく、マゼンタ顔料は、キナクリドン顔料、BONAレーキ顔料等の溶性アゾ顔料、ナフトールAS顔料等の不溶性アゾ顔料が好ましい。黒色顔料は、カーボンブラックが好ましい。
染料としては、アクリジン染料、アゾ染料、ベンゾキノン染料、アジン染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、フタロシアニン染料、アニリンブラック染料等が挙げられる。
着色剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0085】
着色剤粒子分散液は、着色剤と、必要に応じて界面活性剤や着色剤を水系媒体に分散可能な樹脂等、とを、水系媒体と混合することにより好適に製造することができる。この際、ホモジナイザー等を用いて分散させるのが好ましい。水系媒体としては、前述の樹脂(B)を含む樹脂粒子の水系分散液の製造で挙げたものが好ましい。
着色剤の水系媒体への分散は、着色剤の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行うことが好ましい。
【0086】
着色剤粒子分散液の製造に用いる界面活性剤としては、好ましくはアニオン性界面活性剤である。アニオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等が挙げられ、好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
界面活性剤の量は、着色剤粒子の分散安定性を向上させる観点、並びに離型剤の脱離及び露出を抑制する観点から、着色剤100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。
【0087】
着色剤粒子分散液中における固形分の含有量及び着色剤の含有量は、それぞれ、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0088】
着色剤粒子分散液中における着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.08μm以上、更に好ましくは0.10μm以上であり、そして、好ましくは0.30μm以下、より好ましくは0.20μm以下、更に好ましくは0.15μm以下である。
着色剤粒子の体積中位粒径D50は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0089】
樹脂粒子、離型剤粒子、及び着色剤粒子の凝集は、他の添加剤の存在下で行ってもよい。
他の添加剤としては、例えば、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤が挙げられる。
【0090】
(界面活性剤)
工程(2)では、各粒子の分散液を混合し、混合分散液を調製する際、樹脂(B)を含む樹脂粒子、離型剤粒子、着色剤粒子等の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行ってもよい。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル類等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤を使用する場合、その総使用量は、樹脂(B)を含む樹脂粒子の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0091】
前述の樹脂(B)を含む樹脂粒子の分散液、離型剤粒子の分散液、着色剤粒子分散液、及び任意成分の混合は、常法により行われる。当該混合により得られた混合分散液に、凝集を効率的に行う観点から、凝集剤を添加することが好ましい。
【0092】
〔凝集剤〕
凝集剤としては、例えば、第四級塩等のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤、無機系凝集剤が挙げられる。無機系凝集剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の無機金属塩;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩;2価以上の金属錯体が挙げられる。
凝集性を向上させ均一な凝集粒子を得る観点から、1価以上5価以下の無機系凝集剤が好ましく、1価以上2価以下の無機金属塩、無機アンモニウム塩がより好ましく、無機アンモニウム塩が更に好ましく、硫酸アンモニウムが更に好ましい。
【0093】
凝集剤を用いて、例えば、0℃以上40℃以下の樹脂(B)を含む樹脂粒子、離型剤粒子、及び着色剤粒子を含む混合分散液に、樹脂の総量100質量部に対し5質量部以上50質量部以下の凝集剤を添加し、樹脂(B)を含む樹脂粒子、離型剤粒子、及び着色剤粒子を水系媒体中で凝集させて、凝集粒子を得る。更に、凝集を促進させる観点から、凝集剤を添加した後に分散液の温度を上げることが好ましい。
【0094】
凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
【0095】
〔凝集停止剤〕
凝集停止剤としては、界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。凝集停止剤は、水溶液で添加してもよい。
凝集停止剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、樹脂(B)を含む樹脂粒子中の樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、そして、トナーへの残留を低減する観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
【0096】
凝集粒子の体積中位粒径D50は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
【0097】
なお、本発明において、工程(2)の後、工程(3)の前に、工程(2)で得られた凝集粒子(凝集粒子1)に非晶性樹脂(好ましくは非晶性ポリエステル系樹脂)を含むシェル用樹脂粒子を付着させて、凝集粒子2を得る工程(工程(2’))を有していてもよい。工程(2’)を有することで、コアシェル構造を有するトナー粒子を得ることができる。
ここで、シェル用樹脂粒子に使用される非晶性樹脂としては、上述したポリエステル系樹脂(B)が例示される。シェル用樹脂粒子は、前述の樹脂(B)を含む樹脂粒子と同様の方法により得られる。
また、トナーの製造方法が工程(2’)を有する場合には、工程(2’)において凝集粒子2が、トナー粒子として適度な粒径に成長したところで凝集を停止させることが好ましく、上述の凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
【0098】
[工程(3)]
工程(3)では、例えば、凝集粒子を水系媒体中で融着させる。
融着によって、凝集粒子に含まれる各粒子を融着し、融着粒子が得られる。
工程(3)においては、凝集粒子の融着性を向上させる観点、並びにトナーの低温定着性及び耐熱保存性を両立させる観点から、凝集粒子に含まれる樹脂のうち最も高いガラス転移温度を有する樹脂のガラス転移温度以上の温度で保持する。
凝集粒子を融着させる際の保持温度は、凝集粒子の融着性を向上させる観点及びトナーの生産性を向上させる観点から、樹脂のガラス転移温度より、好ましくは5℃高い温度以上、より好ましくは10℃高い温度以上、更に好ましくは15℃高い温度以上であり、そして、樹脂のガラス転移温度より、好ましくは40℃高い温度以下、より好ましくは30℃高い温度以下、更に好ましくは25℃高い温度以下である。
その際、樹脂のガラス転移温度以上の温度で保持する時間は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を両立させる観点から、好ましくは1分間以上、より好ましくは10分間以上、更に好ましくは30分間以上であり、そして、好ましくは240分間以下、より好ましくは180分間以下、更に好ましくは120分間以下、更に好ましくは90分間以下である。
なお、所望の円形度となるまで、上記の温度で保持することが好ましい。
【0099】
融着により得られた融着粒子の体積中位粒径D50は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。
【0100】
融着により得られる融着粒子の円形度は、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
融着は、上記好ましい円形度に達した後に終了することが好ましい。
円形度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0101】
<後処理工程>
工程(3)の後に後処理工程を行ってもよく、融着粒子を単離することによってトナー粒子が得られる。工程(3)で得られた融着粒子は、水系媒体中に存在するため、まず、固液分離を行うことが好ましい。固液分離には、吸引濾過法等が好ましく用いられる。
固液分離後に洗浄を行うことが好ましい。このとき、添加した界面活性剤も除去することが好ましいため、界面活性剤の曇点以下で水系媒体により洗浄することが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
次に乾燥を行うことが好ましい。乾燥方法としては、例えば、真空低温乾燥法、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法が挙げられる。
【0102】
〔トナー粒子〕
トナー粒子の体積中位粒径D50は、高画質の画像を得る観点、トナーのクリーニング性をより向上させる観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。
トナー粒子の円形度は、高画質の画像を得る観点から、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上であり、そして、クリーニング性の観点から、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
トナー粒子の体積中位粒径D50は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0103】
[静電荷像現像用トナー]
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単にトナーともいう。)は、トナー粒子を含む。
トナー粒子をトナーとしてそのまま用いることもできるが、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
【0104】
〔外添剤〕
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化セリウム、カーボンブラック等の無機材料の微粒子、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。外添剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。また、粒径の異なる疎水性シリカを2種以上使用してもよい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
【0105】
トナーは、電子写真方式の印刷において、静電荷像現像に用いられる。トナーは、例えば、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例】
【0106】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。各性状値は、次の方法により、測定、評価した。
なお、「アルキレンオキシド(X)」等の標記において、かっこ内の数値Xは、アルキレンオキシドの平均付加モル数を意味する。
【0107】
[測定方法]
ポリエステル樹脂、樹脂粒子、トナー等の各性状値は次の方法により測定、評価した。
【0108】
〔樹脂の軟化点、結晶性指数、融点及びガラス転移温度〕
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
(3)融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。結晶性樹脂の時には該ピーク温度を融点とした。
また、非晶性樹脂の場合にピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の低温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0109】
〔樹脂の酸価〕
樹脂の酸価は、JIS K 0070:1992に記載の中和滴定法に従って測定した。但し、測定溶媒をアセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))とした。
【0110】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
【0111】
〔樹脂粒子、離型剤粒子、及び着色剤粒子の体積中位粒径(D50)〕
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」(株式会社堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに試料分散液をとり、蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径D50及び体積平均粒径Dvを測定した。
【0112】
〔樹脂粒子分散液、離型剤粒子分散液、及び着色剤分散液の固形分濃度〕
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、水分量の変動幅0.05%)にて、水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100-水分(質量%)
【0113】
〔凝集粒子の体積中位粒径D50〕
凝集粒子の体積中位粒径D50は、次の通り測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・測定条件:試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、改めて3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径D50を求めた。
【0114】
〔融着粒子の円形度〕
次の条件で融着粒子の円形度を測定した。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス株式会社製)
・分散液の調製:融着粒子の分散液を固形分濃度が0.001~0.05質量%になるように脱イオン水で希釈して調製した。
・測定モード:HPF測定モード
【0115】
〔トナー粒子の体積中位粒径D50〕
トナー粒子の体積中位粒径D50は、以下の通り測定した。
測定装置、アパチャー径、解析ソフト、電解液は、前述の凝集粒子の体積中位粒径D50の測定で用いたものと同様のものを用いた。
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」(花王株式会社製、HLB:13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記試料分散液5mLに乾燥後のトナー粒子の測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径D50を求めた。
【0116】
[樹脂の製造]
〔ポリエステル樹脂(A)の製造〕
製造例A1(樹脂A-1の製造)
表1に示すフマル酸以外のポリエステルの原料モノマー、エステル化触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れた。窒素雰囲気下、反応系を180℃で1時間保持し、180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、その後230℃で5時間加熱し、重縮合させた。その後、180℃まで冷却した後、フマル酸及びラジカル重合禁止剤(4-tert-ブチルカテコール)5gを反応系に投入し、180℃から210℃まで10℃/hで昇温し、210℃で1時間反応を行い、210℃、10kPaにて表1に示す軟化点まで反応を行い、樹脂A-1を得た。物性を表1に示す。
【0117】
製造例A2(樹脂A-2の製造)
製造例A1において、ポリエステルの原料モノマーを表1に示すように変更した以外は同様にして、樹脂A-2を得た。物性を表1に示す。
【0118】
製造例A3(樹脂A-3の製造)
表1に示すイソフタル酸以外のポリエステルの原料モノマー、エステル化触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れた。窒素雰囲気下、反応系を180℃で1時間保持した後に180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、その後230℃で5時間加熱し、重縮合させた。その後、180℃まで冷却した後、イソフタル酸を反応系に投入し、180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、230℃にて1時間反応を行い、230℃、10kPaにて表1に示す軟化点まで反応を行い、樹脂A-3を得た。物性を表1に示す。
【0119】
比較製造例A1(樹脂A’-1の製造)
表1に示すトリメリット酸無水物以外のポリエステルの原料モノマー、エステル化触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れた。窒素雰囲気下、反応系を180℃で1時間保持した後に180℃から230℃まで10℃/hで昇温し、その後230℃で5時間加熱し、重縮合させた。その後、180℃まで冷却した後、トリメリット酸無水物を反応系に投入し、180℃から210℃まで10℃/hで昇温し、210℃にて1時間反応を行い、210℃、10kPaにて表1に示す軟化点まで反応を行って、樹脂A’-1を得た。物性を表1に示す。
【0120】
【0121】
〔ポリエステル系樹脂(B)の製造〕
製造例B1(樹脂B1-1の製造)
表2に示すフマル酸以外のポリエステルセグメントの原料モノマーを、窒素導入管を装備した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、反応系を160℃まで昇温した。その後、両反応性モノマー、ビニル系樹脂セグメントの原料モノマー及びジブチルパーオキサイドの混合物を滴下ロートにより反応系に1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた後、200℃まで上昇させ、8.0kPaの減圧下で1時間反応させた後、表2に示すエステル化触媒及びエステル化助触媒を反応系に入れた後、235℃で6時間重縮合反応させ、更に235℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。180℃まで冷却した後、フマル酸及びラジカル重合禁止剤(4-tert-ブチルカテコール)5gを反応系に投入し、180℃から210℃まで10℃/hで昇温し、210℃にて1時間反応を行い、210℃、10kPaにて表2に示す軟化点まで反応を行って、樹脂B1-1を得た。物性を表2に示す。
【0122】
製造例B2(樹脂B1-2の製造)
表2に示すトリメリット酸無水物以外の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、反応系を235℃に昇温して6時間反応させた。8.0kPaの減圧下で1時間反応させ、更に210℃に降温した後、反応系にトリメリット酸無水物を添加し、210℃にて1時間反応させ、210℃、40kPaにて表2に示す軟化点まで反応させて、樹脂B1-2を得た。物性を表2に示す。
【0123】
【0124】
〔結晶性ポリエステル系樹脂(C)の製造〕
製造例C1(樹脂C-1の製造)
表3に示す原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、反応系を135℃に昇温して3時間保持した後、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した。表3に示すエステル化触媒及びエステル化助触媒を反応系に加え、200℃で1時間反応させた後、8.0kPaにて1時間保持し、樹脂C-1を得た。物性を表3に示す。
【0125】
【0126】
〔樹脂粒子分散液の製造〕
製造例X1(樹脂粒子分散液X-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた3L容の容器に、樹脂A-1を200g、メチルエチルケトン200gを入れ、73℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂A-1の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、200r/minで撹拌しながら、脱イオン水1000gを50分かけて添加し、転相乳化した。得られた溶液を、73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し分散液を得た。その後、撹拌を継続しながら分散液を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液X-1を得た。物性を表4に示す。
【0127】
製造例X2~X5及び製造例Y1~Y2(樹脂粒子分散液X-2~X-5及びY-1~Y-2の製造)
製造例X1において、樹脂を表4に示すように変更した以外は同様にして、樹脂粒子分散液X-2~X-5及びY-1~Y-2を得た。物性を表4に示す。
【0128】
【0129】
〔着色剤分散液の製造〕
(着色剤分散液E-1の製造)
1L容のビーカーに、銅フタロシアニン顔料「ECB-301」(大日精化工業株式会社製)67.5g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックス(登録商標)G-15」(花王株式会社製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)90g及び脱イオン水149gを混合し、ホモジナイザーを用いて室温下で3時間分散させた後、固形分濃度が25質量%になるように脱イオン水を加えることにより着色剤分散液E-1を得た。分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は0.125μmであった。
【0130】
〔離型剤粒子分散液の製造(工程(1))〕
製造例W1(離型剤粒子分散液W-1の製造)
1L容のビーカーに、脱イオン水(120g)、樹脂粒子分散液X-1(80g)、パラフィンワックス「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、融点75℃)40gを添加し、90~95℃に温度を保持して溶融させて撹拌し、溶融混合物を得た。90~95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US-600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて20分間分散処理を行った後に、室温まで冷却した。得られた分散物に脱イオン水を加え、固形分濃度を20質量%に調整し、離型剤粒子分散液W-1を得た。得られた離型剤粒子分散液W-1の物性を表5に示す。
【0131】
製造例W2~W7(離型剤粒子分散液W-2~W-7の製造)
製造例W1において、離型剤と樹脂粒子分散液の種類及び使用量を表5に示すように変更した以外は同様にして、離型剤粒子分散液W-2~W-7を得た。物性を表5に示す。
【0132】
製造例W8(離型剤粒子分散液W-8の製造)
1L容のビーカーに、脱イオン水(120g)を投入し、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液「ネオペレックスG-15」(アニオン性界面活性剤、花王株式会社製)2.7gを溶解させた後に、パラフィンワックス「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、融点75℃)40gを添加し、90~95℃に温度を保持して溶融させて撹拌し、溶融混合物を得た。90~95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US-600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて20分間分散処理を行った後に、室温まで冷却した。得られた分散物に脱イオン水を加え、固形分濃度を20質量%に調整し、離型剤粒子分散液W-8を得た。物性を表5に示す。
【0133】
【0134】
[トナーの製造(工程(2)及び工程(3))]
実施例1(トナー1の製造)
結着樹脂としてのポリエステル系樹脂(B)である樹脂A-3を含む分散液X-3(500g)、離型剤粒子分散液W-1(77g)、着色剤分散液E-1(50g)を脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した2L容の4つロフラスコに入れ、25℃で混合した。次に、櫂型の撹拌機で撹拌下、この混合物に硫酸アンモニウム43.1gを1012gの脱イオン水に溶解させた水溶液を25℃で30分かけて滴下した。次いで、得られた混合溶液を58℃まで昇温し、58℃で保持し、凝集粒子分散液を形成した。
得られた凝集粒子分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE-27C」(アニオン性界面活性剤、花王株式会社製、固形分:28質量%)48.2gを脱イオン水313gで希釈した水溶液を添加した後、70℃まで2時間かけて昇温し、70℃にて円形度が0.970となるまで保持し、融着粒子を得た。その後、25℃まで冷却した。
得られた融着粒子分散液を、吸引濾過で固形分を分離した後、脱イオン水で洗浄し、33℃で乾燥を行って、体積中位粒径(D50)が6.0μmのトナー粒子を得た。このトナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れ、撹拌し、150メッシュの篩いを通過させてトナー1を得た。
【0135】
〔耐ホットオフセット性〕
未定着画像を取れる様に改造した、プリンター「OKI MICROLINE 5400」(沖電気工業株式会社製)にトナー1を充填し、2cm角のベタ画像の未定着画像を印刷した。「OKI MICROLINE 3010」(沖電気工業株式会社製)を改造した外部定着装置を使用して、定着ロールの回転速度150mm/secにて、定着ロールの温度を100℃から200℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度でこの未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。得られた100℃~200℃の定着画像を目視で確認し、ホットオフセットの発生が見られない定着ロールの最高温度を最高定着温度とし、最高定着温度より5℃高い温度をホットオフセット発生温度とした。評価結果を表6に示す。
【0136】
〔トナーの耐久性〕
現像ローラを目視で見ることができるように改造した沖電気工業株式会社製のIDカートリッジ「ML-5400用、イメージドラム」にトナーを実装し、温度25℃、湿度50%の条件下で、70r/min(36ppm相当)で空回し運転を行い、現像ローラフィルミングを1時間おきに目視にて観察した。フィルミング発生までの時間を耐久性の指標とした。耐久性は現像ローラフィルミング発生までの時間が長いほど、耐久性に優れることを示す。評価結果を表6に示す。
【0137】
実施例2~8、比較例1~3(トナー2~8及びトナー11~13の製造)
実施例1において、樹脂粒子分散液及び離型剤粒子分散液を表6に示すものへと変更した以外は同様にしてトナー2~8及びトナー11~13を得た。実施例1と同様にトナー2~8及びトナー11~13についても耐ホットオフセット性及びトナーの耐久性を測定した。トナーの物性及び評価結果を表6に示す。
【0138】
実施例9(トナー9の製造)
結着樹脂としてのポリエステル系樹脂(B)である樹脂A-3を含む分散液X-3(500g)、離型剤粒子分散液W-1(77g)、着色剤分散液E-1(50g)を脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した2L容の4つロフラスコに入れ、25℃で混合した。次に、櫂型の撹拌機で撹拌下、この混合物に硫酸アンモニウム43.1gを1012gの脱イオン水に溶解させた水溶液を25℃で30分かけて滴下した。次いで、得られた混合溶液を58℃まで昇温し、58℃で保持し、凝集粒子1の分散液を形成した。
得られた凝集粒子1の分散液を54℃に冷却し、54℃で保持しながら、樹脂粒子分散液X-1(75g)を90分かけて添加し、凝集粒子1に樹脂粒子が凝集した凝集粒子2の分散液を得た。
得られた凝集粒子2の分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE-27C」(アニオン性界面活性剤、花王株式会社製、固形分:28質量%)48.2gを脱イオン水313gで希釈した水溶液を添加した後、70℃まで2時間かけて昇温し、70℃にて円形度が0.970となるまで保持し、融着粒子を得た。その後、25℃まで冷却した。
得られた融着粒子分散液を、吸引濾過で固形分を分離した後、脱イオン水で洗浄し、33℃で乾燥を行って、体積中位粒径(D50)が6.2μmのトナー粒子を得た。このトナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れ、撹拌し、150メッシュの篩いを通過させてトナー9を得た。実施例1と同様にトナー9についても耐ホットオフセット性及びトナーの耐久性を測定した。トナーの物性及び評価結果を表6に示す。
【0139】
実施例10(トナー10の製造)
実施例9において、樹脂粒子分散液を表6に示すものへと変更した以外は同様にしてトナー10を得た。実施例1と同様にトナー10についても耐ホットオフセット性及びトナーの耐久性を測定した。トナーの物性及び評価結果を表6に示す。
【0140】
【0141】
表6に示す通り、本発明の製造方法によれば、離型剤と、特定のポリエステル樹脂(A)を90質量%以上含む樹脂粒子の分散液とを混合し、乳化させて離型剤粒子分散液を得ることによって、定着時のホットオフセットの発生が抑制され、耐久性が良好なトナー1~10が得られた。
一方、特定のポリエステル樹脂(A)の代わりに、ポリエステル樹脂(A)とはアルコール成分が異なるポリエステル樹脂A’-1を含む樹脂粒子を用いて離型剤粒子分散液を得た比較例1のトナー11は、耐久性が十分ではなかった。これは、ポリエステル樹脂A’-1を構成するアルコール成分が樹脂(A)中にアルキル分岐構造を形成しない脂肪族ジオールであるため、結着樹脂として用いた樹脂A-3との親和性が十分でなく、離型剤粒子が凝集・融着過程においてトナー中に十分に内包されなかったためと考えられる。
また、特定のポリエステル樹脂(A)の代わりに、樹脂B1-2を含む樹脂粒子を用いて離型剤粒子分散液を得た比較例2のトナー12や、離型剤を界面活性剤で分散して得た比較例3のトナー13では、ホットオフセット発生温度が低く、トナーの耐久性も十分ではなかった。トナー12の耐久性が十分ではなかった理由は、ポリエステル樹脂B1-2を構成するアルコール成分が芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物であるため、結着樹脂として用いた樹脂A-3との親和性が十分でなかったためと考えられる。また、トナー12のホットオフセット発生温度が低い理由は、樹脂B1-2のエステル基濃度が低く、定着時に樹脂B1-2と離型剤との分離性が良くなかったためと考えられる。更に、トナー13の耐久性及びホットオフセット発生温度が低い理由は、界面活性剤の高い分散力により、離型剤がトナー粒子の表面に露出し、トナー中に十分に内包されなかったためと考えられる。