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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】コイル及びコイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 5/00 20060101AFI20230710BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20230710BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20230710BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
H01F5/00 F
H01P11/00
H01F5/00 R
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F41/04 A
H01F17/04 N
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022512380
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2021059038
(87)【国際公開番号】W WO2021213801
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】102020110850.8
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518379278
【氏名又は名称】テーデーカー エレクトロニクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ブールマイヤー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ドレスプリング,アンネリーゼ
(72)【発明者】
【氏名】へレス,ガルデアノ,フェリペ
(72)【発明者】
【氏名】ソルグ,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ルクス,ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】プロクス,ゲルハルト
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-323343(JP,A)
【文献】米国特許第05428337(US,A)
【文献】特開平11-097270(JP,A)
【文献】実開昭55-167612(JP,U)
【文献】特開2016-067088(JP,A)
【文献】特開2013-222895(JP,A)
【文献】特表2012-526384(JP,A)
【文献】特開2019-213324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00
H01F 17/00
H01F 17/04
H01F 27/28
H01F 41/04
H01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルであって、
導電性材料製の管壁を有する管を備え、
前記管は、前記管壁内に空隙が配置された誘導セクションを備え、前記空隙は前記誘導セクション内の前記管壁をスパイラルに成形し、
前記管は、接続領域と少なくとも1つの端子領域とを有する少なくとも1つのコンタクトセクションを備え、
前記接続領域は、前記スパイラルの隣接するセクションと同じ輪郭を有し、
前記端子領域は、前記コイルの電気的端子を形成し、
前記接続領域は、前記端子領域を前記誘導セクションと電気的に接続する、
コイル。
【請求項2】
前記接続領域から前記誘導セクションへの遷移部は、前記管の長手軸の方向において直線的である、
請求項1記載のコイル。
【請求項3】
前記誘導セクションは、変形を有さない、
請求項1又は2記載のコイル。
【請求項4】
前記端子領域は、前記管壁の変形によって形成されている、
請求項1乃至3いずれか1項記載のコイル。
【請求項5】
前記端子領域及び前記接続領域は、前記管の長手軸に対して垂直な1つの平面内にある、
請求項1乃至4いずれか1項記載のコイル。
【請求項6】
前記端子領域は、はんだ付け可能な端子を形成する平坦面を備える、
請求項1乃至5いずれか1項記載のコイル。
【請求項7】
前記誘導セクションは、前記端子領域の一部を介して載置面から離れている、
請求項1乃至6いずれか1項記載のコイル。
【請求項8】
前記コイルは、コア、特にEPコアを備える、
請求項7記載のコイル。
【請求項9】
前記管は、プラスチックに埋め込まれている、
請求項1乃至8いずれか1項記載のコイル。
【請求項10】
前記プラスチックは磁性粉体、磁性粒子又は他の磁性材料と混合されている、
請求項9記載のコイル。
【請求項11】
前記端子領域はL字形状に設計されており、
L字形状の前記端子領域の水平部分は、はんだ付け可能な端子を形成する平坦な表面に設計されており、
前記端子領域の垂直部分は、前記コイルの前記誘導セクションを組付け表面から離間させている、
請求項1乃至10いずれか1項記載のコイル。
【請求項12】
1つの共通のハウジング内に配置された、2つの、請求項1乃至11いずれか1項記載のコイルを備えるモジュール。
【請求項13】
コイルを製造する方法であって、
a)導電性材料製の管壁を有する管を用意するステップと、
b)前記管の誘導セクションに空隙を生成するステップであって、前記誘導セクション内の前記空隙は、前記管壁をスパイラルに形成する、ステップ、及び、前記管の少なくとも2つのセクションをコンタクトセクションに成形するステップと、
c)前記コンタクトセクションの第1部分を、少なくとも1つの端子領域に変形するステップであって、前記コンタクトセクションの第2部分は、前記管壁の形状を保持しつつ接続領域を形成し、前記接続領域は、前記端子領域を前記誘導セクションと電気的に接続する、ステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記空隙の生成及び前記コンタクトセクションの形成にレーザプロセスを使用する、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
ステップb)の部分ステップにおいて、前記管壁の一領域を除去することにより、前記管の前記コンタクトセクション内に切欠きを形成する、
請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
前記管の前記コンタクトセクション内の前記切欠きと、前記誘導セクションの前記空隙とを、単一の方法ステップでまとめて生成する、
請求項15記載の方法。
【請求項17】
ステップc)において、前記コンタクトセクションの前記第1部分を前記管の長手軸に垂直な方向おいて変形することによって、前記端子領域をそれぞれ形成する、請求項13乃至16いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ステップc)において、対向スタンプでのスタンピングプロセスによって、前記コンタクトセクションの前記第1部分を前記端子領域に成形する、
請求項13乃至17いずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記スタンピングプロセスを介して前記接続領域になる前記コンタクトセクションの第2部分を、前記スタンピングプロセスの際に前記対向スタンプを介して支持し、したがって、屈曲力は、前記スタンピングプロセスの際に前記第2部分に作用しない、
請求項18記載の方法。
【請求項20】
ステップb)において、先ず、前記管壁をそれぞれスパイラルに成形する前記空隙がそれぞれに生成された複数の前記誘導セクションを前記管に沿って生成することによって、コイルトレインを生成し、
2つの前記誘導セクションの間にそれぞれ1つのコンタクトセクションを形成し、
ステップc)において、前記コンタクトセクションの前記第1部分を、それぞれ少なくとも1つの端子領域に成形し、
前記コンタクトセクションの前記第2部分は、前記管壁の形状を保持しつつ接続領域を形成し、
前記接続領域は、前記端子領域を前記誘導セクションに電気的に接続する、
請求項13乃至19いずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記管壁の変形によって、前記管の長手軸に対して垂直方向に前記端子領域を形成する、
請求項20記載の方法。
【請求項22】
d)2つの前記誘導セクションの間で前記管の長手軸に対して垂直に前記コイルトレインを個別化するステップ、をさらに含む、請求項20又は21記載の方法。
【請求項23】
複数のコイルトレインを生成するステップ、及び複数のコイルトレインをプラスチックに埋め込むステップであって、前記複数のコイルトレインは互いに平行に配置されている、ステップ、をさらに含む、請求項20又は21記載の方法。
【請求項24】
前記コイルトレインの長手軸に対して横方向及び/又は平行に、前記コイルトレインを個別化するステップ、をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記端子領域はL字形状に設計されており、
L字形状の前記端子領域の水平部分は、はんだ付け可能な端子を形成する平坦な表面に設計されており、
前記端子領域の垂直部分は、前記コイルの前記誘導セクションを取付け表面から離す、
請求項20乃至24いずれか1項記載の方法。
【請求項26】
共通のハウジング内に少なくとも2つのコイルをそれぞれ有するモジュールを製造する方法であって、
- 少なくとも2つのコイルトレインを生成するステップであって、それによって、それぞれの管に沿って複数の誘導セクションを生成し、前記誘導セクションのそれぞれにおいて管壁をスパイラルに形成する空隙を生成し、2つの前記誘導セクションの間にそれぞれ1つのコンタクトセクションを形成し、前記コンタクトセクションの第1部分を、それぞれ少なくとも1つの端子領域に成形し、前記コンタクトセクションの第2部分は、前記管壁の形状を保持しつつ接続領域を形成し、前記接続領域が、前記端子領域を前記誘導セクションに電気的に接続する、ステップと、
- 前記コイルトレインを平行に配置するステップと、
- 前記ハウジングを形成するプラスチック内に前記コイルトレインを埋め込むステップと、
- 前記プラスチックによって連結されたコイルトレインを分離線に沿って個別化するステップであって、前記分離線は前記コイルトレインの長手軸に対して垂直にかつ前記誘導セクションの間に延在する、ステップと、を含む
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料を有するコイル及びコイルの製造方法に関する。
【0002】
電気回路の小型化の過程で、電力損失が低く、電流容量が大きく、寿命が長い小型の誘導部品を提供することは非常に重要である。
【0003】
特にワイヤコイルの場合、弱点は外部コンタクトに必要なコンタクト要素へのワイヤの接続であり得る。通常、溶接ポイント又ははんだポイントで実現される接続は、銅、スズ、又はニッケルを含有する使用される合金のために、又は酸素による汚染のために、少なくともわずかに増加した抵抗を有し得る。さらに、不正確なコンタクトの際には、抵抗が大幅に増加し得る。このことから、高い電力損失を引き起こす高い過渡抵抗が生じ得る。その結果、この点で同様に高められた熱負荷が発生し得、被害の少ない場合でもコイルの故障、深刻な場合は火災につながる得る。
【0004】
特に小さなコイルの場合、コイルのコンタクトと給電線の形態は、コイルの電気的特性に深刻な影響を及ぼす。給電線の寸法とコイルの寸法との比率が大きいと、電子部品としてのコイルの特性に大きな影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、改善された特性を備えたコイルを提供することである。また、本発明の課題は、コイルの製造方法を提供することである。
【0006】
この課題は、請求項1に記載のコイルによって解決される。コイル及びコイルを製造する方法のさらなる実施形態は、さらなる請求項に見出すことができる。
【0007】

導電性材料製の管壁を有する管を備えるコイルであって、管は、管壁内に空隙が配置された誘導セクションを備え、空隙は誘導セクション内の管壁をスパイラルに成形し、管は、接続領域と少なくとも1つの端子領域とを有する少なくとも1つのコンタクトセクションを備え、接続領域は、スパイラルの隣接するセクションと同じ輪郭を有し、端子領域は、コイルの電気的端子を形成し、接続領域は、端子領域を誘導セクションと電気的に接続する、コイルが提案されている。
【0008】
管は、本体の第1端部から本体全体を通って第1端部の反対側の第2端部まで延在する開口を有する細長い中空体と称することができる。管は、その長手軸に関して対称であり得、長手軸は、第1端部の基部(Grundflaeche)の中心点から第2端部の基部の中点まで延在する。一実施形態では、管は、円形、楕円形、又は四角形の断面を有することができる。
ただし、他の断面も可能である。
【0009】
らせん構造はスパイラルと称されることができる。スパイラルは、特に、コイルの巻線を形成することができる。
【0010】
特に、管は、管壁にらせん状の空隙を有することができ、その結果、コイルの巻線が管から形成される。管は導電性材料製である。導電率が10S/mを超える材料、特に導電率が10S/mを超える材料、又は、10S/mを超える材料が導電性材料と見なされる。これには、非常に高い導電率を有する材料、例えば銅、アルミニウム、銀又は金などの金属が適している。炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼又は工具鋼などの工業用鋼も、管の出発材料として適している。
【0011】
管は、誘導セクションと少なくとも1つのコンタクトセクションとを備える。誘導セクションは、空隙によって形成されるスパイラルによってインダクタンスを形成し得る。誘導セクションとコンタクトセクションとは、管壁の材料から一体的に形成されている。したがって、誘導セクションをコンタクトセクションに接続するために、はんだなどの接続パートナは必要ない。むしろ、誘導セクションとコンタクトセクションは、管壁の適切な構造化によって形成され、管材料によって互いに接続されたままであることができる。
【0012】
コイルは、インダクタを端子に接続するために内部接続ポイントが必要ないという利点がある。むしろ、誘導領域とコンタクト領域とは、一体的に形成させることができる。コイルは、インダクタを端子と接続するための内部接続ポイントを必要とするコイルよりも低い総抵抗を備える。さらに、内部コンタクトを無くすことによって、そうでなければ、可能な内部コンタクトで発生する可能性がある、内部コンタクトに発生するはずだった熱的及び機械的負荷が排除され、コイルの障害感受性が低下する。
【0013】
そのために、管は断面が丸い必要はなく、例えば、楕円形、正方形、長方形、多角形、角が丸い正方形、角が丸い長方形、又は角が丸い多角形であることができる。正方形の断面には、所定の高さ又は幅で使用可能な構成空間を最適に利用できるという利点がある。
【0014】
コイルの用途に応じて、管の基部は平面状(flaechig)であることができ、すなわち、基部にまたがる(die Grundflaeche aufspannen)管の広がり(Ausdehnungen)は、高さにおける広がりに比べて大きく、高さは低い場合がある。或いは、管は相当な高さで小さい基部を備える場合がある。コイルが、例えば、狭いハウジングに組付けられている回路基板に接続されている場合、平面状で平らな形状が有利であり得る。一方、回路基板自体に小さいスペースしか用意できないできない場合、小さい基部を有するが、特筆すべき高さを有する管形状が有利であり得る。
【0015】
接続領域は、リール(des Wickels)の隣接する領域と同じ輪郭を有する。したがって、直接接続されたスパイラルであれば伝達されたであろう接続領域の変形を避けることができる。変形とは、特に屈曲や凹凸形成(Praegungen)を意味する。接続領域にかかる力作用は、誘導セクションへの屈曲モーメントとして直接影響を及ぼし、スパイラルの変形を引き起こす。スパイラルのピッチ、ひいては巻線及び空隙の規則性は、接続領域へのわずかな力作用の場合にも劣化し得る。したがって、例えば、スパイラルは、一方の側でより小さな空隙幅を有し、反対側でより大きな空隙幅を有することができる。接続領域でのより強い力作用は、スパイラルにおける短絡を容易に引き起こすこともある。スパイラルの巻線、とりわけ接続領域の近くにある巻線は、一緒に屈曲することがあり、したがって接触することがあるからである。
【0016】
輪郭は、管の長手軸に平行な方向から見たときに、スパイラルの領域又はセクションが有する外形を意味すると理解される。例えば、管が正方形で、接続領域が四角形の直線辺(geraden Seite)上にある場合、接続領域も同様に直線である。スパイラルの隣接セクションに角がある場合、角の輪郭も接続セクションに存在する。円形管の場合、接続セクションはそれに応じて円形セグメントの輪郭を有する。同じ輪郭を有するスパイラル及び接続領域の隣接するセクションは、特に、互いに平行に配置することができる。
【0017】
接続領域から誘導セクションへの遷移部は、管の長手軸の方向に直線であることができる。接続領域と誘導セクションとの間のねじれや角度を回避することにより、この点での材料の弱体化(Schwaechung)を回避でき、それにより破損を防ぐ。さらに、直線的な遷移部を通って流れる電流の経路変化又は湾曲(Kruemmung)が回避され、したがって、コイルの計画外のインダクタンスが回避される。
【0018】
誘導領域は、好ましくは変形を有さないことができる。接続領域はスパイラルの隣接セクションと同じ輪郭を有しているので、接続領域の変形、したがって接続領域への力作用を回避することができる。接続領域への力作用は、接続領域の変形にもつながり、スパイラル内部の変形につながりやすくなる。誘導領域のわずかな変形でさえ、空隙対スパイラルの比率並びにスパイラルの巻線の規則性を特徴づけるピッチの変化をまねき得、もはや計画した要件を満たさない、コイルの電気的特性の変化をまねき得る。より強い変形は、スパイラルの個々の巻線又はターンを一緒に押しつぶし(zusammendruecken)、コイルの短絡にさえつながり得る。2つの巻線又はターン間(zwischen zwei Windungen)の短絡は、必ずしもコイルが動作しなくなることをまねくとは限らないが、いずれにせよ電流が流れない短絡した巻線又はターンは、コイルのインダクタンスに寄与しない。
【0019】
さらに、管壁の変形によって、端子領域を形成することができる。このようにして、端子領域から誘導セクションまで続くコイルの一体型設計を実現し、コイルの直列抵抗を低く抑えることができる。
【0020】
端子領域及び接続領域は、管の長手軸に垂直な平面内にあり得る。このように配置された端子領域は、コイル全体の寸法を増加させない。端子領域が、管の長手軸の方向で接続領域に接続しないからである。したがって、コイルの全長をスパイラルに対して短く保つことができ、スパイラルについて好適な形状ファクタを達成することができる。
【0021】
さらに、端子領域は、はんだ付け可能な端子を形成する平坦な表面を有することができる。したがって、コイルは、特に、例えば回路基板の、導体路にはんだ付けされるように設計することができる。
【0022】
誘導セクションを、端子領域の一部によって載置面から離すことができる。これには、コイルが組付けられる載置面に対する誘導領域の機械的及び熱的隔離という利点がある。これにより、コイルの振動や熱が、回路基板などの組み立て表面に伝わることを防ぐ。また、コイルの磁場は、離れた組み立て面の影響を受けにくく、コイルは所期の電気的特性を有する。コイルを磁性材料で取り囲むか又は磁性材料に埋め込むことができる実施形態では、載置面からコイルを離間させることによって、コイルと載置面との間に十分な磁性材料を配置することもできることを確実にする。このようにして、コイルは磁性材料によって均一に包まれることができ、コイルの周りに均一な磁場を生成することができ、コイルはさらにすべての側面から保護される。
【0023】
誘導性セクションの離間は、例えば、L字型の端子領域によって達成することができる。L字型の端子領域の垂直部分はスペーサとして機能し、水平部分は電気的コンタクトのための平坦面であることができる。端子領域の垂直部分は、コイルが水平部分を介して電気的に接続され得る回路基板などの組付け面からコイルの誘導セクションを離間させる。
【0024】
さらに、コイルは磁気コアを有することができる。たとえば、強磁性コアを使用すると、コイル内の磁束密度を高くし、コイルの高いインダクタンスをもたらすことができる。コアに適した材料は、金属ニッケル亜鉛、マンガン亜鉛、コバルト、及びその他の合金である。ここで、コアは、コイル内部に独占的に配置されたコアだけに限定されず、モジュラーコイルハウジングの一部として一体的にコアを形成するコアも含む。モジュール式コイルハウジングを備えたコイルの実施形態は、コイルの電磁両立性(die elektromagnetische Vertraeglichkeit)を改善することができる。たとえば、EPコアをハウジングとして使用することにより、とりわけ高周波用途での、電磁シールドをハウジングによって改善し、電磁両立性を高めることができる。
【0025】
さらに、管をプラスチックに埋め込んで、主に機械的影響から保護するだけでなく、温度や化学的影響からも保護することができる。プラスチックにはエポキシ樹脂、フェニル樹脂だけでなくシリコーンも適している。管をプラスチックに埋め込むことにより、コイル部品は、ピックアンドプレース法などの部品配置自動機(Bestueckungsautomaten)を使用して組付けやすくなる。
【0026】
鉄粉などの磁性特性を有する粉末又は磁性ナノ粒子をプラスチックに混合することができる。プラスチックに磁性粒子を添加することで、コイルのインダクタンスを増加させ、電気的特性を向上させることができる。プラスチック内の磁性粒子の割合によって、インダクタンスを調整することができる。コイルは、プラスチックに埋め込まれる際に、コイルに磁性粉末が含まれているかどうかに関係なくコイルのインダクタンスを高めるために磁性コアを備えることができる。コイルをプラスチック、特に磁気特性有する粉末の割合を有するプラスチックに埋め込むことにより、特に高周波用途でのコンポーネントの電磁シールドを改善し、電磁両立性を高めることができる。
【0027】
さらに、コイルの外径は0.2~50mmにすることができる。好ましくは、コイルの外直径は、0.5~20mmの範囲であり得る。このサイズは、回路基板上の用途に適したコイルを提供するのに特に適している。外直径は0.2mm以上、好ましくは0.5mm以上であるべきであり、さもなければ、自動的な部品ハンドリング(automatische Teilehandling)にかなりの技術的困難を伴うような小さなコイルが生成される。外直径は50mmを超えるべきではなく、好ましくは20mmを超えるべきではない。さもなければ、管からのコイルの製造が不経済と目されるからである。
【0028】
本発明の別の態様は、少なくとも2つのコイルを有するモジュールに関する。コイルは、特に、上記のコイルであり得る。少なくとも2つのコイルが共通のハウジングに配置されている。ハウジングは、両コイルが埋め込まれたプラスチックで形成されることができる。両コイルは、互いに空間的に平行に配置することができる。
【0029】
コイルは、好ましくは、コイルが個別に電気的にコンタクトすることができ、モジュール内で互いに接続されないように配置される。代替的実施形態では、コイルは、モジュール全体に所望のインダクタンスを与えるために、互いに並列又は直列に電気的に接続されることができる。このようにして、モジュール全体が個々のコイルよりも高い又は低いインダクタンスを有するように、複数のコイルから1つのモジュールを組み立てることが可能である。
【0030】
モジュールを使用することで、回路基板に複数のコイルを装備するのにかかる時間を短縮できるため、製造プロセスのサイクルタイムを短縮できる。複数の個別のコイルの代わりにモジュールを組付けることにより、たとえばピックアンドプレース自動機を使用してコイルを組付けるときに、複数の個別のコイルではなく1つのモジュールを回路基板に配置しなければならないだけである。したがって、モジュールは、モジュールが取り付けられる後続のプロセスを簡素化できる。
【0031】
さらに、モジュール内部に複数のコイルを配置することにより、複数の個別のコイルを隣同士に並べて配置する場合と比較して、スペースを節約できる。利用可能なスペースが非常に小さい用途、例えばスマートフォンなどのモバイルデバイス用の回路基板の場合、このスペースの節約は大きな利点になる。さらに、個別に埋め込まれたコイルの代わりにモジュールを使用すると、ハウジング材料を節約することができる。
【0032】
本発明のさらなる態様は、コイルを製造する方法に関する。コイルは、特に、前述のコイルであり得る。
【0033】
方法は以下のステップを含む:
a)導電性材料製の管壁を有する管を用意するステップと、
b)管の誘導セクションに空隙を生成するステップであって、誘導セクション内の空隙は、管壁をスパイラルに形成する、ステップ、及び、管の少なくとも2つのセクションをコンタクトセクションに成形するステップと、
c)コンタクトセクションの第1部分を、少なくとも1つの端子領域に変形するステップであって、コンタクトセクションの第2部分は、管壁の形状を保持しつつ接続領域を形成し、接続領域は、端子領域を誘導セクションと電気的に接続する、ステップと、を含む。
【0034】
誘導セクションのインダクタンスは、空隙を作製することによって初めて生成できる。空隙は、レーザで作製されたカッティングギャップであることができる。コンタクトセクションの形状はまた、レーザを用いて、特に空隙の生成とまとめてレーザプロセスで生成することができる。
【0035】
レーザプロセスは、誘導セクションに空隙を作成するのにも、管のコンタクトセクションに切欠き(Ausnehmung)を作成するのにも適している。レーザプロセスには、柔軟に使用でき、高速であるという利点がある。さらに、レーザプロセスは、非接触で動作し、残留物がほとんどないため、機械的応力を発生させないという利点がある。空隙を作成するためのさらなる代替形態は、例えば、粉砕プロセス(ein Frasprozess)、鋸引きプロセス(ein Sageprozess)、又はウォータージェット切断であり得る。
【0036】
上記のステップb)は、さらなる部分ステップを備えることができ、管のコンタクトセクションにおいて、管壁の領域を取り去ることによって、切欠きを形成する。管のコンタクトセクションにおける切欠き及び誘導領域における空隙は、単一の方法ステップでまとめて生成できる。したがって、単一のプロセスステップにおける全体ステップb)は、たとえばレーザ切断によって生成され得る。
【0037】
さらに、ステップc)において、端子領域は、コンタクトセクションの第1部分を管の長手軸に垂直な方向に変形させることによって形成することができる。端子領域は管の長手軸方向に変形しないので、長手軸に対して垂直な方向における端子領域の変形はコイルを延長しない。主に管の長手軸に垂直な方向に延びる端子領域によって、誘導セクション又はスパイラルの長さに対してコイル全体の長さが過度に長くなることを回避することができる。
【0038】
さらに、ステップc)において、コンタクトセクションの第1部分は、スタンピングプロセス(Stempelprozess)によってコンタクト領域に形成することができる。スタンピングプロセスを用いた、屈曲又は凹凸などの変形は、効率的で信頼性が高く、再現性がある。
【0039】
スタンピングプロセスの結果として接続領域になり得るコンタクトセクションの第2部分は、スタンピングプロセス中に対向スタンプ又は載置面によって支持されることができ、その結果、スタンピングプロセス中に第2部分に屈曲力が作用しない。対向スタンプは、管の輪郭又は外形に形状適合し得る。接続セクションに屈曲モーメントが作用しないため、接続領域は、接続領域が形成される管壁の輪郭を保持し、したがって隣接する誘導セクションの輪郭と同一になる。誘導セクションの不所望な変形をもたらすであろう誘導セクションへの力作用もまた回避される。誘導セクションのわずかな変形でさえ、コイルの電気的特性を変化させ得る。接続領域に大きな力がかかると、力作用の結果としてスパイラルの2つの隣接する巻線が互いに接触するため、誘導領域での短絡を招き得る。接続領域における屈曲モーメントを回避することができることにより、前述のプロセスを使用して製造されるコイルの電気的特性は、より再現性が高く、計画可能になる。
【0040】
さらに、ステップb)において、先ず、管壁をそれぞれスパイラルに成形する空隙がそれぞれに生成された複数の誘導セクションを、管に沿って生成することによって、コイルトレインを生成し、2つの誘導セクションの間にそれぞれ1つのコンタクトセクションを形成する。ステップc)において、コンタクトセクションの第1部分を、それぞれ少なくとも1つの端子領域に成形することができ、コンタクトセクションの第2部分は、管壁の形状を保持しつつ接続領域を形成することができ、接続領域は、端子領域を誘導セクションに電気的に接続することができる。
【0041】
かかるコイルトレインによれば、製造中のコイルの取り扱いを最適化することができる。このようにして、複数のコイルを同時に処理できるため、製造のサイクルタイムを短縮できる。さらに、1つの管に複数の誘導セクションを生成することで材料を節約できる。
【0042】
また、管の長手軸に垂直な方向に管壁を変形させることにより、端子領域を形成することができる。管の長手軸に垂直な方向に端子領域を形成するための管壁の変形は、それが膨張であろうと又は圧縮であろうと、コイルトレインの長さを変化させることなく端子領域を形成することを可能にする。長手軸に平行な方向の変形は、必然的にコイルトレインの長さの変化をもたらすであろう。したがって、このように形成されたコイルトレインは、端子領域のための成形プロセスにもかかわらず、定義された全体長さを保持する。異なる製造ステップにおけるプロセスラインで、同じ寸法と、ひいてはフレームワーク条件とを想定できるため、コイルトレインの取り扱いが改善される。特に製造プロセスでは、コイルトレインの個別化などのさまざまな製造ステップで追加の測定やフレームワーク条件の新たな入力が不要なため、製造全体でコイルトレインの長さが同じであることが利点である。
【0043】
さらに、さらなるステップd)において、コイルトレインの個別化は、2つの誘導セクション間で管の長手軸に垂直に行われる。したがって、コイルトレインをいくつかのコイルに分離することができる。コイルは個別に分離できるため、2つの隣接するコンタクトセクションを有する1つの誘導セクションのみがそれぞれ生成される。しかしながら、それぞれがコンタクトセクションによってまとめて保持されている複数の誘導セクションを、コイルトレインから分離して取り出し、複数の個別コイルからなる適切な全体コイルにすることが可能である。
【0044】
複数のコイル又はコイルトレインをプラスチックに埋め込んで、パッケージを形成することができる。コイル又はコイルトレインは、この時点ですでに磁気コアを有することができる。ここでは、埋め込む前にコイルトレインを互いに平行に配置することが有利である。複数のコイルトレインを個別にではなく同時に埋め込むことにより、製造プロセスを加速できる。プラスチックは、コイルを機械的、温度、化学的影響から保護する。磁気特性を有する粉末又は磁性ナノ粒子をプラスチックに混合することもできる。プラスチックに磁性粒子を添加すると、コイルのインダクタンスを増加させることができ、プラスチック内の磁性粒子の割合によって調整することもできる。
【0045】
コイルトレイン又はコイル内に磁気コアを配置することが有利であり得る。これにより、コイル又はコイルトレインのインダクタンスが増加し得る。さらに、プラスチックに埋め込む前にコイルトレイン内にコアを配置することで、磁性成分(magnetische Anteile)も有し得るプラスチックに埋め込まれた磁気コアを備えるコイルを製造することが可能になる。これにより、コイルのインダクタンスと電磁両立性を高めることができる。
【0046】
パッケージ内に複数の平行なコイルトレインを埋め込んだ後、コイルをコイルトレインの長手軸に対して横方向及び平行に分離することができる。この場合、コイルのコンタクトセクションを介して分離線を導くことが有利である。このようにして、パッケージは個々のコイルに分離される。パッケージを最初に横方向に分離してから平行に分離することも、パッケージを最初に平行に分離してから横方向に分離することもできる。
【0047】
さらなる態様は、モジュールを製造するための方法に関する。複数の平行に配置されたコイルトレインを有するパッケージは、トレインの長手軸に対して横方向に分離することができる。このオプションでも、コイルのコンタクトセクションを介して分離線を導くことが有利である。軸に平行な個々のコイルへの個別化は行われない。
【0048】
共通のハウジング内に少なくとも2つのコイルをそれぞれ有するモジュールであって、管は、接続領域と少なくとも1つの端子領域とを有するコンタクトセクションを備える。
モジュールを製造する方法は、
- 少なくとも2つのコイルトレインを生成するステップであって、それによって、管に沿って複数の誘導セクションが生成し、誘導セクションのそれぞれにおいて管壁をスパイラルに形成する空隙を生成し、
2つの誘導セクションの間にそれぞれ1つのコンタクトセクションを形成し、
コンタクトセクションの第1部分を、それぞれ少なくとも1つの端子領域に成形し、
コンタクトセクションの第2部分は、管壁の形状を保持しつつ接続領域を形成し、
接続領域は、端子領域を誘導セクションに電気的に接続する、ステップと、
- コイルトレインを平行に配置するステップと、
- ハウジングを形成するプラスチック内にコイルトレインを埋め込むステップと、
- プラスチックによって連結されたコイルトレインを分離線に沿って個別化するステップであって、前記分離線は前記コイルトレインの長手軸に対して横方向に延在する、ステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明は、例示的な実施形態の概略図を使用して、以下により詳細に説明される。
図1a図1aは、管の可能な実施形態の空間的表現を示している。
図1b図1bは、管の可能な第2実施形態の空間的表現を示している。
図2図2は、コイルトレインの空間的表現を示している。
図3図3は、コイルトレインからコイルを製造する際の中間生成物の空間的表現を示している。
図4図4は、本発明の実施形態によるコイルの空間的表現を示している。
図5図5は、パッケージとしてプラスチックに埋め込まれた複数のコイルトレインの空間的表現を示している。
図6図6は、プラスチックに埋め込まれ、すぐに使用できる個別部品であるコイルの空間的表現を示している。
【発明を実施するための形態】
【0050】
同一の要素、類似、又は明らかに同一の要素は、図面において同じ参照符号で示される。図面及び図面におけるサイズ比は縮尺通りではない。
【0051】
図1a及び1bでは、管2は、円形及び角を丸めた正方形の断面積で示される。管2は、本体の第1端部から本体全体を通って第1端部の反対側の第2端部までに延在する開口を有する細長い中空体である。管2は、その長手軸3に関して対称であり得、長手軸3は、第1端部の基部(Grundflaeche)の中点から第2端部の基部の中点まで延びる。一実施形態では、管2は、円形、楕円形、長方形、又は多角形の断面を有することができる。他の断面も可能である。
【0052】
管2は、0.2から50mmの外直径を有することができる。好ましくは、管2の外直径は、0.5mmと20mmとの間の範囲であり得る。このサイズは、コイル1を回路基板上のアプリケーションに適したものにするのに特に適している。管2の内半径と外半径との間の距離によって厚さが決定される管壁6は、使用される管2によって大きく変化し得、1mm未満の厚さが処理に有利であり得る。管2の套表面5は、長手軸3の方向に外半径に沿って延在する。管2は、主に導電性材料からなる。
【0053】
管2は、コイル1の製造に使用される出発材料を表す。製造プロセスの過程で、図1aに示される管2は、最初に、コイルのトレインを形成するように構造化され得る。図2にコイルトレインを示す。この場合、管2は、特に、誘導セクション7及びコンタクトセクション8が管2内に形成されるレーザプロセスによって構造化されることができる。誘導セクション7及びコンタクトセクション8は、管2に沿って交互になっている。
【0054】
誘導セクション7に空隙4が生成され、その空隙は、管壁6を貫通し、管壁6をスパイラルに成形する(zu einer Wendel formt)。その結果、誘導セクション7のインダクタンスが構成される。コンタクトセクション8は、製造プロセスの過程で、部分的に端子領域11に形成され、コンタクトセクションの別の部分が接続領域10となる。コンタクトセクション8において、管2の構造化中に、切欠きが形成され、管壁6の一部が除去される。
【0055】
生産中のコイル1の取り扱いは、コイルトレインによって最適化される。このようにして、複数のコイル1を同時に処理することができ、これは、生産におけるサイクルタイムの短縮につながる。さらに、管2内に複数の誘導セクション7を生成することにより、材料を節約することができる。
【0056】
誘導セクション7は、コンタクトセクション8によって互いに一体的に接続されており、互いの間に不必要な遷移抵抗(Uebergangswiderstaende)を有さない。
【0057】
コイルトレインの異なる誘導セクション7は、異なる又は同じインダクタンスを有することができる。したがって、管2から異なるコイル1を製造することが可能であり、そのインダクタンスは、それぞれの場合に変化させることができ、したがって、多種多様な用途に適している。インダクタンスは、例えば、空隙4で形成される巻線又はターンの数によって、又は、巻線又はターンの幅に対応する、管2周りを1周した後の長手軸3の方向における空隙4の間隔で、変化させることができる。図2の例示的な実施形態では、図示の空隙4は同じであり、その結果、個々の誘導セクション7のインダクタンスも同じである。
【0058】
図3は、コイルトレインからのコイル1を製造する際の中間生成物の空間的表現を示す。コイルトレインは、コイルトレインの長手軸3に対して横方向に延在する分離線12に沿って個別化された。
【0059】
コイル1は、導電性材料製の管2を備え、套表面5に沿って、管2の長手軸3の周りに延在する空隙4が生成されたものであり、それによって誘導セクション7を形成する。代替的実施形態では、管2全体を、単一の誘導セクション7及びこれに接する2つのコンタクトセクション8となるように構造化することができる。したがって、管2は図3に示される中間生成物に構造化されることができ、管2は適切な長さに切断される。コンタクトセクション8及び誘導セクション7は、互いに直接接続されている。コンタクトセクション8及び誘導セクション7は、構造化された管壁6から一体的に一部品として(integral und einstueckig)形成されている。
【0060】
図4は、コンタクトセクションの第1部分が、スタンピングプロセスを使用して、それぞれ2つの端子領域11に屈曲された後のコイル1を示し、コンタクトセクションの変形していない第2部分が接続領域10を形成している。この目的のために、スタンピングプロセス中に屈曲力又はモーメントが第2部分にかからないように、コンタクトセクションの第2部分はスタンピングプロセス中に対向スタンプ又は載置面によって支持された。対向スタンプは、好ましくは、管2の輪郭又は外形に形状適合されている。接続領域10への屈曲モーメントがないため、接続領域10は変化せず、隣接する誘導セクションの輪郭と同じ管壁6の輪郭を有する。
【0061】
対向スタンプを用いて、コンタクトセクションの第1部分の端子領域への変形の際に、スタンププロセスの力作用は接触領域10において中和されるので、隣接するスパイラルに屈曲モーメントが作用しない。したがって、スパイラルはその形状とピッチを維持し、隣接する巻線又はターン間の短絡の可能性も排除できる。
【0062】
図4に示す実施形態では、コイル1が作製された管2が円形であるため、接続領域10は円セグメントの形状を有する。したがって、管2が四角形の基部形状を有する例示的な実施形態では、接続領域10は、例えば、直線的な輪郭を有することができる。しかしながら、接続領域10の形状は、これによって制限されない。むしろ、接続領域10は、隣接するセクションにおける管2に類似する任意の形状及び輪郭を有することができる。
【0063】
図4の端子領域11は、管2の長手軸3に垂直な方向に管壁6を変形させることによって形成された。管2の長手軸3に垂直な方向に端子領域11を形成するための変形は、それが膨張であろうと又は圧縮であろうと(eine Dehnung oder Stauchung)、コイルトレインの長さを変化させることなく端子領域11を形成することを可能にする。長手軸3に平行な方向への変形は、必然的にコイルトレインの長さの変化をもたらすであろう。端子領域11が、例えば、管2の長手軸3の方向に(すなわち、図4の図から外れて)形成される場合、複数のかかるセクションを有するコイルトレインは、変形のために短縮されるであろう。他方、端子領域11が管2の長手軸3に対して垂直に屈曲される場合、このように形成されたコイルトレインは、端子領域11の成形プロセスにもかかわらず、その定義された全長を保持する。この点で、コイルトレインの取り扱いは、特に製造プロセスにおいて改善される。これは、異なる製造ステップのプロセスラインで、同じ寸法と、ひいては誘導セクションの位置などの関連するフレームワークとを想定できるためである。たとえば、コイルトレインを個別化する場合、2つの誘導セクション間の中央カットを、さらに測定することなく自動的に行うことができる。
【0064】
管2の長手軸3に垂直に端子領域11を配置することの別の利点は、コイル1のより良い形状ファクタを達成するために、特にスパイラルの長さと比較して、コイル全体長さを短く保つことができることである。
【0065】
さらに、図4に示される例示的な実施形態ではL字型である誘導セクションは、端子領域11の一部によって載置面から離間している。このようにして、誘導セクションは載置面から機械的及び熱的に隔離されている。このようにして、例えば回路基板であり得る載置表面へのコイル1の振動又は熱の伝達が抑制される。さらに、誘導セクション7と載置面との間の距離は、誘導性セクションをプラスチック9に完全に埋め込むのに十分な空間が作られることを確実にする。コイル1の磁場及び関連するインダクタンスは、離間した載置表面による影響が少ない。
【0066】
図4に示すL字型の端子領域11の水平部は、はんだ付け可能な端子を形成する平面を形成する。相応に、コイル1を、導体路、例えば回路基板にはんだ付けすることが可能である。管2からのコイル1の一体的な形成は、追加の接続技術を回避することを可能にする。このため、コイル1の全体的な抵抗が低くなり、損失電力が低くなる。さらに、とりわけ可能なコンタクトにおける熱的負荷を低下させ、その結果、コイル1の故障に対する感受性が低下する。
【0067】
図5では、4つのコイルトレインがプラスチックに埋め込まれており、コイル1の長手軸3は互いに平行に配置されている。かかる配列は、パッケージとも称される。ここでは、4つのコイルトレインにそれぞれ4つの誘導セクション7と4つのコンタクトセクション8がある。図7に示されるパッケージは単なる例であり、より多くのコイルトレイン、特に20を超えるコイルトレインを、他の任意の数の誘導セクション7及びコンタクトセクション8とともに使用することができる。この例示的な実施形態では、コンタクトセクション8は、切欠きによって開かれ、次いでスタンプされて、変形していない接続領域10及び2つの端子領域11を形成する。破線は、コイル1の長手軸3に対して横方向又は平行に、コンタクトセクション8を通る個別化のための複数の可能な分離線12を示している。他の任意の数の分離線12に沿って個別化が行われる代替的実施形態も考えられる。コイル1が管2の長手軸3に平行に個別化される場合、誘導セクション7は互いに直列に接続されている。複数のコイルトレインを個別にではなく同時に埋め込むことにより、製造プロセスを加速できる。
【0068】
プラスチック9は、ハウジングの一種として、身近な環境からの可能な危険に対する保護を表している。プラスチックの保護機能は、所望の磁気特性を有する粒子を追加することにより、実用的に拡張できる。インダクタンスは、プラスチック内の磁性粒子の量又は濃度によって調整することもできる。代替的実施形態では、コイル1をEPコアに接続することができ、EPコアもまた一体的にハウジングを形成する。EPコアは2つの半体で構成され、それらを接続状態に接着することができる。コイル1は、特に高周波用途の場合、EPコアによって電磁的に遮蔽することができ、したがって、構成要素の電磁両立性を高めることができる。
【0069】
パッケージから、ハウジング内に複数のコイル1を有するモジュールを製造することも容易である。この場合、図5に示すように、パッケージは、必要に応じて、管2の長手軸3に平行及び/又は垂直に個別化される。図5に示されるパッケージは単なる例であり、より多くのコイル1を備えた非常に長いコイルストランドであり、より多くのコイルトレインをパッケージ内に配置することができる。モジュール自体のコンタクト面は、下から、及び必要に応じて側面からコンタクトさせることができ、例えば、はんだ付けプロセス又は接着プロセスによってて、はんだ付けパッド又は導体路を介して接触させることができる。モジュールを使用すると、コイル1を組み立てる際のサイクルタイムを短縮できる。個々のコイル1の代わりにモジュールを取り付けることにより、たとえば、ピックアンドプレース自動機は、コンポーネントを回路基板上に複数回配置する代わりに1回配置するだけで済みます。さらに、モジュール内部に複数のコイル1を配置することにより、複数の個別コイル1を隣り合わせに配置するのと比較して、スペースを節約することができる。
【0070】
モジュール内のコイル1は、互いに並列に、直列に、又はまったく接続されないように設けられることができる。複数のコイル1が互いに隣接して配置されている実施形態では、各コイル1は個別にコンタクトさせることができる。しかしながら、そのようなモジュールが、長手軸3に垂直に延在する2つの導体路とコンタクトする場合、誘導セクション7は、電気的に互いに並列に接続することができる。導体路がモジュールの下にメアンダ形状で配置されている場合、誘導セクション7を直列に接続することができる。したがって、コイル1自体は、モジュール内だけでなく、電子機器の内部でも、多種多様な方法で互いに接続することができる。
【0071】
図6は、プラスチック9に埋め込まれた単一のコイル1を示している。埋め込まれたコイル1の端面には、円形セグメント状の接続領域10と2つのL字型の端子領域11とを有するコンタクトセクションが配置されている。コイル1は、コイル1をパッケージから個別化することによって、又は、図4に示されるように、個々のコイル1をプラスチック9に埋め込むことによって製造され得る。
【符号の説明】
【0072】
1 コイル
2 管
3 長手軸
4 空隙
5 套表面
6 管壁
7 誘導セクション
8 コンタクトセクション
9 プラスチック
10 接続領域
11 端子領域
12 分割ライン
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6