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特許7310015ハイブリッドのレーザー/空気結合PETブロック型検出器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】ハイブリッドのレーザー/空気結合PETブロック型検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20230710BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20230710BHJP
   G21K 4/00 20060101ALI20230710BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G02B5/00 Z
G21K4/00 A
G01T1/20 G
G01T1/20 E
G01T1/161 C
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022517323
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 US2020070130
(87)【国際公開番号】W WO2021056003
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】62/903,257
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593063105
【氏名又は名称】シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】カプスタ,マチェイ
(72)【発明者】
【氏名】コルベイユ,ジェームス エル.
(72)【発明者】
【氏名】ブロイヤー,ヨハネス
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-075587(JP,A)
【文献】特表2007-525652(JP,A)
【文献】特開2009-128339(JP,A)
【文献】特開2013-140024(JP,A)
【文献】特開2016-031289(JP,A)
【文献】米国特許第05258145(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0170043(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
G02B 5/00
G21K 4/00
G01T 1/161
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器配列を製造する方法であって、
撮像装置の光学的媒体の複数の厚板の準備することと、
前記光学的媒体の前記複数の厚板のうちの少なくとも1つ内に複数の光学的境界を形成することであって、前記複数の光学的境界は、少なくとも1つの前記厚板内に、非連続で独立した光方向再方向付け領域を「1×N」の配列で画定することと、
各隣接する前記厚板の間に設けられた反射層と共に、前記複数の厚板を積層体へと配置することと、
前記複数の厚板の位置を互いに対して固定することと、
を含み、
前記反射層は、各隣接する前記厚板間における空気で満たされた隙間であり、
前記隙間の幅が、前記光学的媒体によって生成される光の波長の1倍から2倍である、
方法。
【請求項2】
前記反射層は、反射性材料として、反射性粉体、反射性膜、反射性塗料、及び反射性粉体を含む接着剤、又はこれら反射性材料の組合せ、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学的媒体の複数の厚板のそれぞれの内部に複数の光学的境界が形成され、前記複数の厚板の積層体が、前記検出器配列内に、非連続で独立した光方向再方向付け領域を「M×N」の配列で形成し、この際、Mは、前記厚板の数を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の厚板の位置を固定することは、結合剤を用いて、前記厚板の各々を少なくとも1つの光学検出器に対して取付けることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記複数の厚板の位置を固定することは、結合剤を用いて、前記厚板の各々を光案内部に対して取付けて、その後、前記光案内部を少なくとも1つの光学検出器に対して取付けることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記複数の光学的境界を形成することは、前記複数の厚板の少なくとも1つ内の空間表面に、非連続で独立した光方向再方向付け領域の複数を形成することを含み、その際、前記空間表面上で選択された異なる位置において焦点でレーザービームを選択された波長で集束させて、前記焦点で前記光学的媒体の光学的特徴を変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記光学的媒体は、シンチレータであり、かつ前記光学的境界は、前記シンチレータの個々の光学的に分割された分解能素子間の境界を画定する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記光学的媒体は、光を透過する物体であり、かつ前記光学的境界は、前記光を透過する物体内の光案内部の一部を画定する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の光学的に分割する分解能素子は、直線状である、請求項記載の方法。
【請求項10】
空間表面は、曲線状である、請求項記載の方法。
【請求項11】
検出器配列であって、
積層体内に配置された光学的媒体の複数の厚板を含み、前記複数の厚板のうちの少なくとも1つは、
「N-1」の光学的境界によって画定される、非連続で独立した光方向再方向付け領域を「1×N」の配列で含み、この際、前記光学的境界の各々は、非連続で独立した微小な空隙の配列によって形成され、
前記検出器配列のうちの2つの隣接する前記厚板間に画定される反射層を含み、前記反射層は、前記非連続で独立した光方向再方向付け領域からの光を反射させるように機能して、隣接する前記厚板間に他の反射性材料が存在しないようにし、かつ、
前記配列の前記複数の厚板の各々の相対的な位置を互いに対して維持する機構を含み、
前記反射層は、各隣接する前記厚板間における空気で満たされた隙間であり、
前記隙間の幅が、前記光学的媒体によって生成される光の波長の1倍から2倍である、
検出器配列。
【請求項12】
前記厚板の各々は、「N-1」の光学的境界によって画定される、非連続で独立した光方向再方向付け領域を「1×N」の配列で含み、この際、前記光学的境界の各々は、非連続で独立した微小な空隙の配列によって形成され、
前記複数の厚板の積層体は、前記非連続で独立した光方向再方向付け領域の「M×N」の配列を形成し、この際、Mは前記厚板の数を表す、
請求項11に記載の検出器配列。
【請求項13】
前記反射層は、反射性材料として、反射性粉体、反射性膜、反射性塗料、及び反射性粉体を含む接着剤、又はこれら反射性材料の組合せ、のうちの少なくとも1つを含む、請求項11記載の検出器配列。
【請求項14】
前記光学的媒体は、シンチレータであり、前記非連続で独立した光方向再方向付け領域は、シンチレータ素子であり、かつ前記検出器配列は、シンチレータ配列である、請求項11に記載の検出器配列。
【請求項15】
前記非連続で独立した光方向再方向付け領域は、形状が直線状である、請求項11に記載の検出器配列。
【請求項16】
検出器アセンブリであって、
検出器配列を含み、当該検出器配列は、
積層体内に配置された複数のシンチレータ厚板を含み、この際、少なくとも1つの前記シンチレータ厚板は、
「N-1」の光学的境界によって画定されるシンチレータ要素を「1×N」の配列で含み、この際、前記光学的境界の各々は、非連続で独立した微小な空隙の配列によって形成されるものと、
前記配列の各隣接する前記シンチレータ厚板の間に画定される反射層であって、前記反射層は、シンチレータ要素からの光を反射させて、隣接する前記シンチレータ厚板の間に他の反射性材料が存在しないように作用するものと、を含み、かつ、
前記配列の前記シンチレータ厚板の各々の相対的位置を互いに対して維持するための機構を含み、
前記反射層は、各隣接する前記厚板間における空気で満たされた隙間であり、
前記隙間の幅が、光学的媒体によって生成される光の波長の1倍から2倍である、
検出器アセンブリ。
【請求項17】
前記シンチレータ厚板の各々は、「N-1」の光学的境界によって画定される、非連続で独立した光方向再方向付け領域を「1×N」の配列で含み、この際、前記光学的境界の各々は、非連続で独立した微小な空隙の配列によって形成され、
前記シンチレータ厚板の積層体は、前記非連続で独立した光方向再方向付け領域の「M×N」の配列を形成し、この際、Mは前記厚板の数を表す、
請求項16に記載の検出器アセンブリ。
【請求項18】
前記反射層は、反射性材料として、反射性粉体、反射性膜、反射性塗料、及び反射性粉体を含む接着剤、又はこれら反射性材料の組合せ、のうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の検出器アセンブリ。
【請求項19】
さらに、少なくとも1つの光学検出器と、前記少なくとも1つの光学検出器と結合されるシンチレータ要素の配列とを含む、請求項16に記載の検出器組立体。
【請求項20】
前記シンチレータ厚板の各々の相対的位置を互いに対して維持するための前記機構は、前記検出器配列の外周を包むレテーナを含む、請求項16記載の検出器組立体。
【請求項21】
前記シンチレータ厚板の各々の相対的位置を互いに対して維持するための前記機構は、前記少なくとも1つの光学検出器に対して前記検出器配列を結合させる結合剤を含む、請求項19に記載の検出器組立体。
【請求項22】
前記少なくとも1つの光学検出器は、光電子増倍管、位置感受性光増倍管、シリコン光電子増倍管、アバランシェ・フォトダイオード、PINダイオード、CCD、又は固体検出器である、請求項19記載の検出器アセンブリ。
【請求項23】
さらに、前記シンチレータ要素の配列と前記少なくとも1つの光学検出器との間に配置される光案内部を含み、この際、前記シンチレータ要素は、前記光案内部を介して、前記少なくとも1つの光学検出器に対して光学的に結合される、請求項19に記載の検出器アセンブリ。
【請求項24】
前記シンチレータ厚板の各々の相対的位置を互いに対して維持するための前記機構は、前記少なくとも1つの光学検出器に対して前記シンチレータ厚板の積層体を結合する結合剤を含む、請求項22に記載の検出器アセンブリ。
【請求項25】
前記光案内部は、前記シンチレータ要素の複数の配列と、前記少なくとも1つの光学検出器とにわたって連続するように構成されている、請求項23に記載の検出器アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「関連出願の相互参照」
本出願は、2019年9月20日に出願された米国仮出願第62/903,257号に基づく優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の開示を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示内容は、撮像(イメージング)用途、例えば、X線撮像、蛍光透視法、ポジトロン断層法(PET:positron emission tomography)、単一光子放射断層撮影(SPECT:single photon emission computed tomography)、コンピュータ断層撮影(CT:computed tomography)、ガンマ・カメラ、又はディジタル・マンモグラフィ・システム等で使用するための、検出器配列(デテクタ・アレイ)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医学的分野及び非医学的分野の双方で、多くの用途のために撮像が利用されている。撮像の分野では、様々な源から出る放射能を検出するために、複数のシンチレータ・アレイ(配列)を撮像装置内に含ませることが公知である。個別のシンチレータ・エレメント(素子)から成るシンチレータ配列を構成する際、しばしば、個々のシンチレータ素子の間に反射性媒体を介在させて、光子(フォトン)境界を形成するように、それらシンチレータ素子を一体にまとめている。慣習的に、反射性媒体は、シンチレーション光をシンチレータ要素に沿って光案内部(ライト・ガイド)内へと配向させることで、放射線が検出器要素上に衝突する位置を正確に決定できるように機能している。さらに、反射性媒体は、各シンチレータ素子からの光収集効率を増加させるように機能すると共に、あるシンチレータ素子からそれと隣接するシンチレータ素子へのクロストーク、即ち光の伝達(透過)を最小化させるように機能している。反射性媒体には、反射性粉末(パウダ)、膜(フィルム)、塗料(ペイント)、及び反射性粉末を含む接着剤、又はこれら材料の任意の組み合わせが含まれる。反射性塗料及び粉末は、MgO、BaSO、及びTiO等の1つ又は複数の色素を含有している。放射線検出器配列を製造する従前の方法は、用いられる手法を問わず、時間及び労働が集約的な工程であって、製品の均一性は労働者の技能レベルに依存していた。より高度に空間的に分析(分解)するシステムに関する現在の市場動向では、現行の設計よりも1桁多いピクセルを含ませていて、その工程の影響は一層顕著になっている。
【0004】
検出器配列は、一般に、光電子増倍管(PMTs:photomultiplier tubes)又は固体光学検出器(solid-state photodetectors)と一体化されており、例えば、シリコン光電子増倍管(SiPMs)、アバランシェ・フォトダイオード(APDs:avalanche photodiodes)、PINダイオード(P-intrinsic-N diode)、又は電荷結合素子(CCDs:charge-coupled devices)等と一体化されている。シンチレーション材料によって吸収される入射高エネルギ光子は、より低エネルギのシンチレーション光子に変換されていて、これは、シンチレータ自体、光案内部、及び他の確立された光分配手段の1つ又は複数を介して、光学検出器へと誘導可能になっている。
【0005】
光案内部及び/又は他の確立された手段が用いられる構成では、通常、光案内部は、適当な基材中に様々な深さのスリットを形成することで得られている。光案内部は、反射性媒体と共にまとめられると、光を導いて、シンチレータの位置情報を向上させるための効果的な手法となる。塗料又は反射テープが用いられる構成では、シンチレータに対して直接的に塗料又は反射テープが適用されることで、同様の結果が得られるようにしている。適用される反射性材料の高さと配置は、設計に応じて変化し得る。
【0006】
従来、シンチレータの配列は、研磨された結晶又は研磨されていない結晶を用いて形成されているが、それら結晶は、次のうちのいずれかである。即ち、反射性PTFEテープを用いて手で包まれて、一体に束ねられたもの;エポキシ又はRTVと混合されたBaSO又はTiO等の白色色素を用いて一体に接着されたもの;又は、所定の間隔でガラス光案内部に接着された後、上記の反射性物質で充填されたもの、のうちのいずれかである。
【0007】
別の手法では、結合剤を利用して、所定のシンチレータ要素の側面に結合された個々の反射部(リフレクタ)を用いる。高エネルギ光子の衝突が正確にデコードできるように、個々のシンチレータ素子を空間的に配置することで、配列を形成している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、シンチレータ配列等の、光学的に分割された検出器配列(デテクタ・アレイ)の製造方法を提供する。当該方法は、撮像装置の光学的媒体の複数の厚板(スラブ)を準備することと;光学的媒体の複数の厚板のうちの少なくとも1つ内に複数の光学的境界を形成することであって、この際、複数の光学的境界は、少なくとも1つの厚板内に、非連続で独立した光方向再方向付け領域を「1×N」の配列で画定することと;各隣接する厚板間に画定される反射層を有する積層体(スタック)内に複数の厚板を配置することと;複数の厚板の位置を互いに対して固定することと、を含む。
【0009】
また、検出器配列を提供するが、これは、積層体内に配置される光学的媒体の複数の厚板を含むが、この際、少なくとも1つの厚板は、「N-1」(個)の光学的境界によって画定されるように、非連続で独立した光方向再方向付け領域を「1×N」の配列で含み、各光学的境界は、非連続で独立した微小な空隙(マイクロ・ボイド)の配列によって形成され;さらに、検出器配列の2つの隣接する厚板間に画定される反射層を含むが、この反射層は、非連続で独立した光方向再方向付け領域からの光を反射させるように機能して、隣接する厚板間に他の反射性材料が存在しないようにし;さらに、上記配列の厚板の各々の相対的な位置を互いに対して保持する機構(メカニズム)を含む。
【0010】
また、本開示内容に係る検出器配列を含む検出器アセンブリを提供する。
【0011】
本明細書に記載される実施形態の特徴は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明で詳述される。なお、図面では、同様の部品(構成要素)については、同様の参照番号が付けられている。すべての図面は概略的であって、本構造物の実際の寸法又は各寸法の相対的比率を正確に表すことを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示内容の実施形態に係る検出器配列を例示した図である。
図2図2は、図1に例示した検出器配列の部分分解図である。
図3図3は、本開示内容の検出器配列を形成する各厚板内のシンチレータ素子間で光学的境界を形成する、非連続で独立した微小な空隙の配列を例示する図である。
図4A図4Aは、幾つかの実施形態に係る検出器アセンブリを例示した図である。
図4B図4Bは、幾つかの実施形態に係る検出器アセンブリを例示した図である。
図5図5は、本開示内容の検出器配列の製造方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、例示的な実施形態について記述するが、添付の図面を参照して読解されることを想定する。この図面は、全記述内容の一部を成すものと考えることができる。図形は必ずしも大きさを揃えて描かれておらず、明瞭さと簡潔さの観点から、幾つかの特徴は誇張して描かれていたり、又は関心事項について幾分概略的に描かれている。記述上、「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」、「頂部」、「底部」等の相対的な用語並びにそれらの派生語(例えば、「水平方向」、「下方方向」、「上方方向」等)が用いられ得るが、それらは問題の説明又は図示において、その向きに関するものとして解釈される。これらの相対的な用語は記述の便宜上用いられており、通常、特定の方向を定めることを意図していない。「内側」対「外側」、「長手方向」対「側方方向」等を含む用語は、適宜、相対的なものとして解釈され、又は延出方向の軸、回転の中心又は軸に関するものとして解釈される。「接続され」及び「相互接続され」等の取付け、結合等に関する用語は、複数の構造が互いに、介在的な構造を通して、直接的又は間接的に固定又は取付けられることを指し、その際、可動又は固定の取付け又は関係を含み得るが、明示的な説明がある場合はその限りではない。また、用語「(効果的に)接続される」とは、その関係によって、意図された関連する構造の操作を可能にするような取付け、結合又は接続として解釈される。
【0014】
図1及び図2を参照すると、本実施形態に係る検出器配列(デテクタ・アレイ)100が例示されている。検出器配列100は、積層状に配置された光学的媒体の複数の厚板(スラブ)110を含む。厚板110のうちの少なくとも1つは、「1×N」の配列の非連続で独立した光方向再方向付け領域115(即ち、検出器要素)を、少なくとも1つの厚板110内に含んでいる。非連続で独立した光方向再方向付け領域115の各々は、「N-1」(個)の光学的境界120によって画定されている。
【0015】
検出器配列100の幾つかの実施形態では、複数の厚板110の各々は、非連続で独立した光方向再方向付け領域115の「1×N」の配列を、各厚板110内に含む。そして、厚板110の積層体は、「M×N」の配列で検出器素子115を形成する。この際、Mは、光学的媒体の厚板110の数を表すものとする。
【0016】
厚板110は、積層体中に組み込められており、その配列のうちで2つの隣接する厚板110の間には、反射層130が画定されている。反射層130は、リフレクタ(反射部)として機能して、検出器素子115内からの光を反射させて、検出器素子115内を移動させている。
【0017】
幾つかの実施形態では、反射層130は、2つの隣接する厚板110の間における空気で満たされた(又は充填された)隙間であってもよく、そして検出器配列100は、隣接する厚板110の間に他の反射性材料を有さない。空気で満たされた隙間130の幅は、厚板110の表面粗さに依存する。好適な実施形態では、厚板110は表面粗さを有するように構成されるため、2つの厚板110が合わせられると、空気で満たされた隙間130の幅が、検出器素子115の光学的媒体によって生成される光の波長と比べて、1倍から2倍までの大きさとなる。そのため、エバネッセント波(フラストレートされた全ての内部反射)が抑制されるようになっている。
【0018】
幾つかの実施形態では、反射層130は、次の反射性材料のうちの少なくとも1つを含む。即ち、反射層130は、反射性粉末(パウダ)、反射性膜(フィルム)、反射性塗料(ペイント)、及び反射性粉末を含む接着剤、又はこれら反射性材料の任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
積層体の厚板110は、結合剤又はリテーナ(保持部)150等の機構を介して、検出器配列100内の相対的位置で互いに対して保持されている。
【0020】
幾つかの実施形態では、光学的媒体は、シンチレータ結晶であり、シンチレータの厚板110は、積層されてシンチレータの配列である検出器配列100を形成する。空気で満たされた隙間130は、シンチレータの厚板110の表面仕上げと隣接して、シンチレータ素子115の光収集効率を定めると共に、それら素子115間で生じる光共有の量を定める。検出器素子115及び空気からの屈折率(IOF:index of refraction)の有意な変化によって、全屈折の角度が増大される。IOF(シンチレータ)/IOF(空気)の比と、シンチレータの厚板110の表面仕上げとに基づいて、シンチレータ光子の量が調整されるため、制御された量の光子がシンチレータ要素115を通ってコリメートされて、隣接するシンチレータ要素115まで制御された量が送られる。検出器配列100内の各シンチレータ要素115について最適な比が調整されることにより、検出器配列100内の各シンチレータ要素115は明確に識別される。この比は、空間的に異なっていてもよい。
【0021】
図3を参照すると、光学的媒体内に形成された、非連続で独立した微小な空隙(マイクロ・ボンド)12の配列によって、シンチレータの厚板110内の各光学的境界120が形成されている。複数の微小な空隙12は、シンチレータの光学的に分割された部分115を通ってシンチレーション光を配向させるように、集合的に機能するように定められている。微小な空隙12は、光学的媒体内の空間平面(空間内の平面)14内に配置されて、検出器配列100の光学的に分割された部分115の光学的境界120を画定する。微小な空隙12は、様々な大きさで配置され得るが、その際、特定の均一なパターンで配置されてもよく、又はランダムに配置されてもよい。微小な空隙は、単一の層内に配置されてもよく、又は複数の層内に配置されてもよく、又は、所与の容積内でランダムに拡散されてもよい。微小な空隙は、空間平面14上で、平面状、曲面状、又は他の幾何学的配置の構成で配置することができる。この際、シンチレータの光学的に分割された部分は、正方形である必要はなく、様々な断面構成を有することができる。例えば、光学的に分割された部分は、三角形、台形、又は六角形の幾何学態様を有することができる。あるいは、光学的に分割された部分は、八角形又は四角形等の構成の組合せを有することができる。
【0022】
微小な空隙は、レーザー源30を用いて形成されている。レーザー源30は、各選択された位置(x、y、z)において、光学的媒体内で、順番に光のビーム32を生じさせて、集束させるように用いられている。レーザー源30は、焦点で標的の光学的媒体を切除するのに十分なパワーのレーザービーム32を生じさせて、その位置で光学的媒体の結晶構造に加工(損傷)を生じさせるが、本明細書ではその箇所が微小な空隙12として参照されている。微小な空隙は、それで光子を散乱させる。微小な空隙は、当該産業界では、微小亀裂(マイクロ・クラック)として参照されることもある。
【0023】
本明細書に記載のように、検出器配列100に用いられる光学的媒体は、シンチレータ又は光透過ブロック、又は光案内部であり得る。光学的媒体は、レーザーの波長内で吸収しない材料から製造される。レーザービームの焦点で集まる強いエネルギは、標的の光学的媒体内に微小な空隙を生じさせるが、それは、原点から全ての方向に外向きに出る。微小な空隙を形成するためのレーザー処理の詳細については、米国特許第8,470,214号を参照することができるが、その内容は参照により本明細書に援用されている。
【0024】
図4Aの例示は、幾つかの実施形態に係る検出器アセンブリ(検出器組立体)100Aに関する。検出器アセンブリ100Aは、検出器配列100と、少なくとも1つの光学検出器18とを備えている。検出器配列100は、少なくとも1つの光学検出器18と結合されていて、シンチレータ素子115の配列は、少なくとも1つの光学検出器18と光学的に結合されている。少なくとも1つの光学検出器18は、PMT、位置感受性PMT、SiPM、APD、PINダイオード、CCD、及び他の個体(ソリッドステート)検出器から選択することができるが、それらに限定されない。
【0025】
この構成では、検出器配列100内に配置されるシンチレータ要素115は、入射ガンマ線を検出するように働き、その後、ガンマ線とシンチレータ要素115との間の最初の相互作用から沈着したエネルギ量に対応する光信号が生成されている。検出器配列100は、光がシンチレータ素子115を下降して、光学検出器18まで反射して、伝わるように作用する。次に、光学検出器18によって生成される信号は、撮像装置の目的に従って、後処理されて、利用される。
【0026】
幾つかの実施形態では、必要に応じて、検出器配列100と受信光学検出器18との間に、光案内部(ライト・ガイド)20を選択的に配置してもよい。光案内部20は、分割型や、連続状等の、選択された構成を定める。光案内部20は、その利用時には、シンチレータ素子115と光学検出器18との選択に応じて最適化される。
【0027】
光案内部20を用いる実施形態では、検出器配列100は、シンチレータ素子内で生じた光が、シンチレータ素子115を下降して、結合された光案内部20と光学検出器18まで反射させて、伝える役割を果たす。次に、光学検出器18によって生成された信号は、撮像装置の目的に従って、後処理されて、利用される。
【0028】
本開示内容の検出器配列100は、保持機構16を用いて、検出器配列100内のシンチレータの厚板110の相対的な位置を保持することによって、個々の検出器素子115の相対的な位置を維持している。幾つかの実施形態では、保持機構16は、検出器配列100の外周を包むリテーナ(保持部)であってもよい。図4Aに例示した検出器アセンブリ100Aは、係るリテーナ16と共に例示されている。このようなリテーナ16は、収縮ラップ、擦り込まれたバンド、テープ、又はこれらの材料の組合せの等の、従来の材料を用いて作製されてもよく、そして、堅固に、均一な態様で複数の厚板15を包んだり、保持するために用いることができる。図4Aでは、リテーナ16は、検出器配列100の全高にわたって例示されているが、幾つかの用途では、リテーナ16は、検出器配列100の高さの一部でのみ保持部を1つ以上含むことができる。
【0029】
他の実施形態では、リテーナ16は、検出器配列100と連続する光案内部20との間に適用される結合剤であってもよい。
【0030】
図4Bでは、連続する光案内部20の上方に配置された、検出器アセンブリ100Bの別の例が示されている。この実施例では、個々のシンチレータ要素115の相対的位置は、検出器配列100と連続する光案内部20との間に適用される接合剤である機構16によって維持されている。連続する光案内部20は、パネル検出器等の光学検出器18の配列の上方に配置されている。
【0031】
検出器アセンブリ100A、100Bの幾つかの実施形態では、少なくとも1つの光学検出器18は、PMT、位置感応PMT、SiPM、APD、PINダイオード、CCD、又は他の種類の固体検出器であり得る。
【0032】
検出器配列100と少なくとも1つの光学検出器18との間に光案内部20を配置して備える検出器アセンブリ100A、100Bの実施形態では、シンチレータ素子115は、光案内部20を介して、少なくとも1つの光学検出器18と光学的に接続されている。
【0033】
検出器アセンブリ100A、100Bの幾つかの実施形態では、光案内部20は、シンチレータ素子115の複数の配列と、少なくとも1つの光学検出器18の複数とにわたって連続するように構成される。
【0034】
次に、図5に例示したフローチャート200を参照して、本開示内容の検出器配列100を作製する方法について説明する。本方法は、撮像装置の光学的媒体の複数の厚板110を準備すること(ステップ210)と;光学的媒体の複数の厚板110のうちの少なくとも1つ内に複数の光学的境界120を形成することであって、複数の光学的境界120が、複数の厚板のうちの少なくとも1つ内に、非連続で独立した光方向再方向付け領域(即ち、検出器要素)の「1×N」の配列を画定し、その際、Nは、個々の検出器要素115の数を表すこと(ステップ220)と;2つの隣接する厚板110の間に設けられた反射層130と共に、複数の厚板を積層体へと配置すること(ステップ230)と;複数の厚板の位置を互いに対して固定すること(ステップ240)と、を含む。
【0035】
本方法の幾つかの実施形態では、反射層130は、各隣接する厚板110の間における、空気で満たされた隙間とすることができる。幾つかの実施形態では、反射層は、次に例示する反射性材料のうちの少なくとも1つを含むことができる。即ち、反射層は、反射性粉末、反射性膜、反射性塗料、及び反射性粉末を含む接着剤、又はこれら反射性材料の任意の組合せ、を含む。
【0036】
本方法の幾つかの実施形態では、複数の光学的境界120は、光学的媒体の厚板110の各々の中に形成されて、それによって、複数の厚板110の積層体が、検出器配列内の非連続で独立した光方向再方向付け領域の「M×N」の配列を形成するようにし、この際、Mは、厚板110の数を表すものとする。
【0037】
方法の幾つかの実施形態では、複数の厚板110の位置を固定することは、少なくとも1つの光学検出器18に対して厚板110の各々を接続するために結合剤16を用いることを含む。幾つかの実施形態では、検出器アセンブリ100A、100Bは、光案内部20を含み、本方法は、光案内部20に対して厚板110の各々を接続し、さらに、少なくとも1つの光学検出器18に対して案内部20を接続するために結合剤16を用いて、複数の厚板110の位置を固定することを含む。
【0038】
本方法の幾つかの実施形態では、複数の光学的境界120を形成することは、各厚板110内に空間表面14内の非連続で独立した光方向再方向付け領域12を形成することを含むが、この際、空間表面14上の異なる選択された位置における焦点で、選択された波長でレーザービーム32を集束させることにより、その焦点で光学的媒体の光学特性を変化させることを含む。
【0039】
検出器配列100の幾つかの実施形態では、光学的媒体はシンチレータであり、光学的境界120は、そのシンチレータの光学的に分割された分解能素子115の間で境界を画定する。
【0040】
検出器配列100の幾つかの実施形態では、光学的媒体は、光を透過する物体であって、光学的境界120は、その光を透過する物体内の光案内部の一部を画定する。
【0041】
検出器配列100の幾つかの実施形態では、複数の光学的に分割された分解能素子は、直線状の形状を有する。
【0042】
検出器配列100の幾つかの実施形態では、空間表面14は曲面(曲線)状である。
【0043】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は例示された特定の形態に限定されないことを理解されたい。本発明の範囲から逸脱することなく、構成素子の設計及び配置を修正することは可能である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5