(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】巻きタバコの吸い殻中のタール賦香成分の抽出方法及び巻きタバコにおけるその使用
(51)【国際特許分類】
A24B 15/24 20060101AFI20230710BHJP
C11B 9/02 20060101ALI20230710BHJP
A24B 15/167 20200101ALI20230710BHJP
【FI】
A24B15/24
C11B9/02
A24B15/167
(21)【出願番号】P 2022531487
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 CN2020129089
(87)【国際公開番号】W WO2021104081
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】201911179304.8
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522209620
【氏名又は名称】内蒙古昆明巻煙有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】李力群
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼捷
(72)【発明者】
【氏名】陳晨
(72)【発明者】
【氏名】張峻松
(72)【発明者】
【氏名】紀旭東
(72)【発明者】
【氏名】郭春生
(72)【発明者】
【氏名】叶亜軍
(72)【発明者】
【氏名】田数
(72)【発明者】
【氏名】王旭東
(72)【発明者】
【氏名】喬月梅
(72)【発明者】
【氏名】李瑞麗
(72)【発明者】
【氏名】朱遠洋
(72)【発明者】
【氏名】李慶祥
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105105317(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106263013(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105861154(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 1/00~15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻きタバコの吸い殻中のタール賦香成分の抽出方法であって、
巻きタバコの吸い殻を抽出溶媒に加え、超音波抽出を行い、抽出液を得るステップ(1)と、
抽出液を遠心分離した後、上澄み液を減圧蒸留して、濃縮エキスを得るステップ(2)と、
濃縮エキスを2段階分子蒸留して、一段分子蒸留と二段分子蒸留による軽質画分を併せ、タール賦香成分を得るステップ(3)とを含み、
前記ステップ(1)において、前記抽出溶媒はメタノール、無水エタノール、石油エーテル、及びジクロロメタンのうちの少なくとも1種であり、
前記超音波抽出は、超音波電力60~120Wで5~30min行われ、
ステップ(3)において、一段分子蒸留は、加熱温度50~80℃、圧力100~200Pa、供給速度300~600mL/h、フィルムワイプ速度200~300rpmであり、二段分子蒸留は、加熱温度90~110℃、圧力40~60Pa、供給速度300~600mL/h、フィルムワイプ速度200~300rpmである、ことを特徴とする抽出方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記巻きタバコの吸い殻と抽出溶媒との割合が1g:5~20mlである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(2)において、前記遠心分離は、回転数500~2000r/min、時間1~3minであり、
前記減圧蒸留は、温度25~45℃、真空度0.06~0.08Mpaである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
巻きタバコの吸い殻を前処理するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記前処理の操作は、具体的には、巻きタバコの吸い殻のティッピング・ペーパーを剥がして、トウを長さ1cm未満のサイズに断裁することである、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法によって製造されるタール賦香成分。
【請求項7】
請求項6に記載のタール賦香成分を含有する、ことを特徴とする香料。
【請求項8】
加熱式巻きタバコの製造における請求項6に記載のタール賦香成分又は請求項7に記載の香料の使用。
【請求項9】
タール賦香成分を巻きタバコの吸い口及び再構成刻みタバコに添加する、ことを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
タール賦香成分の添加量は巻きタバコの再構成刻みタバコの重量の2~5%である、ことを特徴とする請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻きタバコの吸い殻中のタール賦香成分の抽出方法及び巻きタバコにおけるその使用に関し、煙草プロセスの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
中国では1年間あたり大量の巻きタバコが消費されているため、大量の廃棄された吸い殻が発生でき、深刻な環境汚染をもたらす。また、廃棄吸い殻中に大量のタール物質が含まれており、巻きタバコタールはケトン類、フラン類、ピラジン類など、官能的品質に有利な賦香成分を含むとともに、消費者の満足感を向上させ得るニコチンを含む一方、アミン類、アルデヒド類など、官能に悪い有害な物質を含有する。このため、廃棄吸い殻中のタール物質を抽出し、所定の性能や作用を有する抽出物を製造することには重要な意義がある。
【0003】
近年、電子タバコ、加熱式巻きタバコなどの新型煙草製品は急速に発展している。加熱式巻きタバコは、匂いを放出するのに十分なタバコ葉を加熱するが、タバコ葉を点火しない低温巻きタバコである。通常、一般的な巻きタバコは、吸われるときに350℃~600℃の高温で多くの有害物質を発生させ、一方、低温巻きタバコは、全て300℃以下であるので、有害物質が減少する。加熱式巻きタバコは、従来の巻きタバコに比べて、加熱温度が低く、有害物質の放出量が少ないものの、匂いが弱く、香気の放出が不均一であるなど、喫煙者には受け入れられにくいいくつかの問題が存在する。
【0004】
CN109959649Aにおいて、化学発光性質を有する巻きタバコタール抽出物が開示されており、この巻きタバコタール抽出物の製造方法は、巻きタバコタールに試薬を加えて抽出し、巻きタバコタール抽出物を得るステップを含む。前記巻きタバコタールは、巻きタバコをパフし、生成した煙をろ過して、煙粒子状物を収集し、巻きタバコタールを得るステップによって得られる。この特許における巻きタバコタール抽出物は、自然光の条件下で開放システムにて超音波抽出により製造されるので、これに含まれる発光物質は性質が安定的であり、光、酸素や温度などの要素に敏感ではなく、この抽出物は、媒体のpH値の発光応答範囲が広く、酸性、中性又は塩基性の条件で化学発光反応を起こすことができる。この特許における巻きタバコタールは、煙粒子状物中のタールであり、製造されたタール抽出物は発光性質を有するが、巻きタバコの吸い殻中のタールが抽出され、賦香特性を有する抽出物が得られることが記載されていない。
【0005】
CN102559388Aにおいて、煙草精油、その製造方法及び巻きタバコにおけるその使用が開示されており、煙草精油は、廃棄低品質刻みタバコ→有機溶媒抽出→精油粗抽出物→水蒸気導入→凝縮→油水分離→煙草精油のような方法によって製造される。本発明の煙草精油は加香剤として巻きタバコの刻みタバコに添加されると、煙草の本来の香りをより引き出し、巻きタバコの香気の品質を高め、煙草の刺激性や雑気を減少させ、煙を柔らかくする。この特許では、巻きタバコの生産中に生じた廃棄低品質刻みタバコが原料として使用され、廃棄低品質刻みタバコ中にはタール成分が含まれていないので、巻きタバコの吸い殻の抽出プロセスが記載されていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、巻きタバコの吸い殻中のタール賦香成分の抽出方法を提供することである。本発明は、巻きタバコの吸い殻を原料として、超音波抽出と分子蒸留分離によってタール賦香成分を得るものであり、得たタール賦香成分は巻きタバコに使用されると、巻きタバコの香気を改良することができる。
【0007】
本発明に使用される原料である巻きタバコの吸い殻は一般的に道端や灰皿などに捨てられたタバコフィルタ部であり、このため、原料が入手しやすく、低価であり、使用される巻きタバコの吸い殻が黄色がかり、本発明では、タール含有量の高い黄色がかった吸い殻が使用される。
【0008】
一態様では、本発明は、
巻きタバコの吸い殻を抽出溶媒に加え、超音波抽出を行い、抽出液を得るステップ(1)と、
抽出液を遠心分離した後、上澄み液を減圧蒸留して、濃縮エキスを得るステップ(2)と、
濃縮エキスを分子蒸留して、分子蒸留軽質画分を収集し、タール賦香成分を得るステップ(3)とを含む、巻きタバコの吸い殻中のタール賦香成分の抽出方法を提供する。
【0009】
さらに、ステップ(1)において、前記巻きタバコの吸い殻と抽出溶媒との割合が1g:5~20mlであり、
前記抽出溶媒はメタノール、エタノール、石油エーテル、n-ヘキサン、アセトン、ジクロロメタン、酢酸エチルのうちの少なくとも1種であり、
好ましくは、前記超音波電力は60~120W、超音波抽出時間は5~30minである。より好ましくは、前記超音波電力は70~110Wであり、前記超音波電力の下限値は80W、90W又は100Wから選択され、前記超音波電力の上限値は80W、90W又は100Wから選択される。より好ましくは、超音波抽出時間は10~25minであり、超音波抽出時間の下限値は11min、12min、13min、14min、15min、16min、17min、18min、19min、20min、21min、22min、23min又は24minから選択され、超音波抽出時間の上限値は11min、12min、13min、14min、15min、16min、17min、18min、19min、20min、21min、22min、23min又は24minから選択される。
【0010】
さらに、ステップ(2)において、前記遠心分離は、回転数500~2000r/min、時間1~3minであり、
前記減圧蒸留は、温度25~45℃、真空度0.06~0.08Mpaである。
【0011】
さらに、ステップ(3)において、前記分子蒸留は2段階分子蒸留であり、一段分子蒸留と二段分子蒸留による軽質画分を併せ、
好ましくは、一段分子蒸留は、加熱温度50~80℃、圧力100~200Pa、供給速度300~600mL/h、フィルムワイプ速度200~300rpmであり、より好ましくは、一段分子蒸留は、加熱温度60~70℃である。より好ましくは、圧力110Pa~190Paであり、圧力の下限値は120Pa、130Pa、140Pa、150Pa、160Pa、170Pa又は180Paから選択され、圧力の上限値は120Pa、130Pa、140Pa、150Pa、160Pa、170Pa又は180Paから選択される。
【0012】
好ましくは、二段分子蒸留は、加熱温度90~110℃、圧力40~60Pa、供給速度300~600mL/h、フィルムワイプ速度200~300rpmである。より好ましくは、二段分子蒸留は、加熱温度95~105℃、圧力45~55Paであり、最も好ましくは、二段分子蒸留は、加熱温度100℃、圧力50Paである。
【0013】
さらに、前記方法は、巻きタバコの吸い殻を前処理するステップをさらに含み、
好ましくは、前記前処理の操作は、具体的には、巻きタバコの吸い殻のティッピング・ペーパーを剥がして、トウを長さ1cm未満のサイズに断裁することである。
【0014】
別の態様では、本発明はまた、前記方法によって製造されるタール賦香成分を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明はまた、前記タール賦香成分を含有する香料を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明はまた、巻きタバコの製造における前記タール賦香成分又は前記香料の使用を提供する。
【0017】
好ましくは、前記巻きタバコは加熱式巻きタバコである。
【0018】
好ましくは、タール賦香成分を巻きタバコの吸い口及び再構成刻みタバコに添加し、好ましくは、タール賦香成分の添加量は巻きタバコの再構成刻みタバコの重量の2~5%である。
【0019】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0020】
(1)本発明では、超音波抽出及び分子蒸留分離によってタールを抽出し、タール内の有害物質を除去し、その賦香成分を保留したものを加熱式巻きタバコに用いると、加熱式巻きタバコの香気、煙及び香喫味の特性を改善し、加熱式巻きタバコの匂いが弱く、香気の放出が不均一であるなどの問題を効果的に解决する。
【0021】
(2)本発明では、超音波抽出及び分子蒸留分離の条件を最適化させることにより、吸い殻からタール賦香成分が高抽出率で得られる。しかも、本発明では、廃棄された吸い殻が原料として使用されるため、吸い殻による環境汚染を回避するとともに、巻きタバコの燃え副生物であるタールを資源化させる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、特定の実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、以下の実施例は当業者が本発明の技術的解決手段を容易に理解し、本発明を実現又は使用するための説明に過ぎず、本発明の特許範囲を限定するものではない。
【0023】
本発明では、特に断らない限り、使用される原料及び設備などは全て市販品として購入されてもよく、本分野で一般的に使用されるものを使用してもよい。
【0024】
実施例の方法は、特に断らない限り、本分野の一般的な方法である。
【0025】
実施例1 巻きタバコの吸い殻中のタール賦香成分の抽出
巻きタバコの吸い殻中のタール賦香成分の抽出方法であって、以下のステップを含む。
(1)巻きタバコの吸い殻の前処理:巻きタバコの吸い殻のティッピング・ペーパーを剥がして、トウを長さ1cm未満のサイズに断裁した。
(2)前処理した巻きタバコの吸い殻100gを石油エーテル1Lに加え、超音波電力100Wで20min超音波抽出を行い、抽出液を得た。
(3)抽出液を1000r/minで2min遠心分離した後、上澄み液を30℃、0.07Mpaの条件下で減圧蒸留し、濃縮エキスを得た。
(4)濃縮エキスについて2段階分子蒸留を行い、一段分子蒸留では、加熱温度60℃、圧力150Pa、供給速度400mL/h、フィルムワイプ速度250rpmとし、二段分子蒸留では、加熱温度100℃、圧力50Pa、供給速度400mL/h、フィルムワイプ速度250rpmとし、一段分子蒸留と二段分子蒸留による軽質画分を併せた。
【0026】
軽質画分についてGC/MS検出を行った結果、軽質画分の成分は、フルフラール、フルフリルアルコール、エチレングリコールジアセテート、1-(1,3-ジオキソラン-2-イル)アセトン、4-シクロペンテン-1,3-ジオン、メチルシクロペンテノロン、ニコチン、2-アセチルフラン、2(5H)-フラノン、5-メチルフルフラール、3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、メチルシクロペンテノロン、ベンジルアルコール、2,3-ジメチル-2-シクロペンテン-1-オン、3-エチル-2-ヒドロキシ-2-シクロペンテン-1-オン、5-ヒドロキシメチルフルフラール、バニリン、メガスチグマトリエノンA、2,4,4-トリメチルペンタン-1,3-ジイルビス(2-メチルプロピオネート)、ファルネソール、1-ブチル-2-イソブチルフタレート、スコポレチン、トリブチルプロパ-1-エン-1,2,3-トリカルボキシレートである。
【0027】
GC/MS条件:
HP6890-5973ガスクロマトグラフ質量分析計
(1)GC条件:
カラム:ULTRA2(50m×0.2mm i.d×0.33μm d.f.)
検出器:MS
キャリアガス、流量:He、0.6ml/min
サンプル注入口温度:290℃
昇温プログラム:80℃(1min)2℃/min→280℃(10min)
スプリット比、サンプル注入量:1:10、2μl
(2)GC/MS条件:
GC条件:同上
移送ライン温度:230℃
イオン源温度:230℃
イオン化エネルギー:70eV
質量範囲:30~350u
キャリアガス:He
MSスペクトル:NISTライブラリ
【0028】
実施例2 タール賦香成分の巻きタバコへの使用
実施例1で製造された軽質画分を、HnB再構成刻みタバコに対して3%(質量比)の割合で凝縮補助材料に添加し、タール賦香成分が添加されたHnBサンプルAを製造した。
【0029】
実施例1で製造された軽質画分を、HnB再構成刻みタバコに対して2%(質量比)の割合で再構成刻みタバコに添加し、タール賦香成分が添加されたHnBサンプルBを製造した。
【0030】
実施例1で製造された軽質画分を、HnB再構成刻みタバコに対して5%(質量比)の割合で吸い口補助材料に添加し、タール賦香成分が添加されたHnBサンプルCを製造した。
【0031】
上記態様で製造された巻きタバコサンプル及びタール賦香成分が添加されていない巻きタバコについて(20±1)℃、相対湿度(60±3)%の恒温恒湿環境で24h平衡化した後、10名以上の喫煙評価者に煙草製品の官能評価方法(YC/T 415-2011)を参照して、巻きタバコサンプルについて官能評価を行ってもらい、評価結果を表1に示す。
【0032】
【0033】
表1に示すように、対照群に比べて、本発明の実施例で製造されたタール賦香成分が添加されると、程度が異なるが、加熱式巻きタバコの煙特性、香気特性及び香喫味特性が全て向上し、その中でも、巻きタバコの香気量及び香りの濃厚さが明らかに向上し、他の香気特性の指標も改善され、煙濃度が向上し、強さが高まり、繊細さ及び集まり性が全て改善され、刺激性が弱まり、乾燥感が低下し、後甘味が明らかに向上した。本発明の実施例で製造されるタール賦香成分が添加されることによって、加熱式巻きタバコの匂いが弱く、香りの濃厚さが不十分であるなどの問題を効果的に解決する。
【0034】
実施例3 製造方法の条件の選択
1、抽出溶媒の選択
メタノール、ジクロロメタン、無水エタノール、グリセリン、石油エーテル及びポリエチレングリコール400をそれぞれ使用して、前処理した廃棄吸い殻を抽出し、材料液体比を1:10(g/mL)、超音波抽出電力100Wで、20min、1回超音波抽出し、各溶媒による抽出効果(吸い殻1gあたり抽出された成分の含有量)への影響を比較して分析し、検出結果を表2に示す。表2から分かるように、無水エタノールを使用する場合、抽出効果は最も良好である。
【0035】
【0036】
2、超音波抽出時間の選択
前処理した廃棄吸い殻100gを無水エタノール1Lに加え、超音波電力100Wで、それぞれ2min、5min、10min、20min、30min、40min超音波抽出し、抽出効果を検出し、検出結果を表3に示す。表3から分かるように、10min超音波抽出する場合、抽出効果は最も良好であった。
【0037】
【0038】
実施例4
巻きタバコの吸い殻中のタール賦香成分の抽出方法であって、以下のステップを含む。
(1)巻きタバコの吸い殻の前処理:巻きタバコの吸い殻のティッピング・ペーパーを剥がして、トウを長さ1cm未満のサイズに断裁した。
(2)前処理した巻きタバコの吸い殻100gを無水エタノール500mLに加え、超音波電力60Wで10min超音波抽出を行い、抽出液を得た。
(3)抽出液を500r/minで3min遠心分離した後、上澄み液を25℃、0.08Mpaの条件で減圧蒸留し、濃縮エキスを得た。
(4)濃縮エキスについて2段階分子蒸留を行い、一段分子蒸留では、加熱温度50℃、圧力200Pa、供給速度600mL/h、フィルムワイプ速度300rpmとし、二段分子蒸留では、加熱温度90℃、圧力60Pa、供給速度600mL/h、フィルムワイプ速度300rpmとし、一段分子蒸留と二段分子蒸留による軽質画分を併せた。
【0039】
実施例5
巻きタバコの吸い殻中のタール賦香成分の抽出方法であって、以下のステップを含む。
(1)巻きタバコの吸い殻の前処理:巻きタバコの吸い殻のティッピング・ペーパーを剥がして、トウを長さ1cm未満のサイズに断裁した。
(2)前処理した巻きタバコの吸い殻100gを無水エタノール2Lに加え、超音波電力120Wで10min超音波抽出を行い、抽出液を得た。
(3)抽出液を2000r/minで1min遠心分離した後、上澄み液を45℃、0.06Mpaの条件で減圧蒸留し、濃縮エキスを得た。
(4)濃縮エキスについて2段階分子蒸留を行い、一段分子蒸留では、加熱温度80℃、圧力100Pa、供給速度300mL/h、フィルムワイプ速度200rpmとし、二段分子蒸留では、加熱温度110℃、圧力40Pa、供給速度300mL/h、フィルムワイプ速度200rpmとし、一段分子蒸留と二段分子蒸留による軽質画分を併せた。
【0040】
実施例6
実施例5に比べて、該実施例では、ステップ(4)において、濃縮エキスについて一段分子蒸留を、加熱温度80℃、圧力100Pa、供給速度300mL/h、フィルムワイプ速度200rpmで行い、軽質画分を得る点が異なる。残りは実施例5の方法のステップと同様であった。
該実施例で製造された軽質画分を、HnB再構成刻みタバコに対して3%(質量比)の割合で再構成刻みタバコに添加し、HnBサンプル6#を製造した。
【0041】
実施例7
実施例5に比べて、該実施例では、ステップ(4)において、濃縮エキスについて一段分子蒸留を、加熱温度110℃、圧力40Pa、供給速度300mL/h、フィルムワイプ速度200rpmで行い、軽質画分を得る点が異なる。残りは実施例5の方法のステップと同様であった。
【0042】
本発明の実施例4~7で製造された軽質画分の種類及び含有量を測定し、その結果、実施例4~5で製造された軽質画分は、種類が実施例6~7で製造された軽質画分の種類よりも多く、含有量が実施例6~7で製造された軽質画分の含有量よりも高いことが示された。
【0043】
本発明の実施例4~7で製造された軽質画分を、HnB再構成刻みタバコに対して3%(質量比)の割合で再構成刻みタバコにそれぞれ添加し、HnBサンプル4#、HnBサンプル5#、HnBサンプル6#、及びHnBサンプル7#を製造した。巻きタバコサンプルを(20±1)℃、相対湿度(60±3)%の恒温恒湿環境で24h平衡化した後、20名以上の喫煙評価者に煙草製品の官能評価方法(YC/T 415-2011)を参照して、巻きタバコサンプルについて官能評価を行ってもらい、評価結果を表4に示す。
【0044】
【0045】
表4の結果から分かるように、本発明の実施例で製造された軽質画分が巻きタバコに添加されると、程度が異なるが、巻きタバコの香気特性、煙特性及び香喫味特性の全てを改善し、加熱式巻きタバコの匂いが弱く、香りの濃厚さが不十分であるなどの問題を効果的に解決できる。
【0046】
以上は、本願の実施例に過ぎず、本願の特許範囲はこれらの特定の実施例により限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲により定められる。当業者にとっては、本願のさまざまな変更や変化が可能である。本願の技術的構想及び原理を逸脱することなく行われる修正、同等置換、改良などは、本願の特許範囲に含まれるものとする。