(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】温度センサおよび回転電機
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20230710BHJP
H02K 11/25 20160101ALI20230710BHJP
【FI】
G01K1/14 L
H02K11/25
(21)【出願番号】P 2023046203
(22)【出願日】2023-03-23
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022092020
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145242
【氏名又は名称】株式会社芝浦電子
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】吉原 孝正
(72)【発明者】
【氏名】桐原 雅典
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-178222(JP,A)
【文献】特開2010-252508(JP,A)
【文献】特開2003-92858(JP,A)
【文献】特許第6944618(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
H02K 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機のステータに備えられるコイルの温度を検知するための温度センサであって、
感温体と、前記感温体に電気的に接続される電線と、前記電線の一部および前記感温体を被覆する長尺状の被覆体と、を含むセンサ要素と、
前記被覆体の長手方向が前記コイルの測温対象領域に対して傾斜している状態に前記被覆体の前記電線側の一端領域を保持する樹脂製のホルダと、を備え、
前記ホルダは、前記被覆体の前記感温体側の他端領域が前記測温対象領域に当接されるように前記回転電機に取り付けられている、温度センサ。
【請求項2】
前記被覆体の前記長手方向は、前記他端領域が当接する前記測温対象領域で延びている前記コイルの素線の延出方向に対して傾斜している、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記ホルダは、前記被覆体の前記一端領域を保持する保持部と、前記センサ要素を前記回転電機に固定するための固定部と、を備え、
前記回転電機に設けられる支持体に前記固定部が固定されると、前記被覆体の前記他端領域が前記測温対象領域に位置決めされる、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記保持部は、前記被覆体の前記測温対象領域から離れる向きへの変位を拘束する拘束部を含む、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記被覆体は、弾性を有する樹脂製の部材からなり、
前記被覆体の弾性力により前記他端領域が前記測温対象領域に押圧される、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項6】
前記他端領域は、前記コイルのコイルエンドに対して前記ステータの軸方向に当接される、
請求項5に記載の温度センサ。
【請求項7】
前記被覆体における少なくとも前記他端領域は、前記ステータの周方向に並ぶ集中巻の前記コイルの要素の間に配置され、
前記他端領域は、前記測温対象領域に対して前記周方向に当接される、
請求項5に記載の温度センサ。
【請求項8】
前記他端領域は、前記コイルのコイルエンドに対して前記ステータの径方向に当接される、
請求項5に記載の温度センサ。
【請求項9】
回転電機のステータに備えられるコイルの温度を検知するための温度センサであって、
感温体と、前記感温体に電気的に接続される電線と、前記電線の一部および前記感温体を被覆する被覆体と、を含むセンサ要素と、
前記センサ要素を保持し、前記センサ要素を前記回転電機に固定するための樹脂製のホルダと、を備え、
前記ホルダは、
固定基準線を介して前記ステータに前記センサ要素を固定するための固定部と、
前記感温体が自由端の側に配置されるように、前記被覆体を片持ち状に保持する保持部と、を有し、
前記被覆体は、
前記固定基準線に対して傾いており、かつ、
前記自由端と片持ち状に保持される部分との間に前記固定基準線が位置している、温度センサ。
【請求項10】
回転電機のステータに備えられるコイルの測温対象領域において温度を検知するための温度センサであって、
感温体と、前記感温体に電気的に接続される電線と、前記電線の一部および前記感温体を被覆する被覆体と、を含むセンサ要素と、
前記センサ要素を保持し、前記センサ要素を前記回転電機に固定するための樹脂製のホルダと、を備え、
前記ホルダは、
前記ステータに前記センサ要素を固定するための固定部と、
前記感温体が自由端の側に配置されるように、前記被覆体を片持ち状に保持する保持部と、を有し、
前記被覆体は、
前記測温対象領域に対して傾く第1領域と、
前記第1領域に連なるとともに前記第1領域に対して傾いた状態で前記測温対象領域に当接される第2領域と、を備える、温度センサ。
【請求項11】
コアおよびコイルを含むステータと、
前記ステータに対して回転されるロータと、
前記コイルの温度を検知するための請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の温度センサと、を備える、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサ、および温度センサを備える回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に搭載される電動機等の回転電機においては、ステータに備えられたコイルに電流が流れることでコイルの温度が上昇する。コイルの過大な温度上昇を避けて回転電機を安定して動作させるため、温度センサを用いてコイルの温度を検出し、検出された温度に応じて回転電機の動作を制御する。
【0003】
特許文献1は、車両に搭載される回転電機のステータにおいて、周方向に隣り合うティースにそれぞれ巻き回されたコイルの間に温度センサを挿入してコイルの温度を検出することを提案する。特許文献1の温度センサは、絶縁性の樹脂層により覆われるとともに、フッ素ゴム等の弾性材料からなるホルダにより保持される。ホルダを弾性変形させつつコイル間の隙間に挿入すると、温度センサの検温部が樹脂層を介してコイルに接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両のように振動を受ける環境下においても、温度センサがコイルにおける規定位置からずれることを防ぎたい。
そのため、ステータの部材等に固定される金属製のブラケットにより温度センサを支持することはできる。しかしながら、金属製ブラケットは、樹脂製のブラケットやホルダ等と比べて部材のコストが高い。
【0006】
コイル間に挿入される特許文献1に記載の温度センサは、コイル間への取り付けが繁雑である上、コイルに対する温度センサの位置が決まり難い。また、設置後に温度センサを取り外すことが難しい。
本発明は、コストを抑えつつ、振動等の外力によるコイルの規定位置からの位置ずれを防止することが可能であるとともに、コイルへの取り付けおよび取り外しが容易な温度センサ、およびそれを備えた回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転電機のステータに備えられるコイルの温度を検知するための温度センサであって、感温体と、感温体に電気的に接続される電線と、電線の一部および感温体を被覆する長尺状の被覆体と、を含むセンサ要素と、被覆体の長手方向がコイルの測温対象領域に対して傾斜している状態に被覆体の電線側の一端領域を保持する樹脂製のホルダと、を備える。ホルダは、被覆体の感温体側の他端領域が測温対象領域に当接されるように回転電機に取り付けられている。
【0008】
また、本発明は、回転電機のステータに備えられるコイルの温度を検知するための温度センサであって、感温体と、感温体に電気的に接続される電線と、電線の一部および感温体を被覆する長尺状の被覆体と、を含むセンサ要素と、センサ要素を保持し、センサ要素を回転電機に固定するための樹脂製のホルダと、を備える。ホルダは、ステータにセンサ要素を固定するための固定部と、固定部に対して傾斜して設けられ、被覆体の電線側の一端領域を保持する保持部と、を有する。
【0009】
本発明の回転電機は、コアおよびコイルを含むステータと、ステータに対して回転されるロータと、コイルの温度を検知するための上述の温度センサと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一端領域がホルダに保持される被覆体の他端領域のみがコイルに突き当てられ変形しつつ当接することにより、センサ要素がコイルの所定領域に位置決めされ、その状態が維持されるので、センサ要素を金属製のブラケットのアーム等により測温対象領域に押圧して位置決めする必要がない。本実施形態の温度センサによれば、感温体および電線を含む感温素子と、感温素子を外力から保護する被覆体と、被覆体の他端領域をコイルの測温対象領域に当接した状態に維持する樹脂製のホルダとを備えていれば足りるので、金属製の部材を備える場合と比べてコストを抑えつつ、振動、衝撃等の外力によるコイルの規定位置からの位置ずれを防止することができる。
加えて、ホルダを支持体に固定すれば、ホルダに保持されている被覆体の他端領域がコイルの測温対象領域に当接されるので、例えばホルダを弾性変形させつつコイル間に挿入するような場合と比べて、温度センサをコイルに容易に取り付けたり取り外したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る回転電機の一部および温度センサを示す斜視図である。
【
図2】2Aは、
図1に示す温度センサの平面図である。2Bは、2AのIIb矢視による温度センサの側面図である。
【
図3】
図1のIII矢視による温度センサの側面図である。
【
図4】第2実施形態に係る回転電機および温度センサを示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す温度センサ単体を示す斜視図である。
【
図6】6Aは、変形例に係る温度センサを示す平面模式図である。6Bは、6Aに示す温度センサが回転電機のコイルに当接している状態を示す平面模式図である。
【
図7】
図6Aに示す温度センサが回転電機のコイルに押圧されている状態を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
第1実施形態、第2実施形態、および変形例により、温度センサと、温度センサを備える回転電機とのそれぞれの構成の一例を示す。これらの構成例は、回転電機のステータのコイルに温度センサが当接される向きが相違している。
【0013】
[第1実施形態]
〔全体構成〕
図1~
図3に示す温度センサ2は、電動機等の回転電機1のステータ10に取り付けられ、ステータ10のコイル11の温度を検知する。回転電機1は、例えば電気自動車等の車両に搭載される。
図1には、ステータ10のコイルエンドの付近のみを示している。回転電機1は、ステータ10と、ステータ10に対して回転される図示しないロータと、温度センサ2とを備えている。
各図には、ステータ10の軸方向D1、周方向D2、および径方向D3が矢印により示されている。
【0014】
ステータ10は、複数の電磁鋼板の積層体である図示しないコアと、当該コアを支持する部材と、当該コアに形成されているティースに巻き回されるコイル11とを備えている。ティースとコイル11との間には、絶縁性樹脂材料から形成され、コイルエンドEを支持する支持体12が配置されている。
【0015】
コイル11は、集中巻コイルに相当し、ステータ10の周方向D2に並ぶ複数のコイル要素11Aを含む。
図1には、一つのコイル要素11Aのみが示されている。
温度センサ2は、
図1および
図3に示すように、ステータ10の軸方向D1におけるコイル要素11Aの端部(以下、コイルエンドE)に対して軸方向D1に押圧されて当接し、コイルエンドEの温度を検知する。
【0016】
支持体12は、ステータ10の径方向D3に並ぶ板状の支持片121を備えており、それらの支持片121によりコイルエンドEを支持する。コイルエンドEは、支持片121に形成されている収容部120(
図3参照)に収容される。この支持体12は、ステータ10の構成部品等の適宜な部材に固定されている。
コイルエンドEにおける隣り合う支持片121(121A,121B)の間には、温度センサ2が当接される測温対象領域11Rが設定されている。支持片121A,121Bのそれぞれには、温度センサ2の部材を係止する略矩形状の係止部121Lが形成されている。
係止部121Lには、矩形状の係止孔121Hが板厚方向に貫通して形成されている。
【0017】
〔温度センサの構成および作用〕
本発明の温度センサ2の構成について、
図2を参照して説明する。
図2Aおよび
図2Bに示すように、温度センサ2は、センサ要素20と、センサ要素20を保持するホルダ30とを備えている。センサ要素20は、感温素子21、感温素子21に電気的に接続される一対のリード線22、および被覆体24から構成される。
感温素子21は、温度変化に対して電気抵抗が変化する感温体211と、感温体211を覆う絶縁性の封止材212と、感温体211に電気的に接続され、封止材212から引き出される一対のクラッド線213とを備えている。感温体211は、例えばサーミスタに相当する。クラッド線213は、例えばジュメット線(dumet線)に相当する。一対のクラッド線213は、同じ向きに一方向に引き出されている。
一対のリード線22は、一対のクラッド線213に個別に接続され、クラッド線213と共に「電線」を構成している。各リード線22は、クラッド線213に接合される芯線221、および芯線221を覆う絶縁被覆222からなる。一対のリード線22は、図示しない温度検出回路に接続される。
【0018】
被覆体24は、感温素子21の全体およびリード線22の所定範囲を覆うように形成され、感温素子21と、感温素子21およびリード線22の接合箇所を外部から印加される外力から保護する。被覆体24は、クラッド線213が封止材212から引き出されている方向に長く、長尺状に形成されている。被覆体24の長手方向をLdで示す。被覆体24は、長手方向Ldの一端側の領域に相当する第1領域241と、第1領域241に連なり、長手方向Ldの他端側の領域に相当する第2領域242とを有している。
本実施形態の被覆体24は、例えば、円柱状の外形に成形されており、リード線22が引き出される第1領域241から、感温体211が位置している第2領域242までに亘り、径がほぼ一定の円形の横断面を有している。なお、被覆体24の横断面は、円形に限られず、任意の形状、例えば矩形状等の形状であってもよく、一部の形状が異なる形状、例えば、第2領域242のみが他の部分よりも細い先細り形状に形成されていてもよい。
【0019】
本実施形態の被覆体24は、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の弾性材料から形成されている。フッ素ゴムは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等に相当する。例えば、PTFEから形成されているチューブの内側に感温素子21およびリード線22を通し、当該チューブを加熱により収縮させるとともに、金型に入れて加圧することで、感温素子21およびリード線22に被覆体24を設けることができる。
被覆体24の材料としては、フッ素ゴム、シリコーンゴムの他にも、必要な耐熱性を考慮して、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ニトリルイソプレンゴム、アクリルゴム等の適宜な弾性材料を用いることが可能である。
その他、被覆体24は、適宜な樹脂材料、例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルホン(PSF/PSU)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアセタール(POM)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フェノール樹脂(PF)、不飽和ポリエステル(UP)、エポキシ樹脂(EP)、シリコーン樹脂(SI)、ポリウレタン(PU)等を用いて形成することができる。
【0020】
コイル11の温度を安定して検知するため、センサ要素20は、ホルダ30が支持体12(
図1および
図3)に固定されると、被覆体24の他端側に位置する第2領域242が測温対象領域11Rに突き当てられ、弾性変形しつつ当接するようにホルダ30に保持される。そのため、センサ要素20はコイルエンドEに位置決めされるとともに、その位置がずれないようにコイルエンドEに押圧される。
【0021】
被覆体24は、その長手方向Ldが、測温対象領域11Rでコイル11の素線が延びている延出方向D4(
図1および
図3)に対して傾斜している。被覆体24は、第1領域241と第2領域242の境界である境界領域243が弾性変形することにより第2領域242が測温対象領域11Rに当接するように、ホルダ30に保持される。この境界領域243を除くと、第1領域241と第2領域242はそれぞれ真直ぐかほぼ真直をなしており、第1領域241と第2領域242は互いに傾いている。これらは、温度センサ2が回転電機1のステータ10に取り付けられたときの形態である。
【0022】
測温対象領域11Rでは複数のコイルの素線が並行して延びている。それら素線と被覆体24との伝熱面積を広く確保したい。そのため、被覆体24の姿勢は、コイル素線が並ぶ方向に被覆体24がコイル素線をなるべく跨がないように設定される。つまり、被覆体24の姿勢は、コイル11に当接する第2領域242がコイル素線に対して並行して配置される向きに設定される。この点は、第2実施形態(
図4および
図5)および変形例(
図6および
図7)においても同様である。
【0023】
次に、ホルダ30について、
図2及び
図3を参照して説明する。
ホルダ30は、温度センサ2を回転電機1のコイル11に当接した状態で保持するための保持部材である。このホルダ30は、適宜な樹脂材料、例えばポリフェニレンスルファイド(PPS)を用いて射出成形により形成されている。その他、ホルダ30の材料としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルホン(PSF/PSU)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアセタール(POM)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フェノール樹脂(PF)、不飽和ポリエステル(UP)、エポキシ樹脂(EP)、シリコーン樹脂(SI)、ポリウレタン(PU)等を用いることができる。
このホルダ30は、被覆体24の第1領域241を保持し、支持体12に固定される。ホルダ30が支持体12に固定されると、被覆体24の弾性力によりコイルエンドEに第2領域242が押圧される状態にセンサ要素20が位置決めされる。
【0024】
ホルダ30は、支持体12に固定される固定部31と、被覆体24が測温対象領域11Rに対して軸方向D1側に傾斜した状態に第1領域241を保持する保持部32と、を備えている。固定部31は、固定部31と保持部32とを互いに連結するための連結領域314を有している。この連結領域314により、固定部31と保持部32とが一体的なホルダ30を形成している。
【0025】
固定部31は、支持片121A,121Bの間に、概ね周方向D2に沿って配置されている。この固定部31は、径方向D3に対向する一対の側壁310を備えている。一対の側壁310のそれぞれには、係止部121Lの3つの辺を囲むU字状のリブ311により区画されている凹部312と、凹部312から径方向D3に突出している係止体313とが形成されている。リブ311により係止部121Lを軸方向D1に沿ってガイドしつつ凹部312に受け入れると、係止孔121Hには係止体313の係止爪313Nが挿入されることで、固定部31は支持片121A,121Bの内側から支持体12へ係止される。係止爪313Nおよび係止孔121Hにより、固定部31は、支持体12に着脱可能に固定される。
【0026】
保持部32は、温度センサ2をステータ10に取り付けて装着状態としたときに、被覆体24が測温対象領域11Rに対して軸方向D1側に傾斜した状態に第1領域241を保持するためのものである。この保持部32は、被覆体24の第1領域241を保持する被覆体保持領域321と、リード線22を保持するリード線保持領域322と、被覆体保持領域321から感温体211側へ突出し、測温対象領域11Rに対して軸方向D1に離れた側から被覆体24を支持する支持突片323(拘束部)とを備えている。そして、温度センサ2は、固定部31における側面視で略三角形状の連結領域314に取り付けられる。このため、温度センサ2は、固定部31に対して傾斜して設けられ、測温対象領域11Rに対して軸方向D1側に傾斜した向きに延在している。言い換えれば、保持部32に取り付けられると、被覆体24は、測温対象領域11Rに対して傾斜して保持され、第2領域242側から第1領域241側に向かうにつれて、測温対象領域11Rから軸方向D1に離れる状態で配置される。
【0027】
被覆体保持領域321は、被覆体24の第1領域241側の所定範囲を囲んで保持する。被覆体保持領域321には、被覆体24が第2領域242側から挿入される開口部321Aが形成されている。
【0028】
リード線保持領域322は、被覆体24から露出している一対のリード線22を保持する。本実施形態のリード線保持領域322は、被覆体保持領域321に対して径方向D3の一方側にシフトして配置されている。このリード線保持領域322には、リード線22における被覆体24の近傍の部位22Aに対して屈曲した部位22Bが挿入される切欠322Aが形成されている。
支持突片323は、被覆体保持領域321の先端321Bから感温体211に向けて突出しているともに、軸方向D1から見ると略矩形状に形成されている。
【0029】
被覆体24は、径方向D3の一方側から保持部32の内側に受け入れられ、第1領域241側で被覆体保持領域321により片持ち状に支持される。つまり、保持部32は、感温体211が位置する第2領域242が自由端の側に配置されるように、被覆体24を片持ち状に保持する。
図2Aに示されるように、温度センサ2が回転電機1に取り付けられていない状態、すなわちセンサ要素20がコイル11に非装着の状態においては、被覆体24は、センサ要素20の軸線(長手方向Ld)と交差する固定基準線Lcに対して傾いている。加えて、被覆体24は、
図2Aに示されるように、自由端(第2領域242)と保持部32により保持される部分とが固定基準線Lcを跨いでいる。言い換えれば、被覆体24の自由端の側は、固定基準線Lcから突出している。この固定基準線Lcに対して傾いているという要件と、固定基準線Lcに対して跨いでいるという要件を備えることにより、センサ要素20をコイル11に装着すると、第2領域242が測温対象領域11Rに当接することができる。
ここで、固定基準線Lcとは、支持体12に対する固定に直接的に関わる固定部31の部位が延びる方向に一致するかまたは平行な線をいう。本実施形態においては、
図1および
図3に示されるように、支持体12の係止孔121Hに係止される係止爪313Nが直接的に固定に関わる部位に該当する。この固定基準線Lcは、
図3に示すように、センサ要素20がコイル11に装着された状態においては、コイル11の外周における接線Ltと平行をなす。したがって、被覆体24はこの接線Ltに対しても傾いている。
被覆体24は、第1領域241から第2領域242まで一方向に延びている。支持突片323は、測温対象領域11Rから離れる向きへの被覆体24の変位を拘束する。被覆体24を開口部321Aから被覆体保持領域321に収容しつつ、リード線保持領域322の切欠322Aにリード線22を挿入すると、センサ要素20はホルダ30に一体に組み付けられる。
リード線22がリード線保持領域322に係止されることにより、ホルダ30からセンサ要素20が離脱するのを防止することができる。
【0030】
ホルダ30にセンサ要素20が組み付けられた状態で、ホルダ30とセンサ要素20とからなる組付体を支持片121A,121Bの間に配置し、支持片121A,121Bに対して固定部31を押し下げると、係止爪313Nが係止部121Lに係止されることでホルダ30が支持体12に固定される。それに伴い、
図3に示すように、測温対象領域11Rに対して傾斜している被覆体24の第2領域242が測温対象領域11Rに突き当てられ、境界領域243が弾性変形して屈曲することで、測温対象領域11Rに第2領域242が密着して押圧される。その結果、センサ要素20は測温対象領域11Rに位置決めされ、その状態が維持される。このとき、被覆体24は、湾曲形状の外周側では、内周側よりも長い範囲に亘りホルダ30から露出しており、かつ、支持突片323により被覆体24の測温対象領域11Rから離れる向きへの変位が拘束されている。そのことにより、被覆体24の変形は妨げられず、第2領域242が測温対象領域11Rに安定して押圧される。
【0031】
〔本実施形態の効果〕
以上で説明したように、ホルダ30に保持される被覆体24の第2領域242のみがコイル11の測温対象領域11Rに当接して位置決めされ、その状態に維持されるので、センサ要素20を金属製のブラケットのアーム等により測温対象領域11Rに押圧して位置決めする必要がない。本実施形態の温度センサ2によれば、感温素子21と、感温素子21を外力から保護する被覆体24と、支持体12に固定される樹脂製のホルダ30とを備えていれば足りるので、金属製の部材を備える場合と比べてコストを抑えつつ、振動、衝撃等の外力によるコイル11の規定位置からの位置ずれを防止することができる。
加えて、ホルダ30の固定部31を支持体12に固定すれば、固定部31に対して傾斜して設けられた保持部32に保持されている被覆体24の第2領域242が測温対象領域11Rに当接されるので、例えばホルダ30を弾性変形させつつコイル11間に挿入するような場合と比べて、温度センサ2をコイル11に容易に取り付けたり取り外したりすることができる。
さらに、被覆体24は、その長手方向Ldが測温対象領域11Rにおけるコイル11の素線の延出方向D4に対して傾斜しているので、コイル素線に対して並行して配置される第2領域242とコイル素線とが伝熱に十分な面積で接触する。そのため、温度検知の精度および応答性の向上に寄与することができる。
【0032】
以下、第1実施形態と同様の効果を奏する他の実施形態を説明する。
[第2実施形態]
第2実施形態は、上述の第1実施形態に対し、被覆体24が測温対象領域11Rに押圧される向きが相違している。
図4および
図5に示す温度センサ5は、電動機4のステータ40に取り付けられ、ステータ40のコイル11の温度を検知する。電動機4は、例えば電動工具に搭載される。電動機4は、ステータ40と、ステータ40に対して回転される図示しないロータと、温度センサ5とを備えている。
【0033】
ステータ40は、二点鎖線で示すコアと、当該コアを軸方向D1の一端側および他端側から支持する絶縁性の略円環状の支持体41と、当該コアに形成されているティースに巻き回されるコイル11とを備えている。ティースとコイル11との間には、コイル11を支持する絶縁性の部材42が配置されている。
図4の上側に位置する支持体41には、複数の突起43が上方へ突出して形成されている。そのうちの1つの突起43には、温度センサ5と、図示しない回路基板が取り付けられる。
【0034】
コイル11は、集中巻コイルに相当し、ステータ40の周方向D2に並ぶ複数のコイル要素11Aからなる。
第2実施形態の温度センサ5は、
図4に示すように、コイル要素11A間に配置される。温度センサ5は、隣り合うコイル要素11Aの向き合う面の一方に相当する測温対象領域11Rに対して周方向D2に押圧される。
【0035】
温度センサ5は、感温素子21および被覆体24を含むセンサ要素20と、センサ要素20を保持するホルダ50とを備えている。
感温素子21および被覆体24はそれぞれ、第1実施形態とほぼ同様に構成されている。第2実施形態の被覆体24の第2領域242は、他の領域よりも細い先細り形状に形成されている。
【0036】
ホルダ50は、上述のホルダ30と同様の樹脂材料を用いて射出成形により形成することができる。このホルダ50は、第1実施形態のホルダ30と同様、被覆体24の第1領域241を保持し、支持体41に固定されるとともに、被覆体24の第2領域242のみが測温対象領域11Rに当接する状態にセンサ要素20を位置決めする。
【0037】
ホルダ50は、支持体41に固定される固定部51と、センサ要素20を保持する保持部52とを備えている。
固定部51は、略板状に形成され、断面積を増加させて板厚方向の剛性を高めるために溝511が形成されているとともに、板厚方向に貫通した孔512が形成されている。固定部51は、孔512に突起43が挿入された状態で支持体41上に配置され、突起43に設けられる図示しない固定具により支持体41に着脱可能に固定される。ホルダ50には、突起43の近くの突出部44等を避けて支持体41上に配置できるように適宜な外形が与えられている。孔512の内周部における平面512Aと突起43の外周部における平面とが係合することで、ホルダ50と支持体41との相対回転は規制されている。
【0038】
保持部52は、被覆体24の第1領域241を保持する被覆体保持領域521と、被覆体24から露出している一対のリード線22を保持するリード線保持領域522とを備えている。
被覆体24は、第1領域241側で被覆体保持領域521により片持ち状に支持され、第2領域242まで延びている。
【0039】
被覆体保持領域521は、固定部51に対して下方へ突出し、略筒状に形成されている。この被覆体保持領域521は、測温対象領域11Rに対して周方向D2側に傾斜した向きに延在している。
また、被覆体保持領域521は、ホルダ50が支持体41に固定されたときに測温対象領域11Rに近接する側の部位521Aの長さよりも、測温対象領域11Rに対して周方向D2に離れた部位521B(拘束部)の長さの方が長くなっている。
【0040】
リード線保持領域522は、固定部51に隣接し、被覆体24の長手方向Ldに対して交差する向きに引き出されるリード線22を溝522Aの内側に保持する。
【0041】
被覆体保持領域521の内側に被覆体24を第2領域242側から挿入するとともに、リード線22を折り曲げて溝522Aに収容し、さらに伸縮チューブ523をリード線保持領域522に設けて加熱により収縮させると、センサ要素20がホルダ50に組み付けられる。伸縮チューブ523によりリード線22が溝522Aに押さえられていることで、センサ要素20のホルダ50からの離脱が防止されている。伸縮チューブ523は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から形成されている。その他、伸縮チューブ523は、熱収縮性を有する適宜な材料から形成することができる。
【0042】
被覆体保持領域521の内側に被覆体24を挿入すると、例えば、被覆体24に形成されている図示しない段差が被覆体保持領域521の内側に形成されている図示しない係止部に係止されることで、被覆体24が被覆体保持領域521から下方へ所定の長さだけ突出する。そうでなければ、被覆体24の径が第2領域242から第1領域241に向かうにつれて次第に拡大しており、被覆体保持領域521の内側に被覆体24を挿入すると、被覆体24は、先端部521Cの内径よりも径が小さい範囲に亘り被覆体保持領域521から突出する。
【0043】
ホルダ50にセンサ要素20が組み付けられた状態で、固定部51およびリード線保持領域522を支持体41上に配置し、固定部51の孔512に突起43を挿入した状態で固定部51を支持体41に固定する。そうすると、被覆体24は保持部52により測温対象領域11Rに対して周方向D2側に傾斜した状態に保持されるので、
図4に示すように、被覆体24は測温対象領域11Rに突き当てられ測温対象領域11Rに沿って曲がった状態に変形し、第2領域242が測温対象領域11Rに密着して押圧される。その結果、センサ要素20が測温対象領域11Rに位置決めされ、その状態に維持される。このとき被覆体24は、湾曲形状の外周側、すなわち部位521A側において部位521Bよりも長い範囲に亘り露出しており、かつ、内周側に位置する部位521Bにより被覆体24の測温対象領域11Rから離れる向きへの変位が拘束されている。そのことにより、被覆体24の変形は妨げられず、第2領域242が測温対象領域11Rに安定して押圧される。
加えて、第1実施形態と同様に、ホルダ50の固定部51を支持体41に固定すれば、固定部51に対して傾斜して設けられた保持部52に保持されている被覆体24の第2領域242が測温対象領域11Rに当接されるので、温度センサ5をコイル11に容易に取り付けたり取り外したりすることができる。
また、第1実施形態と同様に、被覆体24は、その長手方向Ldが測温対象領域11Rにおけるコイル11の素線の延出方向D4に対して傾斜しているので、コイル素線に対して並行して配置される第2領域242とコイル素線とが伝熱に十分な面積で接触する。そのため、温度検知の精度および応答性の向上に寄与することができる。
【0044】
〔変形例〕
変形例は、上述の第1実施形態および第2実施形態に対し、被覆体24が測温対象領域に当接する向きが相違している。
図6A、
図6Bおよび
図7に示す温度センサ7は、車両等に搭載される回転電機6のステータ60(
図7)に取り付けられ、分布巻のステータ60のコイルの温度を検知する。
図6Bおよび
図7には、ステータ60のコイルエンドEの付近のみを示している。回転電機6は、ステータ60と、ステータ60に対して回転される図示しないロータと、温度センサ7とを備えている。コイルエンドEは、周方向D2に分布して図示しないコアに巻き回されるコイル素線Cからなり、コアに対して軸方向D1に突出している。
温度センサ7は、コイルエンドEの測温対象領域61Rに対して径方向D3に当接する。
【0045】
温度センサ7は、感温素子21および被覆体24を含むセンサ要素20と、センサ要素20を保持するホルダ70とを備えている。ホルダ70は、上述のホルダ30と同様の樹脂材料を用いて射出成形により形成することができる。
感温素子21および被覆体24はそれぞれ、第1実施形態とほぼ同様に構成されている。
【0046】
ホルダ70は、支持体62に固定される固定部71と、被覆体24を第1領域241側で片持ち状に保持する保持部72とを備えている。固定部71の板状の基体71Aには、板厚方向に貫通する孔71Bが形成されているとともに、孔71Bの周縁には筒体71Cが突設されている。
例えば、筒体71Cと、支持体62に形成されている図示しない凹部との位置を合わせ、筒体71Cの内側および支持体62の凹部に接着剤73を充填することにより、ホルダ70を支持体62に固定することができる。支持体62は、ステータ60に備わる部材あるいは回転電機6の周囲に配置される適宜な部材に相当する。
支持体62に対するホルダ70の回転を規制するため、例えば、筒体71Cの内周部には、キー、あるいは二面幅71Dが形成されていることが好ましい。
【0047】
保持部72は、側方の開口720から内側に挿入される被覆体24の第1領域241を囲むことで、測温対象領域61Rに対して少なくとも径方向D3側に傾斜する状態に被覆体24を支持する。また、被覆体24は、軸方向D1に対して直交する支持体62の上面に対しても、コイル素線Cが延びている向きとほぼ同様の向きに傾斜している。つまり、被覆体24は、その長手方向Ldが、測温対象領域11Rでコイル素線Cが延びている延出方向D4に対して傾斜している。この被覆体24は、回転電機6を平面視したとき、側面視したときのいずれにおいても測温対象領域61Rに対して傾斜している。
【0048】
第1領域241から引き出されるリード線22は、適宜な向きに引き出すことができる。また、適宜な手段によりセンサ要素20をホルダ70に係止することができる。
保持部72には、第1実施形態の保持部32の支持突片323や、第2実施形態の保持部52の部位521Bと同様に、被覆体24の測温対象領域61Rから離れる向きへの変位を拘束する拘束部が形成されていてもよい。
【0049】
ホルダ70にセンサ要素20が組み付けられた状態で、固定部71が支持体62に固定される。それに伴い、
図6Bおよび
図7に示すように、被覆体24は、測温対象領域61Rに突き当てられ測温対象領域61Rに沿って曲がった状態に変形し、第2領域242が測温対象領域61Rに密着して押圧される。そのため、センサ要素20が測温対象領域61Rに位置決めされる。また、コイル素線Cに対して並行して配置される被覆体24とコイル素線Cとは十分な面積で接触するので、温度検知の精度および応答性の向上に寄与することができる。
【0050】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本発明におけるコイルの測温対象領域は、上記実施形態等とは異なる位置に設定されていてもよい。例えば、コイル素線C同士がなす空隙に挿入された被覆体24の弾性力により、複数のコイル素線Cに亘る測温対象領域に第2領域242が押圧されていてもよい。
【0051】
本発明において被覆体24を保持し、支持体12,41,62に固定される樹脂製ホルダには、適宜な形状を与えることができる。ホルダの固定部は、例えば、締結、かしめ、接着等の適宜な方法により、回転電機のステータに備わる部材あるいは回転電機の周囲に配置される部材を支持体として、当該支持体に固定することができる。
また、ホルダに保持された被覆体24からリード線22を任意の向きに引き出すことが可能である。
【0052】
実施形態における固定部31としての係止体313(係止爪313N)は矩形状をなしている例が示されているが、本発明は他の形状、楕円形、三角形などを採用できる。例えば、
図3において、長軸が周方向D2と平行になる楕円形の係止体の場合には、短軸と円周との接点を通る接線が前述した固定基準線Lcをなす。この場合の接点は、
図3でいうと、下向きの短軸と円周との接点をいう。また、底辺がコイルと対向する三角形の係止体の場合には、底辺と重なる直線が固定基準線Lcをなす。
【0053】
〔付記〕
以上の説明から、以下に示す構成が把握される。
(1)回転電機のステータに備えられるコイルの温度を検知するための温度センサであって、感温体と、前記感温体に電気的に接続される電線と、前記電線の一部および前記感温体を被覆する長尺状の被覆体と、を含むセンサ要素と、
前記被覆体の長手方向が前記コイルの測温対象領域に対して傾斜している状態に前記被覆体の前記電線側の一端領域を保持する樹脂製のホルダと、を備え、
前記ホルダは、前記被覆体の前記感温体側の他端領域が前記測温対象領域に当接されるように前記回転電機に取り付けられている、温度センサ。
【0054】
(2)前記被覆体の前記長手方向は、前記他端領域が当接する前記測温対象領域で延びている前記コイルの素線の延出方向に対して傾斜している、前記(1)に記載の温度センサ。
【0055】
(3)前記ホルダは、前記被覆体の前記一端領域を保持する保持部と、前記センサ要素を前記回転電機に固定するための固定部と、を備え、
前記回転電機に設けられる支持体に前記固定部が固定されると、前記被覆体の前記他端領域が前記測温対象領域に位置決めされる、前記(1)または(2)に記載の温度センサ。
【0056】
(4)前記保持部は、前記被覆体の前記測温対象領域から離れる向きへの変位を拘束する拘束部を含む、前記(3)に記載の温度センサ。
(5)前記被覆体は、弾性を有する樹脂製の部材からなり、
前記被覆体の弾性力により前記他端領域が前記測温対象領域に押圧される、前記(1)から(4)のいずれか一項に記載の温度センサ。
【0057】
(6)前記他端領域は、前記コイルのコイルエンドに対して前記ステータの軸方向に当接される、前記(1)から(5)のいずれか一項に記載に記載の温度センサ。
【0058】
(7)前記被覆体における少なくとも前記他端領域は、前記ステータの周方向に並ぶ集中巻の前記コイルの要素の間に配置され、
前記他端領域は、前記測温対象領域に対して前記周方向に当接される、前記(1)から(5)のいずれか一項に記載の温度センサ。
【0059】
(8)前記他端領域は、前記コイルのコイルエンドに対して前記ステータの径方向に押圧される、前記(1)から(5)のいずれか一項に記載の温度センサ。
【0060】
(9)回転電機のステータに備えられるコイルの温度を検知するための温度センサであって、
感温体と、前記感温体に電気的に接続される電線と、前記電線の一部および前記感温体を被覆する被覆体と、を含むセンサ要素と、
前記センサ要素を保持し、前記センサ要素を前記回転電機に固定するための樹脂製のホルダと、を備え、
前記ホルダは、固定基準線を介して前記ステータに前記センサ要素を固定するための固定部と、前記感温体が自由端の側に配置されるように、前記被覆体を片持ち状に保持する保持部と、を有し、
前記被覆体は、
前記固定基準線に対して傾いており、かつ、
前記自由端と片持ち状に保持される部分との間に前記固定基準線が位置している、温度センサ。
【0061】
(10)回転電機のステータに備えられるコイルの測温対象領域において温度を検知するための温度センサであって、
感温体と、前記感温体に電気的に接続される電線と、前記電線の一部および前記感温体を被覆する被覆体と、を含むセンサ要素と、
前記センサ要素を保持し、前記センサ要素を前記回転電機に固定するための樹脂製のホルダと、を備え、
前記ホルダは、
前記ステータに前記センサ要素を固定するための固定部と、
前記感温体が自由端の側に配置されるように、前記被覆体を片持ち状に保持する保持部と、を有し、
前記被覆体は、
前記測温対象領域に対して傾く第1領域と、
前記第1領域に連なるとともに前記第1領域に対して傾いた状態で前記測温対象領域に当接される第2領域と、を備える、温度センサ。
【0062】
(11)コアおよびコイルを含むステータと、
前記ステータに対して回転されるロータと、
前記コイルの温度を検知するための前記(1)から(10)のいずれか一項に記載の温度センサと、を備える、回転電機。
【符号の説明】
【0063】
1,6 回転電機
2,5,7 温度センサ
4 電動機
10,40 ステータ
11 コイル
11A コイル要素
11R 測温対象領域
12 支持体
20 センサ要素
21 感温素子
22 リード線
22A 部位
22B 部位
24 被覆体
30 ホルダ
31 固定部
32 保持部
41 支持体
42 部材
43 突起
44 突出部
50 ホルダ
51 固定部
52 保持部
60 ステータ
61R 測温対象領域
62 支持体
70 ホルダ
71 固定部
71A 基体
71B 孔
71C 筒体
71D 二面幅
72 保持部
73 接着剤
120 収容部
121,121A,121B 支持片
121H 係止孔
121L 係止部
211 感温体
212 封止材
213 クラッド線
221 芯線
222 絶縁被覆
241 第1領域(一端領域)
242 第2領域(他端領域)
310 側壁
311 リブ
312 凹部
313 係止体
313N 係止爪
314 連結領域
321 被覆体保持領域
321A 開口部
321B 先端
322 リード線保持領域
322A 切欠
323 支持突片(拘束部)
511 溝
512 孔
512A 平面
521 被覆体保持領域
521A 部位
521B 部位(拘束部)
521C 先端部
522 リード線保持領域
522A 溝
523 伸縮チューブ
720 開口
C コイル素線
D1 軸方向
D2 周方向
D3 径方向
D4 延出方向
E コイルエンド
Ld 長手方向
【要約】
【課題】コストを抑えつつ、振動等の外力によるコイルの規定位置からの位置ずれを防止することが可能であるとともに、コイルへの取り付けおよび取り外しが容易な温度センサを提供すること。
【解決手段】回転電機1のステータ10に備えられるコイル11の温度を検知するための温度センサ2は、センサ要素20と、樹脂製のホルダ30とを備える。センサ要素20は、感温体211と、感温体211に接続される電線213と、感温体211、クラッド線213、およびリード線22の一部を被覆する長尺状の被覆体24と、を含む。ホルダ30は、被覆体24の長手方向Ldがコイル11の測温対象領域11Rに対して傾斜している状態に被覆体24の電線側の一端領域241を保持する。このホルダ30は、被覆体24の感温体側の他端領域242が測温対象領域11Rに当接されるように回転電機1に取り付けられている。
【選択図】
図3