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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】ワーク保持装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/54 20060101AFI20230710BHJP
   B23Q 1/64 20060101ALI20230710BHJP
   B23Q 3/04 20060101ALI20230710BHJP
   B24B 33/02 20060101ALI20230710BHJP
   B24B 33/06 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
B23Q1/54
B23Q1/64 C
B23Q3/04
B24B33/02
B24B33/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023533943
(86)(22)【出願日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2023004524
【審査請求日】2023-06-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390003665
【氏名又は名称】株式会社日進製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真吾
(72)【発明者】
【氏名】井上 智宏
(72)【発明者】
【氏名】眞下 和昌
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-131345(JP,A)
【文献】特開2009-090439(JP,A)
【文献】国際公開第2008/087785(WO,A1)
【文献】特開2005-138275(JP,A)
【文献】特開平07-266169(JP,A)
【文献】特開2016-196060(JP,A)
【文献】特開2007-268703(JP,A)
【文献】国際公開第2016/128006(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0116815(US,A1)
【文献】米国特許第05426352(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00-1/76
B23Q 3/00-3/154
B24B 21/00-39/06
B24B 41/00-51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材により第1方向に延在する第1揺動軸周りに揺動する方向と前記第1揺動軸方向との少なくとも一方へ移動自在に支持される第1本体部と、円盤状であり中心軸が前記第1揺動軸と一致する姿勢で前記第1本体部に固定されるとともに、外周面全体において円環状の第1弾性部材を保持する第1保持部と、を有する第1揺動部材と、
前記第1揺動部材により前記第1方向と直交する第2方向に延在する第2揺動軸を中心として揺動する方向と前記第2揺動軸方向との少なくとも一方へ移動自在に支持される第2本体部と、円盤状であり中心軸が前記第2揺動軸と一致する姿勢で前記第2本体部に固定されるとともに、外周面全体において円環状の第2弾性部材を保持する第2保持部と、を有する第2揺動部材と、
前記第2本体部に固定されワークを保持するワークホルダと、
筒状であり少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形であり、内側面が前記第1保持部の外周面に前記第1弾性部材を介して対向した状態で前記ベース部材に固定される第1筒状部材と、
前記第1弾性部材を拡張させて前記第1弾性部材の外側全体を前記第1筒状部材の内側面に押し付けることにより、前記第1揺動部材が前記ベース部材に対して動くのを規制する第1揺動規制部と、
筒状であり少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形であり、内側面が前記第2保持部の外周面に前記第2弾性部材を介して対向した状態で前記第1揺動部材に固定される第2筒状部材と、
前記第2弾性部材を拡張させて前記第2弾性部材の外側全体を前記第2筒状部材の内側面に押し付けることにより、前記第2揺動部材が前記第1揺動部材に対して動くのを規制する第2揺動規制部と、を備える、
ワーク保持装置。
【請求項2】
前記第1保持部は、前記外周面における周方向全体に亘って前記第1弾性部材が嵌入される第1溝が形成されるとともに、前記第1弾性部材が前記第1溝に嵌入された状態で前記第1弾性部材と前記第1溝の内側との間に形成される第1領域に連通する第1流路が設けられ、
前記第1揺動規制部は、前記第1流路を通じて前記第1領域へ流体を導入することにより、流体の圧力により前記第1弾性部材全体に対して前記第1揺動軸と直交し且つ前記第1揺動軸から離れる方向へ前記第1弾性部材を拡張させ、
前記第2保持部は、前記外周面における周方向全体に亘って前記第2弾性部材が嵌入される第2溝が形成されるとともに、前記第2弾性部材が前記第2溝に嵌入された状態で前記第2弾性部材と前記第2溝の内側との間に形成される第2領域に連通する第2流路が設けられ、
前記第2揺動規制部は、前記第2流路を通じて前記第2領域へ流体を導入することにより、流体の圧力により前記第2弾性部材全体に対して前記第2揺動軸と直交し且つ前記第2揺動軸から離れる方向へ前記第2弾性部材を拡張させる、
請求項1に記載のワーク保持装置。
【請求項3】
ベース部材と、
前記ベース部材により第1方向に延在する第1揺動軸を中心として揺動する方向と前記第1揺動軸方向との少なくとも一方へ移動自在に支持される第1本体部と、円盤状であり中心軸が前記第1揺動軸と一致する姿勢で前記第1本体部に固定される第1円盤状部と、を有する第1揺動部材と、
前記第1揺動部材により前記第1方向と直交する第2方向に延在する第2揺動軸を中心として揺動する方向と前記第2揺動軸方向との少なくとも一方へ移動自在に支持される第2本体部と、円盤状であり中心軸が前記第2揺動軸と一致する姿勢で前記第2本体部に固定される第2円盤状部と、を有する第2揺動部材と、
前記第2揺動部材に固定されワークを保持するワークホルダと、
筒状であり少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形であり、内側に円環状の第1弾性部材を保持するとともに、内側面が前記第1弾性部材を介して前記第1円盤状部の外周面に対向した状態で前記ベース部材に固定されると第1保持部材と、
前記第1弾性部材を収縮させて前記第1円盤状部の外周面に押し付けることにより、前記第1揺動部材が前記ベース部材に対して動くのを規制する第1揺動規制部と、
筒状であり少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形であり、内側に円環状の第2弾性部材を保持するとともに、内側面が前記第2弾性部材を介して前記第2円盤状部の外周面に対向した状態で前記第1揺動部材に固定される第2保持部材と、
前記第2弾性部材を収縮させて前記第2円盤状部の外周面に押し付けることにより、前記第2揺動部材が前記第1揺動部材に対して動くのを規制する第2揺動規制部と、を備える、
ワーク保持装置。
【請求項4】
前記第1保持部材は、前記内側面における周方向全体に亘って前記第1弾性部材が嵌入される第1溝が形成されるとともに、前記第1弾性部材が前記第1溝に嵌入された状態で前記第1弾性部材と前記第1溝の内側との間に形成される第1領域に連通する第1流路が設けられ、
前記第1揺動規制部は、前記第1流路を通じて前記第1領域へ流体を導入することにより、流体の圧力により前記第1弾性部材全体に対して前記第1揺動軸と直交し且つ前記第1揺動軸に近づく方向へ前記第1弾性部材を収縮させ、
前記第2保持部材は、前記内側面における周方向全体に亘って前記第2弾性部材が嵌入される第2溝が形成されるとともに、前記第2弾性部材が前記第2溝に嵌入された状態で前記第2弾性部材と前記第2溝の内側との間に形成される第2領域に連通する第2流路が設けられ、
前記第2揺動規制部は、前記第2流路を通じて前記第2領域へ流体を導入することにより、流体の圧力により前記第2弾性部材全体に対して前記第2揺動軸と直交し且つ前記第2揺動軸に近づく方向へ前記第2弾性部材を収縮させる、
請求項3に記載のワーク保持装置。
【請求項5】
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との少なくとも一方は、複数存在する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のワーク保持装置。
【請求項6】
前記ワークホルダは、
内側に前記ワークが配置されるホルダ本体と、
筒状であり内側に筒軸方向における一端側に向かうにつれて筒軸方向と直交する断面の面積が増加するテーパ部が形成され、前記ホルダ本体に対する前記ワークの挿入方向側から前記テーパ部が前記ワークに当接した状態で前記ワークを支持するワーク支持部と、
前記ホルダ本体に固定され、前記ワーク支持部を前記挿入方向とは反対方向へ付勢する付勢部材と、を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載のワーク保持装置。
【請求項7】
前記ワークホルダは、
内側に前記ワークが配置されるホルダ本体と、
筒状であり内側に筒軸方向における一端側に向かうにつれて筒軸方向と直交する断面の面積が増加するテーパ部が形成され、前記ホルダ本体に対する前記ワークの挿入方向側から前記テーパ部が前記ワークに当接した状態で前記ワークを支持するワーク支持部と、
前記ホルダ本体に固定され、前記ワーク支持部を前記挿入方向とは反対方向へ付勢する付勢部材と、を有する、
請求項5に記載のワーク保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
治具ベースと、第1方向に延びる第1揺動軸を有して第1揺動軸を中心に揺動するように治具ベースに支持される第1揺動部材と、第1方向と直交する第2方向に延びる第2揺動軸を有して第2揺動軸を中心に揺動するように第1揺動部材に支持される第2揺動部材と、第2揺動部材に固定されて前記ワークを保持するワークホルダと、を備え、ワークを浮動状態で支持するフローティング治具が提案されている(例えば特許文献1参照)。このフローティング治具では、第1揺動軸の周囲を囲うように配置されて治具ベースに固定された複数の第1アクチュエータが、それぞれ、第1揺動軸の軸心へ向かう方向に第1揺動軸を押し付けることにより第1揺動軸の揺動を制限する。また、第2揺動軸の周囲を囲うように配置されて第1揺動部材に固定された複数の第2アクチュエータが、それぞれ、第2揺動軸の軸心へ向かう方向に第2揺動軸を押し付けることにより第2揺動軸の揺動を制限する。
【0003】
ところで、複数の第1アクチュエータにより第1揺動部材の姿勢を固定する動作が行われるときに、第1揺動軸に対して複数の第1アクチュエータの押し付け力が不均衡に作用すると、第1揺動部材の姿勢にずれが生じる虞がある。また、複数の第2アクチュエータにより第2揺動部材の姿勢を固定する動作が行われるときに、第2揺動軸に対して複数の第2アクチュエータの押し付け力が不均衡に作用すると、第2揺動部材の姿勢にずれが生じる虞がある。そこで、特許文献1に記載された構成では、第1揺動軸、第2揺動軸に荷重センサが設けられており、荷重センサの検出結果に基づいて、複数の第1アクチュエータ間並びに複数の第2アクチュエータ間における押し付け力の不均衡を小さくする制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-131345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された構成では、複数の第1アクチュエータ、複数の第2アクチュエータそれぞれの押し付け力を検出する荷重センサと、荷重センサの検出結果に基づいて、複数の第1アクチュエータ間並びに複数の第2アクチュエータ間における押し付け力の不均衡を小さくする制御を実行する制御装置と、を設ける必要がある。このため装置構成が複雑となるとともに、部品点数の増大により重量が増加してしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、構成の簡素化および軽量化を図ることができるワーク保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るワーク保持装置は、
ベース部材と、
前記ベース部材により第1方向に延在する第1揺動軸周りに揺動する方向と前記第1揺動軸方向との少なくとも一方へ移動自在に支持される第1本体部と、円盤状であり中心軸が前記第1揺動軸と一致する姿勢で前記第1本体部に固定されるとともに、外周面全体において円環状の第1弾性部材を保持する第1保持部と、を有する第1揺動部材と、
前記第1揺動部材により前記第1方向と直交する第2方向に延在する第2揺動軸を中心として揺動する方向と前記第2揺動軸方向との少なくとも一方へ移動自在に支持される第2本体部と、円盤状であり中心軸が前記第2揺動軸と一致する姿勢で前記第2本体部に固定されるとともに、外周面全体において円環状の第2弾性部材を保持する第2保持部と、を有する第2揺動部材と、
前記第2本体部に固定されワークを保持するワークホルダと、
筒状であり少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形であり、内側面が前記第1保持部材の外周面に前記第1弾性部材を介して対向した状態で前記ベース部材に固定される第1筒状部材と、
前記第1弾性部材を拡張させて前記第1弾性部材の外側全体を前記第1筒状部材の内側面に押し付けることにより、前記第1揺動部材が前記ベース部材に対して動くのを規制する第1揺動規制部と、
筒状であり少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形であり、内側面が前記第2保持部材の外周面に前記第2弾性部材を介して対向した状態で前記第1揺動部材に固定される第2筒状部材と、
前記第2弾性部材を拡張させて前記第2弾性部材の外側全体を前記第2筒状部材の内側面に押し付けることにより、前記第2揺動部材が前記第1揺動部材に対して動くのを規制する第2揺動規制部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1揺動規制部が、第1弾性部材を拡張させて第1弾性部材の外側全体を第1筒状部材の内側面に押し付けることにより、第1揺動部材がベース部材に対して動くのを規制する。また、第2揺動規制部が、第2弾性部材を拡張させて第2弾性部材の外側全体を第2筒状部材の内側面に押し付けることにより、第2揺動部材が第1揺動部材に対して動くのを規制する。これにより、第1揺動部材の第1保持部がその周方向全体に亘って均一な圧力で第1筒状部材に固定されるとともに、第2揺動部材の第2保持部がその周方向全体に亘って均一な圧力で第2筒状部材に固定される。従って、第1揺動部材および第2揺動部材の姿勢のずれを抑制しつつ、構成の簡素化並びに軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係るホーニング加工装置の斜視図である。
図2】実施の形態1に係るワーク保持装置の一部破断した斜視図である。
図3A】実施の形態1に係るワーク保持装置の図2のA-A線で破断した断面矢視図である。
図3B】実施の形態1に係るワーク保持装置の図2のB-B線で破断した断面矢視図である。
図4A】実施の形態1に係るワーク保持装置がワークの保持を解除した状態を示す一部断面図である。
図4B】実施の形態1に係るワーク保持装置からワークが離脱した状態を示す一部断面図である。
図5A】実施の形態1に係るワーク保持装置がワークを保持していない状態を示す一部断面図である。
図5B】実施の形態1に係るワーク保持装置がワークを保持した状態を示す一部断面図である。
図6】実施の形態1に係る第1揺動規制部および第2揺動規制部の概略構成図である。
図7A】実施の形態1に係るワーク保持装置の揺動可能な状態を示す一部断面図である。
図7B】実施の形態1に係るワーク保持装置の制振状態を示す一部断面図である。
図8】実施の形態2に係るワーク保持装置の一部破断した斜視図である。
図9A】実施の形態2に係るワーク保持装置の図8のC-C線で破断した断面矢視図である。
図9B】実施の形態2に係るワーク保持装置の図8のD-D線で破断した断面矢視図である。
図10】実施の形態1に係る第1揺動規制部および第2揺動規制部の概略構成図である。
図11A】実施の形態2に係るワーク保持装置の揺動可能な状態を示す一部断面図である。
図11B】実施の形態2に係るワーク保持装置の制振状態を示す一部断面図である。
図12】変形例に係る揺動規制部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態に係るワーク保持装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係るワーク保持装置は、ホーニング加工時においてワークを保持する治具である。このワーク保持装置は、ベース部材と、第1揺動部材と、第2揺動部材と、ワークホルダと、第1筒状部材と、第1揺動規制部と、第2筒状部材と、第2揺動規制部と、を備える、第1揺動部材は、ベース部材により第1方向に延在する第1揺動軸を中心として揺動する方向と第1揺動軸方向との少なくとも一方へ移動自在に支持される第1本体部と、円盤状であり中心軸が第1揺動軸と一致する姿勢で第1本体部に固定されるとともに、外周面全体において円環状の第1弾性部材を保持する第1保持部と、を有する。第2揺動部材は、第1揺動部材により第1方向と直交する第2方向に延在する第2揺動軸を中心として揺動する方向と第1揺動軸方向との少なくとも一方へ移動自在に支持される第2本体部と、円盤状であり中心軸が第2揺動軸と一致する姿勢で第2本体部に固定されるとともに、外周面全体において円環状の第2弾性部材を保持する第2保持部と、を有する。ワークホルダは、第2揺動部材の第2本体部に固定されワークを保持する。第1筒状部材は、筒状であり少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形であり、内側面が第1保持部材の外周面に第1弾性部材を介して対向した状態でベース部材に固定されている。第1揺動規制部は、第1弾性部材を拡張させて第1弾性部材の外側全体を第1筒状部材の内側面に押し付けることにより、第1揺動部材がベース部材に対して動くのを規制する。第2筒状部材は、筒状であり少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形であり、内側面が第2保持部材の外周面に第2弾性部材を介して対向した状態で第1揺動部材に固定されている。第2揺動規制部は、第2弾性部材を拡張させて第2弾性部材の外側全体を第2筒状部材の内側面に押し付けることにより、第2揺動部材が第1揺動部材に対して動くのを規制する。
【0011】
本実施の形態に係るホーニング加工装置は、図1に示すように、ホーニングツール90と、ホーニングツール90の鉛直下方に配置されたワーク保持装置1と、を備える。また、ホーニング加工装置は、ホーニングツール90をその長手方向に沿って中心軸J2を中心として回転させながら昇降させる駆動機構(図示せず)を備える。なお、図1では、ワークWが、その加工孔Whの中心軸J0とホーニングツール90の中心軸J1とが一致する姿勢で配置されている。
【0012】
ホーニングツール90は、長尺円筒状のツール本体91と、ツール本体91の-Z方向側の端部においてツール本体91の径方向へ拡縮可能に設けられた複数の砥石92と、を有する。また、ホーニングツール90は、-Z方向側の端部に設けられたウェッジ部分(図示せず)を有し、ツール本体91の内側において砥石92が固定された砥石台(図示せず)の砥石92側とは反対側の傾斜面にウェッジ部分が当接した状態で配置され、ツール本体91に対して鉛直方向へ相対的に移動することにより砥石92を拡張移動させるためのウェッジロッド(図示せず)と、砥石92を収縮移動する方向へ付勢する付勢部材(図示せず)と、を有する。そして、ウェッジロッドが-Z方向へ移動するのに伴って、砥石台および砥石台に固定された砥石92がウェッジ部分に押圧されて拡張方向へ移動する。一方、ウェッジロッドが+Z方向へ移動すると、付勢部材の付勢力により、砥石台および砥石92が収縮方向へ移動する。なお、付勢部材としては、リングばね、リング状のゴム等を採用することができる。
【0013】
ここで、ホーニング加工装置は、ホーニングツール90をワーク保持装置1に保持されたワークWの加工孔Wh内へ挿入してから、砥石92を拡張移動させることにより砥石92が加工孔Whの内壁に接触させる。そして、ホーニング加工装置は、砥石92を加工孔Whの内壁に接触させた状態で、ホーニングツール90をその長手方向に沿った中心軸J2を中心として回転することにより、ワークWの加工孔Whの内壁を研削する。
【0014】
ワーク保持装置1は、ベース部材11と、第1揺動部材12と、第2揺動部材13と、ワークホルダ14と、第1筒状部材15と、第2筒状部材16と、第1弾性部材17と、第2弾性部材18と、スペーサ19と、を備える。また、ワーク保持装置1は、第1揺動部材12のベース部材11に対する揺動および水平方向への移動を規制する第1揺動規制部21と、第2揺動部材13の第1揺動部材12に対する揺動および水平方向への移動を規制する第2揺動規制部22と、を備える。ベース部材11は、枠状の本体部111と、本体部111の周方向における複数箇所から-Z方向へ延在し本体部111を支持する支柱112と、平面視略矩形状の扁平な形状を有し、複数の支柱112の-Z方向側の端部が固定される基台113と、を有する。
【0015】
第1揺動部材12は、ベース部材11によりX軸方向に延在する第1揺動軸Jxを中心として揺動する方向と第1揺動軸Jx方向とへ移動自在に支持されている。第1揺動部材12は、平面視の外形が六角形の形状を有する枠状の本体部121と、長尺であり長手方向の一端部が第1本体部121に固定されたシャフト122と、円盤状でありシャフト122の他端部に固定され第1弾性部材17を保持する第1保持部123と、を有する。第1弾性部材17は、円環状であり、ゴム、エラストマ等の弾性材料から形成されている。本体部121は、ベース部材11によりシャフト122を介してX軸方向に延在する第1揺動軸Jxを中心として揺動する方向と第1揺動軸Jx方向とへ移動自在に支持されている。シャフト122は、軸受125を介してベース部材11の本体部111に固定されている。第1保持部123は、その厚さ方向に沿った中心軸が第1揺動軸Jxと一致する姿勢で本体部121に固定され、外周面全体において第1弾性部材17を保持している。ここで、第1保持部123は、シャフト122と連続一体に形成されており、シャフト122を介して本体部121に固定されている。
【0016】
また、図3Aに示すように、シャフト122の内部には、シャフト122の内部をシャフト122の長手方向、即ち、X軸方向に沿って延在する流路122aが形成されている。そして、シャフト122における本体部121に固定されている部分には、本体部121の+Z方向側から流路122aの内側に連通し流路122aに空気を導入するための流路124aが形成されたコネクタ124が配設されている。更に、第1保持部123は、外周面における周方向全体に亘って第1弾性部材17が嵌入される第1溝123aが形成されている。そして、第1保持部123には、第1弾性部材17が第1溝123aに嵌入された状態で第1弾性部材17と第1溝123aの内側との間に形成される第1領域に連通する流路123bが設けられている。
【0017】
第2揺動部材13は、図2に示すように、第1揺動部材12によりY軸方向に延在する第2揺動軸Jyを中心として揺動する方向と第2揺動軸Jy方向とへ移動自在に支持されている。第2揺動部材13は、本体部131と、長尺であり長手方向の一端部が本体部131に固定されたシャフト132と、円盤状でありシャフト132の他端部に固定され第2弾性部材18を保持する第2保持部133と、を有する。また、第2揺動部材13には、後述のスペーサロック板144の旋回動作を案内するためのガイドローラ32が固定されている。第2弾性部材18は、第1弾性部材17と同様に、円環状であり、ゴム、エラストマ等の弾性材料から形成されている。本体部131は、板状の主片1311と、主片1311のY軸方向における両端部から主片1311の厚さ方向に沿った同一方向へ延在し主片1311を+Z方向側から保持する2つの保持片1312と、を有する。主片1311には、その厚さ方向に貫通し内側にワークホルダ14が配置される貫通孔131aが穿設されている。また、貫通孔131aの内壁には、ワークホルダ14の一部が-Z方向側から係止される段部131bが形成されている。シャフト132は、軸受135を介して第1揺動部材12の本体部121に固定され、前述の長手方向の一端部が、本体部131の保持片1312に固定されている。このようにして、本体部131は、第1揺動部材12によりシャフト132を介してY軸方向に延在する第2揺動軸Jyを中心として揺動する方向と第2揺動軸Jy方向とへ移動自在に支持されている。第2保持部133は、その厚さ方向に沿った中心軸が第2揺動軸Jyと一致する姿勢で本体部131に固定され、外周面全体において第2弾性部材18を保持している。ここで、第2保持部133は、シャフト132と連続一体に形成されており、シャフト132を介して本体部131に固定されている。
【0018】
また、図3Bに示すように、シャフト132の内部には、シャフト132の内部をシャフト122の長手方向、即ち、Y軸方向に沿って延在する流路132aが形成されている。そして、シャフト132における本体部131に固定されている部分には、本体部131の+Z方向側から流路132aの内側に連通し流路132aに空気を導入するための流路134aが形成されたコネクタ134が配設されている。更に、第2保持部133は、外周面における周方向全体に亘って第2弾性部材18が嵌入される第2溝133aが形成されている。そして、第2保持部133には、第2弾性部材18が第2溝133aに嵌入された状態で第2弾性部材18と第2溝133aの内側との間に形成される第2領域に連通する流路133bが設けられている。
【0019】
ワークホルダ14は、図2図3Aおよび図3Bに示すように、筒状のホルダ本体141と、円筒状でありホルダ本体141の+Z方向側に配置されワークWを-Z方向側から支持するワーク支持部142と、付勢部材143と、2つのスペーサロック板144と、を有する。ホルダ本体141は、円筒状であり内側に+Z方向側から嵌入された付勢部材143を係止する段部141aが形成された主部1411と、主部1411の+Z方向側の端部から外側へ張り出した外鍔部1412と、スペーサロック板144を旋回自在に支持するロック板支持部1413と、を有する。ロック板支持部1413は、円筒状であり主部1411に外嵌された状態で主部1411に対して鉛直方向へ摺動自在となっている支持部本体1413aと、支持部本体1413aのX軸方向において対向する2箇所から互いに離れる方向へ突出した2つの突出部1413bと、2つの突出部1413bそれぞれの先端部に設けられスペーサロック板144の-Z方向側の端部を枢支する軸部1413cと、を有する。そして、外鍔部1412とロック板支持部1413との間には、コイルばね145が配置されており、ロック板支持部1413が主部1411に対して+Z方向側へ移動すると、コイルばね145の復元力によりロック板支持部1413が-Z方向側へ付勢される。また、ホルダ本体141には、スペーサロック板144の旋回動作を案内するためのガイドピン31が固定されている。
【0020】
ワーク支持部142の内壁のZ軸方向における略中央部から+Z方向側の端部に亘る部分には、+Z方向側に向かうにつれて拡径するテーパ部142bが形成されている。また、ワーク支持部142の-Z方向側の端面には、付勢部材143の+Z方向側の端部を係止する段部142aが形成されている。更に、ワーク支持部142の-Z方向側の端部には、外側へ張り出した外鍔部142cが設けられている。付勢部材143は、コイルバネであり、-Z方向側の端部がホルダ本体141の段部141aに係止され、+Z方向側の端部がワーク支持部142の段部142aに係止された状態で、ホルダ本体141の主部1411の内側に配置されている。2つのスペーサロック板144は、それぞれ、長尺板状であり、長手方向における一端部には、スペーサロック板144の厚さ方向に貫通しホルダ本体141のロック支持部1413の軸部1413cが挿通される貫通孔144dが貫設されている。また、スペーサロック板144それぞれの他端部には、第2揺動部材13の本体部131にスペーサ19が載置された状態でスペーサ19を+Z方向側から係止するフック144aが設けられている。また、スペーサロック板144は、ホルダ本体141とは反対側に突出した突起144cと、貫通孔144dが貫設された一端部から他端部に向かってホルダ本体141から離れるように傾斜したテーパ部144bと、を有する。そして、図3Aに示すように、スペーサロック板144がスペーサ19を係止した状態で、前述のガイドピン31が突起144cの頂部に当接した状態となり、スペーサロック板144の旋回が規制された状態となる。そして、図3Aに示す状態から、図4Aの矢印AR31に示すように、ロック支持部1413を、ホルダ本体141に対して+Z方向側へ摺動させると、コイルばね145が圧縮され、スペーサロック板144のテーパ部144bにおける前述のガイドローラ32と当接する位置が、テーパ部144bにおける貫通孔144dが貫設された一端部側へ移動し、これに伴い、矢印AR32に示すように、スペーサロック板144が、その他端部がスペーサ19から離脱する方向へ旋回する。これにより、図4Bの矢印AR33に示すように、ワークWとスペーサ19とを+Z方向側へ取り出すことができる。
【0021】
ここで、ワーク支持部142は、図5Aに示すように、ワークWを保持していない状態では、外鍔部142cが第2揺動部材13の主片1311における貫通孔131aの内側の段部131bに-Z方向側から当接し付勢部材143により主片1311に押し付けられた状態となっている。そして、図5Bの矢印AR11に示すように、ワークWが+Z方向側から挿入されると、ワークWの-Z方向側の端部がワーク支持部142のテーパ部142bに当接し、ワーク支持部142が-Z方向側へ移動する。このとき、ワーク支持部142は、付勢部材143の付勢力によりワークWの-Z方向側の端部に押し付けられ、ワークWの-Z方向側の端部がテーパ部142bに沿ってXY方向へ移動することでワークWの中心軸J0がワーク支持部142の中心軸J2と一致するように調芯される。
【0022】
スペーサ19は、円板状であり、中央部に厚さ方向に貫通し内側にワークWが挿通される開口部19aが貫設されている。スペーサ19は、第2揺動部材13の本体部131の主片1311上に載置され、開口部19aの内側に挿通されたワークWがワークホルダ14に保持された状態で、周部上面がワークホルダ14のスペーサロック板144のフック144aに係止されることにより第2揺動部材13に固定される。
【0023】
図2および図3Aに示すように、2つの第1筒状部材15は、それぞれ、有底円筒状であり、筒状部151と筒状部151の筒軸方向における一方の端部を閉塞する底壁152と、を有し、少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形である。第1筒状部材15の筒状部151の内側面は、第1揺動部材12の第1保持部123の外周面に第1弾性部材17を介して対向した状態でベース部材11に固定されている。2つの第2筒状部材16は、図2および図3Bに示すように、それぞれ、有底円筒状であり、筒状部161と筒状部161の筒軸方向における一方の端部を閉塞する底壁162と、を有し、少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形である。第2筒状部材16の筒状部161の内側面は、第2揺動部材13の第2保持部133の外周面に第2弾性部材18を介して対向した状態で第1揺動部材12に固定されている。
【0024】
図6に示すように、第1揺動規制部21は、圧縮空気を出力する空気源211と、第1揺動部材12のコネクタ124に接続されるチューブ212と、チューブ212の先端部に設けられたコネクタ215と、空気源211とチューブ212との間に介在しチューブ212内の空気圧を調節するための圧力制御弁213と、圧力制御部214と、を有する。そして、コネクタ215が第1揺動部材12のコネクタ124に接続された状態で、圧力制御部214が、圧力制御弁213を制御して、空気源211からコネクタ124に供給される空気の圧力を調節することにより、第1揺動部材12がベース部材11に対して動くのを規制する。また、第2揺動規制部22は、空気源211と、第2揺動部材13のコネクタ134に接続されるチューブ222と、チューブ222の先端部に設けられたコネクタ225と、空気源211とチューブ222との間に介在しチューブ222内の空気圧を調節するための圧力制御弁223と、圧力制御部214と、を有する。そして、コネクタ225が第2揺動部材13のコネクタ134に接続された状態で、圧力制御部214が、圧力制御弁223を制御して、空気源211からコネクタ134に供給される空気の圧力を調節することにより、第2揺動部材13が第1揺動部材12に対して動くのを規制する。
【0025】
例えば図7Aに示すように、第2弾性部材18が第2筒状部材16の筒状部161の内側面161aに当接していない状態では、第2揺動部材13が、第1揺動部材12に対して揺動自在であり且つ水平方向へ移動自在となっている。そして、第2揺動規制部22は、第2揺動部材13の第1揺動部材12に対する動くのを規制する場合、コネクタ134から流路134a、132a、133bを通じて、第2弾性部材18と第2溝133aの内側との間に形成される第2領域S2へ空気を供給する。これにより、図7Bの矢印AR12に示すように、第2弾性部材18が拡張して、第2弾性部材18の外側全体が第2筒状部材16の筒状部161の内側面161aに押し付けられ、第2揺動部材13の第1揺動部材12に対する動きが規制される。また、第1弾性部材17も第1筒状部材15の筒状部151の内側面に当接していない状態では、第1揺動部材12が、ベース部材11に対して揺動自在であり且つ水平方向へ移動自在となっている。そして、第1揺動規制部21は、第1揺動部材12のベース部材11に対する動くのを規制する場合、図3Aに示すコネクタ124から流路124a、122a、123bを通じて、第1弾性部材17と第1溝123aの内側との間に形成される第1領域へ空気を供給する。これにより、第1弾性部材17が拡張して、第1弾性部材17の外側全体が第1筒状部材15の筒状部151の内側面に押し付けられ、第1揺動部材12のベース部材11に対する動きが規制される。
【0026】
また、圧力制御部214は、圧力制御弁213、223を制御することにより、コネクタ124、134に供給する空気の圧力を段階的または連続的に変化させることができる。これにより、第1揺動部材12、第2揺動部材13それぞれのベース部材11、第1揺動部材12に対する制動力を段階的または連続的に調節することができる。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態に係るワーク保持装置1では、第1揺動規制部21が、第1弾性部材17を拡張させて第1弾性部材17の外側全体を第1筒状部材15の筒状部151の内側面に押し付けることにより、第1揺動部材12がベース部材11に対して動くのを規制する。また、第2揺動規制部22が、第2弾性部材18を拡張させて第2弾性部材18の外側全体を第2筒状部材16の筒状部161の内側面161aに押し付けることにより、第2揺動部材13が第1揺動部材12に対して動くのを規制する。これにより、第1揺動部材12の第1保持部123がその周方向全体に亘って均一な圧力で第1筒状部材15に固定されるとともに、第2揺動部材13の第2保持部133がその周方向全体に亘って均一な圧力で第2筒状部材16に固定される。従って、第1揺動部材12および第2揺動部材13の姿勢のずれを抑制しつつ、構成の簡素化並びに軽量化を図ることができる。
【0028】
また、本実施の形態に係るワーク保持装置1では、圧力制御弁 213、223をそれぞれ各別に制御して、コネクタ124、125それぞれに加わる圧力を異なる圧力に調整できる。これにより、例えば第1揺動部材12、第2揺動部材13の揺動振幅および水平方向へ移動振幅を比較して、これらの振幅の大きい方に設けられたコネクタ124、125に加わる圧力を他方の圧力に比べて大きくなるように調整することが可能となる。
【0029】
ところで、複数のワーク保持装置1をコンベヤに載置し、ホーニングツール90の鉛直下方に順次配置しながら加工を行ういわゆる連続加工により生産効率を高めることが要請されている。この場合、特許文献1に記載されたホーニング加工機では、制御部が加工機本体側に設けられている場合、制御部が、例えば無線通信機能により複数の第1アクチュエータおよび複数の第2アクチュエータを制御する構成とする必要がありホーニング加工機の構成が複雑になってしまう。これに対して、本実施の形態に係るワーク保持装置1では、コネクタ124、134を、第1揺動規制部21、第2揺動規制部22それぞれのチューブ212、222の先端部に設けられたコネクタ215、225への結合およびコネクタ215、225からの離脱を行うだけで、ホーニングツール90の鉛直下方に配置するワーク保持装置1の交換を行うことができる。従って、ワーク保持装置1の交換を自動で行う構成とする場合、コネクタ124、134へのコネクタ215、225を自動で着脱する機構を設けるだけでよいので、ホーニングツール90を備えるホーニング加工装置またはコンベヤの構成を簡素化することができる。
【0030】
また、本実施の形態に係るワーク保持装置1は、第1揺動部材12、第2揺動部材13がX軸方向、Y軸方向における両端部それぞれにおいて、1つの第1弾性部材17、第2弾性部材18を用いて第1揺動部材12、第2揺動部材13の制動機構が実現できている。このため、制動機構をコンパクト且つ軽量化できるので、特に、ホーニングツール90を高速回転させながらのホーニング加工を行うことが可能となる。
【0031】
また、本実施の形態に係る第1揺動規制部21は、第1揺動部材12の第1保持部123に形成された流路123bを通じて第1弾性部材17と第1保持部123の第1溝123aの内側との間に形成される第1領域へ空気を導入することにより、空気圧により第1弾性部材17全体に対して第1揺動軸Jxと直交し且つ第1揺動軸Jxから離れる方向へ第1弾性部材17を拡張させる。また、第2揺動規制部22は、第2揺動部材13の第2保持部133に形成された流路133bを通じて第2弾性部材18と第2保持部133の第2溝133aの内側との間に形成される第2領域S2へ空気を導入することにより、空気圧により第2弾性部材18全体に対して第2揺動軸Jyと直交し且つ第2揺動軸Jyから離れる方向へ第2弾性部材18を拡張させる。これにより、第1弾性部材17、第2弾性部材18に対して均一に空気圧を加えることができるので、第1弾性部材17、第2弾性部材18をそれらの周方向において偏り無く均一に拡張することができる。
【0032】
更に、本実施の形態に係るワークホルダ14は、内側にワークWが配置されるホルダ本体141と、ホルダ本体141に対するワークWの挿入方向側、即ち、-Z方向側からワークWに当接した状態でワークWを支持するワーク支持部142と、ホルダ本体141に固定され、ワーク支持部142を+Z方向へ付勢する付勢部材143と、を有する。これにより、ワーク支持部142は、付勢部材143の付勢力によりワークWの-Z方向側の端部に押し付けられ、ワークWの-Z方向側の端部がテーパ部142bに沿ってXY方向へ移動することでワークWの中心軸J0がワーク支持部142の中心軸J2と一致するように調芯される。従って、ワークWをワークホルダ14にセットする際のワークWの加工孔Whの位置バラツキ低減することができる。特に、第1揺動部材12、第2揺動部材13の移動限界を超えるワークWの加工孔Whの位置バラツキを抑制でき、第1揺動部材12、第2揺動部材13の移動可能距離が確保できるので、加工精度を高めることができる。
【0033】
(実施の形態2)
本実施の形態に係るワーク保持装置は、筒状であり少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形であり、内側に円環状の第1弾性部材を保持する第1保持部材と、筒状であり少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形であり、内側に円環状の第2弾性部材を保持する第2保持部材と、を備える点で実施の形態1と相違する。
【0034】
図8に示すように、本実施の形態に係るワーク保持装置2は、ベース部材11と、第1揺動部材2012と、第2揺動部材2013と、ワークホルダ14と、第1保持部材2015と、第2保持部材2016と、第1弾性部材17、18と、スペーサ19と、を備える。なお、図8において、実施の形態1と同様の構成については図2と同一の符号を付している。また、ワーク保持装置2は、第1揺動部材2012のベース部材11に対する揺動および水平方向へ移動を規制する第1揺動規制部2021と、第2揺動部材2013の第1揺動部材2012に対する揺動および水平方向へ移動を規制する第2揺動規制部2022と、を備える。
【0035】
第1揺動部材2012は、ベース部材11によりX軸方向に延在する第1揺動軸Jxを中心として揺動する方向と第1揺動軸Jx方向とへ移動自在に支持されている。第1揺動部材2012は、枠状の本体部121と、長尺であり長手方向の一端部が本体部121に固定されたシャフト2122と、円盤状でありシャフト2122の他端部に固定された第1円盤状部2123と、を有する。シャフト2122は、軸受125を介してベース部材11の本体部111に固定されている。第1円盤状部2123は、中心軸が第1揺動軸Jxと一致する姿勢で本体部121に固定されている。ここで、第1円盤状部2123は、図9Aに示すように、シャフト2122と連続一体に形成されており、シャフト2122を介して本体部121に固定されている。
【0036】
第2揺動部材2013は、図8に示すように、第1揺動部材2012によりY軸方向に延在する第2揺動軸Jyを中心として揺動する方向と第2揺動軸Jy方向とへ移動自在に支持されている。第2揺動部材2013は、本体部131と、長尺であり長手方向の一端部が本体部131に固定されたシャフト2132と、円盤状でありシャフト2132の他端部に固定された第2円盤状部2133と、を有する。シャフト2132は、図9Bに示すように、軸受135を介して第1揺動部材2012の本体部121に固定され、前述の長手方向の一端部が、本体部131の保持片1312に固定されている。このようにして、本体部131は、第1揺動部材2012によりシャフト2132を介してY軸方向に延在する第2揺動軸Jyを中心として揺動する方向と第2揺動軸Jy方向とへ移動自在に支持されている。第2円盤状部2133は、その厚さ方向に沿った中心軸が第2揺動軸Jyと一致する姿勢で本体部131に固定されている。ここで、第2円盤状部2133は、シャフト2132と連続一体に形成されており、シャフト2132を介して本体部131に固定されている。
【0037】
図8に示すように、2つの第1保持部材2015は、それぞれ、有底円筒状であり、筒状部2151と底壁152とコネクタ2153とを有し、少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形である。第1保持部材2015は、筒状部2151の内側に第1弾性部材17を保持するとともに、内側面が第1弾性部材17を介して第1揺動部材2012の第1円盤状部2123の外周面に対向した状態でベース部材11に固定されている。また、図9Aに示すように、筒状部2151には、内周面における周方向全体に亘って第1弾性部材17が嵌入される第1溝2151aが形成されている。更に、筒状部2151の+Z方向側の頂部には、筒状部2151の厚さ方向に貫通し第1弾性部材17が第1溝2151aに嵌入された状態で第1弾性部材17と第1溝2151aの内側との間に形成される第1領域に連通する流路2151bが設けられている。コネクタ2153は、筒状部2151における流路2151bが形成された部分の外側に配設されている。
【0038】
図8に戻って、2つの第2保持部材2016は、それぞれ、有底円筒状であり、筒状部2161と底壁162とコネクタ2163とを有し、少なくとも内側の筒軸方向と直交する断面形状が円形である。第2保持部材2016は、筒状部2161の内側に第2弾性部材18を保持するとともに、内側面が第2弾性部材18を介して第2揺動部材2013の第2円盤状部2133の外周面に対向した状態で第1揺動部材2012に固定されている。また、図9Bに示すように、筒状部2161には、内周面における周方向全体に亘って第2弾性部材18が嵌入される第2溝2161aが形成されている。更に、筒状部2161の+Z方向側の頂部には、筒状部2161の厚さ方向に貫通し第2弾性部材18が第2溝2161aに嵌入された状態で第2弾性部材18と第2溝2161aの内側との間に形成される第2領域に連通する流路2161bが設けられている。コネクタ2163は、筒状部2161における流路2161bが形成された部分の外側に配設されている。
【0039】
図10に示すように、第1揺動規制部2021は、空気源211と、第1保持部材2015のコネクタ2153に接続されるチューブ212と、コネクタ215と、圧力制御弁213と、圧力制御部214と、を有する。なお、図10において、実施の形態1と同様の構成については図6と同一の符号を付している。そして、コネクタ215が第1保持部材2015のコネクタ2153に接続された状態で、圧力制御部214が、圧力制御弁213を制御して、空気源211からコネクタ2153に供給される空気の圧力を調節することにより、第1揺動部材2012がベース部材11に対して動くのを規制する。また、第2揺動規制部22は、空気源211と、第2保持部材2016のコネクタ2163に接続されるチューブ222と、コネクタ225と、圧力制御弁223と、圧力制御部214と、を有する。そして、コネクタ225が第2保持部材2016のコネクタ2163に接続された状態で、圧力制御部214が、圧力制御弁223を制御して、空気源211からコネクタ2163に供給される空気の圧力を調節することにより、第2揺動部材2013が第1揺動部材2012に対して動くのを規制する。
【0040】
例えば図11Aに示すように、第2弾性部材18が第2揺動部材2013の第2円盤状部2133の外周面2133aに当接していない状態では、第2揺動部材13が、第1揺動部材12に対して揺動自在であり且つ水平方向へ移動自在となっている。そして、第2揺動規制部2022は、第2揺動部材2013の第1揺動部材2012に対する揺動および水平方向への移動を規制する場合、コネクタ2163から流路2161bを通じて、第2弾性部材18と第2溝2161aの内側との間に形成される第2領域S2002へ空気を供給する。これにより、図11Bの矢印AR2に示すように、第2弾性部材18が収縮して、第2弾性部材18の内側全体が第2揺動部材2013の第2円盤状部2133の外周面2133aに押し付けられ、第2揺動部材2013の第1揺動部材2012に対する揺動および水平方向への移動が規制される。また、第1弾性部材17も第2揺動部材2013の第2円盤状部2133の外周面に当接していない状態では、第1揺動部材2012が、ベース部材11に対して揺動自在であり且つ水平方向へ移動自在となっている。そして、第1揺動規制部2021は、第1揺動部材12のベース部材11に対する揺動および水平方向への移動を規制する場合、図9Aに示すコネクタ2153から流路2151bを通じて、第1弾性部材17と第1溝2151aの内側との間に形成される第1領域へ空気を供給する。これにより、第1弾性部材17が収縮して、第1弾性部材17の内側全体が第1揺動部材2012の第1円盤状部2123の外周面に押し付けられ、第1揺動部材2012のベース部材11に対する揺動および水平方向への移動が規制される。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態に係るワーク保持装置1では、第1揺動部材2012のシャフト2122および第1円盤状部2123並びに第2揺動部材2013のシャフト2132および第2円盤状部2133の内側に流路が形成されていない。これにより、第1揺動部材2012および第2揺動部材2013を作製する際に流路を形成するための加工が不要となるので、その分、ワーク保持装置2の作製が容易になるという利点がある。
【0042】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば第1弾性部材17と第2弾性部材18との少なくとも一方が、複数存在するものであってもよい。例えば実施の形態1に係るワーク保持装置1において、第1揺動部材12の第1保持部123の外周面に、その周方向に沿って延在する複数の第1溝123aが形成されており、複数の第1溝123aそれぞれに、円環状の第1弾性部材17が嵌入されているものであってもよい。或いは、第2揺動部材13の第2保持部133の外周面に、その周方向に沿って延在する複数の第2溝133aが形成されており、複数の第2溝133aそれぞれに、円環状の第2弾性部材18が嵌入されているものであってもよい。
【0043】
また、実施の形態2に係るワーク保持装置2において、第1保持部材2015の筒状部2151の内側面に、その周方向に沿って延在する複数の第1溝2151aが形成されており、複数の第1溝2151aそれぞれに、円環状の第1弾性部材17が嵌入されているものであってもよい。或いは、第2保持部材2016の筒状部2161の内側面に、その周方向に沿って延在する複数の第2溝2161aが形成されており、複数の第2溝2161aそれぞれに、円環状の第2弾性部材18が嵌入されているものであってもよい。
【0044】
本構成によれば、第1揺動部材12、2012のベース部材11に対する揺動および水平方向へ移動を規制する場合、複数の第1弾性部材17を第1筒状部材15の内側面または第1揺動部材2012の第1円盤状部2123の外周面に押し付けることができる。また、第2揺動部材13、2013の第1揺動部材12、2012に対する揺動および水平方向へ移動を規制する場合、複数の第2弾性部材18を第2筒状部材16の内側面または第2揺動部材2013の第2円盤状部2133の外周面に押し付けることができる。これにより、第1揺動部材12、2012のベース部材11に対する揺動および水平方向へ移動を規制する制動力或いは第2揺動部材13、2013の第1揺動部材12、2012に対する揺動および水平方向へ移動を規制する制御力を向上させることができる。
【0045】
各実施の形態では、ワーク支持部142が円筒状であり、その内壁のZ軸方向における略中央部から+Z方向側の端部に亘る部分に+Z方向側に向かうにつれて拡径するテーパ部142bが形成されている例について説明した。但し、ワーク支持部の形状は円筒状に限定されるものではなく、ワークWの形状に応じて角筒状、楕円筒状であってもよい。この場合、ワークホルダは、内側に筒軸方向における一端側に向かうにつれて筒軸方向と直交する断面の面積が増加するテーパ部が形成されたものとすればよい。
【0046】
各実施の形態では、第1揺動規制部21、2021と第2揺動規制部22、2022とが、それぞれ、各別の圧力制御弁213、223を備え、コネクタ124、134またはコネクタ2153、2163が各別の圧力制御弁213、223に接続される例について説明した。但し、これに限定されるものではなく、例えば図12に示すように、揺動規制部3021が、1つの圧力制御弁213を備え、コネクタ124、134またはコネクタ2153、2163が共通の1つの圧力制御弁213に接続されているものであってもよい。なお、図12において、各実施の形態と同様の構成については、図6図10と同一の符号を付している。
【0047】
各実施の形態では、空気源211から第1揺動部材12のコネクタ124、第1保持部材2015のコネクタ2153に供給される空気の圧力を調節することにより、第1揺動部材12、2012がベース部材11に対して動くのを規制し、空気源211から第2揺動部材13のコネクタ134、第2保持部材2016のコネクタ2163に供給される空気の圧力を調節することにより、第2揺動部材13、2013が第1揺動部材12、2012に対して動くのを規制する例について説明した。但し、コネクタ124、134、2153、2163へ供給する流体は、空気に限定されるものではなく、水、油等の液体であってもよい。また、窒素、酸素等の空気以外の気体をコネクタ124、134、2153、2163へ供給する構成であってもよい。
【0048】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、トランスミッションに用いられるギア、インジェクタ部品等を加工するホーニング加工装置に好適である。
【符号の説明】
【0050】
1,2:ワーク保持装置、11:ベース部材、12,2012:第1揺動部材、13,2013:第2揺動部材、14:ワークホルダ、15:第1円筒状部材、16:第2円筒状部材、17:第1弾性部材、18:第2弾性部材、19:スペーサ、19a:開口部、21,2021:第1揺動規制部、22,2022:第2揺動規制部、90:ホーニングツール、91:ツール本体、92:砥石、111,121,131:本体部、112:支柱、113:基台、122,132,2122,2132:シャフト、122a,123b,124a、132a,133b,134a,2151b,2161b:流路、123:第1保持部、123a,2151a:第1溝、124,134,215,225,2153,2163:コネクタ、125,135:軸受、131a:貫通孔、131b,141a,142a:段部、133:第2保持部、133a,2161a:第2溝、141:ホルダ本体、142:ワーク支持部、142b,144b:テーパ部、142c,1412:外鍔部、143:付勢部材、144:スペーサロック板、144a:フック、144c:突起、144d:貫通孔、151,161,2151,2161:筒状部、152,162:底壁、161a:内側面、211:空気源、212,222:チューブ、213,223:圧力制御弁、214:圧力制御部、1311:主片、1312:保持片、1411:主部、1413:ロック板支持部、2015:第1保持部材、2016:第2保持部材、2123:第1円盤状部、2133:第2円盤状部、2133a:外周面、3021:揺動規制部、J0,J1,J2:中心軸、Jx:第1揺動軸、Jy:第2揺動軸、W:ワーク、Wh:加工孔
【要約】
ワーク保持装置(1)は、内側面が第1保持部(123)の外周面に第1弾性部材を介して対向した状態でベース部材(11)に固定される第1筒状部材(15)と、第1弾性部材を拡張させて第1弾性部材の外側全体を第1筒状部材(15)の内側面に押し付けることにより、第1揺動部材(12)がベース部材(11)に対して動くのを規制する第1揺動規制部(21)と、内側面が第2保持部(133)の外周面に第2弾性部材を介して対向した状態で第1揺動部材(12)に固定される第2筒状部材(16)と、第2弾性部材を拡張させて第2弾性部材の外側全体を第2筒状部材(16)の内側面に押し付けることにより、第2揺動部材(13)が第1揺動部材(12)に対して動くのを規制する第2揺動規制部(22)と、を備える。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12