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  • 特許-ボードを乾燥するための方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ボードを乾燥するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/10 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
F26B13/10 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020547354
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019000080
(87)【国際公開番号】W WO2019174785
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】102018002107.7
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520344556
【氏名又は名称】グレンツェバッハ ビーエスエイチ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビューレス、トルベン
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-057863(JP,A)
【文献】特開平07-167561(JP,A)
【文献】特開昭58-103500(JP,A)
【文献】特表2013-515229(JP,A)
【文献】実開昭50-016189(JP,U)
【文献】特開平06-003051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボードを乾燥させる乾燥装置であって、前記乾燥装置は、燃焼器が乾燥空気を生成する天井ユニットを備え、前記天井ユニットは、互いに隣り合って配置された、前記燃焼器から前記乾燥空気が供給され得る少なくとも2つのファンを有し、前記天井ユニットは、前記少なくとも2つのファンを互いに分離する仕切りを備え、
前記ボードは前記乾燥装置を通ってデッキに誘導され、前記乾燥装置内の前記ボードには、衝突噴流換気による前記乾燥空気との接触が生じ、前記衝突噴流換気は横断的に換気されるノズルボックスによって確保され、
前記乾燥空気は、互いに隣り合って配置された前記少なくとも2つのファンによって、前記燃焼器により加熱された前記乾燥空気の気流に供給され、前記燃焼器は前記少なくとも2つのファンの手前に、流れの方向に配置され、前記少なくとも2つのファンは、前記仕切りよりも前記天井ユニットの外壁の近くに取り付けられる、乾燥装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つのファンはそれぞれ、直接駆動である、請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つのファンはそれぞれ、渦巻型ハウジングで包囲されている、請求項1又は2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つのファンはそれぞれ、4極モータ、特に非同期モータであり、1分間に1500回転の速度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つのファンはそれぞれ、約800mmの外羽根車径を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記少なくとも2つのファンから出る乾燥空気の羽根車吹き出し口と圧力チャンバの上方にある前記天井ユニットの壁との間の距離に対する、前記少なくとも2つのファンのうちの1つの外羽根車径の比率は、3.5よりも大きい、請求項1から5のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置を通ってデッキに運ばれるボードを乾燥する方法に関し、乾燥装置内のボードには衝突噴流換気による乾燥空気との接触が生じ、衝突噴流換気は、横断的に換気されるノズルボックスによって確保される。本発明はまた、ボード状の材料、特に石膏ボードを乾燥するための装置に関する。
【発明の概要】
【0002】
そのようなボード状の材料の乾燥は、当該材料の上を流れる熱風の形で、主に対流熱伝達によって行われることが好ましい。通常、複数のデッキの上に配置されるボードは、ローラートラック又はフィルタベルトなどの運搬装置によって乾燥器を通って運ばれる。従来技術によれば、乾燥設備は通常、循環空気を用いるモードで運転される。このモードでは、乾燥空気はボードに誘導され、毎回の接触の後に加熱される。このように、空気中の水分濃度が増え続け、乾燥空気のごく一部が、水分及び煙道ガスを周辺領域に排出するために、周辺領域に排気として放出される。異なる乾燥器の設計を差別化する特徴が、乾燥される材料の上を流れる気流の種類である。空気は本質的に、横流換気、縦流換気、又はいわゆる衝突噴流換気の形でボードに誘導され得る。
【0003】
横流換気では、乾燥空気は、側面から、ボード状の材料の搬送方向に対して横断的に、乾燥される材料の上に送られる。乾燥空気は、乾燥される材料の上を通る間に冷え続けるので、幅に対して異なる乾燥速度になる。したがって、この方法は、石膏ボードなどの繊細な材料に用いることはできない。縦流換気では、乾燥空気は、乾燥器の長手軸に沿ってかなり長い距離を移動し、その間にボードの上を流れてボードを乾燥させるので、この過程でかなり冷える。したがって、乾燥空気は、乾燥空気の露点に近い低い温度で排出され得る。これは、エネルギー的見地から特に有利である。次いで、熱交換器による外気の加熱に、目標の方式で凝縮熱が用いられ得る。
【0004】
衝突噴流換気では、乾燥空気は、乾燥設備の側面から乾燥チャンバ(ノズルボックスとも呼ばれる)に送られ、空気吹き出しノズルを介して、乾燥される材料の表面上に垂直方向に吹き付けられる。そこから、空気は乾燥設備の反対側に流れる。同様な設計で機能する乾燥器が、世界中で用いられている。そのような乾燥器の利点には、比較的短い複数の乾燥チャンバ(それぞれを個別に換気し加熱することができる)を有する設計によって、乾燥器の長さに対して所望の乾燥温度と環境とを自由に選択できるという事実が含まれる。したがって、乾燥条件は、乾燥される材料のニーズに適応可能である。乾燥器はさらに、例えば、製品を変える際に、優れた調整能力を有する。衝突噴流による良好な熱伝達によって、これらの乾燥器は、乾燥される材料の上を空気が流れる縦流換気を用いた類似の乾燥器より大幅に短くなるように作ることができる。ノズルボックスの傾きを調整することで、非常に均一な乾燥も、乾燥される材料の幅全体にわたって実現することができる。各チャンバの排気は、別々に排出され且つ収集される。これも、高い乾燥温度が一定のプロセスで必要とされるチャンバに適用されるので、その結果として、全体的に高い排気温度になる。熱交換器を用いる場合であっても、排気水分に含まれる凝縮熱を有意義な形で用いるのは、必ずしも可能ではない。
【0005】
そのような、石膏ボードを乾燥する設備が、独国特許出願公開第1946696(A)号に説明されている。可能な限り高い入熱と可能な限り均一な乾燥作用とが、乾燥される材料の幅全体にわたって保証される方式で、乾燥チャンバが構成される。
【0006】
独国特許出願公開第2613512(A1)号には、2段階乾燥方法を実装した乾燥装置が開示されている。第2の乾燥段階用の熱が、第1の乾燥段階の排気から、2つの乾燥段階の間に接続された熱交換器によって供給される。この設計において、第1の乾燥段階では、ボードが高い温度と高い空気湿度とで乾燥され、第2の乾燥段階では、比較的低い温度と低い空気湿度とで乾燥される。第1の段階では縦方向に換気され、第2の段階では横断的に換気される。
【0007】
独国特許出願公開第102009059822(B4)号には、ボードを乾燥する方法が開示されており、ボードは、複数の乾燥チャンバに分割された装置を通ってデッキに運ばれ、乾燥装置内のボードには衝突噴流換気による乾燥空気との接触が生じ、横断的に換気されるノズルボックスによって、衝突噴流換気が確保される。ここで乾燥装置は、乾燥設備の主要な乾燥段階又は最終的な乾燥段階である。
【0008】
独国特許出願公開第102009059822(B4)号の開示によれば、化粧板パネル又は石膏ボードを乾燥するための乾燥設備が、それぞれ1つの再循環ファンをそれぞれの乾燥装置用に有しており、再循環ファンは、ボードを受け取る乾燥チャンバの上方の天井ユニットの中央に配置される。しかしながら、再循環ファンによって生じる気流は不均一であり、こうなるのは部分的に、ファンが配置されている天井ユニットの限られた大きさの結果である。仕切りやガイドプレートを実装するなどの補償措置によって、これらの欠点を埋め合わせる試みが行われている。
【0009】
ファンの外羽根車径に対するファンの吸入高さの比率は、既存の乾燥装置では約0.36の値あたりであり、これでは、比較的低い天井ユニットの高さを考慮すると、均一な気流の実現は不可能である。
【0010】
本発明の目的は、ボード状の材料、特に石膏ボード又は化粧板パネルの効率的な乾燥を可能にする方法を確立することである。
【0011】
本発明によれば、この目的は、上述した種類の方法に基づいて、互いに隣り合って配置された少なくとも2つのファンによる乾燥空気を、燃焼器によって生じた乾燥空気の気流に供給することにより実現され、この気流は乾燥空気をファンに誘導する。
【0012】
本発明による方法を用いると、ボード状の材料が、エネルギー消費を減らした衝突噴流換気によって徐々に乾燥され得る。
【0013】
これは、請求項2に記載の乾燥装置の使用にも適用される。請求項2の特徴部分によれば、乾燥装置は燃焼器が乾燥空気を生成する天井ユニットを備え、天井ユニットは互いに隣り合って配置された少なくとも2つのファンを有し、これらのファンには燃焼器からの乾燥空気が供給され得ることが定められている。
【0014】
有利な実施形態が従属請求項に示されている。
【0015】
乾燥装置が用いられることが有利であり、少なくとも2つのファンはそれぞれ、直接駆動である。このように、単純なデザインのファンは、変速装置又は連結装置がなくても用いられ得る。
【0016】
効率を高めるために、少なくとも2つのファンはそれぞれ、渦巻型ハウジングで包囲される。
【0017】
少なくとも2つのファンはそれぞれ、1分間に1500回転の速度の4極モータ、特に非同期モータを有することが有利である。したがって、この2つのファンは、1分間に750回転の速度の8極モータを有する単一のファンを置き換える。8極モータは製造が複雑であり、その効率の程度は4極モータよりも劣る。
【0018】
これらのファンはそれぞれ、外羽根車径が約800mmであり、中央の仕切りによって互いに分離されていることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明による乾燥装置では、これらのファンの吸入高さの比率が少なくとも0.5、特に0.8よりも大きい。入射の流れを最適化した結果、ファンのブレードはより均等に利用されるので、ファンの効率が高まる。
【0020】
効率的な乾燥プロセスを実現するためのさらなる手段が、これらのファンのうちの1つの外羽根車径の、羽根車と圧力チャンバの側面にある天井ユニットの壁との間の距離に対する比率にあり、上記比率は3.5よりも大きい。したがって、ファンの羽根車の空気吹き出し口と乾燥器の壁との間の距離は、気流を均一にするのに十分大きい。
【0021】
少なくとも2つのファンを逆の回転で運転しても、天井ユニットの空気分配が改善されるので、最終的には乾燥装置全体の空気分配が改善される。
【0022】
このように、本発明による2つのファンの実装によって、天井ユニットの全高が変わらないと仮定すれば、乾燥装置の効率を高めることが可能になる。
【0023】
以下では、本発明による装置が、例示的な実施形態を用いてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】乾燥装置の長手方向の断面図である。
【0025】
図2図1に示す断面線A-Aに沿った水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
乾燥空気が乾燥装置(図1図2)の中を流れ、乾燥空気が流れる方向が矢印で示されている。予熱された外気が、燃焼用空気として燃焼器1に供給される。燃焼器1によって加熱された空気をさらに圧力チャンバ5に搬送することが、再循環ファン4a、4b(図2)によって行われる。圧力チャンバ5は、乾燥チャンバ6の個々のデッキに空気を均等に分配するのに役立つ。このプロセスでは、空気はまず、複数のノズルボックス7(図1には、そのうちの1つだけが例示的に示されている)に圧入され、そこから空気は、ホールノズル70(図1には、数個のホールノズル70だけが例示的に示されている)を介して、乾燥される石膏ボード8又は他のボードの上に垂直方向に吹き付けられる。これらのホールノズルは、分かりやすくするために乾燥チャンバ6の上部乾燥レベルだけに示されているが、ノズルボックスの上面又は底面に配置されている。ボード8は、例えば、支持ローラなどの支持部材(ここには示されていない)上に置かれ、搬送装置(これもここでは詳細は説明しない)によって、視野平面に対して垂直の方向に運ばれる。
【0027】
幅全体にわたる空気の均一な分配を確保するために、ノズルボックス7は、空気が流れる方向にテーパー状になるように構成される。ノズルボックス7からホールノズル70を介して流出する空気は次に、ボード8の上及び下を流れ、真空チャンバ9へと流れる。空気の一部(これはつまり、本質的には、燃焼ガス、外気、及び乾燥作用によって生成される水蒸気に対応する)が、排気口を介して流出する。気流の循環路が燃焼器1で完了する。圧力チャンバ5、乾燥チャンバ6、及び真空チャンバの上方にある部分は天井ユニット11であり、これはオーバーヘッドユニットとも呼ばれる。
【0028】
天井ユニット11に配置されたファン4a、4bは、互いに隣り合って、燃焼器1から離れて配置されており、且つ仕切り40で互いに分離されている。両方のファン4a、4bはそれぞれ、渦巻型ハウジング41で包囲されている。両方のファン4a、4bは、仕切り40と、天井ユニット11の外壁42又は43との間の領域に偏心して配置されることが好ましい。これらのファンは、仕切り40よりも外壁42、43の近くに取り付けられる。このように、流体力学に関する理由で、圧力チャンバ5への乾燥空気のより均一な供給が実現されることが示された。
【0029】
ファン4a及び4bから出る空気の横方向羽根車吹き出し口と、圧力チャンバ5の上方にある天井ユニット11の壁50との間の距離dに対する、それぞれのファン4a、4bの外羽根車径の比率は、3.5よりも大きい。
【0030】
燃焼器から出る乾燥空気をファン4a、4bの下側に誘導するために、空気誘導形状12及び壁13が設けられる。
図1
図2