(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ウエブ、ウエブの巻出し装置及びウエブの巻出し装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B65H 19/18 20060101AFI20230711BHJP
B65H 16/06 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B65H19/18
B65H16/06 A
(21)【出願番号】P 2017203858
(22)【出願日】2017-10-20
【審査請求日】2020-08-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 行良
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】古屋野 浩志
【審判官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-59993(JP,A)
【文献】特開平1-220668(JP,A)
【文献】特開2013-256347(JP,A)
【文献】特開2010-116261(JP,A)
【文献】特開2012-76153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H16/00-16/10
B65H19/00-19/30
B65H21/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旧ウエブを巻回した第1巻芯を、巻出し方向に回転自在に支持する左右一対の第1腕部と、
新ウエブを巻回した第2巻芯を、巻出し方向に回転自在に支持する左右一対の第2腕部と、
前記第1巻芯から
搬送速度Vで巻き出される前記旧ウエブと、前記第2巻芯から
搬送速度Vで巻き出される前記新ウエブの外周面にある先端部を押圧ロールで押圧して重ねた後に前記旧ウエブのみを
走行速度v1で走行するカッター刃で切断する切断装置と、
制御部と、
を有し、
前記第2巻芯に満巻に巻回された前記新ウエブの前記先端部の幅方向に沿って第1接着部が形成され、
前記新ウエブの前記先端部における前記第1接着部から所定間隔離れた前記新ウエブの前記外周面に第2接着部が前記幅方向に対し
傾斜角θ°で傾斜して形成され
るものであって、傾斜角θ°=arctan(V/v1)であり、
前記制御部は、
前記新ウエブの前記第1接着部に前記旧ウエブを前記押圧ロールで押圧して、前記旧ウエブと前記新ウエブ
の前記第1接着部とを接着し、
前記第1接着部を接着した後、前記旧ウエブと前記新ウエブとを前記押圧ロールで押圧したままで、前記新ウエブの前記第2接着部に、前記旧ウエブの切断端が接着できように前記旧ウエブの前記幅方向に対し
傾斜角θ°で傾斜して前記カッター刃を走行させ切断し、
前記新ウエブの前記第2接着部に、切断され残った前記旧ウエブの三角状のテールを前記押圧ロールで押圧して前記新ウエブに接着する、
ウエブの巻出し装置。
【請求項2】
前記第2接着部が、幅方向に沿って所定間隔毎に不連続に形成されている、
請求項1に記載のウエブの巻出し装置。
【請求項3】
前記第2接着部が、幅方向に沿って連続して形成されている、
請求項1に記載のウエブの巻出し装置。
【請求項4】
前記第2接着部が、接着テープである、
請求項1に記載のウエブの巻出し装置。
【請求項5】
前記第2接着部が、接着剤である、
請求項1に記載のウエブの巻出し装置。
【請求項6】
前記第1接着部が、接着テープである、
請求項1に記載のウエブの巻出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブ、ウエブの巻出し装置及びウエブの巻出し装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺状のウエブが、巻出し装置の巻芯にロール状に巻付けられ、ウエブがこの巻芯から巻き出された後に、塗工装置によって塗工液を塗工されたり、熱処理装置で熱処理されたりする。
【0003】
この巻出し装置において、古い巻芯からウエブ(以下、「旧ウエブ」という)が全て巻き出される前に、新しい巻芯に巻き付けられているウエブ(以下、「新ウエブ」という)の始端部を、旧ウエブの終端部に両面接着テープで接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-163487号公報
【文献】特開2013-256347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような旧ウエブと新ウエブとを接続した場合に、旧ウエブの終端部は、両面接着テープの位置と一致していないため、旧ウエブ側にしっぽ状に延びた「テール」と呼ばれる余分な部分が発生する。このテールは、塗工装置において塗工液が付着したり、地面に接触し異物を巻き込んだりするという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、旧ウエブと新ウエブを接続した場合に、テールが発生しないウエブ、ウエブの巻出し装置及びウエブの巻出し装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、旧ウエブを巻回した第1巻芯を、巻出し方向に回転自在に支持する左右一対の第1腕部と、新ウエブを巻回した第2巻芯を、巻出し方向に回転自在に支持する左右一対の第2腕部と、前記第1巻芯から搬送速度Vで巻き出される前記旧ウエブと、前記第2巻芯から搬送速度Vで巻き出される前記新ウエブの外周面にある先端部を押圧ロールで押圧して重ねた後に前記旧ウエブのみを走行速度v1で走行するカッター刃で切断する切断装置と、制御部と、を有し、前記第2巻芯に満巻に巻回された前記新ウエブの前記先端部の幅方向に沿って第1接着部が形成され、前記新ウエブの前記先端部における前記第1接着部から所定間隔離れた前記新ウエブの前記外周面に第2接着部が前記幅方向に対し傾斜角θ°で傾斜して形成されるものであって、傾斜角θ°=arctan(V/v1)であり、前記制御部は、前記新ウエブの前記第1接着部に前記旧ウエブを前記押圧ロールで押圧して、前記旧ウエブと前記新ウエブの前記第1接着部とを接着し、前記第1接着部を接着した後、前記旧ウエブと前記新ウエブとを前記押圧ロールで押圧したままで、前記新ウエブの前記第2接着部に、前記旧ウエブの切断端が接着できように前記旧ウエブの前記幅方向に対し傾斜角θ°で傾斜して前記カッター刃を走行させ切断し、前記新ウエブの前記第2接着部に、切断され残った前記旧ウエブの三角状のテールを前記押圧ロールで押圧して前記新ウエブに接着する、ウエブの巻出し装置である。
【発明の効果】
【0010】
上記発明によれば、新ウエブの第1接着部に旧ウエブが接着され、旧ウエブのテールは、第2接着部に接着されるため、ぶら下がった状態のテールが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1の巻出し装置の説明図である。
【
図2】旧ウエブを切断しようとしている状態の斜視図である。
【
図4】旧ウエブと新ウエブを接続した状態の平面図である。
【
図6】実施形態2における第2巻芯に新ウエブを巻回した状態の正面図である。
【
図7】旧ウエブに新ウエブを接続した状態の平面図である。
【
図8】実施形態3における第2巻芯に新ウエブを巻回した状態の正面図である。
【
図9】旧ウエブに新ウエブを接続した状態の平面図である。
【
図10】実施形態3の変更例における第2巻芯に新ウエブを巻回した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態のウエブWとその巻出し装置10について図面を参照して説明する。
【実施形態1】
【0013】
以下、実施形態1のウエブWと巻出し装置10について
図1~
図5を参照して説明する。長尺状のウエブWとしては、例えば、フィルム、金属箔、布、紙などである。
【0014】
(1)巻出し装置10の構成
巻出し装置10の構成について
図1を参照して説明する。まず、円環状の第1巻芯1には、古いウエブ(以下、「旧ウエブ」という)W1が下巻きに巻回されている。円環状の第2巻芯2には、新しいウエブ(以下、「新ウエブ」という)W2がロール状に下巻きに巻回されている。
【0015】
巻出し装置10は、水平な床に載置される基台12を有している。基台12には、第1フレーム14と、第2フレーム16が並んで立設されている。
【0016】
第1フレーム14の上部には、主回転軸18が水平に設けられている。主回転軸18からは左右一対の第1腕部20と、左右一対の第2腕部22が突出している。第1腕部20と第2腕部22とは180°離れた位置に設けられている。また、主回転軸18からは、左右一対の第1補助腕部24と左右一対の第2補助腕部26が突出している。第1補助腕部24と第2補助腕部26とは、180°離れた位置に配され、かつ、第1腕部20と第2腕部22とは45°離れた位置に設けられている。
【0017】
左右一対の第1腕部20には、上記した第1巻芯1が回転自在に水平に装着される。また、左右一対の第2腕部22には、第2巻芯2が回転自在に水平に装着される。
【0018】
左右一対の第1補助腕部24には、第1案内ロール28が回転自在に設けられている。左右一対の第2補助腕部26には、第2案内ロール30が回転自在に設けられている。そして、第1フレーム14と第2フレーム16の間が、巻芯からの「巻出し位置」であり、その反対の位置が「待機位置」となる。
【0019】
第2フレーム16には、切断装置32が設けられている。切断装置32は、移動体34を有し、移動体34の長手方向の基部近傍には、移動軸36が設けられ、
図1に示すように移動体34の先端部が第1巻芯1や第2巻芯2の巻出し位置に近づくように回転する。移動体34の移動軸36近傍には、重り38が設けられ、移動体34の長手方向の部分と回転バランスを維持している。
【0020】
移動体34の先端部には、押圧ロール40と第3案内ロール42が、並んで配されている。押圧ロール40と第3案内ロール42の間には、カッター走行部44が配され、切断装置32の先端部に固定されている。カッター走行部44には、ロッドレスシリンダにより移動するカッター刃46が設けられている。カッター刃46は、
図1において紙面の垂直方向に移動する。
【0021】
第2フレーム16であって、移動軸36の下方には第4案内ロール48が設けられている。また、移動軸36の側方であって第1フレーム14とは反対側の位置に第5案内ロール50が設けられている。
【0022】
巻出し装置10は、コンピュータよりなる制御部52が設けられている。
【0023】
(2)巻出し装置10の電気的構成
巻出し装置10の電気的構成について
図5のブロック図を参照して説明する。制御部52には、主回転軸18を回転させるモータ54、第1巻芯1を回転させる第1モータ56、第2巻芯2を回転させる第2モータ58、切断装置32の移動体34を、移動軸36を中心に回転させるエアーシリンダ60、カッター走行部44に設けられ、カッター刃46を走行させるロッドレスシリンダ62が接続されている。
【0024】
(3)新ウエブW2の状態
次に、第2巻芯2にロール状に満巻で巻回された新ウエブW2について
図3を参照して説明する。
【0025】
第2巻芯2には、新ウエブW2が下巻き、
図1において時計回りの方向にロール状に巻回されている。新ウエブW2の先端部が、ロール状の新ウエブW2の外周面に露出している。この先端部は、第2巻芯2の軸方向と平行に切断されている。
【0026】
新ウエブW2の先端部の外周面には、第1接着部である第1両面接着テープ64が幅方向に貼り付けられている。
【0027】
また、先端部の外周面の近傍には、第2接着部である第2両面接着テープ66が複数貼り付けられている。第2両面接着テープ66は、長方形であり、幅方向とはθ°傾斜して設けられ、所定間隔毎に複数枚設けられている。この傾斜角θ°は、新ウエブW2及び旧ウエブW1の搬送速度をV、カッター走行部44のカッター刃46の走行速度をv1とした場合に、
θ=arctan(V/v1)
となる。
【0028】
(4)巻出し装置10の制御方法
次に、巻出し装置10の制御方法について説明する。
【0029】
第1巻芯1が満巻であり、旧ウエブW1が巻出されている状態では、第1腕部20と第2腕部22が水平状態にあり、第1腕部20の先端に設けられている第1巻芯1が、巻出し位置にある。第1巻芯1から巻き出された旧ウエブW1は、第4案内ロール48、第5案内ロール50に案内されて塗工装置などに搬送される。なお、旧ウエブW1も巻出される前の満巻の状態では、新ウエブW2と同様に第1両面接着テープ64と第2両面接着テープ66が旧ウエブW1の先端部に設けられている。一方、第2腕部22には、上記で説明した新ウエブW2が満巻で巻回された第2巻芯2が装着されている。制御部52が、第1巻芯1に巻回されている旧ウエブW1の巻回が少なくなってくると、制御部52は、次のような制御を巻出し装置10に行う。
【0030】
第1工程において、制御部52は、第1巻芯1から旧ウエブW1を巻き出しつつ、主回転軸18を
図1において反時計回りの方向に回転させ待機位置に回転させる。一方、制御部52は、第2腕部22に装着されている第2巻芯2を、同様に反時計回りの方向に回転させ、待機位置から巻出し位置に回転させる。
【0031】
第2工程において、
図1に示すように、制御部52は、第1巻芯1を待機位置の近傍まで回転させ、第2巻芯2を巻出し位置の近傍まで回転させると、第1巻芯1から巻き出されている旧ウエブW1は、第2案内ロール30、第4案内ロール48、第5案内ロール50を経て塗工装置などに搬送される。
【0032】
第3工程において、制御部52は、切断装置32の移動体34を、移動軸36を中心に回転させ、第2案内ロール30から搬送されている旧ウエブW1を回転している満巻の新ウエブW2の外周面に押圧する。
図2に示すように、このとき押圧する位置は、新ウエブW2の第1両面接着テープ64の位置に押圧する。これによって、旧ウエブW1と新ウエブW2が第1両面接着テープ64で幅方向に接続される。
【0033】
第4工程において、旧ウエブW1は、
図2に示すように、切断装置32の押圧ロール40と第3案内ロール42に架け渡されて搬送されているため、制御部52は、この位置で、カッター走行部44のカッター刃46を旧ウエブW1の幅方向に沿って移動させ、旧ウエブW1のみを切断する。この場合に、旧ウエブW1は搬送されているため、カッター刃46が幅方向に移動しても、
図2に示すように幅方向に対しθ°傾斜して切断される。そして完全に切断されると、第1両面接着テープ64の位置から斜めに切断された旧ウエブW1の位置までが三角状のテール3となる。
【0034】
第5工程において、三角状のテール3は、押圧ロール40によって回転している新ウエブW2の外周面に押圧される。このとき、新ウエブW2の外周面には傾斜角θ°で第2両面接着テープ66が複数設けられているため、テール3が外周面に完全に接着される(
図4参照)。これにより、旧ウエブW1の三角状のテール3が新ウエブW2と一体になり、従来のように、しっぽ状にテール3が垂れ下がらない。
【0035】
(5)効果
以上により本実施形態によれば、旧ウエブW1と新ウエブW2は第1両面接着テープ64によって接続され、旧ウエブW1のテール3は、第2両面接着テープ66によって新ウエブW2に接着されるため、新ウエブW2からしっぽ状にテール3が垂れ下がらない。
【実施形態2】
【0036】
次に、実施形態2の新ウエブW2について
図6と
図7を参照して説明する。実施形態1では、第2接着部である第2両面接着テープ66は、長方形の両面接着テープを所定間隔毎に接着したが、本実施形態ではこれに代えて
図6に示すように斜めに一直線に第2両面接着テープ68を貼り付ける。
【0037】
本実施形態であっても、
図6に示すように旧ウエブW1のテール3が、新ウエブW2に完全に接着される。
【実施形態3】
【0038】
次に、実施形態3の新ウエブW2について
図8と
図9を参照して説明する。実施形態1と実施形態2の巻出し装置は、切断装置32のカッター走行部44が、旧ウエブW1の搬送と共に、カッター刃46を幅方向に移動させて旧ウエブW1を回転していたので、傾斜角θ°でテール3が形成されていた。
【0039】
これに代えて本実施形態では、切断装置32の移動体34の先端に取り付けられている旧ウエブW1を切断する装置が、幅方向に一度に(同時に)旧ウエブW1を切断する場合について説明する。この場合には、切断装置32は、旧ウエブW1を切断すると
図9に示すように幅方向と平行に切断部分が形成される。そのため、新ウエブW2の外周面には、第2両面接着テープ70を、第1両面接着テープ64と平行に、かつ、所定間隔毎に接着する。
【0040】
本実施形態であっても、幅方向と平行に切断された旧ウエブW1のテール3が新ウエブW2に完全に接着され、ぶら下がったしっぽ状とならない。
【0041】
なお、本実施形態であっても
図10に示すように、第2両面接着テープ70を所定間隔毎でなく、幅方向に沿って連続したものであってもよい。
【変更例】
【0042】
上記実施形態では、第1接着部及び第2接着部は、両面接着テープで形成したが、これに代えて第1接着部及び第2接着部を糊などの接着剤で形成してもよい。
【0043】
上記実施形態では、巻芯にウエブWを下巻きに巻回したが、上巻きで巻回している場合であっても、同様に適用できる。
【0044】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
W1・・・旧ウエブ、W2・・・新ウエブ、1・・・第1巻芯、2・・・第2巻芯、3・・・テール、10・・・巻出し装置、32・・・切断装置、44・・・カッター走行部、46・・・カッター刃、52・・・制御部、64・・・第1両面接着テープ、66・・・第2両面接着テープ