IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヒラノテクシードの特許一覧

<>
  • 特許-熱処理装置 図1
  • 特許-熱処理装置 図2
  • 特許-熱処理装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 9/14 20060101AFI20230711BHJP
   F26B 13/10 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B05C9/14
F26B13/10 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019113981
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2021000578
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】横山 賀規
(72)【発明者】
【氏名】中村 行良
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-276283(JP,A)
【文献】特開2016-168589(JP,A)
【文献】特開2008-249817(JP,A)
【文献】特開2012-229841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00ー21/00
F26B 1/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理室と、
前記熱処理室内において、塗工液が塗工されたウエブの搬送路に沿って設けられ、前記ウエブに熱風を吹き出すノズルと、
前記熱処理室内に水、又は水蒸気を放出する放出手段と、
制御手段と、
前記熱処理室内の湿度を測定する湿度計を有し、
前記制御手段は、
前記ノズルから熱風を吹き出し前記熱処理室の内部を一定の温度に上昇させ、
前記放出手段から水、又は水蒸気を放出を開始し、
前記湿度計が検出した湿度が設定湿度に到達すると放出を停止し、
前記ウエブを前記熱処理室の内部に搬入し、前記ウエブに塗工された塗工液の熱処理を開始する、
熱処理装置。
【請求項2】
前記放出手段は、前記搬送路の前部、又は、中央部に設けられている、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記放出手段は、前記搬送路より上方に設けられている、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記放出手段は、前記ウエブの幅方向に沿って複数設けられている、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記放出手段は、前記ノズルに前記熱風を供給するダクト内に設けられている、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記熱処理室が少なくともn個(但し、n>1である)設けられ、
前記ウエブは第1の前記熱処理室から順番に第nの前記熱処理室まで順番に搬送され、
n個の前記熱処理室に前記放出手段がそれぞれ設けられている、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記放出手段は、水、又は水蒸気を放出する噴霧器である、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記放出手段に水道管、又はタンクから水を供給する、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記塗工液は、水系溶剤を含む、
請求項1に記載の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺状のウエブに塗工液が塗工され、その塗工液を乾燥させるために、ウエブを熱処理装置の熱処理室内を走行させ、ノズルから熱風を吹き付け、塗工液を乾燥させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-3089275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような熱処理装置において、ウエブの塗工液を乾燥させる場合、熱処理室内部が乾燥しているとウエブの塗工液に過乾燥が発生し、塗工部分にひび割れやウエブが撓んだりするという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、ウエブを熱処理する場合に過乾燥にならない熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱処理室と、前記熱処理室内において、塗工液が塗工されたウエブの搬送路に沿って設けられ、前記ウエブに熱風を吹き出すノズルと、前記熱処理室内に水、又は水蒸気を放出する放出手段と、制御手段と、前記熱処理室内の湿度を測定する湿度計を有し、前記制御手段は、前記ノズルから熱風を吹き出し前記熱処理室の内部を一定の温度に上昇させ、前記放出手段から水、又は水蒸気を放出を開始し、前記湿度計が検出した湿度が設定湿度に到達すると放出を停止し、前記ウエブを前記熱処理室の内部に搬入し、前記ウエブに塗工された塗工液の熱処理を開始する、熱処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱処理室内に水や水蒸気を放出するため、その内部が乾燥せず、ウエブが過乾燥にならない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態を示す熱処理装置の側面から見た縦断面図である。
図2】上ノズルと下ノズルの拡大縦断図である。
図3】噴霧器に水を供給する系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態である熱処理装置1について図1図3を参照して説明する。熱処理装置1は、走行するウエブWに塗工された塗工液を、熱風を吹き付けて乾燥させるものであり、ウエブWとしては長尺状のフィルム、布帛、金属箔、金属網、紙などである。
【0010】
(1)熱処理装置1
熱処理装置1について図1図2を参照して説明する。熱処理装置1は、その内部において、断熱材よりなる周壁に取り囲まれた熱処理室2を有する。また、熱処理室2の前面にウエブWの搬入口3が形成され、後面にウエブWの搬出口4が形成されている。搬入口3から入ったウエブWは熱処理室2の内部の水平な搬送路を走行し、搬出口4から搬出される。
【0011】
熱処理室2の天井面には外部から空気を取り込んで送風する送風機5と、この送風された空気をヒータや熱媒体で加熱する加熱装置6が設けられている。
【0012】
加熱装置6で加熱された空気は、熱処理室2内部にある縦方向の共通供給ダクト7に送られる。共通供給ダクト7の上部には横方向の上供給ダクト8が設けられ、熱処理室内における搬送路の上方に設けられた上ダクト16に接続されている。また、共通供給ダクト7の下部には横方向の下供給ダクト9が接続されている。この下供給ダクト9は、熱処理室2内における搬送路の下方に設けられた下ダクト30に接続されている。
【0013】
熱処理室2の左側面、又は右側面の搬入口3の近傍には、上排気口12と下排気口14が設けられている。上排気口12と下排気口14は、後から説明する上ノズル18と下ノズル36から吹き出された熱風を排気するものであり、上排気口12と下排気口14から排気された熱風は、不図示の循環ダクトを通じて送風機5の供給側に供給される。
【0014】
熱処理室2内における搬送路の上方に設けられた上ダクト16は、ウエブWの全幅よりやや大きい幅寸法を有し、熱処理室2の内部を前後方向に延びている。
【0015】
上ダクト16の下面に設けられた上ノズル18は、搬送路に沿って所定間隔毎に複数設けられている。上ノズル18は、上ダクト16のほぼ全幅に設けられており、上ダクト16から熱風が供給されるように上連通口20が形成されている。
【0016】
上ノズル18の上連通口20を通過し上ノズル18内部に供給された熱風は、図2に示すように、上連通口20に対向し水平に保持された上パンチングプレート22を通って整流処理がなされる。そして、上パンチングプレート22に対向した幅方向に延びる分離部24によって前方と後方に向きが分けられる。前方と後方に向きが変えられた熱風はいずれも、水平状態に保持された下パンチングプレート26を通った後、スリット状の吹き出し口28からウエブWに向けて斜め方向に噴射される。
【0017】
熱処理室2内における搬送路の下方に設けられた下ダクト30は、ウエブWの全幅よりやや大きい幅寸法を有し、熱処理室2の内部を前後方向に延びている。
【0018】
下ダクト30の上面に設けられた下ノズル36は、搬送路に沿って所定間隔毎に複数、かつ、上ノズル18とは千鳥状に設けられている。下ノズル36は、下ダクト30のほぼ全幅に設けられており、下ダクト30から熱風が供給されるように下連通口32が形成されている。下ノズル36には、熱風を前後方向に分離する分離部38が設けられている。この分離部38と下ノズル36の前面との間には前板40が配され、その間に熱風を下から上に案内する通路が形成されている。そして分離部38と前板40の先端部にはスリット状の前吹き出し口42が形成され、熱風を前方にほぼ水平に吹き出す。また分離部38と下ノズル36の後面との間には後板44が配され、その間に熱風を下から上に案内する通路が形成されている。そして分離部38と後板44の先端部にはスリット状の後吹き出し口46が形成され、熱風を後方にほぼ水平に吹き出す。
【0019】
分離部38の内部には、ロール48が左右方向に沿って配されている。このロール48の回転軸は水平で、かつ、左右方向に配されている。
【0020】
熱処理室2の天井面であって、搬入口3の近傍である搬送路の前部には、1個の噴霧器50が設けられ、下向きに水を噴霧する。また、搬入口3の近傍にある熱処理室2の側面には、湿度センサ52が取り付けられている。
【0021】
(2)湿度を保持するための系統
熱処理室2の湿度を保持するための系統図について図3を参照して説明する。
【0022】
噴霧器50の水供給側には電磁弁54が設けられ、この電磁弁54のON/OFFにり噴霧器50に水を供給したり、停止する。電磁弁54の水供給側には圧力計56を有したレギュレータ58が配され、噴霧器50に供給する水の量を調整している。この調整量は圧力計56の圧力によって測定する。
【0023】
レギュレータ58の水供給側にはボールバルブ60が設けられ、このボールバルブ60の水供給側には例えば水道管などが接続されている。このボールバルブ60は手動によって開閉して、水を基本的に供給するか停止させる。
【0024】
熱処理室2の制御部10は、送風機5、加熱装置6が接続されると共に、電磁弁54と湿度センサ52が接続されている。
【0025】
(3)熱処理装置1の動作状態
次に、熱処理装置1の動作状態について説明する。
【0026】
まず、熱処理装置1で熱処理を行う場合には、塗工液が塗工されたウエブWを搬入口3から搬出口4に通紙する。この塗工液には水系溶剤が含まれているものとする。
【0027】
次に、制御部10が、送風機5と加熱装置6を動作させて、熱処理室2内部を一定の温度に上昇させる。ウエブWは、熱処理室2内部に搬入されると、上ノズル18から熱風が吹き出され塗工液が乾燥する。また、ウエブWは、ロール48上を走行し、下ノズル36からも熱風が吹き出され、ウエブWの下面からも乾燥を行う。
【0028】
次に、制御部10は、レギュレータ58から一定の量で供給される水を噴霧器50に供給するために電磁弁54をONする。これによって、噴霧器50から、熱処理室2内に噴霧される。
【0029】
次に、制御部10は、湿度センサ52が検出した湿度が設定湿度になるまで噴霧器50で噴霧を続け、設定湿度(例えば80%)に到達すると電磁弁54をOFFして噴霧を停止する。このときから、ウエブWに塗工された塗工液の熱処理の本稼働を開始する。このように設定湿度まで熱処理室2内が加湿されると、塗工液が過乾燥にならず、ひび割れたり、ウエブWが幅方向に撓んだりしない。特に、塗工液が水系溶剤を用いる塗工液であっても、塗工開始直後は熱処理が行われていないため、塗工液から蒸発する水の量が少なく湿度が低い状態で過乾燥が生じ易い。そのため、この塗工開始のときに噴霧器50で噴霧を行い、加湿を行うことにより、熱処理開始直後でもウエブWが過乾燥にならない。
【0030】
なお、熱処理が一定時間行われると、ウエブWの塗工液から蒸発した溶剤である水によって、熱処理室2内は一定に加湿されるため、ウエブWは過乾燥にならない。
【0031】
(4)効果
本実施形態によれば、噴霧器50で設定湿度まで加湿するため、熱処理を開始した直後であってもウエブWの塗工液が過乾燥にならず、ひび割れたりウエブWが撓んだりしない。
【0032】
(5)変更例
上記実施形態では、噴霧器50は、1個であったが、これに代えて熱処理室2の幅方向に2個、3個、又は4個以上設けて、さらに万遍なく加湿してもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、熱処理室2は、1個だけであったが、n個の熱処理室2を連続して連結し、ウエブが第1の熱処理室から順番に第nの熱処理室まで順番に搬送される場合には、各熱処理室2にそれぞれ噴霧器50を設け、それぞれの熱処理室2内を加湿してもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、上ノズル18と下ノズル36が設けられていたが、これに代えて上ノズル18だけ、又は下ノズル36だけでもよい。さらに、下ノズル36にロール48を設けない構造であってもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、噴霧器50から水を噴霧したがこれに代えて、加熱した水蒸気を噴霧してもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、水道管をボールバルブ60に接続して水を供給したが、これに代えて水を溜めたタンクから供給してもよい。この場合にはタンクから水を供給するポンプを制御部10でON/OFFすることにより水の供給を制御する。
【0037】
また、上記実施形態では、熱処理室2の天井面に設けたが、これに代えて共通供給ダクト7、上供給ダクト8、下供給ダクト9、上ダクト16、又は下ダクト30内部に噴霧器50を設け、上ノズル18と下ノズル36から吹き出す熱風に水分を含ませてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、水を放出する装置は噴霧器50であったが、これに限らずシャワー装置や他の方法で水を放出する手段であってもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、ウエブWの搬送路は水平であったが、これに限らずやや傾斜していてもよい。
【0040】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1・・・熱処理装置、2・・・熱処理室、3・・・搬入口、4・・・搬出口、10・・・制御部、18・・・上ノズル、36・・・下ノズル、50・・・噴霧器、52・・・湿度センサ
図1
図2
図3