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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】シャリ玉入りパック容器の製造装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20230711BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A23L7/10 G
A23L7/10 F
B65D85/50 140
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022209237
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2022116894の分割
【原出願日】2022-07-22
【審査請求日】2022-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598060981
【氏名又は名称】エースシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】佐古 圭弘
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-22286(JP,A)
【文献】特開2005-178868(JP,A)
【文献】特開2019-180829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/10
B65D 85/50
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
握り寿司用のシャリ玉が収容されたシャリ玉入りパック容器の製造装置であって、
シャリ玉一個分の大きさに相当する収納凹部が複数個区画形成される容器本体を搬送装置の搬送面上に供給する容器供給装置と、
洗米及び洗米後の米を、前記搬送面上に供給される前記容器本体における前記各収納凹部内に供給する洗米・米供給装置と、
前記搬送面上に供給される前記容器本体における前記各収納凹部内に水を供給する水供給装置と、
前記搬送面上に配置され米及び水が供給された前記容器本体を、水蒸気によって加熱し前記各収納凹部内の米を炊き上げる炊飯室と、
炊き上げられた米に対して調味酢を添加する調味酢供給装置と、
前記各収納凹部の上部をシール密封するシール装置とを備えることを特徴とするシャリ玉入りパック容器の製造装置。
【請求項2】
前記シール装置は、65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境でシール密閉が実施されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシャリ玉入りパック容器の製造装置。
【請求項3】
前記調味酢供給装置は、65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境で調味酢の添加が実施されるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャリ玉入りパック容器の製造装置。
【請求項4】
前記炊飯室の少なくとも一部、前記調味酢供給装置、及び、前記シール装置を覆うカバー体を更に備えており、前記カバー体内の温度が65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境となるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシャリ玉入りパック容器の製造装置。
【請求項5】
前記炊飯室において前記各収納凹部内で炊き上げられた米塊の高さが、前記各収納凹部の上方開口位置と略面一となるように、前記洗米・米供給装置において前記各収納凹部内に供給される米の量が設定されており、かつ、前記水供給装置において前記各収納凹部内に供給される水の量が設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャリ玉入りパック容器の製造装置。
【請求項6】
前記容器本体は、複数の前記収納凹部と、前記各収納凹部の上端に配置され前記各収納凹部を接続すると共にシール部材が貼着されるフランジ部とを備えており、
前記各収納凹部は、底面部と側壁部とを備え、
前記側壁部は、互いに対向する一対の側壁を二組備えており、
前記各一対の側壁は、前記収納凹部の前記底面部側から上端側に向かうに従い互いに離間するように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャリ玉入りパック容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャリ玉入りパック容器の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
握り寿司は日本人の嗜好に合った食品で、職人が握る寿司屋以外にも回転寿司や宅配専門店などがあり、寿司専門店の形態は消費者の需要にあわせて多様化している。また専門店以外にもファミリーレストランや居酒屋などの外食産業やスーパーやコンビニエンスストアなどの中食産業でも需要が伸びている。また、家庭内においても、握り寿司を自ら作り食される場合も増えてきている。
【0003】
しかしながら、シャリ玉を人の手で握るには長い経験と高度な技術を必要とするため、一部を除く専門店や外食産業、中食産業ではコストを削減するためにシャリ玉製造機により大量生産されたシャリ玉を仕入れ、店舗等でネタをあわせて仕上げる握り寿司の製造方法が確立している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-304822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように大量生産されるシャリ玉は、シャリ玉入りパック容器として流通される場合が多い。シャリ玉入りパック容器は、例えば、炊飯装置によって大量の米を炊飯し、炊きあがった米に調味酢を添加したのち、シャリ玉製造機によってシャリ玉を形成して、このシャリ玉をシャリ玉一個分の大きさに相当する収納凹部が複数個区画形成される容器本体の各収納凹部内に収容し、収納凹部の上部開口部分をシール密閉した後、加熱殺菌装置を用いて殺菌して製造される。あるいは、炊きあがった米に調味酢を添加し、シャリ玉一個分の重さに計量分割し、シャリ玉一個分の大きさに相当する収納凹部が複数個区画形成される容器本体の各収納凹部内に充填し、収納凹部の上部開口部分をシール密閉した後、加熱殺菌装置を用いて殺菌して製造される。
【0006】
このような製造方法は、最初に大量の米を炊き上げる必要があるため、いわゆる食品ロスの問題が発生するという問題がある。また、炊きあがった米からシャリ玉を形成することや、シャリ玉1個分の重さに計量分割することが必要であり、生産効率が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、効率よく製造することができ、また、食品ロスを抑制することができるシャリ玉入りパック容器の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、握り寿司用のシャリ玉が収容されたシャリ玉入りパック容器の製造装置であって、シャリ玉一個分の大きさに相当する収納凹部が複数個区画形成される容器本体を搬送装置の搬送面上に供給する容器供給装置と、洗米及び洗米後の米を、前記搬送面上に供給される前記容器本体における前記各収納凹部内に供給する洗米・米供給装置と、前記搬送面上に供給される前記容器本体における前記各収納凹部内に水を供給する水供給装置と、前記搬送面上に配置され米及び水が供給された前記容器本体を、水蒸気によって加熱し前記各収納凹部内の米を炊き上げる炊飯室と、炊き上げられた米に対して調味酢を添加する調味酢供給装置と、前記各収納凹部の上部をシール密封するシール装置とを備えることを特徴とするシャリ玉入りパック容器の製造装置により達成される。
【0009】
また、上記シャリ玉入りパック容器の製造装置に関し、前記シール装置は、65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境でシール密閉が実施されるように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記調味酢供給装置は、65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境で調味酢の添加が実施されるように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記炊飯室の少なくとも一部、前記調味酢供給装置、及び、前記シール装置を覆うカバー体を更に備えており、前記カバー体内の温度が65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境となるように構成されることが好ましい。
【0012】
また、前記炊飯室において前記各収納凹部内で炊き上げられた米塊の高さが、前記各収納凹部の上方開口位置と略面一となるように、前記洗米・米供給装置において前記各収納凹部内に供給される米の量が設定されており、かつ、前記水供給装置において前記各収納凹部内に供給される水の量が設定されていることが好ましい。
【0013】
また、前記容器本体は、複数の前記収納凹部と、前記各収納凹部の上端に配置され前記各収納凹部を接続すると共にシール部材が貼着されるフランジ部とを備えており、前記各収納凹部は、底面部と側壁部とを備え、前記側壁部は、互いに対向する一対の側壁を二組備えており、前記各一対の側壁は、前記収納凹部の前記底面部側から上端側に向かうに従い互いに離間するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、効率よく製造することができ、また、食品ロスを抑制することができるシャリ玉入りパック容器の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るシャリ玉入りパック容器の製造方法を説明するためのブロック図である。
図2】(a)は、本発明のシャリ玉入りパック容器の製造方法において好適に使用される容器本体の平面図であり、(b)は(a)における矢視A方向から見た側面図である。
図3】(a)は、図2(a)における矢視B方向から見た側面図であり、(b)は図2(a)におけるC-C断面に関する要部拡大図である。
図4】本発明に係るシャリ玉入りパック容器の製造方法を実施するための装置の一例を示す模式図である。
図5】(a)~(d)は、本発明の効果を説明するための説明図である。
図6】本発明の効果を説明するための説明図である。
図7】本発明に係るシャリ玉入りパック容器の製造方法を実施するための装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るシャリ玉入りパック容器の製造方法について添付図面を参照して説明する。本発明に係るシャリ玉入りパック容器の製造方法は、図1のブロック図に示すように、供給ステップS1と、炊き上げステップS2と、調味酢添加ステップS3と、密封ステップS4とを備えている。
【0017】
供給ステップS1は、シャリ玉一個分の大きさに相当する収納凹部2が複数個区画形成される容器本体1の各収納凹部2内に、所定量の洗米した米及び水を供給する工程である。なお、供給ステップS1において供給される米は、洗米後の米に限定されず、無洗米であってもよい。
【0018】
容器本体1は、米と水とを収容した状態で加熱することにより米飯を炊飯可能な容器であり、例えば、合成樹脂シートを用いて、プレス成形や射出成形、真空成形等により作製される。この容器本体1は、可撓性を備えるように構成されることが好ましい。合成樹脂シートとしては、例えば、非発泡ポリスチレン、発砲ポリスチレン、非発泡ポリプロピレン、発砲ポリプロピレン、非発泡ポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可撓性プラスチックを適正な硬度と強靭性を有するようにシート状に形成したものを用いることができる。
【0019】
また、容器本体1は、シャリ玉一個分の大きさに相当する収納凹部2が形成される形態であれば如何様な形態を採用してもよい。例えば、図2(a)の平面図、その矢視A方向から見た側面図である図2(b)や、図2(a)における矢視B方向から見た側面図である図3(a)や、図2(a)のC-C断面に関する要部拡大図である図3(b)に示すように、一の方向に沿って並んで配列される複数の収納凹部2と、各収納凹部2の上端に配置され各収納凹部2を接続すると共にシール部材が貼着されるフランジ部3とを備えるような形態として構成することができる。
【0020】
より具体的には、シャリ玉一個分の大きさに相当する収納凹部2を有するシャリ玉容器部10が、シャリ玉の短手方向に沿って所定間隔をあけて複数配列されており(図2(a)においては、6個配列されており)、各シャリ玉容器部10の上端(収納凹部2)を水平方向に接続するフランジ部3が形成されている。フランジ部3の上面は、面一となるように形成されており、当該フランジ部3の上面にシール部材が貼着できるように構成されている。隣接する各シャリ玉容器部10間には、人の指が挿入可能な隙間が形成されて構成されている。また、各シャリ玉容器部10は、底面部11と側壁部12とを備えている。底面部11及び側壁部12の厚みは、同じ寸法として構成すること好ましく、例えば、0.5mm以上2mm以下の範囲に設定することが好ましい。側壁部12は、互いに対向する一対の側壁121を二組備えており、各一対の側壁121は、収納凹部2の底面部11側から上端側に向かうに従い互いに離間するように構成される。つまり、各シャリ玉容器部10の内側に着目した場合、底面から上部開口部に向かうに従い、水平断面の面積が徐々に大きくなっていくように構成されている。また、底面部11と側壁部12との接続近傍部分は、滑らかに湾曲する湾曲部によって構成されている。また、一対の側壁121の各側壁121外側面を指で把持して、指同士を近接する方向に押圧することにより、シャリ玉容器部10は変形できるように構成されている。
【0021】
収納凹部2は、上述のように、シャリ玉一個分の大きさに相当する凹部として構成されるが、より具体的には、例えば、収納凹部2の上部開口が、幅:22mm~25mm、長さ:50mm~60mm程度の寸法、収納凹部2の底部が、幅:17mm~20mm、長さ:45mm50mm程度の寸法として構成されることが好ましい。また、収納凹部2の深さが、20mm~25mm程度の寸法として構成されることが好ましい。
【0022】
また、収納凹部2の底面部11に、図2(a)や図3(b)に示すように、粗面部15を形成するようにしてシャリ玉容器部10を構成してもよい。粗面部15としては、底面部11の内側面から上部開口側に向けて突出し、所定間隔をあけて配置される複数の微小な凸部により構成することができる。各凸部は、底面部11の略全域に亘って形成されることが好ましい。また、各凸部の配列は特に限定されず、格子状、千鳥状、ランダム状等に配列することができる。このような粗面部15を設けることにより、収納凹部2からのシャリ玉を取り出す際の剥離性をよくすることができる。
【0023】
供給ステップS1において各収納凹部2に供給される米や水の量は、収納凹部2の大きさによって変動するものではあるが、後述の炊き上げステップS2によって各収納凹部2内で炊き上げられた米塊の高さが、各収納凹部2の上方開口位置よりもわずかに下方側、あるいは、わずかに上方側に位置するような米及び水の量に設定されることが好ましい。例えば、上部開口が、幅:24mm、長さ:55mm、深さ:24mmとして構成される収納凹部2の場合、米(洗米後の米)を8g、水を8g供給するように設定される。ここで、炊き上げられた米塊の高さが、各収納凹部2の上方開口位置よりもわずかに下方側に位置するとは、炊き上げられた米塊の高さが、収納凹部2の上方開口面を超えておらず、該上方開口面に対して、-2mm~0mmの範囲内にあることを意味する。また、各収納凹部2の上方開口位置よりもわずかに上方側に位置するとは、炊き上げられた米塊の少なくとも一部分の高さが、収納凹部2の上方開口面を超えており、該上方開口面に対して、0mm~5mmの範囲内にあることを意味する。
【0024】
炊き上げステップS2は、各収納凹部2に米及び水が供給された容器本体1を水蒸気によって加熱し炊き上げる工程である。水蒸気は100℃前後の蒸気であっても、また100℃以上の過熱水蒸気であっても構わない。この炊き上げステップS2における加熱条件としては、例えば、97℃~105℃で15分間~30分間、好ましくは100~102℃で20分~25分間の条件を挙げることができる。なお、過熱水蒸気とは、飽和水蒸気とは異なり、飽和水蒸気の温度(1気圧では100℃、1気圧以外の気圧では、その気圧での沸点)以上に過熱された水蒸気を意味する。過熱水蒸気は、飽和水蒸気をヒータ等の加熱装置によって再加熱することにより形成することができるが、その形成方法は、どのような方法であってもよい。
【0025】
また、炊き上げステップS2において炊き上げられた米の炊き増え率は、2.3以上2.6以下であることが好ましい。なお、炊き増え率とは、生米の重量に対する炊飯の後の米飯の重量の比率を意味する。つまり、炊飯前の生米の重量を1としたときの、炊き上がったご飯の重量比を示すものである。
【0026】
調味酢添加ステップS3は、炊き上げられた米に対して調味酢を添加する工程である。また、調味酢には、ショ糖や食塩等の調味料を添加してもよい。これにより、シャリ玉の食味を調整することが可能となる。調味酢の添加方法は特に限定されないが、例えば、収納凹部2内で炊きあげられた米に対して、上方からノズルを介して調味酢を添加したり、或いは、炊き上げられた米が収容される収納凹部2の上方から、散布装置を用いて調味酢を散布することにより行うことができる。調味酢の添加量は、シャリ玉の食味を崩さず、また、シャリ玉の鮮度を良好に保持できる量であれば限定されるものではないが、例えば、炊き上げられた米に対して重量比で、10%~20%程度の範囲に設定することが好ましい。
【0027】
密封ステップS4は、炊き上げられ、調味酢が添加された米を収容する収納凹部2の上部をシール部材によってシール密封する工程である。シール部材としては、可撓性を有するプラスチックフィルムを用いることが好ましい。この密封工程については、従来から知られている各種密封方法を採用することができるが、殺菌処理がなされたプラスチックフィルムを収納凹部2(容器本体1)上部開口に貼付または熱融着して密封することが好ましい。なお、プラスチックフィルムとしては、ガスバリア性を有するものを使用することが好ましい。
【0028】
本発明に係るシャリ玉入りパック容器の製造方法は、例えば、図4の模式図に示す製造装置を用いて実施することができる。この製造装置は、容器本体1を供給する容器供給装置91と、ベルトコンベア等の搬送装置92と、米の洗米及び洗米後の米を容器本体1の各収納凹部2に供給するための洗米・米供給装置93と、水を各収納凹部2に供給する水供給装置94と、炊飯室95と、炊飯室95を通過し炊きあがった米に対して調味酢を添加する調味酢供給装置96と、シール装置97とを備えており、上述の供給ステップS1、炊き上げステップS2、調味酢添加ステップS3、および密封ステップS4を連続的に行うことができるように構成される。また、搬送装置92は、炊飯室95内及びシール装置97内を通過するように構成されており、調味酢供給装置96は、搬送装置92の上方側に配置されており、容器本体1が有する収納凹部2に対して調味酢を添加できるように構成されている。なお、無洗米を使用してシャリ玉入りパック容器を製造する場合には、洗米・米供給装置93の機能として洗米機能を省略した装置を使用することができる。
【0029】
まず、容器供給装置91の作用により、シャリ玉一個分の大きさに相当する収納凹部2を複数備える容器本体1を一個ずつ搬送装置92の搬送面上に供給する。次いで、洗米・米供給装置93を介して洗米された所定量の米を、搬送面上に供給された各容器本体1における各収納凹部2内に供給するとともに、水供給装置94を介して所定量の水を搬送面上に供給された各容器本体1における各収納凹部2内に供給する(供給ステップS1)。
【0030】
洗米後の米と水とを収容した各容器本体1は、搬送装置92によって順次炊飯室95内に導かれ、当該炊飯室95にて所定時間、例えば、過熱水蒸気によって加熱されることにより、炊飯される(炊き上げステップS2)。なお、炊飯室95には、図示しない過熱水蒸気発生装置等から供給される過熱水蒸気等が供給される。
【0031】
炊飯室95での炊き上げが完了した後、容器本体1は、調味酢供給装置96の直下まで搬送され、当該位置で調味酢が収納凹部2内の炊き上げられた米に添加される(調味酢添加ステップS3)。なお、図4においては、ノズル961を介して各収納凹部2内に調味酢が添加される構成を示している。各収納凹部2内に添加された調味酢は、炊きあげられた米(米塊)の米同士の隙間を下方側に流れていき、米塊全体に浸透する。
【0032】
調味酢が添加された後、容器本体1は、シール装置97に搬送され、収納凹部2(容器本体1)の上部開口にシール部材を被せて塞いで熱溶着し、収納凹部2(容器本体1)は密封され(密封ステップS4)、シャリ玉入りパック容器が完成する。
【0033】
このようにして製造されたシャリ玉入りパック容器は、ユーザーサイドにおいて、容器本体1からシール部材を剥がしたのち、容器本体1(収納凹部2)の上部開口を下側に向けてシャリ玉容器部10の底を押圧する、或いは、一対の側壁121の各側壁121外側面を指で把持して、指同士を近接する方向に押圧することにより、収納凹部2内からシャリ玉を落下させて、まな板やトレイ、お皿等に移し替え、シャリ玉の上に寿司ねた(例えば、鮪、海老、鯛、鮭、平目、烏賊、蛸、卵焼等)を載置することにより、お寿司を提供、或いは、喫食することができる。
【0034】
本発明に係るシャリ玉入りパック容器の製造方法は、シャリ玉一個分の大きさに相当する収納凹部2が複数個区画形成される容器本体1の各収納凹部2内に米(生米)及び水を供給し、その後、米の炊き上げ、調味酢の添加、シール部材による容器本体1上部の開口密閉を行うように構成されているため、極めて効率よく、握り寿司用のシャリ玉が収容されたシャリ玉入りパック容器を製造することが可能となる。また、従来のように最初に大量の米を炊き上げる必要がなく、例えば、受注に応じた量だけシャリ玉入りパック容器を製造することができるため、いわゆる食品ロスの問題も解消される。また、従来のように、シャリ玉製造機へ炊きあがったご飯を入れたり、計量分割して収納凹部に入れる等の工程が無く、炊きあがり後そのまま酢(静菌効果がある酸性)を入れ即シールすることから、衛生的なシャリ玉を作ることができ、その結果、消費期限(賞味期限)を長くすることが可能となる。また、本方法によれば、常温での保存性に優れ、長持ちするシャリ玉を得ることができ、更に、保存料等の添加物を入れずに衛生性や保存性を改善することができるため、おいしいシャリ玉を低コストで製造でき、かつ、食品ロスを減じることが可能となる。更に、調味酢が添加されているため、冷凍保存した後に解凍して復元しても良好な品質を維持することが可能であり、その結果、より一層食品ロスを減じることができる。
【0035】
ここで、炊き上げステップS2において炊かれる米は、図5(a)~図5(c)に示すように、炊かれる時間経過とともに水を吸収し、収納凹部2内で膨らんでいくことになるが、収納凹部2の側壁部12が存在するため、側壁部12方向に向かっての膨張は一対の側壁121によって規制される。これにより、炊きあげられた米(米塊)は、その幅方向に沿う方向や長さ方向に沿う方向に沿って、押し固められた状態となる。同様に、収納凹部2の底面部11方向に向かっての膨張は、底面部11によって規制され、これによって、炊きあげられた米(米塊)の中央部分から見て底面側の米は、上下方向に押し固められた状態となる。また、図5(d)に示すように、容器本体1のフランジ部3上に貼着されるシール部材によって、炊きあげられた米(米塊)の上方部分が下方に押圧されることにより、炊きあげられた米(米塊)は、上下方向にも押し固められた状態となる。このように、本発明に係るシャリ玉入りパック容器の製造方法によって形成されるシャリ玉は、米同士がしっかりと密着し、シャリ玉を手に取った際に、半分に折れてしまったり、米粒がぽろぽろと零れ落ちるような状態にはならず、手でしっかりと握ったシャリ玉と同等なシャリ玉が得られる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態に係るシャリ玉入りパック容器の製造方法について説明したが、その具体的構成は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態において、密封ステップS4は、65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境で実施されるように構成すること、より好ましくは、80℃以上100℃以下の雰囲気温度環境で実施されるように構成することが好ましい。ここで、上述の65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境とは、少なくとも収納凹部2に収容される炊きあげられた米塊(シャリ玉)を含む容器本体1の周りの温度が、65℃以上100℃以下の雰囲気温度になっていればよいという概念である。このような雰囲気温度環境下で密封ステップS4を行うことにより、食中毒細菌の増殖を抑制することができ、長期間鮮度を保つことが可能となる。
【0037】
また、65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境下で密封ステップS4を行った場合、密封ステップS4完了後、時間経過とともに収納凹部2内の温度が、65℃以上100℃以下の温度範囲から、低下していくことになるが、この際、収納凹部2内の水蒸気が水滴に変化し、密閉された収納凹部2内の圧力が低下する。これにより、収納凹部2の上部開口を閉塞するシート部材7は、図6に示すように、収納凹部2の内部に収容される米塊(シャリ玉)を押圧するように引き込まれることになり、米塊(シャリ玉)に対して上下方向の押圧力が付与されることになる。なお、各収納凹部2内で炊き上げられた米塊の高さが、各収納凹部2の上方開口位置よりもわずかに下方側に位置するような場合、上方開口位置よりもわずかに上方側に位置する場合に比べて、収納凹部2の上部開口を閉塞するシート部材7と、収納凹部2に収納されるシャリ玉との間に多くの空気層が形成されることになるが、密封ステップS4完了後の温度低下に伴う空気層の収縮率は大きいため、シート部材7は、収納凹部2の内部に収容される米塊(シャリ玉)を押圧するように引き込まれ、米塊(シャリ玉)に対して上下方向の押圧力が十分に付与されることになる。また、シート部材7の変形によって押圧される米塊(シャリ玉)は、側壁部12側にも移動しようとするが、側壁部12の存在によってその移動が規制され、これにより、米塊は、その幅方向に沿う方向や長さ方向に沿う方向に沿って、より一層押し固められた状態となり、シャリ玉全体として、米同士がより一層しっかりと密着し、シャリ玉を手に取った際に、半分に折れてしまったり、米粒がぽろぽろと零れ落ちるような事態をより確実に抑制することが可能となる。
【0038】
また、調味酢添加ステップS3は、65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境で実施されること、より好ましくは、80℃以上100℃以下の雰囲気温度環境で実施されるように構成することが好ましい。ここで、上述の65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境とは、少なくとも収納凹部2に収容される炊きあげられた米塊(シャリ玉)を含む容器本体1の周りの温度が、65℃以上100℃以下の雰囲気温度になっていればよいという概念である。このような雰囲気温度環境下で調味酢添加ステップS3を行うことにより、食中毒細菌の増殖を抑制することができ、より一層、長期間に亘って鮮度を保つことが可能となる。
【0039】
また、65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境で調味酢添加ステップS3や密封ステップS4を実施する場合、炊き上げステップS2が終了した容器本体1の周囲の温度が65℃未満になる前に連続的に実施することが好ましい。また、例えば、図7の模式図に示すように、炊飯室95,調味酢供給装置96およびシール装置97を覆うようなカバー体98を更に設け、当該カバー体98内の温度が65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境となるように構成して、調味酢添加ステップS3や密封ステップS4を実施することが好ましい。図7(a)においては、炊飯室95,調味酢供給装置96およびシール装置97の全てをカバー体98で覆うように構成されており、図7(b)においては、炊飯室95の一部分(搬送装置92下流側部分),調味酢供給装置96およびシール装置97をカバー体98で覆うように構成されている。このようなカバー体98を設ける場合、炊飯室95で使用される水蒸気の一部をカバー体98の内部に放出することにより、カバー体98の内部温度を効率よく65℃以上100℃以下の雰囲気温度環境を形成することができる。炊飯室95,調味酢供給装置96およびシール装置97を覆うようなカバー体98を設けることにより、炊飯からシール部材による密閉までの間に、収納凹部2内に食中毒細菌が混入することを防止することができ、より一層確実に、長期間に亘ってシャリ玉の鮮度を保つことが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
S1 供給ステップ
S2 炊き上げステップ
S3 調味酢添加ステップ
S4 密封ステップ
1 容器本体
2 収納凹部
3 フランジ部
7 シール部材
10 シャリ玉容器部
11 底面部
12 側壁部
121 側壁
15 粗面部
91 容器供給装置
92 搬送装置
93 洗米・米供給装置
94 水供給装置
95 炊飯室
96 調味酢供給装置
97 シール装置
98 カバー体
【要約】
【課題】効率よく製造することができ、また、食品ロスを抑制することができるシャリ玉入りパック容器の製造装置を提供する。
【解決手段】握り寿司用のシャリ玉が収容されたシャリ玉入りパック容器の製造装置であって、シャリ玉一個分の大きさに相当する収納凹部が複数個区画形成される容器本体を搬送装置の搬送面上に供給する容器供給装置と、洗米及び洗米後の米を、前記搬送面上に供給される前記容器本体における前記各収納凹部内に供給する洗米・米供給装置と、前記搬送面上に供給される前記容器本体における前記各収納凹部内に水を供給する水供給装置と、前記搬送面上に配置され米及び水が供給された前記容器本体を、水蒸気によって加熱し前記各収納凹部内の米を炊き上げる炊飯室と、炊き上げられた米に対して調味酢を添加する調味酢供給装置と、前記各収納凹部の上部をシール密封するシール装置とを備えることを特徴とするシャリ玉入りパック容器の製造装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7