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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】誘電体組成物及びこれを含む電子部品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/468 20060101AFI20230711BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20230711BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20230711BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C04B35/468
H01B3/12 303
H01G4/12 270
H01G4/30 515
H01G4/30 512
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018165640
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2019172559
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0035868
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、ソン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン キュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ドュ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン コー
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ハン キュ
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-232629(JP,A)
【文献】特開2007-031273(JP,A)
【文献】特開2009-073721(JP,A)
【文献】特開2001-089231(JP,A)
【文献】特開2013-136501(JP,A)
【文献】国際公開第2006/104026(WO,A1)
【文献】化学便覧 基礎編,改訂五版,公益社団法人日本化学会 ,2004年02月20日,奥付、II-887頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
H01B 3/12
H01G 4/12
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材と、
遷移金属であり、周期律表の第5族に該当し、BaTiOのTi-siteに固溶され、配位数(coordinate number)が6であるとき、配位数が6であるTi4+よりも小さいイオン半径を有する元素が、前記母材100モルに対して0.550.8モル含む第1副成分と、
前記母材100モルに対してSiイオン又は酸化物を0.6~3.5モル含む第2副成分と、
第3副成分と、
第4副成分と、を含み
前記第3副成分が、Ca、Sr、及びBaを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン、酸化物、炭化物いずれかを含み、
前記第4副成分がMgのイオン、酸化物、炭化物いずれかを含み、
第2副成分の合計含有量をB、第3副成分の合計含有量をC、及び第4副成分の合計含有量をDと規定するとき、下記関係式1及び関係式2をともに満たす、誘電体組成物。
関係式1)0.70×B≦C+D≦1.50×B
関係式2)0.20≦D/(C+D)≦0.80
【請求項2】
前記第1副成分が、Vのイオン、酸化物、炭化物いずれかを含む、請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
前記母材100モルに対して、Mn、Cr、Fe、Mo、及びCoを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン、酸化物、炭化物いずれかを0.1~1.0モル含む第5副成分をさらに含む、請求項1または2に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
前記母材100モルに対して、Y、Sm、Eu、Dy、Ho、及びYbを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン、酸化物、炭化物いずれかを0.2~4.0モル含む第6副成分をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項5】
前記母材100モルに対して、Li、K、B、及びAlのうち少なくとも一つ以上の酸化物を0.1~0.5モル(mole)さらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項6】
複数の誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体に前記内部電極と接続されるように配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材と、遷移金属であり、周期律表の第5族に該当し、BaTiOのTi-siteに固溶され、配位数(coordinate number)が6であるとき、配位数が6であるTi4+よりも小さいイオン半径を有する元素が、前記母材100モルに対して0.550.8モル含む第1副成分と、前記母材100モルに対してSiイオン又は酸化物を0.6~3.5モル含む第2副成分と、第3副成分と、第4副成分と、を含み
前記第3副成分が、Ca、Sr、及びBaを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン、酸化物、炭化物いずれかを含み、
前記第4副成分がMgのイオン、酸化物、炭化物いずれかを含み、
第2副成分の合計含有量をB、第3副成分の合計含有量をC、及び第4副成分の合計含有量をDと規定するとき、下記関係式1及び関係式2をともに満たす、電子部品。
関係式1)0.70×B≦C+D≦1.50×B
関係式2)0.20≦D/(C+D)≦0.80
【請求項7】
前記母材100モルに対して、Mn、Cr、Fe、及びCoを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン、酸化物、炭化物いずれかを0.1~1.0モル含む第5副成分をさらに含む、請求項6に記載の電子部品。
【請求項8】
前記母材100モルに対して、Y、Sm、Eu、Dy、Ho、及びYbを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン、酸化物、炭化物いずれかを0.2~4.0モル含む第6副成分をさらに含む、請求項6または7に記載の電子部品。
【請求項9】
前記母材100モルに対して、Li、K、B、及びAlのうち少なくとも一つ以上の酸化物を0.1~0.5モル(mole)さらに含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層の厚さが0.2μm以上である、請求項6から9のいずれか一項に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体組成物及びこれを含む電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高容量の積層型キャパシタ(MLCC:multi-layer ceramic capacitor)は、BaTiOを主材料とし、ニッケルを内部電極のベース材料として本体を形成する。
【0003】
かかる本体は、還元雰囲気で焼成しなければならない。ここで、誘電体は、耐還元性を有する必要がある。
【0004】
しかし、酸化物の固有の特性により、還元雰囲気での焼成時に酸化物の内部の酸素が抜け出て酸素空孔(oxygen vacancy)及び電子が発生して、信頼性が劣化し、IR(insulator resistance)が低くなるという問題がある。
【0005】
このような問題を解消するためには、希土類(rare earth)元素、例えば、Dy、Y、及びHoなどを添加することで、酸素空孔の発生を抑制し、酸素空孔の移動度を下げるとともに、遷移元素(transition metal)を添加することで、発生した電子を抑制して誘電体特性を有するようにしている。
【0006】
しかし、より大きい容量を有するようにすべく、積層型キャパシタを薄層化するか、又は使用環境がさらに厳しくなるにつれて、高電圧を用いる場合、上記の方法は効果的でないという問題が依然として存在する。
【0007】
また、上記の方法を用いて希土類元素や遷移元素を添加する場合、誘電率が低下し、場合によっては、温度に応じた容量の変化(TCC、temperature capacitance change)が悪くなってX7R特性を有するようにすることができなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第10-0906079号明細書
【文献】韓国登録特許第10-1646913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高温信頼性及びTCC特性に優れた誘電体組成物及びこれを含む電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、遷移金属であり、周期律表の第5族に該当し、BaTiOのTi-siteに固溶され、配位数(coordinate number)が6であるとき、配位数が6であるTi4+よりも小さいイオン半径を有する元素のうち少なくとも一つ以上の元素が、上記母材粉末100モルに対して0.3~1.2モル含む第1副成分と、上記母材粉末100モルに対してSiイオン又は酸化物を0.6~3.5モル含む第2副成分と、4周期元素又はそれ以上の周期元素のうち少なくとも一つ以上を含む第3副成分と、3周期元素のうち少なくとも一つ以上を含む第4副成分と、を含み、第2副成分の合計含有量をB、第3副成分の合計含有量をC、及び第4副成分の合計含有量をDと規定するとき、下記関係式1及び関係式2をともに満たす誘電体組成物を提供する。
関係式1)0.70×B≦C+D≦1.50×B
関係式2)0.20≦D/(C+D)≦0.80
【0011】
本発明の実施例において、上記第1副成分は、V、Nb、及びTaを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン又は酸化物を含むことができる。
【0012】
本発明の実施例において、上記第3副成分は、Ca、Sr、及びBaを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン又は酸化物を含むことができる。
【0013】
本発明の実施例において、上記第4副成分は、Mgを含むことができる。
【0014】
本発明の実施例において、上記誘電体組成物は、上記母材粉末100モルに対して、Mn、Cr、Fe、及びCoを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン又は酸化物を0.1~1.0モル含む第5副成分をさらに含むことができる。
【0015】
本発明の実施例において、上記誘電体組成物は、上記母材粉末100モルに対して、Y、Sm、Eu、Dy、Ho、Er、及びYbを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン又は酸化物を0.2~4.0モル含む第6副成分をさらに含むことができる。
【0016】
本発明の実施例において、上記誘電体組成物は、上記母材粉末100モルに対して、Li、K、B、及びAlのうち少なくとも一つ以上の酸化物を0.1~0.5モル(mole)さらに含むことができる。
【0017】
本発明の他の側面は、複数の誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体に上記内部電極と接続されるように配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、遷移金属であり、周期律表の第5族に該当し、BaTiOのTi-siteに固溶され、配位数(coordinate number)が6であるとき、配位数が6であるTi4+よりも小さいイオン半径を有する元素のうち少なくとも一つ以上の元素が、上記母材粉末100モルに対して0.3~1.2モル含む第1副成分と、上記母材粉末100モルに対してSiイオン又は酸化物を0.6~3.5モル含む第2副成分と、4周期元素又はそれ以上の周期元素のうち少なくとも一つ以上を含む第3副成分と、3周期元素のうち少なくとも一つ以上を含む第4副成分と、を含み、第2副成分の合計含有量をB、第3副成分の合計含有量をC、及び第4副成分の合計含有量をDと規定するとき、関係式1及び関係式2をともに満たす電子部品を提供する。
【0018】
本発明の一実施例において、上記各誘電体層の厚さは0.2μm以上であればよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施例によると、高信頼性が要求されるX5R、X6S、及びX7R(S)など、様々な温度特性を有する電子部品の組成物として使用することができ、これを電子部品に適用する際に、電子部品の高温信頼性及びTCC特性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態による積層型キャパシタを概略的に示す斜視図である。
図2図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3図1の本体の分離斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0022】
なお、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。
【0023】
さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に反対である記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0024】
本発明の誘電体組成物は誘電体電子部品に用いられることができる。
【0025】
例えば、積層型キャパシタ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、及びチップ抵抗器などに用いられることができる。
【0026】
以下では、誘電体電子部品の一例として、積層型キャパシタについて説明する。
【0027】
図1は本発明の一実施形態による積層型キャパシタを概略的に示す斜視図であり、図2図1のA-A'線に沿った断面図であり、図3図1の本体の分離斜視図である。
【0028】
図1図3を参照すると、本実施例の積層型キャパシタ100は、本体110と、第1及び第2外部電極131、132と、を含む。
【0029】
本体110は、Z方向に積層される複数の誘電体層111、及び誘電体層111を間に挟んでZ方向において交互に配置される複数の第1及び第2内部電極121、122を含むアクティブ領域115と、アクティブ領域115の上下に配置されるカバー112、113と、を含む。
【0030】
かかる本体110は、複数の誘電体層111と、第1及び第2内部電極121、122をZ方向に積層した後、焼成して形成され、形状に特に制限はないが、図示されているように、おおむね六面体形状を有することができる。
【0031】
この際、本体110は、互いに対向するZ方向の第1及び第2面1、2と、第1及び第2面1、2を連結し、互いに対向するX方向の第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2を連結し、第3及び第4面3、4を連結し、且つ互いに対向するY方向の第5及び第6面5、6を有することができる。
【0032】
誘電体層111は、焼結された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0033】
この際、誘電体層111の厚さは、積層型キャパシタ100の容量設計に合わせて任意に変更することができる。
【0034】
また、誘電体層111は、高誘電率を有するセラミック粉末、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系粉末、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系粉末又はチタン酸マグネシウムなどを含むことができ、十分な静電容量を得ることができる限り、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
また、誘電体層111には、上記セラミック粉末とともに、必要に応じて、セラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、及び分散剤などが少なくとも一つ以上添加されることができる。
【0036】
また、本実施例において、焼成後の誘電体層111の厚さは0.2μm以上であればよい。誘電体層111の厚さが0.2μm未満の場合には、一層内に存在する結晶粒の数が過度に少なく、信頼性に悪い影響を及ぼす可能性がある。
【0037】
カバー112、113は、本体110のZ方向のマージンであって、Z方向の両側最外側に配置される。
【0038】
カバー112、113は、内部電極を含まないことを除いては、誘電体層111と同一の材料及び構成を有することができる。
【0039】
また、カバー112、113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を本体110のZ方向の両側最外側にそれぞれ積層して設けることができ、基本的には物理的又は化学的ストレスによる第1及び第2内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たす。
【0040】
第1及び第2内部電極121、122は、異なる極性が印加される電極であって、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んでZ方向において交互に配置される。
【0041】
第1及び第2内部電極121、122の一端は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0042】
この際、第1及び第2内部電極121、122は、その間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁されることができる。
【0043】
また、第1及び第2内部電極121、122に含有される導電材は、特に限定されないが、誘電体層111の構成材料が耐還元性を有さなければならないため、卑金属を用いることができる。
【0044】
かかる卑金属としては、Ni又はNi合金を用いることができる。また、Ni合金としては、Mn、Cr、Co、Sn、及びAlから選択される1種以上の元素とNiを用いることができる。
【0045】
第1及び第2外部電極131、132は、導電性金属を含む導電性ペーストによって形成されることができる。
【0046】
この際、上記導電性金属は、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、金(Au)、又はこれらの合金であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
かかる第1及び第2外部電極131、132は、第1及び第2接続部131a、132aと、第1及び第2バンド部131b、132bと、を含むことができる。
【0048】
第1及び第2接続部131a、132aは、本体110のX方向の両面にそれぞれ配置された部分であり、第1及び第2バンド部131b、132bは、第1及び第2接続部131a、132aから本体110の実装面である下面の一部まで延長するように形成される部分である。
【0049】
この際、第1及び第2バンド部131b、132bは、本体110の上面及びY方向の両面の一部のうち少なくとも一面まで延長するように形成されることができる。これにより、第1及び第2外部電極131、132の固着強度を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、第1及び第2外部電極131、132の第1及び第2バンド部131b、132bが第1及び第2接続部131a、132aから本体110の上面及びY方向の両面の一部まで全部延長されて本体110の両端部をすべて覆うように形成されるように図示して説明しているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0051】
かかる第1及び第2外部電極131、132は、本体110の両端部に形成され、交互に配置された第1及び第2内部電極121、122の露出端面と電気的に連結されることで、キャパシタ回路を構成することができる。
【0052】
上記第1及び第2外部電極131、132に含有される導電材は、特に限定されないが、Ni、Cu、又はこれらの合金を用いることができる。
【0053】
上記積層型キャパシタの本体110を構成する誘電体層111は、耐還元性誘電体組成物を含有することができる。
【0054】
BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、遷移金属であり、周期律表の第5族に該当し、BaTiOのTi-siteに固溶され、配位数(coordinate number)が6であるとき、配位数が6であるTi4+よりも小さいイオン半径を有する元素のうち少なくとも一つ以上の元素が、上記母材粉末100モルに対して0.3~1.2モル含む第1副成分と、上記母材粉末100モルに対して、Siイオン又は酸化物を0.6~3.5モル含む第2副成分と、4周期元素又はそれ以上の周期元素のうち少なくとも一つ以上を含む第3副成分と、3周期元素のうち少なくとも一つ以上を含む第4副成分と、を含み、第2副成分の合計含有量をB、第3副成分の合計含有量をC、及び第4副成分の合計含有量をDと規定するとき、下記関係式1及び関係式2をともに満たす。
関係式1)0.70×B≦C+D≦1.50×B
関係式2)0.20≦D/(C+D)≦0.80
【0055】
上記誘電体組成物は、5価元素としてBaTiOのTi-siteに固溶されることができ、配位数(coordinate number)が6であるとき、配位数が6であるTi4+よりも小さいイオン半径を有する元素を用いることで、従来の誘電体組成物に比べて、より効果的に信頼性の高い劣化を防ぐとともに、TCC特性を改善させることができる。
【0056】
以下、本発明の一実施形態による誘電体組成物の各成分をより具体的に説明する。
【0057】
a)母材粉末
母材粉末は、誘電体の主成分であって、BaTiO(0.995≦m≦1.010)系誘電体粉末を用いることができる。
【0058】
この際、mの値が0.995未満の場合には、還元性雰囲気での焼成で容易に還元され、半導性物質に変わりやすく、粒成長の制御が難しくなるという問題が発生することがあり、mの値が1.010を超えると、焼成温度が上がりすぎるという問題が発生することがある。
【0059】
b)第1副成分
第1副成分は、周期律表上の遷移金属でありながら第5族に該当し、BaTiOのTi-siteに固溶されることができ、配位数(coordinate number)が6であるとき、配位数が6であるTi4+よりも小さいイオン半径を有する元素のうち少なくとも一つ以上の元素が、母材粉末100モル当たり0.3~1.2モル含むことができる。
【0060】
母材粉末100モル(mole)当たりに添加される第1副成分の含有量が0.3モル(mole)未満の場合には、耐還元性及びTCC特性の改善効果が低下するという問題があり、1.2モル(mole)を超えると、常温IRが急激に低下し、焼結温度が上がるという問題点が発生する。
【0061】
この際、上記第1副成分は、V、Nb、及びTaを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン、酸化物、炭化物、水和物のいずれか以上を含むことができる。
【0062】
上記第1副成分は、Ti-siteの固溶を通じて誘電体中にドナー(donor)としての役割を果たして、酸中の空孔の発生を抑制し、より優れたTCC挙動を有するようにする役割を果たす。
【0063】
c)第2副成分
第2副成分は、Siイオン、酸化物、炭化物、水和物のいずれかを、母材粉末100モルに対して0.6~3.5モル含むことができる。
【0064】
添加される第2副成分の含有量が0.6モル(mole)未満の場合には、焼成温度が高くなりDFが高いという問題があり、3.5モル(mole)を超えると、誘電率が低くなり信頼性が再び悪くなるという問題が発生する。
【0065】
かかる第2副成分は、添加される他の元素とともに焼結助剤の役割を果たして焼結を促進させ、第3及び第4副成分の成分含有量に応じて、後述する関係式1及び関係式2を満たすとき、さらに低い温度で焼成できるようにする役割を果たす。
関係式1)0.70×B≦C+D≦1.50×B
関係式2)0.20≦D/(C+D)≦0.80
【0066】
d)第3副成分
第3副成分は、周期律表上の4周期元素又はそれ以上の周期元素のうち少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0067】
この際、上記第3副成分は、Ca、Sr、及びBaを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン、酸化物、炭化物、水和物のいずれかを含むことができる。
【0068】
かかる第3副成分は、第1副成分がB-siteを形成できるようにし、第2副成分とともにさらに低い温度で焼結されるようにする役割を果たして、焼結を促進させる。
【0069】
e)第4副成分
第4副成分は、周期律表上の3周期元素のうち少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0070】
この際、上記第4副成分は、Mgイオン、酸化物、炭化物、水和物のいずれかを含むことができる。Mg酸化物の形態は、特に制限されるものではないが、例えば、MgOやMgCOなどを用いることができる。
【0071】
かかる第4副成分は、第2副成分及び第3副成分とともに低い温度で焼成されるようにする役割を果たす。
【0072】
本実施形態では、第2副成分の合計含有量をB、第3副成分の合計含有量をC、及び第4副成分の合計含有量をDと規定するとき、下記関係式1及び関係式2をともに満たすことができる。
関係式1)0.70×B≦C+D≦1.50×B
関係式2)0.20≦D/(C+D)≦0.80
【0073】
添加される第3副成分及び第4副成分の含有量は、添加される第1副成分及び第2副成分の投与量に応じて異なるが、関係式1において、C+Dが0.70×Bモル未満の場合には、異常粒成長が誘発されて焼結温度及びDFが増加し、信頼性の改善効果がない。例えば、第2副成分の含有量が2.0モルの場合には、C+Dが0.7×B=1.4モル未満であると、異常粒成長が誘発されて焼結温度及びDFが増加し、信頼性の改善効果がない。
【0074】
そして、C+Dが1.50×Bモルを超えると、誘電率が低くなり、焼結温度が高くなるという問題が発生する。
【0075】
また、関係式2において、D/(C+D)の値が0.20未満であるか、又は0.80を超えると、焼成ウィンドウが狭くなるという問題が発生する。
【0076】
f)第5副成分
第5副成分は、本実施形態において、必ずしも必要な成分ではなく、必要に応じて、本実施形態の組成物に選択的に含ませることができる。
【0077】
かかる第5副成分は、耐還元性及び信頼性を付与して還元雰囲気で発生する可能性がある電子の発生を抑制する。
【0078】
この際、第5副成分として、周期律表上の遷移金属であるMn、Cr、Fe、Mo、及びCoを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン、酸化物、炭化物、水和物のいずれかは、母材粉末100モルに対して0.1~1.0モル含むことができる。
【0079】
第5副成分の含有量が0.1モル(mole)未満の場合には、IRが低くなって信頼性が低下し、1.0モル(mole)を超えると、誘電率が低くなって他の元素のように焼成温度が高くなるという問題点が発生する。
【0080】
g)第6副成分
第6副成分は、本実施形態において、必ずしも必要な成分ではなく、必要に応じて、本実施形態の組成物に選択的に含ませることができる。
【0081】
第6副成分は、第1副成分とともに、耐還元性を付与し、酸素空孔の発生と移動を抑制する役割を果たす。
【0082】
この際、第6副成分として希土類元素であるY、Sm、Eu、Dy、Ho、Er、及びYbを含むグループから選択された少なくとも一つ以上のイオン、酸化物、炭化物、水和物のいずれかは、母材粉末100モルに対して0.2~4.0モル含むことができる。
【0083】
第6副成分の含有量が0.2モル(mole)未満の場合には、所望のレベルの信頼性を実現しにくくなり、4.0モル(mole)を超えると、誘電率が低くなって焼成温度が高くなるという問題点が発生する。
【0084】
h)追加の副成分
一方、本発明の誘電体組成物は、必要に応じて、焼成温度の低下などの効果のために、Li、K、B、及びAlのうち少なくとも一つ以上の酸化物を0.1~0.5モル(mole)さらに含むことができる。
【0085】
この際、Li、K、B、及びAlのうち少なくとも一つ以上の酸化物は、上記第5副成分とともに、事前にガラス(Glass)の形態にして添加することができる。
【0086】
本実施形態において、電子部品(積層型キャパシタ)の本体の成分は、以下のような方法で焼成後に確認できる。
【0087】
まず、積層型キャパシタの成分分析のために、積層型キャパシタの外部電極とめっき層を除去した後、試料を粉砕して粉末の形にする。
【0088】
次に、スケールを用いて、適量の試料の重量を秤量する。この際、重量は最大0.1g(100mg)が超えないようにする。
【0089】
次に、秤量された試料をテフロン(登録商標)製の容器に移した後、一定量の酸をとり、ホットプレート(hot plate)で加える。
【0090】
次に、試料の組成及び形態に応じて、酸の種類(硝酸、塩酸、フッ酸)と比率を異ならせて使用し、熱処理時の加熱温度は120℃を超えないようにする。
【0091】
次に、酸により分解された試料を純水で希釈し、ICP分析を行う。この際、ICP装置はPerkinelmer NexION 300を使用することができる。
【0092】
次に、分析された成分からBa及びTiの含有量値に基づいて残りの添加剤の添加含有量(at%)の値を算出する。
【0093】
この方法により、積層型キャパシタに用いられたBaTiOを母材とした積層型キャパシタの追加添加剤の成分含有量を検査することができる。また、相対含有量は、EPMAやEDSなどを分析することで測定することができる。
【0094】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであって、本発明の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【実施例
【0095】
表1及び表2に記載の組成でエタノールとトルエンを溶媒にして分散剤と混合した後、バインダーを混合してセラミックシートを作製する。
【0096】
成形されたセラミックシートにNi電極を印刷して積層し、圧着及び切断して脱バインダーのために仮焼した後、1100~1220℃の間で10℃間隔で還元雰囲気での焼成を行い、誘電定数、85℃/125℃のTCC値、及び高温加速寿命などを評価する。
【0097】
上記組成の評価方法をより詳細に説明すると、原料粉末をジルコニアボールを混合/分散メディアとして使用し、エタノールとトルエン、分散剤、及びバインダーを混合した後、20時間にわたるボールミルを行う。その後、22,000psiで高圧分散機及び100μmの分散室(chamber)を用いて3回分散する。
【0098】
次に、製造されたスラリーを小型ドクターブレード(doctor blade)方式のコータ(coater)を用いて、アクティブシート用の厚さ4.0μmのセラミックシートとカバーシート用の厚さ10~13μmのセラミックシートにそれぞれ形成する。そして、厚さ4.0μmで成形されたセラミックシートにニッケルを用いて内部電極を印刷する。
【0099】
次に、厚さ10~13μmのカバーシートを25層積層した後、内部電極が印刷されたアクティブシートを30層積層し、再びカバーシートを25層積層した後、85℃でISO-PRESSを1時間行って、バー(Bar)を製作する。
【0100】
そして、カッターを用いて、ビアをサイズ3.2×1.6mm(長さ×幅)の積層体に切断し、切断された積層体を仮焼して脱バインダーした後、還元雰囲気(H、1%)において1100~1220℃で約2時間焼成して本体を形成する。
【0101】
次に、ターミネーション工程を行って本体に外部電極を形成し、24時間放置した後、積層型キャパシタを製作し、電気的特性を測定する。
【0102】
[評価]
この際、表1及び表2に記載された特性は、各焼成温度ごとに積層型キャパシタのBDVを測定する際において最も高いBDV値を有する温度であり、破断面をFE-SEMなどを用いて3万倍で観察した際において電極間の誘電体層の気孔(pore)が最も少なく観察される温度である。
【0103】
また、チップの常温静電容量及び誘電損失は、LCRメータ(meter)を用いて1kHz、1Vの条件で測定する。
【0104】
また、温度による静電容量の変化(temperature coefficient of capacitance、TCC)は、LCR meterを用いて1kHz、1Vの条件で-55~125℃の範囲で測定する。
【0105】
高温加速寿命を測定するための高温IR昇圧実験は、150℃で1Vr=10V/μmの条件で30分保持し、電圧ステップを倍数で増加させながら、サンプル40個にIR不良(fail)の有/無に応じて昇圧による寿命を評価する。
【0106】
下記表1及び表2は、誘電体組成物と、この誘電体組成物を用いて作製されたプロトタイプ積層型キャパシタの特性を示したものである。ここで、α及びβは第2副成分の合計含有量をB、第3副成分の合計含有量をC、及び第4副成分の合計含有量をDと規定する際の関係式1及び関係式2の値であって、α=(C+D)/B、β=D/(C+D)を意味する。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
表1及び表2を参照すると、サンプル5の場合には、第1副成分としてVを含んでいるが、含有量が0.2モルと基準値未満であることから、TCCが-22%と基準値を外れる。
【0110】
サンプル8の場合には、第1副成分であるVの含有量が1.40モルと基準値を超えるものであって、高温加速寿命が1Vrと基準値よりも低く示される。
【0111】
サンプル9の場合には、第1副成分であるVの含有量が0.10モルと基準値未満であって、TCCが-18%と基準値を外れる。
【0112】
サンプル12の場合には、第1副成分であるVの含有量が1.30モルと基準値を超え、Nbの含有量が0.10モルと基準値未満であって、高温加速寿命が1Vrと基準値よりも低く示される。
【0113】
サンプル13の場合には、母材粉末のmが基準値未満であって、TCCが-19%と基準値を外れる。
【0114】
サンプル14の場合には、母材粉末のmが基準値を超えるものであって、高温加速寿命が2Vrと基準値よりも低く示される。
【0115】
サンプル15の場合には、第2副成分であるSiの含有量が0.20モルと基準値未満であって、TCCが-38%と基準値を外れ、高温加速寿命が1Vrと基準値よりも低く示される。
【0116】
サンプル18の場合には、第2副成分であるSiの含有量が6.50モルと基準値を超えるものであって、高温加速寿命が2Vrと基準値よりも低く示される。
【0117】
サンプル19の場合には、第2副成分であるSiの含有量が1.80モル、第3副成分であるBaの含有量が0.40モル、第4副成分であるMgの含有量が0.70モルであることから、αの値が0.61と基準値未満であって、高温加速寿命が1Vrと基準値よりも低く示される。
【0118】
サンプル22の場合には、第2副成分であるSiの含有量が1.80モル、第3副成分であるBaの含有量が1.24モル、第4副成分であるMgの含有量が2.21モルであることから、αの値が1.92と基準値を超え、高温加速寿命が2Vrと基準値よりも低く示される。
【0119】
サンプル23の場合には、第2副成分であるSiの含有量が2.50モル、第3副成分であるBaの含有量が0.31モル、第4副成分であるMgの含有量が2.81モルであることから、βの値が0.90と基準値を超え、TCCが-18%と基準値を外れる。
【0120】
サンプル26の場合には、第2副成分であるSiの含有量が2.50モル、第3副成分であるBaの含有量が2.81モル、第4副成分であるMgの含有量が0.31モルであることから、βの値が0.10と基準値未満であって、高温加速寿命が1Vrと基準値よりも低く示される。
【0121】
サンプル30の場合には、第5副成分であるMnの含有量が1.50モルと基準値を超え、高温加速寿命が2Vrと基準値よりも低く示される。
【0122】
サンプル31の場合には、第6副成分であるDyの含有量が0.10モルと基準値未満であり、TCCが-32%と基準値を超え、高温加速寿命が1Vrと基準値よりも低く示される。
【0123】
サンプル34の場合には、第6副成分であるDyの含有量が6.00モルと基準値を超え、高温加速寿命が2Vrと基準値よりも低く示される。
【0124】
したがって、表1及び表2を参照すると、添加される第1副成分の含有量が0.3モル(mole)未満の場合には、耐還元性及びTCC特性の改善効果が低下するという問題があり、1.2モル(mole)を超えると、常温IRが急激に低下し、焼結温度が上がるという問題が発生することを確認できる。
【0125】
また、添加される第2副成分の含有量が0.6モル(mole)未満の場合には、焼成温度が高くなってDFが高くなるという問題があり、3.5モル(mole)を超えると、誘電率が低くなって信頼性が再び悪くなるという問題点が発生することを確認できる。
【0126】
また、添加される第3及び第4副成分の含有量は、添加される第1及び第2副成分の投与量に応じて異なるが、関係式1において、0.70×Bモル(mole)未満の場合には、異常粒成長が誘発されて焼結温度及びDFが増加し、信頼性の改善効果がなく、1.50×Bモル(mole)を超えると、誘電率が低くなって焼結温度が高くなるという問題が発生する可能性があることを確認できる。また、関係式2の値が0.2未満であるか、又は0.8を超えると、焼成ウィンドウが狭くなる傾向を見せる。
【0127】
また、第5副成分の含有量が0.1モル(mole)未満の場合には、IRが低くなって信頼性が悪くなり、1.0モル(mole)を超えると、誘電率が低くなって他の元素のように焼成温度が高くなるという問題が発生することを確認できる。
【0128】
また、第6副成分の含有量が0.2モル(mole)未満の場合には、所望の信頼性を実現することが難しくなり、4.0モル(mole)を超えると、誘電率が低くなって焼成温度が高くなるという問題点を確認できる。
【0129】
一方、焼成温度の低下などの効果のために、0.1~0.5モル(mole)のLi、K、B、及びAlなどの酸化物を副成分としてさらに用いた場合には焼成温度が低下し、Li-K-B-Ba-Siのガラス(glass)化合物を用いた場合にも焼成温度が低下することを確認できる。
【0130】
したがって、本発明の好ましい実施例を満たす範囲で誘電体組成物を製造する場合には、電子部品の高温信頼性及びTCC特性を向上させることができるという効果を期待することができる。
【0131】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0132】
100 積層型キャパシタ
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー
115 アクティブ領域
121、122 第1及び第2内部電極
131、132 第1及び第2外部電極
図1
図2
図3