(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】剥離シート付き両面粘着シートおよび剥離シート付き両面粘着シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230711BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20230711BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20230711BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20230711BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20230711BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/40
C09J133/00
C09J183/04
C09J7/10
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2018142268
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】清水 滋呂
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 信幸
(72)【発明者】
【氏名】錦織 義治
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-017119(JP,A)
【文献】特開2016-199619(JP,A)
【文献】特開2003-177241(JP,A)
【文献】実開平04-114535(JP,U)
【文献】特表2008-512222(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142905(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/103372(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の剥離シート、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層及び第2の剥離シートがこの順に積層した剥離シート付き両面粘着シートであって、
前記第1の粘着剤層がアクリル系粘着剤層であり、前記第2の粘着剤層がシリコーン系粘着剤層であり、
前記第1の粘着剤層はシランカップリング剤を含み、
前記第1の粘着剤層と前記第2の粘着剤層の界面粘着力が
10N/25mm以上であり、
前記第2の粘着剤層は、前記第1の粘着剤層上に直接積層しており、
前記第1の粘着剤層の対ガラス粘着力が、前記第2の粘着剤層の対ガラス粘着力の10~1000倍であり、
前記第2の粘着剤層から前記第2の剥離シートを剥離する際の剥離力が、前記第1の粘着剤層から前記第1の剥離シートを剥離する際の剥離力よりも大きい、剥離シート付き両面粘着シート。
【請求項2】
前記第1の粘着剤層の対ガラス粘着力が1~50N/25mmであり、前記第2の粘着剤層の対ガラス粘着力が0.01~1N/25mmである請求項1に記載の剥離シート付き両面粘着シート。
【請求項3】
前記第1の剥離シートは、シリコーン系剥離剤を含む請求項1又は2に記載の剥離シート付き両面粘着シート。
【請求項4】
前記第2の剥離シートの剥離荷重が70~20000mN/50mmである請求項1~3のいずれか1項に記載の剥離シート付き両面粘着シート。
【請求項5】
第1の剥離シート上に第1の粘着剤層を形成し、第2の剥離シート上に第2の粘着剤層を形成する工程と、
前記第1の粘着剤層と前記第2の粘着剤層を互いに接するように貼合する工程と、を含む剥離シート付き両面粘着シートの製造方法であって、
前記第1の粘着剤層がアクリル系粘着剤層であり、前記第2の粘着剤層がシリコーン系粘着剤層であり、
前記第1の粘着剤層はシランカップリング剤を含み、
前記第1の粘着剤層と前記第2の粘着剤層の界面粘着力が
10N/25mm以上であり、
前記第1の粘着剤層の対ガラス粘着力が、前記第2の粘着剤層の対ガラス粘着力の10~1000倍であり、
前記第2の剥離シートの剥離力が前記第1の剥離シートの剥離力よりも大きい、剥離シート付き両面粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離シート付き両面粘着シートおよび剥離シート付き両面粘着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの表示装置及び入力装置を組み合わせた画像表示装置が広く用いられている。これらの表示装置や入力装置においては、光学部材を貼り合せる用途に両面粘着シートが用いられている。
【0003】
両面粘着シートは異種の被着体を貼り合わせる用途に用いられる場合がある。この場合、両面粘着シートには各被着体の接着特性に応じた最適な粘着力が求められる。例えば、特許文献1および2には、粘着特性の異なる2層以上の粘着剤層を備えた両面粘着シートが開示されている。
【0004】
表示装置や入力装置においては、表示面を保護するためにその表面を保護シートで覆うことが行われている。保護シートは、例えば、粘着剤層を備えたガラスシートから構成されており、保護シートを表示面に貼合することで液晶ディスプレイの割れや傷つきを抑制する。このような保護シートを使用した場合、貼合位置の修正や保護シートの経年劣化による交換のために、保護シートをリワーク(再剥離)させることが必要になる場合がある。例えば、特許文献3には、少なくとも2層の粘着剤層を有しており、表示装置の表示面に対して再剥離可能となるように構成された両面粘着シートが開示されている。特許文献3の実施例では、種類の異なるアクリル系ポリマーから各粘着剤層を形成しており、これにより両面粘着シートの耐久性とリワーク性を高めることが検討されている。なお、特許文献3の両面粘着シートは、表示面とタッチパネルの貼着を目的とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-17725号公報
【文献】特開2011-57883号公報
【文献】特開2004-231723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術における両面粘着シートを被着体から再剥離する場合、リワーク作業時に被着体に粘着剤が残るという問題があった。被着体に粘着剤が残った場合は、溶剤で粘着剤を拭き取ったり、洗浄したりする必要があり、リワーク作業に手間と時間がかかるため問題となる。特に、特別な装置、冶具、薬品を用いることの出来ない一般消費者が貼り合せやリワーク作業を行う保護シートは、表示面から容易にリワークされ得る必要があるため、保護シートの表示面への粘着力を極めて低くする必要がある。一方で、保護シートに用いられている両面粘着シートは、表示面とは反対側の被着対象には強固に密着する必要がある。一般的に、このように相反する粘着特性を有する粘着剤層同士を積層することは困難であるため、微粘着層と強粘着層の間に基材フィルムを設けた両面粘着シートが用いられている。しかし、微粘着層と強粘着層の間に基材フィルムを設けた両面粘着シートは、その厚みが増大する傾向にあり、近年の薄膜化の要求に応えられなかったり、透明性を高いレベルで達成できないという問題があった。
【0007】
このため、本発明者は、微粘着層と強粘着層の間に基材フィルムを設けない両面粘着シートの開発を進めた。しかし、このような両面粘着シートの両表面に剥離シートを設けた場合、微粘着層側の剥離シートが先に剥離するため、強粘着層側の剥離シートを先に剥離することが難しく、例えば、強粘着層側の剥離シートを先に剥離した上で強粘着層側に被着体を貼付し、微粘着層側には剥離シートを残した態様に加工することが困難であった。なお、微粘着層の粘着力を高めることで、微粘着層側の剥離シートの剥離性を抑えることも考えられるが、微粘着層の粘着力を高めた場合、リワーク性の悪化に加えて、微粘着層を被着体に貼着する際にエアー(気泡)を噛み込む場合があり問題となる。
【0008】
そこで本発明は、上記課題を解決するために、両面粘着シートの加工性に優れ、かつ微粘着層側のエアー抜け性が良好な剥離シート付き両面粘着シートを提供することを目的とする。すなわち、本発明は、剥離シートの剥離順が制限されない(強粘着層側の剥離シートを先に剥離可能である)ために加工がしやすい剥離シート付き両面粘着シートであって、微粘着層を被着体に貼着する際にエアーが抜け易いためにエアーの噛み込みを抑制し得る剥離シート付き両面粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、第1の剥離シート、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層及び第2の剥離シートがこの順に積層した剥離シート付き両面粘着シートにおいて、微粘着の第2の粘着剤層から第2の剥離シートを剥離する際の剥離力を、強粘着の第1の粘着剤層から前記第1の剥離シートを剥離する際の剥離力より大きくすることにより、加工性に優れ、かつ微粘着層側のエアー抜け性が良好な剥離シート付き両面粘着シートが得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0010】
[1] 第1の剥離シート、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層及び第2の剥離シートがこの順に積層した剥離シート付き両面粘着シートであって、
第2の粘着剤層は、第1の粘着剤層上に直接積層しており、
第1の粘着剤層の対ガラス粘着力が、第2の粘着剤層の対ガラス粘着力の10~1000倍であり、
第2の粘着剤層から第2の剥離シートを剥離する際の剥離力が、第1の粘着剤層から第1の剥離シートを剥離する際の剥離力よりも大きい、剥離シート付き両面粘着シート。
[2] 第1の粘着剤層と第2の粘着剤層の界面粘着力が1N/25mm以上である[1]に記載の剥離シート付き両面粘着シート。
[3] 第1の粘着剤層の対ガラス粘着力が1~50N/25mmであり、第2の粘着剤層の対ガラス粘着力が0.01~1N/25mmである[1]又は[2]に記載の剥離シート付き両面粘着シート。
[4] 第1の粘着剤層がアクリル系粘着剤層であり、第2の粘着剤層がシリコーン系粘着剤層である[1]~[3]のいずれかに記載の剥離シート付き両面粘着シート。
[5] 第1の剥離シートは、シリコーン系剥離剤を含む[1]~[4]のいずれかに記載の剥離シート付き両面粘着シート。
[6] 第2の剥離シートの剥離荷重が70~20000mN/50mmである[1]~[5]のいずれかに記載の剥離シート付き両面粘着シート。
[7] 第1の剥離シート上に第1の粘着剤層を形成し、第2の剥離シート上に第2の粘着剤層を形成する工程と、
第1の粘着剤層と第2の粘着剤層を互いに接するように貼合する工程と、を含む剥離シート付き両面粘着シートの製造方法であって、
第1の粘着剤層の対ガラス粘着力が、第2の粘着剤層の対ガラス粘着力の10~1000倍であり、
第2の剥離シートの剥離力が第1の剥離シートの剥離力よりも大きい、剥離シート付き両面粘着シートの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加工性に優れ、かつ微粘着層側のエアー抜け性が良好な剥離シート付き両面粘着シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の剥離シート付き両面粘着シートの構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(剥離シート付き両面粘着シート)
本発明は、第1の剥離シート、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層及び第2の剥離シートがこの順に積層した剥離シート付き両面粘着シートに関する。ここで、第2の粘着剤層は、第1の粘着剤層上に直接積層しており、第1の粘着剤層の対ガラス粘着力は、第2の粘着剤層の対ガラス粘着力の10~1000倍である。加えて、第2の粘着剤層から第2の剥離シートを剥離する際の剥離力は、第1の粘着剤層から第1の剥離シートを剥離する際の剥離力よりも大きい。なお、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層から構成される両面粘着シートは、複数の粘着剤層を有するものであるから、両面積層粘着シートと呼ぶこともできる。
【0015】
本発明の剥離シート付き両面粘着シートは、上記構成を有するものであるため、加工性に優れている。ここで、加工性が優れているとは、剥離シートの剥離順が制限されない、すなわち強粘着層側の剥離シートを先に剥離可能であることをいい、このために剥離シート付き両面粘着シートから少なく一方の剥離シートを剥離して各種積層体を製造しやすいことをいう。本発明においては、強粘着である第1の粘着剤層に貼合している第1の剥離シートが先に剥離しやすい状態であるため、第1の粘着剤層側の第1の剥離シートを先に剥離した上で第1の粘着剤層側に被着体を貼付し、第2の粘着剤層側には剥離シートを残した態様に加工することができる。例えば、第1の粘着剤層側の第1の剥離シートを先に剥離した上で第1の粘着剤層側にガラスシートを貼合し、ガラスシート、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層及び第2の剥離シートがこの順に貼合した積層体を容易に製造することができる。このような積層体は、例えば、液晶ディスプレイの表面保護シートとして好ましく用いられる。
【0016】
また、本発明の剥離シート付き両面粘着シートの第2の剥離シートを剥離した後に、第2の粘着剤層を被着体に貼合する際には、第2の粘着剤層と被着体の間にエアー(気泡)を噛み込むことが抑制されている。すなわち、第2の粘着剤層はエアー抜け性に優れており、第2の粘着剤層を被着体に貼着する際、第2の粘着剤層と被着体の界面に気泡が残らない。本発明では、第2の粘着剤層と第2の剥離シートの剥離力を高める(密着性を高める)ために、第2の粘着剤層の粘着力を高めるのではなく、第2の剥離シートの剥離性をコントロールしているため、第2の粘着剤層のエアー抜け性も損なわれていない。すなわち、本発明は、加工性とエアー抜け性といった相反する2つの特性を両立することに成功したものである。
【0017】
図1は、本発明の剥離シート付き両面粘着シートの構成を説明する断面図である。本発明の剥離シート付き両面粘着シート100は、第1の粘着剤層10と、第2の粘着剤層12と、を有し、第1の粘着剤層10側には、第1の剥離シート20が積層されており、第2の粘着剤層12側には第2の剥離シート22が積層されている。
【0018】
本明細書では、第1の粘着剤層10と第2の粘着剤層12を両面粘着シートと呼ぶ。
図1に示されるように両面粘着シート50は、第1の粘着剤層10と第2の粘着剤層12を1層ずつ積層した構成であることが好ましいが、各層を2層以上含むものであってもよい。例えば、
図1において1層構成として示されている第1の粘着剤層10が2層以上の粘着剤層の積層構造からなるものであってもよく、第2の粘着剤層12が2層以上の粘着剤層の積層構造からなるものであってもよい。また、両面粘着シート50は、
図1に示されるように支持体(基材)を有さない両面粘着シートである。このため、両面粘着シート50において第1の粘着剤層10と第2の粘着剤層12は直接接する状態で積層されている。このため、両面粘着シートは必要に応じて薄膜化が可能となる。
【0019】
本発明の剥離シート付き両面粘着シートを構成する第1の粘着剤層の対ガラス粘着力は、第2の粘着剤層の対ガラス粘着力の10倍以上であればよく、50倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。また、第1の粘着剤層の対ガラス粘着力は、第2の粘着剤層の対ガラス粘着力1000倍以下であれよく、600倍以下であればさらに好ましい。このように、第1の粘着剤層は強粘着層であり、第2の粘着剤層は微粘着層であると言える。第1の粘着剤層の対ガラス粘着力と第2の粘着剤層の対ガラス粘着力を上記関係性とすることにより第1の粘着剤層はガラス等の被着体に強固に接着する一方で、第2の粘着剤層を被着体に貼合する際にはエアーの噛み込みを抑制することが容易となる。
【0020】
第1の粘着剤層の対ガラス粘着力は1N/25mm以上であることが好ましく、5N/25mm以上であることがより好ましく、10N/25mm以上であることがさらに好ましい。また、第1の粘着剤層の対ガラス粘着力は、50N/25mm以下であることが好ましい。
【0021】
第2の粘着剤層の対ガラス粘着力は、0.01N/25mm以上であることが好ましい。また、第2の粘着剤層の対ガラス粘着力は、1.5/25mm以下であることが好ましく、0.5N/25mm以下であることがより好ましく、0.2N/25mm以下であることが特に好ましい。
【0022】
なお、両面粘着シートの対ガラス粘着力は、それぞれの粘着剤層の粘着面をソーダガラスに貼着した後、24時間後にJIS Z 0237の方法1に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で測定される値である。
【0023】
本発明の剥離シート付き両面粘着シートにおいて、第2の粘着剤層は、第1の粘着剤層上に直接積層している。第1の粘着剤層と第2の粘着剤層は強固に密着していることが好ましく、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層の界面粘着力は、1N/25mm以上であることが好ましく、5N/25mm以上であることがより好ましく、10N/25mm以上であることがさらに好ましい。なお、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層の界面粘着力の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、100N/25mmであることが好ましい。このように、両面粘着シートにおいて、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層は強固に粘着しており、層間密着性に優れている。第1の粘着剤層と第2の粘着剤層の間の界面粘着力を上記範囲内とすることにより、両面粘着シートを被着体に貼合し、その後に剥離する際に(リワークする際)に第1の粘着剤層と第2の粘着剤層の間で剥離が生じることを抑制することができ、その結果リワーク性を高めることができる。
【0024】
第1の粘着剤層と第2の粘着剤層の界面粘着力は、実施例に記載のとおり界面粘着力測定用サンプルを作製した後に測定することができる。
界面粘着力は実施例に記載のとおり「両面裏打ち基材付き両面粘着シート」を得た24時間後(第2の粘着剤層面と第1の粘着剤層面を貼着後24時間後)に、第2の裏打ち基材をJIS Z 0237の方法1に準じて剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離することで、「第1の粘着剤層/第2の粘着剤層」界面の粘着力測定を行う。
【0025】
上述したように、各粘着剤層の対ガラス粘着力と各粘着剤層間の界面粘着力を上記範囲内に調整することにより、被着体に対して強固な粘着力と優れたリワーク性を兼ね備えた両面粘着シートが得られる。ここで、リワーク性が優れていることは、両面粘着シートを被着体に貼着した後に剥離する際に、両面粘着シートの粘着剤の一部が被着体に残留しないこと、及びリワーク作業中に両面粘着シートが破断しない特性のことをいう。さらに、両面粘着シートの一方の面は被着体に対して強固な粘着力を発揮することができ、特にガラス面に対して強固な粘着力を発揮することができる。このように、本発明の剥離シート付き両面粘着シートから剥離シートを剥離することで得られる両面粘着シートは、強固な粘着力と優れたリワーク性を兼ね備えたものである。
【0026】
さらに、本発明の剥離シート付き両面粘着シートから剥離シートを剥離することで得られる両面粘着シートは、各粘着剤層間に支持体(基材)を有していないため、両面粘着シートは柔軟性を有している。このため、両面粘着シートは優れた凹凸追従性を発揮することができ、凹凸構造(段差構造)を有する被着体にも貼合することができる。凹凸構造(段差構造)に接する層は第1の粘着剤層であってもよく、第2の粘着剤層であってもよい。
【0027】
本発明の剥離シート付き両面粘着シートの全体の厚みは、100μm以上であることが好ましく、150m以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。また、剥離シート付き両面粘着シートの厚みは、1200μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。剥離シート付き両面粘着シートの全体の厚みを上記範囲内とすることにより、剥離シート付き両面粘着シートの加工性を高めることができ、剥離シートの剥離容易性を高めることができる。
【0028】
両面粘着シートの厚みは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。また、両面粘着シートの厚みは、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることがさらに好ましい。両面粘着シートの全体の厚みを上記範囲内とすることにより、強固な粘着力と優れたリワーク性を両立しやすくなる。
【0029】
両面粘着シートにおける第1の粘着剤層の厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。第1の粘着剤層の厚みは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。
また、第2の粘着剤層の厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。また、第2の粘着剤層の厚みは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。
【0030】
本発明においては、第1の粘着剤層の厚み(μm)をPとし、第2の粘着剤層の厚み(μm)をQとした場合、P:Q=1:10~10:1であることが好ましい。P:Qを上記範囲内とすることにより、両面粘着シートの一方の面は被着体に対して強固な粘着力を発揮しつつも、他方の面は優れたリワーク性を発揮し得る両面粘着シートが得られやすくなる。なお、上述したPは、両面粘着シートに第1の粘着剤層が2層以上含まれる場合は、第1の粘着剤層の厚みの合計を表し、上述したQは、両面粘着シートに第2の粘着剤層が2層以上含まれる場合は、第2の粘着剤層の厚みの合計を表す。
【0031】
剥離シート付き両面粘着シートにおける第1の剥離シートの厚みは、5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。第1の剥離シートの厚みは、200μm以下であることが好ましく、130μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
また、第2の剥離シートの厚みは、5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。第2の剥離シートの厚みは、200μm以下であることが好ましく、130μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。第1の剥離シート及び第2の剥離シートの厚みを上記範囲内とすることにより、剥離シート付き両面粘着シートの加工性を高めることができ、剥離シートの剥離容易性を高めることができる。
【0032】
両面粘着シートのヘーズは3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。本明細書においては、両面粘着シートのヘーズは、JIS K 7136に準拠した方法で測定される値のことをいう。ヘーズを測定する際には、両面粘着シートの第1の粘着層面を松浪ガラス社製のスライドガラス(品番:S9112)に貼合してヘーズ値を測定する。具体的には、両面粘着シートを松浪ガラス社製のスライドガラスに貼合した後、貼合時に混入した微細な空気などの影響を排除するために、積層されたサンプルに0.5MPa、40℃の条件で30分間オートクレーブ(加圧脱泡)処理を施す。その後、第2の剥離シートを剥がし、糊面がむき出しの状態で、日本電色工業(株)製のNDH4000を用いて測定する。
【0033】
両面粘着シートの全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。両面粘着シートは、全光線透過率が高く、透明性に優れている点に特徴がある。本明細書においては、両面粘着シートの全光線透過率は、JIS K 7136に準拠した方法で測定される値のことをいう。両面粘着シートの全光線透過率は、上述したヘーズ値の測定方法と同様の方法で測定することができる。
【0034】
<第1の粘着剤層>
本発明の剥離シート付き両面粘着シートは第1の粘着剤層を含む。本発明において、第1の粘着剤層は、上述したような粘着力や剥離力を発揮し得るものであれば特に限定されるものでない。中でも、第1の粘着剤層はアクリル系粘着剤層であることが好ましい。
【0035】
第1の粘着剤層がアクリル系粘着剤層である場合、第1の粘着剤層はアクリル系樹脂を主成分として含む層である。具体的には、第1の粘着剤層におけるアクリル系樹脂の含有量は、第1の粘着剤層の全質量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが一層好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0036】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル重合体をベースポリマーとして含有するアクリル系粘着剤を挙げることができる。アクリル重合体は、非架橋性の(メタ)アクリル酸エステル単位と、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位及び二官能性アクリル系単量体単位から選択される少なくとも一方を含有することが好ましい。ここで、「単量体単位」は重合体を構成する繰り返し単位である。「アクリル単量体」は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタクリロイル基であることを示す。また、非架橋性アクリル単量体は架橋性基を有さないアクリル単量体であり、架橋性アクリル単量体は架橋性基を有する単量体である。架橋性アクリル単量体は、非架橋性アクリル単量体と重合可能なものであればアクリル単量体であっても非アクリル単量体であってもよいが、アクリル単量体であることが好ましい。なお、架橋性基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、グリシジル基等が挙げられる。
【0037】
非架橋性アクリル単量体単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸のカルボキシ基の水素原子を炭化水素基で置換した(メタ)アクリル酸エステル単位が挙げられる。本発明では、アクリル系粘着剤層は、(メタ)アクリル酸エステル単位を含むことが好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。中でも、接着性の点からは、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸メチルを用いることが好ましい。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含むことを意味する。
【0039】
架橋性アクリル単量体単位としては、カルボキシ基含有共重合性単量体単位、ヒドロキシ基含有共重合性単量体単位、アミノ基含有共重合性単量体単位、グリシジル基含有共重合性単量体単位が挙げられる。
カルボキシ基含有共重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グラタコン酸などのα,β-不飽和カルボン酸やその無水物などが挙げられる。
ヒドロキシ基含有共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
アミノ基含有共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、アリルアミドなどが挙げられる。
グリシジル基含有共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0040】
アクリル重合体は、アクリル系ランダム共重合体であることが好ましく、架橋性アクリル単量体と非架橋性アクリル単量体のランダム共重合体あることがより好ましい。より具体的には、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸メチルから選択される少なくとも1種と、アクリル酸のランダム共重合体であることが好ましく、アクリル酸エステル系共重合体であることが好ましい。
【0041】
アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万以上250万以下であることが好ましく、30万以上200万以下であることがより好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算されたものである。
【0042】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件は以下のとおりである。
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Shodex KF801、KF803L、KF806L(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI-2031plus(JASCO製)
ポンプ:RI-2080plus(JASCO製)
流量(流速):0.8ml/min
注入量:10μl
校正曲線:標準ポリスチレンShodex standard ポリスチレン(昭和電工(株)製)Mw=1320~2,500,000迄の10サンプルによる校正曲線を使用した。
【0043】
第1の粘着剤層は、シランカップリング剤を含んでもよい。第1の粘着剤層がシランカップリング剤を含むことにより、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層の界面粘着力をより高めることができる。シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤;等が挙げられる。中でも、シランカップリング剤は、エポキシ基含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0044】
また、シランカップリング剤として、分子内に複数のアルコキシシリル基を有するものを用いることもできる。このようなシランカップリング剤としては、たとえば、信越化学(株)製のX-41-1053、X-41-1059A、X-41-1056、X-41-1805、X-41-1818、X-41-1810、X-40-2651などが挙げられる。
【0045】
シランカップリング剤の含有量は、第1の粘着剤層の全質量に対して、0.03質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.06質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0046】
第1の粘着剤層は、架橋剤を含むものであってもよい。すなわち、第1の粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。例えば、粘着剤組成物に上述したような架橋性アクリル単量体が含まれている場合、架橋剤により架橋性アクリル単量体の架橋反応を促進することができる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物、多官能アクリレートなどの公知の架橋剤の中から、架橋性アクリル重合体が有する架橋性官能基との反応性を考慮して適宜選択できる。架橋の方式は、熱架橋あるいは電離放射線架橋など公知の方法より選択可能である。また、粘着層剤形成後に、さらに架橋度を高めるために23℃の環境下などで養生処理行っても良い。
【0047】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。ジイシアネートは2官能のまま用いてもよいし、アダクト、ヌレート、ビュレットなどの3官能誘導体にして用いても良い。
エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0048】
架橋剤としては1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。第1の粘着剤層を形成する粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、所望とする粘着物性等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、粘着剤組成物に含まれる重合体100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0049】
第1の粘着剤層は、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光重合開始剤、ヒンダードアミン系化合物といった光安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
可塑剤としては、例えば、無官能性アクリル重合体を用いることができる。無官能性アクリル重合体とは、アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位のみからなる重合体、又はアクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位と官能基を有しない非アクリル単量体単位とからなる重合体を意味する。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
金属腐食防止剤としては、ベンゾリアゾール系樹脂を挙げることができる。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。
【0050】
また、第1の粘着剤層の経時劣化を防ぐためには老化防止剤を添加することが好ましい。老化防止剤を添加することで、両面粘着シートの劣化による粘着力低下を防ぐことができる。老化防止剤としては、一般的なフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線防止剤、HALS(ヒンダードアミン系安定剤)などを挙げることができる。
【0051】
第1の粘着剤層を形成する粘着剤組成物は溶剤を含むものであってもよい。溶剤は、粘着剤層を形成する際に蒸散するものであるが、第1の粘着剤層には、残存した溶剤が含まれていてもよい。
【0052】
溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0053】
<第2の粘着剤層>
本発明の剥離シート付き両面粘着シートは第2の粘着剤層を含む。本発明において、第2の粘着剤層は、上述したような粘着力や剥離力を発揮し得るものであれば特に限定されるものでない。第2の粘着層を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が好ましく、中でも、エアー抜け性の良好なシリコーン系粘着剤は特に好ましく用いられる。
【0054】
第2の粘着剤層がシリコーン系粘着剤層である場合、第2の粘着剤層はシリコーン系樹脂(シリコーン系粘着剤)を主成分として含む層である。具体的には、第2の粘着剤層におけるシリコーン系樹脂の含有量は、第2の粘着剤層の全質量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが一層好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0055】
シリコーン系樹脂としては、例えば、ポリシロキサン骨格を有するシリコーン系樹脂を挙げることができる。シリコーン系樹脂としては、付加反応型、縮合反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型等がある。中でも、付加反応型シリコーン系樹脂は、反応性が高く生産性に優れているため、好ましく用いられる。付加反応型シリコーン系樹脂としては、例えば、分子の末端および/または側鎖に、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~10のアルケニル基を2個以上備えたオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0056】
付加反応型シリコーン系樹脂を用いる際には、架橋剤および触媒を併用することが好ましい。架橋剤としては、例えば1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)等が挙げられる。
また、触媒としては、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、ロジウム等の白金属系化合物等が挙げられる。
【0057】
シリコーン系粘着剤としては、市販品を用いることができる。このようなシリコーン系粘着剤としては、例えば、信越化学工業(株)製のKR-3704、X40-3306や東レ・ダウコーニング(株)製のDC7651ADHESIVE、SD7587LPSA、アイカ工業(株)製のSE9500、SE9600などが挙げられる。
【0058】
ウレタン系粘着剤は、主としてポリオールとポリイソシアネートとの反応物からなる粘着剤である。ポリオールは、2つ以上の水酸基を有する公知のポリオールが好ましい。ポリオールは、例えば、ポリアクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。ポリイソシアネートは、公知の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が好ましい。ポリオールとポリイソシアネートとの反応には公知の触媒を使用することができる。触媒は、例えば3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
【0059】
ウレタン系粘着剤の水酸基価は、1~30mgKOH/gが好ましく、10~25mgKOH/gがより好ましい。水酸基価は、ポリオールとポリイソシアネートの配合比率を調整する等公知の方法で調整できる。水酸基価を所定の範囲にすると良好な架橋密度の粘着剤層が得易く、濡れ性がより向上する。
【0060】
ウレタン系粘着剤として、市販品を用いることができる。このようなウレタン系粘着剤としては、トーヨーケム(株)製のSH-101、SH-101M,SH-109などが挙げられる。
【0061】
アクリル系粘着剤としては、例えば、アクリル重合体をベースポリマーとして含有するアクリル系微粘着剤を挙げることができる。アクリル重合体は、非架橋性の(メタ)アクリル酸エステル単位と、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位及び二官能性アクリル系単量体単位から選択される少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0062】
アクリル系粘着剤として、市販品を用いることができる。このようなアクリル系粘着剤としては、DIC(株)製ファインタック CT-3088、トーヨーケム(株)BPS6078TFなどが挙げられる。
【0063】
第2の粘着剤層は、必要に応じて、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物、帯電防止剤、光安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
金属腐食防止剤としては、ベンゾリアゾール系樹脂を挙げることができる。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。
【0064】
また、第2の粘着剤層の経時劣化を防ぐためには老化防止剤を添加することが好ましい。老化防止剤を添加することで、両面粘着シートの劣化による粘着力低下を防ぐことができる。老化防止剤としては、一般的なフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線防止剤、HALS(ヒンダードアミン系安定剤)などを挙げることができる。
【0065】
第2の粘着剤層を形成する粘着剤組成物は溶剤を含むものであってもよい。溶剤は、粘着剤層を形成する際に蒸散するものであるが、第2の粘着剤層には、残存した溶剤が含まれていてもよい。溶剤としては、第1の粘着剤層を形成する粘着剤組成物が含み得る溶剤と同様のものが挙げられる。
【0066】
<第1の剥離シート>
本発明の剥離シート付き両面粘着シートは第1の剥離シートを含む。第1の剥離シートは、剥離シート用基材と、この剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シートであることが好ましい。剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類や高分子フィルムが使用される。剥離シート用基材に用いられる高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム等が上げられる。中でも、経済性、表面平滑性の面からポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが、特に好ましい。
【0067】
剥離性積層シートにおける剥離剤層は剥離剤から構成されることが好ましく、剥離剤は、シリコーン系剥離剤であることが好ましい。すなわち、第1の剥離シートは、シリコーン系剥離剤を含むシートであることが好ましく、シリコーン系剥離剤から構成される剥離剤層を含むシートであることがより好ましい。
【0068】
シリコーン系剥離剤としては、例えば、付加型のシリコーン系剥離剤や縮合型のシリコーン系剥離剤を挙げることができる。中でも、反応性が高い付加型のシリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-4527、SD-7220等や、信越化学工業(株)製のKS-3600、KS-774、X62-2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤はSiO2単位と(CH3)3SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH3)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有してもよい。
【0069】
シリコーン系剥離剤としては、ポリオルガノシロキサン及びポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含むものであってもよい。ポリオルガノシロキサンは1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に直接結合したアルケニル基を有するものであることが好ましく、さらに、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に炭素原子を介して結合したエポキシ基を有し、かつ、ケイ素原子に直接結合した水素原子を実質的に有さないポリオルガノシロキサンを併用することが好ましい。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子に直接結合した水素原子を有し、かつ、25℃における動粘度が1mm2/s以上であることが好ましい。また、シリコーン系剥離剤は白金系触媒を含んでいてもよい。ポリオルガノシロキサン及びポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含むシリコーン系剥離剤や白金系触媒の具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS-3800、X-62-183、X-62-2829、X-62-2853、X-62-2856、X-62-2857、PL-5000,PL-50T、東レ・ダウ・コーニング(株)製LTC-856、LTC-761、SRX-212、モメンティブ(株)製XS56-C4880、XS56-C4617、XS56-C4434、TPR-6600、XC94-C4326等が挙げられる。さらに離型剤層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0070】
第1の剥離シートの剥離剤の塗布量は、0.05~0.5g/m2であることが好ましく、0.08~0.3g/m2であることがより好ましく、0.1~0.2g/m2であることがさらに好ましい。第1の剥離シートの剥離剤層の厚みは、50~500nmであることが好ましく、80~300nmであることがより好ましく、100~200nmであることがさらに好ましい。剥離剤層を設ける方法としては、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0071】
第1の粘着剤層から第1の剥離シートを剥離する際の剥離力は、0.01N/50mm以上であることが好ましく、0.1N/50mm以上であることがより好ましい。また、第1の粘着剤層から第1の剥離シートを剥離する際の剥離力は、1.0N/50mm以下であることが好ましく、0.8N/50mm以下であることがより好ましく、0.6N/50mm以下であることがさらに好ましい。
【0072】
第1の粘着剤層から第1の剥離シートを剥離する際の剥離力は、第1の剥離シート/第1の粘着剤層/第2の粘着剤層/第2の剥離シートがこの順で積層された剥離シート付き両面粘着シートを50mm×100mmに切り出し、第1の剥離シートをJIS Z 0237の方法1に準じて剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離することで測定する。
【0073】
<第2の剥離シート>
本発明の剥離シート付き両面粘着シートは第2の剥離シートを含む。第2の剥離シートは、剥離シート用基材と、この剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シートであってもよく、剥離シート用基材のみからなるシートであってもよい。剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類や高分子フィルムが使用される。また、第2の剥離シートが剥離シート用基材のみからなるシートである場合、剥離シート用基材は高分子フィルムからなる基材であることが好ましい。剥離シート用基材に用いられる高分子フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。経済性、表面平滑性の面からポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが、特に好ましい。
【0074】
第2の剥離シートの剥離荷重は70~20000mN/50mmであることが好ましい。なお、第2の剥離シートとして剥離剤が塗布された剥離シートを用いる場合も、第2の剥離シートの剥離荷重は上記範囲内であることが好ましい。第2の剥離シートの剥離荷重は100~18000mN/50mmであることより好ましく、120~17000mN/50mmであることがさらに好ましい。第2の剥離シートの剥離荷重を上記下限値以上とすることにより、第2の剥離シートの第2の粘着剤層からの剥離力を第1の剥離シートの第1の粘着剤層からの剥離力より大きくすることが容易となる。ここで、剥離荷重は、ニッパ(株)製No.100の粘着層に対して、第2の剥離シートの第2の粘着層面を貼着する面を貼着して、室温に24時間放置した後に180°剥離、剥離速度300m/分で第2の剥離シートを剥離させたときの剥離力である。
【0075】
第2の剥離シートが剥離シート用基材と、この剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シートである場合、剥離剤層は剥離剤から構成されることが好ましい。この場合、剥離剤は、フロロシリコーン系剥離剤であることが好ましい。フロロシリコーン系剥離剤は、1分子中に、少なくとも1個のフッ素原子含有有機基を含むものである。
【0076】
第2の剥離シートが剥離シート用基材と、この剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シートである場合、剥離剤は非シリコーン系剥離であってもよい。非シリコーン系剥離剤としては、例えば、アミノアルキド系樹脂を挙げることができる。
【0077】
第2の剥離シートは、上述したような非シリコーン系剥離剤を含むか、もしくは、シリコーン系剥離剤及び非シリコーン系剥離剤の合計含有量が1質量%以下であることが好ましい。すなわち、第2の剥離シートは、上述したような非シリコーン系剥離剤を含むものであるか、もしくは、剥離剤を実質的に含まないもののいずれかであることが好ましい。本明細書においては、第2の剥離シートにおける剥離剤の含有量が1質量%以下である場合に、剥離剤を実質的に含まないものとする。なお、第2の剥離シートが剥離剤を実質的に含まない場合、第2の剥離シートは、高分子フィルムからなる基材であることが好ましい。高分子フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム等を挙げることができる。
【0078】
第2の剥離シートが剥離剤を含む場合、剥離剤層の厚さは、0.03μm以上5μm以下であることが好ましく、0.05μm以上2μm以下であることがより好ましく、0.08μm以上1μm以下であることがさらに好ましい。剥離剤層を設ける方法としては、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0079】
第2の粘着剤層から第2の剥離シートを剥離する際の剥離力は、0.5N/50mm以上であることが好ましく、0.6N/50mm以上であることがより好ましい。また、第2の粘着剤層から第2の剥離シートを剥離する際の剥離力は、10.0N/50mm以下であることが好ましく、5.0N/50mm以下であることがより好ましく、3.0N/50mm以下であることがさらに好ましい。
【0080】
第2の粘着剤層から第2の剥離シートを剥離する際の剥離力を測定する際には、まず、第1の剥離シート/第1の粘着剤層/第2の粘着剤層/第2の剥離シートがこの順で積層された剥離シート付き両面粘着シートを50mm×100mmに切り出し、第1の剥離シートに裏打ち基材として、東洋紡製易接着層付きPETフィルム(A4300#100)を貼着する。その後、第2の剥離シートをJIS Z 0237の方法1に準じて剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離することで、剥離力を測定する。
【0081】
本発明の剥離シート付き両面粘着シートにおいては、各剥離シートは異なる剥離力を有しており、第2の粘着剤層から第2の剥離シートを剥離する際の剥離力が、第1の粘着剤層から第1の剥離シートを剥離する際の剥離力よりも大きい。第2の粘着剤層から第2の剥離シートを剥離する際の剥離力をRHとし、第1の粘着剤層から第1の剥離シートを剥離する際の剥離力をRLとした場合、RHとRLとの比(RH/RL)は1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。
【0082】
(剥離シート付き両面粘着シートの製造方法)
剥離シート付き両面粘着シートの製造方法は、特に限定されないが、本発明の剥離シート付き両面粘着シートの製造工程は、第1の剥離シート上に第1の粘着剤層を形成し、第2の剥離シート上に第2の粘着剤層を形成する工程と、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層を互いに接するように貼合する工程と、を含むことが好ましい。各剥離シート上に各粘着剤層を形成する工程は、各粘着剤層を構成する各粘着剤組成物を剥離シート上に塗工する工程であることが好ましい。また、第1の剥離シートまたは第2の剥離シートに同時、また逐次に第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層を形成し、第2の剥離シートまたは第1の剥離シートを貼合してもよい。
【0083】
各粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
また、塗工後は乾燥工程を設けることが好ましく、乾燥工程は、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いて実施できる。このようにして、第1の剥離シート上に第1の粘着剤層が形成され、第2の剥離シート上に第2の粘着剤層が形成される。
【0084】
第1の粘着剤層と第2の粘着剤層を互いに接するように貼合する工程は、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層を、直接接するように重ね、圧着する工程を含むことが好ましい。圧着方法は、特に限定されないが、連続して圧着が可能であるロール貼合機を用いることが好ましい。このようにして、第1の剥離シート、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層及び第2の剥離シートがこの順に積層した剥離シート付き両面粘着シートが得られる。
【0085】
なお、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層を互いに接するように貼合する工程の前に、各粘着剤層には表面活性化処理を施してもよい。ここで、表面活性化処理としては、例えば、コロナ処理やプラズマ処理を挙げることができる。
【0086】
表面活性化処理は、各粘着剤層の貼合面側の面に施されることが好ましい。表面活性化処理は、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層から選択される一方に施されてもよく、両方に施されてもよい。例えば、第1の粘着剤層に表面活性化処理が施された場合、該表面活性化処理面の濡れ張力は70mN/m以上となることが好ましく、73mN/m以上となることがより好ましい。なお、表面活性化処理面の濡れ張力の上限は特に限定されるものではない。また、表面活性化処理後の第1の粘着剤層の濡れ張力は、表面活性化処理前の第1の粘着剤層の濡れ張力に比べて1.1倍以上であることが好ましい。なお、表面活性化処理が第1の粘着剤層又は第2の粘着剤層のいずれかの面にのみ施される場合、表面活性化処理は第1の粘着剤層に施されることが好ましい。
【0087】
第2の粘着剤層の界面側の表面が表面活性化処理面である場合、該表面活性化処理面の濡れ張力は30mN/m以上となることが好ましく、34mN/m以上となることがより好ましい。なお、表面活性化処理面の濡れ張力の上限は特に限定されるものではないが、透明性の低下を防ぐために、例えば45mN/mであることが好ましい。なお、濡れ張力は、JIS K 6768 1999に準じて濡れ指示標準液(和光純薬製)を粘着層表面に塗布することで測定する。
【0088】
コロナ処理としては、コロナ処理機により常圧空気中で放電する方式が挙げられる。コロナ処理におけるコロナ出力は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5kW以上8.0kW以下であることが好ましく、0.5kW以上7.0kW以下であることがより好ましく、0.5kW以上6.0kW以下であることがさらに好ましい。コロナ処理における処理速度は、5m/分以上100m/分以下であることが好ましく、5m/分以上90m/分以下であることがより好ましく、5m/分以上80m/分以下であることがさらに好ましい。
【0089】
プラズマ処理としては、プラズマ放電機により常圧空気中で放電する方式が挙げられる。プラズマ処理におけるプラズマ出力は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5kW以上5.0kW以下であることが好ましく、0.5kW以上3.0kW以下であることがより好ましく、0.5kW以上1.5kW以下であることがさらに好ましい。プラズマ処理における処理速度は、5m/分以上100m/分以下であることが好ましく、5m/分以上90m/分以下であることがより好ましく、5m/分以上80m/分以下であることがさらに好ましい。
【0090】
(用途)
本発明の剥離シート付き両面粘着シートは、剥離シートが剥離された後に、各種部材の貼り合わせの用途に好ましく用いられる。貼り合わせの用途は制限されないが、光学部材貼合用であることが好ましい。光学部材としては、例えば、液晶ディスプレイ又はタッチパネルを挙げることができる。特に、剥離シートが剥離された後の両面粘着シートは、ガラスと液晶ディスプレイ、又は、ガラスとタッチパネルの貼合用に用いられることが好ましい。
【0091】
また、剥離シートのいずれか一方のみが剥離され、各種部材に貼合されてもよい。例えば、本発明の剥離シート付き両面粘着シートの第1の剥離シートを剥離し、第1の粘着剤層をガラスに貼合することで、ガラス、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層及び第2の剥離シートがこの順に積層した積層体を得てもよい。このような積層体は、例えば、光学部材の保護フィルムとして好ましく用いられ、この場合、一般消費者が上記積層体における第2の剥離シートを剥離して、液晶ディスプレイに貼合することもある。本発明の剥離シート付き両面粘着シートを用いれば、ガラス、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層及び第2の剥離シートがこの順に積層した積層体の加工がしやすく、光学部材の保護フィルムへの加工がしやすい。また、一般消費者が上記積層体における第2の剥離シートを剥離して、液晶ディスプレイに貼合する際にもエアーの噛み込みが少なく、保護フィルムを綺麗に貼合することができる。
【実施例】
【0092】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下において、実施例4は、参考例4と読み替えるものとする。
【0093】
[実施例1]
<アクリル系粘着剤組成物の調製>
(粘着剤組成物1A)
アクリル酸n-ブチル(BA)90質量部およびアクリル酸(AA)10質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は50万であった。
得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部、エポキシ系架橋剤として1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、TERAD-C)0.05質量部、シランカップリング剤としてシリコーンアルコキシオリゴマー(信越化学(株)社製、X-41-1810)0.15質量部を混合し、十分に撹拌して、固形分濃度が40質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0094】
<シリコーン系粘着剤組成物の調製>
(粘着剤組成物2A)
シロキサン結合を主骨格としビニル基を有するオルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなる付加型オルガノポリシロキサン(信越化学工業(株)製、KS-847H)100質量部(固形分換算値;以下同じ)、3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン(シリコーンレジン;東レダウコーニング社製、SD-4584)20質量部、白金触媒(東レダウコーニング社製、SRX-212)1.5質量部を混合し、十分に撹拌して、固形分濃度が40質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈することにより、シリコーン系粘着剤組成物を得た。
【0095】
<剥離シート付き両面粘着シートの作製>
アクリル系粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(王子エフテックス社製、38RL-07(2))(第1の剥離シート)の表面に、乾燥後の塗工量が50μmになるようにアプリケーターで均一に塗工し、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥することで、片面に第1の剥離シートが貼着されたアクリル系粘着剤層を得た。片面に第1の剥離シートが貼着された粘着剤層を23℃、相対湿度50%の環境にて7日間養生を行った。
【0096】
次いで、シリコーン系粘着剤組成物を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、ルミラーS-10#38)(第2の剥離シート)の表面に、乾燥後の塗工量が50μmになるようにアプリケーターで均一に塗工し、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥することで、片面に第2の剥離シートが貼着されたシリコーン系粘着剤層を得た。尚、ルミラーS-10♯10の剥離荷重は、16000mN/50mmであった。
【0097】
アクリル系粘着剤層及びシリコーン系粘着剤層のそれぞれの表面にコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理は、春日電機製のコロナ表面処理装置を用いて行った。コロナ放電処理はそれぞれ、アクリル系粘着剤層の濡れ張力が70mN/m以上、シリコーン系粘着剤層の濡れ張力が30mN/m以上となる条件で行った。
表面活性化処理を行ったアクリル系粘着剤層の露出面及び、シリコーン系粘着剤層露出面同士を貼り合せることで、第1の剥離シート/第1の粘着剤層(アクリル系粘着剤層)/第2の粘着剤層(シリコーン系粘着剤層)/第2の剥離シートがこの順で積層された剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0098】
[実施例2]
<剥離シート付き両面粘着シートの作製>において、シリコーン系粘着剤組成物を、フロロシリコーン系剥離シート(ニッパ社製、SS4C基材厚み75μm)(第2の剥離シート)の表面に塗工した以外は実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。尚、SS4Cの剥離荷重は、340mN/50mmであった。
【0099】
[実施例3]
<シリコーン系粘着剤組成物の調製>
(粘着剤組成物2B)
信越化学製シリコーン粘着剤KR3704と信越化学製白金触媒PL50Tを100/0.5の比率にて十分に撹拌して、固形分濃度が40質量%となるようにトルエンで希釈することにより、粘着剤組成物2Bを得た。
【0100】
<剥離シート付き両面粘着シートの作製>において、シリコーン系粘着剤組成物を粘着剤組成物2Bとした以外は実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0101】
[実施例4]
<ウレタン系粘着剤組成物の調製>
(粘着剤組成物2C)
トーヨーケム(株)製ウレタン微粘着剤SH-101(固形分60質量%)100質量部に、ポリイソシアナート成分としてトーヨーケム社製T-501B(固形分75質量%)6質量部混合することで粘着剤組成物Cを得た。
【0102】
<剥離シート付き両面粘着シートの作製>において、シリコーン系粘着剤組成物2Aをウレタン系粘着剤組成物2Cとした以外は実施例2と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0103】
[実施例5]
<アクリル系粘着剤組成物の調製>
(粘着剤組成物1B)
日本合成化学(株)製N-9369 100質量部と、硬化剤Lー55E 0.9質量部を混合し、十分に撹拌して、固形分濃度が40質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、アクリル系粘着剤組成物1Bを得た。
【0104】
<シリコーン系粘着剤組成物の調製>
(粘着剤組成物2D)
東レダウコーニング(株)製シリコーン系微粘着剤DOWSIL7646Adhesive 100質量部、東レダウコーニング(株)製シリコーン系架橋剤7678 1質量部、及び、東レダウコーニング(株)製触媒NC-25を 0.3質量部を混合し、十分に撹拌して、固形分濃度が40質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈することにより、シリコーン系粘着剤組成物2Dを得た。
【0105】
<剥離シート付き両面粘着シートの作製>
<剥離シート付き両面粘着シートの作製>において、アクリル系粘着剤組成物1Aをアクリル系粘着剤組成物1Bとし、シリコーン系粘着剤組成物2Aをシリコーン系粘着剤組成物2Dとした以外は実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0106】
[比較例1]
<剥離シート付き両面粘着シートの作製>において、シリコーン系粘着剤組成物を、フロロシリコーン系剥離シート(ニッパ社製、FSC6基材厚み75μm)(第2の剥離シート)の表面に塗工した以外は実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。尚、FSC6の剥離荷重は、50mN/50mmであった。
【0107】
[比較例2]
<シリコーン系粘着剤組成物の調製>
(粘着剤組成物2E)
信越化学製シリコーン粘着剤KR3704と、信越化学製シリコーン粘着剤KR3700と、信越化学製白金触媒PL50Tを、90/10/0.5の比率で混合し、十分に撹拌して、固形分濃度が40質量%となるようトルエンで希釈することにより、シリコーン系粘着剤組成物2Eを得た。
【0108】
<剥離シート付き両面粘着シートの作製>において、シリコーン系粘着剤組成物を粘着剤組成物2Eとし、第2の剥離シートをフロロシリコーン系剥離シート(ニッパ社製、FSC6基材厚み75μm)とした以外は実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0109】
(測定及び評価)
<粘着力の測定>
(第1の粘着剤層の粘着力)
<剥離シート付き両面粘着シートの作製>の工程で得られた剥離シート付き両面粘着シートを25mm幅×10cm幅に切り出したのち、第1の剥離シートを剥離し、第1の粘着剤層の粘着面をソーダガラスに貼着した。第2の剥離シートを第2の粘着剤層面より剥離し第2の粘着剤層面を表面活性化処理した。その後、第2の粘着剤層面に、同じく表面活性化処理されたアクリル粘着層が貼着された易接着層付ポリエチレンテレフタレートフィルムを裏打ち基材として貼着した。貼着後24時間後に、JIS Z 0237の方法1に準じて剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件でガラスに対する第1の粘着剤層面の粘着力測定を行った。なお、表面活性化処理されたアクリル粘着層が貼着された易接着層付ポリエチレンテレフタレートフィルムは、アクリル粘着層が新タック化成(株)製CCL/D1/T3T3(東洋紡製易接着層付きPETフィルム(A4300#100))に貼着したものである。
【0110】
(第2の粘着剤層の粘着力)
第1の剥離シート/第1の粘着剤層/第2の粘着剤層/第2の剥離シートがこの順で積層された剥離シート付き両面粘着シートの第1の剥離シートを剥離し、易接着層付ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製、A4300#100)を裏打ち基材として貼着した。第2の剥離シートを剥離し、第2の粘着剤層の粘着面をソーダガラスに貼着した。貼着後24時間後に、JIS Z 0237の方法1に準じて剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力測定を行った。
【0111】
<界面粘着力>
剥離シート付き両面粘着シートの第1の剥離シートを第1の粘着剤層より剥離して、第1の粘着剤層面に易接着層付ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製、A4300#100)を裏打ち基材(第1の裏打ち基材)として貼着した。引き続き、第2の剥離シートを第2の粘着剤層より剥離し、第2の粘着剤層面を表面活性化処理した。表面活性化処理した第2の粘着剤層面に、同じく表面活性化処理されたアクリル粘着層が貼着された易接着層付ポリエチレンテレフタレートフィルムを裏打ち基材(第2の裏打ち基材)として貼着した。なお、表面活性化処理されたアクリル粘着層が貼着された易接着層付ポリエチレンテレフタレートフィルムは、アクリル粘着層が新タック化成(株)製CCL/D1/T3T3(東洋紡製易接着層付きPETフィルム(A4300#100))に貼着したものである。上記で得られた、両面裏打ち基材付き両面粘着シートを50mm×100mmに切り出し、第1の裏打ち基材の粘着剤層面の反対側の面を固定した。第1の粘着剤層と第2の粘着剤層を貼着後24時間後に、第2の裏打ち基材を剥離することで、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層の界面粘着力を、JIS Z 0237の方法1に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で測定した。なお、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層界面以外の界面が剥離した場合は、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層界面の粘着力は、その剥離力以上と定義した。
【0112】
<剥離力の測定>
(第1の剥離シートの剥離力)
第1の剥離シート/第1の粘着剤層/第2の粘着剤層/第2の剥離シートがこの順で積層された剥離シート付き両面粘着シートを50mm×100mmに切り出し、第1の剥離シートをJIS Z 0237の方法1に準じて剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、剥離力測定を行った。
【0113】
(第2の剥離シートの剥離力)
第1の剥離シート/第1の粘着剤層/第2の粘着剤層/第2の剥離シートがこの順で積層された剥離シート付き両面粘着シートを50mm×100mmに切り出し、第1の剥離シートを剥離して第1の粘着層面に裏打ち基材として、東洋紡製易接着層付きPETフィルム(A4300#100)を貼着した。その後、第2の剥離シートをJIS Z 0237の方法1に準じて剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、剥離力測定を行った。
【0114】
<剥離荷重>
剥離シート付き両面粘着シートの第2の剥離シートを剥離して、第2の剥離シートの剥離剤が塗布された面をニッパ(株)製No.100の粘着層面に貼着して、室温で24時間放置した。その後に、180°剥離、剥離速度300m/分で第2の剥離シートを剥離させたときの剥離力を測定し、剥離荷重とした。
【0115】
<加工性の評価>
第1の剥離シートの剥離力を測定するときに、第2の剥離シートの95%以上の領域が第2の粘着剤層面から剥離しなかった場合、加工性良好(○)とした。第2の剥離シートの5%を超える領域が第2の粘着剤層より剥離した場合、加工性不良(×)とした。
【0116】
<エアー抜け性の評価>
剥離シート付き両面粘着シートの第1の剥離シートを第1の粘着剤層より剥離して、第1の粘着剤層面を松浪ガラス製ガラス板(品名:S9112、1mmt×76mm×52mm)に2Kgロールで一往復させて貼着した。次いで、第2の剥離シートを剥離し、ソーダガラス板上に静かに第2の粘着剤層面が直接重なるように置き、自重により接着させた。この時、第2の粘着剤層とソーダガラス界面に残った気泡の面積が貼着面積の2%以下のものをエアー抜け性極めて良好(◎)、2%以上5%未満のものをエアー抜け性良好(○)5%を超えるものエアー抜け性不良(×)と定義した。
【0117】
【0118】
実施例で得られた剥離シート付き両面粘着シートは、第1の剥離シートを先に剥離することができ、加工性に優れていた、また、実施例で得られた剥離シート付き両面粘着シートの第2の粘着剤層を被着体に貼合した場合、エアーの噛み込みが抑制されていた。一方、比較例で得られた剥離シート付き両面粘着シートは、加工性とエアー抜け性が両立されていなかった。
【符号の説明】
【0119】
10 第1の粘着剤層
12 第2の粘着剤層
20 第1の剥離シート
22 第2の剥離シート
50 両面粘着シート
100 剥離シート付き両面粘着シート