(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20230711BHJP
G05B 19/42 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 D
(21)【出願番号】P 2019052850
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】吉見 淳子
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187697(JP,A)
【文献】特開2019-018257(JP,A)
【文献】特開平11-077580(JP,A)
【文献】特開2014-128843(JP,A)
【文献】特開平08-216074(JP,A)
【文献】特開平11-077560(JP,A)
【文献】特開2015-199174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0312917(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/16-19/06
G05B 19/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベース上に設けられた複数のアームと、
各前記アームに対応して設けられ前記アームを相互に連結する複数の軸と、
各前記軸に対応して設けられ各前記軸を駆動する複数のモータと、
各前記アームに設けられユーザによる把持を検出することができる複数の検出部と、
前記検出部の検出状況に基づき各前記モータを駆動制御して各前記アームの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、各前記検出部がユーザの把持を検出していない場合には前記各軸を拘束し、
各前記検出部のうち1つの前記検出部で把持を検出した場合には把持を検出した1つの当該検出部が設けられている前記アームよりも根元側にある前記軸の拘束を解除するとともに他の前記軸を拘束する、
ロボットシステム。
【請求項2】
ベースと、
前記ベース上に設けられた複数のアームと、
各前記アームに対応して設けられ前記アームを相互に連結する複数の軸と、
各前記軸に対応して設けられ各前記軸を駆動する複数のモータと、
各前記アームに設けられユーザによる把持を検出することができる複数の検出部と、
前記検出部の検出状況に基づき各前記モータを駆動制御して各前記アームの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、各前記検出部がユーザの把持を検出していない場合には前記各軸を拘束し、
各前記検出部のうち2つの前記検出部で把持を検出した場合には把持を検出した2つの当該検出部が設けられている前記アームの間の前記軸の拘束を解除するとともに他の前記軸を拘束する、
ロボットシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記軸の拘束が解除されている状態においては前記アームが自重により動かないように前記モータを制御する重力補正を行う、
請求項1
又は2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記軸の拘束を解除している状態で各前記アームが移動された場合に各前記アームの動作内容または動作位置を記憶する機能を有している、
請求項1から
3のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多関節ロボットは、動作してない状態つまり停止している状態において、各軸が不意に動作しないように、機械的またはモータの制御等による電気的なブレーキによって各軸の動作を拘束することがある。この構成において、例えば直接教示いわゆるダイレクトティーチングなどのようにロボットのアームに直接触れてアームを動かす場合には、ロボット自身やティーチングペンダトに設けられたボタンを操作し、各軸の拘束を解除する必要がある。
【0003】
この場合、ボタンの操作により全ての軸の拘束が解除されてしまうと、ユーザの意図しない軸が動作してしまう可能性がある。そこで、従来のロボットシステムは、例えばロボット自身やティーチングペンダントに設けられたボタンを押している間のみ全ての軸またはそのボタンに対応した軸の拘束を解除する。しかしながら、このような構成の場合、ユーザは、各軸の拘束の解除状態を維持するために、少なくとも一方の手でボタンを押し続ける必要がある。このため、ユーザは、片手のみでロボットの操作を行わなければならないため不便である。
【0004】
また、従来のロボットシステムには、例えばティーチングペンダント等を操作して、操作対象となる軸を選択したり、軸の拘束条件を設定したりする構成もある。しかしながら、このような構成の場合、軸の選択や拘束条件の設定などユーザの手間が多い。更に、軸の選択や拘束条件の設定を変更する際には、ユーザは、一旦ロボットの操作を止めて、ティーチングペンダント等を操作する必要がある。このため、従来構成においてロボットを直接操作する場合、ユーザの手間が多く煩わしかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、アームを直接手で持って簡単に動かすことができるロボットシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本構成のロボットシステムは、ベースと、前記ベース上に設けられた複数のアームと、各前記アームに対応して設けられ前記アームを相互に連結する複数の軸と、各前記軸に対応して設けられ各前記軸を駆動する複数のモータと、各前記アームに設けられユーザによる把持を検出することができる複数の検出部と、前記検出部の検出状況に基づき各前記モータを駆動制御して各前記アームの動作を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、各前記検出部がユーザの把持を検出していない場合には前記各軸を拘束し、各前記検出部がユーザの把持を検出している場合には各前記モータのうち把持が検出された前記検出部に応じて所定の前記軸の拘束を解除する。
【0008】
これによれば、ユーザは、各軸の拘束を解除するために、ティーチングペンダントやロボットに設けられた軸の拘束を解除するためのボタンを押し続けたり、ティーチングペンダントで拘束を解除する軸を選択したりする必要がない。すなわち、ユーザは、動かしたいアームを把持することで、その把持したアームに応じた軸の拘束を解除することができ、これにより把持したアームに対応した軸を直接手で持って簡単に動かすことができる。また、アームのうちユーザが把持していないアームに対応する軸は拘束されている。そのため、ユーザの意図に反してアームが動くことを防げる。これらの結果、ユーザは、手間なく簡単に、ロボットのアームを直接触って動かすことができる。
【0009】
ここで、各アームのうちの1つをユーザが片手で持った場合、ユーザは、ベースを支点にして、ユーザが把持したアームまでを全体的に動かしたいとの意図を有する傾向があることを、本願発明者は見出した。そこで、本構成の制御装置は、各検出部のうち1つの検出部で把持を検出した場合には把持を検出した1つの当該検出部が設けられているアームよりも根元側にある軸の拘束を解除するとともに他の軸を拘束する。
【0010】
これによれば、各アームのうちの1つをユーザが片手で持つことで、ユーザは、ベースを支点にしてユーザが把持したアームまでを一体として動かすことができる。したがって、ユーザは、アームを片手で動かす場合において、各アームのうち意図したアームをより直感的にかつ簡単に動かすことができる。
【0011】
また、アームのうち2つのアームをユーザが両手で持って操作する場合、ユーザは、ベース側の一方の手で持ったアームを支点にして、その一方の手で持ったアームから他方の手で持ったアームまでを一体として動かしたいとの意図を有する傾向があることを、本願発明者は見出した。そこで、本構成の制御装置は、各検出部のうち2つの検出部で把持を検出した場合には把持を検出した2つの当該検出部が設けられているアームの間の軸の拘束を解除するとともに他の軸を拘束する。
【0012】
これによれば、各アームのうちの2つのアームをユーザが両手で持つことで、ユーザは、一方の手この場合ベース側の手で持ったアームを支点に、その一方の手で持ったアームから他方の手で持ったアームまでを一体として動かすことができる。すなわち、これによれば、ユーザは、両手で把持した2つのアーム及びそのアームの間に存在するアームについては自由に動かすことができる。更に、他のアームつまり両手で把持した2つのアームの外側に存在するアームについては固定される。このため、ユーザが両手で把持したアームを動かす際にそのアームの動きに引っ張られて、ユーザが動かそうとしていないアームまでも動いてしまうことが抑制される。したがって、ユーザは、両手で把持したアームを意図した姿勢に容易に動かすことができる。このように、本構成によれば、ユーザは、アームを両手で動かす場合において、各アームのうち意図したアームをより直感的にかつ簡単に動かすことができる。
【0013】
また、各軸の拘束が解除されている状態、つまりユーザがアームを把持して各アームを動かせる状態の場合、制御装置は、アームが自重により動かないように各モータを制御する重力補正を行う。これによれば、ユーザは、各アームの重量を意識することなく、軽い力で各アームを動かすことができる。
【0014】
更に、この構成によれば、ユーザがアームを動かして目的の位置で止めようとした場合に、アームの慣性力によってその目的の位置を越えて動いてしまうことを抑制することができる。これにより、各アームを目的の位置で素早く精度良く止めることができ、その結果、例えば直接教示を行う際にはその精度を向上させることができる。
【0015】
また、制御装置は、軸の拘束を解除している状態で各アームが移動された場合に各アームの動作内容または動作位置を記憶する機能を有している。これによれば、ユーザが各アームを把持して動かすことで、その動きが教示内容として記録される。そのため、直接教示を行っている最中に、ユーザが、ロボットや外部装置に設けられた図示しない操作手段を操作する機会を低減することができる。その結果、ユーザは、更に簡単に直接教示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態によるロボットシステムの構成を概念的に示す図
【
図2】第1実施形態によるロボットシステムの電気的構成を示すブロック図
【
図3】第1実施形態について、検出部における検出結果と各軸の拘束状態との対応関係を表で示す図
【
図4】第1実施形態について、ロボットの動作態様の一例を示す図(その1)
【
図5】第1実施形態について、ロボットの動作態様の一例を示す図(その2)
【
図6】第1実施形態について、ロボットの動作態様の一例を示す図(その3)
【
図7】第1実施形態について、ロボットの動作態様の一例を示す図(その4)
【
図8】第1実施形態について、ロボットの動作態様の一例を示す図(その5)
【
図9】第1実施形態について、ロボットの動作態様の一例を示す図(その6)
【
図10】第1実施形態について、ロボットの動作態様の一例を示す図(その7)
【
図11】第1実施形態について、ロボットの動作態様の一例を示す図(その8)
【
図12】第1実施形態について、ロボットの動作態様の一例を示す図(その9)
【
図13】第1実施形態について、制御装置で実行される制御内容を示すフローチャート
【
図14】第2実施形態について、制御装置で実行される制御内容を示すフローチャート
【
図15】第3実施形態によるロボットシステムの構成を概念的に示す図
【
図16】第3実施形態について、検出部における検出結果と各軸の拘束状態との対応関係を表で示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に共通する部位には同一符号を付して説明する。
【0018】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、
図1から
図13を参照しながら説明する。
図1に示すロボットシステム1は、多関節ロボット10(以下、単にロボット10と称する)と、制御装置20と、を備えている。ロボット10は、複数のアームを有する垂直多関節型のいわゆる6軸ロボットであり、制御装置20によって制御される。本実施形態のロボット10は、例えば人が一人で持ち運ぶことができる程度に小型及び軽量のものである。本実施形態のロボット10は、例えば人との協働を前提としており、その動作環境に安全柵が不要となるように設計された人協働ロボットを想定している。ロボット10は、制御装置20を内蔵しており、全体の重量が約4kg、可搬重量が約500g程度に設定されている。
【0019】
なお、ロボット10のサイズ及び重量は、上述したものに限定されない。また、制御装置20は、ロボット10に内蔵されたものに限られず、ロボット10の外部に設けられていても良い。この場合、ロボット10と制御装置20とは、有線または無線により相互通信可能に構成される。また、制御装置20は、パソコンや、スマートフォンなどの携帯端末など、その他の外部の装置90に有線または無線により相互通信可能に接続されていても良い。
【0020】
ロボット10は、
図1に示すように、ベース11、複数この場合6つのアーム121~126、及び手先部13を有している。ベース11は、設置面に固定されていても良いし、固定されていなくても良い。各アーム121~126及び手先部13は、ベース11上に順に設けられている。本実施形態の場合、ベース11側から順に、第1アーム121、第2アーム122、第3アーム123、第4アーム124、第5アーム125、及び第6アーム126と称する。また、各アーム121~126を特定しない場合は、各アーム121~126を総称して単にアーム12と称する。
【0021】
手先部13は、第6アーム126の先端部に設けられている。この場合、ベース11側が各アーム121~126の根元側となり、手先部13側が各アーム121~126の先端側となる。なお、手先部13は、例えばチャックやグリッパ、若しくは吸着ハンドなどと称されるロボットハンドなどを採用することができ、ロボット10の用途に応じて適宜選択することができる。
【0022】
各アーム121~126は、それぞれ複数の軸J1~J6を介して回転可能に連結されている。この場合、ベース11側から順に、第1軸J1、第2軸J2、第3軸J3、第4軸J4、第5軸J5、及び第6軸J6と称する。なお、各軸J1~J6を特定しない場合は、各軸J1~J6を総称して単に軸Jと称する。第1軸J1は、垂直方向に延びる回転軸であり、ベース11に対して第1アーム121を水平方向に回転可能に連結する。第2軸J2は、水平方向に延びる回転軸であり、第1アーム121に対して第2アーム122を鉛直方向に回転可能に連結する。
【0023】
第3軸J3は、水平方向に延びる回転軸であり、第2アーム122に対して第3アーム123を鉛直方向に回転可能に連結する。第4軸J4は、第3アーム123の長手方向に延びる回転軸であり、第3アーム122に対して第4アーム124と回転可能に連結する。第5軸J5は、水平方向に延びる回転軸であり、第4アーム124に対して第5アーム125を鉛直方向に回転可能に連結する。そして、第6軸J6は、第5アーム125の長手方向に延びた回転軸であり、第5アーム125に対して第6アーム126を回転可能に連結する。
【0024】
ロボット10は、
図2に示すように、各軸J1~J6を駆動する複数この場合6つのモータ141~146を有している。本実施形態では、第1軸J1に対応したモータを第1モータ141と称し、第2軸J2に対応したモータを第2モータ142と称する。また、第3軸J3に対応したモータを第3モータ143と称し、第4軸J4に対応したモータを第4モータ144と称する。そして、第5軸J5に対応したモータを第5モータ145と称し、第6軸J6に対応したモータを第6モータ146と称する。なお、各モータ141~146を特定しない場合は、各モータ141~146を総称して単にモータ14と称する。
【0025】
各モータ141~146は、機械的又は電気的なブレーキ機能を有している。各モータ141~146は、ブレーキを動作させることで、各モータ141~146に対応した各軸J1~J6を拘束し、これにより各軸J1~J6を介して相互に連結された各アーム121~126の回転動作を規制つまり禁止する。本実施形態の場合、各モータ141~146においてブレーキが動作している状態を、各軸J1~J6が拘束されている状態と称する。また、各モータ141~146においてブレーキが動作していない状態つまりブレーキが解除されている状態を、各軸J1~J6の動作が拘束されていない状態つまり各軸J1~J6の拘束が解除されている状態と称する。
【0026】
ロボット10は、
図1及び
図2に示すように、複数のこの場合6つの検出部151~156を有している。検出部151~156は、各アーム121~126に設けられており、各アーム121~126に対するユーザによる把持を検出することができる。各検出部151~156は、例えば抵抗膜方式、静電容量式、超音波表面弾性方式、電磁誘導方式、または光学式のタッチセンサ、若しくはゴムや樹脂、金属などで構成された機械的なスイッチ等で構成することができる。
【0027】
各検出部151~156は、それぞれ各アーム121~126の表面に対するユーザの接触を検知することができる。本実施形態の場合、検出部151~156は、それぞれ対応するアーム121~126に内蔵されており、ユーザから視認できないように構成されている。なお、各検出部151~156は、各アーム121~126の表面に露出して設けられていても良い。
【0028】
本実施形態において、検出部151~156のうち、第1アーム121に設けられた検出部を第1検出部151と称し、第2アーム122に設けられた検出部を第2検出部152と称する。また、第3アーム123に設けられた検出部を第3検出部153と称し、第4アーム124に設けられた検出部を第4検出部154と称する。そして、第5アーム125に設けられた検出部を第5検出部155と称し、第6アーム126に設けられた検出部を第6検出部156と称する。なお、各検出部151~156を特定しない場合は、各検出部151~156を総称して単に検出部15と称する。
【0029】
制御装置20は、例えばCPU21や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域22を有するマイクロコンピュータを主体に構成されており、ロボット10全体の動作を制御する。記憶領域22は、ロボット10を駆動制御するためのロボット制御プログラムを記憶している。そして、制御装置20は、CPU21においてロボット制御プログラムを実行することで、ロボット10の動作を制御する。本実施形態の場合、
図2に示すように、各検出部151~156、及び各モータ141~146は、制御装置20に電気的に接続されている。そして、制御装置20は、各検出部151~156の検出結果に基づいて、各モータ141~146を駆動制御する。
【0030】
ここで、ユーザがロボット10に直接触れて操作する場合、その操作には次のような傾向があることがわかった。すなわち、アーム121~126のうち1つのアーム12をユーザが片手で持って操作する場合、ユーザは、ベース11を支点にして、ベース11に連結された第1アーム121からユーザが持ったアーム12までを一体として動かしたいとの意図を有する傾向がある。また、アーム121~126のうち2つのアーム12をユーザが両手で持って操作する場合、ユーザは、一方の手この場合ベース11側の手で持ったアーム12を支点に、その一方の手で持ったアーム12から他方の手で持ったアーム12までを一体として動かしたいとの意図を有する傾向がある。
【0031】
そこで、本実施形態において、制御装置20は、各検出部151~156がユーザの把持を検出していない場合には各軸J1~J6を拘束し、各アーム121~126の移動を禁止する。また、制御装置20は、各検出部151~156がユーザの把持を検出している場合には各モータ141~146のうち把持が検出された検出部151~156に応じて、
図3に示すように所定の軸J1~J6の拘束を解除する。
【0032】
すなわち、ユーザがロボット10に直接触れて操作する意図がない場合、当然ながら各検出部151~156において把持は検出されない。したがって、各検出部151~156のうち全ての検出部で把持が検出されなかった場合、制御装置20は、全ての軸J1~J6を拘束して、全てのアーム121~126の動作を禁止する。
【0033】
また、ユーザが片手でロボット10を操作しようとした場合、つまりアーム121~126のうち一のアーム12をユーザが片手で掴んだ場合、各検出部151~156のうち1つの検出部15でユーザの把持が検出される。そのため、制御装置20は、各検出部151~156のうち1つの検出部15で把持を検出した場合には、各軸J1~J6のうち、把持を検出した1つの当該検出部15が設けられているアーム12よりも根元側にある全ての軸Jの拘束を解除するとともに他の軸Jを拘束する。これにより、ユーザが把持したアーム12に対して根本側のアーム12を動作可能にするとともに、先端側のアーム12の動作を禁止する。
【0034】
そして、ユーザが両手でロボット10を操作しようとした場合、つまりユーザが両手でアーム121~126のうち2つのアーム12を掴んだ場合、各検出部151~156のうち2つの検出部15でユーザの把持が検出される。そのため、制御装置20は、各検出部151~156のうち2つの検出部15で把持を検出した場合には、各軸J1~J6のうち、把持を検出した2つの当該検出部15が設けられているアーム12の間の全ての軸Jの拘束を解除するとともに他の軸Jを拘束する。これにより、ユーザが把持した2つのアーム12の間に存在するアーム12を動作可能にするとともに、他のアーム12の動作を禁止する。
【0035】
本実施形態において、検出部151~156の検出結果と、各軸J1~J6の拘束状態との対応関係は
図3の表に示す通りである。
図3の表において、「-」は、検出部151~156でユーザの把持が検出されなかったことを示す。また、「〇」は、各軸J1~J6の拘束が解除されていることを示す。そして、「×」は、各軸J1~J6が拘束されていることを示す。
【0036】
次に、
図4~
図12も参照して、ユーザによるロボット10の直接操作の一例を説明する。例えば全ての検出部151~156でユーザの把持が検出されていない場合、
図3の「1つ目:-」及び「2つ目:-」の行に示すように、制御装置20は、全ての軸J1~J6を拘束する。これにより、ロボット10の各アーム121~126は固定された状態となる。
【0037】
また、
図4に示すように、ユーザが両手で第1アーム121と第6アーム126とを掴み、第1アーム121を支点に第6アーム126を動かそうとした場合、第1検出部151と第6検出部156との2つの検出部においてユーザの把持が検出される。この場合、
図3の「1つ目:第1検出部」及び「2つ目:第6検出部」の行に示すように、制御装置20は、第1軸J1を拘束するとともに、第2軸J2~第6軸J6の拘束を解除する。これにより、ユーザは、
図4から
図5にかけて示すように、第1アーム121を支点に第6アーム126を動かすことができる。
【0038】
また、例えば
図6に示すように、ユーザが両手で第2アーム122と第3アーム123とを掴み、第2アーム122を支点に第3アーム123を動かそうとした場合、第2検出部152と第3検出部153との2つの検出部においてユーザの把持が検出される。この場合、
図3の「1つ目:第2検出部」及び「2つ目:第3検出部」の行に示すように、制御装置20は、第2アーム122と第3アーム123との間にある第3軸J3の拘束を解除するとともに、第3軸J3以外の全ての軸J1、J2、J4~J6を拘束する。これにより、ユーザは、
図6から
図7にかけて示すように、第3アーム123以外のアームを動かないように固定した状態で、第2アーム122を支点に第3アーム123のみを動かすことができる。
【0039】
また、例えば
図8に示すように、ユーザが両手で第3アーム123と第6アーム126とを掴み、第3アーム123を支点に、第4アーム124、第5アーム125、及び第6アーム126を動かそうとした場合、第3検出部153と第6検出部156との2つの検出部においてユーザの把持が検出される。この場合、
図3の「1つ目:第3検出部」及び「2つ目:第6検出部」の行に示すように、制御装置20は、第3アーム123と第6アーム126との間にある全ての軸J4~J6の拘束を解除するとともに、上記の軸J4~J6以外の全ての軸J1~J3を拘束する。これにより、ユーザは、
図8から
図9にかけて示すように、第1アーム121、第2アーム122、及び第3アーム123を動かないように固定した状態で、第4アーム124、第5アーム125、及び第6アーム126を動かすことができる。
【0040】
そして、例えば
図10に示すように、ユーザが片手で第6アーム126を掴み、ロボット10全体を動かそうとした場合、第6検出部156のみでユーザの把持が検出される。この場合、制御装置20は、
図3の「1つ目:第6検出部」及び「2つ目:-」の行に示すように、第6アームよりも根元側にある全ての軸J1~J6の拘束を解除する。これにより、ユーザは、
図10から
図12にかけて示すように、第6アーム126を持って全てのアーム121~126を動かすことができる。
【0041】
また、制御装置20は、軸J1~J6の拘束が解除されている状態においては、拘束が解除された軸J1~J6に連結している各アーム121~126が当該アーム121~126の自重により動かないように各モータ141~146を制御することで重力補正を行う。この場合、各モータ141~146は、各アーム121~126の自重により各モータ141~146に作用するトルクに対抗し得る程度の弱いトルクを発生させる。そのため、ユーザは、軸J1~J6の拘束が解除された場合であっても、アーム121~126の重さを感じずに任意のアーム121~126を軽い力で動かすことができる。
【0042】
次に、制御装置20において実行される制御内容について
図13も参照して説明する。制御装置20は、CPU21においてロボット制御プログラムを実行すると、
図13に示す処理内容を実行する。制御装置20は、制御を開始すると(スタート)、まずステップS11に示すように、各モータ141~146のブレーキを作動させて、各軸J1~J6を拘束する。これにより、ロボット10を、各アーム121~126が動かない状態、いわゆるロック状態にする。
【0043】
次に、制御装置20は、ステップS12において、各検出部151~156で把持の検出があったか否かを判断する。把持の検出が無かった場合(ステップS12でNO)、制御装置20は、処理を終了する(エンド)。一方、検出部151~156において把持の検出があった場合(ステップS12でYES)、制御装置20は、ステップS13へ処理を移行させる。
【0044】
制御装置20は、ステップS13において、検出部151~156における検出数を判断する。各検出部151~156のうち3つ以上の検出部で把持が検出された場合(ステップS13で3以上)、ユーザの意図つまりユーザがどのアーム121~126を動かしたいのかが判断できない。そのため、この場合、制御装置20は、ステップS14へ処理を移行させてエラーの判断を行い、その後、処理を終了する(エンド)。
【0045】
また、各検出部151~156のうち1つの検出部で把持が検出された場合(ステップS13で1)、制御装置20は、ステップS15へ処理を移行させる。そして、制御装置20は、ステップS15において、
図3の表に示すように、各軸J1~J6のうち、把持が検出されたアーム12よりもベース11側の軸Jの拘束を解除するとともに、他の軸Jの拘束を維持する。その後、制御装置20は、ステップS17へ処理を移行させる。
【0046】
また、各検出部151~156のうち2つの検出部で把持が検出された場合(ステップS13で2)、制御装置20は、ステップS16へ処理を移行させる。そして、制御装置20は、ステップS16において、
図3の表に示すように、各軸J1~J6のうち、把持が検出された2つのアーム間にある軸Jの拘束を解除するとともに、他の軸Jの拘束を維持する。その後、制御装置20は、ステップS17へ処理を移行させる。
【0047】
制御装置20は、ステップS17において、各検出部151~156における把持の検出が継続しているか否かを判断する。把持の検出が継続している場合、制御装置20は、ステップS17の処理を繰り返し、ステップS15又はステップS16で行った軸の拘束状態及び拘束の解除状態を維持する。
【0048】
そして、ユーザがアーム121~126から手を放して各検出部151~156において把持が検出されなくなった場合、制御装置20は、ステップS18へ処理を移行させる。そして、制御装置20は、ステップS11における処理と同様に、各モータ141~146のブレーキを作動させて、各軸J1~J6を拘束する。これにより、ロボット10を、再び、各アーム121~126が動かない状態いわゆるロック状態にする。制御装置20は、このロボット制御プログラムが実行されている間は、
図13に示すスタートからエンドまでの処理を繰り返す。
【0049】
以上説明した実施形態によれば、ロボットシステム1は、多関節ロボット10と、制御装置20と、を備える。多関節ロボット10は、ベース11と、複数この場合6つのアーム121~126と、複数この場合6つの軸J1~J6と、複数この場合6つのモータ141~146と、複数この場合6つの検出部151~156と、を有する。各アーム121~126は、相互に連結されてベース11上に設けられている。各軸J1~J6は、各アーム121~126に対応して設けられアーム121~126を相互に連結する。各モータ141~146は、各軸J1~J6に対応して設けられ各軸J1~J6を駆動する。各検出部151~156は、各アーム121~126に設けられユーザによる把持を検出することができる。
【0050】
また、制御装置20は、検出部151~156の検出状況に基づき各モータ141~146を駆動制御して各アーム121~126の動作を制御する。そして、制御装置20は、各検出部151~156がユーザの把持を検出していない場合には各軸J1~J6を拘束し、各検出部151~156がユーザの把持を検出している場合には各モータ141~146のうち把持が検出された検出部151~156に応じて所定の軸J1~J6の拘束を解除する。
【0051】
これによれば、ユーザは、各軸J1~J6の拘束を解除するために、ティーチングペンダントやロボット10に設けられた軸の拘束を解除するためのボタンを押し続けたり、ティーチングペンダントで拘束を解除する軸J1~J6を選択したりする必要がない。すなわち、ユーザは、動かしたいアーム121~126を把持することで、その把持したアーム121~126に応じた軸J1~J6の拘束を解除することができ、これにより把持したアーム121~126に対応した軸J1~J6を直接手で持って簡単に動かすことができる。また、アーム121~126のうちユーザが把持していないアーム121~126に対応する軸J1~J6は拘束されている。そのため、ユーザの意図に反してアーム121~126が動くことを防げる。これらの結果、ユーザは、手間なく簡単に、ロボット10のアーム121~126を直接触って動かすことができる。
【0052】
ここで、上述したように、アーム121~126のうちの1つをユーザが片手で持った場合、ユーザは、ベース11を支点にして、ユーザが把持したアーム12までを全体的に動かしたいとの意図を有する傾向がある。そこで、本実施形態の制御装置20は、各検出部151~156のうち1つの検出部15で把持を検出した場合には把持を検出した1つの当該検出部15が設けられているアーム12よりも根元側にある軸Jの拘束を解除するとともに他の軸Jを拘束する。
【0053】
これによれば、各アーム121~126のうちの1つをユーザが片手で持つことで、ユーザは、ベース11を支点にしてユーザが把持したアーム12までを一体として動かすことができる。したがって、ユーザは、アーム121~126を片手で動かす場合において、各アーム121~126のうち意図したアーム12をより直感的にかつ簡単に動かすことができる。
【0054】
また、上述したように、アーム121~126のうち2つのアーム12をユーザが両手で持って操作する場合、ユーザは、一方の手で持ったアーム12を支点にして、その一方の手で持ったアーム12から他方の手で持ったアーム12までを一体として動かしたいとの意図を有する傾向がある。そこで、本実施形態の制御装置20は、各検出部151~156のうち2つの検出部15で把持を検出した場合には把持を検出した2つの当該検出部15が設けられているアーム12の間の軸Jの拘束を解除するとともに他の軸Jを拘束する。
【0055】
これによれば、各アーム121~126のうちの2つのアーム12をユーザが両手で持つことで、ユーザは、一方の手この場合ベース11側の手で持ったアーム12を支点に、その一方の手で持ったアーム12から他方の手で持ったアーム12までを一体として動かすことができる。すなわち、これによれば、ユーザは、両手で把持した2つのアーム12及びそのアーム12の間に存在するアーム12については自由に動かすことができる。更に、他のアーム12つまり両手で把持した2つのアーム12の外側に存在するアーム12については固定される。このため、ユーザが両手で把持したアーム12を動かす際にそのアーム12の動きに引っ張られて、ユーザが動かそうとしていないアーム12までも動いてしまうことが抑制される。したがって、ユーザは、両手で把持したアーム12を意図した姿勢に容易に動かすことができる。このように、本実施形態によれば、ユーザは、アーム121~126を両手で動かす場合において、各アーム121~126のうち意図したアーム12をより直感的にかつ簡単に動かすことができる。
【0056】
また、各軸J1~J6の拘束が解除されている状態、つまりユーザがアーム121~126を把持して各アーム121~126を動かせる状態の場合、制御装置20は、アーム121~126が自重により動かないように各モータ141~146を制御する重力補正を行う。これによれば、ユーザは、各アーム121~126の重量を意識することなく、軽い力で各アーム121~126を動かすことができる。
【0057】
更に、この構成によれば、ユーザがアーム121~126を動かして目的の位置で止めようとした場合に、アーム121~126の慣性力によってその目的の位置を越えて動いてしまうことを抑制することができる。これにより、各アーム121~126を目的の位置で素早く精度良く止めることができ、その結果、例えば直接教示を行う際にはその精度を向上させることができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、
図14を参照して第2実施形態について説明する。
本実施形態は、ユーザがロボット10を触って動かす直接教示いわゆるダイレクトティーチングを行う際の制御内容である。本実施形態において、制御装置20は、
図14に示すように、
図13で示した処理内容に対してステップS21、S22の処理を更に実行する。
図14の処理の前提として、
図14に示す処理内容の実行の前に、ユーザは、ロボット10や外部装置90に設けられた図示しない操作手段を操作して、直接教示を行う直接教示モードに切り替える。
【0059】
そして、
図14に示すように、検出部151~156において把持が検出されると(ステップS12でYES)、制御装置20は、ステップS21へ処理を移行させ、例えば各アーム121~126の移動経路、移動速度、または位置などの教示内容の記録を開始する。そして、ユーザがアーム121~126から手を離すと、検出部151~156において把持が検出されなくなり(ステップS17でNO)、これにより制御装置20はユーザによる直接教示が終了したと判断する。そして、制御装置20は、ステップS22において、教示内容の記録を終了する。
【0060】
これによれば、ユーザは、各アーム121~126に触れて教示を行う直接教示を簡単に行うことができる。更に、本実施形態によれば、ユーザが各アーム121~126を把持して動かすことで、その動きが教示内容として記録される。そのため、直接教示を行っている最中にロボット10や外部装置90に設けられた図示しない操作手段を操作する機会を低減することができる。その結果、ユーザは、更に簡単に直接教示を行うことができる。
【0061】
(第3実施形態)
次に、
図15及び
図16を参照して第3実施形態について説明する。
第3実施形態において、ロボット10は、ベース検出部16を更に備えている。ベース検出部16は、上述した各検出部151~156と同様の構成であって、ベース11に設けられている。ベース検出部16は、ベース11に対するユーザの把持を検出する。そして、制御装置20は、各検出部151~156、16がユーザの把持を検出している場合には各モータ141~146のうち把持が検出された検出部151~156に応じて、
図16に示すように所定の軸J1~J6の拘束を解除する。
【0062】
この場合、制御装置20は、各検出部151~156、16のうちの2つにおいて把持が検出されなければ、いずれの軸J1~J6も拘束状態を維持する。つまり、制御装置20は、各検出部151~156、16のうち1つにおいて把持が検出されただけでは、いずれの軸J1~J6の拘束を解除しない。そして、
図16に示すように、ベース検出部16と、アーム121~126に設けられた各検出部151~156のうちの1つと、において把持が検出された場合、制御装置20は、把持が検出された検出部15が設けられているアーム12とベース11との間の軸Jの拘束を解除する。つまり、上記第1実施形態において、1つの検出部15で把持が検出された場合と同様の制御を行う。
【0063】
これによれば、ユーザは、両手でアーム121~126を把持しないと各アーム121~126を動かせない。つまり、ユーザは、ロボット10は、片手でアーム121~126を握っただけでは動かせないように構成されている。換言すれば、本実施形態のロボット10において、各アーム121~126を動かすためには、ユーザが両手で2つのアーム121~126を把持するという明確な意思を有する。したがって、例えばユーザが誤ってアーム121~126に触れたり握ってしまったりした場合であっても、各アーム121~126が誤って動いてしまうことを抑制することができる。
【0064】
なお、上記各実施形態において、検出部151~156、16は、各アーム121~126及びベース11に複数設けてられていても良く、また、各アーム121~126及びベース11の表面全体を把持の検出可能な領域としても良い。
また、ロボット10は、垂直多関節の6軸ロボットに限られず、水平多関節ロボットであっても良い。また、ロボットの軸数は任意に変更することができる。
上記説明した各実施形態は、上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0065】
図面中、1はロボットシステム、10は多関節ロボット、11はベース、12はアーム、121は第1アーム、122は第2アーム、131は第3アーム、141は第4アーム
151は第5アーム、161は第6アーム、14はモータ、141は第1モータ、142は第2モータ、143は第3モータ、144は第4モータ、145は第5モータ、146は第6モータ、15は検出部、151は第1検出部、152は第2検出部、153は第3検出部、154は第4検出部、155は第5検出部、156は第6検出部、20は制御装置、Jは軸、J1は第1軸、J2は第2軸、J3は第3軸、J4は第4軸、J5は第5軸、J6は第6軸、を示す。