(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20230711BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20230711BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G01N35/00 A
G01N35/04 A
G01N21/17 A
(21)【出願番号】P 2019056601
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】糸長 誠
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/134944(WO,A1)
【文献】特開2018-132697(JP,A)
【文献】国際公開第2018/135404(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62-21/74、33/48-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラック上に捕捉された検出対象物質に前記検出対象物質を標識する微粒子が固定されることにより反応領域が複数形成された分析用基板を用いる分析装置において、
前記分析用基板に対しレーザ光を照射することにより得られた反射光を受光し、受光レベル信号を生成する光ピックアップと、
前記分析用基板には測定範囲が予め設定されており、前記測定範囲内の複数の前記トラックのそれぞれに対して周方向に分割した複数の分割測定範囲に対応したゲート信号を生成するとともに、前記ゲート信号を用いて前記受光レベル信号から微粒子パルス信号を抽出し、抽出された前記微粒子パルス信号から前記ゲート信号ごとにパルス数をカウントし、分割測定範囲ごとにカウント値を出力する信号処理回路と、
前記信号処理回路から出力された前記カウント値に基づいて前記測定範囲におけるカウント値面内分布データを生成するカウント値面内分布生成部と、
前記カウント値面内分布データに基づいて、全ての前記反応領域の位置を推定する反応領域位置座標演算部と、
推定された全ての前記反応領域について、カウント値を算出する反応領域内カウント値演算部と、
前記反応領域位置座標演算部において推定した全ての前記反応領域から、第1の反応領域を選定する反応領域位置判定部と、
を備え、
前記反応領域位置座標演算部は、前記第1の反応領域の位置に基づいて、全ての前記反応領域の位置を特定し、
前記反応領域内カウント値演算部は、特定された全ての前記反応領域について、それぞれカウント値を算出する
分析装置。
【請求項2】
前記反応領域は、前記測定範囲の大きさに含まれる所定の大きさの形状であり、
前記反応領域位置座標演算部は、前記カウント値面内分布データに基づいて、前記所定の大きさの形状に含まれるカウント値の合計値から前記反応領域の位置を推定する
請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記反応領域位置判定部で選定する前記第1の反応領域の数は2個または3個である請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記反応領域位置判定部で選定する前記第1の反応領域の数が2個である場合、
2個の前記第1の反応領域のそれぞれの中心位置に対して、所定の大きさの正円の円周を当てはめることにより、前記円周と前記第1の反応領域のそれぞれの中心位置とに基づいて全ての前記反応領域の位置を特定する
請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記反応領域位置判定部で選定する前記第1の反応領域の数が3個である場合、
前記反応領域位置座標演算部は、選定された前記第1の反応領域のそれぞれの中心位置を通る正円の円周と前記第1の反応領域のそれぞれの中心位置とに基づいて全ての前記反応領域の位置を特定する
請求項3に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原、抗体等の生体物質を分析するための分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
疾病に関連付けられた特定の抗原または抗体をバイオマーカーとして検出することで、疾病の発見及び治療の効果等を定量的に分析する免疫検定法(immunoassay)が知られている。
【0003】
特許文献1では、検体検出用ユニットは、複数の貫通孔を有したカートリッジと分析用基板とにより反応領域となる複数のウェルが形成されている。なお、特許文献1では、分析用基板には、分析装置が微粒子をカウントするための範囲である測定範囲が予め設定されており、ウェルは測定領域と貫通孔とを一致させた位置に形成されている。
【0004】
更に、上記の検体検出用ユニットを用いた分析法として以下のことが記載されている。まず、ウェル内に抗体を含む緩衝液を注入して分析用基板上に抗体を固定した後に、洗浄し、乾燥する。次に、このウェル内に検出対象物質を含む試料液を注入して、抗体に検出対象物質を結合させた後に、洗浄し、乾燥する。さらに、このウェル内に検出対象物質と結合する微粒子を含む緩衝液を注入して、この検出対象物質に微粒子を結合させて、検出対象物質が抗体と微粒子とによって捕捉された反応領域を形成する。反応領域が形成された検体検出用ユニットから、カートリッジを取り外し、カートリッジが取り外された分析用基板を分析装置にかけ、測定範囲から検出した微粒子をカウントすることにより、検出対象物質を間接的に定量する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ウェルと分析用基板との位置合わせ精度等により、反応領域が分析用基板上に予め設定された測定範囲からずれた位置に形成される場合がある。反応領域が測定範囲からずれると、測定範囲における微粒子の定量を精度よくおこなうことができず、分析精度を悪化させる要因となる。
【0007】
この対策として、反応領域のずれ量を考慮して、反応領域が測定範囲からはずれないように測定範囲を反応領域よりも小さく設定すると、反応領域内で抗体と検出対象物質の間の結合状況又は検出対象物質と微粒子との間の結合状況にばらつきが発生した場合、カウント値が大きい領域と小さい領域とが混在するため、カウント値の面内分布が発生し、分析精度を悪化させる要因となる。
【0008】
本発明は、反応領域が分析用基板上に予め設定された測定範囲からずれた位置に形成された場合であっても、微粒子を精度よく定量することができ、分析精度の悪化を抑制することができる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、トラック上に捕捉された検出対象物質に前記検出対象物質を標識する微粒子が固定されることにより反応領域が複数形成された分析用基板を用いる分析装置において、前記分析用基板に対しレーザ光を照射することにより得られた反射光を受光し、受光レベル信号を生成する光ピックアップと、前記分析用基板には測定範囲が予め設定されており、前記測定範囲内の複数の前記トラックのそれぞれに対して周方向に分割した複数の分割測定範囲に対応したゲート信号を生成するとともに、前記ゲート信号を用いて前記受光レベル信号から微粒子パルス信号を抽出し、抽出された前記微粒子パルス信号から前記ゲート信号ごとにパルス数をカウントし、分割測定範囲ごとにカウント値を出力する信号処理回路と、前記信号処理回路から出力された前記カウント値に基づいて前記測定範囲におけるカウント値面内分布データを生成するカウント値面内分布生成部と、前記カウント値面内分布データに基づいて、全ての前記反応領域の位置を推定する反応領域位置座標演算部と、推定された全ての前記反応領域について、カウント値を算出する反応領域内カウント値演算部と、前記反応領域位置座標演算部において推定した全ての前記反応領域から、第1の反応領域を選定する反応領域位置判定部とを備え、前記反応領域位置座標演算部は、前記第1の反応領域の位置に基づいて、全ての前記反応領域の位置を特定し、前記反応領域内カウント値演算部は、特定された全ての前記反応領域について、それぞれカウント値を算出する分析装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分析装置によれば、反応領域が分析用基板上の目的の位置からずれた位置に形成された場合であっても、微粒子を精度よく定量することができ、分析精度の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態の分析装置の一例を示す構成図である。
【
図2】反応領域において検出対象物質が抗体と微粒子とによって分析用基板上にサンドイッチ捕獲されている状態を模式的に示す図である。
【
図3A】一実施形態の分析方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3B】一実施形態の分析方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】基準位置検出信号と計測ゲート信号と受光レベル信号と微粒子パルス信号との関係の一例を示す図である。
【
図5】反応領域と測定範囲とトラックと計測ゲート信号との関係の一例を示す図である。
【
図6】テーブル形式のカウントデータの一例を示す図である。
【
図7】反応領域と位相基準と回転位相誤差との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を用いて、一実施形態の分析装置の構成例を説明する。分析装置1は、ターンテーブル2と、クランパ3と、ターンテーブル駆動部4と、ターンテーブル駆動回路5と、基準位置検出センサ6と、ガイド軸7と、光ピックアップ8と、光ピックアップ駆動回路9とを備える。さらに、分析装置1は、信号処理回路11と、制御部12と、カウント値面内分布生成部13と、反応領域位置座標演算部14と、反応領域位置判定部15と、反応領域内カウント値演算部16とを備える。信号処理回路11、制御部12、カウント値面内分布生成部13、反応領域位置座標演算部14、反応領域位置判定部15、及び反応領域内カウント値演算部16として、コンピュータ機器またはCPU(Central Processing Unit)を用いてもよい。
【0014】
分析用基板20上には複数の反応領域30が形成されている。分析用基板20は、反応領域30が下向きになるようにターンテーブル2上に載置される。分析用基板20は、例えば円板形状を有する光ディスクである。クランパ3は、ターンテーブル2に対して離隔する方向及び接近する方向に駆動される。分析用基板20は、クランパ3とターンテーブル2とによって保持される。
【0015】
ターンテーブル駆動部4は、ターンテーブル2を分析用基板20及びクランパ3と共に、回転軸C2回りに回転駆動させる。ターンテーブル駆動部4としてスピンドルモータを用いてもよい。ターンテーブル駆動回路5はターンテーブル駆動部4を制御する。例えば、ターンテーブル駆動回路5は、ターンテーブル2が分析用基板20及びクランパ3と共に一定の線速度で回転するようにターンテーブル駆動部4を制御する。
【0016】
基準位置検出センサ6は、分析用基板20の外周部の近傍に配置されている。基準位置検出センサ6は、例えばフォトリフレクタ等の光センサである。基準位置検出センサ6は、分析用基板20が回転している状態で、分析用基板20の外周部に検出光6aを照射し、分析用基板20からの反射光を受光する。
【0017】
基準位置検出センサ6は、分析用基板20の切欠き部21を検出して基準位置検出信号KSを生成し、信号処理回路11へ出力する。基準位置検出信号KSは、例えば切欠き部21が基準位置検出センサ6の検出位置、即ち検出光6aが照射される位置に到達すると立ち上がってオン状態となり、通過すると立ち下がってオフ状態となるパルス信号である。
【0018】
即ち、基準位置検出センサ6は、分析用基板20の回転周期及びトラック毎に基準位置を検出する。基準位置検出センサ6として透過型の光センサを用いてもよい。この場合、基準位置検出センサ6は、分析用基板20に検出光6aを照射し、切欠き部21を通過する検出光6aを受光することにより、分析用基板20の回転周期及びトラック毎に基準位置を検出する。
【0019】
ガイド軸7は、分析用基板20と平行に、かつ、分析用基板20の半径方向に沿って配置されている。光ピックアップ8は、ガイド軸7に支持されている。光ピックアップ8は対物レンズ81を有する。光ピックアップ駆動回路9は、光ピックアップ8の駆動を制御する。光ピックアップ駆動回路9は、光ピックアップ8をガイド軸7に沿って移動させたり、光ピックアップ8の対物レンズ81を上下方向に移動させたりする。光ピックアップ8は、ガイド軸7に沿って、ターンテーブル2の回転軸C2に直交する方向であり、分析用基板20の半径方向に、かつ、分析用基板20と平行に駆動する。
【0020】
光ピックアップ8は、分析用基板20に向けてレーザ光82を照射する。レーザ光82は、対物レンズ81によって分析用基板20の反応領域30が形成されているトラック領域22に集光される。分析用基板20を回転させた状態で、光ピックアップ8を分析用基板20の半径方向に駆動させる。光ピックアップ8は、分析用基板20からの反射光を受光する。光ピックアップ8は、反射光の受光レベルを検出して受光レベル信号JSを生成し、信号処理回路11へ出力する。
【0021】
制御部12は、ターンテーブル駆動回路5、光ピックアップ駆動回路9、及び信号処理回路11を制御する。制御部12は、ターンテーブル駆動回路5を制御して、ターンテーブル2を例えば一定の線速度で回転させたり、停止させたりする。制御部12は、光ピックアップ駆動回路9を制御して、光ピックアップ8を分析用基板20の半径方向の目標位置まで移動させたり、レーザ光82がトラック領域22に集光されるように対物レンズ81の上下位置を調整したりする。
【0022】
制御部12は、計測パラメータSPを信号処理回路11へ出力する。計測パラメータSPは、複数の計測ゲート信号GSを生成するための計測パラメータであり、反応領域30の数、切欠き部21から各反応領域30までの距離に相当する時間、及び各トラックにおける計測ゲート信号GSのタイミング及びゲート幅等の計測情報を含む。信号処理回路11は、例えばカウンタである。カウント値面内分布生成部13、反応領域位置座標演算部14、反応領域位置判定部15、及び、反応領域内カウント値演算部16の処理については後述する。
【0023】
図2は、
図1に示す分析用基板20を上下に反転させた状態を示している。反応領域30には、検出対象物質31の特定の抗原と結合する複数の抗体32が分析用基板20上に固定されている。検出対象物質31は抗体32と結合して分析用基板20上に固定されている。検出対象物質31を標識する微粒子33の表面には、検出対象物質31の特定の抗原と結合する複数の抗体が固定されている。微粒子33は検出対象物質31と特異的に結合して分析用基板20上に捕捉されている。従って、検出対象物質31は、抗体32と微粒子33とによって分析用基板20のトラック上にサンドイッチ法により捕捉されている。検出対象物質31は例えばエクソソームである。
【0024】
図3A及び
図3Bに示すフローチャート、及び
図4~
図7を用いて、一実施形態の分析方法の一例を説明する。
図3Aにおいて、制御部12は、ステップS1にて、分析用基板20が例えば一定の線速度で回転するようにターンテーブル駆動回路5を制御し、ターンテーブル駆動部4にターンテーブル2を回転駆動させる。
【0025】
制御部12は、ステップS2にて、基準位置検出センサ6から分析用基板20に向けて検出光6aを照射させる。制御部12は、ステップS3にて、光ピックアップ8から分析用基板20に向けてレーザ光82を照射させる。なお、制御部12は、ステップS2の後にステップS3を実行してもよいし、ステップS3の後にステップS2を実行してもよいし、ステップS2とステップS3とを同時に実行してもよい。
【0026】
制御部12は、ステップS4にて、光ピックアップ駆動回路9を制御し、分析用基板20の目的のトラックにレーザ光82が照射されるように光ピックアップ8を移動させる。基準位置検出センサ6は、ステップS5にて、切欠き部21を検出することにより基準位置検出信号KSを生成し、信号処理回路11へ出力する。
【0027】
光ピックアップ8は、ステップS6にて、分析用基板20からの反射光を受光する。光ピックアップ8は、反射光の受光レベルを検出して受光レベル信号JS(第1の検出信号)を生成し、信号処理回路11へ出力する。制御部12は、ステップS7にて、計測パラメータSPを信号処理回路11へ出力する。
【0028】
信号処理回路11は、基準位置検出センサ6から基準位置検出信号KSを取得し、光ピックアップ8から受光レベル信号JSを取得し、制御部12から計測パラメータSP及びトラック情報TFを取得する。トラック情報TFは、上記のステップS4においてレーザ光82が照射される目的のトラック(測定対象のトラック)の情報(例えばトラック番号またはトラック位置等の情報)を含む。
【0029】
図4に示すように、信号処理回路11は、ステップS8にて、基準位置検出信号KSとトラック情報TFとに基づいて、測定対象のトラックTRにおける位相SAを取得する。位相SAは、トラックごとに予め設定されている。信号処理回路11は、トラックごとに設定された位相SAをテーブル形式のデータとして記憶する記憶部を有していてもよい。信号処理回路11は、トラック情報TFから現在測定しているトラックのトラック番号またはトラック位置を認識し、そのトラックに対応する位相SAを取得することができる。
【0030】
信号処理回路11は、基準位置検出信号KSと位相SAと計測パラメータSPとに基づいて、複数の計測ゲート信号GSを生成する。
図4において、(a)はトラックTRにおける基準位置検出信号KSを示し、(b)~(g)はトラックTRにおける複数の計測ゲート信号GS1~GSmを示し、(h)はトラックTRにおける受光レベル信号JSを示している。
【0031】
例えば、信号処理回路11は、現在測定しているトラックにおいて、計測パラメータSPに基づいて、基準位置検出信号KSの立ち下がり時点から位相SA後の時点で立ち上がる計測ゲート信号GS1を生成する。さらに、信号処理回路11は、計測ゲート信号GS1の立ち下がり時点で立ち上がる計測ゲート信号GS2を生成する。このようにして、信号処理回路11は、現在測定しているトラックにおいて、複数の計測ゲート信号GSを生成する。さらに、信号処理回路11は、各トラックにおける基準位置検出信号KSと位相SAと計測パラメータSPとに基づいて、トラックごとに複数の計測ゲート信号GSを生成する。即ち、信号処理回路11は、測定範囲RM内の複数のトラックTRのそれぞれに対して周方向に分割した複数の分割測定範囲に対応したゲート信号GSを生成する。
【0032】
図5は、反応領域30と、計測ゲート信号GS1~GSmによる測定範囲RMと、測定対象のトラックTR1~TRnとの位置関係を示している。
図5には、分析用基板20上の目的の位置に形成された場合の反応領域30を実線で示し、目的の位置からずれた位置に形成された場合の反応領域30を2点鎖線で示している。反応領域30が目的の位置からずれた位置に形成されたとしても、反応領域30が測定範囲RM内に位置するように、測定範囲RMは反応領域30よりも大きく設定されていることが望ましい。
【0033】
信号処理回路11は、ステップS9にて、全てのトラックTR1~TRnにおいて、計測ゲート信号GS1~GSmごとに、光ピックアップ8から出力された受光レベル信号JSから微粒子パルス信号BS1~BSm(第2の検出信号)を抽出して微粒子パルス信号BS1~BSmごとにパルス数をカウントし、全てのトラックTR1~TRnの計測ゲート信号GS1~GSmごとのカウント値CVを取得する。即ち、信号処理回路11は、反応領域30に捕捉されている検出対象物質31と特異的に結合している微粒子33を、計測ゲート信号GSごとにカウントする。
図4の(h)は、
図5に示すトラックTRkにおける微粒子パルス信号BS1~BSmの一例を示している。
【0034】
カウント値面内分布生成部13は、ステップS10にて、信号処理回路11から制御部12を介して、基準位置検出信号KS、トラック情報TF、及び、カウント値CVを取得し、測定範囲RMにおけるカウント値面内分布データを、テーブル形式のカウントデータTCDとして生成する。以下、テーブル形式のカウントデータTCDを、単にテーブルデータTCDとする。
【0035】
図6はテーブルデータTCDの一例を示している。
図6中の数値は、測定範囲RMにおけるトラックTR1~TRnの計測ゲート信号GS1~GSmごとの微粒子パルス信号BS内のパルス数のカウント値CVの一例を示している。なお、
図6では、カウント値CVを10、50、または100の数値で示しているが、実際には実カウント値が入力される。即ち、反応領域30では、測定範囲RM内の複数のトラックTRのそれぞれに対して周方向に分割した複数の分割測定範囲ごとに微粒子パルス信号BS内のパルス数がカウントされることになる。
【0036】
反応領域位置座標演算部14は、ステップS11にて、カウント値面内分布生成部13からテーブルデータTCDを取得する。さらに、反応領域位置座標演算部14は、テーブルデータTCDからカウント値の面内分布を取得し、反応領域30の位置(例えば反応領域30の中心座標C30)を推定する。反応領域位置座標演算部14は、カウント値面内分布データに基づいて、所定の大きさの形状に含まれるカウント値CVの合計値から反応領域30の位置を推定する。
【0037】
反応領域30が所定の半径を有する円として設定されている場合、反応領域位置座標演算部14は、テーブルデータTCDにおけるカウント値の面内分布を画像として処理することにより、上記の円に対応する領域を特定し、円の中心位置から反応領域30の中心座標C30を推定してもよい。反応領域位置座標演算部14は、所定の半径と中心座標C30とから、反応領域30の位置(範囲)を推定してもよい。反応領域位置座標演算部14は、テーブルデータTCDに対して、反応領域30に対応する円を走査し、円内のカウント値の合計が最大となる円の中心位置(中心)を反応領域30の位置(中心座標C30)としてもよい。
【0038】
反応領域位置座標演算部14は、カウント値の面内分布から、検出の確からしさを示すスコアSCを取得してもよい。スコアSCは一般的に画像認識で用いられる指標であり、面内分布から得られる図形と所定の半径を有する円とが一致する度合いを示す。スコアSCは、一致する度合いが高いほど高い値を示す。
【0039】
制御部12、基準位置検出センサ6、光ピックアップ8、信号処理回路11、カウント値面内分布生成部13、または反応領域位置座標演算部14は、全ての反応領域30について、ステップS4~S11の処理を実行する。これにより、反応領域位置座標演算部14は、全ての反応領域30の位置(中心座標C30)を推定し、スコアSCを取得する。
【0040】
反応領域位置判定部15は、ステップS12にて、反応領域位置座標演算部14から、全ての反応領域30の位置(中心座標C30)を推定し、スコアSCを取得する。さらに、反応領域位置判定部15は、反応領域30の位置(中心座標C30)及びスコアSCの少なくともいずれかを判定し、判定結果に基づいて、基準となる反応領域30(第1の反応領域)を選定する。反応領域位置判定部15で選定する第1の反応領域の数は2個または3個である。
【0041】
反応領域位置判定部15は、全ての反応領域30について、例えば中心座標C30が所定の領域内に位置しているか否かを判定し、中心座標C30が所定の領域内に位置している反応領域30を、基準となる反応領域30として選定してもよい。
【0042】
反応領域位置判定部15は、全ての反応領域30について、例えばスコアSCが閾値以上であるか否かを判定し、スコアSCが閾値以上である反応領域30を、基準となる反応領域30として選定してもよい。反応領域位置判定部15は、例えば連続するゲート信号GSのカウント値の差が閾値よりも大きい反応領域30を、基準となる反応領域30として選定してもよい。
【0043】
オペレータがカウント値の面内分布を確認し、GUI(Graphical User Interface)等により、基準となる反応領域30を選定してもよい。なお、後述する精度のよい円CEを決定するためには、互いに離れた位置の複数の反応領域30を、基準となる反応領域30として選定することが好ましい。
【0044】
図7は、分析用基板20上に8つの反応領域30が同一円周上に等間隔に形成されている状態を示している。8つの反応領域30を区別するために、
図7には、反応領域30a~30hとして示している。以下に、ステップS12にて、反応領域位置判定部15が、基準となる反応領域30として
図7に示す3つの反応領域30a、30d、及び30fを選定した場合について説明する。
【0045】
図3Bにおいて、反応領域位置座標演算部14は、ステップS21にて、反応領域位置判定部15から判定結果JRを取得する。さらに、反応領域位置座標演算部14は、判定結果JRから、基準となる反応領域30a、30d、及び30f(第1の反応領域)の中心座標C30a、C30d、及びC30fを取得する。さらに、反応領域位置座標演算部14は、中心座標C30a、C30d、及びC30fから、例えば反応領域30a、30d、及び30fの各中心を通る正円として円CEを決定する。即ち、反応領域30a、30d、及び30fは、各中心が正円である円CE上に位置するように配置されていることになる。さらに、反応領域位置座標演算部14は、円CEの中心点CECを算出する。
【0046】
反応領域位置座標演算部14は、ステップS22にて、反応領域30aの回転位相誤差PDa、反応領域30dの回転位相誤差PDd、及び、反応領域30fの回転位相誤差PDfを算出する。回転位相誤差PDaは、位相基準PRaから反応領域30aの例えば中心までの回転方向の位相差である。位相基準PRaは任意に設定することができる。
【0047】
位相基準PRaから位相基準PRdまで回転方向の位相差は、関係式3/8(n=8)×2πにより算出することができる。nは分析用基板20上に形成されている反応領域30の数である。回転位相誤差PDdは、位相基準PRdから反応領域30dの例えば中心までの回転方向の位相差である。位相基準PRaから位相基準PRfまで回転方向の位相差は、関係式5/8(n=8)×2πにより算出することができる。回転位相誤差PDfは、位相基準PRfから反応領域30fの例えば中心までの回転方向の位相差である。さらに、反応領域位置座標演算部14は、回転位相誤差PDa、PDd、及びPDfの例えば平均値を算出し、平均回転位相誤差APDを取得する。
【0048】
反応領域位置座標演算部14は、ステップS23にて、基準となる反応領域30a、30d、及び30f以外の反応領域30b、30c、30e、30g、及び30h(第2の反応領域)の位置を特定する。具体的には、反応領域位置座標演算部14は、位相基準PRbと平均回転位相誤差APDとに基づいて、反応領域30bの中心が円CE上に位置するときの中心座標C30bを算出する。同様に、反応領域位置座標演算部14は、位相基準PRc、PRe、PRg、及びPRhと平均回転位相誤差APDとに基づいて、反応領域30c、30e、30g、及び30hの各中心が円CE上に位置するときの中心座標C30c、C30e、C30g、及びC30hを算出する。即ち、反応領域位置座標演算部14は、選定された第1の反応領域のそれぞれの中心位置を通る円CEの円周と前記第1の反応領域のそれぞれの中心位置とに基づいて全ての前記反応領域の位置を特定することができる。
【0049】
さらに、反応領域位置座標演算部14は、中心座標C30a~C30hと反応領域30の設計上の半径(または直径)とに基づいて、反応領域30a~30hの位置(範囲)を特定することができる。さらに、反応領域位置座標演算部14は、反応領域30a~30hの位置情報CF、及び、テーブルデータTCDを反応領域内カウント値演算部16へ出力する。位置情報CFは、反応領域30の設計上の半径(または直径)と中心座標C30a~C30hとを含む。
【0050】
反応領域内カウント値演算部16は、ステップS24にて、位置情報CFに基づいて、テーブルデータTCDから、反応領域30a~30hに対応するカウント値を特定し、反応領域30ごとに合算する。これにより、分析装置1は、各反応領域30のカウント値を算出することができる。分析装置1は、反応領域30ごとに合算されたカウント値を表示装置等へ出力してもよい。なお、基準となる反応領域30として4つ以上の反応領域30が選定された場合についても、同様の手順により、各反応領域30のカウント値を算出することができる。
【0051】
以下に、ステップS12にて、反応領域位置判定部15が、基準となる反応領域30として2つの反応領域30a及び30dを選定した場合について説明する。
図3Bにおいて、反応領域位置座標演算部14は、ステップS31にて、反応領域位置判定部15から判定結果JRを取得する。さらに、反応領域位置座標演算部14は、判定結果JRから、基準となる反応領域30a及び30d(第1の反応領域)の中心座標C30a及びC30dを取得する。さらに、反応領域位置座標演算部14は、中心座標C30a及びC30dそれぞれの中心位置に対して、予め設定されている大きさの円CEの円周を当てはめることにより、例えば反応領域30a及び30dの各中心を通る円CEを決定する。
【0052】
円CEの半径(または直径)は予め設定されているため、中心座標C30a及びC30dと円CEの半径とに基づいて、反応領域30a及び30dの各中心を通る円CEを決定することができる。即ち、反応領域30a及び30dは、各中心が円CE上に位置するように配置されていることになる。さらに、反応領域位置座標演算部14は、円CEの中心点CECを算出する。
【0053】
反応領域位置座標演算部14は、ステップS32にて、反応領域30aの回転位相誤差PDa、及び、反応領域30dの回転位相誤差PDdを算出する。さらに、反応領域位置座標演算部14は、回転位相誤差PDa及びPDdの例えば平均値を算出し、平均回転位相誤差APDを取得する。
【0054】
反応領域位置座標演算部14は、ステップS33にて、基準となる反応領域30a及び30d以外の反応領域30b、30c、及び30e~30h(第2の反応領域)の位置を特定する。反応領域30b、30c、及び30e~30hの位置(中心座標C30b、C30c、及びC30e~C30h)は、ステップS23と同様の手順により特定することができる。即ち、反応領域位置座標演算部14は、ステップS31にて決定した円CEの円周と第1の反応領域のそれぞれの中心位置とに基づいて全ての反応領域の位置を特定することができる。さらに、反応領域位置座標演算部14は、反応領域30a~30hの位置情報CF、及び、テーブルデータTCDを反応領域内カウント値演算部16へ出力する。
【0055】
反応領域内カウント値演算部16は、ステップS34にて、位置情報CFに基づいて、テーブルデータTCDから、反応領域30a~30hに対応するカウント値を特定し、反応領域30ごとに合算する。これにより、分析装置1は、各反応領域30のカウント値のみを取得することができる。分析装置1は、反応領域30ごとに合算されたカウント値を表示装置等へ出力してもよい。
【0056】
本実施形態の分析装置1及び分析方法では、テーブルデータTCDを生成し、テーブルデータTCDに基づいて各反応領域30の位置を推定し、基準となる反応領域30を選定する。さらに、本実施形態の分析装置1及び分析方法では、基準となる反応領域30に基づいて全ての反応領域30が配置される円CEを決定し、回転位相誤差PDに基づいて各反応領域30の位置を特定し、特定された反応領域30に対応するカウント値を特定することにより、テーブルデータTCDから反応領域30に対応する範囲のカウント値のみを取得することができる。
【0057】
本実施形態の分析装置及び分析方法では、反応領域30の形状が所定の半径を有する円として説明したが、反応領域30の形状は円形に限らず、中心が特定できる形状あれば他の形状であってもよい。
【0058】
従って、本実施形態の分析装置1及び分析方法によれば、反応領域30が分析用基板20上の目的の位置からずれた位置に形成されたとしても、ずれた位置における反応領域30のカウント値のみを抽出することができるため、分析精度の悪化を抑制することができる。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 分析装置
11 信号処理回路
12 制御部
13 カウント値面内分布生成部
14 反応領域位置座標演算部
15 反応領域位置判定部
16 反応領域内カウント値演算部
20 分析用基板
30(30a~30h) 反応領域
31 検出対象物質
33 微粒子
CV カウント値
GS(GS1~GSm) 計測ゲート信号
TCD テーブル形式のカウントデータ(テーブルデータ)