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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】汚染水処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20230711BHJP
   B01D 15/14 20060101ALI20230711BHJP
   G21F 9/04 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B01D19/00 B
B01D15/14
G21F9/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019059136
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2019171373
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2018061137
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】梅田 陽子
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-234430(JP,A)
【文献】特開2012-215450(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1423161(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00-19/04
B01D 15/00-15/42
G21F 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液貯蔵槽と、気泡トラップと、処理材を格納した液体処理容器と、がこの順で配管を介して連結されてなる汚染水処理システムであって、
前記被処理液貯蔵槽から前記液体処理容器に向けて通液される被処理液中に生じる気泡を前記気泡トラップ内部に滞留させ、それにより前記液体処理容器中における気泡の発生を抑制するように構成されており、
前記気泡トラップの上部には、気泡トラップに前記被処理液を導入する導入配管(A)が設けられており、
前記気泡トラップと前記液体処理容器との間には、これらを連結する接続配管(B)が設けられており、
前記接続配管(B)の所定の位置で前記気泡トラップと前記液体処理容器との間の流路を遮断した状態で、接続配管(B)の前記所定の位置又はその上流において前記気泡トラップへ向けて前記被処理液を注入する被処理液注入手段が設けられており、かつ
前記接続配管(A)の所定の位置で前記被処理液貯蔵槽と前記気泡トラップとの間の流路を遮断した状態で、接続配管(A)の前記所定の位置又はその下流において気体を抜出する気体抜出手段が設けられており、
さらに送液ポンプを備え、前記送液ポンプは、前記被処理液貯蔵槽と前記気泡トラップとの間に配管を介して連結されている、汚染水処理システム
【請求項2】
前記気泡トラップは、前記配管の内径よりも大きい内径を有する中空管状の容器である、請求項1に記載の汚染水処理システム
【請求項3】
接続配管(B)に設けられた被処理液注入手段及び接続配管(A)に設けられた気体抜出手段が、三方コックであって、前記気泡トラップに蓄積した気泡を排出する際に、
前記接続配管(B)に設けられた三方コックにより、前記気泡トラップと前記液体処理容器との間の流路を遮断し、そして前記気泡トラップへ向けて前記被処理液を注入し、かつ、
前記接続配管(A)に設けられた三方コックにより、前記被処理液貯蔵槽と前記気泡トラップとの間の流路を遮断し、そして気体を抜出すように構成されている、請求項1に記載の汚染水処理システム
【請求項4】
前記気泡トラップは、その上部に気泡抜出し用の配管を備えた容器である、請求項1又は2に記載の汚染水処理システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な目的のために、ポンプ等を用いて液体を、吸着材等の処理材を収容した容器に通液することによって液体を処理することが行われている。例えば、従来、ポンプを用いて汚染水を吸着材が充填された吸着塔内に通液し、対象物質を吸着塔内の吸着材に吸着させることにより汚染水を浄化するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、このような処理システムにおいて用いられる吸着材としては、様々な種類のものが知られているが、吸着材は種類によって吸着性能や経時的な脆化に対する耐性(耐脆化性)が大きく異なる。よって、実際に吸着材を処理システムに導入する前に、模擬的なシステムを用いて、予め吸着材の吸着性能や耐脆化性を評価する試験を行うことが望ましい。そこで、従来、ポンプを用いてカラム通液して、定期的に吸着量をモニターすることによる吸着性能評価が行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)においても、液体の移動相をポンプ等によって加圧してシリカゲル等が充填されたカラムを通過させ、分析種を固定相及び移動相との相互作用(吸着、分配、イオン交換、サイズ排除など)の差を利用して分離するということが行われる。
【0004】
上記のような液体処理システムにおいては、処理を継続していると、カラム等の処理容器内の上方に気泡が発生することがある。ダウンフローの場合、気泡の量が増えると、カラム内液面が下がり、液滴により処理材上面が動いてしまい、均一なカラム充填層を形成できなくなる。また、カラム内液面がさらに下がって、処理材が気相中に露出された状態になると、効率的な処理ができなくなる。一方、アップフローの場合は、充填層内に気泡だまりができて液との接触が不均一となり、あるいは、気泡が処理容器上方に抜ける場合には、充填層構造が崩れ、一時的な撹拌が起きる。この場合、吸着材の吸着性能や耐脆化性を評価する試験においては正しい性能評価が行えなくなる可能性がある。
また、HPLCにおいては、カラム内に気泡が存在すると正確な検出結果が得られないため、カラム内に僅かな気泡が侵入することも望ましくないとされている。
【0005】
上記のような気泡は、配管接合部の緩みから入る可能性もあるが、通液溶液中の溶存ガスからも発生すると考えられる。特に、ポンプを用いて送液をする場合には、キャビテーションにより気泡が発生するものと考えられる。
処理容器内における気泡の発生を確実に防止するためには、処理液を十分に脱気すればよいが、そのためには、煩雑な作業や複雑な装置が必要になる。従って、例えば、上記の吸着材の吸着性能や耐脆化性を評価する試験に用いる模擬的なシステムを用いた吸着材の評価においては、通例は、気泡が発生する度にカラムを軽くたたいて気泡を抜くという方法がとられている。しかし、この場合、処理容器の内容物が攪拌されることにより、吸着材性能の妥当な評価が難しくなるという問題がある。
一方、HPLCにおいては、僅かな気泡の発生も好ましくないため、通常、以下の(1)~(3)の何れかの方法により移動相の脱気を行っている:(1)移動相をビンに入れ、撹拌しながらアスピレーターで吸引するなどの方法で減圧下におく減圧法、又は移動相を入れたビンを、超音波洗浄槽の中に数分間おく超音波法によりオフラインで脱気する方法、又はこれらの組み合わせ(2)移動相貯槽とポンプの間において、減圧下で気体透過機能性高分子膜から移動相中の溶存気体のみを透過させて除去する方法、及び(3)移動相にヘリウムガスを吹き込んで空気を追い出す方法。しかし、これ等はいずれも煩雑な作業や複雑な装置が必要になる。更に、これ等の方法では、ポンプ内でキャビテーションにより発生する気泡は防止することができない。
尚、HPLCにおいてはペリスタルティック(蠕動式)ポンプが用いられることが多い。ペリスタルティックポンプの場合、気泡の発生は抑制されるが、チューブをしごいて送液するというこのポンプの特性上、送液に脈動が生ずる、チューブなどの部品の消耗が比較的早く、チューブの劣化等によって流量が変化してしまう、などの問題があり、ペリスタルティックポンプ以外のポンプを利用しても気泡の発生が抑制できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-145687号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】梅田 陽子著「放射性汚染水吸着材中セシウムの脱離挙動の基礎研究(BASIC RESEARCH ABOUT DESORPTION BEHAVIOR OF CESIUM ON ADSORBENTS FOR THE RADIOACTIVE CONTAMINATED WATER)」火力原子力発電大会論文集、vol.12、2016年6月、p.24-p.30.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、処理材を格納した液体処理容器における気泡の発生を、簡便に、かつ、確実に防止することができる液体処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 被処理液貯蔵槽と、気泡トラップと、処理材を格納した液体処理容器と、がこの順で配管を介して連結されてなる液体処理システムであって、
前記被処理液貯蔵槽から前記液体処理容器に向けて通液される被処理液中に生じる気泡を前記気泡トラップ内部に滞留させ、それにより前記液体処理容器中における気泡の発生を抑制するように構成されている
液体処理システム。
[2] 前記気泡トラップは、前記配管の内径よりも大きい内径を有する中空管状の容器である、[1]に記載の液体処理システム。
[3] 前記気泡トラップの上部には、気泡トラップに前記被処理液を導入する導入配管(A)が設けられており、
前記気泡トラップと前記液体処理容器との間には、これらを連結する接続配管(B)が設けられており、
前記接続配管(B)の所定の位置で前記気泡トラップと前記液体処理容器との間の流路を遮断した状態で、接続配管(B)の前記所定の位置又はその上流において前記気泡トラップへ向けて前記被処理液を注入する被処理液注入手段が設けられており、かつ
前記接続配管(A)の所定の位置で前記被処理液貯蔵槽と前記気泡トラップとの間の流路を遮断した状態で、接続配管(A)の前記所定の位置又はその下流において気体を抜出する気体抜出手段が設けられている、[1]又は[2]に記載の液体処理システム。
[4] 接続配管(B)に設けられた被処理液注入手段及び接続配管(A)に設けられた気体抜出手段が、三方コックであって、前記気泡トラップに蓄積した気泡を排出する際に、
前記接続配管(B)に設けられた三方コックにより、前記気泡トラップと前記液体処理容器との間の流路を遮断し、そして前記気泡トラップへ向けて前記被処理液を注入し、かつ、
前記接続配管(A)に設けられた三方コックにより、前記被処理液貯蔵槽と前記気泡トラップとの間の流路を遮断し、そして気体を抜出すように構成されている、[3]に記載の液体処理システム。
[5] 前記気泡トラップは、その上部に気泡抜出し用の配管を備えた容器である、[1]又は[2]に記載の液体処理システム。
[6]さらに送液ポンプを備え、前記送液ポンプは、前記被処理液貯蔵槽と前記気泡トラップとの間に配管を介して連結されている、[1]~[5]の何れか1項に記載の液体処理システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体処理システムによれば、処理材を格納した液体処理容器における気泡の発生を、簡便に、かつ、確実に防止するこができ、それにより液体の処理を、効率よく、かつ、効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の液体処理システムの一例であって、汚染水処理に用いる吸着材吸着性能や耐脆化性の評価のためのシステムの模式図である。
図2図1の液体処理システムにおいて気泡を除去する方法を示した模式図である。
図3】本発明の液体処理システムにおける気泡トラップの他の一例の模式図である。
図4】本発明の液体処理システムにおける気泡トラップの更に他の一例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液体処理システムは、被処理液貯蔵槽と、気泡トラップと、処理材を格納した液体処理容器と、がこの順で配管を介して連結されてなる液体処理システムである。
ここで、「被処理液」とは、分離すべき対象物質を含む液体を意味し、この分離すべき対象物質は、汚染水の浄化の場合のように液体から除去すべきものであっても、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の場合のように液体から分離、検出するものであっても良い。
以下、本発明の液体処理システムが、汚染水処理に用いる吸着材吸着性能や耐脆化性の評価のためのシステムである場合を例にとり、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の液体処理システムの一例であって、汚染水処理に用いる吸着材吸着性能や耐脆化性の評価のためのシステム(以下、単に「評価システム」と称することもある。)の模式図である。
本実施態様の評価システムは、被処理液貯蔵槽21と、気泡トラップ24aと、吸着材(処理材)26を格納したカラム(液体処理容器)25と、がこの順で配管11,12,13を介して連結されてなるシステムである。
本実施態様の評価システムを用いて、被処理液22を処理する場合には、被処理液貯蔵槽21に収容された被処理液22が、送液ポンプ23により配管11及び配管12を介して気泡トラップ24aに送液される。その後、被処理液22は、配管13を介して、吸着材26を格納したカラム25に通液され、処理後の液28は配管14を介して処理済液貯蔵槽27に送液される。尚、図1に示す態様においては、被処理液22を導入する配管13がカラム25の上部に接続されており、処理後の液28を抜き出す配管14がカラム25の底部に接続されている。しかし、本発明においては、配管13がカラム25の底部に接続され、配管14がカラム25の上部に接続される構成(即ち、カラムの下から上に向けて通水する構成)であっても良い。カラム25における気泡の発生が防止される限り、カラム25の上から下に向けて通水する構成であっても、カラム25の下から上に向けて通水する構成であっても構わないが、万一、カラム25に気泡が混入してしまう場合を考慮するならば、カラム25の下から上に向けて通水する構成の方が、通水圧の他に浮力も働くため、混入してしまった気泡が容易にカラム25外に放出されるという利点がある。
【0013】
≪被処理液貯蔵槽≫
被処理液貯蔵槽21は、被処理液22を収容するのに適した容器であれば特に制限はない。
また、被処理液22についても特に制限はなく、放射性物質で汚染された放射能汚染水のみならず、非放射性の一般的汚染水を処理対象としても良い。また、本実施態様の評価システムを汚染水処理における吸着材の経時的な脆化に対する耐性(耐脆化性)の評価に用いる場合には、特に実際の処理における吸着対象物質が水溶性物質である場合のように、吸着対象物質が吸着材の脆化に与える影響が小さいときには吸着対象物質を含まない単なる水を被処理液22としても良い。
吸着対象物質としての放射性物質の例としては、放射性ストロンチウム、放射性セシウム等の放射性元素を挙げることができる。また、汚染水処理システムの実運転時の吸着対象物質が放射性ストロンチウム、放射性セシウム等の放射性元素である場合に、模擬的に非放射性ストロンチウム、非放射性セシウム等の非放射性同位体を用いても良い。
被処理液22中における吸着対象物質の濃度についても特に制限はなく、実運用で想定される濃度と同等とするか、あるいは分析の容易さから1ppm~1%(質量基準。以下同様。)程度にすることが好ましい。
また、被処理液22は実運用で想定される被処理液を用いるのが理想であるが、模擬液を用いる場合は、実運用で想定される被処理液とpH、イオン濃度を同等にすることが好ましく、このような濃度で試験することにより、吸着工程においても共雑イオンとの量比を合わせてより実運用時に近い吸着状態を模擬することが可能となる。
【0014】
また、被処理液貯蔵槽21は、配管11を介して送液ポンプ23に連結されている。送液ポンプ23については、所望の被処理液22を所望の流速で送液できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適切なものを選択すればよい。送液ポンプ23の例としては、非容積(ターボ形)ポンプ、容積ポンプ、その他特殊ポンプなどが挙げられる。より具体的には、マグネットポンプ、プランジャーポンプ、スクリューポンプ、ダイヤフラムポンプ、ディフューザポンプ、ギヤポンプ、ねじポンプ、ピストンポンプ、ロータリーポンプ、チューブポンプ、水中ポンプ、ペリスタルティック(蠕動式)ポンプなどが挙げられる。上記した以外のポンプでも使用可能である。
尚、被処理液22の流速については目的に応じて適宜調整すればよく特に制限はないが、本実施態様の評価システムを汚染水処理における吸着材の吸着性能評価や耐脆化性の評価に用いる場合には、汚染水処理システムの実運転時に近い流速で耐脆化性を評価したい場合、例えば、実運転条件の線速度(LV)または空間速度(SV)に対し、0.5倍~2倍の範囲で実施することができる。また、評価に要する時間を短縮したい場合には、2倍~100倍の範囲で実施することができる。
本発明においては、後述する気泡トラップ24aにより、カラム25(液体処理容器)の直前で気泡が確実に捕捉、除去されるため、種々のポンプを用いて様々な条件で送液しても、カラム25中に気泡が混入することを確実に防止することができる。
【0015】
≪気泡トラップ≫
気泡トラップ24aは、カラム25の上流に配置されており、被処理液貯蔵槽21から送液された被処理液22中に生じる気泡を滞留させ、それにより前記カラム25中における気泡の発生を抑制するように構成されている。
尚、図1に示すように、送液ポンプ23を用いる場合には、気泡トラップ24aは送液ポンプ23の下流に配置することが好ましい。それにり、カラム25に送液ポンプ23内でキャビテーションにより生じる気泡が侵入することを、より確実に防止することができる。
前記気泡トラップ24aは、前記配管12の内径よりも大きい内径を有する中空管状の容器であることが好ましい。具体的には、気泡トラップ24aの内径が、前記配管12の内径の1.5~100倍であることが好ましく、2~50倍であることがより好ましく、2.5~40倍であることが更に好ましい。この値が上記下限値以上であると、十分な量の気泡を気泡トラップ24a内に留めておくことができる。また、この値が上記上限値以下であると、液体処理システムの構築と維持が容易になり、かつ、気泡の蓄積による被処理液22の流速低下を防止することができる。
また、本発明においては、前記気泡トラップ24aの上部には、気泡トラップ24aに前記被処理液22を導入する導入配管(A)(図1の12)が設けられており、
前記気泡トラップ24aと前記カラム25との間には、これらを連結する接続配管(B)(図1の13)が設けられており、
前記接続配管13の所定の位置で気泡トラップ24aとカラム25との間の流路を遮断した状態で、接続配管13の前記所定の位置又はその上流において前記気泡トラップ24aへ向けて前記被処理液22を注入する被処理液注入手段が設けられており、かつ
前記接続配管12の所定の位置で被処理液貯蔵槽21と気泡トラップ24aとの間の流路を遮断した状態で、接続配管12の前記所定の位置又はその下流において気体を抜出す気体抜出手段が設けられていることが好ましい。
【0016】
気泡トラップ24aの高さ(被処理液22の流れ方向に沿った長さ)については特に制限はないが、トラップした気泡量が多くなる程、また被処理液22の流速が早い程、気泡トラップ24a内部での被処理液22の滴下の衝撃によって被処理液22中に巻き込まれる空気の量が多くなる。従って、気泡がカラム25に侵入することを確実に防止するためには、トラップした気泡の除去操作を行うまでにトラップ24a内に溜まる気泡の予測量と、その時の空気の巻き込み範囲を加味して、トラップ24aの高さを決定することが好ましい。例えば、トラップ24aの高さは、トラップ24a内の気体を抜出す時点におけるトラップした気泡量(トラップ24a内の気泡層の高さ)と、空気の巻き込み範囲(トラップ24a中の水面を基準として気泡が目視で確認される最大の深さ)の合計の1.0倍~10.0倍とすることが好ましく、1.2倍~5.0倍とすることがより好ましく、1.5倍~3.0倍とすることがさらに好ましい。
以下に、トラップ24aの高さの具体的決定方法の例を挙げる。
≪低流速(55mL/min)の場合≫
(1)トラップした気泡量が6.3mL(トラップ内高さ0.5cmに相当、通水開始~4時間程度)の時:空気の巻き込み範囲1.3cm
(2)トラップした気泡量が33.9mL(トラップ内高さ2.7cmに相当、通水4時間~12時間程度)の時:空気の巻き込み範囲1.5cm
以上から、通水6時間毎にトラップした気泡の除去操作を行うと想定した場合、最低でも2.7+1.5=4.2cm程度以上の高さがが必要であることが分かる。この場合、例えば、上記の高さ4.2cmの1.5倍である6.3cmを目安として、トラップ24aの高さを7cmとすることができる。
≪高流速(190mL/min)の場合≫
(1)トラップした気泡量が3.8mL(トラップ内高さ0.3cmに相当、通水開始~4時間程度)の時:空気の巻き込み範囲2.5cm
(2)トラップした気泡量が31.4mL(トラップ内高さ2.5cmに相当、通水4~8時間程度)の時:空気の巻き込み範囲4.0cm
(3)トラップした気泡量が52.8mL(トラップ内高さ4.2cmに相当、通水6~12時間程度)の時:空気の巻き込み範囲8.0cm
以上から、通水6時間毎にトラップした気泡の除去操作を行うと想定した場合、最低でも4.2+8.0=12.2cm程度以上の高さがが必要であることが分かる。この場合、例えば、上記の高さ12.2cmの1.5倍である約18cmをトラップ24aの高さとすることができる。
【0017】
図1に示す実施態様においては、接続配管13に設けられた被処理液注入手段及び接続配管12に設けられた気体抜出手段は、三方コック24b、24cである。三方コック24b、24cは、手動のものであっても、電動のものであっても良い。
前記気泡トラップ24aに蓄積した気泡を排出する際には、三方コック24b、24cを以下のように操作する。
前記接続配管13に設けられた三方コック24cにより、気泡トラップ24aとカラム25との間の流路を遮断すると共に、前記気泡トラップ24aへ向けて前記被処理液22を注入する。
前記接続配管12に設けられた三方コック24bにより、被処理液貯蔵槽21(及び送液ポンプ23)と気泡トラップ24aとの間の流路を遮断すると共に、気体を抜出する。
【0018】
上記したような三方コック24b、24cの操作について、図2に参照して以下に説明する。
前記送液ポンプ23により送液を開始し、被処理液22の処理を行う。処理の実施中は、三方コック24bは被処理液貯蔵槽21(及び送液ポンプ23)と気泡トラップ24aとの間の流路を開き、気体抜出配管30への流路を遮断している(図2(a))。一方、三方コック24cは気泡トラップ24aとカラム25との間の流路を開き、処理液導入配管31への流路を遮断している(図2(a))。図2(a)に示すように、送液を開始して暫くは、気泡トラップ24a内は、被処理液22で満たされた状態である。この後、送液を継続すると、気泡トラップ24a内の上部に気泡が生じ、経時的に気泡量が増加していく(図2(b))。気泡除去を開始する前に、被処理液22を収容したシリンジ29を、処理液導入配管31に取り付ける(図2(c))。そして、気泡が一定量に達した時点で(即ち、気泡トラップ24a内の液面が、気泡トラップ24a内の一定の高さまで低下した時点で)、前記送液ポンプ23を停止すると共に、三方コック24bは、被処理液貯蔵槽21(及び送液ポンプ23)と気泡トラップ24aとの間の流路を閉じて、気泡トラップ24a上部に配置された配管12aから気体抜出配管30への流路を開き、そして、三方コック24cは、気泡トラップ24aとカラム25との間の流路を閉じて、処理液注入配管31から気泡トラップ24a下部に配置された配管13aへの流路を開く(図2(d))。
その後、シリンジ29から被処理液22を注入すると、気泡トラップ24a内上部の気泡は押し出され、気体抜出配管30から排出される(図2(e))。気泡トラップ24a内の気泡を十分に除去したら、三方コック24b、24cを処理開始時の状態に戻して(図2(f))、送液ポンプ23による送液を再開し、処理を再開する。
【0019】
図3は、本実施態様の評価システムにおける気泡トラップの他の一例の模式図である。
本実施形態の気泡トラップ24aは、その上下に設けられた配管12及び配管13に三方コック24b、24cが設けられておらず、気体抜出配管30が気泡トラップ24aの上部に設けられていること以外は、図1及び図2に示す気泡トラップ24aと同様である。
本実施形態の気泡トラップ24aは、本実施態様の評価システムによる処理を継続しながら、気泡を除去するのに適している。
【0020】
気体抜出配管30には、弁24eを設けることが好ましいが、弁24eを設けなくても良い。例えば、気泡トラップ24aの内圧を保持する必要がない場合には、弁24eを設けず、又は弁24eを開放したままで本実施態様の評価システムを運転してもよい。そして、気泡トラップ24a内の気泡が一定量に達した時点で(例えば、気泡トラップ24a内の液面が、所定の高さまで低下した時点で)送液ポンプ23による送液の流速を上げて気泡トラップ24a内の水位を戻しつつ気泡を除去することができる。
一方、気泡トラップ24aの内圧を保持することが必要である場合には、弁24eを設けて、通常は弁24eを閉じた状態で運転する。そして、気泡トラップ24a内の気泡が一定量に達した時点で(例えば、気泡トラップ24a内の液面が、所定の高さまで低下した時点で)弁24eを開放し、送液ポンプ23による送液の流速を上げて気泡トラップ24a内の水位を戻したうえで弁24eを閉止し、運転を再開する。また、内圧を保持するように適時に開度を調整して弁24eを開き、送液ポンプ23による送液の流速を上げて気泡トラップ24a内の水位を戻しつつ運転することにより、本実施態様の評価システムによる処理を継続しながら、気泡を除去することもできる。
また、本実施態様においては、気泡トラップ24aに液面センサー(図示しない)を設けて、気泡トラップ24a内の気泡が一定量に達した時点で(例えば、気泡トラップ24a内の液面が、気泡トラップ24a内の所定の高さまで低下した時点で)、自動で弁24eを開放し、気泡を除去し、気泡除去が完了した時点で自動で弁24eを閉じる構成としても良い。
また、図4に示すように、送液ポンプ23からの配管は、気泡トラップ24aの下部に設けても良い。
【0021】
≪液体処理容器≫
カラム25については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販されているものを含む公知のカラムを適宜選択すればよい。
<処理材>
カラム25に格納されている吸着材26についても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
吸着材の例としては、放射性汚染水の処理に用いられているゼオライト系吸着材(金属担持ゼオライトを含む)、チタン酸塩系吸着材、フェロシアン化物系吸着材などの吸着材や、一般的な汚染水処理に用いられるイオン交換樹脂やキレート樹脂などの樹脂系吸着材、活性炭系吸着材(金属担持活性炭を含む)、活性アルミナ、シリカゲル、ハイドロタルサイト様化合物または混合系吸着材(ゼオライトとフェロシアン化物の混合物や、活性炭とフェロシアン化物の混合物など)などの吸着材が挙げられる。
【0022】
前記吸着材の形状や寸法についても、特に制限はない。吸着材の形状については、例えば、粒状、シート状、繊維状、ハニカム状の吸着材を使用することができる。吸着材の寸法については、粒状の吸着材の場合、その粒子径が、0.5~20mmであることが好ましい。粒子径が前記下限値以上であれば、前記カラム25から流出してしまうことを防止することができる。また、粒子径が前記上限値以下であれば、吸着のために十分な表面積を確保しやすく、かつ、上記のような吸着材の評価を行う場合には実機同様の充填密度を再現可能な内径の容器を実験室内で扱うことができる。
【0023】
前記吸着材の前記カラム25への充填量は、カラム25の容積の80%以下とすることが好ましく、20~60%とすることがより好ましい。
【0024】
吸着材の充填密度は、汚染水処理システムの実運転時と同等となるよう、吸着材の形状や寸法(例えば、粒状の吸着材の場合は粒子径)を考慮してカラム容器径を選定することが好ましい。
更に、粒状の吸着材を用いる場合、吸着材の充填層厚は実際に使用する汚染水処理システムと同等を上限とし、下限は、被処理液が吸着材と十分に接触できるよう、吸着材粒径の5倍以上とすることが好ましく、30倍以上とすることがより好ましい。上記上限を超える充填層厚は実際に使用する汚染水処理システムに対してオーバースペックとなり、吸着材や被処理液量が増え、評価時間が長くなるため、試験コストが高くなる恐れがある。上記下限未満だと、被処理液が吸着材と十分に接触できず性能が低く評価されてしまう恐れがある。
吸着処理における温度条件は特に限定されないが、室温で行うのが簡便である。
【0025】
≪配管≫
配管11、12、12a、13、13a、14、30、31についても、本発明の液体処理システムの使用目的に応じて、公知のものを適宜使用することができる。
配管の材質としては、耐圧および耐薬品性の点から、4フッ化エチレン、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂、ステンレス等が好ましい。
【0026】
以上、本発明の液体処理システムを、汚染水処理に用いる吸着材吸着性能や耐脆化性の評価のためのシステムに適用する例について説明したが、本発明はこれに制限されず、カラム等に通液して液体中に含まれる対象物質を分離することを目的とするシステムに広く適用することが可能である。例えば、本発明の液体処理システムは、種々の汚染水を処理するためのシステムや高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用のシステムに適用することができる。
本発明の液体処理システムをHPLCに適用する場合は、被処理液22は移動相としての試料である。HPLC用の試料は公知の方法により適宜調製することができる。また、吸着材26は固定相としてのシリカゲル等の充填剤である。HPLC用の試料は公知の方法により適宜調製し、カラム25に充填することができる。
【0027】
≪本発明の液体処理システムを用いた液体処理方法≫
本発明の液体処理システムを用いた被処理液の処理は以下の方法で実施することができる:被処理液貯蔵槽に収容された被処理液を、配管を介して気泡トラップに送液する工程、及び前記被処理液を、配管を介して、処理材を格納した液体処理容器に通液する工程を含み、前記被処理液貯蔵槽から前記液体処理容器に向けて通液される被処理液中に生じる気泡を前記気泡トラップ内部に滞留させ、それにより前記液体処理容器中における気泡の発生を抑制する、液体処理方法。本発明の液体処理システムを用いた液体処理方法については、上で説明した気泡トラップ24aを用いた気泡の除去以外については公知の方法で実施することができる。
本発明の液体処理システムを汚染水処理における吸着材の吸着性能の評価に用いる場合は、例えば、以下の方法により実施することができる。
(1)吸着材26を収容したカラム25に、前記吸着対象物質を含む被処理液22を通液させることにより吸着対象物質を吸着材26に吸着させる工程と、
(2)前記工程(1)において通液開始から任意の時間経過後の異なる2以上の時点において、前記被処理液22の一部を試料として取得する工程と、
(3)各時点において得られた試料中の吸着対象物質濃度をそれぞれ測定し、得られた吸着対象物質濃度の値に基づいて、各時点における吸着対象物質の吸着率を算出する工程と、
(4)各時点における吸着率を比較することにより、前記吸着材26の吸着性能を評価する工程と
を含む吸着材の吸着性能の評価方法において、
前記被処理液22の流路上のカラム25の上流側に前記気泡トラップ24aを配置し、前記被処理液22中に生じる気泡を前記気泡トラップ24a中に滞留させ、それによりカラム25中における気泡の発生を抑制する吸着材の吸着性能の評価方法。
【0028】
本発明の液体処理システム全体の運転方法については、上記した通りだが、それ以外の点について以下に説明する。
工程(2)における試料の取得は、カラム25から抜出された被処理液22の一部を試料として取得する。試料取得の適切なタイミングについては、評価の対象となる吸着材26の吸着量が平衡状態に達する前の任意の時点において試料を取得することが望ましい。
また、試料取得の回数については、任意の間隔で、試料を2~10回、好ましくは3~7回取得すれば良い。
【0029】
工程(3)において試料中の吸着対象物質濃度を測定する方法については特に制限はないが、例えば、得られた試料をろ過し、濾液をICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)質量分析法:ICP-MSにより分析することで測定することができる。ろ過の方法については、特に方法は限定されないが、得られた試料中から速やかに吸着材由来の微粒子を除去できれば良い。例えば、試料採取をシリンジ(例えば、アズワン製 オールプラスチックディスポシリンジ10mL)で行い、これに孔径0.2~5μmのフィルターを備えたフィルターユニット(例えば、アドバンテック製 ディスミック(登録商標)13HP045AN)を接続してろ過するのが良い。
得られた試料中の吸着対象物質濃度に基づいて、以下の式により吸着率を算出することができる。
{1-(試料中の吸着対象物質濃度)/(攪拌開始前における被処理液中の吸着対象物質濃度)}×100[%]
【0030】
工程(4)においては、試料を取得した各時点における吸着率を比較することにより、前記吸着材の吸着性能を評価する。この吸着率の上昇が早い程、吸着速度が速い、即ち、吸着性能が高いことを意味する。
【0031】
また、本発明の液体処理システムを汚染水処理における吸着材の耐脆化性の評価に用いる場合は、例えば、以下の方法により実施することができる。
(1’)吸着材26を収容したカラム25に、被処理液22を通液させる工程と、
(2’)前記工程(1’)において通液開始から任意の時間経過後に少なくとも一回、前記被処理液22の一部を試料として取得する工程と、
(3’)得られた試料中の微粒子の量を評価する工程と、
(4’)前記微粒子の量に基づいて、前記吸着材の脆化を評価する工程と、
を含む吸着材の耐脆化性評価方法において、
前記被処理液22の流路上のカラム25の上流側に前記気泡トラップ24aを配置し、前記被処理液22中に生じる気泡を前記気泡トラップ24a中に滞留させ、それによりカラム25中における気泡の発生を抑制する吸着材の耐脆化性評価方法。
【0032】
本発明の液体処理システム全体の運転方法については、上記した通りだが、それ以外の点について以下に説明する。
工程(2’)における試料の取得については、通液開始から任意の時間経過後に少なくとも一回、前記カラム25から抜き出した前記被処理液22の一部を試料として取得する。試料を取得するタイミングとしては、ある程度、吸着材26の脆化が進行するのに十分な時間が経過した後であれば特に制限はない。例えば、流動開始から0.5~168時間、好ましくは0.5~72時間の間に、少なくとも一回、好ましくは2回以上、より好ましくは3回~10回、更に好ましくは3回~6回試料を取得する。 上記工程(1’)において吸着対象物質を含む被処理液22を用いて、吸着の進行と関連付けて脆化を評価する場合には、吸着対象物質の吸着量が平衡状態に達した後に試料を取得しても良い。平衡状態になったことの確認は、定期的に処理後の液28をサンプリングして分析することにより行う。
また、例えば、評価対象の各吸着材につき、同一の条件下で同一の運転期間経過時の脆化状態に基づいて、耐脆化性を評価したい場合には、各吸着材に関して流動開始から同じ時間(例えば、0.5~168時間の範囲内の任意の時間)経過後に試料を取得すればよい。これに対して、各吸着材に関して吸着量が平衡状態に達した時点での脆化状態に基づいて、耐脆化性を評価したい場合には、各吸着材に関して吸着が飽和に達した時点で試料を取得すればよい。ここで、定期的に試料を複数回取得して後述の評価を行えば、吸着材26の経時的な脆化を評価することができる。
【0033】
また、工程(2’)における試料の取得は、前記カラム25と処理済液貯蔵槽27との間に配置された粉体捕捉器により行っても良い。粉体捕捉器としては、例えば、開口部を有する容器と、前記容器中に収容された少なくとも1つの邪魔板と、と有するものを使用することができる。粉体捕捉器のより具体的な例としては、上方に2つの開口部(被処理液導入口及び被処理液排出口)を有した円筒容器と、円筒容器の内部空間を2分するように設置された邪魔板を有し、被処理液導入口が2分された一方の空間に連通し、被処理液排出口が他方の空間に連通するような構成となっているものを挙げることができる。ここで、邪魔板は、導入された被処理液が一方の空間から他方の空間に移動できるよう構成されている必要が有る。このような被処理液の移動を可能にする手段としては、例えば、邪魔板の下端部に切欠き部を設けて、紛体捕捉器の底部との間に隙間を形成することや、邪魔板の縁部を前記円筒容器の内壁に密着させて設置する場合は、邪魔板の少なくとも一部に貫通孔を設けることが挙げられる。上記のような構成により、前記被処理液導入口から粉体捕捉器に導入された被処理液22に含まれる粉体を前記邪魔板により粉体捕捉器内に留め、紛体が被処理液と共に前記被処理液排出口から流出することを防止できる。
【0034】
工程(3’)において、「微粒子」とは、吸着材26の脆化によって発生する微粒子のことであり、どの程度の寸法の粒子を評価対象とするかは、用いる吸着材26の形状や寸法に鑑みて適宜決定すればよい。例えば、粒状の吸着材26を使用した場合、通常、平均粒径の1/2以下の粒子径を有する粒子を意味する。
微粒子量を評価する方法については特に制限はないが、例えば、被処理液22の通液開始から比較的長期間経過した後に試料を取得する場合、試料をろ過に付すことにより十分な量の微粒子が残渣としてフィルター上に残るため、残渣を洗浄、乾燥した後、その質量を測定することにより、微粒子量を評価することができる。
ろ過に用いるろ過装置としては、一般的なメンブレンフィルターを備えたろ過装置を使用することができる。使用できるメンブレンフィルターの孔径は通常0.2~5μmの範囲である。ろ過装置の具体例としては、少量サンプルに適していること、ろ過が簡単であることなどの理由から、遠沈管用フィルターユニット装置(例えば、NALGENE製遠沈管用フィルターユニット564-0020)などが好適である。ろ過回数は一回で良く、複数回行っても良い。
【0035】
具体的なろ過方法としては、図1に示すシステムを用いて吸着量が平衡状態(飽和吸着量)に達した時点で、前記の粉体捕捉器をシステムから取り外し、処理済みの汚染水28を前記試料としてろ過器に供給することによって実施することができる。その結果、粉体が残渣として残り、得られた残渣を、必要に応じて蒸留水で洗浄した後、40~100℃で6~48時間乾燥した後、質量を測定することにより、微粒子量を評価することができる。
【0036】
工程(4’)においては、前記工程(3’)において評価した微粒子の量に基づいて、吸着材の脆化を評価する。例えば、ろ過後の残渣の乾燥質量に基づいて微粒子の量を評価した場合には、この残渣の乾燥質量が大きい程脆化が進行している、即ち、耐脆化性が低いと評価することができる。
複数の異なる吸着材について、前記工程(1’)~(4’)を含む方法を実施し、それぞれの吸着材について得られた脆化評価の結果を比較することで、耐脆化性に優れる吸着材を選抜することができる。
また、本発明の液体処理システムを用いて、上記したような吸着材の吸着性能評価と耐脆化性評価の両方を行っても良い。
【実施例
【0037】
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
以下の5種類の吸着材について、配管13をカラム(液体処理容器)25の底部に接続し、配管14をカラム25の上部に接続した以外は図1に示すシステムと同様の構成を有するシステムを用いて後述する手順にてカラム通水試験を行った。
【0039】
[吸着材]
4種類の異なるチタン系吸着材A、B、C及びDを使用した。
【0040】
[カラム通水試験]
前記4種類の吸着材26のそれぞれについて、以下の手順でカラム25への通水を実施した。
5mLの吸着材26を直径2cmのガラスカラム25に充填し、被処理液22を、被処理液貯蔵槽21からポンプ23を用いて3mL/minの速度で、通水した。被処理液22は配管(送水管)12を介して気泡トラップ24a(アクリル製の円筒状容器、内径4cm、高さ6cm)の上部にある三方コック24bと接続し、気泡トラップ下部の出口側三方コック24cから送水管13を介してカラム25下部から吸着材26に通水した。
カラム25内の吸着材26の充填層を経た液は、カラム25上部の出口から配管(送水管)14を経て処理済液貯蔵槽(排液タンク)27に排出させた。
気泡トラップ24aに捕集したガスは、6または17または24時間毎に、24bの30の配管に20~50mLシリンジを接続した上で、図2の手順で回収し、ガス量を測定後に排気した。
捕集したガス量の測定結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1から分かる通り、合計191時間の通水時間において、18.1~60.0mLのガスが捕集された。
上記の通り、吸着材の種類により捕集ガス量(即ち、気泡の発生量)に差が生じたが、いずれの場合においても、気泡トラップ24aを設置することで、カラム25における気泡の発生が防止されていることが目視にて確認できた。その結果、気泡が吸着材充填層に侵入して吸着材と液との接触を妨げられるようなことは起きず、気泡がカラム25上方に抜けることによる充填層構造の崩壊なども発生しなかった。
【符号の説明】
【0043】
11、12、12a、13、13a、14、30、31 配管
21 被処理液貯蔵槽
22 被処理液
23 送液ポンプ
24a 気泡トラップ
24b、24c 三方コック
25 液体処理容器
26 処理材
27 処理済液貯蔵槽
28 処理後の液
図1
図2
図3
図4