(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 30/22 20060101AFI20230711BHJP
B65D 33/36 20060101ALI20230711BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20230711BHJP
B65D 75/62 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B65D30/22 Z
B65D33/36
B65D33/00 C
B65D75/62 A
(21)【出願番号】P 2019060703
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐々 志歩
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-107696(JP,A)
【文献】特開平07-300146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/22
B65D 33/36
B65D 33/00
B65D 75/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げられた2枚のフィルムを折り曲げ位置を上方にして重ね合わせ、外側のフィルムの折り曲げ位置に対して、内側のフィルムの折り曲げ位置を下方にずらして配置し、前記外側のフィルムと前記内側のフィルムとが重ね合わさったそれぞれの左右両側の端部と下方端部、および前記外側のフィルム同士が重ね合わさった左右両端の端部にシール部を形成して、上方部で連通する2つの内容物収納部からなるパウチであって、
前記
内側のフィルムの折り曲げ位置より上方に位置して前記上方部を形成する前記外側のフィルムに、内容物の注出路をもつ注出口部を形成し、
前記注出口部の先端部に開封予定線を設け、
前記注出口部の下側から前記上方部を形成する前記外側のフィルム同士が重ね合わさった注出口シール部を形成し、
前記注出口シール部に、左右のいずれかの前記シール部から前記開封予定線まで切り欠き部を形成可能な切り欠き誘導線を設けたことを特徴とするパウチ。
【請求項2】
前記
切り欠き誘導線にくぼみ部を設けたことを特徴とする、請求項
1記載のパウチ。
【請求項3】
前記開封予定線は、破断用ハーフカット線であることを特徴とする、請求項
1又は2に記載のパウチ。
【請求項4】
前記開封予定線のシール部に、開封用ノッチを設けたことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のパウチ。
【請求項5】
前記2つの内容物収納部の両方または片方の下端部に、ガゼット部を設けたことを特徴とする、請求項
1~4のいずれか1項に記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャンプー、リンス、台所洗剤、たれ、パスタソース、つゆ、ドレッシングなどの液体状内容物や、粉末洗剤、入浴剤、インスタントコーヒー、だしの素などの粉末状内容物を収納し、そのまま使用するか又は詰替え用として使用するパウチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、環境保全や省資源を目的として、空になった本体容器を繰り返し使用するために、その詰替え用内容物を収納する詰替え容器が広く使用されている。
【0003】
特許文献1は、1枚の積層体を折り曲げ、該折り曲げ部は、注出口シール部と共に、注出ノズルを形成しており、注出ノズルの先端は開封予定線に沿って切り離すことにより注出口を形成し、開封予定線長と、注出口の開口部幅を数値限定することにより、口栓を使用せずに、詰替え操作を容易にできる詰替え容器である。
【0004】
また、近年、詰替え容器としては、柔軟なプラスチックフィルムからなる自立可能なスタンディングパウチが一般的に広く使用されている。これらの詰替え用スタンディングパウチは、自立可能であるので店頭での展示効果は良好であるが、パウチを自立させるためと使用時のハンドリングのし易さから、ある程度フィルムの腰強度が必要であり、自ずと薄膜化には限界があった。従って、廃棄処理量を減らす減量化にも限界があった。また、注出口の形状によっては、収納する内容物を注出しにくいことがあった。特に、注出口の幅が狭くて長い形状の場合には、注出口部が内容物で閉塞しやすいという問題があった。
【0005】
特許文献2は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、折り曲げられた二枚のフィルムの折り曲げ位置を上方にして重ね合わせ、外側のフィルムの折り曲げ位置に対して、内側のフィルムの折り曲げ位置を下方にずらして配置し、上方部で連通する2つ折りパウチであり、パウチの左右いずれかの片側上端部に、内容物の注出路をもつ注出口部を形成した2つ折りパウチである。
【0006】
特許文献2の2つ折りパウチは、上記構造により、フィルムの薄膜化が可能でパウチの減量化が計れ、使用時のハンドリング性がよく、注出口部を三角形状とすることで内容物の注出性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-37461公報
【文献】特開2011-25940公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の詰替えパウチは、1枚の積層体の折り曲げ部に形成された注出ノズルと、その注出ノズル上の開封予定線長と注出口部の開口部幅との関係を数値限定したことにより、詰替え操作を容易にできるものである。しかし、この特許文献1に係る発明では、内容物の充填操作をやり易くするために、折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用の開口部としており、その充填のためにパウチの一部を切り開く際の抜き工程および抜きカスが発生する。また、この特許文献1に係る発明では、前記内容物充填用の開口部を閉じるため、充填シールは、折り曲げ部のある注出口部を逃してシールする必要があるが
、シール幅がパウチサイズによって異なるため、汎用性がない、という問題がある。
【0009】
特許文献2に記載の2つ折りパウチは、外側のフィルムの折り曲げ位置に対して、内側のフィルムの折り曲げ位置を下方にずらして配置することで、三角形状の注出口部が形成され、内容物の注出性が向上する。しかし、内側のフィルムの折り曲げ位置が、前記注出口部の注出路の下端位置より上方位置にあるために、シールされたフィルム二枚を同時に持って開封しなければならず、開封に力を要する。さらに、注出性などを向上させるために、注出口部の上に合掌シールを設けて口幅の両側をシールする構成としているが、この構成とすることで、口幅の片側のみをシールするものと比較して、注出口部に対する開口部幅を小さく設計しなければならないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記の問題をすべて解決した、パウチを提供することを課題とする。
つまり、本発明の解決しようとする課題は、(1)開きやすい注出口部により注出性を向上させると共に注出口部に対する開口部幅をより大きく設計することができ、(2)開封に力を要せず、(3)充填用の開口部を設けるための抜き工程や抜きカスを発生させないパウチを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の発明は、折り曲げられた2枚のフィルムを折り曲げ位置を上方にして重ね合わせ、外側のフィルムの折り曲げ位置に対して、内側のフィルムの折り曲げ位置を下方にずらして配置し、外側のフィルムと内側のフィルムとが重ね合わさったそれぞれの左右両側の端部と下方端部、および外側のフィルム同士が重ね合わさった左右両端の端部にシール部を形成して、上方部で連通する2つの内容物収納部からなるパウチであって、内側のフィルムの折り曲げ位置より上方に位置して前記上方部を形成する外側のフィルムに、内容物の注出路をもつ注出口部を形成し、注出口部の先端部に開封予定線を設け、注出口部の下側から上方部を形成する外側のフィルム同士が重ね合わさった注出口シール部を形成し、注出口シール部に、左右のいずれかのシール部から開封予定線まで切り欠き部を形成可能な切り欠き誘導線を設けたことを特徴とするパウチである。
【0014】
第二の発明は、切り欠き誘導線にくぼみ部を設けたことを特徴とする、第一の発明に記載のパウチである。
【0015】
第三の発明は、開封予定線は、破断用ハーフカット線であることを特徴とする、第一又は第二の発明に記載のパウチである。
【0016】
第四の発明は、開封予定線のシール部に、開封用ノッチを設けたことを特徴とする、第一から第三の発明のいずれかに記載のパウチである。
【0017】
第五の発明は、2つの内容物収納部の両方または片方の下端部に、ガゼット部を設けたことを特徴とする、第一から第四の発明のいずれかに記載のパウチである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るパウチは、内容物収納部が分岐された構造で、かつ、左右いずれかの位置
で、外側のフィルムの折り位置に、内容物の注出路をもつ注出口部を形成し、かつ前記注出口部の先端部に開封予定線を設けたので、(1)注出口部が外側のフィルムの折り位置に形成されることで、その注出口部の口が開きやすく、注出性を向上させる共に、注出口部に対する開口部幅をより長く設計することができ、(2)開封される注出口部が1枚のフィルムから構成されるため、パウチの開封に力を要せず、(3)内容物収納部が分岐された構造であり、その一方の内容物収納部の端部から充填させればよいため、充填用の開口部を設けるための抜き工程や抜きカスを発生させず、充填後は前記一方の内容物収納部の端部をシールして閉じればよいため、充填シール幅をパウチサイズによって変える必要がなく汎用性がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明に係るパウチの一実施形態を示した模式図である。
【
図2】
図2(1)は、
図1のパウチのA-A’断面を示し、このパウチを構成する積層体の層構成を示した断面模式図である。
図2(2)は、
図1のB-B’断面の中の注出口を示した断面模式図である。
【
図3】
図3は、
図1のパウチにおける、店頭陳列時の状態の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、従来のパウチの実施形態を示した模式図である。
【
図5】
図5は、
図4のC-C’断面の中の注出口を示した断面模式図である。
【
図6】
図6は、本発明に係るパウチの他の実施形態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、必要に応じて図面を参照して、本発明に係るパウチの実施形態の例について説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るパウチ1の一実施形態を示した模式図である。
図2(1)は、
図1のパウチのA-A’断面を示し、このパウチを構成する積層体の層構成を示した断面模式図である。なお、
図1や
図2では、パウチを構成するフィルムがすべて透明であるかのように示しているが、これは説明を分かり易くするためであって、実際のフィルムは、必ずしも透明ではない。これ以降の図についても同様である。
【0022】
図1および
図2(1)の図に記載の通り、折り曲げられた2枚のフィルム2、3を折り曲げ位置4を上方にして重ね合わせ、外側のフィルム2の折り曲げ位置4に対して、内側のフィルム3の折り曲げ位置5を下方にずらして配置し、前記外側のフィルム2と前記内側のフィルム3とが重ね合わさったそれぞれの左右両側の端部と下方端部、および前記外側のフィルム2同士が重ね合わさった左右両側の端部にシール部10、11を形成して、上方部8で連通する2つの内容物収納部6、7からなるパウチである。また、パウチ1の左右いずれかの位置で、外側のフィルム2の折り曲げ位置4に、内容物の注出路31をもつ注出口部30が設けられる。前記注出路31は、注出口シール部12により形成される。
【0023】
この注出口部30は、1枚のフィルムを折り曲げて形成されているため、パウチ1を開封するために注出口部30上に設けられた開封予定線32を切り取る際、1枚のフィルムを持って開封すればよいため、前記特許文献2のような、2枚のフィルムを持って開封するパウチと異なり、力を要しない。
【0024】
ここで、上方部8とは、内側のフィルム3の折り曲げ位置5を境に、それよりも上方の部分で、外側のフィルム2のみから構成される部分を指す。一方、下方部9とは、内側のフィルム3の折り曲げ位置5を境に、それよりも下方の部分で、外側のフィルム2と内側のフィルム3により構成され、内容物収納部6、7からなる部分を指す。
【0025】
そして、本発明に係るパウチ1は、
図2(1)に示すとおり、基材20とシーラント層21を少なくとも有する積層体からなるパウチであって、上方部8で外側のフィルム2同士を貼り合わせる際と、下方部9で外側のフィルム2と内側のフィルム3を貼り合わせる際に、それぞれのシーラント層21同士を対向させている。
【0026】
また、
図1に示すとおり、本発明に係るパウチ1は、内容物収納部6、7で分岐させた構造(以下、分岐させた構造という。)であり、その一方の内容物収納部の端部から充填させればよいため、内容物充填用の開口部は、パウチ1のボトムシール部11を未シールにすることで確保でき、充填用の開口部を切り開くための抜き工程や抜きカスは発生しない。そのため、内容物充填用の開口部を閉じる際に、注出口部30を避けるために充填シール幅をパウチサイズによって変える必要もなく、汎用性がある。
【0027】
また、パウチ1は、上記の通り分岐させた構造とすることで、前記内容物収納部の両方のボトムシール部11を机上などに置くことで、自ずと自立性が良好となる。また、上記の分岐させた構造とすることで、前述の特許文献1のような構造のパウチと異なり、自立性やハンドリングのし易さを考慮した、フィルムの腰強度が不要となり、パウチを構成するフィルムの薄膜化が可能であるため、パウチの減量化が計れる。
【0028】
つまり、本発明のパウチ1は、ハンドリングに必要な適度の柔軟性と強度を合わせもち、形態がコンパクトで掴みやすく、重心が低く安定感があり、また、ボトルなどへの内容物の詰替えのときにパウチを傾けて持ち上げる高さも小さくて済み、ハンドリング性が良好である。そのため、粘土の高いパスタソース、ドレッシングなどの粘稠体の内容物でも絞り出し易い。さらに、注出口部30を開封して内容物を注ぎ出すときは、2つの内容物収納部6、7から注出路31に内容物が流入されるため、注出口部30からの注出流量が多く、内容物の注出状態も良好である。
【0029】
図3は、
図1のパウチ1における、店頭陳列時の状態の一例を示す図である。
図3に示すとおり、パウチ1の構造を活かして、店頭陳列時は、内側のフィルム3の折り曲げ位置5で内側のフィルム3を折り曲げずに、パウチ1の上方部8の外側のフィルム2を、内側のフィルムの折り曲げ位置5で片側に折り曲げた状態としている。店頭陳列時には、
図3をパウチ1の正面図として、一方のボトムシール部11を下にして立てた状態で陳列しても良いし、
図3をパウチ1の平面図として、内側のフィルム3を下に寝かせた状態で陳列しても良い。このように、内側のフィルム3が折り曲げられた状態ではなく折り曲げられる前の平坦な状態で店頭陳列ができるため、デザインの自由度は高く、美粧性に優れ、奥行きを減らしたり、高さを低くしたりすることで陳列効果がよくなる。
【0030】
なお、
図3は、上記の効果を活かしたパウチ1の状態の一例を示した図であり、店頭陳列時に、
図1のように内側のフィルム3を内側のフィルム3の折り位置5で折り曲げた状態にするなど、
図3に示す状態に限定されない。また、
図3に示すパウチ1の状態は、平坦な状態でかさばらないため、
図3の状態とすることで、店頭陳列時以外に、製造現場から店頭に輸送する時などの輸送効率も良好となる。
【0031】
図1に示すとおり、注出口部30の先端部には開封予定線32が設けられる。この開封予定線32は、開封位置を示す仮想的な線であるが、開封位置を明らかにするために、実際に印刷表示等を行っても良い。開封予定線32は、外側のフィルム2に設けられるが、破断用ハーフカット線36としたり、貫通しないミシン目や傷としたりすることによって、目的が達成される。破断用ハーフカット線36やミシン目や傷は、刃物によって設けてもよいし、レーザー加工法によって設けても良い。微細な突起を持ったロールによるものでも良い。ただし、レーザー加工法の方が均一で安定した切れ目を形成できるので好ましい。また、開封予定線32は、外側のフィルム2のシーラント層21側でも基材20側のどちらに設けても良い。内容物の漏れが生じたり、フィルムのバリア性に影響したりするようなことがなければ、開封予定線32は、シーラント層21側と基材20側の両側に設けても良い。本数も1本でも複数本でも良い。また全長に亘らなくても、部分的に設けて、開封のきっかけとしても良い。
【0032】
なお、前記開封予定線32は、注出路31に接する注出口シール部12においては、貫通するミシン目としてもよい。しかし、前記開封予定線32は、内容物に接しシールされていない部分においては、貫通するミシン目とした場合、内容物の漏れが生じうるため、内容物に接しシールされていない部分においては、破断用ハーフカット線36とすることが好ましい。
【0033】
また、開封予定線32で、注出路31に接する注出口シール部12に、開封用ノッチ33が設けられている。開封用ノッチ33を設けることにより、開封予定線32のフィルムを手で引き裂いて、さらに容易にパウチ1を開封することが可能となる。
【0034】
図4は、従来のパウチの実施形態を示した模式図である。注出口シール部12の形態について、
図1の本発明に係るパウチ1と
図4の従来のパウチ1を比較しながら、以下に説明する。
【0035】
図1に示す本発明のパウチ1においては、上方部8の左右いずれかの位置に形成される注出口部30における注出路31は、注出口シール部12により形成される。前記注出口シール部12は、パウチ1の上方部8に設けられた前記注出口部30の下側の根元から、パウチ1の下方部9におけるパウチ1の下端まで継続しており、断続的な形状にはなっていない。一方、
図4に示す従来のパウチにおいては、注出口シール部12が、詰替え先のボトルなどにひっかけるための切り欠き部34に沿うように設けられ、この注出口シール部12と切り欠き部34の下側のサイドシール部10の間に段が形成されており、注出口シール部12から切り欠き部34の下側のサイドシール部10にかけて、シール部が断続的な形状となっている。
【0036】
図4に示す従来にパウチ1における、上記シール部の形状では、内容物の詰替え時にパウチ1を傾けた際に、切り欠き部34とその下側のサイドシール部10の間に内容物がたまり、上手く注ぎ出せず、内容物が最後まで注ぎ切れずに残る、という不都合が生じる。一方、
図1に示す本発明のパウチ1における注出口シール部12の形状とすることで、その不都合を防止できる。
【0037】
図1に示す本発明におけるパウチ1の注出口シール部12の形状は、注出口部30の下側の根元からパウチ1の下端まで継続的な形状であれば、
図1に示す形状に限られない。よって、
図1に示すように、内容物の容量を増やすために、注出口部30側のサイドシール部10側に上から下に向けて傾斜させて設けてもよいし、フィルムの左右の端と平行に設けてもよいし、または、注出口部30側のサイドシール部10と反対側に上から下に向けて傾斜させて設けても良い。
【0038】
なお、注出口部30の下側の根元からパウチ1の下端まで継続的な形状の注出口シール部12は、パウチ1の下方部9の分岐された内容物収納部6、7の少なくとも一方に設ければよい。内容物を注ぎ出す際に内容物の引っかかりをより防ぐためには、前記形状の注出口シール部12を内容物収納部6、7の両方に設けることが好ましい。しかし、注出口シール部12の形成時に、
図3のように、内側のフィルム3を折り曲げずに平坦な状態でシール付けする場合は、内容物収納部6、7の両方に上記形状の注出口シール部12を形成することは難しいと考えられる。内容物収納部6、7の両方に上記形状の注出口シール部12を形成させる方法としては、例えば、基材20に二軸延伸ポリエチレンテレフタレ
ートなどの二軸延伸フィルムを使用し、
図1のように内側のフィルム3を折り曲げて、内容物収納部6、7を重ね合わせた状態でシール付けすることで、内容物収納部6、7の両方に上記形状の注出口シール部12を一気に形成させることができる。基材20にポリエチレンテレフタレートなどの二軸延伸フィルムを使用する理由は、重ね合わさったフィルムがくっつけずにシール付けできるからである。
【0039】
また、
図1に示すとおり、前記上方部8に設けられた注出口部30の下側に、詰替え先のボトルなどにひっかけるための切り欠き部を34が設けられる。この切り欠き部34は、例えば、詰替え時に詰替え先のボトルなどの注入口に差し込んでその縁にひっかけられる。この切り欠き部34の形状は、
図1に示した以外にも、ボトルなどの注入口の縁にひっかけられるものであればこの形に限定されない。
【0040】
前記切り欠き部34は、パウチ1の製造時に、
図4に示す従来のパウチ1などと異なり、パウチ1の本体から切り離すことのないようにすることが好ましい。その理由は、パウチ1の本体から切り欠き部34を完全に切り離すことにより不要な抜きカスが発生することを防止するためである。この切り欠き部34を含む注出口シール部12は、少なくとも注出口部30側のサイドシール部10で繋がっており、注出口部30側で注出路31に接しない、サイドシール部10から、少なくとも前記開封予定線32まで設けられる(
図1の太線部)が、この切り欠き加工は、貫通させてもよいし、ハーフカットとしてもよい。ハーフカットにより切り欠き部34を設けた場合は、消費者がパウチ1を開封する時に、ハーフカットに沿ってまず切り欠き部34を、その後、開封予定線32を切り取ることで、注出口部30を開封できる。
【0041】
図4に示す従来のパウチ1の開封予定線32は、注出路31の中で注出口30の先端から少し引っ込んだ位置に設けるのが好ましい。これは、注出口30の先端を手で持って引き裂き易いようにするためである。しかし、
図1に示す本発明に係るパウチ1は、前述のとおり、切り欠き部34を設けているだけで、切り欠き部34を含む注出口シール部12は、少なくとも注出口部30側のサイドシール部10でつながっており、切り欠き部34を含む注出口シール部12を持って引き裂けるため、パウチ1の注出口シール部12を、注出路31の中で注出口30の先端ぎりぎりの位置に設けることができる。
【0042】
さらに、
図1に示すとおり、前記切り欠き部34には、詰替え先のボトルなどの注入口の淵にひっかけて安定性を上げるための、くぼみ部35が設けられる。このくぼみ部35により、その上に凸部37が形成されるが、その凸部37をボトルなどの注入口の淵にひっかけることができ、安定性を上げられる。くぼみ部35の形状は、詰替え先のボトルなどの注入口の淵にひっかける際に安定性を上げられるものであれば、
図1に示した形状に限定されない。
【0043】
また、前記切り欠き部34は、上方部8のみでなく、下方部9から上方部8にかけて設けてもよい。その場合、下方部9において重ね合わされた2枚のフィルムを力を要せずに開封できるようにするために、この切り欠き部34は、貫通させることが好ましい。さらに、前述のとおり、切り欠き部34を上方部8のみでなく下方部9から上方部8にかけて設ける場合、前記くぼみ部35も下方部9に設けても良い。
【0044】
図5は、
図4に示す従来のパウチ1の注出口部のC-C’断面の中の注出口部30を示した断面模式図である。
図4に示す従来のパウチ1は、前述の
図1に示す、本発明のパウチ1と異なり、2枚のフィルムを貼り合わせて、上部の左右一方に注出口部30を形成している。
【0045】
図4に示す従来のパウチ1の注出口部の断面模式図を示した
図5を、
図1に示す本発明
のパウチ1の注出口部30の断面模式図を示した
図2(2)と比較して下記に説明する。
【0046】
図4における、従来のパウチ1の注出路31は、注出口部30の上下にシール部12、13が存在するため、開口部幅E(実際に内容物が出てくる未シール部)に対して、開封予定線の長さDが長くなり、また注出口部30の口が広く開かないため、詰替え先のボトルなどの注入口に挿入し難いという問題に加えて、注出性が悪く、詰替えに時間がかかるという問題があった。
【0047】
一方、
図1に示す、本発明に係るパウチ1の注出口部30は、外側のフィルム2の折り位置4を上部にして折りこみ、その外側のフィルム2の折り位置4に注出口部30が形成されることで、注出口部30が自然に開いて開きやすくなる。つまり、
図2(2)のとおり、外側のフィルム2の折り曲げ位置4における積層体の戻ろうとする弾性の働きにより、注出路31の断面は、常に上部が膨らんだ状態となる。このため、注出路31の断面積を広く確保することが可能となり、一度に大量の内容物を注ぎだすことが可能となり、内容物の注出性がよい。
【0048】
また、
図5に示す従来のパウチ1の注出口部30では、例えば、開封予定線の長さDを12mmにするために、両端のシール幅Fを3mmとしたとすると、開口部幅Eは6mmとなる。一方、
図2(2)に示す本発明のパウチ1の注出口部30では、開封予定線の長さDを12mmにするために、シール幅Fを3mmとしても、シール部は片方のため、開口部幅Eは9mmになり、従来パウチよりも3mm開口部幅Eを長く設計することが可能となり、口径の小さいボトルなどへの挿入・詰替えが可能となる。
【0049】
図6は、本発明に係るパウチ1の他の実施形態を示した模式図である。この実施形態においては、2つの内容物収納部6、7のうち、片方の内容物収納部の下端部に、ガゼット部14を設けている。このガゼット部14は、スタンディングパウチの底面と同じ構造を有しており、外側のフィルム2と内側のフィルム3の間に底テープを挟んでシールしてなるものである。なお、ガゼット部14は、内容物収納部6、7の両方の下端部に設けても良い。また、底テープを挟む替わりに、外側のフィルム2または内側のフィルム3をZ折りすることで、ガゼット部14を設けてもよい。
【0050】
ガゼット部14を設けることにより、パウチの容量を大きくすることが可能であり、またパウチ1の自立性も向上する。よって、
図1のように、内側のフィルム3を、内側のフィルム3の折り位置5で折りたたんだ状態や、
図3のように、内側のフィルム3を折らず、かつ、
図3を正面図として、一方のボトムシール部11を下にして、店頭に陳列した時などに、より自立性を向上させることができる。
【0051】
本発明に係るパウチ1を以上のとおりの構造とすることにより、パウチ1から内容物をボトルなどへ注ぎ出すときには、まず、切り欠き部34に沿った注出口シール部12を手でつまみ、注出口部30に設けられている開封用ノッチ33をきっかけとして、上向きに開封予定線32を破断して注出口部30を開封する。そして、パウチ1を片手で掴んで、切り欠き部34のくぼみ部35の上の凸部37に、ボトルの注入口の淵をひっかけ、ボトルの注入口へ傾斜させて、開封されたパウチ1の注出口部30からボトル内へ内容物を注ぎ出す。上部に外側のフィルム2の折り位置4が形成された注出口部30から内容物を注ぎ出すことで、注出口部30が広く開き、注ぎ出しやすい。また、注出口部30の下側の根元からパウチ1の下端まで続く継続シール部12により、切り欠き部34の下側に内容物がたまらず、注出性に優れ、内容物を最後まで出し切ることができる。
【0052】
<本発明に係るパウチを構成する積層体について>
基材20には、一般的に使用される二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエ
チレンテレフタレート、二軸延伸ナイロンフィルム、防湿性セロファンなどを使用するものである。
【0053】
また、接着剤層には、一般的にポリウレタン系接着剤が使用される。通常では、水酸基を持った主剤とイソシアネート基を持った硬化剤とを二液混合して使用する二液型が使用される。
【0054】
また、中間層は、主にガスバリア性を付与したり、各種機械的強度を向上させたりするために設けるものであり、単層又は多層フィルムからなっている。単層フィルムとしては、無延伸ナイロンフィルム、アルミニウム箔、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、塩化ビニリデンフィルム、ビニルアルコールフィルム、アクリルフィルム、塩化ビニリデン樹脂コートセロファンなどが使用され、多層フィルムとしては、上述した単層フィルムを積層した多層フィルム無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム、アルミニウム蒸着ポリプロピレンフィルムなどが使用される。
【0055】
そして、シーラント層21は、ポリオレフィン系樹脂からなっており、樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、ポリプロピレン・α・オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂などが使用できる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・パウチ
2・・・外側のフィルム
3・・・内側のフィルム
4・・・外側のフィルムの折り曲げ位置
5・・・内側のフィルムの折り曲げ位置
6・・・内容物収納部1
7・・・内容物収納部2
8・・・上方部
9・・・下方部
10・・・サイドシール部
11・・・ボトムシール部
12・・・注出口シール部
13・・・トップシール部
14・・・ガゼット部
20・・・基材
21・・・シーラント層
30・・・注出口部
31・・・注出路
32・・・開封予定線
33・・・開封用ノッチ
34・・・切り欠き部
35・・・くぼみ部
36・・・破断用ハーフカット線
37・・・凸部
D・・・開封予定線の長さ(mm)
E・・・開口部幅(mm)
F・・・シール幅(mm)