(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】組織能力評価システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20230711BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20230711BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230711BHJP
【FI】
G06Q10/0639
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2019074122
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和真
(72)【発明者】
【氏名】林 雅祐
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-190166(JP,A)
【文献】特開2013-030021(JP,A)
【文献】特開2003-058231(JP,A)
【文献】特開2007-305102(JP,A)
【文献】特開2006-202082(JP,A)
【文献】特開2012-033127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業員により構成される組織が複数の工程を経て
複数種の製品を製造する際の組織能力を評価する組織能力評価システムであって、
前記組織が製造する対象の前記複数種の製品の各々について、複数の前記工程の各々において作業に要した作業時間を、
工程別作業実績として取得する作業実績取得部と、
前記複数種の製品の各々について、前記工程毎に設定された基準作業時間を、前記
工程別作業実績を評価する際の評価基準として記憶する評価基準記憶部と、
前記複数種の製品の各々について、前記工程別作業実績と前記基準作業時間とに基づいて、工程毎の作業能力を算出する作業能力算出部と、
前記複数種の製品の各々について、前記作業能力算出部により算出された工程毎の作業能力を、工程別作業能力として記憶する作業能力記憶部と、
同一の対象工程における前記複数種の製品の各々についての前記工程別作業能力に基づいて、
前記複数種の製品を製造する前記組織全体における前記対象工程についての前記組織能力
である工程別
組織能力を算出する工程別組織能力算出部と、
を備える、組織能力評価システム。
【請求項2】
複数の作業員により構成される組織が複数の工程を経て
複数種の製品を製造する際の組織能力を評価する組織能力評価システムであって、
前記組織が製造する対象の前記複数種の製品の各々について、複数の前記工程の各々において作業に要した作業時間を、工程別作業実績として取得する作業実績取得部と、
前記複数種の製品の各々について、前記工程毎に設定された基準作業時間を、前記
工程別作業実績を評価する際の評価基準として記憶する評価基準記憶部と、
前記複数種の製品の各々について、前記工程別作業実績と前記基準作業時間とに基づいて、工程毎の作業能力を算出する作業能力算出部と、
前記複数種の製品の各々について、前記作業能力算出部により算出された工程毎の作業能力を、工程別作業能力として記憶する作業能力記憶部と、
同一の対象製品における複数の前記工程の各々についての前記工程別作業能力に基づいて、
前記組織全体における前記対象製品についての前記組織能力
である製品別
組織能力を算出する製品別組織能力算出部と、
を備える、組織能力評価システム。
【請求項3】
複数の作業員により構成される組織が複数の生産ラインの各々に前記作業員を配置し、複数の工程を経て
複数種の製品を製造する際の組織能力を評価する組織能力評価システムであって、
前記組織が製造する対象の前記複数種の製品の各々、かつ、前記複数の生産ラインの各々について、複数の前記工程の各々において作業に要した作業時間を、工程別作業実績として取得する作業実績取得部と、
前記複数種の製品の各々、かつ、前記複数の生産ラインの各々について、前記工程毎に設定された基準作業時間を、前記
工程別作業実績を評価する際の評価基準として記憶する評価基準記憶部と、
前記複数種の製品の各々、かつ、前記複数の生産ラインの各々について、前記工程別作業実績と前記基準作業時間とに基づいて、工程毎の作業能力を算出する作業能力算出部と、
前記複数種の製品の各々、かつ、前記複数の生産ラインの各々について、前記作業能力算出部により算出された工程毎の作業能力を、工程別作業能力として記憶する作業能力記憶部と、
同一の対象生産ラインにおける前記複数種の製品の各々かつ前記複数の工程の各々前記工程別作業能力に基づいて、
前記複数種の製品を製造する前記組織全体における前記対象生産ラインについての前記組織能力
である生産ライン別
組織能力を算出するライン別組織能力算出部と、
を備える、組織能力評価システム。
【請求項4】
前記作業能力算出部は、
複数の前記
工程別作業実績と前記基準作業時間とに基づき、
前記工程毎の作業能力の1つとして、前記基準作業時間に対する前記作業時間の到達度合を算出する到達度合算出部と、
複数の前記
工程別作業実績と前記基準作業時間とに基づき、
前記工程毎の作業能力の他の1つとして、前記基準作業時間に対する前記作業時間の安定度合を算出する安定度合算出部と、
を備える、請求項1-3の何れか一項に記載の組織能力評価システム。
【請求項5】
前記組織能力評価システムは、さらに、前記作業能力算出部が算出した前記工程別作業能力に応じて、前記工程別作業能力のランク付けを行うランク付け部を備え、
前記工程別組織能力算出部
は、前記ランク付け部によりランク付けされた前記工程別作業能力のランクに基づいて、
前記工程別組織能力
を算出する、請求項
1に記載の組織能力評価システム。
【請求項6】
前記組織能力評価システムは、さらに、前記作業能力算出部が算出した前記工程別作業能力に応じて、前記工程別作業能力のランク付けを行うランク付け部を備え、
前記製品別組織能力算出部
は、前記ランク付け部によりランク付けされた前記工程別作業能力のランクに基づいて、
前記製品別組織能力
を算出する、請求項
2に記載の組織能力評価システム。
【請求項7】
前記組織能力評価システムは、さらに、前記作業能力算出部が算出した前記工程別作業能力に応じて、前記工程別作業能力のランク付けを行うランク付け部を備え、
前記ライン別組織能力算出部は、前記ランク付け部によりランク付けされた前記工程別作業能力のランクに基づいて、
前記生産ライン別組織能力
を算出する、請求項
3に記載の組織能力評価システム。
【請求項8】
前記工程別組織能力算出部
は、前記ランクの平均又は分散の少なくとも一方を前記工程別組織能力
として算出する、請求項5に記載の組織能力評価システム。
【請求項9】
前記製品別組織能力算出部
は、前記ランクの平均又は分散の少なくとも一方を
前記製品別組織能力
として算出する、請求項
6に記載の組織能力評価システム。
【請求項10】
前記ライン別組織能力算出部は、前記ランクの平均又は分散の少なくとも一方を
前記生産ライン別組織能力として算出する、請求項
7に記載の組織能力評価システム。
【請求項11】
前記工程別組織能力算出部
は、前記組織に属する前記作業員の人数を標本の総数として、前記ランクの平均又は分散を算出する、請求項
8に記載の組織能力評価システム。
【請求項12】
前記製品別組織能力算出部
は、前記組織に属する前記作業員の人数を標本の総数として、前記ランクの平均又は分散を算出する、請求項
9に記載の組織能力評価システム。
【請求項13】
前記ライン別組織能力算出部は、前記組織に属する前記作業員の人数を標本の総数として、前記ランクの平均又は分散を算出する、請求項
10に記載の組織能力評価システム。
【請求項14】
前記工程別組織能力算出部
は、前記組織に属する前記作業員のうち前記作業能力を有する人数を標本の総数として、前記ランクの平均又は分散を算出する、請求項
8に記載の組織能力評価システム。
【請求項15】
前記製品別組織能力算出部
は、前記組織に属する前記作業員のうち前記作業能力を有する人数を標本の総数として、前記ランクの平均又は分散を算出する、請求項
9に記載の組織能力評価システム。
【請求項16】
前記ライン別組織能力算出部は、前記組織に属する前記作業員のうち前記作業能力を有する人数を標本の総数として、前記ランクの平均又は分散を算出する、請求項
10に記載の組織能力評価システム。
【請求項17】
前記組織能力評価システムは、さらに、前記
工程別作業実績及び前記工程別作業能力に基づいて、前記組織に属する前記作業員毎の前記工程別作業能力を、前記作業員別の個人能力として算出する個人能力算出部を備える、請求項1-
16の何れか一項に記載の組織能力評価システム。
【請求項18】
前記組織能力評価システムは、さらに、
前記個人能力が一定以上である前記作業員を熟練者として抽出する熟練者抽出部と、
前記工程毎に必要とする前記熟練者の人数を、前記工程別の必要熟練者数として記憶する必要熟練者数記憶部と、
前記熟練者抽出部が抽出した前記熟練者の人数、及び、前記必要熟練者数に基づき、前記必要熟練者数に対する熟練者充足率を算出する充足率算出部と、
を備える、請求項
17に記載の組織能力評価システム。
【請求項19】
前記組織能力評価システムは、さらに、前記組織が製造した前記製品に対して実施された品質検査の検査結果を取得する検査結果取得部を備え、
前記作業能力算出部
は、前記工程別
の前記検査結果
に基づき、前記工程毎の作業能力の1つとして、品質に関する到達度合又は安定度合を算出する、請求項
4に記載の組織能力評価システム。
【請求項20】
前記組織能力評価システムは、さらに、前記工程別組織能力算出部が算出した前記工程別組織能力
を提示する提示部を備え、
前記提示部は、前記工程別組織能力
の推移を提示する、請求項
1に記載の組織能力評価システム。
【請求項21】
前記組織能力評価システムは、さらに、
前記製品別組織能力算出部が算出した前記製品別組織能力
を提示する提示部を備え、
前記提示部は、
前記製品別組織能力
の推移を提示する、請求項
2に記載の組織能力評価システム。
【請求項22】
前記組織能力評価システムは、さらに、
前記ライン別組織能力算出部が算出した前記
生産ライン別組織能力を提示する提示部を備え、
前記提示部は、
前記生産ライン別組織能力の推移を提示する、請求項
3に記載の組織能力評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織能力評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業者の作業実績に基づいて更新される能力マスターテーブルを用いて製造ラインに作業員を配分すると共に、作業の進捗に応じて作業員の配分調整を行う技術が開示されている。特許文献2には、グループを構成する作業者毎の作業能力を実績作業時間に基づいて見積もり、見積もった各作業者の作業能力に基づいてグループ別作業能力を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-6934号公報
【文献】特開平10-254962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造ラインの各工程で行う作業は、多種多様である。従って、作業者が、製造ラインの各工程で行う作業の全てについて同等の作業能力を有しているとは限らない。つまり、製造ラインに配分する作業者が同じであっても、当該製造ラインにおいて各々の作業者が担当する工程が異なれば、当該製造ラインにおける作業能力にバラつきが生じる場合がある。さらに、製造ラインにおいて各々の作業者が担当する工程が同じであっても、当該製造ラインで製造する製品が異なれば、当該製造ラインの各工程で行う作業内容も変わるため、当該製造ラインにおける作業能力にバラつきが生じる場合がある。そして、複数の製造ラインで製品の製造を行う組織において、製造ライン毎の作業能力にバラつきが生じれば、組織における生産性にもバラつきが生じる。
【0005】
この点に関して、組織の管理者は、例えば、組織に属する作業員の一人が何らかの都合で不在となった場合であっても、組織における生産性が維持されるように作業員を配置することを要求される。つまり、管理者は、作業員に欠員が生じる等の状況変化があったとしても、組織における生産性が高いレベルで安定するように、個々の作業員の作業能力を適切に評価できることが望ましい。しかしながら、組織の管理者にとって、当該組織に属する全ての作業員の作業能力を適切に評価し、組織における生産性を高いレベルで安定させることは、容易でない。
【0006】
本発明は、作業員の作業能力を適切に評価できる組織能力評価システム、及び、組織における生産性を高いレベル安定させることができる組織能力評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、複数の作業員により構成される組織が複数の工程を経て複数種の製品を製造する際の組織能力を評価する組織能力評価システムであって、
前記組織が製造する対象の前記複数種の製品の各々について、複数の前記工程の各々において作業に要した作業時間を、工程別作業実績として取得する作業実績取得部と、
前記複数種の製品の各々について、前記工程毎に設定された基準作業時間を、前記工程別作業実績を評価する際の評価基準として記憶する評価基準記憶部と、
前記複数種の製品の各々について、前記工程別作業実績と前記基準作業時間とに基づいて、工程毎の作業能力を算出する作業能力算出部と、
前記複数種の製品の各々について、前記作業能力算出部により算出された工程毎の作業能力を、工程別作業能力として記憶する作業能力記憶部と、
同一の対象工程における前記複数種の製品の各々についての前記工程別作業能力に基づいて、前記複数種の製品を製造する前記組織全体における前記対象工程についての前記組織能力である工程別組織能力を算出する工程別組織能力算出部と、
を備える、組織能力評価システムにある。
【0008】
上記第一の態様によれば、組織の管理者は、工程別組織能力算出部の算出結果に基づき、作業員の工程別の作業能力を適切に評価することができる。そして、管理者は、当該第一の組織能力評価システムを用いることにより、工程別の組織能力を的確に把握することができる。よって、管理者は、特定の工程において組織能力が低いと評価された場合に、当該工程の組織能力を高めるための対策を講じることができる。また、管理者は、全ての工程における工程別の組織能力を高めることにより、組織における生産性を高めることができる。
【0009】
本発明の第二の態様は、複数の作業員により構成される組織が複数の工程を経て複数種の製品を製造する際の組織能力を評価する組織能力評価システムであって、
前記組織が製造する対象の前記複数種の製品の各々について、複数の前記工程の各々において作業に要した作業時間を、工程別作業実績として取得する作業実績取得部と、
前記複数種の製品の各々について、前記工程毎に設定された基準作業時間を、前記工程別作業実績を評価する際の評価基準として記憶する評価基準記憶部と、
前記複数種の製品の各々について、前記工程別作業実績と前記基準作業時間とに基づいて、工程毎の作業能力を算出する作業能力算出部と、
前記複数種の製品の各々について、前記作業能力算出部により算出された工程毎の作業能力を、工程別作業能力として記憶する作業能力記憶部と、
同一の対象製品における複数の前記工程の各々についての前記工程別作業能力に基づいて、前記組織全体における前記対象製品についての前記組織能力である製品別組織能力を算出する製品別組織能力算出部と、
を備える、組織能力評価システムにある。
【0010】
上記第二の態様によれば、組織の管理者は、製品別組織能力算出部の算出結果に基づき、作業員の製品別の作業能力を適切に評価することができる。そして、管理者は、当該第二の組織能力評価システムを用いることにより、製品別の組織能力を的確に把握することができる。よって、管理者は、特定の製品を製造する際の組織能力が低いと評価された場合に、当該製品を製造する際の組織能力を高めるための対策を講じることができる。また、管理者は、製造する全ての製品における製品別の組織能力を高めることにより、組織における生産性を高めることができる。
【0011】
本発明の第三の態様は、複数の作業員により構成される組織が複数の生産ラインの各々に前記作業員を配置し、複数の工程を経て複数種の製品を製造する際の組織能力を評価する組織能力評価システムであって、
前記組織が製造する対象の前記複数種の製品の各々、かつ、前記複数の生産ラインの各々について、複数の前記工程の各々において作業に要した作業時間を、工程別作業実績として取得する作業実績取得部と、
前記複数種の製品の各々、かつ、前記複数の生産ラインの各々について、前記工程毎に設定された基準作業時間を、前記工程別作業実績を評価する際の評価基準として記憶する評価基準記憶部と、
前記複数種の製品の各々、かつ、前記複数の生産ラインの各々について、前記工程別作業実績と前記基準作業時間とに基づいて、工程毎の作業能力を算出する作業能力算出部と、
前記複数種の製品の各々、かつ、前記複数の生産ラインの各々について、前記作業能力算出部により算出された工程毎の作業能力を、工程別作業能力として記憶する作業能力記憶部と、
同一の対象生産ラインにおける前記複数種の製品の各々かつ前記複数の工程の各々前記工程別作業能力に基づいて、前記複数種の製品を製造する前記組織全体における前記対象生産ラインについての前記組織能力である生産ライン別組織能力を算出するライン別組織能力算出部と、
を備える、組織能力評価システムにある。
【0012】
上記第三の態様によれば、組織の管理者は、ライン別組織能力算出部の算出結果に基づき、生産ライン別の組織能力を適切に評価することができる。そして、管理者は、当該第三の組織能力評価システムを用いることにより、生産ライン別の組織能力を的確に把握することができる。よって、管理者は、特定の生産ラインにおける組織能力が他の生産ラインにおける組織能力が低いと評価された場合に、当該特定の生産ラインの組織能力を高めるための対策を講じることができる。また、管理者は、全ての生産ラインにおける生産ライン別の組織能力を高めることにより、組織における生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】複数の生産ラインが設けられた生産設備の模式図である。
【
図2A】組織能力評価システムの機能ブロック図の一部を示す図である。
【
図2B】組織能力評価システムの機能ブロック図の一部を示す図である。
【
図3】作業実績記録部に記録される作業実績の一例を示す表である。
【
図5】
図4に示す表に基づいて生成された表であり、到達度合算出用に変換された作業時間、5回分の作業時間の合計及び平均を示す。
【
図6】
図4に示す表に基づいて生成された表であり、安定度合算出用に変換された作業時間、5回分の作業時間の合計及び分散を示す。
【
図7】第一生産ラインにおける工程別作業能力を製品毎に示した表である。
【
図8】工程別組織能力算出部による算出結果の一例を示した表である。
【
図9】製品別組織能力算出部による算出結果の一例を示した表である。
【
図10】ライン別組織能力算出部による第一のライン別組織能力の算出結果の一例を示した表である。
【
図11】ライン別組織能力算出部による第二のライン別組織能力の算出結果の一例を示した表である。
【
図12】個人能力記憶部に記憶される個人能力の一例を示した表である。
【
図13】提示部に提示される工程別組織能力の推移を表すグラフの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1.生産設備1の概要)
最初に、
図1を参照して、組織能力評価システム50を適用する生産設備1について説明する。生産設備1は、複数の作業員により構成される組織が種々の製品を生産するのに用いる設備である。
【0017】
図1に示すように、生産設備1には、複数の生産ラインL1-L3が設けられ、各々の生産ラインL1-L3には、複数の工作機械Mが配置される。組織の管理者は、各々の生産ラインL1-L3に複数名の作業員を割り当て、作業員は、生産ラインL1-L3毎に配置された各々の工作機械Mを操作する。
【0018】
組織は、各々の生産ラインL1-L3において、種々の製品を製造する。例えば、組織は、各々の生産ラインL1-L3において、自動車の製造、自動車部品の製造、産業機械の製造等を行う。組織は、生産ラインL1-L3毎に異なる製品を同時に製造することも可能であり、全ての生産ラインL1-L3で同一の製品を同時に製造することも可能である。また、組織は、各々の生産ラインL1-L3において同一の製品を製造し続けることも可能であり、状況に応じて製造する製品を変更することも可能である。
【0019】
本実施形態において、各々の生産ラインL1-L3による製品の製造工程は、第一工程P1、第二工程P2、第三工程P3、第四工程P4及び第五工程P5を含む。第一工程P1は、作業員が第一の工作機械M11,M21,M31を用いて作業を行う工程である。本実施形態において、第一の工作機械M11,M21,M31は、全て同種の工作機械であり、作業員は、第一の工作機械M1の操作方法と同様の操作方法で、第一の工作機械M21,M31を操作することができる。
【0020】
第二工程P2は、作業員が第二の工作機械M12,M22,M32を用いて作業を行う工程であり、第一工程P1で製造した中間品に対して作業を行う。本実施形態において、第二の工作機械M12,M22,M32は、全て同種の工作機械である。第三工程P3は、作業員が第三の工作機械M13,M23,M33を用いて作業を行う工程であり、第二工程P2で製造した中間品に対して作業を行う。本実施形態において、第三の工作機械M13,M23,M33は、全て同種の工作機械である。
【0021】
第四工程P4は、第四の工作機械M14,M24,M34を用いて作業を行う工程であり、第三工程P3で製造した中間品に対する作業を行う。本実施形態において、第四の工作機械M14,M24,M34は、全て同種の工作機械である。第五工程P5は、第五の工作機械M15,M25,M35を用いて作業を行う工程であり、第四工程P4で製造した中間品に対して作業を行う。本実施形態において、第五の工作機械M15,M25,M35は、全て同種の工作機械である。そして、第五工程P5で完成された製品は、その後に実施される品質検査工程において品質検査が行われる。
【0022】
なお、各々の生産ラインL1-L3に含まれる工程の数は、任意に設定することができる。また、各々の生産ラインL1-L3で製造する製品において、不要な工程があれば、当該工程を省略することも可能である。また、品質検査工程は、最終工程の後だけではなく、工程間に行ってもよい。
【0023】
(2.組織能力評価システム50の概要)
組織能力評価システム50は、複数の作業員により構成される組織が、複数の工程を経て種々の製品を製造する際の生産能力を、組織能力として評価する。主として、組織能力評価システム50は、製品の構造工程に含まれる各工程での作業に要した時間(作業時間)を取得し、取得した作業時間に基づいて組織能力を評価する。
【0024】
例えば、組織能力評価システム50は、特定の工程で要した作業時間に基づき、当該工程の工程別の組織能力を算出することができる。また、組織能力評価システム50は、特定の製品を製造する際の各工程で要した作業時間に基づき、当該製品の製品別の組織能力を算出することができる。さらに、組織能力評価システム50は、工程別の組織能力や製品別の組織能力を生産ラインL1-L3毎に算出することにより、生産ラインL1-L3別の組織能力を算出することができる。そして、組織の管理者は、組織能力評価システム50による評価結果を、例えば、組織における生産性の向上を図る際に利用することができる。
【0025】
(3.組織能力評価システム50の構成)
次に、組織能力評価システム50の構成を説明する。
図2Aに示すように、組織能力評価システム50は、作業実績取得部51、検査結果取得部52と、作業記録記憶部53、評価基準記憶部54、作業能力算出部55、ランク付け部56、作業能力記憶部57、組織能力算出部58、及び、提示部70とを主に備える。
【0026】
図2Bに示すように、組織能力評価システム50は、さらに、個人能力算出部61、個人能力記憶部62、熟練者抽出部63、必要熟練者数記憶部64、及び、充足率算出部65を備える。
【0027】
作業実績取得部51は、組織が生産設備1を用いて製品を製造した際に、各工程P1-P5において作業に要した作業時間を、工程別作業実績として取得する。例えば、生産設備1には、工作機械M11-M15,M21-M25,M31-M35を用いて作業を行う作業員の各々の作業領域に、作業の開始を示すための開始ボタン、及び、作業の終了を示すための終了ボタンが設置される。各々の作業者は、担当する工程での作業を開始する際に開始ボタンを押し、当該作業が終了すると終了ボタンを押す。そして、作業実績取得部51は、開始ボタンが押された時刻から、作業ボタンが押された時刻までの時間を、各工程における1回当たりの作業時間として取得する。なお、生産設備1は、開始ボタン及び終了ボタンを用いる代わりに、自動的に作業の開始及び終了を検出するシステムを採用してもよい。
【0028】
検査結果取得部52は、各々の生産ラインL1-L3で製造した製品に対して実施した品質検査の検査結果に関する情報を取得する。例えば、検査結果取得部52は、品質検査を行った作業者によって入力された検査結果情報を取得する。なお、品質検査には、複数の検査項目が含まれ、各項目に対して検査結果が示される。例えば、品質検査において製品に関する計測を行った場合に得られた計測値を、予め設定された閾値と比較し、検査結果が良好であれば○とし、不良であれば×とする。
【0029】
また、品質検査に含まれる検査項目は、製造工程に関連づけられている。つまり、検査項目が不良であった場合に、不良と判定された検査項目に関連づけられた製造工程において、組織の管理者は、何らかの不具合が発生したと推定することができる。例えば、第一工程P1が検査項目1及び2に関連づけられている場合において、検査項目1又は2が不良であれば、組織の管理者は、第一工程P1に何らかの不具合が発生したと推定することができる。
【0030】
作業記録記憶部53には、作業実績取得部51が取得した作業時間に関する作業時間情報、及び、検査結果取得部52が取得した検査結果情報が記憶される。これに加え、作業記録記憶部53には、組織が生産設備1を用いて製品を製造した際に得られる種々の作業記録を取得する。
【0031】
図3に示すように、作業記録記憶部53は、例えば、作業記録を生産ラインL1-L3別に記憶する。そして、作業記録記憶部53には、作業日と、各々の生産ラインL1-L3に含まれる各工程P1-P5の担当作業者(各工作機械M11-15,M21-25,M31-M35を操作する作業者)の名前等が記録されている。なお、作業記録記憶部53は、生産ラインL1-L3別に作業記録を記憶する代わりに、作業記録を作業員別、工作機械Mの機種別、或いは、製品別に記憶することも可能である。また、同一の作業日において作業員の配置を変えた場合には、作業時間を作業記録記憶部53に記憶することも可能である。
【0032】
評価基準記憶部54は、各々の工程P1-P5における作業時間の目安となる基準作業時間を、作業実績を評価する際の評価基準として記憶する。例えば、基準作業時間は、組織の管理者等が決定した生産計画に基づいて設定される。なお、管理者等は、各工程P1-P5の基準作業時間を製品毎に設定することができる。
【0033】
作業能力算出部55は、作業記録記憶部53に記憶された工程別作業実績、及び、評価基準記憶部に記憶された基準作業時間に基づき、予め設定された演算処理をコンピュータにて実行することにより、工程毎の作業能力(以下「工程別作業能力」と称す)を算出する。工程別作業能力は、作業実績として取得した実際の作業時間が、基準作業時間に対してどのような程度であるかを示す指標であり、作業実績の評価結果を示す値である。
【0034】
具体的に、作業能力算出部55は、到達度合算出部55aと、安定度合算出部55bとを備える。到達度合算出部55aは、所定期間内に取得した複数の作業実績と基準作業時間とに基づき、基準作業時間に対する作業時間の到達度合を算出する。安定度合算出部55bは、所定期間内に取得した複数の作業実績と基準作業時間とに基づき、基準作業時間に対する作業時間の安定度合を算出する。つまり、作業能力算出部55は、所定期間における工程別の作業実績として、当該工程に要した作業時間が基準作業時間に到達した度合を表す到達度合、及び、当該工程に要した作業時間のバラつきの度合を表す安定度合を算出する。このように、作業能力算出部55は、到達度合と安定度合の2つの指標を作業能力として算出する。以下に、作業時間の到達度合及び安定度合について、具体例を挙げながら説明する。
【0035】
図4には、第一生産ラインL1で製品Xを製造した際の第一工程P1の作業時間が例示されている。なおここでは、製品Xを製造する際の第一工程P1の基準作業時間を60分とする。
【0036】
到達度合算出部55aは、到達度合を算出するにあたり、作業記録記憶部53に記録された作業時間が基準作業時間に到達した場合、即ち、実際の作業時間が基準作業時間以内であれば、実際の作業時間を基準作業時間に置換し、到達度合算出用の作業時間とする。一方、到達度合算出部55aは、作業記録記憶部53に記録された作業時間が基準作業時間に到達していない場合、即ち、実際の作業時間が基準作業時間を超えた場合、実際の作業時間そのものを到達度合算出用の作業時間とする。そして、到達度合算出部55aは、当該到達時間算出用の複数回分の作業時間を用いて、到達度合を算出する。
【0037】
例えば、
図5に示すように、
図4に示す例において作業日を4月1日とする第一工程P1の5回分の作業時間は、58分、56分、59分、61分、60分である。この場合、到達度合算出用の作業時間は、60分、60分、60分、61分、60分に変換される。また、
図4に示す例において作業日を4月2日とする第一工程P1の5回分の作業時間は、45分、74分、51分、60分、72分である。この場合、到達度合算出用の作業時間は、60分、74分、60分、60分、72分に変換される。この理由は、工程別の作業時間が基準作業時間に到達したかしていないかを評価すると共に、到達していない場合にどの程度の未到達状態であるかを評価するためである。
【0038】
続いて、到達度合算出部55aは、到達度合算出用に変換された複数回分の作業時間の平均を到達度合の指標の一つとして算出する。
図5に示す例において、作業日を4月1日とする第一工程P1の到達度合の当該平均は、60.2分であり、作業日を4月2日とする第一工程P1の到達度合の当該平均は、65.2分である。到達度合に関して、到達度合の当該平均が60分であれば、全てにおいて基準時間に到達していることを意味し、当該平均が60分より多い時間分が基準時間に到達していない場合の程度を意味する。
【0039】
これに対し、安定度合算出部55bは、安定度合を算出するにあたり、作業実績取得部51が取得した作業時間そのものを安定度合算出用の作業時間とし、当該安定度合算出用の作業時間を用いて、複数回分の作業時間の安定度合を算出する。
【0040】
例えば、
図6に示すように、
図4に示す例において作業日を4月1日とする第一工程P1の5回分の安定度合算出用の作業時間は、58分、56分、59分、61分、60分となる。同様に、
図4に示す例において作業日を4月2日とする第一工程P1の5回分の安定度合算出用の作業時間は、45分、74分、51分、60分、72分となる。
【0041】
続いて、安定度合算出部55bは、安定度合算出用の複数回分の作業時間の分散を安定度合の指標の一つとして算出する。例えば、作業日を4月1日とする第一工程P1の安定度合の分散は、2.96となり、作業日を4月2日とする第一工程P1の安定度合の分散は、129.04となる。安定度合に関して、安定度合の当該分散が0に近いほど、作業時間のばらつきが小さく、作業時間の安定度合が高いことを意味する。
【0042】
ランク付け部56は、作業能力算出部55が算出した工程別作業能力に応じて、工程別作業能力のランク付けを行う。上記したように、作業能力算出部55は、工程別作業能力として、作業時間の到達度合及び安定度合を算出する。それに対して、ランク付け部56は、到達度合及び安定度合を段階的に評価し、ランク分けを行う。
【0043】
具体的に、ランク付け部56は、到達度合としての平均を用いて、到達度合としてのレベル(以下「到達度合レベル」と称する)を決定する。到達度合レベルは、複数段階(例えば5段階)に分けられる。本実施形態において、ランク付け部56は、到達度合としての平均が小さい値である場合に、到達度合レベルが高いと判断し、高いランク(例えばレベル5)を付与する。一方、ランク付け部56は、到達度合としての平均が大きい値である場合に、到達度合レベルが低いと判断し、低いランク(例えばレベル1)を付与する。
【0044】
なおここでは、到達度合の指標の一つとして平均を用いる場合を例に挙げて説明したが、平均以外の統計量を用いることも可能である。例えば、到達度合は、到達の有無のみを表すことができる統計量を用いてもよい。
【0045】
また、ランク付け部56は、安定度合としての分散を用いて、安定度合としてのレベル(以下、「安定度合レベル」と称する)を決定する。安定度合レベルは、複数段階(例えば5段階)に分けられる。本実施形態において、安定度合としての分散が小さい値である場合に、安定度合レベルと判断し、高いランク(例えばレベル5)を付与する。これに対し、ランク付け部56は、安定度合としての分散が大きい値である場合に、安定度合レベルが低いと判断し、低いランク(例えばレベル1)を付与する。なおここでは、安定度合の指標の一つとして分散を用いる場合を例に挙げて説明したが、分散以外の統計量を用いることも可能である。
【0046】
続いて、ランク付け部56は、到達度合レベルと安定度合レベルとに基づいて、工程別作業能力のレベルを決定する。例えば、ランク付け部56は、到達度合レベルと安定度合レベルとの平均又は合計を工程別作業能力のランクとする。そして、ランク付け部56によってランク付けされた工程別作業能力のランクは、作業能力記憶部57に記憶される。
【0047】
ここで、作業能力算出部55は、検査結果取得部52が取得した複数の製品に対する検出結果の到達度合を算出することも可能である。またこの場合、ランク付け部56は、当該検出結果の到達度合に関するランク分けを行い、当該検出結果の到達度合と、作業時間の到達度合及び安定度合とに基づいて、工程別作業能力のレベルを決定することも可能である。この場合、作業能力算出部55は、作業時間だけでなく、製造した製品の品質を作業能力の評価対象とすることができる。
【0048】
組織能力算出部58は、作業能力記憶部57に記憶された工程別作業能力のランクに基づき、組織における生産性を示す指標となる組織能力を算出する。組織能力算出部58は、組織能力を工程別に算出する工程別組織能力算出部58aと、組織能力を製品別に算出する製品別組織能力算出部58bと、組織能力を生産ライン別に算出するライン別組織能力算出部58cとを備える。
【0049】
図7には、生産ラインL1が一日を通して種々の製品を製造した際に取得した作業実績に基づいて算出した工程別及び製品別の作業能力を示す表が示されている。
図7に示す例において、生産ラインL1が生産した製品は、製品X,Y及びZの3種である。なお、製品X及びYは、第一工程P1から第五工程P5までの5つの工程を経て製造されるのに対し、製品Zは、第四工程P4以外の4つの工程を経て製造される。つまり、製品Zの製造工程には、第四工程P4が含まれない。
【0050】
図7に示す例において、工程別組織能力算出部58aは、製品Xを製造した際の第一工程P1のランクXP1と、製品Yを製造した際の第一工程P1のランクYP1と、製品Zを製造した際の第一工程P1のランクZP1との平均を、第一生産ラインL1における第一工程P1の工程別作業能力L1P1として算出する。同様に、工程別組織能力算出部58aは、製品Xを製造した際の第二工程P2のランクXP2と、製品Yを製造した際の第二工程P2のランクYP2と、製品Zを製造した際の第二工程P2のランクZP2との平均を、第一生産ラインL1における第二工程P2の工程別作業能力L1P2として算出する。以下同様に、工程別組織能力算出部58aは、第一生産ラインL1における第三工程P3、第四工程P4及び第五工程P5の工程別作業能力L1P3,L1P4,L1P5を算出する。
【0051】
また、工程別組織能力算出部58aは、第一生産ラインL1の場合と同様に、第二生産ラインL2及び第三生産ラインL3における工程P1-P5毎の工程別作業能力を算出する。
【0052】
次に、
図8に示すように、工程別組織能力算出部58aは、全ての生産ラインL1-L3を含めた組織全体の工程別作業能力である工程別組織能力を算出する。例えば、工程別組織能力算出部58aは、第一生産ラインL1の第一工程P1の工程別作業能力L1P1、第二生産ラインL2の第一工程P1の工程別作業能力L2P1、及び、第三生産ラインL3の第一工程P1の工程別作業能力L3P1の平均を、第一工程P1の工程別組織能力TP1として算出する。また、工程別組織能力算出部58aは、第一工程P1の場合と同様に、第二工程P2、第三工程P3、第四工程P4及び第五工程P5の工程別組織能力TP2,TP3,TP4,TP5を算出する。
【0053】
このようにして、組織能力算出部58は、組織能力を工程別に算出する。これにより、組織の管理者は、工程別組織能力算出部58aの算出結果に基づき、作業員の工程別の作業能力を適切に評価することができる。つまり、管理者は、組織能力評価システム50を用いることにより、工程別の組織能力を的確に把握することができる。よって、管理者は、特定の工程において組織能力が低いと評価された場合に、当該工程の組織能力を高めるための対策を講じることができる。そして、管理者は、全ての工程における工程別の組織能力を高めることにより、組織における生産性を高めることができる。
【0054】
なお、工程別組織能力算出部58aは、第一生産ラインL1において各製品X,Y,Zを製造した際の第一工程P1のランクXP1,YP1,ZP1、第二生産ラインL2において各製品X,Y,Zを製造した際の第一工程P1のランクXP1,YP1,ZP1、第三生産ラインL3において各製品X,Y,Zを製造した際の第一工程P1のランクXP1,YP1,ZP1の平均を、第一工程P1における工程別組織能力として算出することも可能である。
【0055】
また、工程別組織能力算出部58aは、第一生産ラインL1において各製品X,Y,Zを製造した際の第一工程P1のランクXP1,YP1,ZP1、第二生産ラインL2において各製品X,Y,Zを製造した際の第一工程P1のランクXP1,YP1,ZP1、第三生産ラインL3において各製品X,Y,Zを製造した際の第一工程P1のランクXP1,YP1,ZP1の分散を、第一工程P1における工程別組織能力として算出することも可能である。この場合、組織の管理者は、工程別の組織能力のバラつきを把握することがで
きる。従って、例えば、全ての工程P1-P5の間で工程別組織能力のバラつきが大きい場合に、管理者は、当該バラツキを小さくするための対策を講じることができる。
【0056】
ここで、工程別組織能力算出部58aは、組織に属する作業員の人数を標本の総数として、ランクの平均を算出し、その算出結果を第一の工程別組織能力とする。つまり、第一の工程別組織能力は、当該工程の組織能力を有しない(当該工程の作業経験がない)作業員を含めた作業員全体を標本とした工程別組織能力を算出する。よって例えば、組織の管理者は、特定の工程における第一の工程別組織能力が低いと評価された場合に、当該工程における作業能力を有する作業員が少ない、或いは、当該工程において高い作業能力を有する作業員が少ないと判断することができる。
【0057】
また、工程別組織能力算出部58aは、組織に属する作業員の人数を標本の総数として、ランクの分散を、第一の工程別組織能力として算出することも可能である。この場合において、組織の管理者は、特定の工程における第一の工程別組織能力が低い(即ち、バラツキが大きい)と評価された場合に、当該工程における作業員の作業能力の差が大きい、或いは、当該工程において高い作業能力を有する作業員が少ないと判断することができる。
【0058】
これに加えて、工程別組織能力算出部58aは、組織に属する作業者のうち作業能力を有する人数を標本の総数として、ランクの平均を、第二の工程別組織能力として算出する。この場合、工程別組織能力算出部58aが算出する値は、当該工程の組織能力を有する(当該工程の作業経験がある)作業員のみを対象とした工程別組織能力となる。よって例えば、組織の管理者は、特定の工程における第二の工程別組織能力が低いと評価された場合に、当該工程において高い作業能力を有する作業員が少ないと判断することができる。
【0059】
また、工程別組織能力算出部58aは、組織に属する作業者のうち作業能力を有する人数を標本の総数として、ランクの分散を算出し、その算出結果を第二の工程別組織能力と出することも可能である。この場合、組織の管理者は、特定の工程における第二の工程別組織能力が低い(即ち、バラツキが大きい)と評価された場合に、当該工程における作業員の作業能力の差が大きいと判断することができる。つまり、第二の工程別組織能力が低いという評価結果は、作業能力の高い作業員が不在となった場合に、組織能力が低下するおそれが高いことを意味する。
【0060】
また、
図7に示す例において、製品別組織能力算出部58bは、製品Xを製造した際の第一工程P1のランクXP1、第二工程P2のランクXP2、第三工程P3のランクXP3、第四工程P4のランクXP4及び第五工程P5のランクXP5の平均を、第一生産ラインL1における製品Xの製品別作業能力L1TXとして算出する。同様に、製品別組織能力算出部58bは、製品Yを製造した際の第一工程P1のランクYP1、第二工程P2のランクYP2、第三工程P3のランクYP3、第四工程P4のランクYP4及び第五工程P5のランクYP5の平均を、第一生産ラインL1における製品Yの製品別作業能力L1TYとして算出する。また、製品別組織能力算出部58bは、製品Zを製造した際の第一工程P1のランクZP1、第二工程P2のランクZP2、第三工程P3のランクZP3及び第五工程P5のランクZP5の平均を、第一生産ラインL1における製品Zの製品別作業能力L1TZとして算出する。
【0061】
また、製品別組織能力算出部58bは、第一生産ラインL1の場合と同様に、第二生産ラインL2及び第三生産ラインL3における製品X、製品Y及び製品Zの製品別作業能力を算出する。
【0062】
次に、
図9に示すように、製品別組織能力算出部58bは、全ての生産ラインL1-L3を含めた組織全体の製品別作業能力である製品別組織能力を算出する。例えば、製品別組織能力算出部58bは、第一生産ラインL1の製品Xの製品別作業能力L1TX、第二生産ラインL2の製品Xの製品別作業能力L2TX、及び、第三生産ラインL3の製品Xの製品別作業能力L3TXの平均を、製品Xの製品別組織能力TXとして算出する。さらに、製品別組織能力算出部58bは、製品Xの場合と同様に、製品Y及び製品Zの製品別組織能力TY,TZを算出する。
【0063】
このようにして、組織能力算出部58は、組織能力を製品別に算出する。これにより、組織の管理者は、製品別組織能力算出部58bの算出結果に基づき、作業員の製品別の作業能力を適切に評価することができる。つまり、管理者は、組織能力評価システム50を用いることにより、製品別の組織能力を的確に把握することができる。よって、管理者は、特定の製品を製造する際の組織能力が低いと評価された場合に、当該製品を製造する際の組織能力を高めるための対策を講じることができる。また、管理者は、製造する全ての製品における製品別の組織能力を高めることにより、組織における生産性を高めることができる。
【0064】
なお、製品別組織能力算出部58bは、第一生産ラインL1において製品Xを製造した際の各工程P1-P5のランクXP1-XP5、第二生産ラインL2において製品Xを製造した際の各工程P1-P5のランクXP1-XP5、第三生産ラインL3において製品Xを製造した際の各工程P1のランクXP1-XP5の平均を、製品Xにおける製品別組織能力として算出することも可能である。
【0065】
また、製品別組織能力算出部58bは、第一生産ラインL1において製品Xを製造した際の各工程P1-P5のランクXP1-XP5、第二生産ラインL2において製品Xを製造した際の各工程P1-P5のランクXP1-XP5、第三生産ラインL3において製品Xを製造した際の各工程P1のランクXP1-XP5の分散を、製品Xにおける製品別組織能力として算出することも可能である。この場合、組織の管理者は、製品別の組織能力のバラつきを把握することができる。従って、例えば、全ての製品X,Y,Zの間で製品組織能力のバラつきが大きい場合に、管理者は、当該バラツキを小さくするための対策を講じることができる。
【0066】
ここで、製品別組織能力算出部58bは、組織に属する作業員の人数を標本の総数として、ランクの平均を、第一の製品別組織能力として算出する。つまり、第一の製品別組織能力は、当該製品の組織能力を有しない(当該製品の製造経験がない)作業員を含めた製品別組織能力となる。この場合、例えば、組織の管理者は、特定の製品における第一の製品別組織能力が低いと評価された場合に、当該製品における作業能力を有する作業員が少ない、或いは、当該製品において高い作業能力を有する作業員が少ないと判断することができる。
【0067】
また、製品別組織能力算出部58bは、組織に属する作業員の人数を標本の総数として、ランクの分散を、第一の製品別組織能力として算出することも可能である。この場合において、組織の管理者は、特定の製品における第一の製品別組織能力が低い(即ち、バラツキが大きい)と評価された場合に、当該製品における作業員の作業能力の差が大きい、或いは、当該製品において高い作業能力を有する作業員が少ないと判断することができる。
【0068】
これに加えて、製品別組織能力算出部58bは、組織に属する作業者のうち作業能力を有する人数を標本の総数として、ランクの平均を、第二の製品別組織能力として算出する。この場合、製品別組織能力算出部58bが算出する値は、当該製品の組織能力を有する(当該製品の製造経験がある)作業員のみを対象とした製品別組織能力となる。この場合、例えば、組織の管理者は、特定の製品における第二の製品別組織能力が低いと評価された場合に、当該製品において高い作業能力を有する作業員が少ないと判断することができる。
【0069】
また、製品別組織能力算出部58bは、組織に属する作業者のうち作業能力を有する人数を標本の総数として、ランクの分散を、第二の製品別組織能力として算出することも可能である。この場合において、組織の管理者は、特定の製品における第二の製品別組織能力が低い(即ち、バラツキが大きい)と評価された場合に、当該製品における作業員の作業能力の差が大きいと判断することができる。
【0070】
ライン別組織能力算出部58cは、工程別組織能力算出部58aが算出した生産ラインL1-L3毎の工程別の組織能力、又は、製品別組織能力算出部58bが算出した生産ラインL1-L3毎の製品別の組織能力に基づいて、生産ライン別の組織能力を算出する。
【0071】
図10に示すように、例えば、ライン別組織能力算出部58cは、第一生産ラインL1の各工程P1-P5の工程別組織能力TP1-TP5の平均を第一生産ラインL1の第一のライン別組織能力TL1-1として算出する。また、ライン別組織能力算出部58cは、第一生産ラインL1の場合と同様に、第二生産ラインL2及び第三生産ラインL3の第一のライン別組織能力TL2-1,TL3-1を算出する。
【0072】
また、
図11に示すように、例えば、ライン別組織能力算出部58cは、第一生産ラインL1の各製品X-Zの製品別組織能力TX-TZの平均を第一生産ラインL1の第二のライン別組織能力TL1-2として算出する。さらに、ライン別組織能力算出部58cは、第一生産ラインL1の場合と同様に、第二生産ラインL2及び第三生産ラインL3の第二のライン別組織能力TL2-2,TL3-2を算出する。
【0073】
このようにして、組織能力算出部58は、組織能力を生産ラインL1-L3別に算出する。これにより、組織の管理者は、ライン別組織能力算出部58cの算出結果に基づき、生産ラインL1-L3別の組織能力を適切に評価することができる。つまり、管理者は、組織能力評価システム50を用いることにより、生産ラインL1-L3別の組織能力を的確に把握することができる。よって、管理者は、特定の生産ラインにおける組織能力が他の生産ラインにおける組織能力が低いと評価された場合に、当該特定の生産ラインの組織能力を高めるための対策を講じることができる。そして、管理者は、全ての生産ラインL1-L3における生産ライン別の組織能力を高めることにより、組織における生産性を高めることができる。
【0074】
例えば、管理者は、特定の作業日において、特定の生産ラインのライン別組織能力が、他の作業日における当該生産ラインのライン別組織能力よりも低かった場合に、作業記録記憶部53の記録内容に基づき、当該特定の作業日における当該生産ラインの作業員の配置を確認できる。そして、管理者は、当該作業日の当該生産ラインにおける工程別作業能力を把握することにより、ボトルネックとなった考えられる工程を容易に特定することが可能となる。そして、ボトルネックとなった工程を担当した作業員の個人能力が低かった場合、管理者は、当該作業員の個人能力の低さがライン別組織能力の低下要因であると推定できる。
【0075】
また、組織能力評価システム50において、作業能力算出部55は、作業時間の到達度合及び安定度合を算出し、組織能力算出部58は、算出された作業時間の到達度合及び安定度合に基づいて組織能力を算出する。よって、組織の管理者は、組織能力を適切に評価することができる。つまり、管理者は、組織能力評価システム50を用いることにより、基準作業時間に対する作業時間の到達度合及び安定度合を把握することができる。よって、管理者は、組織能力が低いと評価された場合に、組織能力を高めるための対策を講じることができる。そして、管理者は、組織能力を高めることにより、組織における生産性を高いレベルで安定させることができる。
【0076】
次に、個人能力算出部61及び個人能力記憶部62(
図2B参照)について説明する。個人能力算出部61は、作業記録記憶部53における記録内容と工程別作業能力とに基づいて、組織の属する作業員の工程別作業能力を、作業員別の個人能力として算出する。
【0077】
個人能力算出部61は、作業記録記憶部53に記録された作業実績に基づいて、特定の作業日において特定の工作機械Mを操作していた(特定の工程を担当していた)作業員を特定する。換言すれば、個人能力算出部61は、作業実績に基づいて、特定の作業日において、特定の作業者が、どの生産ラインに割り当てられ、当該生産ラインの中でどの工程を担当していたかを特定する。
【0078】
続いて、個人能力算出部61は、当該作業者と、作業能力記憶部57に記憶された工程別作業能力との紐付けを行う。つまり、個人能力算出部61は、当該作業者が担当した工程と、当該工程における工程別作業能力とを紐付けることにより、当該工程における工程別作業能力を、当該作業員の個人能力と認定する。そして、個人能力算出部61により算出された作業員毎の個人能力の履歴は、個人能力記憶部62に記憶される。
【0079】
また、
図12に示すように、個人能力算出部61は、さらに、個人能力記憶部62に蓄積された作業員毎の個人能力の履歴を利用して、作業員毎の個人能力データを定期的に(例えば、一週間毎に)算出する。例えば、個人能力算出部61は、各々の作業員の所定期間(例えば、3か月)内における個人能力の履歴を抽出する。そして、個人能力算出部61は、抽出した個人能力の履歴を用いて工程別の個人能力の平均を製品毎に算出し、その算出結果を個人能力データとする。
【0080】
そして、組織の管理者は、個人能力データを確認することにより、所定期間における作業員毎の個人能力を把握することができる。つまり、管理者は、個人能力データを参考にしながら、各々の生産ラインL1-L3に対する作業員の割り当て、及び、各々の生産ラインL1-L3における作業員の担当を決めることができる。その結果、管理者は、各々の生産ラインL1-L3における作業員の配置の決定を円滑に行うことができる。また、管理者は、作業員を適切に配置できるので、組織における生産性を高めることができる。
【0081】
なお、上記所定期間に関して、組織の管理者は、現在を含めた所定期間を短く設定した場合に、個人能力算出部61は、現状の個人能力に応じた個人能力データを生成することができる。その一方、管理者は、所定期間を長く設定した場合に、より多くの個人能力データを生成できる。
【0082】
即ち、作業員の個人能力は、作業実績を積み重ねることにより向上すると考えられる。そのため、古い作業実績は、現状の個人能力を必ずしも反映しているといえず、所定期間を長く設定した場合に、算出される個人能力は、本来の個人能力よりも低く評価される傾向にある。一方、所定期間を短くすると、当該所定期間内で作業者が担当する工程も少なくなる。つまり、作業員が当該所定期間内に担当していない工程に関して、当該作業員の当該工程に対する作業能力が高かったとしても、個人能力算出部61による算出過程において、当該作業者は、当該工程の作業能力を有しないと評価される。これらの点を考慮しながら、管理者は、個人能力記憶部62に記憶された個人能力の履歴に基づいて所定期間を適正に設定することで、個人能力を的確に把握することができる。
【0083】
そして、個人能力算出部61は、個人能力データに基づいて、作業員毎の工程別総合個人能力データ、及び、製品別総合個人能力データを算出することも可能である。つまり、
個人能力算出部61は、製品Xにおける第一工程P1の個人能力のランクXP1と、製品Yにおける第一工程P1の個人能力のランクYP1と、製品Zにおける第一工程P1の個人能力のランクZP1との平均を算出し、その算出結果を第一工程P1の工程別総合個人能力データOP1とすることができる。また、個人能力算出部61は、第一工程P1の工程別総合個人能力データOP1と同様に、第二工程P2、第三工程P3、第四工程P4及び第五工程P5の工程別総合個人能力データOP2-OP5を算出することができる。
【0084】
また、個人能力算出部61は、製品Xにおける第一工程P1の個人能力のランクXP1と、製品Xにおける第二工程P2の個人能力のランクXP2と、製品Xにおける第三工程P3の個人能力のランクXP3と、製品Xにおける第四工程P4の個人能力のランクXP4と、製品Xにおける第五工程P5の個人能力のランクXP5の平均を算出し、その算出結果を製品Xの製品別総合個人能力データOXとすることができる。また、個人能力算出部61は、製品Xの製品別総合個人能力データOXと同様に、製品Y及び製品Zの製品別総合個人能力データOY,OZを算出することができる。
【0085】
これに加え、組織能力評価システム50は、上記したように、熟練者抽出部63と、必要熟練者数記憶部64と、充足率算出部65とを備える。熟練者抽出部63は、個人能力記憶部62に記憶された作業員毎の個人能力に基づき、個人能力が一定以上である作業員(以下「熟練者」と称す)を工程別及び製品別に抽出する。
【0086】
例えば、ランク付け部56による作業能力のランク付けが5段階である場合において、熟練者抽出部63は、組織に属する作業員の中で、製品Xの第一工程P1における個人能力のランクが4以上の作業員を抽出する。同様に、熟練者抽出部63は、工程別及び製品別に、個人能力のランクが4以上の作業員を抽出する。なお、熟練者抽出部63は、組織の管理者等による設定に基づき、個人能力のランクが3以上の作業員を抽出してもよく、ランクが5である作業員のみを抽出してもよい。
【0087】
必要熟練者数記憶部64は、各工程P1-P5において必要とされる熟練者の人数を、工程別の必要熟練者数として記憶する。組織の管理者等は、工程別の必要熟練者数を製品毎に決定し、必要熟練者数記憶部64に記憶する。
【0088】
この点に関して、特定の製品での特定の工程において、熟練者の数が一人しかいなければ、当該熟練者が何らかの理由で不在となった場合に、当該工程の工程別組織能力及び当該製品の製品別組織能力が低下することが懸念される。そこで、管理者等は、各製品X,Y,Zを製造する際の各工程P1-P5において、一定数の熟練者を確保しておくことにより、一部の熟練者の欠員に伴う組織能力の低下及び組織能力のバラつきを抑制することができる。
【0089】
充足率算出部65は、熟練者抽出部63が抽出した熟練者の人数、及び、必要熟練者数記憶部64に記憶された必要熟練者数に基づき、必要熟練者数に対する熟練者の人数の割合を示す熟練者充足率を算出する。例えば、充足率算出部65は、特定の製品での特定の工程において、必要熟練者数が2人である場合に、抽出された熟練者の人数が2人であれば、熟練者充足率は、100%となる。またこの場合、抽出された熟練者の人数が1人であれば、熟練者充足率は、50%となり、抽出された熟練者の人数が3人であれば、熟練者充足率は、150%となる。
【0090】
これにより、組織の管理者は、熟練者充足率の低い工程を製品毎に把握することができる。そして、例えば、管理者は、熟練者充足率の低い工程があった場合に、当該工程における個人能力を有する作業員のうち、熟練者ではない作業員を育成することにより、当該工程における熟練者の増加を図ることができる。また、管理者は、熟練者充足率の低い工程があった場合に、当該工程における個人能力を有していない(当該工程の作業経験がない)作業員を、当該工程に割り当てつつ育成することにより、当該工程における熟練者の増加を図ることができる。
【0091】
またこの場合、管理者は、組織における生産計画において、必要とされる製品の製造数に対して組織が製造可能な製品の製造数に余裕がある作業日に、特定の工程における熟練者を、当該工程を担当する作業員であって熟練者ではない作業員の教育担当として割り当てることができる。これにより、組織の管理者は、組織における生産性を確保しつつ、作業能力が一定以上に到達していない作業員を育成することができる。
【0092】
また、上記したように、組織能力評価システム50は、組織能力算出部58、個人能力算出部61、及び、充足率算出部65による算出結果を提示する提示部70を備える。例えば、提示部70は、工程別組織能力算出部58aによる工程別作業能力の算出結果を、組織の管理者等が使用可能な固定端末やモバイル端末等の提示装置に提示する。また提示部70は、組織能力算出部58により算出された組織能力の推移を示すデータを提示装置に提示することができる。
【0093】
図13には、提示部70が提示する組織能力の推移を示すデータの一例として、工程別組織能力算出部58aが算出した第一工程P1の工程別の組織能力の推移を示すグラフが示されている。組織の管理者は、
図13に示すような工程別の組織能力の推移を確認することで、工程別の組織能力の推移を容易に把握することができる。また、提示部70は、上記した工程別の組織能力の推移を示すデータと同様に、製品別組織能力算出部58bが算出した各製品X-Zの製品別の組織能力の推移を示すデータ、及び、ライン別組織能力算出部58cが算出した各々の生産ラインL1-L3のライン別の組織能力の推移を示すデータを提示することができる。
【0094】
このように、提示部70は、工程別組織能力算出部58aが算出した各工程P1-P5の工程別の組織能力の推移を提示することができる。つまり、管理者は、組織能力が低下した作業日や、作業日毎の組織能力のバラつきを一目で把握することができる。
【0095】
また、提示部70は、作業能力記憶部57に記憶された作業能力の推移を示すデータを提示装置に提示することも可能である。この場合、管理者は、例えば、特定の工作機械Mを用いる工程において、当該工程を担当する作業者の変更にも関わらず、工程別作業能力が改善されない場合に、当該工作機械Mに何らかの不具合が発生した可能性があることを見い出すことができる。
【0096】
さらに、提示部70は、充足率算出部65が算出した熟練者充足率を提示することができる。よって、管理者は、特定の工程における作業能力が低い場合において、当該工程における熟練者充足率が低い場合には、当該工程における熟練者を育成することの必要性を見い出すことができる。
【0097】
以上説明したように、組織能力評価システム50は、工程別作業能力を算出し、算出した工程別作業能力に基づいて、工程別、製品別、又は、生産ライン別の組織能力を算出する。よって、組織能力評価システム50は、組織能力を適切に評価することができる。また、組織の管理者は、組織能力評価システム50による組織能力の算出結果を得ることにより、組織能力の客観的な評価を把握することができる。そして、管理者は、得られた組織能力の評価に応じた対策を講じることにより、組織における生産性を高めることができる。
【0098】
また、組織能力評価システム50は、工程別組織能力、製品別組織能力、及び、ライン別組織能力のうち少なくとも2つを算出可能であることが望ましい。この場合、組織の管理者は、組織能力を多面的に把握することができるので、組織能力をより的確に把握することができる。
【符号の説明】
【0099】
50:組織能力評価システム、 51:作業実績取得部、 52:検査結果取得部、 53:作業記録記憶部、 54:評価基準記憶部、 55:作業能力算出部、 55a:到達度合算出部、 55b:安定度合算出部、 56:ランク付け部、 57:作業能力記憶部、 58:組織能力算出部、 58a:工程別組織能力算出部、 58b:製品別組織能力算出部、 58c:ライン別組織能力算出部、 61:個人能力算出部、 62:個人能力記憶部、 63:熟練者抽出部、 64:必要熟練者数記憶部、 65:充足率算出部、 70:提示部、 L1:第一生産ライン(生産ライン)、 L2:第二生産ライン(生産ライン)、 L3:第三生産ライン(生産ライン)