(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】調光シート、および、調光シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20230711BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20230711BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/13 101
G02F1/1334
G02F1/1339 505
(21)【出願番号】P 2019076679
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2022-03-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 健二
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520422(JP,A)
【文献】特表2015-532982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0173039(US,A1)
【文献】実開昭62-016931(JP,U)
【文献】特表2012-521575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1334
G02F 1/1339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1透明フィルムと第2透明フィルムとに挟まれ、少なくとも中央領域に液晶組成物が設けられているポリマーネットワーク層を形成するポリマーネットワーク層形成工程と、
前記第1透明フィルムと前記第2透明フィルムとの間で前記液晶組成物の外縁の少なくとも一部に位置し、かつ、前記ポリマーネットワーク層内に位置する封止体を形成する封止体形成工程と、を含み、
前記封止体形成工程は、
前記ポリマーネットワーク層の端部から前記液晶組成物を除去する液晶組成物除去工程と、
前記液晶組成物が除去された前記端部に封止材を充填する封止材充填工程と、
前記封止材充填工程後に、前記封止材を硬化させる封止材硬化工程と、を含む
調光シートの製造方法。
【請求項2】
前記液晶組成物除去工程は、
前記第1透明フィルムと前記第2透明フィルムとの間の隙間を狭めるような押圧力を前記第1透明フィルムおよび前記第2透明フィルムに作用させることを含む
請求項1に記載の調光シートの製造方法。
【請求項3】
前記封止材充填工程は、
前記第1透明フィルムおよび前記第2透明フィルムに対する前記押圧力を、前記液晶組成物除去工程から維持した状態で、前記第1透明フィルムおよび前記第2透明フィルムを含む積層体の側端面を前記封止材に接触させることと、
前記積層体の前記側端面を前記封止材に接触させた状態で、前記第1透明フィルムおよび前記第2透明フィルムに対する前記押圧力を解除することと、を含む
請求項2に記載の調光シートの製造方法。
【請求項4】
前記液晶組成物除去工程は、前記第1透明フィルムと前記第2透明フィルムとに挟まれた空間を減圧することを含む
請求項1に記載の調光シートの製造方法。
【請求項5】
前記封止材充填工程は、
前記ポリマーネットワーク層において生じる毛細管現象によって前記液晶組成物が除去された前記端部に前記封止材を充填することを含む
請求項4に記載の調光シートの製造方法。
【請求項6】
前記封止材は、紫外線硬化性樹脂である
請求項1から5のいずれか一項に記載の調光シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光シート、および、調光シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、液晶組成物を含む調光層と、調光層を挟む一対の透明導電層とを備えている。調光シートは、一対の透明導電層間の電位差に応じて、液晶組成物に含まれる液晶分子の配向を変えて、調光シートの光透過率を変える。調光シートは、調光層の端面を覆う封止部を備える。封止部は、一対の透明導電層間から液晶組成物が漏れ出ること、および、調光層の外部から調光層内に液体や気体が入ることを抑える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、調光シートの適用範囲は広がる一途をたどり、これに伴い、調光シートの適用温度範囲もまた拡大されるに至っている。一方で、調光シートの適用温度範囲が拡大されると、調光層、封止部、および、透明導電層間において互いの熱膨張率の差異が顕在化して、調光層と封止部との境界に隙間が形成されやすくなる。結果として、上述した封止部を備える調光シートであっても、調光シートの外部に位置する液体や気体が、隙間を通して少なからず調光層の内部に侵入してしまう。そのため、調光シートを新たな適用範囲で使用可能にするうえでは、封止性を向上させることが一層強く望まれている。
【0005】
本発明は、調光シートが備える液晶組成物に対する封止性を高めることを可能とした調光シート、および、調光シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する調光シートは、第1透明フィルムと、第2透明フィルムと、前記第1透明フィルムと前記第2透明フィルムとの間に位置する液晶組成物と、前記第1透明フィルムと前記第2透明フィルムとの間で前記液晶組成物の端部に接する封止体と、前記第1透明フィルムと前記第2透明フィルムとの間で前記液晶組成物の全体と前記封止体内の少なくとも一部分とに広がるポリマーネットワークと、を備える。
【0007】
上記課題を解決する調光シートは、第1透明フィルムと、第2透明フィルムと、前記第1透明フィルムと前記第2透明フィルムとの間に位置するポリマーネットワークと、前記ポリマーネットワークの少なくとも中央領域に位置する液晶組成物と、前記液晶組成物を取り囲む前記ポリマーネットワークの周辺領域の少なくとも一部に位置する封止体と、を備える。
【0008】
上記課題を解決する調光シートの製造方法は、第1透明フィルムと第2透明フィルムとに挟まれ、少なくとも中央領域に液晶組成物が設けられているポリマーネットワーク層を形成するポリマーネットワーク層形成工程と、前記第1透明フィルムと前記第2透明フィルムとの間で前記液晶組成物の外縁の少なくとも一部に位置し、かつ、前記ポリマーネットワーク層内に位置する封止体を形成する封止体形成工程と、を含む。
【0009】
上記各構成によれば、第1透明フィルムと第2透明フィルムとの間において、液晶組成物の少なくとも一部が封止体によって囲まれ、また、封止体の少なくとも一部にはポリマーネットワークの一部が位置している。これにより、ポリマーネットワークと封止体が一体となって封止体が硬化される。そのため、調光シートの温度が変わることに応じて調光シートの各構成要素が別々に膨張したり収縮したりしても、調光シートの外部から気体や液体が侵入するような隙間が形成されにくい。結果として、調光シートが備える液晶組成物に対する封止性を高めることができる。
【0010】
上記調光シートにおいて、前記第1透明フィルムと前記第2透明フィルムとの間に位置する前記封止体の全体に前記ポリマーネットワークが位置してもよい。上記構成によれば、上述した封止体による封止性の向上を、液晶組成物の周囲の全体で得られるため、調光シートが備える液晶組成物に対する封止性を、より一層高めることができる。
【0011】
上記調光シートにおいて、前記封止体は、透明樹脂体であってもよい。上記構成によれば、透明状態での液晶組成物と封止体とが、恰も連続する一体の透明体として機能し得るため、調光シートを通じた視認性、および、調光シートの意匠性を向上することができる。
【0012】
上記調光シートにおいて、前記封止体が呈する色は、前記液晶組成物が不透明な状態で呈する色と同一であってもよい。上記構成によれば、液晶組成物と封止体とが、恰も連続する一体の有色体として機能し得るため、調光シートの意匠性を向上することができる。
【0013】
上記調光シートの製造方法において、前記封止体形成工程は、前記ポリマーネットワーク層の端部から前記液晶組成物を除去する液晶組成物除去工程と、前記液晶組成物が除去された前記端部に封止材を充填する封止材充填工程と、前記封止材充填工程後に、前記封止材を硬化させる封止材硬化工程と、を含んでもよい。上記構成によれば、液晶組成物を取り除いた空間内に封止材を充填することによって、封止体内にポリマーネットワークの一部分が位置する封止体を形成することが可能である。
【0014】
上記調光シートの製造方法において、前記液晶組成物除去工程は、前記第1透明フィルムと前記第2透明フィルムとの隙間を狭めるような押圧力を前記第1透明フィルムおよび前記第2透明フィルムに作用させることを含んでもよい。上記構成によれば、一対の透明フィルムの隙間を狭めるように押圧力を作用させる方法によって、液晶組成物の一部をポリマーネットワーク層の端部からポリマーネットワーク層の外部にしみ出させることができる。
【0015】
上記調光シートの製造方法において、前記封止材充填工程は、前記第1透明フィルムおよび前記第2透明フィルムに対する前記押圧力を、前記液晶組成物除去工程から維持した状態で、前記第1透明フィルムおよび前記第2透明フィルムを含む積層体の側端面を前記封止材に接触させることと、前記積層体の前記側端面を前記封止材に接触させた状態で、前記第1透明フィルムおよび前記第2透明フィルムに対する前記押圧力を解除することと、を含んでもよい。
【0016】
上記構成によれば、積層体の側端面を封止材に接触させた状態で、各透明フィルムから一対の透明フィルムの隙間を狭める押圧力を解除する。そのため、ポリマーネットワーク層から液晶組成物がしみ出した容量分だけ、ポリマーネットワーク層に封止材を入り込ませることができる。
【0017】
上記調光シートの製造方法において、前記液晶組成物除去工程は、第1透明フィルムと第2透明フィルムとに挟まれた空間を減圧することを含んでもよい。上記構成によれば、第1透明フィルムと第2透明フィルムとに挟まれた空間を減圧することによって、液晶組成物の一部をポリマーネットワーク層からポリマーネットワーク層の外部にしみ出させることができる。
【0018】
上記調光シートの製造方法において、前記封止材充填工程は、前記ポリマーネットワーク層において生じる毛細管現象によって前記液晶組成物が除去された前記端部に前記封止材を充填してもよい。上記構成によれば、毛細管現状を用いてポリマーネットワーク層内に封止材を充填するため、ポリマーネットワーク層内に封止材が充填されやすい。
【0019】
上記調光シートの製造方法において、前記封止材は、紫外線硬化性樹脂であってもよい。上記構成によれば、封止体が紫外線硬化性樹脂から形成されるため、封止体が熱硬化性樹脂である方法に比べて、封止材の硬化に伴ってポリマーネットワークおよび液晶組成物の熱履歴が生じにくい。それゆえに、ポリマーネットワークおよび液晶組成物の熱膨張や収縮に起因して液晶組成物に対する封止性が低下することが抑えられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、調光シートが備える液晶組成物に対する封止性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の調光シートの一例であって、ノーマル型の調光シートの構造を示す断面図。
【
図2】
図1が示す調光シートの構造における一例を示す平面図。
【
図3】
図1が示す調光シートの構造における他の例を示す平面図。
【
図4】第1実施形態の調光シートの他の例であって、リバース型の調光シートの構造を示す断面図。
【
図5】調光シートの構造における一部を示す断面図。
【
図6】比較例の調光シートにおける構造の一部を示す断面図。
【
図7】第1実施形態の調光シートの製造方法を説明するための工程図であって、ポリマーネットワーク層形成工程を示す工程図。
【
図8】第1実施形態の調光シートの製造方法を説明するための工程図であって、液晶組成物除去工程を示す工程図。
【
図9】第1実施形態の調光シートの製造方法を説明するための工程図であって、封止材充填工程を示す工程図。
【
図10】第1実施形態の調光シートの製造方法を説明するための工程図であって、封止材充填工程を示す工程図。
【
図11】第1実施形態の調光シートの製造方法を説明するための工程図であって、封止材硬化工程を示す工程図。
【
図12】第1実施形態の調光シートの製造方法を説明するための工程図であって、封止材硬化工程の変形例を示す工程図。
【
図13】第1実施形態の調光シートの製造方法における変形例を示す工程図。
【
図14】第1実施形態の調光シートの製造方法における変形例を示す工程図。
【
図15】第2実施形態の調光シートの製造方法を説明するための工程図であって、液晶組成物除去工程を示す工程図。
【
図16】第2実施形態の調光シートの製造方法を説明するための工程図であって、封止材充填工程を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
図1から
図14を参照して、調光シート、および、調光シートの製造方法の第1実施形態を説明する。以下では、調光シートの構成、調光シートの製造方法、および、調光シートの構成材料を順に説明する。
【0023】
[調光シートの構成]
図1から
図6を参照して、調光シートの構成を説明する。
図1が示すように、ノーマル型の調光シート10Nは、調光層11、一対の透明導電層12、一対の透明支持層13、および、一対の透明保護フィルム14を備えている。一対の透明導電層12は第1透明導電層12Aおよび第2透明導電層12Bであり、調光層11の厚さ方向において、第1透明導電層12Aと第2透明導電層12Bとが調光層11を挟んでいる。一対の透明支持層13は第1透明支持層13Aおよび第2透明支持層13Bであり、調光層11の厚さ方向において、第1透明支持層13Aと第2透明支持層13Bとが一対の透明導電層12を挟んでいる。一対の透明保護フィルム14は、第1透明保護フィルム14Aおよび第2透明保護フィルム14Bであり、調光層11の厚さ方向において、第1透明保護フィルム14Aと第2透明保護フィルム14Bとが一対の透明支持層13を挟んでいる。
【0024】
第1透明支持層13Aは第1透明導電層12Aを形成するための基材であり、第2透明支持層13Bは第2透明導電層12Bを形成するための基材である。第1透明保護フィルム14Aは、接着層を介して第1透明支持層13Aに積層されている。第1透明保護フィルム14Aは、接着層とともに第1透明支持層13Aから剥離可能に第1透明支持層13Aに接着されている。第2透明保護フィルム14Bは、接着層を介して第2透明支持層13Bに接着されている。第2透明保護フィルム14Bは、接着層とともに第2透明支持層13Bから剥離可能に第2透明支持層13Bに接着されている。
【0025】
本実施形態において、第1透明保護フィルム14A、第1透明支持層13A、および、第1透明導電層12Aが、第1透明フィルムT1を構成している。第2透明保護フィルム14B、第2透明支持層13B、および、第2透明導電層12Bが、第2透明フィルムT2を構成している。
【0026】
各透明導電層12は、可視光を透過することが可能な透過率を有する。透明導電層12を介して調光層11に駆動電圧が印加される。各透明支持層13は、可視光を透過することが可能な透過率を有する。透明保護フィルム14は、調光シート10Nの剛性を高める機能を有する。
【0027】
調光層11は、ポリマーネットワーク21、および、液晶組成物22を含む。液晶組成物22は、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間に位置している。液晶組成物22は、液晶分子を含む。液晶組成物22は、ポリマーネットワーク21の形成に用いられた残余のモノマーを含んでもよい。ポリマーネットワーク21は、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間で、液晶組成物22の全体に広がっている。
【0028】
ポリマーネットワーク21は、液晶組成物22内において、三次元的に広がり、複数のドメイン21Dを含む網目状を有している。なお、ここでいうドメインとは、実際には3次元構造であるポリマーネットワーク21を任意の断面において2次元で見た場合に、ポリマーネットワーク21により空間的に規定される領域のことである。
【0029】
調光シート10Nは、さらに、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間で液晶組成物22を囲む封止体23を備えている。ポリマーネットワーク21は、封止体23の少なくとも一部分に広がっている。ポリマーネットワーク21は、封止体23の全体に位置することが好ましい。
【0030】
すなわち、ポリマーネットワーク21は、中央領域21Cと周辺領域21Sとを備えている。周辺領域21Sは通常、中央領域21Cを取り囲んでいる。液晶組成物22は中央領域21Cに位置し、封止体23は、周辺領域21Sに位置している。なお、
図1では、中央領域21Cと周辺領域21Sとの境界を便宜的に直線によって示している。しかしながら、液晶組成物22が占有する中央領域21Cと、封止体23が占有する周辺領域21Sとは、調光層11の厚さ方向において互いに入り組んでいる。そのため、中央領域21Cと周辺領域21Sとの境界は、必ずしも直線状ではない。
【0031】
図2は、第2透明保護フィルム14Bと対向する方向から見た調光シート10Nの平面構造であって、調光シート10Nの一例における平面構造を示している。
図3は、第2透明保護フィルム14Bと対向する方向から見た調光シート10Nの平面構造であって、調光シート10Nの他の例における平面構造を示している。なお、
図2および
図3では、封止体23の形状をわかりやすくする便宜上、封止体23の全体を実線で示し、かつ、封止体23にドットが付されている。
【0032】
図2が示す調光シート10Nは、外部電源に接続される端子が形成される第1端子領域ET1と第2端子領域ET2とを備えている。第1端子領域ET1は、第1透明導電層12Aの一部であり、第2端子領域ET2は第2透明導電層12Bの一部である。各端子領域ET1,ET2は、調光シート10Nが有する一辺に接し、かつ、当該一辺に沿って形成されている。
【0033】
調光シート10Nでは、調光シート10Nの厚さ方向から見て、調光層11、第2透明導電層12B、および、第2透明支持層13B、および、第2透明保護フィルム14Bが、第1端子領域ET1と重なる部分に切り欠きを有している。また、調光シート10Nでは、調光シート10Nの厚さ方向から見て、調光層11、第1透明導電層12A、第1透明支持層13A、および、第1透明保護フィルム14Aが、第2端子領域ET2と重なる部分に切り欠きを有している。調光シート10Nでは、調光層11の外形に沿って封止体23が形成されている。すなわち、封止体23の一部は、調光層11が有する切り欠きに沿った形状を有している。
【0034】
図3が示す調光シート10Nは、
図2が示す調光シート10Nと同様に、第1端子領域ET1および第2端子領域ET2を有している。第1端子領域ET1および第2端子領域ET2は、調光シート10Nが有する4辺すべてと接していない。言い換えれば、各端子領域ET1,ET2は、調光シート10Nにおける外周部よりも内側に位置している。調光シート10Nでは、調光シート10Nの厚さ方向から見て、調光層11、第2透明導電層12B、第2透明支持層13B、および、第2透明保護フィルム14Bが、第1端子領域ET1と重なる部分に開口を有している。また、調光シート10Nでは、調光シート10Nの厚さ方向から見て、調光層11、第1透明導電層12A、第1透明支持層13A、および、第1透明保護フィルム14Aが、第2端子領域ET2と重なる部分に開口部を有している。調光シート10Nでは、調光シート10Nの端部に沿って封止体23が形成されている。
【0035】
図2および
図3が示すように、封止体23は、調光層11が広がる平面と対向する方向から見て、液晶組成物22の端部に接している。上述したように、封止体23は、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間において、ポリマーネットワーク21の一部分に広がっている。これにより、ポリマーネットワーク21と封止体23とが一体となって封止体23が硬化される。つまり、こうした封止体23は、従来の封止体による封止構造、すなわち封止体と各層における端面での単純な面接着とは異なる3次元的に強固な構造体となる。そのため、調光シート10Nの温度が変わることに応じて調光シート10Nの各構成要素が別々に膨張したり収縮したりしても、調光層11には、調光層11の外部から気体や液体が侵入するような隙間が形成されにくい。結果として、液晶組成物22に対する封止性を高めることができる。
【0036】
封止体23が液晶組成物22の端部の全体と接することによって、封止体23と液晶組成物22との間には、隙間が形成されないことが好ましい。例えば、封止体23は、調光層11が広がる平面と対向する方向から見て、液晶組成物22を取り囲む閉環状を有している。封止体23は、調光層11において、調光層11の厚さ方向に沿って延びる端面を形成している。
【0037】
封止体23による液晶組成物22の封止性を高める上では、ポリマーネットワーク21の周辺領域21Sには、封止体23のみが位置することが好ましい。なお、ポリマーネットワーク21の周辺領域21Sには、液晶組成物22や空気が含まれてもよい。この場合であっても、液晶組成物22と調光層11の外部との間において、液晶組成物22や空気が連通しないように、液晶組成物22の端部が封止体23で埋められていればよい。
【0038】
調光層11が広がる平面と対向する方向から見て、封止体23において、調光シート10Nの一辺が延びる方向と直交する方向の長さが、当該一辺に沿う封止体23の幅Wである。封止体23の幅Wは、調光シート10Nの周方向における全体において等しいことが好ましい。これにより、調光シート10Nの周方向における全体において、液晶組成物22に対する封止性を高めること、および、封止性の均一性を得ることが可能である。
【0039】
調光層11の封止性を高める上では、封止体23の幅Wが大きいことが好ましい。しかしながら、封止体23は、調光シート10Nのなかで液晶組成物22が位置しない部位に含まれて、透過率の変更が不可能な部分である。これに対して、調光層11のなかで液晶組成物22が位置する部分は、透過率の変更が可能な部位である。そのため、調光層11の封止性を高め、かつ、透過率の変更が可能な部分の面積を大きくする上では、封止体23の幅Wは、1mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0040】
ノーマル型の調光シート10Nでは、透明導電層12に駆動電圧が印加されることによって、液晶分子の長軸が、透明導電層12間に生成された電界に沿った向きに配向する。これにより、調光層11を光が透過しやすくなるため、調光シート10Nが透明になる。一方で、透明導電層12に駆動電圧が印加されていない間は、液晶分子における長軸の向きは不規則である。そのため、調光層11に入射した光が散乱される結果として、調光シート10Nは不透明になる。
【0041】
なお、調光シートは、上述したノーマル型の調光シート10Nに限らず、リバース型の調光シートでもよい。
図4は、リバース型の調光シートにおける断面構造を示している。
図4が示すように、リバース型の調光シート10Rは、調光層11、一対の透明導電層12、一対の透明支持層13、一対の透明保護フィルム14に加えて、一対の配向膜15を備えている。一対の配向膜15は第1配向膜15Aおよび第2配向膜15Bであり、調光層11の厚さ方向において、第1配向膜15Aと第2配向膜15Bとが調光層11を挟んでいる。一対の配向膜15は、調光層11の厚さ方向において一対の透明導電層12によって挟まれている。調光シート10Rでは、第1透明保護フィルム14A、第1透明支持層13A、第1透明導電層12A、および、第1配向膜15Aが、第1透明フィルムT1を構成している。また、調光シート10Rでは、第2透明保護フィルム14B、第2透明支持層13B、第2透明導電層12B、および、第2配向膜15Bが、第2透明フィルムT2を構成している。
【0042】
なお、
図4では、
図1と同様、中央領域21Cと周辺領域21Sとの境界を便宜的に直線によって示している。しかしながら、液晶組成物22が占有する中央領域21Cと、封止体23が占有する周辺領域21Sとは、調光層11の厚さ方向において互いに入り組んでいる。そのため、中央領域21Cと周辺領域21Sとの境界は、必ずしも直線状ではない。
【0043】
各配向膜15は、例えば垂直配向膜である。配向膜15は、透明導電層12に駆動電圧が印加されていない間は、液晶組成物22が含む液晶分子の長軸を、配向膜15に沿って広がる面の法線方向に沿わせるように、液晶分子を配向する。一方で、配向膜15は、透明導電層12に駆動電圧が印加されることによって、液晶分子の長軸を法線方向以外の方向に変更可能にする。
【0044】
そのため、リバース型の調光シート10Rでは、透明導電層12に駆動電圧が印加されることによって、液晶分子における長軸の向きが、配向膜15の法線方向とは異なる向きになるたり、これによって、調光シート10Rは不透明になる。一方で、透明導電層12に駆動電圧が印加されていない間は、液晶分子の長軸が配向膜15の法線方向に沿った向きであるため、調光シート10Rは透明である。
【0045】
封止体23は、透明樹脂体であってもよい。この際、封止体23が有する屈折率と、ポリマーネットワーク21が有する屈折率との差が、0.1以下であることが好ましい。封止体23が透明樹脂体である構成であれば、透明状態での液晶組成物22と封止体23とが、恰も連続する透明体として機能し得る。そして、封止体23が有する屈折率と、ポリマーネットワーク21が有する屈折率との差が0.1以下であれば、封止体23とポリマーネットワーク21との界面での屈折による光の散乱が、特に抑えられる。そのため、調光シート10N,10Rを通じた視認性、および、調光シート10N,10Rの意匠性を向上することができる。なお、封止体23が、不透明体である構成においては、液晶組成物22が不透明体で縁取られるような意匠性を、調光シート10N,10Rに付与することが可能である。
【0046】
封止体23が呈する色は、液晶組成物22が不透明な状態で呈する色と同一であってもよい。例えば、液晶組成物22が二色性色素を含み、封止体23の呈する色と液晶組成物22の呈する色とが同一であれば、不透明状態での液晶組成物22と封止体23とが、恰も連続する不透明体として機能し得る。そのため、調光シート10N,10Rの意匠性を向上することができる。なお、封止体23の呈する色が、液晶組成物22の呈する色とは異なる構成では、液晶組成物22がそれと異なる色で縁取られるような意匠性を、調光シート10N,10Rに付与することが可能である。
【0047】
封止体23は、ポリマーネットワーク21と同一種類の樹脂によって形成されてもよい。これにより、封止体23とポリマーネットワーク21との密着性が得られやすい。
【0048】
図5は、調光シート10Nが、調光装置に適用された場合における調光シート10Nの一部断面構造を示している。なお、
図5では、調光シート10Nの一断面において、第1透明フィルムT1の端面が、第2透明フィルムT2の端面よりも外側に位置する例が示されている。また、
図5が示す例では、第1透明保護フィルム14Aが第1透明支持層13Aから剥離され、かつ、第2透明保護フィルム14Bが第2透明支持層13Bから剥離されている。
【0049】
図5が示すように、調光シート10Nは、電極部16と、電極部16に接続される配線部17とを備えている。電極部16は、第1透明フィルムT1のなかで、第2透明フィルムT2によって覆われていない部分に位置している。すなわち、電極部16は、上述した第1端子領域ET1に位置している。電極部16と配線部17との積層体において、封止体23と向かい合う端部には、封止部18が形成されている。封止部18は、配線部17の外表面、配線部17の端面、および、電極部16の端面を覆うように、第1透明フィルムT1の一部と、配線部17の一部とを覆っている。
【0050】
図6は、調光シートが、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間に位置する封止体ではなく、調光層11の端面を覆う封止部を備える構造を示している。
図6が示すように、調光シート100は、調光シート10Nが備える封止体23に変えて、封止部101を備えている。封止部101は、調光層11の端面に加えて、電極部16の端面、および、配線部17の端面を覆う大きさを有している。調光層11の端面を覆う封止部101では、液晶組成物22に対する封止性を確保する上で、封止部101が、第2透明フィルムT2の一部、および、第1透明フィルムT1において第2透明フィルムT2によって覆われていない部分の一部を覆う大きさを有する必要がある。このように、封止部101を備える調光シート100では、封止部101による液晶組成物22の封止性を確保する上で、調光層11と電極部16との間に封止部101の一部を位置させるだけの距離が必要である。
【0051】
これに対して、本実施形態の調光シート10Nでは、上述したように、封止体23は、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間において液晶組成物22を液晶組成物22の外部に対して封止する。そのため、調光層11と電極部16との間に、液晶組成物22を封止するための封止部を位置させるための空間が不要である。結果として、
図6を参照して説明した調光シート100と比べて、調光層11と電極部16との間の距離を短くすることが可能である。
【0052】
調光装置が自動車や建物に適用される場合には、封止部18、電極部16、および、配線部17を外部から隠すために、調光装置は、電極部16および配線部17を覆う被覆部を備える。本実施形態の調光シート10Nによれば、封止部101を備える場合に比べて、調光層11と電極部16との距離を小さくすることが可能であるため、被覆部の幅を小さくすることが可能である。
【0053】
[調光シートの製造方法]
図7から
図11を参照して、調光シートの製造方法を説明する。
図7から
図11は、調光シートの製造過程において得られる構造体の断面構造における一部を示している。なお、以下では、ノーマル型の調光シート10Nを製造する場合の調光シート10Nの製造方法を説明するが、以下に説明する調光シートの製造方法によって、リバース型の調光シート10Rを製造することも可能である。
【0054】
調光シート10Nの製造方法は、ポリマーネットワーク層形成工程、および、封止体形成工程を含んでいる。
ポリマーネットワーク層形成工程では、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2とに挟まれ、少なくとも中央領域21Cに液晶組成物22が設けられているポリマーネットワーク層を形成する。封止体形成工程では、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間で液晶組成物22の外縁の少なくとも一部に位置し、かつ、ポリマーネットワーク層内に位置する封止体23を形成する。
【0055】
以下、図面を参照して、調光シート10Nの製造方法をより詳しく説明する。
図7が示すように、調光シート10Nを製造する際には、まず、一対の透明導電層12A,12B間に、ポリマーネットワーク21と液晶組成物22とを含むポリマーネットワーク層11Pが形成される。なお、各透明導電層12A,12Bは、互いに異なる透明支持層13A,13Bに形成される。透明導電層12A,12Bは、スパッタリング法、真空蒸着法、および、印刷法などの方法によって形成される。
【0056】
ポリマーネットワーク層11Pを形成する際には、まず、ポリマーネットワーク層11Pを形成するための塗布液が、一対の透明導電層12A,12B間に封入される。例えば、まず、塗布液が、インクジェット法、グラビアコーティング法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、フレキソコーティング法、ダイコーティング法、ディップコーティング法、および、ロールコーティング法などによって、一方の透明導電層12A,12Bに塗布される。そして、他方の透明導電層12A,12Bを塗布液上に配置されて、塗布液が一対の透明導電層12A,12B間に封入される。
【0057】
なお、塗布液は、ポリマーネットワーク21を形成するためのモノマーやオリゴマー、紫外線反応性重合開始剤、および、液晶分子を含む液晶組成物22を含む。塗布液は、さらに、消泡剤や酸化防止剤などの各種の添加剤、透明導電層12A,12B間にポリマーネットワーク層11Pが位置する空間を確保するための支持体となる粒子、および、二色性色素を含んでもよい。
【0058】
次いで、一対の透明導電層12A,12B間に封入された塗布液に紫外線が照射される。紫外線を照射する際には、例えば、一方の透明支持層13、および、当該透明支持層13と塗布液とに挟まれた透明導電層12を通して、塗布液に紫外線を照射してもよい。または、一方の透明支持層13、および、当該透明支持層13と塗布液とに挟まれた透明導電層12に加えて、他方の透明支持層13、および、当該透明支持層13と塗布液とに挟まれた透明導電層12を通じて、塗布液に紫外線を照射してもよい。これにより、塗布液が含むモノマーやオリゴマーの重合が進行して、ポリマーネットワーク21が形成される。結果として、液晶組成物22内に広がるポリマーネットワーク21を有したポリマーネットワーク層11Pが形成される。
【0059】
続いて、
図8が示すように、ポリマーネットワーク層11Pの端部から液晶組成物22が取り除かれる。当該工程が、液晶組成物除去工程である。本実施形態では、各透明導電層12A,12Bからポリマーネットワーク層11Pに向けた押圧力が、各透明導電層12A,12Bに作用し、それによって、液晶組成物22が取り除かれる。この際に、押圧力によって、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間の隙間が狭められる。
【0060】
具体的には、一対の加圧プレート31を準備する。一方の加圧プレート31は、一方の透明支持層13を押圧し、他方の加圧プレート31は、他方の透明支持層13を押圧する。これにより、ポリマーネットワーク21がポリマーネットワーク層11Pの厚み方向に沿って一旦圧縮されて、圧縮された容積に相当する液晶組成物22が、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間の空間からポリマーネットワーク層11Pの外部にしみ出す。透明フィルムT1,T2間からしみ出した液晶組成物22には、ポリマーネットワーク21の端部から取り除かれた液晶組成物22が含まれる。
【0061】
このとき、加圧プレート31が調光層11を加圧する圧力、および、加圧時間などは、一対の透明導電層12A,12Bの間の距離が所定量だけ縮小するように制御されてもよい。こうした制御によれば、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間から取り除かれる液晶組成物22の量を所定量に再現することが可能である。言い換えれば、一対の透明導電層12A,12Bの間の距離を所定量にすることによって、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間において封止体23によって埋められる範囲を再現することが可能である。
【0062】
そして、ポリマーネットワーク層11Pからしみ出した液晶組成物22を拭き取る。または、ポリマーネットワーク層11Pからしみ出した液晶組成物22を吸引する。これにより、余分な液晶組成物22をポリマーネットワーク層11P、および、一対の透明フィルムT1,T2から取り除く。
【0063】
続いて、
図9が示すように、一対の透明フィルムT1,T2間の隙間を狭める押圧力を維持した状態で、一対の透明フィルムT1,T2を含む積層体の側端面を封止材23Pに接触させる。本実施形態では、容器32内に充填された封止材23Pに積層体の側端面の一部を接触させる。積層体の側端面は、積層体の厚さ方向に沿って延びる端面である。封止材23Pは、硬化性樹脂であって、例えば、紫外線硬化性樹脂である。
【0064】
なお、積層体の側端面と封止材23Pとを接触させる場合に、例えば、ディスペンサーなどによって積層体の側端面に封止材23Pを滴下してもよい。あるいは、インジェクターによって積層体の側端面に封止材23Pを注入してもよい。あるいは、筆などによって積層体の側端面に封止材23Pを塗ってもよい。
【0065】
図10が示すように、積層体の側端面を封止材23Pに接触させた状態で、一対の透明フィルムT1,T2の隙間を狭める押圧力を各透明フィルムT1,T2から解除する。これにより、液晶組成物22が取り除かれたポリマーネットワーク層11Pの端部に封止材23Pが充填される。そして、ポリマーネットワーク層11Pから取り除かれた液晶組成物22の容積分だけ、ポリマーネットワーク層11Pに封止材23Pを入り込ませることができる。この際、押圧力の解除による負圧と、ポリマーネットワーク21内での毛細管現象とが相まって、封止体23が透明フィルムT1,T2間に入り込みやすくなる。このように、封止材充填工程は、液晶組成物除去工程から各透明フィルムT1,T2に対する押圧力を維持した状態で、積層体の側端面を封止材23Pに接触させること、および、積層体の側端面を封止材23Pに接触させた状態で、各透明フィルムT1,T2に対する押圧力を解除することを含む。
【0066】
なお、各透明フィルムT1,T2から一対の透明フィルムT1,T2の隙間を狭める押圧力が弱められた状態からであっても、ポリマーネットワーク21内での毛細管現象によって、封止体23を透明フィルムT1,T2間に入り込ませることは可能である。あるいは、各透明フィルムT1,T2から一対の透明フィルムT1,T2の隙間を狭める押圧力が解除された状態からであっても、ポリマーネットワーク21内での毛細管現象によって、封止体23を透明フィルムT1,T2間に入り込ませることは可能である。
【0067】
そして、透明フィルムT1,T2間の空間内に封止材23Pを充填した後、各透明フィルムT1,T2の側端面を容器32内の封止材23Pから離す。この際、透明支持層13や透明導電層12などに付着した封止材23Pを拭き取ってもよい。
【0068】
続いて、
図11が示すように、封止材23Pに紫外線(UV)を照射することによって、封止材23Pを硬化させる。これにより、封止材23Pの硬化体である封止体23が形成される。当該工程が、封止材硬化工程である。すなわち、液晶組成物22と、液晶組成物22を取り囲む封止体23とを備える調光層11が形成される。この際、封止材23Pが紫外線硬化性樹脂であるため、封止材23Pが熱硬化性樹脂である場合に比べて、封止材23Pの硬化に伴う温度の変化が小さく、調光層11の膨張や収縮が生じにくい。そのため、調光層11の膨張や収縮に起因して調光層11における封止性が低下することが抑えられる。
【0069】
[調光シートの構成材料]
以下、調光シート10N,10Rを構成する材料を説明する。
ポリマーネットワーク21を形成するための樹脂には、紫外線硬化性樹脂の他に、熱硬化性樹脂を用いることもできる。ポリマーネットワーク21は、例えば、極性基を有するモノマー、および、二官能モノマーの重合によって形成される。極性基を有するモノマー、および、二官能モノマーは、熱が加えられることによって、あるいは、紫外線が照射されることによって重合する。極性基を有するモノマーは、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、および、リン酸基から構成される群から選択される少なくとも1つの極性基を有する。
【0070】
液晶組成物22は、例えば、ネマティック液晶を構成する液晶分子、スメクティック液晶を構成する液晶分子、および、コレスティック液晶を構成する液晶分子のいずれかの液晶分子を含む。液晶分子は、例えば、誘電率異方性が正であって、液晶分子の長軸方向の誘電率が液晶分子の短軸方向の誘電率よりも大きい。液晶分子は、例えば、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系の液晶分子である。液晶組成物22は、液晶分子以外の構成要素として、二色性色素や紫外線吸収剤などを含むことも可能である。
【0071】
封止材23Pを構成する材料は、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン‐チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、および、変性ポリマーなどの各種樹脂系において、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、および、嫌気硬化型などの各種樹脂である。上述したように、封止材23Pは、封止性が高められる観点から、紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。
【0072】
透明導電層12は、光透過性を有する導電膜である。透明導電層12を構成する材料は、例えば、光透過性を有した導電性ポリマーである。導電性ポリマーは、例えば、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、および、ポリピロールなどであってよい。ポリチオフェン系の化合物の一例は、PEDOT(Polyethylenedioxythiophene)である。また、透明導電層12を構成する材料は、例えば、光透過性を有し、かつ、導電性を有する金属酸化物である。金属酸化物は、例えば、ATO(SnO2:Sb)、FTO(SnO2:F)、ITO(In2O3:Sn)、AZO(ZnO:Al)、および、GZO(ZnO:Ga)などであってよい。
【0073】
透明支持層13は、透明な高分子フィルムや透明なガラスシートである。高分子フィルムを構成する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリサルホン、シクロオレフィンポリマー、および、トリアセチルセルロースなどであってよい。
【0074】
透明保護フィルム14は、透明な高分子フィルムである。高分子フィルムを構成する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリサルホン、シクロオレフィンポリマー、および、トリアセチルセルロースなどであってよい。
【0075】
配向膜15は、例えば、透明な垂直配向膜である。配向膜15を構成する材料は、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリエステル、および、ポリアクリレートなどであってよい。ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどである。ポリアクリレートは、例えば、ポリメチルメタクリレートである。なお、配向膜15を形成するための配向処理には、例えば、ラビング処理、偏光照射処理、および、微細加工処理などを用いることも可能である。
【0076】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間において液晶組成物22が、封止体23によって囲まれ、また、封止体23の少なくとも一部にはポリマーネットワーク21が位置している。これにより、ポリマーネットワーク21と封止体23とが一体となって封止体23が硬化される。つまり、こうした封止体23は、従来の封止体による封止構造、すなわち封止体と各層における端面での単純な面接着とは異なる3次元的に強固な構造体となる。そのため、調光層11の温度が変わることに応じて調光層11が膨張したり収縮したりしても、調光層11には、調光層11の外部から気体や液体が侵入するような隙間が形成されにくい。これにより、調光層11における封止性を高めることができる。
【0077】
(2)封止体23の全体にポリマーネットワーク21が位置する構成であれば、上記(1)に準じた封止性の向上を、液晶組成物22の周囲の全体で得られるため、液晶組成物22に対する封止性を、一層に高めることができる。
【0078】
(3)封止体23が透明樹脂体である構成であれば、透明状態での液晶組成物22と封止体23とが、恰も連続する一体の透明体として機能し得るため、調光シート10N,10Rを通じた視認性、および、調光シート10N,10Rの意匠性を向上することもできる。
【0079】
(4)封止体23が呈する色と、液晶組成物22が不透明な状態で呈する色とが、同一である構成であれば、液晶組成物22と封止体23とが、恰も連続する一体の有色体として機能し得るため、調光シート10N,10Rの意匠性を向上することができる。
【0080】
(5)液晶組成物22を取り除いた透明フィルムT1,T2間の空間に封止材23Pを充填することによって、透明フィルムT1,T2間を埋める封止体23を形成することが可能である。
【0081】
(6)一対の透明フィルムT1,T2の隙間を狭めるように押圧力を作用させる方法によって、ポリマーネットワーク層11Pが含む液晶組成物22の一部を透明フィルムT1,T2間からポリマーネットワーク層11Pの外部にしみ出させることができる。
【0082】
(7)積層体に封止材23Pを接触させた状態で、各透明フィルムT1,T2からポリマーネットワーク21に向けた押圧力を解除する。そのため、透明フィルムT1,T2間の空間からしみ出した液晶組成物22の容量分だけ、透明フィルムT1,T2間の空間に封止材23Pを入り込ませることができる。
【0083】
(8)封止体23が紫外線硬化性樹脂から形成される方法であれば、封止体23が熱硬化性樹脂である方法に比べて、封止材23Pの硬化に伴う調光層11の熱履歴が生じにくいため、調光層11の熱膨張や収縮に起因して調光層11における封止性が低下することが抑えられる。
【0084】
[第1実施形態の変更例]
なお、上述した第1実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[加圧プレートによる加圧]
・一方の透明支持層13のなかで押圧力を作用させる部位は、透明支持層13の全体であってもよいし、透明支持層13の端面よりも内側に位置する外周部のみであってもよい。
【0085】
[封止体の硬化]
・
図12が示すように、透明フィルムT1,T2間の空間に封止材23Pを充填した後に、容器32から取り出したポリマーネットワーク層11Pの端面、および、透明導電層12A,12Bおよび透明支持層13A,13Bの少なくとも一方における端面に付着した封止材23Pを拭き取らなくてもよい。なお、
図12では、一対の透明導電層12A,12Bの端面、および、一対の透明支持層13A,13Bの端面に封止材23Pが付着した状態を例示している。
【0086】
この場合には、封止材23Pを硬化させることによって、透明フィルムT1,T2間の空間から調光層11の外部に連続する封止体23を形成することが可能である。こうした封止体23によれば、液晶組成物22の端に加えて、調光層11と透明導電層12との界面を封止することが可能である。そのため、調光層11に対して気体や液体が侵入することがより抑えられる。
【0087】
・
図13が示すように、封止体23は、積層体の側端面における全体、すなわち、一対の透明保護フィルム14A,14B、一対の透明支持層13A,13B、一対の透明導電層12A,12B、および、調光層11に跨がるように形成されてもよい。
【0088】
この場合には、
図14が示すように、封止材23Pの硬化によって封止体23を形成した後に、一対の透明保護フィルム14A,14B、一対の透明支持層13A,13B、一対の透明導電層12A,12B、および、調光層11の端部を切断する。この際に、切断後の調光層11が、ポリマーネットワーク21内において硬化された封止体23を有するように、各層の端部を切断する。すなわち、調光層11の端面は、封止体23とポリマーネットワーク21とから構成されて、切断刃の挿入された痕である切断痕を有する。これにより、封止体23を備える調光層11を形成することが可能である。また、各透明保護フィルム14A,14Bをその透明保護フィルム14A,14Bが貼り付けられた透明支持層13A,13Bから剥離することが可能である。
【0089】
[処理枚数]
・調光シート10N,10Rに封止体23を形成する工程は、すなわち、
図8から
図11を参照して先に説明した工程は、1枚のシートに対して行うのではなく、複数のシートを積み重ねた状態で行ってもよい。なお、1枚のシートとは、調光層11、一対の透明導電層12、一対の透明支持層13、および、一対の透明保護フィルム14を含む積層体である。こうした方法によれば、1枚のシートを取り扱う場合に比べて、処理対象の厚さを厚くすることができるため、処理対象の取り扱い性が高まる。また、一度に処理可能なシートの数が増えるため、調光シート10N,10Rを生産する効率を高めることができる。
【0090】
[透明フィルム]
・透明フィルムT1,T2は、透明保護フィルム14を含まなくてもよい。すなわち、透明フィルムT1,T2は、透明導電層12を形成するための基材である透明支持層13よりも調光シート10N,10Rの厚さ方向における外側に位置する層を有しなくてもよい。
【0091】
[調光シート]
・調光シート10N,10Rは、調光層11、透明導電層12、透明支持層13、透明保護フィルム14、および、配向膜15に加えて、これら以外の他の層を備えていてもよい。他の層は、例えば、特定の波長領域について紫外線バリア機能を有する層などのように、調光層11や透明導電層12を保護するための層であってよい。あるいは、他の層は、調光シート10N,10Rにおける光の透過性の制御に寄与する層や、調光シート10N,10Rの強度や耐熱性などの特性を高める層であってよい。
【0092】
[封止体]
・封止体23は、調光層11において、外縁の全体を取り囲む閉環状を有しなくてもよい。封止体23は、例えば、調光層11の外縁における一部のみに位置する形状を有してもよい。この場合であっても、封止体23が位置する部分において、少なくとも(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0093】
[液晶組成物除去工程]
・以下に記載の方法によっても、ポリマーネットワーク層11Pの端部を含む第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間の空間から液晶組成物22を取り除くことが可能である。
【0094】
すなわち、一対の透明フィルムT1,T2間にポリマーネットワーク層11Pが形成された後に、ポリマーネットワーク層11Pの端面に、液晶組成物22に対する相溶性が高い溶剤を供給する。溶剤は、例えばアルコールなどであってよい。溶剤を供給する方法には、例えば、溶剤を入れた容器にポリマーネットワーク層11Pの端面を接触させる方法などが挙げられる。ポリマーネットワーク層11Pの端面に溶剤が供給されることによって、ポリマーネットワーク層11Pの端面に位置する液晶組成物22が溶剤に溶け出す。そして、ポリマーネットワーク層11Pの端面に溶剤を供給する状態を所定の期間にわたって維持した後、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間の空間から溶剤を拭き取る、または、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間の空間から溶剤を吸引する。これにより、溶剤と、ポリマーネットワーク層11Pの端面に位置する溶剤に溶け出した液晶組成物22とを一対の透明フィルムT1,T2の間の空間から取り除くことができる。
【0095】
[第2実施形態]
図15および
図16を参照して、調光シート、および、調光シートの製造方法における第2実施形態を説明する。第2実施形態の調光シートは、上述した第1実施形態の調光シート10N,10Rと同様の構造を有するため、調光シート10N,10Rについての詳しい説明を省略する。また、第2実施形態における調光シートの製造方法は、第1実施形態における調光シートの製造方法と比べて、第1透明フィルムT1と第2透明フィルムT2との間から液晶組成物22を取り除く工程が異なっている。そのため、以下では、調光シートの製造方法のなかで、これらの工程のみ説明し、他の工程についての詳しい説明を省略する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付すことによって、その詳しい説明を省略する。
【0096】
[調光シートの製造方法]
図15および
図16を参照して、調光シートの製造方法を説明する。なお、
図15および
図16は、各工程において得られる構造体の断面構造を示している。
【0097】
まず、本実施形態における調光シートの製造方法では、第1実施形態と同様、
図7を参照して先に説明したポリマーネットワーク層形成工程が行われる。
図15が示すように、ポリマーネットワーク層11Pが配置された空間を減圧することによって、ポリマーネットワーク層11Pの端部から液晶組成物22を取り除く。本実施形態では、ポリマーネットワーク層11P、一対の透明導電層12A,12B、一対の透明支持層13A,13B、および、一対の透明保護フィルム14A,14Bを備える積層体をチャンバー41内に配置する。そして、チャンバー41内を減圧する。これにより、ポリマーネットワーク層11Pの内部に対してポリマーネットワーク層11Pの外部が負圧であることによって、ポリマーネットワーク層11Pの端部に位置する液晶組成物22が、ポリマーネットワーク層11Pの端部からポリマーネットワーク層11Pの外部にしみ出す。
【0098】
次いで、積層体をチャンバー41から取り出して、大気中に配置する。これにより、ポリマーネットワーク層11P内に充填された液晶組成物22の容積が減ることによって、一対の透明フィルムT1,T2間に空隙が形成される。なお、ポリマーネットワーク層11Pの外部にしみ出した液晶組成物22を取り除いてもよいし、取り除かなくてもよい。
【0099】
図16が示すように、液晶組成物22が取り除かれた透明フィルムT1,T2間の空間に封止材23Pを充填する。本実施形態では、上述した第1実施形態と同様、積層体の側端面を容器32内の封止材23Pに接触させる。これにより、ポリマーネットワーク層11Pにおいて生じる毛細管現象によって、液晶組成物22が除去されたポリマーネットワーク層11Pの端部に封止材23Pが充填される。毛細管現状を用いてポリマーネットワーク層11P内に封止材23Pを充填するため、ポリマーネットワーク層11P内に封止材23Pが充填されやすい。
【0100】
次いで、第1実施形態と同様、
図11を参照して先に説明した封止材硬化工程を行うことによって、封止材23Pを硬化させる。これにより、液晶組成物22を取り囲む封止体23が形成される。
【0101】
以上説明したように、調光シート、および、調光シートの製造方法における第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)から(5)、および、(8)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0102】
(9)ポリマーネットワーク層11Pが配置された空間を減圧することによって、透明フィルムT1,T2間に位置する液晶組成物22をポリマーネットワーク層11Pの端面からポリマーネットワーク層11Pの外部にしみ出させることができる。
【0103】
(10)毛細管現状を用いてポリマーネットワーク層11P内に封止材23Pを充填するため、ポリマーネットワーク層11P内に封止材23Pが充填されやすい。
【0104】
[第2実施形態の変更例]
なお、上述した第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・第2実施形態は、上述した第1実施形態の変形例のなかで、加圧プレートを用いた加圧工程の変形例以外の構成と組み合わせて実施することが可能である。
【0105】
[変更例]
なお、上述した各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・各実施形態および各変更例に記載の調光シート10N,10Rは、封止体23に加えて、調光層11の端面を外部から覆う封止部をさらに備えてもよい。
【符号の説明】
【0106】
10N,10R,100…調光シート、11…調光層、11P…ポリマーネットワーク層、12…透明導電層、12A…第1透明導電層、12B…第2透明導電層、13…透明支持層、13A…第1透明支持層、13B…第2透明支持層、14…透明保護フィルム、14A…第1透明保護フィルム、14B…第2透明保護フィルム、15…配向膜、15A…第1配向膜、15B…第2配向膜、16…電極部、17…配線部、18,101…封止部、21…ポリマーネットワーク、21C…中央領域、21D…ドメイン、21S…周辺領域、22…液晶組成物、23…封止体、23P…封止材、31…加圧プレート、32…容器、41…チャンバー、ET1…第1端子領域、ET2…第2端子領域、T1…第1透明フィルム、T2…第2透明フィルム。