(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】電子機器におけるケーブル保持構造
(51)【国際特許分類】
H05K 7/00 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
H05K7/00 F
(21)【出願番号】P 2019079834
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】西川 晃勝
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-152696(JP,U)
【文献】実開昭60-187469(JP,U)
【文献】米国特許第05952616(US,A)
【文献】実開昭63-152281(JP,U)
【文献】実開昭53-036100(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00
H02G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体表面から突出して互いに対向する第1および第2の壁部を有しかつ前記第1および第2の壁部のそれぞれの先端から互いに向き合うように突出する第1および第2の抜け止め部を有するケーブル保持部と、
前記第1の壁部と前記第2の壁部との間であって、これらの第1および第2の壁部が並ぶ方向とは交差する方向に前記第1および第2の壁部から離れた位置に設けられ、前記筐体表面から前記第1および第2の壁部より低く突出する突出部とを備え
、
前記突出部は、前記第1および第2の壁部が並ぶ方向において、前記第1の抜け止め部と前記第2の抜け止め部との間隔より幅が小さい形状に形成されているとともに、前記第1の壁部と前記第2の壁部との間の中央に位置付けられ、
前記第1の壁部と前記第2の壁部との間に挿入された平ケーブルの幅方向の両端部が前記第1および第2の抜け止め部に当接する状態で、前記平ケーブルの幅方向の中央部が前記突出部によって前記筐体表面とは反対側に向けて押されることを特徴とする電子機器におけるケーブル保持構造。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器におけるケーブル保持構造において、
前記突出部は、前記ケーブル保持部を挟む両側に設けられていることを特徴とする電子機器におけるケーブル保持構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の電子機器におけるケーブル保持構造において、
二つの前記ケーブル保持部が前記第1および第2の壁部が並ぶ方向に所定の間隔をおいて第1のケーブル保持部と第2のケーブル保持部として並べて設けられ、
前記第1のケーブル保持部における前記第2のケーブル保持部と隣接する前記第1または第2の壁部に、前記第2のケーブル保持部に向けて突出する第3の抜け止め部を先端に有する第3の壁部を設け、
前記第3の壁部と、前記第2のケーブル保持部における前記第3の壁部と近接する前記第1または第2の壁部との間隔は、
前記第1の壁部と前記第2の壁部との間の間隔と、
前記第1の壁部と前記突出部との間の間隔と、
前記第2の壁部と前記突出部との間の間隔とのいずれの間隔とも異なっていることを特徴とする電子機器におけるケーブル保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話機等の電子機器における送受話器やヘッドセット等のケーブルを保持するケーブル保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のネットワーク機器や電話機等の電子機器には、電源ケーブル、LANケーブル、電話回線等のケーブルなど、多くの種類のケーブルが接続されている。これらのケーブルは、電子機器との接続部となるコネクタに負荷が直接かかることを防いだり、余剰分を束ねて整理するために、電子機器の筐体の周囲や裏面でケーブル保持構造によって保持されている。
【0003】
この種のケーブルを保持する従来のケーブル保持構造としては、例えば特許文献1に記載されているように筐体に設けられた溝と脱落防止部材とを用いてケーブルを筐体に固定するものや、特許文献2に示すように、筐体とは別部材として形成されたケーブル保持部材でケーブルを筐体に固定するものがある。また、特許文献3に開示されているように、結束バンドを使用してケーブルを筐体に固定するケーブル保持構造もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭64-39687号公報
【文献】特開2005-243878号公報
【文献】特開2005-51003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているケーブル保持構造では、ケーブルの径や断面形状に合わせて設計する必要がある。特許文献2に記載されているケーブル保持構造では、筐体とは別にケーブル保持部材を形成する必要があり、このケーブル保持部材を筐体に取付ける作業も必要になる。このため、ケーブル保持作業が煩雑になる。特許文献3に開示されたケーブル保持構造は、断面形状や径が異なるケーブルが個別に固定される筐体には不向きである。
【0006】
本発明の目的は、多種類の形状が想定されるケーブルの保持に適した電子機器におけるケーブル保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る電子機器におけるケーブル保持構造は、筐体表面から突出して互いに対向する第1および第2の壁部を有しかつ前記第1および第2の壁部のそれぞれの先端から互いに向き合うように突出する第1および第2の抜け止め部を有するケーブル保持部と、前記第1の壁部と前記第2の壁部との間であって、これらの第1および第2の壁部が並ぶ方向とは交差する方向に前記第1および第2の壁部から離れた位置に設けられ、前記筐体表面から前記第1および第2の壁部より低く突出する突出部とを備えたものである。
【0008】
本発明は、前記電子機器におけるケーブル保持構造において、前記突出部は、前記ケーブル保持部を挟む両側に設けられていてもよい。
【0009】
本発明は、前記ケーブル保持構造において、二つの前記ケーブル保持部が前記第1および第2の壁部が並ぶ方向に所定の間隔をおいて第1のケーブル保持部と第2のケーブル保持部として並べて設けられ、前記第1のケーブル保持部における前記第2のケーブル保持部と隣接する前記第1または第2の壁部に、前記第2のケーブル保持部に向けて突出する第3の抜け止め部を先端に有する第3の壁部を設け、前記第3の壁部と、前記第2のケーブル保持部における前記第3の壁部と近接する前記第1または第2の壁部との間隔は、前記第1の壁部と前記第2の壁部との間の間隔と、前記第1の壁部と前記突出部との間の間隔と、前記第2の壁部と前記突出部との間の間隔とのいずれの間隔とも異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、第1の壁部と第2の壁部との間に形成される第1の保持空間と、第1の壁部と突出部との間に形成される第2の保持空間と、第2の壁部と突出部との間に形成される第3の保持空間との3つの保持空間が一つのケーブル保持部に設けられる。これらの第1~第3の保持空間の中から1つを選んでケーブルを保持することができる。これらの第1~第3の保持空間の広さは、互いに異なる広さとすることが可能である。したがって、本発明によれば、多種類の形状が想定されるケーブルの保持に適した電子機器におけるケーブル保持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態によるケーブル保持構造の斜視図である。
【
図5】ケーブル保持構造および筐体の一部を示す斜視図である。
【
図6】平ケーブルを保持したケーブル保持構造の正面図である。
【
図7】平ケーブルを保持したケーブル保持構造の平面図である。
【
図8】細いケーブルを保持したケーブル保持構造の正面図である。
【
図9】細いケーブルを保持したケーブル保持構造の平面図である。
【
図10】極細ケーブルを保持したケーブル保持構造の正面図である。
【
図11】極細ケーブルを保持したケーブル保持構造の平面図である。
【
図12】第2の実施の形態によるケーブル保持構造の平面図である。
【
図13】細いケーブルを保持したケーブル保持構造の正面図である。
【
図14】細いケーブルを保持したケーブル保持構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る電子機器におけるケーブル保持構造の一実施の形態を
図1~
図11を参照して詳細に説明する。
図1に示すケーブル保持構造1は、ネットワーク装置や電話機等の電子機器の筐体2に接続されたケーブル3,4を保持するためのものである。この実施の形態は、電話機の筐体2に本発明に係るケーブル保持構造1を設ける場合の一例について説明する。
【0013】
筐体2は、プラスチック材料によって所定の形状に形成されている。ケーブル保持構造1は、筐体2と一体成形により一体に形成されている。筐体2には、
図5に示すように、ヘッドセット用ケーブル3のコネクタ(図示せず)が挿通される穴5と、ハンドセット用ケーブル4のコネクタ(図示せず)が挿通される穴6とが形成されている。これらの穴5,6は、ケーブル保持構造1が位置する筐体表面2aから筐体2の厚み方向(
図5おいては上下方向)に突出した凸部7に形成されている。
【0014】
この実施の形態によるケーブル保持構造1は、2本のケーブル3,4を個別に保持するために、第1のケーブル保持部11と第2のケーブル保持部12とを備えている。これらの第1および第2のケーブル保持部11,12のうち、
図1において左側に描かれている第1のケーブル保持部11は、筐体表面2aから突出する第1の壁部13と第2の壁部14とを有している。これらの第1の壁部13と第2の壁部14は、これらの第1および第2の壁部13,14が並ぶ方向とは直交する方向に幅が広くなるように形成されており、互いに対向している。第1のケーブル保持部11と第2のケーブル保持部12は、第1の壁部13と第2の壁部14とが並ぶ方向に所定の間隔をおいて並べて設けられている。
【0015】
以下においては、第1の壁部13と第2の壁部14とが並ぶ方向を左右方向といい、第1および第2の壁部13,14が並ぶ方向とは直交する方向であって筐体表面2aに沿う方向を前後方向という。
図1においては、左下側が左側になり、右上側が右側になる。また、
図1においては、右下側が前側となり、左上側が後側となる。すなわち、第1の壁部13は、第2の壁部14の左側であって、前後方向において同一の位置に配置されている。
【0016】
第1の壁部13の先端には第1の抜け止め部15が設けられ、第2の壁部14の先端には第2の抜け止め部16が設けられている。第1の抜け止め部15と第2の抜け止め部16は、第1、第2の壁部13,14の先端から互いに向き合うように突出している。第1の抜け止め部15と第2の抜け止め部16とは、ケーブル3,4が通過できる隙間をおいて互いに対向している。第1の壁部13と第2の壁部14との間には、貫通穴17が形成されている。この貫通穴17は、図示していない成形用金型によって形成された穴である。
【0017】
第1および第2の壁部13,14の前側近傍には突出部18が設けられている。突出部18は、第1の壁部13と第2の壁部14との間であって、これらの第1および第2の壁部13,14が並ぶ方向(左右方向)とは交差する方向(前後方向)に第1および第2の壁部13,14から離れた位置に形成されている。この実施の形態による突出部18は、第1および第2の壁部13,14より前側(コネクタ挿通用の穴5,6とは反対側)に設けられている。
【0018】
突出部18が筐体表面2aから突出する突出量は、第1および第2の壁部13,14が筐体表面2aから突出する突出量より少ない。すなわち、突出部18は、筐体表面2aから第1および第2の壁部13,14より低く突出するように形成されている。この実施の形態による突出部18は、左右方向において、第1の壁部13と第2の壁部14との間の中央に位置付けられている。しかし、突出部18の左右方向の位置は、第1の壁部13に近付く位置であったり、第2の壁部14に近付く位置でもよい。
【0019】
第2のケーブル保持部12は、第1のケーブル保持部11と同様に第1の壁部13と第2の壁部14とを有している。第2のケーブル保持部12の第1および第2の壁部13,14の先端にも第1および第2の抜け止め部15,16が互いに向き合うように設けられている。第2のケーブル保持部12においても、第1の壁部13と第2の壁部14との間に貫通穴17が形成されている。
【0020】
第1のケーブル保持部11と第2のケーブル保持部12との間には第3の壁部21が設けられている。第3の壁部21は、第1のケーブル保持部11の第2の壁部14に設けられ、筐体表面2aから突出している。第3の壁部21の先端には、第2のケーブル保持部12に向けて突出する第3の抜け止め部22が設けられている。
【0021】
第3の壁部21と、第2のケーブル保持部12における第3の壁部21と近接する第1の壁部13との間隔D1(
図3参照)は、第1の壁部13と第2の壁部14との間の間隔D2と、第1の壁部13と突出部18との間の間隔D3と、第2の壁部14と突出部18との間の間隔D4とのいずれの間隔とも異なっている。この実施の形態による間隔D1は、間隔D2~D4のいずれの間隔より狭い。
【0022】
このように構成されたケーブル保持構造1においては、
図5に示すように、ヘッドセット用ケーブル3が第1のケーブル保持部11に通され、ハンドセット用ケーブル4が第2のケーブル保持部12に通される。ヘッドセット用ケーブル3には、詳細は後述するが、断面形状や径が異なる複数の種類のケーブルが用いられている。また、ヘッドセット用ケーブル3は、コネクタ挿通用の穴5に対して左方向および筐体2の厚み方向に曲げられて撓んだ状態で第1のケーブル保持部11に導かれる。一方、ハンドセット用ケーブル4は、1種類のケーブルが用いられており、コネクタ挿通用の穴6から左右方向に大きく撓むことなく筐体2の厚み方向に曲げられて撓んだ状態で第2のケーブル保持部12に導かれる。
【0023】
ヘッドセット用ケーブル3が
図6および
図7に示すように平ケーブル3Aである場合は、この平ケーブル3Aの相対的に広い面が筐体表面2aと対向するような状態で第1の壁部13と第2の壁部14との間に挿入される。この平ケーブル3Aは、幅方向の両端部が第1および第2の抜け止め部15,16に当接する状態で、幅方向の中央部が突出部18によって筐体表面2aとは反対側に向けて押される。このため、平ケーブル3Aは、幅方向の中央部が筐体表面2aとは反対側に向けて凸になるように湾曲する。このように平ケーブル3Aが第1および第2の抜け止め部15,16と突出部18とに押し付けられることによって、平ケーブル3Aが第1のケーブル保持部11に保持される。
【0024】
ヘッドセット用ケーブル3が
図8および
図9に示すように細いケーブル3Bである場合は、第1または第2の壁部13,14と突出部18との間に直線状に延びる状態で挿入される。
図8および
図9に示す細いケーブル3Bは、第1の壁部13と、第1の抜け止め部15と、突出部18とにそれぞれ押し付けられた状態で第1のケーブル保持部11に保持される。
【0025】
ヘッドセット用ケーブル3が
図10および
図11に示すように極細ケーブル3Cである場合は、第3の壁部21と第2のケーブル保持部12の第1の壁部13との間に挿入される。極細ケーブル3Cは、第3の壁部21と、第3の抜け止め部22と、第2のケーブル保持部12の第1の壁部13とによって囲まれた隙間に通された状態で、第3の壁部21、第3の抜け止め部22および第1の壁部13によって保持される。
【0026】
このように構成されたケーブル保持構造1は、第1の壁部13と第2の壁部14との間に形成される第1の保持空間S1(
図1参照)と、第1の壁部13と突出部18との間に形成される第2の保持空間S2と、第2の壁部14と突出部18との間に形成される第3の保持空間S3との3つの保持空間を有している。これらの第1~第3の保持空間S1~S3の中から1つを選んでケーブル3を保持することができる。これらの第1~第3の保持空間S1~S3の広さは、互いに異なる広さとすることが可能である。したがって、この実施の形態によれば、多種類の形状が想定されるケーブルの保持に適した電子機器におけるケーブル保持構造を提供することができる。
【0027】
この実施の形態においては、第3の抜け止め部22を先端に有する第3の壁部21が第1のケーブル保持部11の第2の壁部14に設けられている。このため、第1のケーブル保持部11と第2のケーブル保持部12との間のデッドスペースを有効に利用でき、極細ケーブル3Cや極太ケーブル(図示せず)を保持することが可能なケーブル保持構造をコンパクトに構成することができる。
【0028】
(第2の実施の形態)
第1のケーブル保持部は、
図12~
図14に示すように構成することができる。これらの図において、
図1~
図11によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図12に示す第1のケーブル保持部11は、二つの突出部18,18を備えている。これらの突出部18,18は、第1のケーブル保持部11を挟むように、第1のケーブル保持部11に対して前後方向の両側に設けられている。
【0029】
この実施の形態を採る場合は、
図13および
図14に示すように、ヘッドセット用ケーブル3として細いケーブル3Bを後側の突出部18の左側を通して第1の壁部13と第2の壁部14との間に導き、さらに、前側の突出部18の右側を通して第1のケーブル保持部11の前方に引き出す。この実施形態によれば、細いケーブル3Bがいわゆる「たすき掛け」の状態で保持されるようになるから、細いケーブル3Bをより一層強固に保持できるようになる。
【符号の説明】
【0030】
1…ケーブル保持構造、2…筐体、2a…筐体表面、11…第1のケーブル保持部、12…第2のケーブル保持部、13…第1の壁部、14…第2の壁部、15…第1の抜け止め部、16…第2の抜け止め部、18…突出部、21…第3の壁部、22…第3の抜け止め部、D1~D4…間隔。