(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】モータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20230711BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2019080401
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 崇宣
(72)【発明者】
【氏名】石川 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】中松 修平
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-107709(JP,A)
【文献】特開平05-169985(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052040(WO,A1)
【文献】実開平06-037512(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第103825404(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿って延びるモータ軸を中心として回転するモータシャフトを有するモータと、
前記モータ軸の軸方向一方側において前記モータシャフトに接続されるギヤ部と、
前記モータおよび前記ギヤ部を収容するハウジングと、
前記ハウジング内に収容されるオイルを前記モータに供給するポンプと、を有し、
前記ハウジングは、
前記モータを収容するモータ収容部と、
前記ギヤ部を収容するギヤ収容部と、
前記ポンプを収容してポンプ室を内部に形成するポンプ収容部と、
前記ギヤ収容部と前記ポンプ室とをつなぐオイル流入孔と、
前記ポンプ室と前記モータ収容部とをつなぐオイル配管部と、を有し、
前記ポンプ収容部は、前記モータ収容部よりも鉛直方向下方かつ前記ギヤ収容部に対してモータ軸の軸方向他方側に隣接してされ、
前記ポンプが、前記オイル流入孔を介して前記ギヤ収容部内のオイルを前記ポンプ室内に吸い込むとともに、前記オイル配管部を介して前記ポンプ室内のオイルを前記モータ収容部内の前記モータに供給するモータユニット。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記モータ軸の軸方向他方側に設けられる第1ハウジング部材と、
前記モータ軸の軸方向一方側に設けられる第2ハウジング部材
と、を有する請求項1に記載のモータユニット。
【請求項3】
前記ポンプは、
ポンプ軸を中心として回転するポンプシャフトを有するポンプモータと、
前記ポンプ軸の軸方向一方側において前記ポンプシャフトが接続する圧縮部と、
をさらに有し、
前記圧縮部は、
前記オイルを吸い込む吸込口と、
前記オイルを吐き出す吐出口と、を有し、
前記吸込口は前記オイル流入孔に挿入可能な筒状である請求項1または請求項2に記載のモータユニット。
【請求項4】
前記ギヤ収容部内部の下部にはオイルが貯留されており、
前記ギヤ収容部内部に配置されて、前記オイル流入孔と接続するストレーナをさらに有し、
前記ストレーナは、下面に流入開口を有する請求項1から請求項3のいずれかに記載のモータユニット。
【請求項5】
前記ポンプ軸は、前記モータ軸と平行であり、
前記ポンプ収容部は、
前記モータ軸の軸方向に延びる筒状の収容室周壁部と、
前記モータ軸の軸方向一方側の端部の一部を塞ぐ収容室側壁部と、をさらに有し、
前記オイル流入孔が、前記収容室側壁部に形成され、
前記オイル配管部が接続される
オイル流出孔が、前記収容室周壁部に形成され、
前記圧縮部の前記吸込口は、前記ポンプ軸の軸方向一方側の端面から軸方向一方側に突出する
請求項3に記載のモータユニット。
【請求項6】
前記オイル流入孔の中心は、前記ポンプ軸の軸方向から見て、前記ポンプ軸
に対して前記ポンプ軸の径方向外側かつ鉛直方向下側に位置する請求項5に記載のモータユニット。
【請求項7】
前記ポンプは、前記ポンプ室の開口を塞ぐ蓋部をさらに有し、
前記蓋部は、外面に配された複数の冷却フィンを有し、
複数の前記冷却フィンは、それぞれ水平方向に拡がるとともに互いに隙間をあけて前記水平方向と交差する方向に配列される請求項1から請求項6のいずれかに記載のモータユニット。
【請求項8】
前記オイル配管部の経路中には、前記オイル配管部を通過するオイルを冷却するオイルクーラが設けられ、
前記ポンプ収容部および前記オイルクーラは、前記モータ軸の軸方向から見て、前記ハウジングの前記ギヤ収容部の下端よりも上方に配置される請求項1から請求項7のいずれかに記載のモータユニット。
【請求項9】
前記オイルクーラは、
オイルが流通するオイル流路と、
冷媒が流通する冷媒流路と、を有し、
前記ハウジングは前記オイルクーラを取り付けるオイルクーラ取付部をさらに有し、
前記オイルクーラ取付部は、
前記オイル流路に前記オイルを流入させる給油孔と、
前記オイル流路から排出される前記オイルが流入する排油孔と、
前記冷媒流路に前記冷媒を流入させる給冷媒孔と、
前記冷媒流路から排出される冷媒が流入する排冷媒孔と、を有し、
前記給油孔と前記排油孔とを結んだ線と、前記給冷媒孔と前記排冷媒孔とを結んだ線とが交差する請求項8に記載のモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-73163号公報には、回転電機の外部に設けられた冷却装置により冷媒を冷却し、回転電機の外部に設けられたポンプによって冷媒をモータに供給する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポンプおよび冷却装置を回転電機の外部に配置する特開2016-73163号公報の構成の場合、回転電機が大型になり、設置が困難になる虞がある。
【0005】
そこで本発明は、冷却効率を維持しつつ全体の小型化を図ることができるモータユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なモータユニットは、 水平方向に沿って延びるモータ軸を中心として回転するモータシャフトを有するモータと、前記モータ軸の軸方向一方側において前記モータシャフトに接続されるギヤ部と、前記モータおよび前記ギヤ部を収容するハウジングと、前記ハウジング内に収容されるオイルを前記モータに供給するポンプと、を有し、前記ハウジングは、前記モータを収容するモータ収容部と、前記ギヤ部を収容するギヤ収容部と、前記ポンプを収容してポンプ室を内部に形成するポンプ収容部と、前記ギヤ収容部と前記ポンプ室とをつなぐオイル流入孔と、前記ポンプ室と前記モータ収容部とをつなぐオイル配管部と、を有し、前記ポンプ収容部は、前記モータ収容部よりも鉛直方向下方かつ前記ギヤ収容部に対してモータ軸の軸方向他方側に隣接してされ、前記ポンプが、前記オイル流入孔を介して前記ギヤ収容部内のオイルを前記ポンプ室内に吸い込むとともに、前記オイル配管部を介して前記ポンプ室内のオイルを前記モータ収容部内の前記モータに供給する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の例示的なモータユニットによれば、冷却効率を維持しつつ全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のモータユニットの概念図である。
【
図3】
図3は、モータユニットのモータ軸と直交する面で切断した断面図である。
【
図4】
図4は、モータユニットのギヤ部を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第2ハウジング部材を内側から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、ギヤ収容部内の概略配置を示す図である。
【
図11】
図11は、オイルクーラが取り付けられるオイルクーラ取付部の概略図である。
【
図13】
図13は、モータオイルリザーバおよびモータの配置を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、モータオイルリザーバおよびモータの配置を示す平面図である。
【
図15】
図15は、第1ハウジング部材の側板部の斜視図である。
【
図16】
図16は、オイルリザーブ皿の側板部との接続部分を拡大した斜視図である。
【
図17】
図17は、第1ハウジング部材の挿通孔および第3ギヤベアリング保持部を拡大した斜視図である。
【
図18】
図18は、モータオイルリザーバの変形例およびモータの配置を示す斜視図である。
【
図19】
図19は、モータオイルリザーバの変形例およびモータの配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータユニットについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
以下の説明では、モータユニット1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示し、+Z方向が上側(重力方向の反対側)であり、-Z方向が下側(重力方向)である。また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であってモータユニット1が搭載される車両の前後方向を示し、+X方向が車両前方であり、-X方向が車両後方である。ただし、+X方向が車両後方であり、-X方向が車両前方となることもありうる。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の幅方向(左右方向)を示し、+Y方向が車両左方であり、-Y方向が車両右方である。但し、+X方向が車両後方となる場合には、+Y方向が車両右方であり、-Y方向が車両左方となることもありうる。すなわち、X軸の方向に関わらず、単に+Y方向が車両左右方向の一方側となり、-Y方向が車両左右方向の他方側となる。また、モータユニット1の車両への搭載方法によっては、X軸方向が車両の幅方向(左右方向)で、Y軸方向が車両の前後方向になることもありうる。
【0011】
以下の説明において特に断りのない限り、モータ2のモータ軸J2に平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J2と直交する径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J2を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。さらに、上述した「平行な方向」は、完全に平行な場合のみでなく、略平行な方向も含む。
【0012】
<1.モータユニット1>
以下、図面を基に本発明の例示的な一実施形態にかかるモータユニット1について説明する。
図1は、一実施形態のモータユニット1の概念図である。
図2は、モータユニット1の斜視図である。
図3は、モータユニット1のモータ軸J2と直交する面で切断した断面図である。なお、
図1は、あくまで概念図であり、各部の配置および寸法は、実際のモータユニット1と同じであるとは限らない。また、
図3において、インバータユニット7の図示は省略している。
【0013】
モータユニット1は、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、少なくともモータを動力源とする車両に搭載される。モータユニット1は、上記の自動車の動力源として使用される。
【0014】
図1に示すように、モータユニット1は、モータ(メインモータ)2と、ギヤ部3と、ポンプ4と、ハウジング5と、インバータユニット7と、を有する。
【0015】
図1に示すように、モータ2は、水平方向に延びるモータ軸J2を中心として回転するロータ21と、ロータ21の径方向外側に位置するステータ25と、を有する。ハウジング5の内部は、モータ2およびギヤ部3を収容する収容空間6が設けられる。収容空間6は、モータ2を収容するモータ収容部61と、ギヤ部3を収容するギヤ収容部62と、に区画される。
【0016】
<2.モータ2>
モータ2は、ハウジング5のモータ収容部61に収容される。モータ2は、ロータ21と、ステータ25と、を有する。
【0017】
<2.1 ロータ21>
ロータ21は、図示略のバッテリからステータ25に電力が供給されることで回転する。ロータ21は、モータシャフト22と、ロータコア23と、ロータマグネット24(
図3参照)と、を有する。ロータ21は、水平方向に延びるモータ軸J2を中心として回転する。すなわち、モータ2は、水平方向に沿って延びるモータ軸J2を中心として回転するモータシャフト22を有する。
【0018】
モータシャフト22は、水平方向かつ車両の幅方向に延びるモータ軸J2を中心として延びる。モータシャフト22は、モータ軸J2を中心として回転する。モータシャフト22は、内部にモータ軸J2に沿って延びる内周面を有する中空部220が設けられた中空シャフトである。
【0019】
モータシャフト22は、ハウジング5のモータ収容部61とギヤ収容部62とを跨いで延びる。モータシャフト22の一方の端部(+Y側)は、ギヤ収容部62側に突出する。ギヤ収容部62内に突出するモータシャフト22の端部には、ギヤ部3の後述する第1ギヤ311が固定される。モータシャフト22は、ハウジング5の後述する、閉塞部材53に保持された第1モータベアリング281と、側板部512に保持された第2モータベアリング282とに回転可能に支持される。
【0020】
また、モータシャフト22のギヤ収容部62に配置される部分は、側板部512に保持された後述の第1ギヤベアリング341と、ハウジング5の後述する第2ハウジング部材52に保持された第2ギヤベアリング342とに回転可能に支持される。なお、モータシャフト22は、モータ収容部61内の部分と、ギヤ収容部62内の部分とに分割可能であってもよい。モータシャフト22が分割可能である場合、分割されたモータシャフト22は、例えば、雄ねじおよび雌ねじを用いたねじカップリングを採用することが可能である。また、溶接等の固定方法にて接合してもよい。
【0021】
ロータコア23は、珪素鋼板を積層して形成される。ロータコア23は、軸方向に沿って延びる円柱体である。ロータコア23には、複数のロータマグネット24が固定される。複数のロータマグネット24は、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0022】
<2.2 ステータ25>
ステータ25は、ロータ21を径方向外側から囲む。すなわち、モータ2は、ステータ25の内側にロータ21が回転可能に配置されたインナーロータ型モータである。ステータ25は、ステータコア26と、コイル27と、ステータコア26とコイル27との間に介在するインシュレータ(図示略)とを有する。ステータ25は、ハウジング5に保持される。ステータコア26は、円環状のヨークの内周面から径方向内方に複数の磁極歯261(
図3参照)を有する。
【0023】
磁極歯261の間には、コイル線が掛けまわされる。磁極歯261に掛けまわされたコイル線は、コイル27を構成する。コイル線は、図示略のバスバーを介してインバータユニット7に接続される。コイル27は、ステータコア26の軸方向端面から突出するコイルエンド271を有する。コイルエンド271は、ロータ21のロータコア23の端部よりも軸方向に突出する。
【0024】
<3. ギヤ部3>
ギヤ部3は、モータの駆動力を車両の車輪を駆動する駆動軸Dsに伝達する。ギヤ部3の詳細について、図面を参照して説明する。
図4は、モータユニット1のギヤ部3を示す斜視図である。
図1、
図4に示すように、ギヤ部3は、ハウジング5のギヤ収容部62に収容される。ギヤ部3は、モータ軸J2の軸方向一方側においてモータシャフト22に接続される。ギヤ部3は、減速装置31と、差動装置32と、を有する。
【0025】
<3.1 減速装置31>
図1、
図4に示すように、減速装置31は、モータシャフト22に接続される。すなわち、ギヤ部3は、モータ軸J2の軸方向一方側においてモータシャフト22に接続される。減速装置31は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる機能を有する。減速装置31は、モータ2から出力されるトルクを差動装置32へ伝達する。
【0026】
減速装置31は、第1ギヤ(中間ドライブギヤ)311と、第2ギヤ(中間ギヤ)312と、第3ギヤ(ファイルナルドライブギヤ)313と、中間シャフト314と、を有する。モータ2から出力されるトルクは、モータシャフト22、第1ギヤ311、第2ギヤ312、中間シャフト314および第3ギヤ313を介して差動装置32のリングギヤ(ギヤ)321へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。減速装置31は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0027】
第1ギヤ311は、モータシャフト22の外周面に設けられる。第1ギヤ311は、モータシャフト22と同一の部材であってもよいし、別の部材であって強固に固定されてもよい。第1ギヤ311は、モータシャフト22とともに、モータ軸J2を中心に回転する。
【0028】
中間シャフト314は、モータ軸J2と平行な中間軸J4に沿って延びる。中間シャフト314の両端は、第1ハウジング部材51の側板部512に保持された第3ギヤベアリング343と、第2ハウジング部材52に保持された第4ギヤベアリング344とに回転可能に支持される。
【0029】
中間シャフト314は、ハウジング5に中間軸J4を中心として回転可能に支持される。第2ギヤ312および第3ギヤ313は、中間シャフト314の外周面に設けられる。第2ギヤ312は、中間シャフト314と同一の部材であってもよいし、別の部材であって強固に固定されてもよい。第3ギヤ313も第2ギヤ312と同様である。第3ギヤ313は、第2ギヤ312に対して側板部512側に位置する。
【0030】
第2ギヤ312と第3ギヤ313とは、中間シャフト314を介して接続される。第2ギヤ312および第3ギヤ313は、中間軸J4を中心として回転する。第2ギヤ312は、第1ギヤ311に噛み合う。第3ギヤ313は、差動装置32のリングギヤ321と噛み合う。
【0031】
モータシャフト22のトルクは、第1ギヤ311から第2ギヤ312に伝達される。そして、第2ギヤ312に伝達されたトルクは、中間シャフト314を介して第3ギヤ313に伝達される。さらに、第3ギヤ313に伝達されたトルクは、差動装置32のリングギヤ321に伝達される。このようにして、減速装置31は、モータ2から出力されたトルクを、差動装置32に伝達する。
【0032】
<3.2 差動装置32>
差動装置32は、車両の駆動軸Dsに取り付けられる。差動装置32は、モータ2の出力トルクを駆動軸Dsに伝達する。駆動軸Dsは、差動装置32の左右にそれぞれ取り付けられている。差動装置32は、例えば、車両の旋回時に、左右の車輪(駆動軸Ds)の速度差を吸収しつつ、左右の駆動軸Dsに同トルクを伝える機能を有する。差動装置32は、リングギヤ321と、ギヤハウジング(不図示)と、一対のピニオンギヤ(不図示)と、ピニオンシャフト(不図示)と、一対のサイドギヤ(不図示)と、を有する。
【0033】
リングギヤ321は、モータ軸J2と平行な差動軸J5を中心として回転する。リングギヤ321には、モータ2から出力されるトルクが減速装置31を介して伝えられる。
【0034】
<3.3 パーキング機構33>
例えば、電気自動車では、サイドブレーキ以外に車両にブレーキをかける制動機構がない。そのため、モータユニット1には、シフトレバー(不図示)をパーキングの位置に移動させたときに、車両をロックするパーキング機構33が取り付けられる場合がある。
【0035】
図4に示すように、パーキング機構33は、パーキングギヤ331と、回転阻止部332と、パーキングモータ333と、を有する。パーキングギヤ331は、中間シャフト314に固定され、中間シャフト314とともに中間軸J4周りに回転する。回転阻止部332は、パーキングギヤ331の歯間に移動してパーキングギヤ331の回転を阻止する。パーキングモータ333は、回転阻止部332を駆動する。
【0036】
モータ2の動作時において、回転阻止部332は、パーキングギヤ331から退避する。なお、回転阻止部332のパーキングギヤ331からの退避は、例えば、ばね等の弾性部材によってなされる。一方、シフトレバーがパーキングの位置にあるときは、パーキングモータ333が回転阻止部332をパーキングギヤ331の歯間に移動させる。これにより、回転阻止部332が、パーキングギヤ331の回転を阻止し、車両を制動状態に維持する。車両がHV、PHV等で、内燃機関および変速機を有する場合、パーキング機構33は省略可能である。
【0037】
<4. ポンプ4>
ポンプ4は、オイルCLをモータ2に供給する。すなわち、ポンプ4は、ハウジング5内に収容されるオイルCLをモータ2に供給する。ポンプ4は、電気により駆動する電動ポンプである。ポンプ4の詳細について、図面を参照して説明する。
図5は、ポンプ4を示す断面図である。
図5に示すように、ポンプ4は、ハウジング5の後述するポンプ収容部54に収容され、ポンプ収容部54の内部にはポンプ室540が形成される。
【0038】
図5に示すように、ポンプ4は、ポンプモータ41と、圧縮部42と、ポンプケース43と、蓋部44と、冷却フィン45と、を有する。ポンプモータ41は、ステータ411と、ロータ412とを有するインナーロータモータである。ロータ412は、水平方向に延びるポンプ軸J6回りに回転するポンプシャフト413を有する。本実施形態では、ポンプ軸J6は、モータ軸J2と平行である。すなわち、ポンプ軸J6は、モータ軸J2と平行である。なお、ポンプ軸J6は、モータ軸J2と平行でなくてもよい。ポンプモータ41は、従来周知の構成であるため、詳細は省略する。すなわち、ポンプ4は、ポンプ軸J6を中心として回転するポンプシャフト413を備えるポンプモータ41をさらに有する。
【0039】
圧縮部42は、ポンプ軸J6の軸方向一方側に配される内部空間420を有する。そして、圧縮部42の内部空間420と外部の空間とをつなぐ、吸込口421と、吐出口422とを有する。圧縮部42は、図示略の外歯車と内歯車がかみ合って回転するトロコイダルポンプである。圧縮部42は内部空間420の内部に、外歯車と内歯車とを有する。そして、内歯車は、ポンプシャフト413に取り付けられて、ポンプモータ41によって回転される。すなわち、ポンプ4は、ポンプ軸J6の軸方向一方側においてポンプシャフト413が接続する圧縮部42と、をさらに有する。なお、圧縮部42は、遠心ポンプ等、トロコイダルポンプ以外のポンプであってもよい。
【0040】
吸込口421は、ポンプ軸J6の軸方向一方側(+Y方向側)に突出する筒状である。すなわち、圧縮部42の吸込口421は、ポンプ軸J6の軸方向一方側の端面から軸方向一方側に突出する筒状である。吸込口421の内部は、内部空間420とつながっている。また、吐出口422は、内部空間420は、ポンプ軸J6の軸方向一方側(+Y方向側)の壁面に設けられる。圧縮部42は、内部空間420に配置された内歯車が回転することで、吸込口421からオイルCLを吸込み、吐出口422から吐出する。すなわち、圧縮部42は、オイルCLを吸い込む吸込口421と、オイルCLを吐き出す吐出口422と、を有する。
【0041】
圧縮部42において、吸込口421の中心軸J7は、ポンプ軸J6に対してずれている。このように形成することで、吐出口422を形成する場所を確保しやすい。また、吸込口421は、ポンプ収容部54に設けられる後述するオイル流入孔541に挿入される。すなわち、吸込口421はオイル流入孔541に挿入可能な筒状である。
【0042】
吸込口421をオイル流入孔541に挿入する構成とすることで、ギヤ収容部62内のオイルCLを効率よく吸込口421から吸い込むことが可能である。これにより、ポンプ4を安定させることができ、モータ2を効率よく冷却して温度上昇によるモータ2の効率の低下を抑制できる。
【0043】
また、吸込口421の中心軸J7が、ポンプ軸J6に対してずれていることで、ポンプ4を取り付けるときのポンプ4の周方向の位置決めが容易になる。これにより、モータユニット1の生産性を高めることが可能である。また、
図5に示すように、吸込口421の中心軸J7は、ポンプ軸J6よりも下方である。このように構成することで、低い位置のオイルCLも吸い込むことができ、ポンプ4が空気を吸い込みにくい。
【0044】
ポンプケース43は、筒状の部材である。圧縮部42は、ポンプケース43のポンプ軸J6の軸方向一方側(+Y方向側)に配置される。また、ポンプモータ41は、ポンプケース43の内部に収容される。そして、ポンプケース43のポンプ軸J6の軸方向他方側(-Y方向側)は、開口しており、開口は蓋部44にて塞がれる。蓋部44は、ポンプケース43の内部への水、埃、塵等の侵入を防ぐ。蓋部44には、不図示の回路基板、バスバー等が設けられる。回路基板は、インバータユニット7に接続され、回路基板に供給された電力は、バスバーを介して、ポンプモータ41に供給される。また、蓋部44は、ポンプ収容部54(ポンプ室540)の開口を閉じる蓋の役割も果たす。蓋部44でポンプ収容部54が閉じられることで、ポンプ室540は、オイルCLが漏れにくい状態で密閉される。すなわち、ポンプ4は、ポンプ室540の開口を塞ぐ蓋部44をさらに有する。
【0045】
冷却フィン45は、蓋部44の外部に配置される。なお、冷却フィン45は、蓋部44と同一の部材であってもよいし、別の部材であってもよい。冷却フィン45は、水平方向に拡がる板状であり、上下方向(Z方向)に並んで配置される。すなわち、蓋部44は、外面に配された複数の冷却フィン45を有し、複数の冷却フィン45は、それぞれ水平方向に拡がるとともに互いに隙間をあけて水平方向と交差する方向に配列される。
【0046】
図5において、車両は、紙面奥行き方向に走行する。そのため、ポンプ4において、冷却フィン45は、走行風によって冷却される。すなわち、ポンプ4は、車両が走行することで、走行風により冷却される。
【0047】
ポンプ4の吸込口421には、ストレーナ46が接続される。ストレーナ46は、流入開口461と、流出部462とを有する。流入開口461は、ストレーナ46の下面に設けられる。流出部462は、軸方向に延びる筒状である。流出部462は、オイル流入孔541のギヤ収容部62側の開口から挿入される。すなわち、ギヤ収容部62内部の下部にはオイルCLが貯留されており、ギヤ収容部62内部に配置されて、オイル流入孔541と接続するストレーナ46をさらに有する。そして、ストレーナ46は、下面に流入開口461を有する。
【0048】
ストレーナ46は、ハウジング5のギヤ収容部62の後述するオイル溜りP(
図1、
図9等参照)に配置される。ストレーナ46は、ポンプ4の駆動によって、流入開口461からオイルCLを吸込み、流出部462からポンプ4の吸込口421に供給する。ストレーナ46を設けることで、オイルCLの量が減って、オイルCLの油面が低下した場合でも、ポンプ4がオイルCLを吸い込むことが可能である。ストレーナ46には、図示を省略したフィルタ等の濾過構造が取り付けられてもよい。なお、ポンプ4が安定してオイルCLを吸い込むことができる場合、ストレーナを省略してもよい。しかしながら、ポンプ4への異物の混入、モータ2への異物の混入を抑制するために、フィルタを有するストレーナを備えていることが好ましい。
【0049】
<5. オイルクーラ8>
ポンプ4によってオイル溜りPから吸い込まれたオイルCLは、後述するオイル配管部55の経路の途中に設けられた、オイルクーラ8に流入する。オイルクーラ8は、オイル配管部55を流れるオイルCLを冷却する。オイルクーラ8の構成について、図面を参照して説明する。
図6は、オイルクーラ8の概略断面図である。
図6に示すオイルクーラ8は、冷媒の流入配管および流出配管を省略している。
【0050】
図1、
図2等に示すように、インバータユニット7には、図示略のラジエータから延びる冷媒配管71が接続される。そして、インバータユニット7を冷却した冷却水(冷媒)を流入させ、冷却水とオイルCLとを熱交換して、オイルCLを冷却する。なお、本実施形態では、インバータユニット7を冷却した冷却水でオイルCLを冷却しているが、これに限定されない。インバータユニット7を冷却する冷媒配管とは別の配管を設けてもよい。
【0051】
図6に示すように、オイルクーラ8はオイル流路81と、冷媒流路82と、を有する。また、オイルクーラ8は、複数のフィン80を備えている。フィン80が、空間をあけて配列され、オイルクーラ8の内部は、複数の層に分割される。そして、複数の層は、交互にオイルCLが流れるオイル流路81と、冷媒が流れる冷媒流路82とになる。すなわち、オイルクーラ8は、冷媒が流通する冷媒流路82と、オイルCLが流通するオイル流路81と、を有する。
【0052】
オイル流路81は、流入配管811と、バイパス配管812と、流出配管813とを有する。流入配管811は、オイルCLをオイルクーラ8に流入させる。流入配管811はフィン80で分割された最も上の層に接続される。そして、バイパス配管812は、一つとばした次の層に接続する配管である。
図6に示すように、バイパス配管812は、流入配管811から離れた位置に配置される。このように配置することで、オイル流路81の各層にオイルCLが充填される。これにより、冷媒水とオイルCLとの熱交換効率を高めることができる。そして、最も下の層から流出配管813を通って、オイルCLを外部に排出する。流出配管813から流出したオイルCLは、オイル配管部55に流入し、モータ収容部61に供給される。
【0053】
本実施形態にかかる、オイルクーラ8では、流出配管813はバイパス配管812を貫通して配置される。しかしながら、これに限定されず、バイパス配管812と流出配管813を別の位置に設けてもよい。また、冷媒流路82は、オイルクーラ8と同様に、複数の層に交互に冷却水を流入させることができる構造である。
【0054】
図2、
図3に示すように、オイルクーラ8は、直方体形状である。オイル流路81の流入配管811および流出配管813を対角線上に配置してもよい。また、冷媒の流入配管および流出配管(不図示)を対角線上に配置してもよい。このように配置することで、オイルCLおよび冷媒をオイル流路81および冷媒流路82にそれぞれいきわたらせることができ、効率よく熱交換可能である。また、オイルクーラ8の小型化も可能である。
【0055】
<6. ハウジング5>
図7は、ハウジング5の分解図である。
図7に示すように、ハウジング5は、第1ハウジング部材51と、第2ハウジング部材52と、閉塞部材53と、を有する。第2ハウジング部材52は、第1ハウジング部材51の軸方向一方側(+Y方向側)に位置する。閉塞部材53は、第1ハウジング部材51の軸方向他方側(-Y方向側)に位置する。ハウジング5は4以上の部材で構成されてもよい。
【0056】
図1、
図7において、ハウジング5は、内部に収容空間6を有する。収容空間6内には、モータ2およびギヤ部3が収容される。ハウジング5の収容空間6は、後述する側板部512によってモータ収容部61とギヤ収容部62とに区画される。モータ収容部61には、モータ2が収容される。ギヤ収容部62には、ギヤ部3(すなわち、減速装置31および差動装置32)が収容される。閉塞部材53は、第1ハウジング部材51の周壁部511に固定される。閉塞部材53は、筒状の第1ハウジング部材51の開口を塞ぐ。すなわち、ハウジング5は、モータ軸J2の軸方向他方側(-Y方向側)に設けられる第1ハウジング部材51と、モータ軸J2の軸方向一方側(+Y方向側)に設けられる第2ハウジング部材52と有する。
【0057】
第1ハウジング部材51の周壁部511と閉塞部材53とによって囲まれた空間にモータ2が収容される。すなわち、周壁部511と閉塞部材53とは、モータ収容部61を構成する。同様に、第1ハウジング部材51の側板部512と第2ハウジング部材52とによって囲まれた空間にギヤ部3が収容される。側板部512と第2ハウジング部材52とは、ギヤ収容部62を構成する。すなわち、ハウジング5は、モータ2およびギヤ部3を収容する。すなわち、ハウジング5は、モータ2を収容するモータ収容部61と、ギヤ部3を収容するギヤ収容部62とを有する。
【0058】
第1ハウジング部材51は、周壁部511と、側板部512と、挿通孔514と、第1駆動軸通過孔515と、第2モータベアリング保持部516と、第1ギヤベアリング保持部517と、第3ギヤベアリング保持部518と、側板開口519とを有する。
【0059】
周壁部511は、軸方向に延びる筒状である。周壁部511の内部には、モータ2が収容される。周壁部511の内側の空間は、モータ収容部61を構成する。側板部512は、上下に連続する隔壁部510および突出部513を有する。本実施形態の第1ハウジング部材51において、周壁部511と、側板部512とは、同一の部材で形成される。隔壁部510は、周壁部511の軸方向一方側(+Y方向側)の端部を閉じる。
【0060】
突出部513は、隔壁部510よりも鉛直方向下方側(-Z方向側)の部分であり、周壁部511よりも下方に突出する。第1駆動軸通過孔515は、突出部513に備えられる。駆動軸Dsは、第1駆動軸通過孔515を回転可能な状態で貫通する。駆動軸Dsと第1駆動軸通過孔515との間は、オイルCLの漏れを抑制するため、オイルシール(不図示)が設けられる。駆動軸Dsの先端には、車輪を回転させる車軸(不図示)が接続される。また、突出部513の軸方向他方側(-Y方向側)には、ポンプ収容部54(
図5参照)が備えられる。
【0061】
挿通孔514は、隔壁部510に形成され、軸方向に貫通する。挿通孔514の中心は、モータ軸J2と一致する。そして、挿通孔514には、モータシャフト22が挿通される。
【0062】
第2モータベアリング保持部516は、挿通孔514の辺縁部から軸方向他方側(-Y方向側)に延びる筒状である。第2モータベアリング保持部516には、第2モータベアリング282の外輪が固定される。そして、第2モータベアリング282の内輪には、モータシャフト22が固定される。
【0063】
閉塞部材53の軸方向一方側(+Y方向側)には、第1モータベアリング保持部531が備えられる。第1モータベアリング保持部531および第2モータベアリング保持部516は、中心軸がモータ軸J2と一致する。そして、第1モータベアリング保持部531に第1モータベアリング281が保持される。第1モータベアリング281の内輪にはモータシャフト22が固定される。これにより、モータ2は、ロータ21の軸方向両端を第1モータベアリング281および第2モータベアリング282を介して、ハウジング5に回転可能に支持される。
【0064】
また、第1ギヤベアリング保持部517は、挿通孔514の辺縁部から軸方向一方側(+Y方向側)に延びる筒状である。第1ギヤベアリング保持部517には、第1ギヤベアリング341の外輪が固定される。そして、第1ギヤベアリング341の内輪には、モータシャフト22が固定される。
【0065】
第2ハウジング部材52の軸方向他方側(-Y方向側)には、第2ギヤベアリング保持部521が備えられる。第2ギヤベアリング保持部521および第1ギヤベアリング保持部517は、中心軸がモータ軸J2と一致する。そして、第2ギヤベアリング保持部521に第2ギヤベアリング342が保持される。第2ギヤベアリング342の内輪にはモータシャフト22が固定される。これにより、モータシャフト22は、第1ギヤベアリング341および第2ギヤベアリング342を介して、側板部512および第2ハウジング部材52に保持される。モータシャフト22は、第1モータベアリング281、第2モータベアリング282、第1ギヤベアリング341および第2ギヤベアリング342によって回転可能に支持される。
【0066】
第3ギヤベアリング保持部518は、側板部512から軸方向一方側(+Y方向側)に延びる筒状である。第3ギヤベアリング保持部518は、第1ギヤベアリング保持部517の下方側(-Z方向側)に設けられる。第3ギヤベアリング保持部518の中心軸は、中間軸J4と一致する。そして、第3ギヤベアリング保持部518には、第3ギヤベアリング343の外輪が固定される。また、第3ギヤベアリング343の内輪には、中間シャフト314が固定される。
【0067】
第2ハウジング部材52の軸方向他方側(-Y方向側)には、第4ギヤベアリング保持部522が備えられる。第3ギヤベアリング保持部518および第4ギヤベアリング保持部522は、中心軸が中間軸J4と一致する。そして、第4ギヤベアリング保持部522に第4ギヤベアリング344が保持される。また、第4ギヤベアリング344の内輪には中間シャフト314が固定される。これにより、中間シャフト314は、第3ギヤベアリング343および第4ギヤベアリング344を介して、側板部512および第2ハウジング部材52に保持される。
【0068】
側板開口519は、モータ収容部61とギヤ収容部62とを区画する側板部512に設けられる。側板開口519は、モータ収容部61とギヤ収容部62とを連通させる。側板開口519は、モータ収容部61内の下部領域に溜ったオイルCLをギヤ収容部62に移動させる。ギヤ収容部62に移動したオイルCLは、オイル溜りPに流入する(戻る)。
【0069】
図8は、第2ハウジング部材52を内側から見た斜視図である。第2ハウジング部材52は、第1ハウジング部材51の側板部512の軸方向一方側(+Y方向側)に固定される。第2ハウジング部材52の形状は、側板部512側に開口する凹形状である。第2ハウジング部材52の開口は、側板部512に覆われる。
図8に示すように、第2ハウジング部材52は、第2ギヤベアリング保持部521と、第4ギヤベアリング保持部522と、第2駆動軸通過孔523と、オイルリザーブ皿524と、オイル供給孔525とを有する。
【0070】
第2ギヤベアリング保持部521は、上述したとおり、軸方向他方側(-Y方向側)に突出する筒状であり、第2ギヤベアリング342の外輪が固定される。また、第4ギヤベアリング保持部522は、第2ギヤベアリング保持部521よりも下方側(-Z方向側)に配置される。第4ギヤベアリング保持部522は、軸方向他方側(-Y方向側)に突出する筒状であり、第4ギヤベアリング344の外輪が固定される。
【0071】
第2駆動軸通過孔523は、第2ハウジング部材52を軸方向に貫通する孔である。駆動軸Dsは、第1駆動軸通過孔515を回転可能な状態で貫通する。駆動軸Dsと第1駆動軸通過孔515との間は、オイルCLの漏れを抑制するため、オイルシール(不図示)が設けられる。駆動軸Dsの先端には、車輪を回転させる車軸(不図示)が接続される。第2駆動軸通過孔523は、軸方向から見て第1駆動軸通過孔515と重なる。これにより、差動装置32の軸方向(Y方向)の両端に配置される駆動軸Dsは、差動軸J5回りに回転する。
【0072】
図9は、ギヤ収容部62内の概略配置を示す図である。
図9に示すようにギヤ収容部62内の下部領域には、オイルCLが溜るオイル溜りPが設けられる。オイル溜りPには、差動装置32の一部が浸かる。オイル溜りPに溜るオイルCLは、差動装置32の動作によって掻きあげられて、ギヤ収容部62の内部に供給される。すなわち、オイルCLは、差動装置32のリングギヤ321が回転するときに、リングギヤ321の歯面によって掻きあげられる。
【0073】
図9に示す図において、第1ギヤ311およびリングギヤ321は、反時計回り方向に回転する。また、第2ギヤ312は、時計回り方向に回転する。モータ2が停止している状態からの動作時において、第2ギヤ312およびリングギヤ321の一部がオイルCLに浸かっている。そのため、第2ギヤ312およびリングギヤ321が回転することで、オイルCLは、第2ハウジング部材52の内周面に沿って上方に掻き揚げられる。そして、第2ギヤ312によって掻き揚げられたオイルCLは、第1ギヤ311、第2ギヤ312および第3ギヤ313に直接滴下される。減速装置31および差動装置32の潤滑に使用されたオイルCLは、滴下してギヤ収容部62の下側に位置するオイル溜りPに回収される。
【0074】
ギヤ収容部62に拡散されたオイルCLは、ギヤ収容部62内の減速装置31および差動装置32の各ギヤに供給されてギヤの歯面にオイルCLを行き渡らせ、潤滑に利用される。また、ギヤ収容部62に拡散されたオイルCLの一部は、第1ギヤベアリング341~第4ギヤベアリング344のそれぞれに供給され、潤滑に利用される。
【0075】
第2ハウジング部材52は、オイルリザーブ皿524および当て壁5100を有する。オイルリザーブ皿524は、上方に開口するとともに軸方向に延びる。そして、オイルリザーブ皿524は、ギヤ収容部62の軸方向両端にわたって形成される。そして、当て壁5100は、オイルリザーブ皿524の上方に配置される。リングギヤ321にて掻き揚げられたオイルCLが当て壁5100に接触すると、当て壁5100からオイルリザーブ皿524に流入する。
【0076】
図8に示すように、オイル供給孔525は、オイルリザーブ皿524の軸方向一方側(+Y方向側)の端部と第2ギヤベアリング保持部521の軸方向中央とを連結する。オイルリザーブ皿524に溜まったオイルCLは、オイル供給孔525を通って第2ギヤベアリング保持部521に流れる。オイル供給孔525を流れたオイルCLは、第2ギヤベアリング保持部521からモータシャフト22の中空部220に流入する。
【0077】
モータシャフト22の中空部220には、オイルCLが流入している。モータシャフト22の中空部220のオイルCLは、モータシャフト22の軸方向一方側(+Y方向側)の端部より流入し、モータ2に向かって流れる。なお、モータシャフト22の中空部220の内部には、モータシャフト22が回転したときに、オイルCLをモータ2側に送る溝等が形成されていてもよい。中空部220内を流れたオイルCLは、モータシャフト22に設けられた、オイル散布孔221(
図1参照)からコイルエンド271に向かって散布される。オイルCLによって、コイル27は冷却される。
【0078】
また、
図8に示すように、第2ハウジング部材52は、オイル供給溝526と、オイルガイド溝527と、を有する。オイル供給孔525から第2ギヤベアリング保持部521に供給されたオイルCLの残りは、第2ギヤベアリング保持部521に保持された第2ギヤベアリング342に供給される。これにより、第2ギヤベアリング342の潤滑がなされる。さらに、第2ギヤベアリング342を潤滑したオイルCLは、下方に流れる。第2ギヤベアリング保持部521の下方には、第4ギヤベアリング保持部522につながるオイルガイド溝527が設けられている。第2ギヤベアリング保持部521から下方に流れたオイルCLは、オイルガイド溝527を伝って第4ギヤベアリング保持部522に流入する。これにより、第4ギヤベアリング344の潤滑がなされる。その後、オイルCLは、下方に流れ、オイル溜りPに流入する。
【0079】
オイル供給溝526は、下方に延びる。また、リングギヤ321に掻き揚げられたオイルCLの一部は、オイルリザーブ皿524に到達する前に下方に向かう。下方に向かったオイルCLのさらに一部は、オイル供給溝526を伝って、差動装置32に流れる。これにより、差動装置32の各ギヤの潤滑がなされる。
【0080】
モータ2が停止しているとき、つまり、モータユニット1の停止時に、第2ギヤ312の一部およびリングギヤ321の一部がオイルCLに浸かる。また、モータユニット1の運転時には、第2ギヤ312がオイルCLに浸からず、リングギヤ321の一部がオイルCLに浸かる。例えば、収容空間6のオイル溜りPに充填されるオイルの油面は、
図9に示すように、モータユニット1の停止時には、油面P1であり、モータユニット1の運転時には、油面P1よりも低い油面P2である。このようにすることで、オイルCLで冷却および潤滑を行いつつ、オイルCLの撹拌による無駄なエネルギの消費を減らすことが可能である。
【0081】
第1ハウジング部材51は、ポンプ収容部54と、オイル配管部55とを有する。
図10は、ポンプ収容部54の拡大斜視図である。
図1等に示すように、ポンプ収容部54は、モータ収容部61よりも下方(-Z方向側)に配置される。すなわち、ポンプ収容部54は、モータ収容部61よりも鉛直方向下方かつギヤ収容部62に対してモータ軸J2の軸方向他方側に隣接して配置される。ポンプ収容部54は、ポンプ室540と、オイル流入孔541と、オイル流出孔542とを有する。すなわち、ハウジング5は、ポンプ4を収容してポンプ室540を内部に形成するポンプ収容部54を有する。
【0082】
ポンプ収容部54は、収容室周壁部543と、収容室側壁部544とをさらに有する。収容室周壁部543は、軸方向(Y方向)に延びる筒状である。収容室側壁部544は、第1ハウジング部材51の側板部512の一部であり、収容室周壁部543の軸方向一方側(+Y方向側)の端部の一部を塞ぐ。収容室周壁部543と収容室側壁部544とで囲まれる空間が、ポンプ室540である。収容室周壁部543は、軸方向他方側(-Y方向側)の端部が開口している。この開口は、上述したとおり、ポンプ4の蓋部44によって塞がれる。すなわち、ポンプ収容部54は、モータ軸J2の軸方向に延びる筒状の収容室周壁部543と、モータ軸J2の軸方向一方側の端部の一部を塞ぐ収容室側壁部544と、をさらに有する。
【0083】
オイル流入孔541は、収容室側壁部544に形成される。オイル流入孔541は、軸方向に延びる孔であり、
図5に示すように、軸方向一方側(+Y方向側)は、ギヤ収容部62に開口し、軸方向他方側(-Y方向側)は、ポンプ室540に開口する。すなわち、ハウジング5は、ギヤ収容部62とポンプ室540とをつなぐオイル流入孔541を有する。
【0084】
オイル流入孔541の中心は、吸込口421の中心軸J7と一致する。すなわち、オイル流入孔541の中心は、ポンプ軸J6の軸方向から見て、ポンプ軸J6対してポンプ軸J6の径方向外側かつ鉛直方向下側に位置する。上述したとおり、オイル流入孔541のポンプ室540側の開口には、ポンプ4の吸込口421が挿入される。また、オイル流入孔541のギヤ収容部62側の開口には、ストレーナ46の流出部462が取付けらえる。そのため、ポンプ4の吸込口421の中心も同様にポンプ軸J6からずれる。そのため、ポンプ4において、吐出口422を形成す場所を確保しやすい。
【0085】
ポンプ4およびポンプ収容部54をこのように構成することで、ポンプ4のポンプ収容部54内での周方向の位置決めが容易である。また、ポンプ4は、ポンプ収容部54の開口から軸方向に挿入するため、ポンプ5のハウジング5への取り付けが容易であり、モータユニット1の生産性を高めることができる。
【0086】
オイル流出孔542は、収容室周壁部543に形成される。オイル流出孔542は、ポンプ収容部54の外部に設けられるオイル配管部55に接続されている。すなわち、ハウジング5は、ポンプ室540とモータ収容部61とをつなぐオイル配管部55を有する。オイル配管部55は収容室周壁部543上のオイル流出孔542に接続される。ポンプ4の駆動により、ポンプ室540の内部にはオイル流入孔541(に取り付けられたストレーナ46)を介して、ギヤ収容部62のオイル溜りPからオイルCLが流入する。そして、ポンプ室540の内部にオイルCLが充満すると、ポンプ室540内のオイルCLの圧力が上昇する。これにより、オイルCLは、オイル流出孔542からオイル配管部55に流入する。すなわち、ポンプ4は、オイル流入孔541を介してギヤ収容部62内のオイルCLをポンプ室540内に吸い込むとともに、オイル流出孔542を介してポンプ室540内のオイルCLをオイル配管部55に送り出す。
【0087】
このように構成することで、ポンプ4を用いて、ギヤ収容部62内のオイルCLをモータ収容部61内のモータ2に供給できる。これにより、モータ2のベアリング等の潤滑が可能であり、モータ2の回転効率を高めることが可能である。また、オイルCLでモータ2を冷却することができるため、モータ2の温度上昇によるモータ2の効率の低下を抑制できる。
【0088】
オイル配管部55は、第1ハウジング部材51に設けられている。オイル配管部55の経路の途中には、オイルクーラ8が取り付けられる。すなわち、オイル配管部55の経路中には、オイル配管部55を通過するオイルCLを冷却するオイルクーラ8が設けられる。
図11は、オイルクーラ8が取り付けられるオイルクーラ取付部56の概略図である。オイル配管部55の経路の途中には、オイルクーラ8を取り付けるためのオイルクーラ取付部56を有する。オイルクーラ取付部56は、
図2、
図3、
図6等に示すオイルクーラ8を取り付ける。オイルクーラ取付部56は、給油孔561と、排油孔562と、給冷媒孔563と、排冷媒孔564と、を有する。
【0089】
給油孔561および排油孔562は、オイルクーラ8のオイル流路81と接続する。オイルCLは、給油孔561からオイルクーラ8の内部に流入し、排油孔562からオイル配管部55に戻る。
【0090】
給冷媒孔563および排冷媒孔564は、オイルクーラ8の冷媒流路82と接続する。冷媒は冷媒配管71から給冷媒孔563を介してオイルクーラ8の内部の冷媒流路82に流入し、排冷媒孔564から冷媒配管71に戻る。
【0091】
図11に示すように、オイルクーラ取付部56では、給油孔561と排油孔562とを結んだ線と、給冷媒孔563と排冷媒孔564とを結んだ線とが交差(直交)する。すなわち、ハウジング5はオイルクーラ8を取り付けるオイルクーラ取付部56をさらに有する。そして、オイルクーラ取付部56は、オイル流路81にオイルCLを流入させる給油孔561と、オイル流路81から排出されるオイルCLが流入する排油孔562と、冷媒流路82に冷媒を流入させる給冷媒孔563と、冷媒流路82から排出される冷媒が流入する排冷媒孔564と、を有する。そして、給油孔561と排油孔562とを結んだ線と、給冷媒孔563と排冷媒孔564とを結んだ線と、が交差する。
【0092】
このように構成することで、オイルクーラ8の内部のオイル流路81にオイルCLをいきわたらせることができるとともに、冷媒流路82の冷却水(冷媒)をいきわたらせることができる。このことから、オイルクーラ8におけるオイルCLの冷却効率を高めることが可能である。
【0093】
ポンプ4およびオイルクーラ8はハウジング5に取り付けられる。
図12は、ハウジング5の側面図である。
図12に示すように、ハウジング5に取り付けられたポンプ4およびオイルクーラ8は、ハウジング5の下端よりも上方に配置される。すなわち、ポンプ収容部54およびオイルクーラ8は、モータ軸J2の軸方向から見て、ハウジング5のギヤ収容部62の下端よりも上方に配置される。このように配置されることで、モータユニット1の鉛直方向(Z方向)の厚みを小さくできる。すなわち、モータユニット1の小型化が可能である。
【0094】
図1に示すように、オイル配管部55は、ポンプ収容部54とオイルクーラ8とを繋ぐとともに、オイルクーラ8とモータ収容部61の上部とを繋ぐ。
図3に示すように、オイル配管部55は、第1ハウジング部材51の内部に形成された管状の孔である。オイル配管部55は、モータ収容部61の上部に設けられたモータオイルリザーバ57にオイルCLを供給する。つまり、オイル配管部55は、モータ収容部61の上部に開口した供給孔551を備えており、供給孔551の下方にモータオイルリザーバ57が配置される。なお、ポンプ室540からオイル配管部55に供給されるオイルCLは、ポンプ室540の内部でポンプ4によって加圧される。そのため、ポンプ室540から上方に延びるオイル配管部55にオイルCLを流すことができる。
【0095】
ここで、モータオイルリザーバ57の詳細について図面を参照して説明する。
図13は、モータオイルリザーバ57およびモータ2の配置を示す斜視図である。
図14は、モータオイルリザーバ57およびモータ2の配置を示す平面図である。
図3、
図13等に示すように、モータオイルリザーバ57は、上部に開口した容器である。モータオイルリザーバ57は、底面に第1供給孔571と、第2供給孔572と、第3供給孔573と、を有する。オイル配管部55からモータオイルリザーバ57に供給されたオイルCLは、第1供給孔571、第2供給孔572および第3供給孔573から鉛直方向下方(-Z方向)に滴下される。
【0096】
図1、
図13、
図14に示すように、第1供給孔571は、モータ2のコイル27のコイルエンド271の上方に配置される。第1供給孔571から滴下されたオイルCLによって、コイル27が冷却される。
【0097】
コイルエンド271には、モータオイルリザーバ57からの滴下により径方向外側からオイルCLが供給されるとともに、モータシャフト22のオイル散布孔221からの散布により径方向内側からオイルCLが供給される。これにより、コイル27の冷却効率を高めることが可能である。
【0098】
また、
図1、
図13、
図14に示すように、第2供給孔572は、第1モータベアリング保持部531および第2モータベアリング保持部516の上方に配置される。第2供給孔572から滴下されるオイルCLは、第1モータベアリング281および第2モータベアリング282に滴下され、第1モータベアリング281および第2モータベアリング282はオイルCLによって潤滑される。
【0099】
さらに、
図13、
図14に示すように、第3供給孔573は、モータ2のステータコア26の上方に設けられる。第3供給孔573から滴下されるオイルCLは、ステータコア26に滴下される。そして、ステータコア26にオイルCLは、ステータコア26の隙間から内部に浸入するとともにステータコア26の外面を流れる。これにより、ステータコア26およびステータコア26に掛けまわされたコイル27を冷却することができる。
【0100】
モータオイルリザーバ57から滴下され、モータ2を冷却したオイルCL、および、第1モータベアリング281および第2モータベアリング282を潤滑したオイルCLは、モータ収容部61の下部に流れる。上述したとおり、第1ハウジング部材51の側板部512には、側板開口519が設けられている。モータ収容部61の下部に流れたオイルCLは、側板開口519を通って、ギヤ収容部62に流入する。そして、ギヤ収容部62に流入したオイルCLは、ギヤ収容部62の下部のオイル溜りPに流入する。
【0101】
このようにして、オイルCLは、ポンプ4によってモータ収容部61に強制的に送られて、モータ2を冷却するとともに、第1モータベアリング281および第2モータベアリング282の潤滑を行う。
【0102】
本実施形態によれば、ポンプ4およびオイルクーラ8は、軸方向から見て、ハウジング5の下端よりも上方に配置される。すなわち、ポンプ4およびオイルクーラ8が、ハウジング5の下端からさらに下側に飛び出すことがない。このため、上下方向において、モータユニット1を小型化することができる。
【0103】
ポンプ4およびオイルクーラ8は、モータ収容部61の鉛直方向下側に位置する。モータユニット1は、例えば車両のボンネット内に配置される。また、モータユニット1において、ポンプ4およびオイルクーラ8は、ハウジング5に対して突出する突起物である。本実施形態によれば、ポンプ4およびオイルクーラ8をモータ収容部61の鉛直方向下側に配置することで、車両が事故などによって対象物に衝突した場合であっても、突起物であるポンプ4およびオイルクーラ8が、対象物に突き刺さることを抑制できる。
【0104】
本実施形態によれば、ポンプ4およびオイルクーラ8が、ハウジング5の外周面に固定される。このため、ポンプ4およびオイルクーラ8が、ハウジング5の外部の構造物に固定される場合と比較して、モータユニット1の小型化に寄与できる。加えて、ポンプ4およびオイルクーラ8が、ハウジング5の外周面に固定されることで、オイル配管部55をハウジング5の内部に配置することができる。このことからも、モータユニット1を小型化できる。
【0105】
<7. インバータユニット7>
インバータユニット7は、モータ2と電気的に接続される。インバータユニット7は、モータ2に供給される電流を制御する。
図2に示すように、インバータユニット7は、ハウジング5に固定される。
【0106】
本実施形態によれば、インバータユニット7は、軸方向から見て、少なくとも一部がギヤ部3のリングギヤ321に重なる。このため、軸方向から見た投影面積をギヤ部3の各ギヤの外形に沿ってできるだけ小さくした場合であっても、軸方向から見てインバータユニット7がハウジング5に重なる構成が実現できる。結果的に、モータユニット1の軸方向の投影面積が大きくなることを抑制して、モータユニット1を小型化することができる。
【0107】
本実施形態によれば、インバータユニット7は、鉛直方向から見て、モータ軸J2を挟んでオイルクーラ8と反対側に位置する。このため、モータユニット1の水平方向に沿う寸法を小さくすることが可能となり、モータユニット1の小型化を図ることができる。
【0108】
<8. 変形例等>
図15は、第1ハウジング部材51の側板部512の斜視図である。
図16は、オイルリザーブ皿524の側板部512との接続部分を拡大した斜視図である。
図17は、第1ハウジング部材51の挿通孔514および第3ギヤベアリング保持部518を拡大した斜視図である。
【0109】
側板部512のオイルリザーブ皿524の下方には、オイル流動溝5110が設けられる。オイル流動溝5110は、第1駆動軸通過孔515に向かって延びるとともに、下方に開口している。オイル流動溝5110の下方には、差動装置32が配置される。オイル流動溝5110には、オイルリザーブ皿524からあふれたオイルCLが流入する。そして、オイル流動溝5110を流れるオイルCLは、開口から差動装置32にオイルCLを滴下する。これにより、オイルCLによって差動装置32が潤滑される。また、オイル流動溝5110の下方には、差動装置32に沿って軸方向に延びるオイル貯留溝5111が設けられる。オイル貯留溝5111には、差動装置32の回転によって飛散したオイルCLが貯留される。オイル貯留溝5111に貯留されたオイルCLは、再度、差動装置32の潤滑に利用されてもよいし、オイル溜りPに流されてもよい。
【0110】
また、オイルリザーブ皿524の側方で当て壁5100の下方には、オイル誘導孔5112が設けられる。オイル誘導孔5112は、挿通孔514につながっている。すなわち、オイル誘導孔5112は、挿通孔514にオイルCLを誘導する。オイル誘導孔5112から挿通孔514に誘導されたオイルCLは、第2モータベアリング保持部516および第1ギヤベアリング保持部517にそれぞれ流入する。そして、第2モータベアリング282および第1ギヤベアリング341を潤滑する。
【0111】
さらに、
図16に示すように、側板部512は、第1オイル導入孔5113および第2オイル導入孔5114を有する。第1オイル導入孔5113は、第3ギヤベアリング保持部518の上方に設けられて、モータ収容部61とギヤ収容部62とを繋ぐ。第1オイル導入孔5113は、モータ収容部61のオイルCLを第3ギヤベアリング保持部518の上方に導く。これにより、第3ギヤベアリング保持部518に保持された第3ギヤベアリング343にオイルCLを供給して、潤滑可能である。また、第2オイル導入孔5114は、軸方向から見て、第3ギヤベアリング保持部518の内部に開口し、モータ収容部61とギヤ収容部62とを繋ぐ。第2オイル導入孔5114は、モータ収容部61のオイルCLを第3ギヤベアリング保持部518に導く。これにより、第3ギヤベアリング保持部518に保持された第3ギヤベアリング343にオイルCLを供給して、潤滑可能である。
【0112】
図18は、モータオイルリザーバ58およびモータ2の配置を示す斜視図である。
図19は、モータオイルリザーバ58およびモータ2の配置を示す平面図である。
【0113】
図18、
図19に示すように、モータオイルリザーバ58は、モータオイルリザーバ57よりも小さい。より具体的には、平面視において、モータオイルリザーバ57は、モータ2の上部に、モータ軸J2を挟んで両側に配置されていたのに対し、モータオイルリザーバ58は、モータ軸J2の一方側にのみ配置される構成である。
【0114】
モータオイルリザーバ58は、第1供給孔581と、第2供給孔582とを有する。第1供給孔581は、モータオイルリザーバ57の第1供給孔581と同じく、コイルエンド271の上方に配置される。また、第2供給孔582は、モータオイルリザーバ57の第2供給孔582と同じく第1モータベアリング保持部531および第2モータベアリング保持部516の上方に配置される。
【0115】
第1供給孔581から滴下されたオイルCLは、コイルエンド271に滴下される。そして、コイルエンド271に滴下されたオイルCLによって、コイル27が冷却される。
【0116】
第2供給孔582から滴下されるオイルCLは、第1モータベアリング281および第2モータベアリング282に滴下され、第1モータベアリング281および第2モータベアリング282はオイルCLによって潤滑される。
【0117】
また、モータオイルリザーバ58は、モータオイルリザーバ57に比べて、小さいため、取り付け場所の制約がモータオイルリザーバ57に比べて少ない。なお、モータオイルリザーバ58は、モータオイルリザーバ57と異なり、第3供給孔を備えない。例えば、ステータコア26にオイルCLを直接滴下したくない構成の場合に、用いることが可能である。しかしながら、これに限定されず、ステータコア26の上方に配置された、第3供給孔を備えていてもよい。
【0118】
以上に、本発明の実施形態および変形例を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明のモータユニットは、例えば、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)および電気自動車(EV)の駆動用モータとして用いることができる。
【符号の説明】
【0120】
1 モータユニット
2 モータ
21 ロータ
22 モータシャフト
220 中空部
221 オイル散布孔
23 ロータコア
24 ロータマグネット
25 ステータ
26 ステータコア
261 磁極歯
27 コイル
271 コイルエンド
281 第1モータベアリング
282 第2モータベアリング
3 ギヤ部
31 減速装置
311 第1ギヤ
312 第2ギヤ
313 第3ギヤ
314 中間シャフト
32 差動装置
321 リングギヤ
33 パーキング機構
331 パーキングギヤ
332 回転阻止部
333 パーキングモータ
341 第1ギヤベアリング
342 第2ギヤベアリング
343 第3ギヤベアリング
344 第4ギヤベアリング
4 ポンプ
41 ポンプモータ
411 ステータ
412 ロータ
413 ポンプシャフト
42 圧縮部
420 内部空間
421 吸込口
422 吐出口
43 ポンプケース
44 蓋部
45 冷却フィン
46 ストレーナ
461 流入開口
462 流出部
5 ハウジング
51 第1ハウジング部材
510 隔壁部
5100 当て壁
511 周壁部
5110 オイル流動溝
5111 オイル貯留溝
5112 オイル誘導孔
5113 第1オイル導入孔
5114 第2オイル導入孔
512 側板部
513 突出部
514 挿通孔
515 第1駆動軸通過孔
516 第2モータベアリング保持部
517 第1ギヤベアリング保持部
518 第3ギヤベアリング保持部
519 側板開口
52 第2ハウジング部材
521 第2ギヤベアリング保持部
522 第4ギヤベアリング保持部
523 第2駆動軸通過孔
524 オイルリザーブ皿
525 オイル供給孔
526 オイル供給溝
527 オイルガイド溝
53 閉塞部材
531 第1モータベアリング保持部
54 ポンプ収容部
540 ポンプ室
541 オイル流入孔
542 オイル流出孔
543 収容室周壁部
544 収容室側壁部
55 オイル配管部
551 供給孔
56 オイルクーラ取付部
561 給油孔
562 排油孔
563 給冷媒孔
564 排冷媒孔
57 モータオイルリザーバ
571 第1供給孔
572 第2供給孔
573 第3供給孔
58 モータオイルリザーバ
581 第1供給孔
582 第2供給孔
6 収容空間
61 モータ収容部
62 ギヤ収容部
7 インバータユニット
71 冷媒配管
8 オイルクーラ
80 フィン
81 オイル流路
82 冷媒流路
811 流入配管
812 バイパス配管
813 流出配管
CL オイル
Ds 駆動軸
J2 モータ軸
J4 中間軸
J5 差動軸
J6 ポンプ軸
J7 中心軸
P オイル溜り