(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】硬化方法、及び硬化システム
(51)【国際特許分類】
C08J 7/04 20200101AFI20230711BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20230711BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230711BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20230711BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20230711BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C08J7/04 A CEV
B05C9/12
B05D3/00 D
B05D3/06 102Z
B05D7/02
B05D7/24 301T
C08J7/04 CFD
(21)【出願番号】P 2019081884
(22)【出願日】2019-04-23
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀口 雷太
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-055664(JP,A)
【文献】特開2011-156790(JP,A)
【文献】特開2018-177840(JP,A)
【文献】特開2003-089126(JP,A)
【文献】特開平10-036540(JP,A)
【文献】特開平10-067874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/00-7/18
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00-7/26
B05C 7/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル製、またはポリカーボネート製の基材の表面に塗られたアクリル系光硬化性樹脂に放電ランプの紫外線を照射して硬化させる硬化方法において、
波長200nmから波長450nmの波長域の積算放射照度を「1」とした場合に、波長200nmから波長230nmの第1波長域の積算放射照度比率が「0.017」以下であり、なおかつ、波長230nmから波長300nmの第2波長域の積算放射照度比率が「0.15」以上となるように前記紫外線を照射する
ことを特徴とする硬化方法。
【請求項2】
前記第1波長域の積算放射照度比率が「0.008」以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の硬化方法。
【請求項3】
前記第1波長域の積算放射照度比率が「0.001」以下である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の硬化方法。
【請求項4】
前記光硬化性樹脂は、光重合性モノマー、及び光重合性オリゴマーの混合物を主成分とした樹脂材である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の硬化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化方法、及び硬化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂に紫外線を照射して硬化する光硬化技術が広く知られており、印刷やコーティング、貼り合わせなどの各種の分野に広く用いられている。また、光硬化技術分野において、紫外線による基材の黄変等の変色を防止するために、紫外線が基材に直接当たらないようにマスク等で遮蔽したり、300nm以下の波長の光を波長選択フィルタ等でカットしたりする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マスクで遮蔽する場合、基材における光硬化性樹脂の塗布範囲の大きさが増大したり、その範囲の形状が複雑化したりすると、マスクのコストが増大し、また基材が露出した部分のマスキング工程の手間が大きくなる、という問題がある。
また300nm以下の波長の光をカットする場合、紫外線の波長域の大部分がカットされてしまうため、エネルギー効率が低下し、また光硬化性樹脂の材料によっては硬化性が悪くなる、という問題がある。
【0005】
本発明は、基材の変色を低コストで抑制しつつ、光硬化性樹脂を効率良く硬化させることができる硬化方法、及び硬化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリ塩化ビニル製、またはポリカーボネート製の基材の表面に塗られたアクリル系光硬化性樹脂に放電ランプの紫外線を照射して硬化させる硬化方法において、波長200nmから波長450nmの波長域の積算放射照度を「1」とした場合に、波長200nmから波長230nmの第1波長域の積算放射照度比率が「0.017」以下であり、なおかつ、波長230nmから波長300nmの第2波長域の積算放射照度比率が「0.15」以上となるように前記紫外線を照射することを特徴とする。
【0007】
本発明は、上記硬化方法において、前記第1波長域の積算放射照度比率が「0.008」以下である、ことを特徴とする。
【0008】
本発明は、上記硬化方法において、前記第1波長域の積算放射照度比率が「0.001」以下である、ことを特徴とする。
【0009】
本発明は、上記硬化方法において、前記光硬化性樹脂は、光重合性モノマー、及び光重合性オリゴマーの混合物を主成分とした樹脂材である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明は、ポリ塩化ビニル製、またはポリカーボネート製の基材の表面に塗られたアクリル系光硬化性樹脂に放電ランプの紫外線を照射して硬化させる光源装置と、前記アクリル系光硬化性樹脂に照射される紫外線の分光特性を制御する光学フィルタと、を備え、前記光源装置の紫外線が前記アクリル系光硬化性樹脂に前記光学フィルタを介して照射されることで、波長200nmから波長450nmの波長域の積算放射照度を「1」とした場合に、波長200nmから波長230nmの第1波長域の積算放射照度比率が「0.017」以下であり、なおかつ、波長230nmから波長300nmの第2波長域の積算放射照度比率が「0.15」以上となるように、前記光硬化性樹脂に紫外線が照射されることを特徴とする硬化システムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基材の変色を低コストで抑制しつつ、光硬化性樹脂を効率良く硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るコーティングシステムの構成を示す図である。
【
図2】光学フィルタの分光透過特性を示す図である。
【
図3】基材の変色、及び光硬化性樹脂の硬化状態に係る実験結果を示す図である。
【
図4】光学フィルタを用いた場合の積算光量と色差変化との関係を調べた実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るコーティングシステム1の構成を示す図である。
コーティングシステム1は、光硬化技術を用いて、基材2の表面2Aを光硬化性樹脂4でコーティング(例えば、ハードコート)するシステムであり、
図1に示すように、基材2を搬送面6に沿って搬送方向Aに搬送する搬送機構(図示せず)と、基材2の表面2Aに紫外線を照射する紫外線照射装置10と、を備える。
基材2は適宜の形状に形成された樹脂材である。また基材2の表面2Aには所定のコーティング範囲Qに光硬化性樹脂4が予め塗られている。なお、光硬化性樹脂4の塗工には適宜の塗工装置を用いることができる。
【0014】
光硬化性樹脂4は、紫外線照射装置10が照射する紫外線を吸収する特性を有し、光硬化技術を用いたコーティングに用いられる任意の樹脂材料である。かかる光硬化性樹脂4には、光重合性モノマーや光重合性オリゴマーを主成分とし重合開始剤が添加された樹脂材であり、またUV吸収剤や光安定剤も適宜に添加される。光硬化性樹脂4にはアクリル系樹脂が好適に用いられる。
【0015】
図1において、光源装置22は、窒素パージボックス20の内部において、基材2に紫外線を照射する装置であり、紫外線を放射する光源23と、基材2に照射される紫外線の配光を制御する配光制御光学系24と、を備える。
光源23には、光硬化性樹脂4が吸収する紫外波長域の光を放射する放電ランプが用いられる。かかる放電ランプには、高圧水銀ランプやエキシマランプ、キセノンランプ等が用いられる。
配光制御光学系24は、照度ムラを抑えて基材2の表面2Aに紫外線が照射されるように配光制御する。
【0016】
光学フィルタ26は、光源装置22から基材2に照射される紫外線の分光特性を制御する光学部材である。本実施形態では光学フィルタ26が紫外線の分光特性を制御することで、当該基材2のコーティング範囲Q以外での紫外線照射による変色を抑制しつつ、コーティング範囲Qの光硬化性樹脂4を確実に硬化させている。光学フィルタ26による分光特性の制御については後述する。
【0017】
なお、
図1に示すコーティングシステム1において、各部を1つの筐体に収めて1台の装置として構成してもよい。
【0018】
次いで、上記光学フィルタ26による分光特性の制御について詳述する。
発明者は、光源装置22が基材2に照射する紫外線の分光分布を制御することで、基材2の変色を抑制しながらも光硬化性樹脂4を硬化可能であることを実験によって見出しており、この実験について以下に説明する。
【0019】
<実験>
本実験では、光硬化性樹脂4が塗られた基材2に光源装置22の紫外線を光学フィルタ26を通して照射し、基材2の変色の有無、及び光硬化性樹脂4の硬化状態を調べた。
光源装置22の光源23には、ガラス管が普通石英であり、8kWクラスの高圧水銀ランプを用い、基材2に照射される紫外線の照度は照度計(岩崎電気株式会社製 UVPF-A1)を用いて測定した。
なお、高圧水銀ランプの1つにガラス管がオゾンレス管のものがある。しかしながら、オゾンレス管の高圧水銀ランプでは、当該オゾンレス管が高温になるにつれて紫外線の分光特性に短波長シフトが生じ、光硬化性樹脂4に照射される紫外線の分光特性が不安定になる。このため、本実験では、オゾンレス管の高圧水銀ランプではなく、分光特性が比較的安定した普通石英ガラス管の高圧水銀ランプを用いることとした。
【0020】
基材2にはポリ塩化ビニル(PVC)を用いた。
基材2の変色は、紫外線照射前と紫外線照射後の基材2の表面2Aのそれぞれを分光測色計(コニカミノルタ株式会社製 CM-700d)を用いて色差を測定した。測定結果として、色差の値である「ΔE*ab」が2以上を変色していると判定した。
【0021】
光硬化性樹脂4には、光重合性モノマー、及び光重合性オリゴマーの混合物を主成分とする試料として藤倉化成株式会社製の塗料(HH9986U-N7)を用いた。サンプルは、塗料の推奨硬化条件にしたがって作成した。具体的には、光硬化性樹脂4を約10μmの膜厚で基材2の表面2Aにバーコータを用いて塗工し、その後、60℃で5分間に亘って予備乾燥を行った。
【0022】
紫外線照射後の光硬化性樹脂4の硬化状態は触指により評価し、光硬化性樹脂4の表面にひっかかりが無い場合に硬化状態が良好である(すなわち、確実に硬化している)と評価した。
【0023】
光源装置22による紫外線の照射条件には、光源装置22の紫外線を光学フィルタ26を通さずにサンプルに照射したときに当該サンプルの光硬化性樹脂4が良好に硬化する条件を用いた。かかる照射条件には、紫外線の照度や、光源装置22とサンプルの離間距離、サンプルの搬送速度(すなわち照射時間)、積算光量などがある。積算光量は、サンプルに照射される紫外線の照度を照射時間に亘って累積した値である。
本実験で用いた照射条件は、照度が300mW/cm2、離間距離が140mm、搬送速度が1.8m/分、積算光量が1000mJ/cm2であり、当該照射条件で各サンプルに紫外線を照射した。
そして、光源装置22とサンプルとの間に光学フィルタ26を配置し、同じ照射条件の下、サンプルに紫外線を照射することで、光学フィルタ26を用いたときの変色、及び硬化状態を評価した。
【0024】
光学フィルタ26には、UV-25(東芝硝子株式会社製)、UV-29(旭テクノグラス株式会社製)、U330(HOYA株式会社製)UVCF2024(岩崎電気株式会社製)、ホウケイ酸ガラス製フィルタ(信越石英株式会社製)、無アルカリガラス製フィルタ(信越石英株式会社製)、及びオゾンレス石英M235(信越石英株式会社製)の7種類を用いた。これらの分光透過特性を
図2に示す。
【0025】
図3は、実験結果を示す図である。
なお、同図において、「積算放射照度」は、各波長範囲における放射照度を単純に積算した値であり、その単位はmW/cm
2である。
【0026】
同図に示されるように、光学フィルタ26を用いない場合、光硬化性樹脂4の硬化状態は良好であるものの、基材2の表面2Aにおいては多くの黄変が発生することが分かる。
これに対して、上記光学フィルタ26のどれを用いても、黄変の発生が少なく抑えられていることが分かる。これらの光学フィルタ26は全て、波長200nmから波長230nmの第1波長域A1を減衰させる点で共通していることから、この第1波長域A1が基材2の変色に比較的大きな影響を及ぼしており、この第1波長域A1の照度が抑えられることで変色が少なくなったと推察される。
【0027】
また
図3の実験結果をみると、紫外線の波長域と一般的に言われる波長200nmから波長450nmの波長域(以下、「標準紫外線波長域」と言う)における積算放射照度を「1」としたときに第1波長域A1の積算放射照度比率が少なくとも「0.017」以下であれば、黄変が少なくなることが分かる。また光学フィルタ26が「M235」以外の場合には、第1波長域A1の積算放射照度比率が「0.008」以下であれば、黄変が少なくなる。特に、第1波長域A1の積算放射照度比率が「0.001」以下であれば、
図3に示す全ての光学フィルタ26のいずれにもいても黄変が抑えられる。
この第1波長域A1の光は、標準紫外線波長域の他の波長域の光と比べて光エネルギー(E)が大きく、光硬化性樹脂4の硬化性を高めるのに寄与する。したがって、第1波長域A1の積算放射照度が「ゼロ」でないことが望ましい。
【0028】
また発明者は、普通石英ガラス管にオゾンレスコーティングを施した高圧水銀ランプを光源23とし光学フィルタ26を用いずに、同じ照射条件で紫外線を照射する比較実験も行っている。この比較実験では、標準紫外線波長域の積算放射照度を「1」とした場合に第1波長域A1の積算放射照度比率が「0.029」という測定結果が得られており、
図3における「光学フィルタなし」の場合に比べ、第1波長域A1の積算放射照度比率は十分に小さくなっていた。しかしながら、かかる積算放射照度でも変色は多いという結果になった。したがって、第1波長域A1の積算放射照度比率が少なくとも「0.029」以上になると変色が多くなると推察される。
【0029】
発明者は、光学フィルタ26を用いた場合の積算光量と色差変化との関係を実験により調べた。この実験結果を
図4に示す。
図4に示されるように、光学フィルタ26が無い場合には積算光量の増加に伴って色差が大きく増加し、より多く黄変が顕著に発生する。これに対して、光学フィルタ26を用いた場合には、積算照度が増加に対して色差変化が小さく、黄変が十分に抑えられることが分かる。
【0030】
次いで前掲
図3において光硬化性樹脂4の硬化状態の結果をみると、光学フィルタ26に「UV-29」、及び「無アルカリガラス製フィルタ」を用いた場合には、硬化状態が良好にはなっておらず、必ずしも全ての光学フィルタ26で良好な硬化状態が得られるとは限らないことが分かる。
標準紫外線波長域において上記第1波長域A1に次いで光エネルギー(E)が大きく、また、数多くの光硬化性樹脂で吸収がみられる波長域である波長230nmから波長300nm(以下、「第2波長域A2」と言う)に着目すると、この第2波長域A2の積算放射照度比率が標準紫外線波長域に対して「0.146」以上の場合には硬化状態が良好であるものの、「0.118」以下のときには硬化状態が良好でなくなる。したがって、第2波長域A2の積算放射照度比率が少なくとも「0.146」以上であれば硬化状態は良好になると推察され、その積算放射照度比率が「0.15」以上であれば確実に良好な硬化状態が得られると推察される。
【0031】
ここで、光重合開始剤の吸収波長域が主に、第2波長域A2の上限である300nmよりも長波長側に存在していることを考えると、光硬化性樹脂4の硬化状態には、重合開始剤の作用だけではなく光硬化性樹脂4の主成分による第2波長域A2の吸収作用が大きく影響していると言える。
そして、紫外線照射時に第2波長域A2の積算放射照度比率が「0.15」以上となることで、良好な硬化状態を得るのに十分なエネルギーが光硬化性樹脂4の主成分に与えられ、波長300nm以下の光をカットする従来技術に比べ、効率良く光硬化性樹脂4を硬化させることができる。
【0032】
発明者は、基材2の樹脂材をポリカーボネート(PC)に変えて同じ実験を行っており、硬化状態と変色についてポリ塩化ビニルと同様な結果が得られることを確認している。
さらに発明者は、基材2の樹脂材をポリアミド系合成繊維樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン(PP)、及びアクリル樹脂に変えた実験、及び、基材2の材料を紙に変えた実験についても行っており、これら全ての実験において、第1波長域A1の積算放射照度比率が「0.017」以下であっても多くの変色が確認された。
【0033】
以上のことから、次の事項が導かれる。
すなわち、ポリ塩化ビニル又はポリカーボネートから成る基材2の表面2Aに塗られた光硬化性樹脂4に、普通石英ガラス管の高圧水銀ランプが放射する紫外線を光学フィルタ26を介さずに照射することで当該光硬化性樹脂4が硬化するときの積算光量に対し、光学フィルタ26による紫外線の分光特性制御によって、上記第1波長域A1の積算放射照度を低めることで基材2の変色を抑制できる。
また上記照射条件に対し、光学フィルタ26によって紫外線の分光特性が制御されることで上記第2波長域A2の積算放射照度が低められ過ぎないようにすることで、光硬化性樹脂4を良好に硬化できる。
特に、標準紫外線波長域の積算放射照度を「1」とした場合に上記第1波長域A1の積算放射照度比率が「0.017」以下であり、なおかつ、上記第2波長域A2の積算放射照度比率が「0.15」以上であるときには、基材2の変色が確実に抑えられ、光硬化性樹脂4を確実に硬化できる。
【0034】
図2に示した各光学フィルタ26の分光透過特性を比較すると、フィルタ「UVCF2024」が波長240nm近傍に急峻なカットオフ波長を有することから、第1波長域A1の積算放射照度の抑制、及び第2波長域A2の積算放射照度の維持を最も効果的に実現できることが分かる。
【0035】
上述したコーティングシステム1では、光学フィルタ26によって紫外線の分光特性が制御されることで、第1波長域A1の積算放射照度、及び第2波長域A2の積算放射照度のそれぞれが基材2の変色を確実に抑え、かつ光硬化性樹脂4を確実に硬化できる値に維持されている。
これにより、従前のように、基材2の表面2Aにマスクを設けずとも紫外線照射による基材2の変色を抑え、かつ光硬化性樹脂4を効率良く確実に硬化させることができる。
【0036】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0037】
本実施形態によれば、ポリ塩化ビニル製、またはポリカーボネート製の基材2の表面に塗られた光硬化性樹脂4に光源装置22が放射する紫外線を照射して硬化させる際に、波長200nmから波長450nmの標準紫外線波長域の積算放射照度を「1」とした場合に、波長200nmから波長230nmの第1波長域A1の積算放射照度比率が「0.017」以下であり、なおかつ、波長230nmから波長300nmの第2波長域A2の積算放射照度比率が「0.15」以上となるように紫外線を照射した。
これにより、基材2の変色を確実に抑えることができ、また光硬化性樹脂4を確実に硬化させることができる。したがって、紫外線照射時に基材2の表面2Aにマスクを設ける必要がないので、コストを抑えることができる。また第2波長域A2の光が光硬化性樹脂4に照射されることで、波長300nm以下をカットする従来技術に比べ、光硬化性樹脂4を効率良く硬化させることができる。
【0038】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、変形及び応用が可能である。
【0039】
上述した実施形態において、光硬化性樹脂4を硬化させる硬化システムとしてコーティングシステム1を例示したが、これに限らず、基材2の表面2Aに光硬化性樹脂4を塗布して硬化させる適宜の硬化システムに本発明を適用できる。
【0040】
上述した実施形態において、各種の数値は、特段の断りがなされていない限り、これらの数値の周辺の範囲を意識的に除外するものではなく、同一の作用効果、或いは、臨界的意義を有する限りにおいて、その周辺の範囲(いわゆる、均等の範囲)を含むものである。
【符号の説明】
【0041】
1 コーティングシステム(硬化システム)
2 基材
4 光硬化性樹脂
10 紫外線照射装置
20 窒素パージボックス
22 光源装置
23 光源(放電ランプ)
26 光学フィルタ
A1 第1波長域
A2 第2波長域
Q コーティング範囲