IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】レジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/32 20060101AFI20230711BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20230711BHJP
   C08F 220/22 20060101ALI20230711BHJP
   C08F 212/08 20060101ALI20230711BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G03F7/32
G03F7/039 501
C08F220/22
C08F212/08
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019086698
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020183975
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 学
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/32
G03F 7/039
C08F 220/22
C08F 212/08
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】
(一般式(I)中、Rは、塩素原子、フッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、Rは、フッ素原子の数が3以上11以下の有機基であり、RおよびRは、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、RおよびRは互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される単量体単位(A)と、
下記一般式(II):
【化2】
(一般式(II)中、R、R、RおよびRは、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R、R、RおよびRは互いに同一でも異なっていてもよく、Rは、水素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、pおよびqは、0以上5以下の整数であり、p+q=5である。)で表される単量体単位(B)とを有する重合体と、溶剤とを含むポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
露光された前記レジスト膜を、下記一般式(V):
10-COO-R11・・・(V)
(一般式(V)中、R10は、フッ素原子の数が6以上12以下のフルオロアルキル基であり、R11は、炭素原子の数が1以上4以下である非置換のアルキル基である。)で表されるフルオロエステルを含む現像液を用いて現像する工程を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項2】
前記重合体の重量平均分子量(Mw)が30,000超500,000未満である、請求項1に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項3】
前記重合体の分子量分布(Mw/Mn)が2.3未満である、請求項1または2に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項4】
前記R11がメチル基またはエチル基である、請求項1~3の何れかに記載のレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターンを形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造等の分野において、電子線などの電離放射線や紫外線(極端紫外線(EUV:Extreme ultraviolet)を含む。)などの短波長の光(以下、電離放射線と短波長の光とを合わせて「電離放射線等」と称することがある。)の照射により主鎖が切断されて現像液に対する溶解性が増大する重合体が、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用し得る重合体として、フッ素原子の数が5以上7以下の有機基を有するα-クロロアクリル酸フルオロエステル単位を含有する所定の重合体が提案されている。ここで、特許文献1では、当該重合体と溶剤を含むポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、得られたレジスト膜について露光および現像を行っている。そして、特許文献1では、上記現像に、CFCFHCFHCFCF等の表面張力が17mN/m以下である現像液を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/123667号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、フッ素原子を含有する上記従来の重合体を用いたレジストパターンの形成においては、露光に際し電離放射線等の照射量を低減した場合であっても、続く現像においてレジスト膜の露光部が現像液に容易に溶解することが求められていた。
即ち、上記従来のレジストパターン形成方法には、電離放射線等の照射量を抑えて効率よくレジストパターンを形成することが求められていた。
【0006】
従って、本発明は、電離放射線等の照射量を抑えて効率よくレジストパターンを形成し得る、レジストパターン形成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、フッ素原子を含む所定の重合体を含有するポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成に際し、現像液として所定のフルオロエステルを用いて現像を行うことにより、電離放射線等の照射量を抑えた場合であっても良好にパターン形成し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のレジストパターン形成方法は、下記一般式(I):
【化1】
(一般式(I)中、Rは、塩素原子、フッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、Rは、フッ素原子の数が3以上11以下の有機基であり、RおよびRは、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、RおよびRは互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される単量体単位(A)と、
下記一般式(II):
【化2】
(一般式(II)中、R、R、RおよびRは、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R、R、RおよびRは互いに同一でも異なっていてもよく、Rは、水素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、pおよびqは、0以上5以下の整数であり、p+q=5である。)で表される単量体単位(B)とを有する重合体と、溶剤とを含むポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、露光された前記レジスト膜を、下記一般式(V):
10-COO-R11・・・(V)
(一般式(V)中、R10は、フッ素原子の数が6以上12以下の有機基であり、R11は、非置換の炭化水素基である。)で表されるフルオロエステルを含む現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とする。このように、上述した所定の重合体と溶剤とを含むポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成に際し、上述した一般式(V)で表されるフルオロエステル(以下、フルオロエステル(V)と略記する場合がある。)を現像液として使用すれば、電離放射線等の照射量を抑えて効率良くレジストパターンを形成することができる。
なお、本発明において、一般式(II)中のpが2以上の場合には、複数あるRは互いに同一でも異なっていてもよく、また、一般式(II)中のqが2以上の場合には、複数あるRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0009】
ここで、本発明のレジストパターン形成方法では、前記重合体の重量平均分子量(Mw)が30,000超500,000未満であることが好ましい。重合体の重量平均分子量が上記範囲内であれば、電離放射線等の照射量を一層抑えて更に効率良くレジストパターンを形成可能であると共に、得られるレジストパターンの明瞭性を向上させることができる。また、重量平均分子量(Mw)が上記範囲内である重合体は、生産性に優れる。
なお、本発明において、「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用し、標準ポリスチレン換算値として測定することができる。
【0010】
更に、本発明のレジストパターン形成方法では、重合体の分子量分布(Mw/Mn)が2.3未満であることが好ましい。重合体の分子量分布(Mw/Mn)が上記値未満であれば、得られるレジストパターンの明瞭性を向上させることができる。
なお、本発明において、「分子量分布」は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)を算出して求めることができる。そして、本発明において、「数平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用し、標準ポリスチレン換算値として測定することができる。
【0011】
また、本発明のレジストパターン形成方法では、前記R11がメチル基またはエチル基であることが好ましい。R11がメチル基またはエチル基であるフルオロエステル(V)を現像液として用いれば、電離放射線等の照射量を一層抑えて更に効率良くレジストパターンを形成可能であると共に、得られるレジストパターンの明瞭性を向上させることができる。また、現像を経て得られるレジストパターンの倒れ(パターン倒れ)を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレジストパターン形成方法によれば、電離放射線等の照射量を抑えて効率よくレジストパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のレジストパターン形成方法は、所定の単量体を用いて形成した所定の重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程(レジスト膜形成工程)、レジスト膜を露光する工程(露光工程)、および露光されたレジスト膜を現像する工程(現像工程)を少なくとも含む。
なお、本発明のレジストパターン形成方法は、上述したレジスト膜形成工程、露光工程、および現像工程以外の工程を含んでいてもよい。例えば、本発明のレジストパターン形成方法は、任意に、現像工程の後に現像液を除去する工程(リンス工程)を更に含み得る。
【0014】
そして、本発明のレジストパターンの形成方法では、レジスト膜形成工程において、ポジ型レジストとして所定の重合体を用いてレジスト膜を形成すると共に、現像工程においてフルオロエステル(V)を含む現像液を用いて現像を行うので、電離放射線等の照射量を抑えた場合であっても良好にレジストパターンを形成することが出来る。
【0015】
(レジスト膜形成工程)
レジスト膜形成工程では、レジストパターンを利用して加工される基板などの被加工物の上に、ポジ型レジスト組成物を塗布し、塗布したポジ型レジスト組成物を乾燥させてレジスト膜を形成する。ここで、基板としては、特に限定されることなく、プリント基板の製造等に用いられる、絶縁層と、絶縁層上に設けられた銅箔とを有する基板などを用いることができる。また、ポジ型レジスト組成物の塗布方法および乾燥方法としては、特に限定されることなく、レジスト膜の形成に一般的に用いられている方法を用いることができる。そして、本発明のパターン形成方法では、以下のポジ型レジスト組成物を使用する。
【0016】
<ポジ型レジスト組成物>
ポジ型レジスト組成物は、以下に詳述するフッ素原子を含有する所定の重合体と、溶剤とを含み、任意に、ポジ型レジスト組成物に配合され得る既知の添加剤を更に含有する。
【0017】
<<重合体>>
本発明のレジストパターン形成方法で用いられる重合体は、電子線などの電離放射線や紫外線(EUVを含む)などの短波長の光の照射により主鎖が切断されて低分子量化する、主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用することができる重合体である。そして、重合体は、下記の一般式(I):
【化3】
(一般式(I)中、Rは、塩素原子、フッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、Rは、フッ素原子の数が3以上11以下の有機基であり、RおよびRは、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、RおよびRは互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される単量体単位(A)と、
下記の一般式(II):
【化4】
(一般式(II)中、R、R、RおよびRは、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R、R、RおよびRは互いに同一でも異なっていてもよく、Rは、水素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、pおよびqは、0以上5以下の整数であり、p+q=5である。)で表される単量体単位(B)と、を有する。
【0018】
なお、上述した重合体は、単量体単位(A)および単量体単位(B)以外の任意の単量体単位を含んでいてもよいが、重合体を構成する全単量体単位中で単量体単位(A)および単量体単位(B)が占める割合は、合計で90mol%以上であることが好ましく、実質的に100mol%であることがより好ましく、100mol%である(即ち、重合体は単量体単位(A)および単量体単位(B)のみを含む)ことが更に好ましい。
【0019】
また、上述した重合体は、単量体単位(A)および単量体単位(B)とを有する限り、例えば、ランダム重合体、ブロック重合体、交互重合体(ABAB・・・)、などのいずれであってもよいが、交互重合体を90質量%以上(上限は100質量%)含む重合体であることが好ましい。ここで、交互重合体同士が架橋体を形成しないことが好ましい。そして、本発明の重合体は、単量体単位(A)のRにフッ素原子が含まれているため、架橋体が形成され難い。
【0020】
そして、上述した重合体は、所定の単量体単位(A)および単量体単位(B)を含んでいるので、電離放射線等(例えば、電子線、KrFレーザー、ArFレーザー、EUVレーザーなど)が照射されると、主鎖が切断されて低分子量化する。
【0021】
[単量体単位(A)]
単量体単位(A)は、下記の一般式(III):
【化5】
(一般式(III)中、R~Rは、一般式(I)と同様である。)で表される単量体(a)に由来する構造単位である。
【0022】
そして、重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(A)の割合は、特に限定されることなく、例えば30mol%以上70mol%以下とすることができ、40mol%以上60mol%以下とすることが好ましく、45mol%以上55mol%以下とすることがより好ましい。
【0023】
ここで、一般式(I)および一般式(III)中のR、R、Rを構成し得る、フッ素原子で置換されたアルキル基としては、特に限定されることなく、アルキル基中の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した構造を有する基が挙げられる。
【0024】
また、一般式(I)および一般式(III)中のR、Rを構成し得る非置換のアルキル基としては、特に限定されることなく、炭素原子の数が1以上10以下である非置換のアルキル基が挙げられる。中でも、R、Rを構成し得る非置換のアルキル基としては、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0025】
そして、電離放射線等を照射した際の重合体の主鎖の切断性を向上させて、更に効率良くレジストパターンを形成する観点から、一般式(I)および一般式(III)中のRは、塩素原子、フッ素原子またはフッ素原子で置換された炭素原子の数が1以上5以下のアルキル基であることが好ましく、塩素原子、フッ素原子またはパーフルオロメチル基であることがより好ましく、塩素原子またはフッ素原子であることが更に好ましく、塩素原子であることが特に好ましい。なお、一般式(III)中のRが塩素原子である単量体(a)は、重合性に優れており、一般式(I)中のRが塩素原子である単量体単位(A)を有する重合体は、調製が容易であるという点においても優れている。
【0026】
また、電離放射線等を照射した際の重合体の主鎖の切断性を向上させて、更に効率良くレジストパターンを形成する観点から、一般式(I)および一般式(III)中のRおよびRは、それぞれ、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素原子の数が1以上5以下である非置換のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0027】
そして、電離放射線等を照射した際の重合体の主鎖の切断性を向上させて、更に効率良くレジストパターンを形成する観点から、一般式(I)および一般式(III)中のRは、フッ素原子の数が3以上の有機基であることが必要であり、フッ素原子の数が5以上の有機基であることが好ましい。一方、得られるレジストパターンの明瞭性を十分に確保する観点からは、一般式(I)および一般式(III)中のRは、フッ素原子の数が11以下の有機基であることが必要であり、フッ素原子の数が7以下の有機基であることが好ましく、フッ素原子の数が6以下の有機基であることがより好ましい。そして、一般式(I)および一般式(III)中のRは、フッ素原子の数が5の有機基であることが更に好ましい。
なお、Rの炭素原子の数は、2以上10以下であることが好ましく、3以上4以下であることがより好ましく、3であることが更に好ましい。Rの炭素原子の数が2以上であれば、レジスト膜の露光部の、フルオロエステル(V)を含む現像液への溶解性を十分に確保することができる。一方、Rの炭素原子の数が10以下であれば、重合体のガラス転移点が過度に低下することもなく、レジストパターンの明瞭性を十分に確保することができる。
【0028】
具体的には、一般式(I)および一般式(III)中のRとしては、フッ素原子の数が3以上11以下のフルオロアルキル基、フッ素原子の数が3以上11以下のフルオロアルコキシアルキル基、フッ素原子の数が3以上11以下のフルオロアルコキシアルケニル基が挙げられる。
ここで、フッ素原子の数が3以上11以下のフルオロアルキル基としては、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル基(フッ素原子の数が3、炭素原子の数が2)、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基(フッ素原子の数が5、炭素原子の数が3)、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基(フッ素原子の数が5、炭素原子の数が4)、2-(パーフルオロブチル)エチル基(フッ素原子の数が9、炭素原子の数が6)、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル基(フッ素原子の数が4、炭素原子の数が3)、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル基(フッ素原子の数が8、炭素原子の数が5)、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル基(フッ素原子の数が6、炭素原子の数が3)、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル基(フッ素原子の数が6、炭素原子の数が4)、2,2,3,3,4,4,4-へプタフルオロブチル基(フッ素原子の数が7、炭素原子の数が4)、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基(フッ素原子の数が7、炭素原子の数が3)が挙げられる。
また、フッ素原子の数が3以上11以下のフルオロアルコキシアルキル基としては、例えば、ペンタフルオロエトキシメチル基(フッ素原子の数が5、炭素原子の数が3)、ペンタフルオロエトキシエチル基(フッ素原子の数が5、炭素原子の数が4)が挙げられる。
加えて、フッ素原子の数が3以上11以下のフルオロアルコキシアルケニル基としては、例えば、ペンタフルオロエトキシビニル基(フッ素原子の数が5、炭素原子の数が4)が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、Rは、電離放射線等の照射量を一層抑えて更に効率良くレジストパターンを形成すると共に、得られるレジストパターンの倒れを抑制しつつ明瞭性を向上させる観点から、フッ素原子の数が3以上11以下のフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子の数が3以上7以下のフルオロアルキル基であることがより好ましく、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル基、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-へプタフルオロブチル基、または1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基であることが更に好ましく、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基であることが特に好ましい。
【0030】
そして、上述した一般式(I)で表される単量体単位(A)を形成し得る、上述した式(III)で表される単量体(a)としては、特に限定されることなく、例えば、α-クロロアクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル、α-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、α-クロロアクリル酸3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、α-クロロアクリル酸2-(パーフルオロブチル)エチル、α-クロロアクリル酸1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル、α-クロロアクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル、α-クロロアクリル酸1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル、α-クロロアクリル酸1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル、α-クロロアクリル酸2,2,3,3,4,4,4-へプタフルオロブチル、α-クロロアクリル酸1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルなどのα-クロロアクリル酸フルオロアルキルエステル;α-フルオロアクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル、α-フルオロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、α-フルオロアクリル酸3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、α-フルオロアクリル酸2-(パーフルオロブチル)エチル、α-フルオロアクリル酸1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル、α-フルオロアクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル、α-フルオロアクリル酸1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル、α-フルオロアクリル酸1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル、α-フルオロアクリル酸2,2,3,3,4,4,4-へプタフルオロブチル、α-フルオロアクリル酸1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルなどのα-フルオロアクリル酸フルオロアルキルエステル;α-クロロアクリル酸ペンタフルオロエトキシメチルエステル、α-クロロアクリル酸ペンタフルオロエトキシエチルエステル等のα-クロロアクリル酸フルオロアルコキシアルキルエステル;α-フルオロアクリル酸ペンタフルオロエトキシメチルエステル、α-フルオロアクリル酸ペンタフルオロエトキシエチルエステル等のα-フルオロアクリル酸フルオロアルコキシアルキルエステル;α-クロロアクリル酸ペンタフルオロエトキシビニルエステル等のα-クロロアクリル酸フルオロアルコキシアルケニルエステル;α-フルオロアクリル酸ペンタフルオロエトキシビニルエステル等のα-フルオロアクリル酸フルオロアルコキシアルケニルエステル;などが挙げられる。
【0031】
なお、電離放射線等を照射した際の重合体の主鎖の切断性を向上させて、更に効率良くレジストパターンを形成する観点から、単量体単位(A)は、α-クロロアクリル酸フルオロアルキルエステルに由来する構造単位であることが好ましい。即ち、一般式(I)および一般式(III)中のR、R、Rは、Rが塩素原子であり、RおよびRが水素原子であることが好ましい。
【0032】
[単量体単位(B)]
また、単量体単位(B)は、下記の一般式(IV):
【化6】
(一般式(IV)中、R~R、並びに、pおよびqは、一般式(II)と同様である。)で表される単量体(b)に由来する構造単位である。
【0033】
そして、重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(B)の割合は、特に限定されることなく、例えば30mol%以上70mol%以下とすることができ、40mol%以上60mol%以下とすることが好ましく、45mol%以上55mol%以下とすることがより好ましい。
【0034】
ここで、一般式(II)および一般式(IV)中のR~Rを構成し得る、フッ素原子で置換されたアルキル基としては、特に限定されることなく、アルキル基中の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した構造を有する基が挙げられる。
また、一般式(II)および一般式(IV)中のR~Rを構成し得る非置換のアルキル基としては、特に限定されることなく、炭素原子数が1以上5以下である非置換のアルキル基が挙げられる。中でも、R~Rを構成し得る非置換のアルキル基としては、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0035】
そして、重合体の調製の容易性を確保しつつ、電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させて、更に効率良くレジストパターンを形成する観点から、一般式(II)および一般式(IV)中のRは、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、非置換の炭素原子数が1以上5以下である非置換のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0036】
また、重合体の調製の容易性を向上させる観点からは、一般式(II)および一般式(IV)中に複数存在するRおよび/またはRは、全て、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素原子の数が1以上5以下である非置換のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0037】
なお、重合体の調製の容易性を向上させる観点からは、一般式(II)および一般式(IV)中のpが5であり、qが0であり、5つあるRの全てが水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、5つあるRの全てが水素原子または炭素原子の数が1以上5以下である非置換のアルキル基であることがより好ましく、5つあるRの全てが水素原子であることが更に好ましい。
また、レジスト膜の露光部の、フルオロエステル(V)を含む現像液への溶解性を確保して十分に効率良くレジストパターンを形成する観点から、一般式(II)及び一般式(IV)中に複数存在するR及びRのいずれかにフッ素原子を1つ含有させてもよい。
【0038】
ここで、重合体の調製の容易性を確保しつつ、電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させて、更に効率良くレジストパターンを形成する観点から、一般式(II)および一般式(IV)中のRおよびRは、それぞれ、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素原子の数1以上5以下である非置換のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0039】
そして、上述した一般式(II)で表される単量体単位(B)を形成し得る、上述した一般式(IV)で表される単量体(b)としては、特に限定されることなく、例えば、以下の(b-1)~(b-11)等のα-メチルスチレン(AMS)およびその誘導体が挙げられる。
【化7】
【0040】
なお、重合体の調製の容易性を向上させる観点からは、単量体単位(B)は、フッ素原子を含有しないことが好ましく、α-メチルスチレンに由来する構造単位であることがより好ましい。即ち、一般式(II)および一般式(IV)中のR~R、並びに、pおよびqは、p=5、q=0であり、Rがメチル基であり、5つあるRが全て水素原子であり、RおよびRが水素原子であることが特に好ましい。
また、レジスト膜の露光部の、フルオロエステル(V)を含む現像液への溶解性を確保して十分に効率良くレジストパターンを形成する観点から、単量体単位(B)は、フッ素原子を1つ含有してもよい。例えば、一般式(II)および一般式(IV)中のR~R、並びに、pおよびqは、p=5、q=0であり、Rがメチル基であり、5つあるRのいずれか1つがフッ素原子であり且つその他の4つが水素原子であり、RおよびRが水素原子であってもよい。
【0041】
また、本発明のレジストパターンの形成方法では、一般式(I)および一般式(II)中のR~Rに含まれるフッ素原子の合計数(換言すると、一般式(III)および一般式(IV)中のR~Rに含まれるフッ素原子の合計数)が、3以上6以下であることが好ましく、5または6であることがより好ましい。R~Rに含まれるフッ素原子の合計数が上述の範囲内である重合体を用いれば、更に効率良くレジストパターンを形成することができ、また、得られるレジストパターンの明瞭性を向上させることができる。
【0042】
[重量平均分子量]
重合体の重量平均分子量(Mw)は、30,000超であることが好ましく、60,000超であることがより好ましく、100,000超であることが更に好ましく、110,000超であることがより一層好ましく、125,000超であることが特に好ましく、500,000未満であることが好ましく、300,000未満であることがより好ましく、200,000未満であることが更に好ましい。重合体の重量平均分子量(Mw)が30,000超であれば、レジストパターンの明瞭性を向上させることができる。一方、重合体の重量平均分子量(Mw)が500,000未満であれば、重合体の生産性およびレジストパターンの明瞭性を確保しつつ、更に効率良くレジストパターンを形成することができる。加えて、重合体の重量平均分子量(Mw)が200,000未満であれば、重合体の生産性の確保およびレジストパターンの明瞭性の向上という上記の効果を際立って良好に得ることができる。
【0043】
[数平均分子量]
また、重合体の数平均分子量(Mn)は、20,000超であることが好ましく、36,000超であることがより好ましく、60,000超であることが更に好ましく、300,000未満であることが好ましく、200,000未満であることがより好ましく、130,000未満であることが更に好ましい。重合体の数平均分子量(Mn)が20,000超であれば、レジストパターンの明瞭性を向上させることができる。一方、重合体の数平均分子量(Mn)が300,000未満であれば、重合体の生産性およびレジストパターンの明瞭性を確保しつつ、更に効率良くレジストパターンを形成することができる。加えて、重合体の数平均分子量(Mn)が130,000未満であれば、重合体の生産性の確保およびレジストパターンの明瞭性の向上という上記の効果を際立って良好に得ることができる。
【0044】
[分子量分布]
そして、重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、2.3未満であることが好ましく、2.0未満であることがより好ましく、1.3超であることが好ましく、1.35超であることがより好ましく、1.39超であることが更に好ましい。重合体の分子量分布(Mw/Mn)が2.3未満であれば、レジストパターンの明瞭性を向上させることができる。一方、重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.3超であれば、重合体の調製が容易となる。
【0045】
[分子量が10,000未満の成分の割合]
重合体は、分子量が10,000未満の成分の割合が、2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。分子量が10,000未満の成分の割合が2%以下であれば、レジストパターンの倒れを抑制することができる。そして、分子量が10,000未満の成分の割合の下限は、特に限定されないが、例えば、0.01%以上とすることができ、0.02%以上とすることができる。
なお、本発明において、「分子量が10,000未満の成分の割合」は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって得られるクロマトグラムを使用し、クロマトグラム中のピークの総面積(A)に対するクロマトグラム中の分子量が10,000未満の成分のピークの面積の合計(B)の割合(=(B/A)×100%)を算出することにより求めることができる。
【0046】
[分子量が100,000以上の成分の割合]
また、重合体は、分子量が100,000以上の成分の割合が、10%以上であることが好ましく、13%以上であることがより好ましく、16%以上であることが更に好ましく、18%以上であることが特に好ましい。分子量が100,000以上の成分の割合が10%以上であれば、レジストパターンの倒れを抑制することができる。そして、分子量が100,000以上の成分の割合の上限は、特に限定されないが、重合体の生産性を向上させる観点から、例えば95%以下とすることができ、85%以下とすることができる。
なお、本発明において、「分子量が100,000以上の成分の割合」は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって得られるクロマトグラムを使用し、クロマトグラム中のピークの総面積(A)に対するクロマトグラム中の分子量が100,000以上の成分のピークの面積の合計(C)の割合(=(C/A)×100%)を算出することにより求めることができる。
【0047】
[分子量が120,000以上の成分の割合]
そして、重合体は、分子量が120,000以上の成分の割合が、8%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、12%以上であることが更に好ましく、14%以上であることが特に好ましい。分子量が120,000以上の成分の割合が8%以上であれば、レジストパターンの倒れを抑制することができる。そして、分子量が120,000以上の成分の割合の上限は、特に限定されないが、重合体の生産性を向上させる観点から、例えば、90%以下とすることができ、80%以下とすることができる。
なお、本発明において、「分子量が120,000以上の成分の割合」は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって得られるクロマトグラムを使用し、クロマトグラム中のピークの総面積(A)に対するクロマトグラム中の分子量が120,000以上の成分のピークの面積の合計(D)の割合(=(D/A)×100%)を算出することにより求めることができる。
【0048】
[分子量が140,000以上の成分の割合]
ここで、重合体は、分子量が140,000以上の成分の割合が、5%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましく、7%以上であることが更に好ましく、7.5%以上であることが特に好ましい。分子量140,000以上の成分の割合が5%以上であれば、レジストパターンの倒れを抑制することができる。そして、分子量が140,000以上の成分の割合の上限は、特に限定されないが、重合体の生産性を向上させる観点から、例えば、80%以下とすることができ、70%以下とすることができる。
なお、本発明において、「分子量が140,000以上の成分の割合」は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって得られるクロマトグラムを使用し、クロマトグラム中のピークの総面積(A)に対するクロマトグラム中の分子量が140,000以上の成分のピークの面積の合計(E)の割合(=(E/A)×100%)を算出することにより求めることができる。
【0049】
[分子量が200,000以上の成分の割合]
そして、本発明の重合体は、分子量が200,000以上の成分の割合が、2%以上であることが好ましく、2.5%以上であることがより好ましく、2.7%以上であることが更に好ましく、3%以上であること特に好ましい。分子量200,000以上の成分の割合が2%以上であれば、レジストパターンの倒れを抑制することができる。そして、分子量が200,000以上の成分の割合の上限は、特に限定されないが、重合体の生産性を向上させる観点から、例えば、70%以下とすることができ、50%以下とすることができる。
なお、本発明において、「分子量が200,000以上の成分の割合」は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって得られるクロマトグラムを使用し、クロマトグラム中のピークの総面積(A)に対するクロマトグラム中の分子量が200,000以上の成分のピークの面積の合計(F)の割合(=(F/A)×100%)を算出することにより求めることができる。
【0050】
[重合体の調製方法]
そして、上述した単量体単位(A)および単量体単位(B)を有する重合体は、例えば、単量体(a)と単量体(b)とを含む単量体組成物を重合させた後、任意に得られた重合物を精製することにより調製することができる。
なお、重合体の組成、分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量、ならびに重合体中の各分子量の成分の割合は、重合条件および精製条件を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、重合体の組成は、重合に使用する単量体組成物中の各単量体の含有割合を変更することにより調整することができる。また、高分子量成分(例えば、分子量が100,000以上の成分)の割合、ならびに、重量平均分子量および数平均分子量は、重合温度を低くすれば、大きくすることができる。更に、高分子量成分(例えば、分子量が100,000以上の成分)の割合、ならびに、重量平均分子量および数平均分子量は、重合時間を長くすれば、大きくすることができる。そして、重合体の調製においては、得られる重合体中の高分子量成分(例えば、分子量が100,000以上の成分)の割合、ならびに、当該重合体の重量平均分子量および数平均分子量を大きくする観点から、重合温度を低くするとともに、重合時間を長くすることが好ましい。
【0051】
-単量体組成物の重合-
ここで、重合体の調製に用いる単量体組成物としては、単量体(a)および単量体(b)を含む単量体成分と、任意で使用可能な溶媒と、重合開始剤と、任意に添加される添加剤との混合物を用いることができる。そして、単量体組成物の重合は、既知の方法を用いて行うことができる。中でも、溶媒を使用する場合には、溶媒としてシクロペンタノンなどを用いることが好ましい。また、重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。なお、高分子量成分(例えば、分子量が100,000以上の成分)の割合、ならびに、重合体の重量平均分子量および数平均分子量は、重合開始剤の配合量を少なくすれば、大きくすることができ、反対に、重合開始剤の配合量を多くすれば、小さくすることができる。そして、重合体の調製においては、得られる重合体中の高分子量成分(例えば、分子量が100,000以上の成分)の割合、ならびに、当該重合体の重量平均分子量および数平均分子量を大きくする観点から、重合開始剤の配合量を少なくすることが好ましい。
【0052】
また、単量体組成物を重合して得られた重合物は、そのまま重合体として使用してもよいが、特に限定されることなく、重合物を含む溶液にテトラヒドロフラン等の良溶媒を添加した後、良溶媒を添加した溶液をメタノール等の貧溶媒中に滴下して重合物を凝固させることにより回収し、以下のようにして精製することもできる。
【0053】
-重合物の精製-
得られた重合物を精製して上述した性状を有する重合体を得る際に用いる精製方法としては、特に限定されることなく、再沈殿法やカラムクロマトグラフィー法などの既知の精製方法を用いることができる。中でも、精製方法としては、再沈殿法を用いることが好ましい。
なお、重合物の精製は、複数回繰り返して実施してもよい。
【0054】
そして、再沈殿法による重合物の精製は、例えば、得られた重合物をテトラヒドロフラン等の良溶媒に溶解した後、得られた溶液を、テトラヒドロフラン等の良溶媒とメタノール等の貧溶媒との混合溶媒に滴下し、重合物の一部を析出させることにより行うことが好ましい。このように、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中に重合物の溶液を滴下して重合物の精製を行えば、良溶媒および貧溶媒の種類や混合比率を変更することにより、得られる重合体の分子量分布、重量平均分子量、数平均分子量、および高分子量成分(例えば、分子量が100,000以上の成分)の割合を容易に調整することができる。具体的には、例えば、混合溶媒中の良溶媒の割合を高めるほど、混合溶媒中で析出する重合体の分子量を大きくすることができる。
【0055】
なお、再沈殿法により重合物を精製する場合、重合体としては、所望の性状を満たせば、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中で析出した重合体を用いてもよいし、混合溶媒中で析出しなかった重合体(即ち、混合溶媒中に溶解している重合体)を用いてもよい。ここで、混合溶媒中で析出しなかった重合体は、濃縮乾固などの既知の手法を用いて混合溶媒中から回収することができる。
【0056】
<<溶剤>>
なお、溶剤としては、上述した重合体を溶解可能な溶剤であれば特に限定されることなく、例えば、特許第5938536号公報に記載されたような既知の溶剤を用いることができる。中でも、適度な粘度のポジ型レジスト組成物を得てポジ型レジスト組成物の塗工性を向上させる観点からは、溶剤としては、有機酸のエステルである、n-ペンチルエステル、n-ヘキシルエステル、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル、酢酸イソアミル、またはそれらの混合物が好ましく、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル、酢酸イソアミル、またはそれらの混合物がより好ましく、酢酸イソアミルが更に好ましい。
【0057】
(露光工程)
露光工程では、レジスト膜形成工程で形成したレジスト膜に対し、電離放射線等を照射して、所望のパターンを描画する。なお、電離放射線等の照射には、電子線描画装置やレーザー描画装置などの既知の描画装置を用いることができる。
【0058】
(現像工程)
現像工程では、露光工程で所望のパターンが描画されたレジスト膜に現像処理を施す。ここで、レジスト膜の現像は、例えば、レジスト膜を現像液に接触させることで行うことができる。レジスト膜と現像液とを接触させる方法は、特に限定されることなく、現像液中へのレジスト膜の浸漬やレジスト膜への現像液の塗布等の既知の手法を用いることができる。
【0059】
<現像液>
そして、現像工程においては、下記一般式(V):
10-COO-R11・・・(V)
(一般式(V)中、R10は、フッ素原子の数が6以上12以下の有機基であり、R11は、非置換の炭化水素基である。)で表されるフルオロエステルを含む現像液を用いることが必要である。
【0060】
ここで、一般式(V)中のR10を構成する有機基に含まれるフッ素原子の数は、上述した通り6以上12以下であることが必要であり、7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、11以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、9以下であることが特に好ましい。R10の有機基に含まれるフッ素原子の数が5以下であると、フルオロエステル(V)を含む現像液により未露光部が過度に溶解してしまい、良好なレジストパターンを形成できない場合がある。また、得られるレジストパターンの倒れ抑制や、明瞭性の十分な確保が困難となる。一方、R10の有機基に含まれるフッ素原子の数が13以上であると、電離放射線等の照射量を抑えて効率よくレジストパターンを形成することができない。
【0061】
また、R10を構成する有機基に含まれる炭素原子の数は、3以上であることが好ましく、6以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることが更に好ましい。R10の有機基に含まれる炭素原子の数が3以上であれば、十分に効率良くレジストパターンを形成可能であると共に、得られるレジストパターンの倒れを抑制しつつ明瞭性を向上させることができる。一方、R10の有機基に含まれる炭素原子の数が6以下であれば、電離放射線等の照射量を一層抑えて更に効率良くレジストパターンを形成することができる。
【0062】
具体的には、一般式(V)中のR10としては、フッ素原子の数が6以上12以下のフルオロアルキル基、フッ素原子の数が6以上12以下のフルオロアルコキシアルキル基、フッ素原子の数が6以上12以下のフルオロアルコキシアルケニル基が挙げられるが、フッ素原子の数が6以上12以下のフルオロアルキル基が好ましい。
【0063】
そして、フッ素原子の数が6以上12以下のフルオロアルキル基としては、電離放射線等の照射量を一層抑えて更に効率良くレジストパターンを形成すると共に、得られるレジストパターンの倒れを抑制しつつ明瞭性を向上させる観点から、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル基(フッ素原子の数が7、炭素原子の数が3、以下「ヘプタフルオロプロピル基」と略記する場合がある。)、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル基(フッ素原子の数が9、炭素原子の数が4、以下「ノナフルオロブチル基」と略記する場合がある。)、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,5-ウンデカフルオロペンチル基(フッ素原子の数が11、炭素原子の数が5、以下「ウンデカフルオロペンチル基」と略記する場合がある。)が好ましく、ノナフルオロブチル基がより好ましい。
【0064】
また、一般式(V)中のR11を構成する非置換の炭化水素基としては、電離放射線等の照射量を一層抑えて更に効率良くレジストパターンを形成すると共に、得られるレジストパターンの倒れを抑制しつつ明瞭性を向上させる観点から、非置換のアルキル基が好ましく、炭素原子の数が1以上4以下である非置換のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0065】
そして、具体的なフルオロエステル(V)としては、ヘプタフルオロ酪酸メチル(R10がヘプタフルオロプロピル基、R11がメチル基)、ヘプタフルオロ酪酸エチル(R10がヘプタフルオロプロピル基、R11がエチル基)、ノナフルオロペンタン酸メチル(R10がノナフルオロブチル基、R11がメチル基)、ノナフルオロペンタン酸エチル(R10がノナフルオロブチル基、R11がメチル基)、ウンデカフルオロヘキサン酸メチル(R10がウンデカフルオロペンチル基、R11がメチル基)などが挙げられる。
【0066】
上述したフルオロエステル(V)の中でも、電離放射線等の照射量を一層抑えて更に効率良くレジストパターンを形成する観点からは、ヘプタフルオロ酪酸メチル、ヘプタフルオロ酪酸エチル、ノナフルオロペンタン酸メチル、ノナフルオロペンタン酸エチルが好ましく、ヘプタフルオロ酪酸メチル、ヘプタフルオロ酪酸エチル、ノナフルオロペンタン酸メチルがより好ましい。
また、上述したフルオロエステル(V)の中でも、得られるレジストパターンの明瞭性を向上させる観点からは、ヘプタフルオロ酪酸メチル、ノナフルオロペンタン酸メチル、ウンデカフルオロヘキサン酸メチルが好ましく、ノナフルオロペンタン酸メチルがより好ましい。
加えて、上述したフルオロエステル(V)の中でも、得られるレジストパターンの倒れを抑制する観点からは、ノナフルオロペンタン酸メチル、ノナフルオロペンタン酸エチル、ウンデカフルオロヘキサン酸メチルが好ましく、ノナフルオロペンタン酸メチル、ウンデカフルオロヘキサン酸メチルがより好ましい。
そして、上述したフルオロエステル(V)の中でも、レジストパターンの良好な形成効率、優れた明瞭性、およびパターン倒れの抑制をバランス良く達成する観点からは、ノナフルオロペンタン酸メチルが好ましい。
【0067】
なお、フルオロエステル(V)は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0068】
また、現像液としては、上記フルオロエステル(V)に加え、フルオロエステル(V)以外の現像液を使用することもできる。このようなフルオロエステル(V)以外の現像液としては、特に限定されず、フルオロエステル(V)に該当しないフルオロエステルや、現像液として使用されうる既知の溶剤(例えば特開2018-106066号公報に記載の溶剤)を用いることができる。
そして、現像液全体に占めるフルオロエステル(V)の比率は、現像液全体を100体積%として、50体積%以上であることが好ましく、75体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが更に好ましく、95体積%以上であることが特に好ましく、100体積%である(即ち、現像液としてフルオロエステル(V)のみを使用する)ことが最も好ましい。
【0069】
<現像条件>
現像条件は、所望の品質のレジストパターンを得るように適宜設定することができる。上述した現像液の温度は、特に限定されないが、例えば21℃以上25℃以下とすることができる。また現像時間は、特に限定されないが、例えば、10秒以上とすることができ、30秒以上とすることができ、30分以下とすることができ、20分以下とすることができ、10分以下とすることができ、5分以下とすることができる。
【0070】
(リンス工程)
本発明のレジストパターン形成方法においては、任意に、現像工程の後に現像液を除去する工程を実施してもよい。現像液の除去は、例えば、リンス液を用いて行うことができる。
ここで、リンス液としては、フルオロエステル(V)を含む現像液よりもレジスト膜の未露光部を溶解させ難く、且つフルオロエステル(V)を含む現像液と混ざり易いリンス液を選択することが好ましい。このような現像液としては、例えば、CFCFCFCFOCH、COC、CCF(OCH)C等のハイドロフルオロエーテルや、C18等のパーフルオロカーボンを用いることができる。
【実施例
【0071】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、重合体の重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合は、以下の方法で評価した。
<重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布>
実施例、比較例で得られた各種重合体についてゲル浸透クロマトグラフィーを用いて重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
具体的には、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製、HLC-8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を標準ポリスチレン換算値として求めた。そして、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<重合体中の各分子量の成分の割合>
ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー製、HLC-8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、重合体のGPCチャートを得た。そして、得られたGPCチャートから、ピークの総面積(A)、分子量が10,000未満の成分のピークの面積の合計(B)、分子量が100,000以上の成分のピークの面積の合計(C)、分子量が120,000以上の成分のピークの面積の合計(D)、分子量が140,000以上の成分のピークの面積の合計(E)、および分子量が200,000以上の成分のピークの面積の合計(F)を求めた。そして、下記式を用いて各分子量の成分の割合を算出した。
分子量が10,000未満の成分の割合(%)=(B/A)×100
分子量が100,000以上の成分の割合(%)=(C/A)×100
分子量が120,000以上の成分の割合(%)=(D/A)×100
分子量が140,000以上の成分の割合(%)=(E/A)×100
分子量が200,000以上の成分の割合(%)=(F/A)×100
【0072】
(実施例1)
<重合体Aの調製>
単量体(a)としてのα-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(ACAPFP)3.0gおよび単量体(b)としてのα-メチルスチレン(AMS)3.4764gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.0055gと、溶媒としてのシクロペンタノン1.6205gを含む単量体組成物をガラス容器に入れ、ガラス容器を密閉および窒素置換して、窒素雰囲気下、78℃の恒温槽内で6時間撹拌した。その後、室温に戻し、ガラス容器内を大気解放した後、得られた溶液にテトラヒドロフラン(THF)10gを加えた。そして、THFを加えた溶液を、メタノール300g中に滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の凝固物(重合体A)を得た。得られた重合体Aは、α-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル単位とα-メチルスチレン単位とを50mol%ずつ含んでいた。そして、得られた重合体Aについて、重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合を測定した。結果を表1に示す。
<ポジ型レジスト組成物の調製>
得られた重合体を溶剤としての酢酸イソアミルに溶解させ、重合体の濃度が11%であるポジ型レジスト組成物、および重合体の濃度が2%であるポジ型レジスト組成物をそれぞれ調製した。そして、重合体の濃度が11%であるポジ型レジスト組成物を用いて、レジストパターンの明瞭性(γ値)および形成効率(Eth)を、以下に従って評価した。また、重合体の濃度が2%であるポジ型レジスト組成物を用いて、レジストパターンの倒れ抑制(耐パターン倒れ性)を、以下に従って評価した。結果は何れも表2に示す。
<明瞭性(γ値)>
スピンコーター(ミカサ社製、MS-A150)を使用し、上記ポジ型レジスト組成物(濃度:11%)を直径4インチのシリコンウェハ上に厚さ500nmになるように塗布した。そして、塗布したポジ型レジスト組成物を温度180℃のホットプレートで3分間加熱して、シリコンウェハ上にレジスト膜を形成した。そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS-S50)を用いて、電子線の照射量が互いに異なるパターン(寸法500μm×500μm)をレジスト膜上に複数描画し、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)を用いて、温度23℃で1分間の現像処理を行った。なお、電子線の照射量は、4μC/cm2から200μC/cm2の範囲内で4μC/cm2ずつ異ならせた。次に、描画した部分のレジスト膜の厚みを光学式膜厚計(SCREENセミコンダクターソリューションズ社製、ラムダエース)で測定し、電子線の総照射量の常用対数と、現像後のレジスト膜の残膜率(=現像後のレジスト膜の膜厚/シリコンウェハ上に形成したレジスト膜の膜厚)との関係を示す感度曲線を作成した。そして、得られた感度曲線(横軸:電子線の総照射量の常用対数、縦軸:レジスト膜の残膜率(0≦残膜率≦1.00))について、下記の式を用いてγ値を求めた。なお、下記の式中、Eは、残膜率0.20~0.80の範囲において感度曲線を二次関数にフィッティングし、得られた二次関数(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率0を代入した際に得られる総照射量の対数である。また、Eは、得られた二次関数上の残膜率0の点と残膜率0.50の点とを結ぶ直線(感度曲線の傾きの近似線)を作成し、得られた直線(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率1.00を代入した際に得られる総照射量の対数である。そして、下記式は、残膜率0と1.00との間での上記直線の傾きを表している。
【数1】
γ値の値が大きいほど、感度曲線の傾きが大きく、明瞭性の高いパターンを良好に形成し得ることを示す。
<形成効率(Eth)>
「明瞭性(γ値)」の評価方法と同様にして、上記ポジ型レジスト組成物(濃度:11%)を用いて、シリコンウェハ上にレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜の初期厚みTを光学式膜厚計(SCREENセミコンダクターソリューションズ社製、ラムダエース)で測定した。また、γ値の算出の際に得られた直線(感度曲線の傾きの近似線)の残膜率が0となる際の、電子線の総照射量Eth(μC/cm)を求めた。なお、Ethの値が小さいほど、レジストパターンの形成効率が高いことを意味する。
<耐パターン倒れ性>
スピンコーター(ミカサ社製、MS-A150)を使用し、上記ポジ型レジスト組成物(濃度:2%)を4インチのシリコンウェハ上に厚み50nmとなるように塗布した。そして、塗布したポジ型レジスト組成物を温度180℃のホットプレートで3分間加熱して、シリコンウェハ上にポジ型レジスト膜を形成した。そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS-S50)を用いて、線幅25nmのラインアンドスペース1:1のパターンを、最適露光量(Eop)で電子線描画し、電子線描画済ウエハを得た。なお、最適露光量は、それぞれEthの約2倍の値を目安として、適宜設定した。
電子線描画済ウエハを、23℃において、レジスト用現像液としてのヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に1分間浸漬することで、現像処理を行った。その後、リンス液として、ハイドロフルオロエーテル溶剤であるCOCH(3M社製、「Novec7100」)を用いて、温度23℃で10秒間リンス処理して、ラインアンドスペースパターンを形成した。走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JSM-7800F PRIME)にて倍率10万倍で観察を行い、Eopから±40%の照射量の範囲でパターン形成部分の耐パターン倒れ性を、以下の基準で評価した。
A:パターン倒れが発生していない
B:パターン倒れが発生している
【0073】
(実施例2~3)
各種評価におけるレジストパターンの形成に際し、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に替えて以下のものを使用した以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
実施例2:ヘプタフルオロ酪酸エチル(CF(CF-COO-CHCH
実施例3:ノナフルオロペンタン酸メチル(CF(CF-COO-CH
【0074】
(実施例4)
重合体Aに替えて、以下のようにして調製した重合体Bを用いた以外は、実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製した。そして、得られたポジ型レジスト組成物を用い、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
<重合体Bの調製>
単量体(a)としてのα-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(ACAPFP)3.0gおよび単量体(b)としてのα-メチルスチレン(AMS)3.2832gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.00052gと、溶媒としてのシクロペンタノン1.5709gを含む単量体組成物をガラス容器に入れ、ガラス容器を密閉および窒素置換して、窒素雰囲気下、78℃の恒温槽内で2時間撹拌した。その後、室温に戻し、ガラス容器内を大気解放した後、得られた溶液にTHF10gを加えた。そして、THFを加えた溶液を、メタノール300g中に滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の凝固物(重合体B)を得た。得られた重合体Bは、α-メチルスチレン単位とα-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル単位とを50mol%ずつ含んでいた。そして、得られた重合体Bについて、重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例5~6)
レジストパターンの形成に際し、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に替えて以下のものを使用した以外は、実施例4と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
実施例5:ヘプタフルオロ酪酸エチル(CF(CF-COO-CHCH
実施例6:ノナフルオロペンタン酸メチル(CF(CF-COO-CH
【0076】
(実施例7)
重合体Aに替えて、以下のようにして調製した重合体Cを用いた以外は、実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製した。そして、得られたポジ型レジスト組成物を用い、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
<重合体Cの調製>
単量体(a)としてのα-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(ACAPFP)3.0gおよび単量体(b)としてのα-メチルスチレン(AMS)3.4680gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.0021gと、溶媒としてのシクロペンタノン6.4659gを含む単量体組成物をガラス容器に入れ、ガラス容器を密閉および窒素置換して、窒素雰囲気下、53℃の恒温槽内で50時間撹拌した。その後、室温に戻し、ガラス容器内を大気解放した後、得られた溶液にTHF10gを加えた。そして、THFを加えた溶液を、メタノール300g中に滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の凝固物(重合体C)を得た。得られた重合体Cは、α-メチルスチレン単位とα-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル単位とを50mol%ずつ含んでいた。そして、得られた重合体Cについて、重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例8~9)
レジストパターンの形成に際し、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に替えて以下のものを使用した以外は、実施例7と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
実施例8:ヘプタフルオロ酪酸エチル(CF(CF-COO-CHCH
実施例9:ノナフルオロペンタン酸メチル(CF(CF-COO-CH
【0078】
(実施例10)
重合体Aに替えて、以下のようにして調製した重合体Dを用いた以外は、実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製した。そして、得られたポジ型レジスト組成物を用い、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
<重合体Dの調製>
単量体(a)としてのα-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(ACAPFP)3.0gおよび単量体(b)としてのα-メチルスチレン(AMS)3.4680gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.0014gと、溶媒としてのシクロペンタノン6.4666gを含む単量体組成物をガラス容器に入れ、ガラス容器を密閉および窒素置換して、窒素雰囲気下、40℃の恒温槽内で50時間撹拌した。その後、室温に戻し、ガラス容器内を大気解放した後、得られた溶液にTHF10gを加えた。そして、THFを加えた溶液を、メタノール300g中に滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の凝固物(重合体D)を得た。得られた重合体Dは、α-メチルスチレン単位とα-クロロアクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル単位とを50mol%ずつ含んでいた。そして、得られた重合体Dについて、重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例11~12)
レジストパターンの形成に際し、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に替えて以下のものを使用した以外は、実施例10と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
実施例11:ヘプタフルオロ酪酸エチル(CF(CF-COO-CHCH
実施例12:ノナフルオロペンタン酸メチル(CF(CF-COO-CH
【0080】
(比較例1~2)
実施例1と同様にして重合体Aおよびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、レジストパターンの形成に際し、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に替えて以下のものを使用した以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表3に示す。
比較例1:トリデカフルオロヘプタン酸メチル(CF(CF-COO-CH
比較例2:バートレルXF(登録商標)(CFCFHCFHCFCF、三井・ケマーズフロロプロダクツ社製)
【0081】
(比較例3)
実施例1と同様にして重合体Aおよびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に替えてペンタフルオロプロピオン酸エチル(CFCF-COO-CHCH)を使用した以外は、実施例1と同様にしてレジストパターンの形成を試みた。しかしながら、現像液により未露光部が溶解してしまい、良好なレジストパターンを形成することができなかった。
【0082】
(比較例4~5)
実施例4と同様にして重合体Bおよびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、レジストパターンの形成に際し、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に替えて以下のものを使用した以外は、実施例4と同様にして各種評価を行った。結果を表3に示す。
比較例4:トリデカフルオロヘプタン酸メチル(CF(CF-COO-CH
比較例5:バートレルXF(CFCFHCFHCFCF、三井・ケマーズフロロプロダクツ社製)
【0083】
(比較例6)
実施例4と同様にして重合体Bおよびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に替えてペンタフルオロプロピオン酸エチル(CFCF-COO-CHCH)を使用した以外は、実施例4と同様にしてレジストパターンの形成を試みた。しかしながら、現像液により未露光部が溶解してしまい、良好なレジストパターンを形成することができなかった。
【0084】
(比較例7~8)
実施例7と同様にして重合体Cおよびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、レジストパターンの形成に際し、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に替えて以下のものを使用した以外は、実施例7と同様にして各種評価を行った。結果を表3に示す。
比較例7:トリデカフルオロヘプタン酸メチル(CF(CF-COO-CH
比較例8:バートレルXF(CFCFHCFHCFCF、三井・ケマーズフロロプロダクツ社製)
【0085】
(比較例9)
実施例7と同様にして重合体Cおよびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に替えてペンタフルオロプロピオン酸エチル(CFCF-COO-CHCH)を使用した以外は、実施例7と同様にしてレジストパターンの形成を試みた。しかしながら、現像液により未露光部が(比較例3および6ほどではないが)溶解してしまい、良好なレジストパターンを形成することができなかった。
【0086】
(比較例10~11)
実施例10と同様にして重合体Dおよびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、レジストパターンの形成に際し、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に替えて以下のものを使用した以外は、実施例10と同様にして各種評価を行った。結果を表3に示す。
比較例10:トリデカフルオロヘプタン酸メチル(CF(CF-COO-CH
比較例11:バートレルXF(CFCFHCFHCFCF、三井・ケマーズフロロプロダクツ社製)
【0087】
(比較例12)
実施例10と同様にして重合体Dおよびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、レジスト用現像液として、ヘプタフルオロ酪酸メチル(CF(CF-COO-CH)に替えてペンタフルオロプロピオン酸エチル(CFCF-COO-CHCH)を使用した以外は、実施例10と同様にしてレジストパターンの形成を試みた。しかしながら、現像液により未露光部が(比較例3および6ほどではないが)溶解してしまい、良好なレジストパターンを形成することができなかった。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
表2より、ポジ型レジストとして所定の単量体単位(A)および単量体単位(B)を含む重合体を用い、そして所定の現像液を用いて現像工程を実施した実施例1~12では、効率良くレジストパターンを形成できていることが分かる。
一方、表3より、所定の現像液以外の現像液を用いて現像工程を実施した比較例1~12では、実施例1~12に比して、効率良くレジストパターンを形成できていないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のレジストパターン形成方法によれば、電離放射線等の照射量を抑えて効率よくレジストパターンを形成することができる。