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特許7310309調光装置、および、調光シートの駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】調光装置、および、調光シートの駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20230711BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20230711BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/133 580
G02F1/1334
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019099519
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020194086
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂本 正則
(72)【発明者】
【氏名】大久保 航
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-086046(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0041020(US,A1)
【文献】特開平10-133178(JP,A)
【文献】特開平08-211368(JP,A)
【文献】特表2022-517678(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0041714(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/133
G02F 1/1334
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光シートと、
前記調光シートを駆動する駆動装置と、を備え、
前記調光シートは、
第1端子を備えた第1透明電極と、
複数の第2端子を備えた第2透明電極と、
前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に位置する高分子ネットワークに保持された液晶分子と、を備え、
前記駆動装置は、
前記液晶分子が前記第2透明電極に加熱された状態で前記液晶分子の分極方向を変えるように、前記第2端子間への加熱電圧の印加と、前記第1端子と前記第2端子との間への駆動電圧の印加と、を行う駆動部を備え
前記駆動部は、
前記駆動電圧を印加する期間に、前記駆動電圧の極性を周期的に反転させ、
前記加熱電圧を印加する期間に、前記加熱電圧の極性を反転させ、
前記駆動電圧の印加と前記加熱電圧の印加とを同時に行う期間のなかで、前記駆動電圧の印加において極性が保たれる間に前記加熱電圧の極性を反転するように、前記加熱電圧の極性を反転させる
調光装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記加熱電圧の極性を所定期間ごとに反転させる
請求項に記載の調光装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記駆動電圧の印加と前記加熱電圧の印加とを同時に行う状態と、前記駆動電圧の印加と前記加熱電圧の印加とを別々に行う状態とを切り換える
請求項1または2に記載の調光装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記駆動電圧の印加と前記加熱電圧の印加とを別々に行う状態として、電源が駆動装置に投入されてから所定時間が経過するまで、前記駆動電圧の印加に先駆けて、前記第2端子の間に前記加熱電圧を印加する
請求項に記載の調光装置。
【請求項5】
前記液晶分子の分極方向が前記駆動電圧に追従するときの前記調光シートの温度が所定の駆動可能温度であり、
前記駆動部は、
前記調光シートの温度を測定する測定部を備え、
前記駆動電圧の印加と前記加熱電圧の印加とを別々に行う状態として、
前記測定部の測定値が前記駆動可能温度よりも低いときに、前記加熱電圧の印加を許容して前記駆動電圧の印加を禁止し、前記測定部の測定値が前記駆動可能温度であるときに、前記加熱電圧の印加を禁止して前記駆動電圧の印加を許容する
請求項3または4に記載の調光装置。
【請求項6】
調光シートを駆動する調光シートの駆動方法であって、
前記調光シートは、
第1端子を備えた第1透明電極と、
複数の第2端子を備えた第2透明電極と、
前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に位置する高分子ネットワークに保持された液晶分子と、を備え、
前記液晶分子が前記第2透明電極に加熱された状態で前記液晶分子の分極方向を変えるように、前記第2端子間への加熱電圧の印加と、前記第1端子と前記第2端子との間への駆動電圧の印加と、を同時に行い、同時に印加を行う期間のなかで、加熱電圧の極性を反転させることを含み、
前記駆動電圧を印加する期間に、前記駆動電圧の極性を周期的に反転させ、
前記加熱電圧を印加する期間に、前記加熱電圧の極性を反転させ、
前記駆動電圧の印加と前記加熱電圧の印加とを同時に行う期間のなかで、前記駆動電圧の印加において極性が保たれる間に前記加熱電圧の極性を反転するように、前記加熱電圧の極性を反転させる
調光シートの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光シートを備えた調光装置、および、調光シートの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、一対の透明電極に挟まれた液晶組成物を備える。液晶組成物は、透明電極間の電圧の変化に応じて、調光シートを透明と不透明とに変える。調光シートの駆動装置は、不純物イオンなどの偏析を抑えるために、透明電極間に交流電圧を印加し、それによって、調光層の長寿命化を図る(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
調光シートの型式は、ノーマル型とリバース型とに分類される。ノーマル型では、非通電時の調光層が不透明であり、通電時の調光層が透明である。ノーマル型は、光の遮蔽性を頻繁に必要とするスクリーン等への適用に好適である。リバース型では、非通電時の調光層が透明であり、通電時の調光層が不透明である(例えば、特許文献2を参照)。リバース型は、透明による安全性を非常時に必要とする建材等への適用に好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-091986号公報
【文献】特開2000-321562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、調光シートの適用範囲は広がる一途をたどり、これに伴い、調光シートは寒冷地などの低温下での使用も検討されている。そして、低温下での調光シートの使用に際しては、液晶分子の配向が電圧の変化に追従しにくい新たな課題が生じている。
本発明は、調光シートを駆動可能とする温度の下限値を引き下げ可能にした調光装置、および、調光シートの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための調光装置は、調光シートと、前記調光シートを駆動する駆動装置と、を備える。前記調光シートは、第1端子を備えた第1透明電極と、複数の第2端子を備えた第2透明電極と、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に位置する液晶分子と、を備える。前記駆動装置は、前記液晶分子が前記第2透明電極に加熱された状態で前記液晶分子の分極方向を変えるように、前記第2端子間への加熱電圧の印加と、前記第1端子と前記第2端子との間への駆動電圧の印加と、を行う駆動部を備える。
【0007】
上記課題を解決するための調光シートの駆動方法は、調光シートを駆動する調光シートの駆動方法であって、前記調光シートは、第1端子を備えた第1透明電極と、複数の第2端子を備えた第2透明電極と、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に位置する液晶分子と、を備え、前記液晶分子が前記第2透明電極に加熱された状態で前記液晶分子の分極方向を変えるように、前記第2端子間への加熱電圧の印加と、前記第1端子と前記第2端子との間への駆動電圧の印加と、を同時に行い、同時に印加を行う期間のなかで、加熱電圧の極性を反転させる。
【0008】
上記各構成によれば、駆動装置による電圧の印加が、液晶分子を加熱可能にすると共に、加熱された状態の液晶分子を用いて、当該液晶分子の分極方向を変更可能にする。結果として、液晶分子の分極方向が電圧の変化に追従しないような低温下に調光シートが置かれたとしても、駆動装置による電圧の印加が液晶分子の分極方向を変更可能にする。したがって、調光シートを駆動可能とする温度の下限値が引き下げられる。
上記調光装置において、前記駆動部は、前記駆動電圧の印加と前記加熱電圧の印加とを同時に行う期間のなかで、前記加熱電圧の極性を反転させてもよい。
【0009】
加熱電圧が第2透明電極に印加されるとき、加熱電圧に相当する電位差が第2透明電極の面内に生じる。例えば、2つの第2端子の間に加熱電圧が印加されるとき、一方の第2端子には相対的に高レベルが入力されて、他方の第2端子には相対的に低レベルが入力されて、高レベルと低レベルとの差に相当する電位差が第2透明電極の面内に生じる。
【0010】
2つの透明電極の間に駆動電圧が印加されつつ、第2透明電極の面内に電位差が生じているとなれば、駆動電圧が印加される期間の全体にわたり、液晶分子に印加される電圧もまた、加熱電圧に相当するばらつきを、調光シートの面内で生じ続けることになる。結果として、液晶分子に印加される電圧が調光シートの面内で均一である場合と比べて、不純物イオンなどの偏析が調光シートの面内で生じやすくなる。
【0011】
この点、上記構成によれば、駆動電圧の印加と加熱電圧の印加とが同時に実行される期間のなかで、加熱電圧の極性が第2端子の間で反転する。結果として、不純物イオンなどの偏析を生じさせる電位差が駆動電圧の印加と加熱電圧の印加とを同時に行う期間の全体にわたり生じることが抑えられる。ひいては、第2端子の間での電位差によって生じ得る不純物イオンなどの偏析が、加熱電圧の極性反転によって相殺される。
【0012】
上記調光装置において、前記駆動部は、前記加熱電圧の極性を所定期間ごとに反転させてもよい。この構成によれば、不純物イオンなどの偏析を生じさせる電位差の極性が所定期間ごとに反転するため、不純物イオンなどの偏析を抑える効果が、高い確度のもとで得られる。
【0013】
上記調光装置において、前記駆動部は、前記加熱電圧の印加と前記駆動電圧の印加とを切り換えてもよい。この構成によれば、加熱電圧の印加と、駆動電圧の印加とが、別々に実行されるため、調光シートの加熱を不要とする期間では、加熱電圧の印加による電力消費が抑えられる。
【0014】
上記調光装置において、前記駆動部は、前記電源が駆動装置に投入されてから所定時間が経過するまで、前記駆動電圧の印加に先駆けて、前記第2端子の間に前記加熱電圧を印加してもよい。
【0015】
液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従しない低温下での駆動電圧の印加は、調光装置での電力消費を不要に高めてしまい、また、液晶分子の温度を高めることを遅らせてしまう。この点、上記構成によれば、液晶分子の分極方向を変えることに先駆けて、所定時間にわたり液晶分子が加熱される。そのため、液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従しないような低温下での駆動電圧の印加が抑えられる。
【0016】
上記調光装置において、前記液晶分子の分極方向が前記駆動電圧に追従するときの前記調光シートの温度が所定の駆動可能温度であり、前記駆動部は、前記調光シートの温度を測定する測定部を備え、前記測定部の測定値が前記駆動可能温度よりも低いときに、前記加熱電圧の印加を許容して前記駆動電圧の印加を禁止し、前記測定部の測定値が前記駆動可能温度であるときに、前記加熱電圧の印加を禁止して前記駆動電圧の印加を許容してもよい。
【0017】
上記構成によれば、調光シートの温度が駆動可能温度よりも低いときに、駆動電圧の印加が禁止され、かつ、加熱電圧の印加が許容されるため、液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従し得ないときに、すなわち、液晶分子が加熱を要するときに、その加熱が実行される。また、調光シートの温度が駆動可能温度であるときに、加熱電圧の印加が禁止され、かつ、駆動電圧の印加が許容されるため、液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従し得るときに、すなわち、液晶分子が加熱を要しないときに、その加熱を禁止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る調光装置によれば、調光シートを駆動可能とする温度の下限値が引き下げ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】調光装置の第1実施形態が備える調光シートの構成を示す構成図。
図2】ノーマル型の調光シートの断面構造を示す断面図。
図3】リバース型の調光シートの断面構造を示す断面図。
図4】調光装置の第1実施形態における電気的構成を示すブロック図。
図5】調光装置が備える駆動回路の構成を示す回路図。
図6】調光装置が行う加熱処理の流れの一例を示すタイミングチャート。
図7】第1変更例の調光装置における電気的構成を示すブロック図。
図8】第2変更例の調光装置における電気的構成を示すブロック図。
図9】調光装置の第2実施形態が備える電気的構成の一部を示すブロック図。
図10】調光装置が行う加熱処理の流れの一例を示すタイミングチャート。
図11】調光装置が行う加熱処理での電圧レベルの推移を示すグラフ。
図12】変更例の調光装置が備える調光シートの構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1から図6を参照して、調光装置の第1実施形態を説明する。以下、調光シートの層構成、調光装置の電気的構成、調光装置が行う加熱処理、および、調光装置が行う駆動処理を、この順に説明する。
【0021】
なお、第1実施形態の調光装置は、調光シートが備える第1透明電極と第2透明電極との両方を、液晶分子の加熱源とする例であり、液晶分子の分極方向を変えない期間に、液晶分子を加熱する例である。
【0022】
[調光シート10]
図1は、調光シート10を3つの機能層に分解して示す分解斜視図である。各機能層は、単一の層構造を有してもよいし、積層された多層構造を有してもよい。
【0023】
調光シート10は、例えば、車両や航空機などの移動体が備える窓に貼り付けられる。調光シート10は、例えば、住宅、駅、空港などの各種の建物が備える窓、オフィスに設置されるパーティション、店舗に設置されるショーウインドウ、自動ドアなどの移動体などに貼り付けられてもよい。
【0024】
調光シート10が有する形状は、例えば、平面状である。調光シート10が有する形状は、二次元方向に曲率を有した曲面状であってもよいし、三次元方向に曲率を有した曲面状であってもよい。調光シート10が有する外形は、ガラス板や透明樹脂板などの支持体の外形と同じ外形を有してもよいし、支持体の外形とは異なる外形を有してもよい。
【0025】
調光シート10の型式は、ノーマル型とリバース型とのいずれか一方である。
ノーマル型の調光シート10は、調光シート10の通電時に低い光透過率を有し、調光シート10の非通電時に高い光透過率を有する。ノーマル型の調光シート10は、調光シート10の通電時に透明であり、調光シート10の非通電時に不透明である。
【0026】
リバース型の調光シート10は、調光シート10の通電時に高い光透過率を有し、調光シート10の非通電時に低い光透過率を有する。リバース型の調光シート10は、調光シート10の通電時に不透明であり、調光シート10の非通電時に透明である。
透明は、有色の透明であってもよいし、無色の透明であってもよい。
【0027】
透明とは、調光シート10を通して物体の存否を視覚認識可能とする状態である。不透明とは、調光シート10を通して物体の存否を視覚認識不能とする状態である。透明とは、調光シート10を通して物体の形状や種類を視覚認識可能とする状態であってもよい。不透明とは、調光シート10を通して物体の形状や種類を視覚認識不能とする状態であってもよい。
【0028】
調光シート10は、第1透明電極11、および、第2透明電極12を備える。各透明電極11,12は、別々の透明体に支持される。各透明電極11,12を支持する透明体は、例えば、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明ガラスシート、透明ガラス板である。
【0029】
調光シート10は、調光層13を備える。調光層13は、第1透明電極11と第2透明電極12との間に位置する。第1透明電極11、調光層13、および、第2透明電極12が積み重なる方向は、調光シート10の積層方向である。
【0030】
各透明電極11,12は、可視光透過性を備える。可視光透過性は、調光シート10を通した物体の視覚での認識を可能にする。各透明電極11,12を構成する材料は、例えば、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択されるいずれか一種である。
【0031】
調光層13は、液晶組成物を含む。調光層13は、容量成分と抵抗成分との並列回路として見なされる。液晶組成物に含まれる液晶分子の一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系からなる群から選択される一種である。
【0032】
液晶組成物の保持型式は、高分子ネットワーク型、高分子分散型、カプセル型からなる群から選択されるいずれか一種である。高分子ネットワーク型は、3次元の網目状を有した高分子ネットワークを備えて、相互に連通した網目状の空隙のなかに液晶組成物を保持する。高分子分散型は、孤立した多数の空隙を高分子層のなかに備えて、高分子層に分散した空隙のなかに液晶組成物を保持する。カプセル型は、カプセル状を有した液晶組成物を高分子層のなかに保持する。
【0033】
第1透明電極11は、一対の第1端子11P1,11P2を備える。一対の第1端子11P1,11P2は、第1透明電極11の中心を挟んで、相互に対向する位置に配置されている。第1透明電極11が矩形状を有する場合、例えば、第1透明電極11の上辺に沿って一方の第1端子11P1は延在する。また、他方の第1端子11P2は、第1透明電極11の下辺に沿って延在する。
【0034】
第2透明電極12は、一対の第2端子12P1,12P2を備える。一対の第2端子12P1,12P2は、第2透明電極12の中心を挟んで、相互に対向する位置に配置されている。一対の第2端子12P1,12P2は、積層方向において、一対の第1端子11P1,11P2とは重ならない位置に配置されている。第2透明電極12が矩形状を有する場合、例えば、第2透明電極12の右辺に沿って、一方の第2端子12P1は延在する。また、他方の第2端子12P2は、第2透明電極12の左辺に沿って延在する。
【0035】
図2は、ノーマル型の調光シート10が備える層構造の一例を示す。
図2が示すように、ノーマル型の調光シート10は、第1透明電極11、第2透明電極12、および、調光層13を備える。第1透明電極11、および、第2透明電極12は、切換部の一例である切換回路33に電気的に接続されている。
【0036】
切換回路33がノーマル型の調光シート10に駆動電圧を印加するとき、第1透明電極11の第1端子11P1,11P2には、切換回路33の出力端での電圧レベルである第1出力レベルSIGD1が入力される。また、第2透明電極12の第2端子12P1,12P2には、切換回路33の他の出力端での電圧レベルである第2出力レベルSIGD2が入力される。
【0037】
調光層13は、2つの透明電極11,12の間に印加された駆動電圧を受けて、液晶分子の分極方向を変える。駆動電圧は、液晶分子の分極方向を変える電圧である。各液晶分子の分極方向は、他の液晶分子の分極方向と揃っている状態、あるいは、無秩序な状態を含む。分極方向の変化は、調光層13に入る可視光の散乱度合い、吸収度合い、および、透過度合いを変える。
【0038】
第1出力レベルSIGD1と第2出力レベルSIGD2とが相互に等しい電圧レベルであるとき、例えば、2つの透明電極11,12が接地レベルに接続されるとき、ノーマル型の調光シート10は、液晶分子の分極方向を無秩序とする。液晶分子の分極方向が無秩序であるとき、ノーマル型の調光シート10での光透過率は、相対的に低い。
【0039】
第1出力レベルSIGD1と第2出力レベルSIGD2との電位差が所定値以上であるとき、すなわち、2つの透明電極11,12間の電圧が所定値以上であるとき、ノーマル型の調光シート10は、調光層13が可視光を透過するように、液晶分子の分極方向を揃える。液晶分子の分極方向が揃っているとき、ノーマル型の調光シート10での光透過率は、相対的に高い。
【0040】
図3は、リバース型の調光シート10が備える層構造の一例を示す。
図3が示すように、リバース型の調光シート10は、第1透明電極11、第2透明電極12、第1配向膜14、第2配向膜15、および、調光層13を備える。
調光層13は、第1配向膜14と第2配向膜15との間に位置する。第1配向膜14は、調光層13と第1透明電極11との間に位置し、かつ、調光層13と接している。第2配向膜15は、調光層13と第2透明電極12との間に位置し、かつ、調光層13と接している。
【0041】
第1配向膜14、および、第2配向膜15を構成する材料は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シアン化化合物等の有機化合物、シリコーン、シリコン酸化物、酸化ジルコニウム等の無機化合物、または、これらの混合物により構成されている。
【0042】
配向膜14、および、第2配向膜15は、例えば、垂直配向膜、あるいは、水平配向膜である。垂直配向膜は、第1透明電極11の電極面、および、第2透明電極12の電極面と垂直になるように、液晶分子の分極方向を配向させる。水平配向膜は、第1透明電極11の電極面、および、第2透明電極12の電極面とほぼ平行となるように、液晶分子の分極方向を配向させる。
【0043】
切換回路33がリバース型の調光シート10に駆動電圧を印加するとき、ノーマル型の調光シート10と同じく、第1透明電極11の第1端子11P1,11P2には、第1出力レベルSIGD1が入力されて、第2透明電極12の第2端子12P1,12P2には、第2出力レベルSIGD2が入力される。
【0044】
第1出力レベルSIGD1と第2出力レベルSIGD2とが相互に等しい電圧レベルであるとき、例えば、2つの透明電極11,12が接地レベルに接続されるとき、リバース型の調光シート10は、調光層13が可視光を透過するように、液晶分子の分極方向を各配向膜14,15によって揃える。液晶分子の分極方向を揃っているとき、リバース型の調光シート10での光透過率は、相対的に高い。
【0045】
第1出力レベルSIGD1と第2出力レベルSIGD2との電位差が所定値以上であるとき、すなわち、2つの透明電極11,12間の電圧が所定値以上であるとき、リバース型の調光シート10は、調光層13が可視光を透過しないように、液晶分子の分極方向を揃える。液晶分子の分極方向が揃っているとき、リバース型の調光シート10での光透過率は、相対的に低い。
【0046】
[調光シート駆動装置]
図4は、駆動装置20の構成を機能的に示すブロック図である。
図4が示すように、駆動装置20は、保護回路22、昇圧回路23、駆動回路24、電圧生成回路25、および、タイミング制御回路26を備える。
保護回路22は、電源21と昇圧回路23とに接続されている。保護回路22は、電源21が出力する直流定電圧を昇圧回路23に入力する。保護回路22は、電源21と電圧生成回路25とに接続されている。保護回路22は、電源21が出力する直流定電圧を電圧生成回路25に入力する。保護回路22は、電源21の出力電流が所定値以上であるとき、ヒューズを溶断して、電源21と昇圧回路23との接続、および、電源21と電圧生成回路25との接続を断つ。保護回路22が備えるヒューズは、正常電流のリップルでは溶断されないように、大きな溶断電流を備える。
【0047】
昇圧回路23は、保護回路22が入力する直流定電圧から、駆動電圧を生成するための電圧を生成する。駆動電圧を生成するための高駆動レベルVHは、例えば50Vである。駆動電圧は、高駆動レベルVHと基準レベルV0とが交互に繰り返される波形を有する。高駆動レベルVHは、常温常圧下での駆動電圧の印加によって液晶分子の配向を変え得る大きさである。なお、常温とは20℃であり、常圧とは1気圧である。
【0048】
[駆動電圧]
駆動回路24は、昇圧回路23が入力する直流定電圧を用いた駆動電圧を生成する。駆動回路24は、生成された駆動電圧を切換回路33に入力する。駆動回路24は、生成された駆動電圧を、第1出力レベルSIGD1、および、第2出力レベルSIGD2として出力する。駆動電圧では、第1出力レベルSIGD1と第2出力レベルSIGD2とが相互に異なる電圧レベルである。
【0049】
詳述すると、駆動回路24が駆動電圧を出力するとき、第1出力レベルSIGD1は、高駆動レベルVHと基準レベルV0とに交互に切り換わる。基準レベルV0は、各種電位の基準となるレベルであって、例えば、接地レベルである。また、駆動回路24が駆動電圧を出力するとき、第2出力レベルSIGD2もまた、高駆動レベルVHと基準レベルV0とに交互に切り換わる。
【0050】
電圧生成回路25は、保護回路22と接続されている。電圧生成回路25は、保護回路22が出力する直流定電圧から、タイミング制御回路26を駆動するための電圧レベルを生成し、生成された電圧レベルをタイミング制御回路26に入力する。
【0051】
図5は、駆動回路24の構成の一例を示す回路図である。
図5が示すように、駆動回路24は、第1スイッチQ1、第2スイッチQ2、第3スイッチQ3、および、第4スイッチQ4から構成されるフルブリッジ回路を備える。第1スイッチQ1は、pチャンネル型トランジスタである。第2スイッチQ2は、nチャンネル型トランジスタである。第1スイッチQ1と第2スイッチQ2とが、CMOSトランジスタを構成する。また、第3スイッチQ3は、pチャンネル型トランジスタである。第4スイッチQ4は、nチャンネル型トランジスタである。第3スイッチQ3と第4スイッチQ4とが、CMOSトランジスタを構成する。
【0052】
第1スイッチQ1と第2スイッチQ2とは、直列接続されている。第3スイッチQ3と第4スイッチQ4とは、直列接続されている。直列接続された第1スイッチQ1、および、第2スイッチQ2と、直列接続された第3スイッチQ3、および、第4スイッチQ4とは、並列接続されている。第1スイッチQ1と第2スイッチQ2との接続部は、第1出力レベルSIGD1の出力端に接続されている。第3スイッチQ3と第4スイッチQ4との接続部は、第2出力レベルSIGD2の出力端に接続されている。タイミング制御回路26は、フルブリッジ回路が備える各スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のオン期間を制御する。
【0053】
タイミング制御回路26は、演算処理装置とメモリとを備える。タイミング制御回路26は、各種の処理を全てソフトウェアで処理するものに限らない。例えば、タイミング制御回路26は、各種の処理のうちの少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。タイミング制御回路26は、ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(マイクロコンピュータ)、あるいは、これらの組み合わせ、を含む回路として構成してもよい。
【0054】
なお、以下では、タイミング制御回路26が、読み取り可能な可読媒体に駆動プログラムを記憶し、可読媒体が記憶する駆動プログラムを読み出して実行し、駆動電圧の生成を行う例を説明する。
【0055】
タイミング制御回路26は、第1スイッチQ1をオンオフするための信号と、第4スイッチQ4をオンオフするための信号とを、各スイッチQ1,Q4に同時に入力する。タイミング制御回路26は、第2スイッチQ2をオンオフするための信号と、第3スイッチQ3をオンオフするための信号とを、各スイッチQ2,Q3に同時に入力する。
【0056】
タイミング制御回路26は、駆動回路24にデッドタイムを設定する。デッドタイムは、高駆動レベルVHと基準レベルV0との間に貫通電流が流れることを防ぐための期間である。タイミング制御回路26は、高駆動レベルVHと基準レベルV0とを交互に切り換えるときに、デッドタイムとして、例えば、全てのスイッチQ1,Q2,Q3,Q4を同時にオフする期間を設定する。
【0057】
なお、タイミング制御回路26は、例えば、各スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のオン期間を制御して、電圧パルスの繰り返しである駆動電圧のパルス幅を変更してもよい。パルス幅の変更は、調光層13に印加される電圧の実効値を変えて、調光層13の可視光透過率を多階調化する。タイミング制御回路26は、調光シート10が備える可視光透過率の階調値を、入力部27から入力される操作信号に基づいて決定してもよい。入力部27から入力される操作信号は、例えば、可視光透過率を1段階ずつ上げたり下げたりするための操作ボタンの押下によって生成されたり、調光シート10を透明にしたり不透明にしたりする操作ボタンの押下によって生成される。
【0058】
[加熱電圧]
図4に戻り、駆動装置20は、タイマー回路31、ヒーター電源32、および、切換回路33を備える。駆動回路24、タイミング制御回路26、タイマー回路31、ヒーター電源32、および、切換回路33は、駆動部の一例である。
【0059】
タイマー回路31は、電源21と切換回路33とに接続されている。タイマー回路31は、電源21が入力する直流定電圧を受けて、駆動装置20に電源が投入されてからの経過時間を計測する。駆動装置20への電源の投入は、例えば、調光装置を起動するための操作信号が入力部27から入力されたときである。
【0060】
タイマー回路31は、切換信号SIGSを生成し、生成された切換信号SIGSを切換回路33に入力する。タイマー回路31は、タイマー回路31が計測した経過時間T0が所定時間である加熱時間THを上回るときに、切換信号SIGSを生成する。
【0061】
加熱時間THは、液晶組成物が含む液晶分子を加熱するための時間であって、液晶分子の分極方向を駆動電圧に追従させるための時間である。加熱時間THは、例えば、調光装置を使用可能とする温度の下限値から、駆動電圧の印加によって液晶分子が分極方向を変更可能とする温度の下限値まで、調光シート10の温度を上げるための時間である。加熱時間THは、予め実施される試験等の結果に基づいて設定される。
【0062】
ヒーター電源32は、電源21と切換回路33とに接続されている。ヒーター電源32は、電源21が入力する直流定電圧を受けて、第1透明電極11と第2透明電極12とを発熱させるための加熱電圧を生成する。加熱電圧は、直流定電圧であって、高レベルVMHと低レベルVMLとの差である。ヒーター電源32は、生成された高レベルVMHと、低レベルVMLと、を切換回路33に入力する。高レベルVMHは、例えば10Vであり、低レベルVMLは、例えば-10Vである。
【0063】
切換回路33は、第1透明電極11の第1端子11P1,11P2と、第2透明電極12の第2端子12P1,12P2と、に接続されている。切換回路33は、待機状態、駆動状態、および、加熱状態を有する。
【0064】
待機状態の切換回路33は、第1端子11P1,11P2、および、第2端子12P1,12P2に接地レベルを入力する。
加熱状態の切換回路33は、第1端子11P1と第2端子12P1とに高レベルVMHを入力し、かつ、第1端子11P2と第2端子12P2とに低レベルVMLを入力する。すなわち、加熱状態の切換回路33は、各透明電極11,12に加熱電圧を印加する。
【0065】
駆動状態の切換回路33は、第1端子11P1,11P2に第1出力レベルSIGD1を入力し、かつ、第2端子12P1,12P2に第2出力レベルSIGD2を入力する。すなわち、駆動状態の切換回路33は、透明電極11,12間に駆動電圧を印加する。
【0066】
切換回路33は、駆動装置20に電源が投入されるまで、待機状態を継続する。切換回路33は、駆動装置20に電源が投入されたときに、待機状態から加熱状態に遷移する。切換回路33は、駆動装置20に電源が投入されてから、タイマー回路31が切換信号SIGSを入力するまで、加熱状態を継続する。切換回路33は、タイマー回路31から切換信号SIGSが入力されたときに、加熱状態から駆動状態に遷移する。
【0067】
[駆動方法]
図6は、駆動装置20が行う加熱処理の流れを示すタイミングチャートである。図6は、スイッチQ1,Q2,Q3,Q4の状態、第1出力レベルSIGD1、第2出力レベルSIGD2、第1端子11P1,11P2の電圧レベル、および、第2端子12P1,12P2の電圧レベルの推移を示す。
【0068】
図6が示すように、タイミングt0にて、駆動装置20に電源が投入されると、タイマー回路31が経過時間T0を計測しはじめる。ヒーター電源32は、高レベルVMHと低レベルVMLとを切換回路33に入力する。切換回路33は、待機状態から加熱状態に遷移して、第1端子11P1に高レベルVMHを入力し、かつ、第1端子11P2に低レベルVMLを入力する。これらにより、第1透明電極11が発熱しはじめて、調光層13内の液晶組成物が第1透明電極11によって加熱されはじめる。また、切換回路33は、第2端子12P1に高レベルVMHを入力し、かつ、第2端子12P2に低レベルVMLを入力する。これにより、第2透明電極12が発熱しはじめて、調光層13の液晶組成物が第2透明電極12によって加熱されはじめる。
【0069】
次いで、タイミングt1からタイミングt2まで、タイミング制御回路26は、第1スイッチQ1と第4スイッチQ4とをオフするための信号と、第2スイッチQ2と第3スイッチQ3とをオンするための信号と、を駆動回路24に入力する。これらにより、駆動回路24は、昇圧回路23が入力する基準レベルV0と、第1出力レベルSIGD1の出力端と、を接続させる。また、駆動回路24は、昇圧回路23が入力する高駆動レベルVHと、第2出力レベルSIGD2の出力端と、を接続させる。
【0070】
次いで、タイミングt2からタイミングt3まで、タイミング制御回路26は、第2スイッチQ2と第3スイッチQ3とをオフするための信号を、駆動回路24に入力する。この間、タイミング制御回路26は、第1スイッチQ1と第4スイッチQ4とをオフするための信号を、駆動回路24に入力し続ける。すなわち、タイミング制御回路26は、駆動回路24に全てのスイッチQ1,Q2,Q3,Q4を同時にオフさせる。これらにより、タイミング制御回路26は、オン状態のスイッチQ1,Q2,Q3,Q4を通じて基準レベルV0と高駆動レベルVHとの間に貫通電流が流れることを防ぐ。
【0071】
次いで、タイミングt3からタイミングt4まで、タイミング制御回路26は、第1スイッチQ1と第4スイッチQ4とをオンするための信号と、第2スイッチQ2と第3スイッチQ3とをオフするための信号と、を駆動回路24に入力する。これにより、駆動回路24は、昇圧回路23が入力する高駆動レベルVHと、第1出力レベルSIGD1の出力端と、を接続させる。また、駆動回路24は、昇圧回路23が入力する基準レベルV0と、第2出力レベルSIGD2の出力端と、を接続させる。
【0072】
次いで、タイミングt4からタイミングt5まで、タイミング制御回路26は、第1スイッチQ1と第4スイッチQ4とをオフするための信号を、駆動回路24に入力する。この間、タイミング制御回路26は、第2スイッチQ2と第3スイッチQ3とをオフするための信号を、駆動回路24に入力し続ける。すなわち、タイミング制御回路26は、駆動回路24に全てのスイッチQ1,Q2,Q3,Q4を同時にオフさせる。これらにより、タイミング制御回路26は、オン状態のスイッチQ1,Q2,Q3,Q4を通じて基準レベルV0と高駆動レベルVHとの間に貫通電流が流れることを防ぐ。
【0073】
以降、タイミングt1からタイミングt5までと同様に、タイミング制御回路26は、各スイッチQ1,Q4をオフするための信号、および、各スイッチQ2,Q3をオンするための信号の入力と、各スイッチQ1,Q4をオンするための信号、および、各スイッチQ2,Q3をオフするための信号の入力と、を交互に繰り返す。駆動回路24は、第1出力レベルSIGD1と、第2出力レベルSIGD2と、の間で極性の反転を繰り返す。
【0074】
一方、タイミングt1からタイミングt4までは、経過時間T0が加熱時間TH以下であって、タイマー回路31は切換信号SIGSを入力していない。そのため、切換回路33は、駆動回路24が入力する駆動電圧を調光シート10に印加せず、ヒーター電源32が入力する加熱電圧を調光シート10に印加して、加熱状態を継続する。そして、切換回路33は、調光層13内の液晶組成物を、第1透明電極11の発熱と、第2透明電極12の発熱と、によって加熱し続ける。
【0075】
次いで、タイミングt5にて、経過時間T0が加熱時間THを上回り、タイマー回路31が切換回路33に切換信号SIGSを入力する。切換回路33は、切換信号SIGSの入力を受けて、加熱状態から駆動状態に遷移する。すなわち、切換回路33は、ヒーター電源32が入力する加熱電圧を調光シート10に印加せず、駆動回路24が入力する駆動電圧を調光シート10に印加する。これにより、加熱された状態の液晶分子に、液晶分子の分極方向を変えるための電圧が印加されて、加熱された状態の液晶分子が分極方向を変える。
【0076】
以上、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1-1)駆動装置20による電圧の印加が、液晶組成物を加熱可能にすると共に、加熱された状態の液晶分子を用いて、当該液晶分子の分極方向を変更可能にする。結果として、液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従しないような低温下に調光シート10が置かれたとしても、液晶分子の分極方向が変更可能となる。それゆえに、調光シート10を駆動可能とする温度の下限値が引き下げ可能となる。
【0077】
(1-2)切換回路33が、駆動電圧の印加と加熱電圧の印加とを切り換えるため、液晶分子の加熱と液晶分子の駆動とが別々に実行可能となる。そのため、調光シート10の加熱を不要とする期間では、加熱電圧の印加による電力消費が低減可能ともなる。
【0078】
(1-3)液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従しない低温下での駆動電圧の印加は、調光装置での電力消費を不要に高めてしまい、また、液晶組成物の温度を高めることを遅らせてしまう。この点、電源が駆動装置20に投入されてからの経過時間T0をタイマー回路31が計測し、経過時間T0が加熱時間THを上回るときに、切換回路33を加熱状態から駆動状態に切り換えるための切換信号SIGSが、タイマー回路31から切換回路33に入力される。そのため、液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従しないような低温下では、駆動電圧の印加が抑えられる。
【0079】
(1-4)駆動電圧を印加するための第1端子11P1,11P2を用いて第1透明電極11を発熱させるため、加熱電圧を印加するための端子を第1透明電極11に別途備えることを要しない。また、駆動電圧を印加するための第2端子12P1,12P2を用いて第2透明電極12を発熱させるため、加熱電圧を印加するための端子を第2透明電極12に別途備えることを要しない。そのため、第1透明電極11、および、第2透明電極12の構成を簡素化できる。
【0080】
なお、上記第1実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・切換回路33は、タイマー回路31が入力する切換信号SIGS以外の入力に基づいて、加熱状態から駆動状態に切り換わる構成であってもよい。
切換回路33は、例えば、調光シート10の使用状況を示すパラメーターから加熱時間THを導き出すための学習結果とアルゴリズムとを記憶してもよい。そして、切換回路33は、実際の使用状況を示すパラメーターを取得し、当該パラメーターを用いて導き出される加熱時間THを用いて、加熱状態と駆動状態とに切り換わる構成であってもよい。なお、タイマー回路31が入力する切換信号SIGS以外の入力例を、第1変更例、および、第2変更例に示す。
【0081】
[第1変更例]
図7が示すように、駆動装置20は、測定回路41をさらに備えてもよい。
測定回路41は、調光シート10の温度を測定し、測定値が所定値である駆動可能温度を上回るか否かを監視する。測定回路41は、駆動装置20に電源が投入されたときに監視を開始する。測定回路41は、測定値が駆動可能温度であるときに、駆動許可信号SIGEを切換回路33に入力する。
【0082】
駆動可能温度は、液晶分子の分極方向が駆動電圧に追従するときの調光シート10の温度である。駆動可能温度は、液晶組成物を構成する各化合物の配合、液晶分子の構造、駆動電圧などに応じて変わり得るものであって、予め実施される試験等の結果に基づいて設定される。
【0083】
なお、測定回路41は、調光シート10の形式、調光シート10が置かれる環境の温度、当該温度の変化量、液晶組成物に照射される紫外線量、当該紫外線量の変化量、および、その環境に置かれ続けた期間などと、駆動可能温度と、を対応付けた情報を記憶してもよい。そして、測定回路41は、外部から入力される各種のパラメーターに基づいて、当該パラメーターに対応付けられた駆動可能温度を、駆動許可信号SIGEの生成に用いてもよい。
【0084】
切換回路33は、駆動装置20に電源が投入されるまで、待機状態を継続する。切換回路33は、駆動装置20に電源が投入されたときに、測定回路41が駆動許可信号SIGEを入力しているか否かを判断する。切換回路33は、測定回路41が駆動許可信号SIGEを入力していると判断したとき、待機状態から駆動状態に遷移する。
【0085】
一方、切換回路33は、測定回路41が駆動許可信号SIGEを入力していないと判断したとき、待機状態から加熱状態に遷移する。切換回路33は、駆動装置20に電源が投入されてから、測定回路41が駆動許可信号SIGEを入力するまで、加熱状態を継続する。そして、切換回路33は、測定回路41が駆動許可信号SIGEを入力したときに、加熱状態から駆動状態に遷移する。
【0086】
以上、第1変更例によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1-5)調光シート10の温度が駆動可能温度よりも低いときに、駆動電圧の印加が禁止され、かつ、加熱電圧の印加が許容されるため、液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従し得ないとき、すなわち、液晶組成物が加熱を要するときに、その加熱が実行可能ともなる。
【0087】
(1-6)また、調光シート10の温度が駆動可能温度であるときに、加熱電圧の印加が禁止され、かつ、駆動電圧の印加が許容されるため、液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従し得るとき、すなわち、液晶組成物が加熱を要しないときに、その加熱を禁止できる。
【0088】
・上記変更例1において、測定回路41は、切換回路33が一旦駆動状態に遷移した後に、調光シート10の温度が駆動可能温度であるか否かを監視してもよい。この際、切換回路33は、測定回路41が駆動許可信号SIGEを入力する期間にわたり、駆動状態を継続し、測定回路41が駆動許可信号SIGEの入力を停止する期間にわたり、加熱状態を継続してもよい。
【0089】
加熱電圧の印加によって一旦昇温された調光シート10は、加熱電圧が印加されていない期間中に、すなわち、駆動電圧が印加されている期間中に降温し、再び、液晶分子の分極方向が駆動電圧に追従しなくなり得る。この点、上記変更例によれば、液晶分子の分極方向が駆動電圧に再度追従しなくなるときに、液晶分子の加熱を開始することができる。そして、液晶分子の分極方向が駆動電圧に再度追従するときに、液晶分子の加熱を終了することができる。
【0090】
なお、上記変更例においては、駆動装置20が、第1実施形態に記載のタイマー回路31を備え、駆動装置20に電源が投入されてから加熱時間THだけ、液晶分子の加熱を行うようにすることも可能である。
【0091】
[第2変更例]
図8が示すように、駆動装置20は、操作部42をさらに備えてもよい。
操作部42は、利用者による操作を受け付けて、加熱開始信号SIGHと加熱終了信号SIGLとを切換回路33に入力する。切換回路33は、操作部42が入力する加熱開始信号SIGHを受けて、待機状態、あるいは、駆動状態から、加熱状態に遷移する。切換回路33は、操作部42が入力する加熱終了信号SIGLを受けて、加熱状態から駆動状態に遷移する。
【0092】
以上、第2変更例によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1-7)液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従し得る使用温度は、液晶組成物の経年劣化や使用頻度などによって変わりやすい。この点、操作部42からの加熱開始信号SIGHを受けて切換回路33が駆動状態から加熱状態に遷移する構成であれば、液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従していないことを利用者が視覚で認識したときに、液晶分子の加熱が実行可能となる。結果として、液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従していないときに、液晶組成物を適切に加熱できる。
【0093】
(1-8)液晶分子の分極方向が駆動電圧の変化に追従していないことを利用者が視覚で認識するとき、例えば、調光シート10の全面で追従していないことが認識される場合もあれば、調光シート10の一部分で追従していないことが認識される場合もある。この点、操作部42からの加熱終了信号SIGLを受けて切換回路33が加熱状態から遷移する構成であれば、液晶分子が追従していないことが認識される程度に応じて、液晶分子に対する加熱の度合いを、利用者は変えることができる。
【0094】
(第2実施形態)
図9から図11を参照して、調光装置の第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態の調光装置は、タイマー回路31を備えず、第1実施形態とは異なる駆動電圧と加熱電圧とを用いて、駆動電圧と加熱電圧とを同時に印加可能であることが第1実施形態とは異なる。
以下では、第1実施形態の調光装置とは異なる点を主に説明し、第1実施形態と同様の構成について、その重複した説明を割愛する。なお、第2実施形態の調光装置は、調光シートが備える第2透明電極を、液晶分子の加熱源とする例であり、液晶分子の分極方向を変える期間に、液晶分子を加熱する例である。
【0095】
図9が示すように、昇圧回路23は、保護回路22が入力する直流定電圧から、駆動電圧を生成するための電圧を生成する。駆動電圧を生成するための高駆動レベルVHは、例えば50Vである。また、駆動電圧を生成するための低駆動レベルVLは、例えば、-50Vである。すなわち、昇圧回路23は、駆動電圧を生成するための電圧レベルとして、極性反転された駆動レベルVH,VLを、駆動回路24に入力する。
【0096】
駆動回路24は、第5スイッチQ5と、第5スイッチQ5に直接接続された第6スイッチQ6とを備える。第5スイッチQ5と第6スイッチQ6とが、CMOSトランジスタを構成する。第5スイッチQ5と第6スイッチQ6との接続部は、第1出力レベルSIGD1の出力端に接続されている。タイミング制御回路26は、各スイッチQ5,Q6のオン期間を制御する。
【0097】
タイミング制御回路26は、高駆動レベルVHと低駆動レベルVLとの間に貫通電流が流れることを抑えるため、デッドタイムを挟んで、高駆動レベルVHと低駆動レベルVLとを交互に繰り返させる。高駆動レベルVH,VL間の電位差は、常温常圧下での駆動電圧の印加によって液晶分子の配向を変え得る大きさである。なお、常温とは20℃であり、常圧とは1気圧である。駆動回路24は、生成した駆動電圧を第1透明電極11の第1端子11P1のみに入力する。なお、第2実施形態において、第2透明電極12の第2端子12P1,12P2は、接地レベルに接続され続ける。
【0098】
タイミング制御回路26は、反転制御信号SIGXを生成し、生成された反転制御信号SIGXを、切換部の一例である切換回路33に入力する。タイミング制御回路26は、例えば、第1透明電極11に駆動電圧が印加されている時間を計測し、印加時間が反転周期TXを経過するごとに、反転制御信号SIGXを生成する。反転周期TXは、例えば、24時間である。
【0099】
切換回路33は、ヒーター電源32と、第2透明電極12の第2端子12P1,12P2とに接続されている。切換回路33は、タイミング制御回路26が入力する反転制御信号SIGXを受けて、第2端子12P1,12P2の間で、加熱電圧の極性を反転させる。
【0100】
図10は、駆動装置20が行う加熱処理、および、駆動処理の流れを示すタイミングチャートである。図10は、スイッチQ5,Q6の状態、第1出力レベルSIGD1、第1端子11P1の電圧レベル、および、第2端子12P1,12P2の電圧レベルの推移を示す。
【0101】
タイミングt0にて、駆動装置20に電源が投入されると、ヒーター電源32は、高レベルVMHと低レベルVMLとを切換回路33に入力する。切換回路33は、第2端子12P1に低レベルVMLを入力し、かつ、第2端子12P2に高レベルVMHを入力する。これにより、第2透明電極12が発熱し、調光層13内の液晶組成物が第2透明電極12によって加熱されはじめる。
【0102】
次いで、タイミングt1からタイミングt2まで、タイミング制御回路26は、第5スイッチQ5をオフするための信号と、第6スイッチQ6をオンするための信号と、を駆動回路24に入力する。これにより、駆動回路24は、昇圧回路23が入力する低駆動レベルVLと、第1出力レベルSIGD1の出力端と、を接続させる。
【0103】
次いで、タイミングt2からタイミングt3まで、タイミング制御回路26は、第5スイッチQ5と第6スイッチQ6とをオフするための信号を、駆動回路24に入力する。これにより、タイミング制御回路26は、デッドタイムを設定し、低駆動レベルVLと高駆動レベルVHとの間に貫通電流が流れることを防ぐ。
【0104】
次いで、タイミングt3からタイミングt4まで、タイミング制御回路26は、第5スイッチQ5をオンするための信号と、第6スイッチQ6をオフするための信号と、を駆動回路24に入力する。これにより、駆動回路24は、昇圧回路23が入力する高駆動レベルVHと、第1出力レベルSIGD1の出力端と、を接続させる。
【0105】
次いで、タイミングt4からタイミングt5まで、タイミング制御回路26は、第5スイッチQ5と第6スイッチQ6とをオフするための信号を、駆動回路24に入力する。これにより、タイミング制御回路26は、デッドタイムを設定し、低駆動レベルVLと高駆動レベルVHとの間に貫通電流が流れることを防ぐ。
【0106】
以降、タイミングt1からタイミングt5と同様に、タイミング制御回路26は、各スイッチQ5,Q6を交互にオンするための信号の入力を繰り返し、駆動回路24は、第1出力レベルSIGD1の極性反転を繰り返す。
【0107】
このように、タイミングt1からタイミングt5までは、加熱電圧が第2透明電極12に印加されて、調光層13内の液晶組成物が第2透明電極12によって加熱される。また、極性を周期的に反転させる駆動電圧が液晶組成物に印加されて、液晶分子が加熱されつつ駆動される。
【0108】
この際、加熱電圧が第2透明電極12に印加されるとき、加熱電圧に相当する電位差が第2透明電極12に生じる。第2透明電極12の面内に電位差を生じさせつつ、透明電極11,12間に駆動電圧を印加するとなれば、液晶組成物に印加される電圧もまた、加熱電圧に相当するばらつきを、調光シート10の面内で生じ続けることになる。結果として、液晶組成物に印加される電圧が調光シート10の面内で均一である場合と比べて、不純物イオンなどの偏析を生じさせやすくなる。
【0109】
この点、上記タイミング制御回路26は、タイミングt6にて、切換回路33に反転制御信号SIGXを入力する。そして、切換回路33は、第2端子12P1に高レベルVMHを入力し、かつ、第2端子12P2に低レベルVMLを入力する。これにより、切換回路33は、第2端子12P1,12P2間で、加熱電圧の極性を反転させる。
【0110】
ここでも、加熱電圧が第2透明電極12に印加されて、調光層13内の液晶組成物が第2透明電極12によって加熱される。また、極性を周期的に反転させる駆動電圧が液晶組成物に印加されて、液晶分子が加熱されつつ駆動される。そして、調光シート10の面内での印加電圧のばらつきが、液晶組成物の物性値に偏りを生じさせるとしても、こうした偏りは、反転制御信号SIGXが入力される前と、反転制御信号SIGXが入力された後とで、相殺されるようになる。
【0111】
例えば、図11に示すように、前回の反転周期TXで、第1端子11P1と第2端子12P1との間には、低電圧dV1が印加される。一方で、第1端子11P1と第2端子12P2との間には、低電圧dV1よりも高い高電圧dV2が印加されるとする。高電圧dV2と低電圧dV1との差は、加熱電圧に相当する大きさである。
【0112】
そして、今回の反転周期TXで、第1端子11P1と第2端子12P1との間には、高電圧dV2が印加される。一方で、第1端子11P1と第2端子12P2との間には、低電圧dV1が印加される。結果として、調光シート10の面内での印加電圧のばらつきが、液晶組成物の物性値に偏りを生じさせるとしても、こうした偏りは、前回の反転周期TXと今回の反転周期TXとの間で相殺される。
【0113】
以上、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(2-1)駆動電圧の印加と加熱電圧の印加とを同時に行う調光処理において、同処理を行う期間のなかで、加熱電圧の極性が、第2端子12P1,12P2間で反転する。結果として、不純物イオンなどの偏析を生じさせ得る電位差が調光処理を行う全期間にわたり生じ続けることが抑えられる。
【0114】
(2-2)不純物イオンなどの偏析を生じさせ得る加熱電圧の極性が反転周期TXごとに反転するため、不純物イオンなどの偏析を抑える効果を、高い確度のもとで得られる。
【0115】
なお、上記実施形態は、以下のよう変更して実施することもできる。
・第2実施形態において、タイミング制御回路26は、調光シート10が対象に設置されてから経過した期間を計測し、当該期間が反転周期TXを経過するごとに、切換回路33に反転制御信号SIGXを入力する構成であってもよい。
【0116】
・第2実施形態において、タイミング制御回路26は、調光シート10の使用状況を示すパラメーターと反転周期TXとを対応付けた情報を記憶してもよい。そして、タイミング制御回路26は、実際の使用状況を示すパラメーターを取得し、当該パラメーターに対応付けられた反転周期TXを用いて、切換回路33に反転制御信号SIGXを入力する構成であってもよい。
【0117】
あるいは、タイミング制御回路26は、調光シート10の使用状況を示すパラメーターから反転周期TXを導き出すための学習結果とアルゴリズムとを記憶してもよい。そして、タイミング制御回路26は、実際の使用状況を示すパラメーターを取得し、当該パラメーターを用いて導き出される反転周期TXを用いて、切換回路33に反転制御信号SIGXを入力する構成であってもよい。
【0118】
上述したように、調光シート10の面内での印加電圧のばらつきは、調光シート10の長期間にわたる使用を通じて、液晶組成物の物性値の分布に偏りを生じさせる。この際、液晶組成物の物性値の分布に生じ得る偏りは、調光シート10の型式、液晶組成物が置かれる環境の温度、当該温度の変化量、液晶組成物に照射される紫外線量、当該紫外線量の変化量、および、その環境に置かれ続けた期間などに影響される。この点、上記変更例によれば、調光シート10の使用状況が加味された周期で、加熱電圧の極性反転が実行されるため、より適切な周期で加熱電圧の極性反転が実行可能ともなる。
【0119】
・各実施形態において、加熱電圧が印加される対象は、第2透明電極12のみであってもよい。この際、第1透明電極11は、第1端子11P1のみを備え、第1端子11P2を割愛された構成であってもよい。
【0120】
・各実施形態において、加熱電圧が印加される端子の一部分は、駆動電圧が印加される端子とは異なる端子であってもよい。さらに、加熱電圧が印加される端子の全ては、駆動電圧が印加される端子とは異なる端子であってもよい。
【0121】
・各実施形態において、加熱電圧が印加される端子数は、駆動電圧が印加される端子数よりも少なくてもよい。調光シート10のサイズが大きいほど、各透明電極11,12での電圧降下は大きい。そこで、調光シート10の面内で駆動電圧がばらつくことを抑えるべく、調光装置は、各透明電極11,12に3以上の端子数を備えて、各端子から駆動電圧が印加されてもよい。これによれば、各透明電極11,12での電圧降下が抑えられる。
【0122】
図12が示すように、第2透明電極12において、第2端子12P1,12P2は、共通する単一の辺に沿って並ぶ構成であってもよい。さらに、第1透明電極11においても、第1端子11P1,11P2は、共通する単一の辺に沿って並ぶ構成であってもよい。要は、単一の透明電極に加熱電圧を印加するための2以上の端子を透明電極が備える構成であれば、液晶分子の加熱源として透明電極が機能し得る。
【0123】
・液晶分子を加熱するための透明電極は、第1透明電極11と第2透明電極12とのなかで、液晶分子に対する低温側に位置する電極を含んでもよい。例えば、冷寒地であって、室内と外気とを区切る窓などに調光シート10が設置される場合には、液晶分子を加熱するための透明電極は、液晶分子に対する外気側に位置する電極を含んでもよい。この構成によれば、液晶分子の分極方向を駆動電圧に追従させるための加熱時間を短縮できる。
【0124】
なお、液晶分子を加熱するための透明電極が、第1透明電極11と第2透明電極12との両方である場合には、液晶分子に対する第1透明電極11の側が相対的に低温であれ、液晶分子に対する第2透明電極12の側が相対的に低温であれ、いずれの場合においても、加熱時間を短縮できる。
【0125】
この際、第1実施形態の駆動装置20は、入力部27や操作部42などの外部機器が入力する操作信号を受けて、第1透明電極11および第2透明電極12の少なくとも1つを、加熱電圧の印加対象とする構成としてもよい。この変更例であれば、調光装置が置かれた環境の変化などに合わせて、液晶分子に対する低温側に位置する電極が加熱源として機能し得る。
【0126】
また、第2実施形態の駆動装置20は、入力部27や操作部42などの外部機器が入力する操作信号を受けて、第1透明電極11と第2透明電極12とのいずれか1つを、駆動電圧の印加対象とし、他方を加熱電圧の印加対象とする構成としてもよい。この変更例においても、調光装置が置かれた環境の変化などに合わせて、液晶分子に対する低温側に位置する電極が加熱源として機能し得る。
【符号の説明】
【0127】
Q1~Q6…スイッチ、SIGD1…第1出力レベル、SIGD2…第2出力レベル、SIGE…駆動許可信号、SIGH…加熱開始信号、SIGL…加熱終了信号、SIGS…切換信号、SIGX…反転制御信号、T0…経過時間、TH…加熱時間、V0…基準レベル、VH,VL…駆動レベル、VMH…高レベル、VML…低レベル、10…調光シート、11…第1透明電極、11P1,11P2…第1端子、12…第2透明電極、12P1,12P2…第2端子、13…調光層、14,15…配向膜、20…駆動装置、21…電源、22…保護回路、23…昇圧回路、24…駆動回路、25…電圧生成回路、26…タイミング制御回路、27…入力部、31…タイマー回路、32…ヒーター電源、33…切換回路、41…測定回路、42…操作部。
図1
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図12