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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】光分岐挿入デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20230711BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20230711BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20230711BHJP
   H04B 10/075 20130101ALI20230711BHJP
【FI】
G02F1/01 C
G02B6/12 331
G02B6/12 301
H04J14/02 101
H04B10/075
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019107786
(22)【出願日】2019-06-10
(65)【公開番号】P2020201375
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】秋山 知之
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-039633(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0110401(US,A1)
【文献】特開2006-087062(JP,A)
【文献】特開2004-199046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
G02B 6/12-6/14
H04B 10/00-10/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数の光回路を備える光分岐挿入デバイスであって、
記複数の光回路は、それぞれ、
第1のサブ光回路と、
第2のサブ光回路と、
第3のサブ光回路と、を備え、
前記第1のサブ光回路、前記第2のサブ光回路、および前記第3のサブ光回路は、それぞれ、
入力カプラと、
出力カプラと、
前記入力カプラと前記出力カプラとの間の設けられる移相器と、を備え、
記複数の光回路のそれぞれにおいて、
前記第1のサブ光回路の出力カプラの第1のポートは、前記第2のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
前記第1のサブ光回路の出力カプラの第2のポートは、前記第3のサブ光回路の入力カプラの第2のポートに光学的に結合され、
前記第2のサブ光回路の出力カプラは、当該光回路の出力ポートに光学的に結合され、
前記第3のサブ光回路の入力カプラの第1のポートは、当該光回路の入力ポートに光学的に結合され、
前記第1のサブ光回路に入力されるWDM信号中の一部の波長チャネルが前記第2のサブ光回路を介して当該光回路の出力ポートに導かれると共に、前記WDM信号中の他の波長チャネルが前記第3のサブ光回路に導かれ、
前記第3のサブ光回路は、前記第1のサブ光回路から導かれてくる波長チャネルおよび当該光回路の入力ポートを介して導かれてくる波長チャネルを合波して出力する
ことを特徴とする光分岐挿入デバイス。
【請求項2】
記複数の光回路は直列に結合され、
各光回路の出力ポートは、次段の光回路の第1のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
最終段の光回路の出力ポートは、前記光分岐挿入デバイスのドロップポートに光学的に結合され、
各光回路の入力ポートは、次段の光回路の第3のサブ光回路の出力カプラに光学的に結合され、
最終段の光回路の入力ポートは、前記光分岐挿入デバイスのアドポートに光学的に結合される
ことを特徴とする請求項1に光分岐挿入デバイス。
【請求項3】
入力ポートと、
スルーポートと、
ドロップポートと、
アドポートと、
第1の光回路と、
第2の光回路と、を備え、
前記第1の光回路および前記第2の光回路は、それぞれ、
第1のサブ光回路と、
第2のサブ光回路と、
第3のサブ光回路と、を備え、
前記第1のサブ光回路、前記第2のサブ光回路、および前記第3のサブ光回路は、それぞれ、
入力カプラと、
出力カプラと、
前記入力カプラと前記出力カプラとの間の設けられる移相器と、を備え、
前記入力ポートは、前記第1の光回路の第1のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
前記スルーポートは、前記第1の光回路の第3のサブ光回路の出力カプラに光学的に結合され、
前記ドロップポートは、前記第2の光回路の第2のサブ光回路の出力カプラに光学的に結合され、
前記アドポートは、前記第2の光回路の第3のサブ光回路の入力カプラの第1のポートに光学的に結合され、
前記第1の光回路および前記第2の光回路のそれぞれにおいて、
前記第1のサブ光回路の出力カプラの第1のポートは、前記第2のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
前記第1のサブ光回路の出力カプラの第2のポートは、前記第3のサブ光回路の入力カプラの第2のポートに光学的に結合され、
前記第1の光回路の第2のサブ光回路の出力カプラは、前記第2の光回路の第1のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
前記第2の光回路の第3のサブ光回路の出力カプラは、前記第1の光回路の第3のサブ光回路の入力カプラの第1のポートに光学的に結合される
ことを特徴とする光分岐挿入デバイス。
【請求項4】
前記第1の光回路は、
前記第2のサブ光回路の出力光パワーを検出する第1の光モニタと、
前記第3のサブ光回路の出力光パワーを検出する第2の光モニタと、
前記第1の光モニタにより得られる第1のモニタ値および前記第2の光モニタにより得られる第2のモニタ値に基づいて、前記第1の光回路内に設けられる移相器を制御する第1の制御部と、を備え、
前記第1の制御部は、前記第1のモニタ値に基づいて、前記第1の光回路の第2のサブ光回路から前記第2の光回路に導かれる光のパワーが大きくなるように、前記第1のサブ光回路に設けられる移相器および前記第2のサブ光回路に設けられる移相器を制御し、前記第2のモニタ値に基づいて、前記第1の光回路の第3のサブ光回路から前記スルーポートに導かれる光のパワーが大きくなるように、前記第3のサブ光回路に設けられる移相器を制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の光分岐挿入デバイス。
【請求項5】
前記第2の光回路は、
前記第2のサブ光回路の出力光パワーを検出する第3の光モニタと、
前記第3のサブ光回路の出力光パワーを検出する第4の光モニタと、
前記第3の光モニタにより得られる第3のモニタ値および前記第4の光モニタにより得られる第4のモニタ値に基づいて、前記第2の光回路内に設けられる移相器を制御する第2の制御部と、を備え、
前記第2の制御部は、前記第3のモニタ値に基づいて、前記第2の光回路の第2のサブ光回路から前記ドロップポートに導かれる光のパワーが大きくなるように、前記第1のサブ光回路に設けられる移相器および前記第2のサブ光回路に設けられる移相器を制御し、前記第4のモニタ値に基づいて、前記第2の光回路の第3のサブ光回路から前記第1の光回路に導かれる光のパワーが大きくなるように、前記第3のサブ光回路に設けられる移相器を制御する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の光分岐挿入デバイス。
【請求項6】
前記第2の光回路内の第1~第3のサブ光回路の透過特性の周期は、前記第1の光回路内の第1~第3のサブ光回路の透過特性の周期の2倍である
ことを特徴とする請求項3に記載の光分岐挿入デバイス。
【請求項7】
前記第1の光回路内の第1~第3のサブ光回路の透過特性の周期は、前記入力ポートを介して前記第1の光回路に入力されるWDM信号の波長チャネルの間隔の2倍である
ことを特徴とする請求項6に記載の光分岐挿入デバイス。
【請求項8】
前記第1の光回路と前記第2の光回路との間に、前記第2の光回路と同じ構造の1または複数の光回路をさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載の光分岐挿入デバイス。
【請求項9】
前記1または複数の光回路のうちの前記第1の光回路から数えてm番目に配置される光回路内の第1~第3のサブ光回路の透過特性の周期は、前記第1の光回路内の第1~第3のサブ光回路の透過特性の周期の2m倍である
ことを特徴とする請求項8に記載の光分岐挿入デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分割多重システムにおいて使用される光分岐挿入デバイスに係わる。
【背景技術】
【0002】
複数の演算装置を備える情報処理システムの性能は、各演算装置の速度および演算装置間の伝送速度に依存する。各演算装置の速度は、シリコン集積回路の微細加工によるスケーリングにより向上してきている。また、演算装置間の伝送速度は、演算装置間を光ファイバで接続して波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送を行う構成が研究されている。この場合、各演算装置に対して光分岐挿入デバイスが実装されることがある。なお、光分岐挿入デバイスは、WDM信号から指定された波長の光信号を分岐し、また、未使用の波長チャネルに光信号を挿入することができる。
【0003】
図1は、従来の光分岐挿入デバイスの一例を示す。この光分岐挿入デバイスは、分布ブラッグ反射器(DBR:Distributed Bragg Reflector)を備える。ここで、図1に示すDBRは、波長フィルタの一例であり、波長λiの光を反射し、他の波長成分を透過させる。したがって、入力WDM信号が波長λ1~λNを含む場合、波長λiの光はDBRにより反射されてドロップポートに導かれ、他の波長成分はDBRを通過してスルーポートに導かれる。また、アドポートから波長λiaの光が入力される。ここで、波長λiおよび波長λiaは、互いに実質的に同じである。この場合、波長λiaの光は、DBRにより反射されてスルーポートに導かれる。このように、図1に示す光分岐挿入デバイスは、WDM信号から波長λiの光を分岐すると共に、そのWDM信号に波長λiaの光を挿入することができる。
【0004】
なお、アドおよびドロップする波長を必要に応じて可変できる光デバイスが提案されている(例えば、特許文献1)。また、経年劣化に対応可能な波長モニタ装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-109214号公報
【文献】特開2011-082749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光分岐挿入デバイスが備える波長フィルタ(図1では、DBR)の中心波長は、製造誤差を含むことがあり、また、温度に依存する。このため、波長フィルタの中心波長(図1では、DBRの反射波長)が目標波長(図1では、λiまたはλia)からずれることがある。そして、波長フィルタの中心波長が目標波長からずれると、分岐または挿入される光信号の損失が大きくなり、また、波長チャネル間でクロストークが発生し得る。すなわち、WDM信号の品質が劣化することがある。
【0007】
この問題は、精度の高い加工プロセスで光分岐挿入デバイスを作成すれば、解決または緩和し得る。ただし、精度の高い加工プロセスを使用すると、光分岐挿入デバイスの製造コストが高くなってしまう。
【0008】
本発明の1つの側面に係わる目的は、損失またはクロストークの小さい光分岐挿入デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様の光分岐挿入デバイスは、1または複数の光回路を備える。前記1または複数の光回路は、それぞれ、第1のサブ光回路と、第2のサブ光回路と、第3のサブ光回路と、を備える。前記第1のサブ光回路、前記第2のサブ光回路、および前記第3のサブ光回路は、それぞれ、入力カプラと、出力カプラと、前記入力カプラと前記出力カプラとの間の設けられる移相器と、を備える。前記1または複数の光回路のそれぞれにおいて、前記第1のサブ光回路の出力カプラの第1のポートは、前記第2のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、前記第1のサブ光回路の出力カプラの第2のポートは、前記第3のサブ光回路の入力カプラの第2のポートに光学的に結合され、前記第2のサブ光回路の出力カプラは、当該光回路の出力ポートに光学的に結合され、前記第3のサブ光回路の入力カプラの第1のポートは、当該光回路の入力ポートに光学的に結合され、前記第1のサブ光回路に入力されるWDM信号中の一部の波長チャネルが前記第2のサブ光回路を介して当該光回路の出力ポートに導かれると共に、前記WDM信号中の他の波長チャネルが前記第3のサブ光回路に導かれ、前記第3のサブ光回路は、前記第1のサブ光回路から導かれてくる波長チャネルおよび当該光回路の入力ポートを介して導かれてくる波長チャネルを合波して出力する。
【発明の効果】
【0010】
上述の態様によれば、損失またはクロストークの小さい光分岐挿入デバイスが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の光分岐挿入デバイスの一例を示す図である。
図2】光分岐挿入デバイスが使用される情報処理システムの一例を示す図である。
図3】光分岐挿入デバイスの一例を示す図である。
図4】サブ光回路の例を示す図である。
図5】サブ光回路のフィルタ特性の例を示す図である。
図6】光分岐挿入デバイスの構成および動作の一例を示す図である。
図7】サブ光回路11aの動作の一例を示す図である。
図8】サブ光回路12aの動作の一例を示す図である。
図9】サブ光回路11bの動作の一例を示す図である。
図10】サブ光回路12bの動作の一例を示す図である。
図11】サブ光回路13bの動作の一例を示す図である。
図12】サブ光回路13aの動作の一例を示す図である。
図13】8波長のWDM信号を処理する光分岐挿入デバイスの一例を示す図である。
図14図13に示す光分岐挿入デバイスの実施例を示す図である。
図15図13図14に示す光分岐挿入デバイスの透過スペクトルのシミュレーション結果を示す図である。
図16】16波長のWDM信号を処理する光分岐挿入デバイスの実施例を示す図である。
図17】移相器が調整される前の透過スペクトルのシミュレーション結果を示す図である。
図18】移相器が調整された後の透過スペクトルのシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2は、本発明の実施形態に係わる光分岐挿入デバイスが使用される情報処理システムの一例を示す。この情報処理システムは、サーバ100および複数の演算装置110(110a~110d)を備える。サーバ100は、波長選択スイッチ(WSS)1を介してネットワークに接続される。演算装置110a~110dは、それぞれ光分岐挿入デバイス(AD)2a~2dを介してネットワークに接続される。このネットワークは、WDM信号を伝送する。WDM信号は、波長チャネルλ1~λ4を含む。波長チャネルλ1~λ4は、一定の波長間隔(または、一定の周波数間隔)で配置されている。なお、以下の記載では、波長チャネルλi(i=1~4)を介して伝送される光信号を「光信号λi」と呼ぶことがある。また、演算装置110およびその演算装置110に接続される光分岐挿入デバイス2は、情報処理装置を構成する。
【0013】
波長選択スイッチ1は、WDM信号から所望の波長の光信号を分岐してサーバ100に導くことができる。また、波長選択スイッチ1は、サーバ100により生成される光信号をWDM信号に挿入することができる。
【0014】
光分岐挿入デバイス2aは、WDM信号から光信号λ1を分岐して演算装置110aに導くことができる。また、光分岐挿入デバイス2aは、演算装置110aにより生成される光信号λ1をWDM信号に挿入することができる。同様に、光分岐挿入デバイス2b~2dは、それぞれ対応する波長の光信号を処理することができる。
【0015】
上記構成の情報処理システムにおいて、サーバ100は、所望の演算装置110a~110dに信号を送信できる。例えば、演算装置100aに信号を送信するときは、サーバ100は、下りリンク光信号λ1を生成する。そうすると、波長選択スイッチ1は、WDM信号に下りリンク光信号λ1を挿入する。光分岐挿入デバイス2aは、WDM信号から下りリンク光信号λ1を分岐して演算装置110aに導く。また、各演算装置110a~110dは、サーバ100に信号を送信できる。例えば、演算装置110aがサーバ100に信号を送信するときは、演算装置110aは、上りリンク光信号λ1を生成する。そうすると、光分岐挿入デバイス2aは、WDM信号に上りリンク光信号λ1を挿入する。波長選択スイッチ1は、WDM信号から上りリンク光信号λ1を分岐してサーバ100に導く。
【0016】
図3は、本発明の実施形態に係わる光分岐挿入デバイスの一例を示す。この光分岐挿入デバイスは、例えば、図2に示す情報処理システムにおいて使用される。
【0017】
光分岐挿入デバイス2は、図3に示すように、入力ポート(INPUT)、スルーポート(THRUOGH)、ドロップポート(DROP)、アドポート(ADD)、および複数の光回路10(10a、10b)を備える。各光回路10は、3個のサブ光回路を備える。図3に示す例では、光回路10aはサブ光回路11a~13aを備え、光回路10bはサブ光回路11b~13bを備える。そして、光分岐挿入デバイス2は、WDM信号を処理する。
【0018】
光分岐挿入デバイス2は、予め指定された波長(以下、λi)を処理するように構成されている。そして、WDM信号は、入力ポートを介して光分岐挿入デバイス2に入力される。そうすると、光分岐挿入デバイス2は、WDM信号から光信号λiを分岐する。この光信号λiは、サブ光回路11a、12a、11b、12bを介してドロップポートに導かれる。また、光信号λiが除去されたWDM信号は、サブ光回路13aに導かれる。
【0019】
アドポートには、光信号λiaが与えられる。光信号λiおよび光信号λiaの波長は互いに実質的に同じである。光信号λiaは、サブ光回路13bを介してサブ光回路13aに導かれる。そして、サブ光回路13aは、サブ光回路11aから導かれてくるWDM信号に光信号λiaを挿入してスルーポートを介して出力する。
【0020】
各サブ光回路(11a~13a、11b~13b)は、図4に示すように、複数の2×2カプラおよび2×2カプラ間に設けられる移相器を備える。ここで、サブ光回路がN個の2×2カプラを備えるときは、移相器の数は、N-1である。
【0021】
図4(a)に示す実施例では、サブ光回路は、2個の2×2カプラ(31、32)を備える。この場合、このサブ光回路は、1個の移相器(41)を備える。なお、サブ光回路の入力端に設けられる2×2カプラを「入力カプラ」と呼ぶことがある。また、サブ光回路の出力端に設けられる2×2カプラを「出力カプラ」と呼ぶことがある。図4(a)に示す例では、2×2カプラ31が「入力カプラ」として使用され、2×2カプラ32が「出力カプラ」として使用される。ただし、1段目のサブ光回路(図3では、11a、11b)および2段目のサブ光回路(図3では、12a、12b)に設けられる入力カプラは、2×2カプラの代わりに、1個の入力ポートおよび2個の出力ポートを備える1×2カプラで実現してもよい。
【0022】
移相器41は、1組の光導波路(上アーム光導波路および下アーム光導波路)を含む。そして、移相器41は、上アーム光導波路と下アーム光導波路との間に所定の位相差を与える。すなわち、移相器41の入力光が分岐されて上アーム光導波路および下アーム光導波路に導かれるとき、上アーム光導波路を伝搬して出力端に到着する光の位相と、下アーム光導波路を伝搬して出力端に到着する光の位相との差分が所定の値になるように、移相器41は構成される。よって、この位相差は、上アーム光導波路の光パス長と下アーム光導波路の光パス長との差分に相当する。以下の記載では、この差分を「パス長差」と呼ぶことがある。
【0023】
移相器41のパス長差は、例えば、移相器41を構成する光導波路の温度を制御することで調整される。この実施例では、移相器41を構成する光導波路の近傍にヒータ51が設けられる。ヒータ51は、例えば、三相絶縁電線(TIW)等の電気抵抗体により実現される。ただし、ヒータ51は、TIWに限定されるものではなく、他の構成で実現してもよい。
【0024】
制御部61は、サブ光回路の出力パワーを表す光パワーモニタ値に基づいて、移相器41のパス長差を制御する。光パワーモニタ値は、不図示の光パワーモニタによりモニタされる。そして、制御部61は、光パワーモニタ値を大きくするように、或いは、光パワーモニタ値を小さくするように、ヒータ51の電流を制御する。なお、ヒータ51の電流が変化すると、移相器41を構成する光導波路の屈折率が変化し、移相器41のパス長差が調整される。
【0025】
図4(b)に示す実施例では、サブ光回路は、4個の2×2カプラ(31~34)および3個の移相器(41~43)を備える。各移相器41~43は、それぞれ、2×2カプラの間に設けられる。すなわち、2×2カプラ31、32間に移相器41が設けられ、2×2カプラ32、33間に移相器42が設けられ、2×2カプラ33、34間に移相器43が設けられる。この場合、移相器41~43の近傍にそれぞれヒータ51~53が設けられる。そして、制御部61は、ヒータ51~53の電流を制御することにより、移相器41~43のパス長差をそれぞれ調整する。なお、移相器41~43のパス長差は、互いに同じであってもよいし、互いに同じでなくてもよい。一例としては、最も入力側に設けられる移相器(図4(b)では、移相器41)のパス長差がΔLであるとき、他の移相器のパス長差は2ΔLに設定される。
【0026】
各サブ光回路は、図4に示すように、2個の入力ポート(P1、P4)および2個の出力ポート(P2、P3)を備える。入力ポートP1、P4は、サブ光回路の入力端に設けられる2×2カプラ(即ち、入力カプラ)の入力ポートに相当する。また、出力ポートP2、P3は、サブ光回路の出力端に設けられる2×2カプラ(即ち、出力カプラ)の出力ポートに相当する。
【0027】
図5は、サブ光回路のフィルタ特性の一例を示す。この例では、図5(a)に示すように、WDM信号の波長チャネルが一定の波長間隔Δλで配置されているものとする。
【0028】
サブ光回路を構成する移相器は、波長フィルタとして機能し得る。例えば、図4(a)または図4(b)に示す移相器41は、上アーム光導波路の光パス長と下アーム光導波路の光パス長との差分(すなわち、パス長差)に依存するフィルタ特性を有する。具体的には、移相器の透過特性は、波長に対して周期的に変化する。この周期は、移相器のパス長差に依存する。以下の記載では、移相器41の透過特性の周期がΔλとなるときの移相器41のパス長差を「4ΔL」と表す。この場合、移相器41のパス長差を4ΔLに制御すると、図5(b)に示すように、移相器41の透過特性の周期がΔλとなる。なお、Δλは、WDM信号の波長間隔を表す。
【0029】
移相器41のパス長差が大きくなると移相器41の透過特性の周期は小さくなり、移相器41のパス長差が小さくなると移相器41の透過特性の周期は大きくなる。ここで、移相器41の透過特性の周期は、実質的に、移相器41のパス長差に反比例する。したがって、移相器41のパス長差を2ΔLに制御すると、図5(c)に示すように、移相器41の透過特性の周期が2Δλとなる。また、移相器41のパス長差をΔLに制御すると、図5(d)に示すように、移相器41の透過特性の周期が4Δλとなる。
【0030】
なお、各移相器は、図4(a)または図4(b)に示すように、2個の出力ポート(即ち、P2、P3)を備える。そして、入力ポートP1と一方の出力ポートとの間の透過特性と、入力ポートP1と他方の出力ポートとの間の透過特性とは、互いに反転している。
【0031】
このように、各光回路10(10a、10b)において、サブ光回路11a、11bの出力カプラの第1のポートは、サブ光回路12a、12bの入力カプラに光学的に結合される。サブ光回路11a、11bの出力カプラの第2のポートは、サブ光回路13a、13bの入力カプラの第2のポートに光学的に結合される。サブ光回路12a、12bの出力カプラは、当該光回路の出力ポートに光学的に結合される。なお、光回路10bにおいては、この出力ポートは、光分岐挿入デバイスのドロップポートに光学的に結合される。サブ光回路13a、13bの入力カプラの第1のポートは、当該光回路の入力ポートに光学的に結合される。なお、光回路10bにおいては、この入力ポートは、光分岐挿入デバイスのアドポートに光学的に結合される。サブ光回路11a、11bに入力されるWDM信号中の一部の波長チャネルがサブ光回路12a、12bを介して当該光回路の出力ポートに導かれると共に、そのWDM信号中の他の波長チャネルがサブ光回路13a、13bに導かれる。サブ光回路13a、13bは、サブ光回路11a、11bから導かれてくる波長チャネルおよび当該光回路の入力ポートを介して導かれてくる波長チャネルを合波して出力する。
【0032】
次に、図3に示す光分岐挿入デバイス2の構成および動作を詳しく説明する。以下の記載では、光信号λ1~λ4を含むWDM信号が、入力ポートを介してサブ光回路11aに導かれるものとする。また、光分岐挿入デバイス2は、波長λ1の光を処理するように構成されている。すなわち、光分岐挿入デバイス2は、入力WDM信号から光信号λ1を分岐する。また、アドポートから光信号λ1aが入力されると、光分岐挿入デバイス2は、WDM信号に光信号λ1aを挿入する。すなわち、光信号λ1が光信号λ1aに置き換えられる。なお、光信号λ1aの波長は、光信号λ1の波長と実質的に同じであるものとする。
【0033】
図6は、光分岐挿入デバイス2の構成および動作の一例を示す。光分岐挿入デバイス2は、図3を参照して説明したように、サブ光回路11a~13a、11b~13bを備える。各サブ光回路11a~13a、11b~13bは、図4に示すように、入力ポートP1、P4、および出力ポートP2、P3を備える。図6においては、各サブ光回路11a~13a、11b~13bの2つの入力ポートのうち、上側のポートが入力ポートP4に相当し、下側のポートが入力ポートP1に相当する。各サブ光回路11a~13a、11b~13bの2つの出力ポートのうち、上側のポートが出力ポートP2に相当し、下側のポートが出力ポートP3に相当する。
【0034】
光分岐挿入デバイス2の入力ポートは、サブ光回路11aの入力ポートP1に光学的に結合される。サブ光回路11aの出力ポートP2は、サブ光回路12aの入力ポートP1に光学的に結合される。サブ光回路11aの出力ポートP3は、サブ光回路13aの入力ポートP1に光学的に結合される。サブ光回路12aの出力ポートP3は、サブ光回路11bの入力ポートP1に光学的に結合される。サブ光回路11bの出力ポートP2は、サブ光回路12bの入力ポートP1に光学的に結合される。サブ光回路11bの出力ポートP3は、サブ光回路13bの入力ポートP1に光学的に結合される。サブ光回路12bの出力ポートP3は、光分岐挿入デバイス2のドロップポートに光学的に結合される。光分岐挿入デバイス2のアドポートは、サブ光回路13bの入力ポートP4に光学的に結合される。サブ光回路13bの出力ポートP3は、サブ光回路13aの入力ポートP4に光学的に結合される。そして、サブ光回路13aの出力ポートP3は、光分岐挿入デバイス2のスルーポートに光学的に結合される。
【0035】
また、光分岐挿入デバイス2は、光パワーをモニタする光モニタ5a~5fを備える。各光モニタ5a~5fは、例えば、フォトダイオード等の受光器を備える。この場合、各光モニタ5a~5fは、受光器の出力電流を電圧信号に変換するアンプを備えていてもよい。
【0036】
光モニタ5aは、サブ光回路12aの出力ポートP3の出力光パワーを表す光パワーモニタ値を生成する。光モニタ5bは、サブ光回路12aの出力ポートP2の出力光パワーを表す光パワーモニタ値を生成する。光モニタ5cは、サブ光回路12bの出力ポートP3の出力光パワーを表す光パワーモニタ値を生成する。光モニタ5dは、サブ光回路12bの出力ポートP2の出力光パワーを表す光パワーモニタ値を生成する。光モニタ5eは、サブ光回路13bの出力ポートP2の出力光パワーを表す光パワーモニタ値を生成する。光モニタ5fは、サブ光回路13aの出力ポートP2の出力光パワーを表す光パワーモニタ値を生成する。
【0037】
更に、光分岐挿入デバイス2は、光モニタ5a~5fにより生成される光パワーモニタ値に基づいて対応する移相器のパス長差を制御する制御部6a~6fを備える。制御部6a~6fは、図4に示す制御部61に相当する。なお、図6において、「Inc」は、対応する光モニタにより検出される光パワーを大きくするフィードバック制御を行う制御部を表す。また、「Dec」は、対応する光モニタにより検出される光パワーを小さくするフィードバック制御を行う制御部を表す。
【0038】
制御部6aは、光モニタ5aにより検出される光パワーが大きくなるように、サブ光回路11aの各移相器のパス長差を調整する。制御部6bは、光モニタ5bにより検出される光パワーが小さくなるように、サブ光回路12aの各移相器のパス長差を調整する。制御部6cは、光モニタ5cにより検出される光パワーが大きくなるように、サブ光回路11bの移相器のパス長差を調整する。制御部6dは、光モニタ5dにより検出される光パワーが小さくなるように、サブ光回路12bの移相器のパス長差を調整する。制御部6eは、光モニタ5eにより検出される光パワーが小さくなるように、サブ光回路13bの移相器のパス長差を調整する。制御部6fは、光モニタ5fにより検出される光パワーが小さくなるように、サブ光回路13aの各移相器のパス長差を調整する。なお、移相器のパス長差の調整は、この実施例では、図4を参照しながら説明したように、ヒータ51の電流を制御して移相器を構成する光導波路の屈折率を変化させることで実現される。
【0039】
制御部6a~6fは、例えば、プロセッサおよびメモリを含むプロセッサシステムにより実現される。この場合、制御部6a~6fの機能は、1個のプロセッサで実現してもよいし、複数のプロセッサで実現してもよい。また、制御部6a~6fの機能は、ハードウェア回路で実現してもよい。
【0040】
次に、各サブ光回路の動作を説明する。各サブ光回路11a~13aは、図4(b)に示すように、2×2カプラ31~34、移相器41~43、入力ポートP1、P4、出力ポートP2、P3を備える。ここで、移相器41のパス長差は2ΔLである。よって、移相器41の透過特性の周期は、図5(c)に示すように、2Δλである。また、移相器42、43のパス長差は、それぞれ4ΔLである。よって、各移相器42、43の透過特性の周期は、図5(b)に示すように、Δλである。
【0041】
図7は、サブ光回路11aの動作の一例を示す。なお、サブ光回路11aの入力ポートP1には、図7(a)に示すWDM信号が入力される。WDM信号は、光信号λ1~λ4を含む。光信号λ1~λ4は、波長間隔Δλで配置されている。
【0042】
サブ光回路11aの移相器41は、図6に示す制御部6aにより、図7(b)に示す透過特性を有するように調整される。すなわち、移相器41は、波長λ1、λ3を透過し、波長λ2、λ4を遮断するように調整される。なお、この透過特性は、入力ポートP1と出力ポートP2との間の光パスのフィルタ特性を表す。また、サブ光回路11aの移相器42、43は、制御部6aにより、それぞれ図7(c)に示す透過特性を有するように調整される。すなわち、移相器42、43は、それぞれ波長λ1、λ2、λ3、λ4を透過するように調整される。よって、出力ポートP2の出力光は、図7(d)に示すように、光信号λ1、λ3を含むが、光信号λ2、λ4を含まない。そして、出力ポートP2の出力光は、サブ光回路12aの入力ポートP1に導かれる。
【0043】
また、上述したように、入力ポートP1と一方の出力ポートとの間の透過特性と、入力ポートP1と他方の出力ポートとの間の透過特性とは、互いに反転している。すなわち、サブ光回路11aの入力光は、出力ポートP2を介して出力される光成分と出力ポートP3を介して出力される光成分とに分離される。したがって、出力ポートP3の出力光は、図7(e)に示すように、光信号λ2、λ4を含むが、光信号λ1、λ3を含まない。そして、出力ポートP3の出力光は、サブ光回路13aの入力ポートP1に導かれる。
【0044】
尚、サブ光回路11aにおいては、移相器41の出力側に移相器42、43を備える。ここで、移相器42、43は、良好な透過特性を実現するために設けられる。たとえば、図7(b)に示す透過特性でフィルタ動作が行われる場合、波長λ1、λ3の近傍の波長領域において雑音光成分が残存することがある。そこで、移相器41の出力光に対して、図7(c)に示す透過特性でフィルタ動作を行うことにより、波長λ1、λ3の近傍の雑音光成分が抑圧される。但し、サブ光回路11aにおいて、移相器42、43は、必須の回路要素ではない。また、サブ光回路12a、13aについての説明では、移相器42、43に係わる記載を省略する。
【0045】
図8は、サブ光回路12aの動作の一例を示す。なお、サブ光回路12aの入力ポートP1には、サブ光回路11aの出力ポートP2の出力光が導かれる。すなわち、サブ光回路12aの入力ポートP1には、図8(a)に示すように、光信号λ1、λ3が入力される。
【0046】
サブ光回路12aの移相器41は、図6に示す制御部6bにより、図8(b)に示す透過特性を有するように調整される。すなわち、移相器41は、波長λ2、λ4を透過し、波長λ1、λ3を遮断するように調整される。したがって、出力ポートP2の出力光は、図8(c)に示すように、実質的に光信号λ1~λ4を含まない。一方、出力ポートP3の出力光は、図8(d)に示すように、光信号λ1、λ3を含む。そして、出力ポートP3の出力光は、サブ光回路11bの入力ポートP1に導かれる。
【0047】
サブ光回路11b~13bは、それぞれ、図4(a)に示すように、2×2カプラ31、32、移相器41、入力ポートP1、P4、出力ポートP2、P3を備える。サブ光回路11b~13bにおいては、移相器41のパス長差はΔLである。よって、サブ光回路11b~13bの移相器41の透過特性の周期は、図5(d)に示すように、4Δλである。
【0048】
図9は、サブ光回路11bの動作の一例を示す。なお、サブ光回路11bの入力ポートP1には、サブ光回路12aの出力ポートP3の出力光が導かれる。すなわち、サブ光回路11bの入力ポートP1には、図9(a)に示すように、光信号λ1、λ3が入力される。
【0049】
サブ光回路11bの移相器41は、図6に示す制御部6cにより、図9(b)に示す透過特性を有するように調整される。すなわち、移相器41は、波長λ1を透過し、他の波長成分を遮断するように調整される。よって、出力ポートP2の出力光は、図9(c)に示すように、光信号λ1を含む。そして、出力ポートP2の出力光は、サブ光回路12bの入力ポートP1に導かれる。一方、出力ポートP3の出力光は、図9(d)に示すように、光信号λ3を含む。そして、出力ポートP3の出力光は、サブ光回路13bの入力ポートP1に導かれる。
【0050】
図10は、サブ光回路12bの動作の一例を示す。なお、サブ光回路12bの入力ポートP1には、サブ光回路11bの出力ポートP2の出力光が導かれる。即ち、サブ光回路12bの入力ポートP1には、図10(a)に示すように、光信号λ1が入力される。
【0051】
サブ光回路12bの移相器41は、図6に示す制御部6dにより、図10(b)に示す透過特性を有するように調整される。すなわち、移相器41は、波長λ3を透過し、他の波長成分を遮断するように調整される。したがって、出力ポートP2の出力光は、図10(c)に示すように、実質的に光信号λ1~λ4を含まない。一方、出力ポートP3の出力光は、図10(d)に示すように、光信号λ1を含む。そして、出力ポートP3の出力光は、光分岐挿入デバイス2のドロップポートに導かれる。
【0052】
図11は、サブ光回路13bの動作の一例を示す。なお、サブ光回路13bの入力ポートP1には、サブ光回路11bの出力ポートP3の出力光が導かれる。即ち、サブ光回路13bの入力ポートP1には、図11(a)に示すように、光信号λ3が入力される。また、サブ光回路13bの入力ポートP4には、光分岐挿入デバイス2のアドポートを介して、図11(b)に示す光信号λ1aが導かれる。光信号λ1aの波長は、光信号λ1の波長と実質的に同じである。
【0053】
サブ光回路13bの移相器41は、図6に示す制御部6eにより、入力ポートP1と出力ポートP3との間の光パスにおいて図11(c)に示す透過特性を有し、入力ポートP4と出力ポートP3との間の光パスにおいて図11(d)に示す透過特性を有するように調整される。すなわち、移相器41は、入力ポートP1から入力される光信号λ3を出力ポートP3に導くと共に、入力ポートP4から入力される光信号λ1aを出力ポートP3に導く。したがって、出力ポートP2の出力光は、図11(e)に示すように、実質的に光信号λ1~λ4を含まない。一方、出力ポートP3の出力光は、図11(f)に示すように、光信号λ1a、λ3を含む。そして、出力ポートP3の出力光は、サブ光回路13aの入力ポートP4に導かれる。
【0054】
図12は、サブ光回路13aの動作の一例を示す。なお、サブ光回路13aの入力ポートP1には、サブ光回路11aの出力ポートP3の出力光が導かれる。すなわち、サブ光回路13aの入力ポートP1には、図12(a)に示すように、光信号λ2、λ4が入力される。サブ光回路13aの入力ポートP4には、サブ光回路13bの出力ポートP3の出力光が導かれる。すなわち、サブ光回路13aの入力ポートP4には、図12(b)に示すように、光信号λ1a、λ3が入力される。
【0055】
サブ光回路13aの移相器41は、図6に示す制御部6fにより、入力ポートP1と出力ポートP3との間の光パスにおいて図12(c)に示す透過特性を有し、入力ポートP4と出力ポートP3との間の光パスにおいて図12(d)に示す透過特性を有するように調整される。すなわち、移相器41は、入力ポートP1から入力される光信号λ2、λ4を出力ポートP3に導くと共に、入力ポートP4から入力される光信号λ1a、λ3を出力ポートP3に導く。よって、出力ポートP2の出力光は、図12(e)に示すように、実質的に光信号λ1~λ4を含まない。一方、出力ポートP3の出力光は、図12(f)に示すように、光信号λ1a、λ2~λ4を含む。そして、出力ポートP3の出力光は、光分岐挿入デバイス2のスルーポートに導かれる。
【0056】
このように、サブ光回路11a、12a、11b、12bは、入力WDM信号から光信号λ1を分岐してドロップポートに導く。このとき、光信号λ3は、サブ光回路11aからサブ光回路12a、11b、13bを介してサブ光回路13aに導かれる。また、光信号λ2、λ4は、サブ光回路11aからサブ光回路13aに導かれる。さらに、光分岐挿入デバイス2のアドポートを介して入力される光信号λ1aは、サブ光回路13bを介してサブ光回路13aに導かれる。サブ光回路13aは、光信号λ1a、λ2~λ4を合波する。そして、合波された光信号λ1a、λ2~λ4は、光分岐挿入デバイス2のスルーポートを介して出力される。
【0057】
次に、各制御部6a~6fの動作について説明する。制御部6a~6fは、それぞれ、対応する光モニタ5a~5fにより生成される光パワーモニタ値に基づいて移相器のパス長差を調整する。
【0058】
制御部6aは、光モニタ5aにより生成される光パワーモニタ値に基づいてサブ光回路11aの移相器のパス長差を調整する。ここで、サブ光回路11aは、光信号λ1、λ3をサブ光回路12aに導くことが求められる。また、光モニタ5aは、サブ光回路12aから出力される光信号λ1、λ3のパワーを検出する。よって、光モニタ5aにより検出される光パワーが高いときは、光信号λ1、λ3がサブ光回路11aからサブ光回路12aに適切に導かれていると考えられる。したがって、制御部6aは、光モニタ5aにより生成される光パワーモニタ値が高くなるように(好ましくは、ピークに近づくように)、サブ光回路11aの移相器のパス長差を調整する。この結果、図7(b)~図7(c)に示す透過特性が実現され、図7(d)~図7(e)に示す出力が得られる。
【0059】
制御部6bは、光モニタ5bにより生成される光パワーモニタ値に基づいてサブ光回路12aの移相器のパス長差を調整する。ここで、サブ光回路12aは、出力ポートP3を介して光信号λ1、λ3を出力することが求められる。一方、光モニタ5bは、サブ光回路12aの出力ポートP2の出力光パワーを検出する。よって、光モニタ5bにより検出される光パワーが低いときは、光信号λ1、λ3が出力ポートP3を介して適切に出力されていると考えられる。したがって、制御部6bは、光モニタ5bにより生成される光パワーモニタ値が低くなるように(好ましくは、ゼロに近づくように)、サブ光回路12aの移相器のパス長差を調整する。この結果、図8(b)に示す透過特性が実現され、図8(c)~図8(d)に示す出力が得られる。
【0060】
このように、制御部6aは、光モニタ5aにより生成される光パワーモニタ値に基づいて、サブ光回路12aの出力ポートP3の出力光パワーが大きくなるようにサブ光回路11aの移相器を制御する。また、制御部6bは、光モニタ5bにより生成される光パワーモニタ値に基づいて、サブ光回路12aの出力ポートP2の出力光パワーが小さくなるようにサブ光回路12aの移相器を制御する。ここで、サブ光回路12aの出力ポートP2の出力光パワーを小さくすることは、サブ光回路12aの出力ポートP3の出力光パワーを大きくすることと等価である。したがって、制御部6a、6bは、サブ光回路12aからサブ光回路11bに導かれる光のパワーが大きくなるように、サブ光回路11a、12aの移相器を制御する。
【0061】
制御部6cは、光モニタ5cにより生成される光パワーモニタ値に基づいてサブ光回路11bの移相器のパス長差を調整する。ここで、サブ光回路11bは、光信号λ1をサブ光回路12bに導くことが求められる。また、光モニタ5cは、サブ光回路12bから出力される光信号λ1のパワーを検出する。よって、光モニタ5cにより検出される光パワーが高いときは、光信号λ1がサブ光回路11bからサブ光回路12bに適切に導かれていると考えられる。したがって、制御部6cは、光モニタ5cにより生成される光パワーモニタ値が高くなるように(好ましくは、ピークに近づくように)、サブ光回路11bの移相器のパス長差を調整する。この結果、図9(b)に示す透過特性が実現され、図9(c)~図9(d)に示す出力が得られる。
【0062】
制御部6dは、光モニタ5dにより生成される光パワーモニタ値に基づいてサブ光回路12bの移相器のパス長差を調整する。ここで、サブ光回路12bは、出力ポートP3を介して光信号λ1を出力することが求められる。一方、光モニタ5dは、サブ光回路12bの出力ポートP2の出力光パワーを検出する。よって、光モニタ5dにより検出される光パワーが低いときは、光信号λ1が出力ポートP3を介して適切に出力されていると考えられる。したがって、制御部6dは、光モニタ5dにより生成される光パワーモニタ値が低くなるように(好ましくは、ゼロに近づくように)、サブ光回路12bの移相器のパス長差を調整する。この結果、図10(b)に示す透過特性が実現され、図10(c)~図10(d)に示す出力が得られる。
【0063】
このように、制御部6cは、光モニタ5cにより生成される光パワーモニタ値に基づいて、サブ光回路12bの出力ポートP3の出力光パワーが大きくなるようにサブ光回路11bの移相器を制御する。また、制御部6dは、光モニタ5dにより生成される光パワーモニタ値に基づいて、サブ光回路12bの出力ポートP2の出力光パワーが小さくなるようにサブ光回路12bの移相器を制御する。ここで、サブ光回路12bの出力ポートP2の出力光パワーを小さくすることは、サブ光回路12bの出力ポートP3の出力光パワーを大きくすることと等価である。したがって、制御部6c、6dは、サブ光回路12bから光分岐挿入デバイス2のドロップポートに導かれる光のパワーが大きくなるように、サブ光回路11b、12bの移相器を制御する。
【0064】
制御部6eは、光モニタ5eにより生成される光パワーモニタ値に基づいてサブ光回路13bの移相器のパス長差を調整する。ここで、サブ光回路13bは、出力ポートP3を介して光信号λ1a、λ3を出力することが求められる。一方、光モニタ5eは、サブ光回路13bの出力ポートP2の出力光パワーを検出する。よって、光モニタ5eにより検出される光パワーが低いときは、光信号λ1a、λ3が出力ポートP3を介して適切に出力されていると考えられる。したがって、制御部6eは、光モニタ5eにより生成される光パワーモニタ値が低くなるように(好ましくは、ゼロに近づくように)、サブ光回路13bの移相器のパス長差を調整する。この結果、図10(c)~図10(d)に示す透過特性が実現され、図10(e)~図10(f)に示す出力が得られる。
【0065】
このように、制御部6eは、光モニタ5eにより生成される光パワーモニタ値に基づいて、サブ光回路13bの出力ポートP2の出力光パワーが小さくなるようにサブ光回路13bの移相器を制御する。ここで、サブ光回路13bの出力ポートP2の出力光パワーを小さくすることは、サブ光回路13bの出力ポートP3の出力光パワーを大きくすることと等価である。したがって、制御部6eは、サブ光回路13bからサブ回路13aに導かれる光のパワーが大きくなるように、サブ光回路13bの移相器を制御する。
【0066】
制御部6fは、光モニタ5fにより生成される光パワーモニタ値に基づいてサブ光回路13aの移相器のパス長差を調整する。ここで、サブ光回路13aは、出力ポートP3を介して光信号λ1a、λ2~λ4を出力することが求められる。一方、光モニタ5fは、サブ光回路13aの出力ポートP2の出力光パワーを検出する。よって、光モニタ5fにより検出される光パワーが低いときは、光信号λ1a、λ2~λ4が出力ポートP3を介して適切に出力されていると考えられる。したがって、制御部6fは、光モニタ5fにより生成される光パワーモニタ値が低くなるように(好ましくは、ゼロに近づくように)、サブ光回路13aの移相器のパス長差を調整する。この結果、図11(c)~図11(d)に示す透過特性が実現され、図11(e)~図11(f)に示す出力が得られる。
【0067】
このように、制御部6fは、光モニタ5fにより生成される光パワーモニタ値に基づいて、サブ光回路13aの出力ポートP2の出力光パワーが小さくなるようにサブ光回路13aの移相器を制御する。ここで、サブ光回路13aの出力ポートP2の出力光パワーを小さくすることは、サブ光回路13aの出力ポートP3の出力光パワーを大きくすることと等価である。したがって、制御部6fは、サブ光回路13aから光分岐挿入デバイス2のスルーポートに導かれる光のパワーが大きくなるように、サブ光回路13aの移相器を制御する。
【0068】
以上、説明したように、光分岐挿入デバイス2は、WDM信号に多重化されている複数の光信号の中の1つを処理する。図7図12に示す例では、光信号λ1が処理される。なお、光分岐挿入デバイス2は、各移相器の透過特性を調整することにより、任意の波長を処理することができる。
【0069】
制御部6a~6fは、例えば、ディザリングにより移相器のパス長差を制御する。この場合、制御部6aは、例えば、対応するヒータの電流をΔiだけ増加または減少させ、光モニタ5aにより検出される光パワーモニタ値の変化を検出する。このとき、光パワーが増加していれば、制御部6aは、次の制御ステップにおいても対応するヒータの電流をΔiだけ増加させる。一方、光パワーが減少していれば、制御部6aは、次の制御ステップにおいて対応するヒータの電流をΔiだけ減少させる。この処理ステップを繰り返し実行することにより、光モニタ5aにより検出される光パワーモニタ値が最大化され、サブ光回路11aの各移相器の状態が最適化される。制御部6cの動作は、制御部6aと実質的に同じである。また、制御部6b、6d~6fは、対応する光パワーモニタ値が最小化されるようにディザリングを行う。
【0070】
各移相器の調整は、例えば、実際の通信が開始される前に行われる。この場合、下記の調整シーケンス1、2が実行される。
【0071】
調整シーケンス1:光分岐挿入デバイス2において分岐すべき波長の光信号(図7図12に示す例では、光信号λ1)を、光分岐挿入デバイス2の入力ポートに入射する。そして、入力ポートとドロップポートとの間に設けられる各移相器の調整を行う。これにより、サブ光回路11a、12a、11b、12bの移相器が調整される。
【0072】
調整シーケンス2:光分岐挿入デバイス2において挿入すべき波長の光信号(図7図12に示す例では、光信号λ1a)を、光分岐挿入デバイス2のアドポートに入射する。そして、アドポートとスルーポートとの間に設けられる各移相器の調整を行う。これにより、サブ光回路13b、13aの移相器が調整される。
【0073】
制御部6a~6fは、調整シーケンス1を実行した後に調整シーケンス2を実行してもよい。また、制御部6a~6fは、調整シーケンス2を実行した後に調整シーケンス1を実行してもよい。或いは、制御部6a~6fは、調整シーケンス1、2を同時に実行してもよい。なお、制御部6a~6fは、例えば、互いに連携しながら調整シーケンスを実行する。或いは、制御部6a~6fは、制御部6a~6fを管理する管理部からの指示に従って調整シーケンスを実行してもよい。
【0074】
なお、上述の実施例では、温度制御により移相器を構成する光導波路の屈折率が調整されるが、本発明の実施形態はこの構成に限定されるものではない。すなわち、他の方法で光導波路の屈折率を調整してもよい。例えば、PN接合を利用してバイアス電圧を印加することで光導波路の屈折率を調整してもよい。或いは、光導波路の近傍に電気光学効果を有するポリマを設けてもよい。また、光導波路のコアおよびクラッドは、それぞれ、例えば、SiおよびSiO2で形成されるが、本発明の実施形態はこの構成に限定されるものではない。
【0075】
このように、本発明の実施形態に係わる光分岐挿入デバイス2は、複数のサブ光回路を含む構成であり、各サブ光回路は、複数の2×2カプラおよび2×2カプラ間に設けられる移相器により実現される。そして、各移相器のパス長差を制御することで、各サブ光回路の透過特性が調整され、所定の波長の光信号の分岐および挿入が実現される。したがって、精度の高い加工プロセスを導入しなくても、光信号の分岐挿入における損失およびクロストークを抑制できる。ここで、精度の高くない加工プロセスを採用できれば、WDM受信器の光集積回路を低コストで実現できる。また、温度が変動する環境においても、光信号の分岐および挿入が低損失で実現され得る。
【0076】
<WDMの波長数>
図3図12に示す実施例では、光分岐挿入デバイス2は、4波長のWDM信号を処理するが、本発明の実施形態はこの構成に限定されるものではない。すなわち、光分岐挿入デバイス2は、任意の波長数のWDM信号を処理できる。ただし、光分岐挿入デバイス2は、波長数が2n(nは、任意の自然数)個のWDM信号を効率的に処理できる。
【0077】
例えば、光分岐挿入デバイス2は、1個の光回路10を備えることにより、2波長のWDM信号を処理できる。また、光分岐挿入デバイス2は、3個の光回路10を備えることにより、8波長のWDM信号を処理できる。同様に、光分岐挿入デバイス2は、n個の光回路10を備えることにより、2n波長のWDM信号を処理できる。
【0078】
図13は、8波長のWDM信号を処理する光分岐挿入デバイスの一例を示す。8波長のWDM信号を処理する場合、光分岐挿入デバイス2Xは、3個の光回路10(10a~10c)を備える。光回路10a~10cは、図13に示すように、直列的または縦続的に結合されている。
【0079】
光回路10aは、サブ光回路11a~13aを備える。各サブ光回路11a~13aが備える移相器のパス長差は、2ΔLである。また、図4(b)に示すように、各サブ光回路11a~13aが複数の移相器を備えるときは、各サブ光回路11a~13aが備える複数の移相器の最小パス長差は、2ΔLである。すなわち、各サブ光回路11a~13aの透過特性の周期は、2Δλである。なお、Δλは、WDM信号中に多重化される複数の光信号が配置される間隔を表す。
【0080】
光回路10bは、サブ光回路11b~13bを備える。各サブ光回路11b~13bが備える移相器のパス長差は、ΔLである。また、各サブ光回路11b~13bが複数の移相器を備えるときは、各サブ光回路11b~13bが備える複数の移相器の最小パス長差は、ΔLである。すなわち、各サブ光回路11b~13bの透過特性の周期は、4Δλである。
【0081】
光回路10cは、サブ光回路11c~13cを備える。各サブ光回路11c~13cが備える移相器のパス長差は、ΔL/2である。また、各サブ光回路11c~13cが複数の移相器を備えるときは、各サブ光回路11c~13cが備える複数の移相器の最小パス長差は、ΔL/2である。すなわち、各サブ光回路11c~13cの透過特性の周期は、8Δλである。
【0082】
光分岐挿入デバイス2Xの入力ポートおよびスルーポートは、それぞれ、サブ光回路11aおよびサブ光回路13aに光学的に結合される。光分岐挿入デバイス2Xのドロップポートおよびアドポートは、それぞれ、サブ光回路12cおよびサブ光回路13cに光学的に結合される。サブ光回路12aの出力ポートは、サブ光回路11bの入力ポートに光学的に結合され、サブ光回路12bの出力ポートは、サブ光回路11cの入力ポートに光学的に結合される。サブ光回路13cの出力ポートは、サブ光回路13bの入力ポートに光学的に結合され、サブ光回路13bの出力ポートは、サブ光回路13aの入力ポートに光学的に結合される。すなわち、入力ポートおよびスルーポートが接続される光回路10aと、ドロップポートおよびアドポートが接続される光回路10cとの間に、光回路10bが光学的に結合される。
【0083】
図14は、図13に示す光分岐挿入デバイス2Xの実施例を示す。なお、図14に表示されている「M」は、光パワーをモニタする光モニタを表す。また、図14では、図面を見やすくするために、各移相器のパス長差を調整する制御部およびヒータは省略されている。そして、図14に示す光分岐挿入デバイス2Xにおいて、各サブ光回路の動作は、図3図12を参照して説明した光分岐挿入デバイス2の対応するサブ光回路と実質的に同じである。
【0084】
サブ光回路11aにおいては、光モニタ7aにより検出される光パワーを大きくするように、各移相器の近傍に設けられているヒータの電流が制御され、各移相器のパス長差が調整される。サブ光回路12aにおいては、光モニタ7bにより検出される光パワーを小さくするように、各移相器の近傍に設けられているヒータの電流が制御され、各移相器のパス長差が調整される。
【0085】
サブ光回路11bにおいては、光モニタ7cにより検出される光パワーを大きくするように、移相器の近傍に設けられているヒータの電流が制御され、移相器のパス長差が調整される。サブ光回路12bにおいては、光モニタ7dにより検出される光パワーを小さくするように、移相器の近傍に設けられているヒータの電流が制御され、移相器のパス長差が調整される。
【0086】
サブ光回路11cにおいては、光モニタ7eにより検出される光パワーを大きくするように、移相器の近傍に設けられているヒータの電流が制御され、移相器のパス長差が調整される。サブ光回路12cにおいては、光モニタ7fにより検出される光パワーを小さくするように、移相器の近傍に設けられているヒータの電流が制御され、移相器のパス長差が調整される。
【0087】
サブ光回路13cにおいては、光モニタ7gにより検出される光パワーを小さくするように、移相器の近傍に設けられているヒータの電流が制御され、移相器のパス長差が調整される。サブ光回路13bにおいては、光モニタ7hにより検出される光パワーを小さくするように、移相器の近傍に設けられているヒータの電流が制御され、移相器のパス長差が調整される。サブ光回路13aにおいては、光モニタ7iにより検出される光パワーを小さくするように、各移相器の近傍に設けられているヒータの電流が制御され、各移相器のパス長差が調整される。
【0088】
図15は、図13図14に示す光分岐挿入デバイス2Xの透過スペクトルのシミュレーション結果を示す。図15(a)は、入力ポートとドロップポートとの間の透過スペクトルを示す。図15(b)は、入力ポートとスルーポートとの間の透過スペクトルを示す。図15(c)は、アドポートとスルーポートとの間の透過スペクトルを示す。なお、これらの透過スペクトルは、各移相器のパス長差が上述の方法で調整された後の状態を示している。
【0089】
図15(a)に示す透過スペクトルによれば、波長λ1の光信号が入力ポートからドロップポートに導かれる。すなわち、波長λ1の光信号の分岐が実現される。図15(b)に示す透過スペクトルによれば、波長λ2~λ8の光信号が入力ポートからスルーポートに導かれる。図15(c)に示す透過スペクトルによれば、波長λ1の光信号がアドポートからスルーポートに導かれる。すなわち、波長λ1の光信号の挿入が実現される。
【0090】
図16は、16波長のWDM信号を処理する光分岐挿入デバイスの実施例を示す。16波長のWDM信号を処理する場合、光分岐挿入デバイス2Yは、直列的または縦続的に結合される4個の光回路10(10a~10d)を備える。すなわち、波長数が2nであるWDM信号を処理する場合、光分岐挿入デバイスは、直列的または縦続的に結合されるn個の光回路10を備える。
【0091】
各光回路10は、図3または図13に示す構成と同様に、3個のサブ光回路を備える。各サブ光回路は、図4に示すように、1または複数の移相器を備える。そして、各サブ光回路は、対応する光モニタにより検出される光パワーに基づいて、対応する移相器のパス長差を調整する。
【0092】
図17図18は、図16に示す光分岐挿入デバイス2Yの透過スペクトルのシミュレーション結果を示す。図17は、各移相器のパス長差が調整される前の状態を示し、図18は、各移相器のパス長差が調整された後の状態を示す。図17(a)及び図18(a)は、入力ポートとドロップポートとの間の透過スペクトルを示す。図17(b)及び図18(b)は、入力ポートとスルーポートとの間の透過スペクトルを示す。図17(c)及び図18(c)は、アドポートとスルーポートとの間の透過スペクトルを示す。
【0093】
図18(a)に示す透過スペクトルによれば、波長λ1の光信号が入力ポートからドロップポートに導かれる。すなわち、波長λ1の光信号の分岐が実現される。図18(b)に示す透過スペクトルによれば、波長λ2~λ16の光信号が入力ポートからスルーポートに導かれる。図18(c)に示す透過スペクトルによれば、波長λ1の光信号がアドポートからスルーポートに導かれる。すなわち、波長λ1の光信号の挿入が実現される。
【0094】
<他の実施形態>
図3に示す実施例では、光分岐挿入デバイスは2個の光回路を備え、4波長のWDM信号を処理する。また、図16に示す実施例では、光分岐挿入デバイスは3個の光回路を備え、8波長のWDM信号を処理する。ただし、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。すなわち、光分岐挿入デバイスは、1または複数の光回路を備える構成でよい。そして、n個の光回路を備える光分岐挿入デバイスは、2n波長のWDM信号を処理することができる。
【0095】
上述の実施例では、入力ポートおよびスルーポートが接続される光回路において、各サブ光回路が複数の移相器を備えるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、入力ポートおよびスルーポートが接続される光回路において、各サブ光回路が1個の移相器を備える構成であってもよい。また、他の光回路において、各サブ光回路が複数の移相器を備えてもよい。
【0096】
また、上述の実施例では、WDM信号に多重化される波長チャネルが等間隔で配置される。そして、WDM信号の波長数が2nであるときに、光分岐挿入デバイスがn個の光回路を備える。ただし、WDM信号の波長数は2nでなくてもよい。WDM信号の波長数が2nより大きく、且つ、2n+1以下のときは、光分岐挿入デバイスがn+1個の光回路を備えることが好ましい。なお、WDM信号に多重化される波長チャネルが等間隔で配置されていないときは、WDM信号の波長数と光回路の個数との関係は、上述の関係に限定されない。
【0097】
上述の実施例を含む実施形態に関し、さらに下記の付記を開示する。
(付記1)
1または複数の光回路を備える光分岐挿入デバイスであって、
前記1または複数の光回路は、それぞれ、
第1のサブ光回路と、
第2のサブ光回路と、
第3のサブ光回路と、を備え、
前記第1のサブ光回路、前記第2のサブ光回路、および前記第3のサブ光回路は、それぞれ、
入力カプラと、
出力カプラと、
前記入力カプラと前記出力カプラとの間の設けられる移相器と、を備え、
前記1または複数の光回路のそれぞれにおいて、
前記第1のサブ光回路の出力カプラの第1のポートは、前記第2のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
前記第1のサブ光回路の出力カプラの第2のポートは、前記第3のサブ光回路の入力カプラの第2のポートに光学的に結合され、
前記第2のサブ光回路の出力カプラは、当該光回路の出力ポートに光学的に結合され、
前記第3のサブ光回路の入力カプラの第1のポートは、当該光回路の入力ポートに光学的に結合され、
前記第1のサブ光回路に入力されるWDM信号中の一部の波長チャネルが前記第2のサブ光回路を介して当該光回路の出力ポートに導かれると共に、前記WDM信号中の他の波長チャネルが前記第3のサブ光回路に導かれ、
前記第3のサブ光回路は、前記第1のサブ光回路から導かれてくる波長チャネルおよび当該光回路の入力ポートを介して導かれてくる波長チャネルを合波して出力する
ことを特徴とする光分岐挿入デバイス。
(付記2)
前記第1~第2のサブ光回路に実装される入力カプラは、それぞれ、2×2カプラまたは1×2カプラであり、
前記第3のサブ光回路に実装される入力カプラは、2×2カプラであり、
前記第1~第3のサブ光回路に実装される出力カプラは、それぞれ、2×2カプラである
ことを特徴とする付記1に光分岐挿入デバイス。
(付記3)
前記光分岐挿入デバイスが複数の光回路を備えるときは、それら複数の光回路は直列に結合され、
各光回路の出力ポートは、次段の光回路の第1のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
最終段の光回路の出力ポートは、前記光分岐挿入デバイスのドロップポートに光学的に結合され、
各光回路の入力ポートは、次段の光回路の第3のサブ光回路の出力カプラに光学的に結合され、
最終段の光回路の入力ポートは、前記光分岐挿入デバイスのアドポートに光学的に結合される
ことを特徴とする付記1に光分岐挿入デバイス。
(付記4)
入力ポートと、
スルーポートと、
ドロップポートと、
アドポートと、
第1の光回路と、
第2の光回路と、を備え、
前記第1の光回路および前記第2の光回路は、それぞれ、
第1のサブ光回路と、
第2のサブ光回路と、
第3のサブ光回路と、を備え、
前記第1のサブ光回路、前記第2のサブ光回路、および前記第3のサブ光回路は、それぞれ、
入力カプラと、
出力カプラと、
前記入力カプラと前記出力カプラとの間の設けられる移相器と、を備え、
前記入力ポートは、前記第1の光回路の第1のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
前記スルーポートは、前記第1の光回路の第3のサブ光回路の出力カプラに光学的に結合され、
前記ドロップポートは、前記第2の光回路の第2のサブ光回路の出力カプラに光学的に結合され、
前記アドポートは、前記第2の光回路の第3のサブ光回路の入力カプラの第1のポートに光学的に結合され、
前記第1の光回路および前記第2の光回路のそれぞれにおいて、
前記第1のサブ光回路の出力カプラの第1のポートは、前記第2のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
前記第1のサブ光回路の出力カプラの第2のポートは、前記第3のサブ光回路の入力カプラの第2のポートに光学的に結合され、
前記第1の光回路の第2のサブ光回路の出力カプラは、前記第2の光回路の第1のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
前記第2の光回路の第3のサブ光回路の出力カプラは、前記第1の光回路の第3のサブ光回路の入力カプラの第1のポートに光学的に結合される
ことを特徴とする光分岐挿入デバイス。
(付記5)
前記第1の光回路は、
前記第2のサブ光回路の出力光パワーを検出する第1の光モニタと、
前記第3のサブ光回路の出力光パワーを検出する第2の光モニタと、
前記第1の光モニタにより得られる第1のモニタ値および前記第2の光モニタにより得られる第2のモニタ値に基づいて、前記第1の光回路内に設けられる移相器を制御する第1の制御部と、を備え、
前記第1の制御部は、前記第1のモニタ値に基づいて、前記第1の光回路の第2のサブ光回路から前記第2の光回路に導かれる光のパワーが大きくなるように、前記第1のサブ光回路に設けられる移相器および前記第2のサブ光回路に設けられる移相器を制御し、前記第2のモニタ値に基づいて、前記第1の光回路の第3のサブ光回路から前記スルーポートに導かれる光のパワーが大きくなるように、前記第3のサブ光回路に設けられる移相器を制御する
ことを特徴とする付記4に記載の光分岐挿入デバイス。
(付記6)
前記第2の光回路は、
前記第2のサブ光回路の出力光パワーを検出する第3の光モニタと、
前記第3のサブ光回路の出力光パワーを検出する第4の光モニタと、
前記第3の光モニタにより得られる第3のモニタ値および前記第4の光モニタにより得られる第4のモニタ値に基づいて、前記第2の光回路内に設けられる移相器を制御する第2の制御部と、を備え、
前記第2の制御部は、前記第3のモニタ値に基づいて、前記第2の光回路の第2のサブ光回路から前記ドロップポートに導かれる光のパワーが大きくなるように、前記第1のサブ光回路に設けられる移相器および前記第2のサブ光回路に設けられる移相器を制御し、前記第4のモニタ値に基づいて、前記第2の光回路の第3のサブ光回路から前記第1の光回路に導かれる光のパワーが大きくなるように、前記第3のサブ光回路に設けられる移相器を制御する
ことを特徴とする付記4または5に記載の光分岐挿入デバイス。
(付記7)
前記第2の光回路内の第1~第3のサブ光回路の透過特性の周期は、前記第1の光回路内の第1~第3のサブ光回路の透過特性の周期の2倍である
ことを特徴とする付記4に記載の光分岐挿入デバイス。
(付記8)
前記第1の光回路内の第1~第3のサブ光回路の透過特性の周期は、前記入力ポートを介して前記第1の光回路に入力されるWDM信号の波長チャネルの間隔の2倍である
ことを特徴とする付記7に記載の光分岐挿入デバイス。
(付記9)
前記第1の光回路と前記第2の光回路との間に、前記第2の光回路と同じ構造の1または複数の光回路をさらに備える
ことを特徴とする付記4に記載の光分岐挿入デバイス。
(付記10)
前記1または複数の光回路のうちの前記第1の光回路から数えてm番目に配置される光回路内の第1~第3のサブ光回路の透過特性の周期は、前記第1の光回路内の第1~第3のサブ光回路の透過特性の周期の2m倍である
ことを特徴とする付記9に記載の光分岐挿入デバイス。
(付記11)
前記第1の光回路の第1のサブ光回路、前記第1の光回路の第2のサブ光回路、前記第2の光回路の第1のサブ光回路、および前記第2の光回路の第2のサブ光回路に含まれる各移相器は、WDM信号から分岐すべき波長の光信号のみが前記入力ポートに入射された状態で調整される
ことを特徴とする付記4に記載の光分岐挿入デバイス。
(付記12)
前記第2の光回路の第3のサブ光回路および前記第1の光回路の第3のサブ光回路に含まれる各移相器は、WDM信号に挿入すべき波長の光信号のみが前記アドポートに入射された状態で調整される
ことを特徴とする付記4または10に記載の光分岐挿入デバイス。
(付記13)
前記第1のサブ光回路、前記第2のサブ光回路、および前記第3のサブ光回路は、それぞれ、
前記入力カプラおよび前記出力カプラを含むN個の2×2カプラと、
N-1個の移相器と、を備え、
各移相器は、それぞれ前記N個の2×2カプラのうちの2個の2×2カプラの間に設けられ、
各移相器は、それぞれ、光導波路の組を含む
ことを特徴とする付記4に記載の光分岐挿入デバイス。
(付記14)
演算装置および前記演算装置に接続される光分岐挿入デバイスを含む情報処理装置であって、
各光分岐挿入デバイスは、
入力ポートと、
スルーポートと、
ドロップポートと、
アドポートと、
第1の光回路と、
第2の光回路と、を備え、
前記第1の光回路および前記第2の光回路は、それぞれ、
第1のサブ光回路と、
第2のサブ光回路と、
第3のサブ光回路と、を備え、
前記第1のサブ光回路、前記第2のサブ光回路、および前記第3のサブ光回路は、それぞれ、
入力カプラと、
出力カプラと、
前記入力カプラと前記出力カプラとの間の設けられる移相器と、を備え、
前記入力ポートは、前記第1の光回路の第1のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
前記スルーポートは、前記第1の光回路の第3のサブ光回路の出力カプラに光学的に結合され、
前記ドロップポートは、前記第2の光回路の第2のサブ光回路の出力カプラに光学的に結合され、
前記アドポートは、前記第2の光回路の第3のサブ光回路の入力カプラの第1のポートに光学的に結合され、
前記第1の光回路および前記第2の光回路のそれぞれにおいて、
前記第1のサブ光回路の出力カプラの第1のポートは、前記第2のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
前記第1のサブ光回路の出力カプラの第2のポートは、前記第3のサブ光回路の入力カプラの第2のポートに光学的に結合され、
前記第1の光回路の第2のサブ光回路の出力カプラは、前記第2の光回路の第1のサブ光回路の入力カプラに光学的に結合され、
前記第2の光回路の第3のサブ光回路の出力カプラは、前記第1の光回路の第3のサブ光回路の入力カプラの第1のポートに光学的に結合され、
前記光分岐挿入デバイスは、前記入力ポートを介して入射されるWDM信号から所定の波長の光信号を分岐して前記ドロップポートを介して前記演算装置に導き、前記演算装置から前記アドポートを介して入射される光信号を前記WDM信号に挿入して前記スルーポートを介して出力する
ことを特徴とする情報処理装置。
【符号の説明】
【0098】
2(2a~2d、2X、2Y) 光分岐挿入デバイス
5a~5f 光モニタ
6a~6f 制御部
7a~7i 光モニタ
10(10a、10b) 光回路
11a~13a、11b~13b、11c~13c サブ光回路
31~34 2×2カプラ
41~43 移相器
51~53 ヒータ
61 制御部
110 演算装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18