(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】品質管理システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230711BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230711BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2019115577
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】中林 暁男
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 順弘
(72)【発明者】
【氏名】菅原 弘樹
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-318273(JP,A)
【文献】特開2004-186445(JP,A)
【文献】特開2007-250647(JP,A)
【文献】特開2006-261253(JP,A)
【文献】特開2014-206870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造に係る製品の識別情報と、生産工程設備の動作を制御する工程制御情報と、前記生産工程設備が出力する複数の要素を含んだ時系列の工程データとを入力し、前記工程制御情報の変化に基づいて、前記工程データを時間軸方向でセグメントに分割するセグメント抽出部と、
分割されたセグメント毎に、前記工程データに含まれる各要素について要約値を抽出し、前記製品について抽出した要約値を連結した工程特徴データを生成する特徴抽出部と、
前記製品についての検査工程に係る品質データを取得し、前記工程特徴データと
前記品質データとの関係性に関する解析を行なう連成解析部と、
を備え
、
前記連成解析部は、最新の前記工程特徴データ及び前記品質データと、従前の計算経過とに基づいて、最新の計算経過を取得する、
ことを特徴とする品質管理システム。
【請求項2】
前記連成解析部の解析結果を出力する解析結果出力部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項3】
前記連成解析部は、回帰分析を行ない、回帰分析に基づく予測モデルを生成し、
前記予測モデルと前記工程特徴データに基づいて品質データの予測を行なう予測解析部をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の品質管理システム。
【請求項4】
前記工程特徴データと前記品質データを一時的に格納するデータ一時記憶部をさらに備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の品質管理システム。
【請求項5】
品質管理システムの品質管理方法であって
製造に係る製品の識別情報と、生産工程設備の動作を制御する工程制御情報と、前記生産工程設備が出力する複数の要素を含んだ時系列の工程データとを入力し、前記工程制御情報の変化に基づいて、前記工程データを時間軸方向でセグメントに分割する第1の工程と、
分割されたセグメント毎に、前記工程データに含まれる各要素について要約値を抽出し、前記製品について抽出した要約値を連結した工程特徴データを生成する第2の工程と、
前記製品についての検査工程に係る品質データを取得し、前記工程特徴データと前記品質データとの関係性に関する解析を行なう第3の工程と、
を含み、
前記第3の工程においては、最新の前記工程特徴データ及び前記品質データと、従前の計算経過とに基づいて、最新の計算経過を取得する、
品質管理システムの品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造業における生産管理システムに関し、特に、製品の品質管理に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント等における製造現場では、種々の生産工程により製品を生産するとともに、後工程として、生産された製品の検査が行なわれる。近年では、各工程の管理はシステム化されており、制御信号の出力、センサ情報の収集、製品の検査等が自動的に行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生産現場においてシステムが行なう品質管理として、例えば、製品の生産情報と製品の検査情報との関係を解析することが挙げられる。
【0005】
図6は、製品の生産情報と製品の検査情報との関係を解析する品質管理システム500の構成例を示すブロック図である。本図に示すように、品質管理システム500は、データ取得部510、データベース520、工程・品質データ関係性解析部530、解析結果出力部540を備えている。
【0006】
データ取得部510は、工程データと品質データとを収集し、データベース520に格納する。ここで、工程データは、生産工程における詳細データであり、製造現場等に配置された各種センサが出力するセンサ値や各種装置の制御信号等である。また、品質データは、後工程からフィードバックされる検査結果に関するデータである。
【0007】
工程・品質データ関係性解析部530は、所定のタイミングでデータベース520から一定期間分の工程データと品質データとを読み出して、両データの関係性に関する解析を行なう。解析結果出力部540は、この解析結果を出力する。
【0008】
工程・品質データ関係性解析部530が行なう関係性に関する解析は、例えば、工程データから品質データへの回帰分析、工程データと品質データ間の相関分析等である。
【0009】
回帰分析により、工程データから品質データの予測値を算出することができ、工程経過中に製品の品質を予測し、フィードフォワード的な品質管理を行なうことが可能である。回帰分析の結果、操作可能な要因が説明変数として選ばれていれば、直接的にそれらを制御対象とし、品質管理の自動化を行なうことも考えられる。
【0010】
また、相関分析によれば、製品の品質に寄与する生産工程内の変動要因の候補を得ることができ、生産管理者にとっては、生産工程改善のための参考情報を得ることができる。
【0011】
しかしながら、工程データは、各種センサ値や制御信号等であり、例えば、温度測定値、圧力測定値、電流測定値、コントローラが出力するバルブ操作量等多くの要素から構成されるのに加え、値が逐次変動するものも多い。
【0012】
例えば、細かな変動が製品の品質に影響を及ぼす可能性がある場合には、高いサンプリングレートで工程データを収集する必要があり、また、生産工程が数日から数週間という単位で行なわれる場合には、長期間にわたって工程データを収集する必要がある。このような場合等には、収集される工程データが膨大な量となり、工程データと品質データとの関係性に関する解析が非常に困難となる。
【0013】
そこで、本発明は、製品の生産情報と検査情報との関係性に関する解析を支援する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の品質管理システムは、製造に係る製品の識別情報と、生産工程設備の動作を制御する工程制御情報と、前記生産工程設備が出力する複数の要素を含んだ時系列の工程データとを入力し、前記工程制御情報の変化に基づいて、前記工程データを時間軸方向でセグメントに分割するセグメント抽出部と、
分割されたセグメント毎に、前記工程データに含まれる各要素について要約値を抽出し、前記製品について抽出した要約値を連結した工程特徴データを生成する特徴抽出部と、
前記製品についての検査工程に係る品質データを取得し、前記工程特徴データとの関係性に関する解析を行なう連成解析部と、
を備えたことを特徴とする。
ここで、前記連成解析部の解析結果を出力する解析結果出力部をさらに備えてもよい。
また、前記連成解析部は、回帰分析を行ない、回帰分析に基づく予測モデルを生成し、
前記予測モデルと前記工程特徴データに基づいて品質データの予測を行なう予測解析部をさらに備えたてもよい。
また、前記工程特徴データと前記品質データを一時的に格納するデータ一時記憶部をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製品の生産情報と検査情報との関係性に関する解析を支援する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の品質管理システムを含んだ生産システム10の構成例を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態の品質管理システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図6】製品の生産情報と製品の検査情報との関係を解析する品質管理システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の品質管理システム100を含んだ生産システム10の構成例を示すブロック図である。
【0018】
本図に示すように、生産システム10は、品質管理システム100に加え、生産管理システム210、生産工程設備220、検査工程設備230を含んでいる。
【0019】
生産管理システム210は、製造実行機能とトレーサビリティ機能を備えており、製造現場における複数の工程を管理するシステムである。生産管理システム210は、製品識別情報と工程制御情報を生産工程設備220に出力し、検査工程設備230から品質データを入力することで、ある製品がいつ、どういう条件で加工され、最終的にどういう検査結果となったのかを一元的に管理する。
【0020】
生産工程設備220は、例えば、生産ラインであり、製品の生産に関する処理を行なう装置群である。生産工程設備220は、各種センサ、PLC等のコントローラ、バルブ・アクチュエータ等の操作対象等を含んでおり、生産管理システム210からの製品識別情報、工程制御情報に基づいて動作等する。
【0021】
ここで、製品識別情報は、製造に係る製品を識別するための情報であり、ディスクリート系の生産工程においてはロット番号等であり、連続プロセス系の生産工程においては、時間情報等が対応する。
【0022】
また、製品識別情報は、生産工程設備220に含まれる装置のON/OFFや、製品品種によって異なる動作レシピ、あるいはコントローラへの設定値そのものである。
【0023】
生産工程設備220は、工程データを出力する。工程データは、各種センサ値や制御信号等であり、例えば、温度測定値、圧力測定値、電流測定値、コントローラが出力するバルブ操作量等である。すなわち、工程データは複数の要素から構成され、それぞれの要素は逐次変化する。
【0024】
検査工程設備230は、製品の品質に関わる特性値などの検査を行なったり、検査結果を取得する装置等である。検査結果は、品質データとして生産管理システム210に送られる。品質データは、製品識別情報と対応付けられており、例えば、出荷時のスペックとなるようなロット毎の物理的な特性値等である。
【0025】
品質管理システム100は、生産に関するデータを自動的かつ逐次的に分析することで生産工程における品質管理を支援するためのシステムであり、セグメントデータ抽出部110、特徴抽出部120、データ一時記憶部130、オンライン連成解析部140、オンライン予測解析部150、解析結果出力部160を備えている。品質管理システム100は、コンピュータプログラムに従って動作を行なう汎用的なパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、専用システム等で構成することができる。
【0026】
セグメントデータ抽出部110は、生産管理システム210から、製品識別情報と工程制御情報とを入力する。また、生産工程設備220から時系列で変化する工程データを入力する。工程データは、所定のレートでサンプリングする。本実施形態では、ハイレートでサンプリングすることができる。そして、製品識別情報で特定される製品毎に、工程データを時間軸方向に分割し、セグメントデータとして出力する。
【0027】
ここで、工程データの分割は、工程制御情報が変化したタイミングとすることができる。すなわち、セグメントデータは、同一の工程制御情報における工程データの時系列データである。
【0028】
例えば、
図2に示すように、ロットA、ロットBで特定される製品について、工程データとして、センサαの出力値とセンサβの出力値の2つの要素が収集されている場合において、製造中に工程制御情報が2回変化したとすると、各ロットの工程データは、それぞれ2つの要素からなるS1、S2、S3の3つのセグメントに分割されることになる。なお、同一製品であれば、同じ動作レシピが用いられ、各ロットにおけるセグメント数は同一であるとする。ただし、各セグメントの時間幅は諸条件により変化し、同一の工程制御情報であっても、必ずしも同一にはならない。
【0029】
特徴抽出部120は、セグメントデータを入力とし、セグメントデータを特徴づける要約値を工程データの要素毎に抽出する。セグメントデータを特徴づける要約値は、
図3に示すように、例えば、工程データ要素の平均値、標準偏差、最小値、最大値などの基本的な統計量や、パワースペクトルのような周波数解析に基づくもの等とすることができる。例えば、センサαについては、平均値と標準偏差を要約値とし、センサβについては最大値と最小値を要約値とすることができる。
【0030】
要約値は、センサ毎あるいは複数のセンサの組み合わせに対して1または複数個設定することができるが、それぞれの要約値は1つのセグメントについて1つとなる。これらの処理の結果として得られる要約値の集合を、工程特徴データと称する。
【0031】
ここで、製品識別情報kで特定される製品についての工程特徴データをx(k)と表記する。工程特徴データx(k)は、そのロットにおける要約値の集合であるため、各工程データの各要素の要約値をセグメント毎に連結した形式で表すことができる。
【0032】
例えば、製品識別情報kで特定される製品ロットが3つのセグメント(S1、S2、S3)に分割され、工程データの要素であるセンサαの出力値から2つの要約値(α1、α2)が抽出され、センサβの出力値から1つの要約値(β1)が抽出されている場合には、工程特徴データx(k)は、{S1α1、S1α2、S1β1、S2α1、S2α2、S2β1、S3α1、S3α2、S3β1}と表すことができる。ここで、S1α1は、セグメントS1の要約値あるが1を示している。回帰分析であれば、これら要約値のそれぞれが説明変数となる。要約値の並び順は本例に限られない。
【0033】
このような工程特徴データが、製品識別情報毎に、例えば、ロット毎(…、k-1、k、k+1、k+2、…)に作成されることになる。
【0034】
データ一時記憶部130は、作成された工程特徴データx(k)を、対応する品質データy(k)が到着するまで保持する。品質データy(k)は、検査項目に応じて複数の要素で構成されていてもよい。なお、品質データy(k)は、検査工程設備230が出力し、品質管理システム100は、生産管理システム210を介して取得する。
【0035】
データ一時記憶部130は、工程特徴データx(k)に対応する品質データy(k)の到着をトリガとして、オンライン連成解析部140に対して、{x(k),y(k)}を製品識別情報kに係る学習データとして供給する。
【0036】
オンライン連成解析部140は、一時的にしか学習データを利用しないため、データ一時記憶部130は、供給した学習データを削除することができる。このため、データ一時記憶部130は品質データy(k)が到着するまでの間、すなわち製造が完了し、品質データy(k)の到着を待っている工程特徴データx(k)を保持する容量があればよいことになる。
【0037】
本実施形態では、ハイサンプリングなレベルで収集されたデータを設備側で解析することが可能となり、設備外部と通信しなければならないデータ量を大きく削減することができる。そのためネットワークインフラを増設することなく、既存のものを活用することができ、既存の生産システムにも実装がしやすくなる。
【0038】
オンライン連成解析部140は、オンライン連成解析、逐次解析等と呼ばれる既知の解析ロジックを備えており、最新の学習データ{x(k),y(k)}と現時点の計算経過ξ(k-1)を入力として、連成解析結果、更新された計算経過ξ(k)を出力する。解析が予測を伴う場合には、予測モデルも出力することができる。
【0039】
オンライン連成解析の実際の方法は任意であるが、相関分析や回帰分析などが考えられ、方法ごとに異なる連成解析結果と予測モデルを生成することができる。一般に、オンライン連成解析において計算経過ξは、過去に入力から算出された統計量、例えば、あるデータ要素の和、二乗和などを表しており、計算経過ξを用いることにより、過去データ全てを参照せずに、過去データ全体を参照した場合と等価な解析を実現することができる。計算経過ξは、実際のオンライン連成解析方法ごとに異なるものである。
【0040】
例えば、相関分析がオンライン連成解析方法として採用されている場合には、計算経過ξ(k)はx、yの各要素の組み合わせごとの累積和が必要となるため、計算経過ξ(k)は以下のようになる。
【数1】
このとき、(k-1)番目までの計算経過ξ(k-1)と新しい学習データから、計算経過ξ(k)は以下のように計算できる。
【数2】
ここで、計算経過ξ(k-1)を参照することで、それまでの学習データが不要になっていることに注意する。また、連成解析結果は、これらの累積和から計算されるx、yの各要素の組み合わせごとの相関係数r(i,j)になる。
【数3】
ここで、iはxの要素番号を、jはyの要素番号を表す。
【0041】
回帰分析の1つである線形モデルによる重回帰分析がオンライン連成解析方法として採用されている場合も、計算経過ξ(k)は相関分析と同様の累積和となる。このときの、連成解析結果は、モデルの回帰係数やモデルの推定値、モデルから算出可能な推定誤差の増大要因などの分析値が興味の対象として出力される。
【0042】
回帰分析の場合、通常、工程特徴データの要素数がサンプル数を大きく上回るため、変数選択法や、LASSO回帰などのスパースモデリングを用いる。また、重回帰分析によれば、説明変数である工程特徴データx(k)から目的変数である品質データy(k)の予測モデルが構築されるため、オンライン予測解析部150に、品質データy(k)の予測モデルを供給することができる。
【0043】
オンライン予測解析部150は、オンライン連成解析部140から予測モデルが入力されている場合、工程特徴データx(k)が計算されたタイミングで、同データを入力として予測結果を生成する。これにより、例えば、オンライン連成解析方法として回帰分析が採用されている場合には、工程特徴データ到着時、すなわち生産装置での加工終了時点において、品質データy(k)の予測値を得ることが可能となる。
【0044】
解析結果出力部160は、連成解析結果や予測結果を加工し、表示装置や外部システム等に出力する。例えば、相関分析の場合には、
図4(a)に示すような出力とすることができる。ここで、横軸のマスは工程特徴データの要素を示し、縦軸のマスは品質項目を示しており、交差するマスの色の濃さで相関の強弱を示している。また、回帰分析の場合には、
図4(b)に示すような出力とすることができる。本図の例では、縦軸が品質を示しており、横軸が示す累計ロット数毎に、実データと回帰分析によるモデル推定値との関係が示されている。
【0045】
次に、上記構成の品質管理システム100の動作について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
品質管理システム100は、生産管理システム210からの製品識別情報に基づいて、製造に係る製品の製品識別情報を特定する(S101)。そして、セグメントデータ抽出部110が、生産工程設備220から工程データを収集する(S102)。
【0047】
生産管理システム210から取得する工程制御情報が変化した場合には(S103:Yes)、そのタイミングで工程データをセグメントに分割し(S104)、特徴抽出部120が、工程データの要素毎に要約値を抽出する(S105)。これらの処理を製品識別情報で特定される製品の製造が終了するまで繰り返し(S106:No)、製造が終了すると(S106:Yes)、要約値を連結して工程特徴データを作成し、データ一時記憶部130に保存する(S107)。
【0048】
工程特徴データに対応する品質データが到着すると(S108)、オンライン連成解析部140が工程特徴データと品質データとに基づいてオンライン連成解析を行ない(S109)、必要に応じてオンライン予測解析部150が予測を行なう。そして、解析結果出力部160が、連成解析結果や予測結果を加工し、表示装置や外部システム等に出力する(S110)。
【0049】
このように、本実施形態の品質管理システム100によれば、膨大な工程データを蓄積する大規模なデータベースや大容量のネットワークインフラを用いることなく、工程データと品質データの関係性を分析することができる。そのため、従来のシステムよりも、既存の生産システムに後付けがしやすく、導入が容易である。
【0050】
また、工程データと品質データの関係性分析の際に長大な工程データを扱わずに長期間の工程データの分析を行うことができる。そのため、長期にわたる生産工程の場合でも、品質管理をするうえで重要なポイントを捉え、工程改善への活用が容易である。
【0051】
また、半導体生産のような長期にわたる生産工程の場合でも、品質管理に重要なポイントを、事後の品質との連成解析で見出しやすくなる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明した。本発明は上記の実施形態に限られず、種々の変形が可能である。
【0053】
例えば、データ一時記憶部130は、保持するデータを可逆圧縮するなどして保持していてもよいし、対応する品質データの到着が大幅に遅れており、そのロットの廃棄が想定される場合などには、対応する工程特徴データを廃棄してもよい。さらに、データインフラに余裕がある場合など、外部データベースに保持するデータを出力してもよい。
【0054】
また、オンライン連成解析部140、オンライン予測解析部150は、複数の手法により多重化されていてもよいし、品質管理装置の運用開始後に、新規の手法を追加してもよい。
【0055】
また、オンライン連成解析部140には、計算経過の忘却機構を組み込むことで、直近のデータに適合するようにしてもよい。例えば、新しい学習データによる計算経過ξ(k)の更新において、0<α<1の係数を用いてこれまでの計算経過と新しい学習データの荷重平均を取ることで、簡易に忘却機構を実現することが可能である。例えば、相関分析の場合、以下のようになる。
【数4】
また、解析結果出力部160は、WEBサーバなどとして機能し、受動的に情報提供を行なうようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…生産システム
100…品質管理システム
110…セグメントデータ抽出部
120…特徴抽出部
130…データ一時記憶部
140…オンライン連成解析部
150…オンライン予測解析部
160…解析結果出力部
210…生産管理システム
220…生産工程設備
230…検査工程設備