(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気装置
(51)【国際特許分類】
F02B 31/02 20060101AFI20230711BHJP
F02D 13/02 20060101ALI20230711BHJP
F02B 23/10 20060101ALI20230711BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20230711BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
F02B31/02 A
F02D13/02 E
F02B23/10 310A
F02B23/10 310E
F02D43/00 301T
F02D43/00 301U
F01N3/023 K
(21)【出願番号】P 2019123720
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅彦
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-148151(JP,A)
【文献】特開2013-144944(JP,A)
【文献】特開2004-286026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 31/00
F02D 13/00
F01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリカルポートおよびタンジェンシャルポートを備える内燃機関の吸気装置であって、
前記内燃機関のエンジン回転数が所定の回転数以下および負荷が所定の負荷以下の低回転域において、前記ヘリカルポートから前記気筒内への吸気量を低減する吸気量制御部を設け
、
前記内燃機関は、該内燃機関から排出される排気ガスに含まれるスートを捕集するフィルタを備え、
前記吸気量制御部は、前記エンジン回転数および前記負荷に応じて、前記吸気量の低減を行なう低減領域と前記吸気量の低減を行わない非低減領域とが規定された制御マップに基づいて前記吸気量の低減を行い、
前記吸気量制御部は、前記スートの堆積量が増加するほど前記低減領域の範囲を拡大することで前記スートの堆積を抑制する、
ことを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
前記吸気量制御部は、前記ヘリカルポートを開閉する第1吸気バルブよりも上流の前記ヘリカルポートに配置されたスワールコントロールバルブを含んで構成され、
前記吸気量制御部による前記吸気量の低減は、前記スワールコントロールバルブを閉弁することでなされる、
ことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記吸気量制御部による前記吸気量の低減は、前記エンジン回転数および前記負荷の少なくとも一方が低下するほど前記スワールコントロールバルブの開度を絞ることでなされる、
ことを特徴とする請求項2記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
前記吸気量制御部は、前記スートの堆積量が所定のしきい値を上回った時に、前記低減領域の範囲を最大に拡大することで前記フィルタの再生処理を行ない、前記再生処理後に前記低減領域および前記非低減領域の範囲を初期値に戻す、
ことを特徴とする請求項
1から3の何れか1項記載の内燃機関の吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の低回転領域においては気筒内のスワールが弱くなり、燃焼効率が低下する傾向にある。
そこで、吸気ポートを構成するヘリカルポートとタンジェンシャルポート(ストレートポート)のうちタンジェンシャルポートの吸気量を制御する開閉弁を設け、内燃機関の低回転領域においてタンジェンシャルポートの吸気量を低下させることで気筒内のスワールを強化する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、燃焼効率とスワールとの関係を鋭意研究し、内燃機関の低回転領域においてタンジェンシャルポートの吸気量を低下させても気筒内のスワールを強化する効果が必ずしも得られず、逆にヘリカルポートの吸気量を低下させた方が気筒内のスワールを強化し燃焼効率を高める効果が得られることを見出した。
本発明は、上記知見に着目してなされたものであり、内燃機関の低回転領域において気筒内のスワールを強化し燃焼効率を高めて内燃機関の性能向上を図る上で有利な内燃機関の吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、ヘリカルポートおよびタンジェンシャルポートを備える内燃機関の吸気装置であって、前記内燃機関のエンジン回転数が所定の回転数以下および負荷が所定の負荷以下の低回転域において、前記ヘリカルポートから前記気筒内への吸気量を低減する吸気量制御部を設け、前記内燃機関は、該内燃機関から排出される排気ガスに含まれるスートを捕集するフィルタを備え、前記吸気量制御部は、前記エンジン回転数および前記負荷に応じて、前記吸気量の低減を行なう低減領域と前記吸気量の低減を行わない非低減領域とが規定された制御マップに基づいて前記吸気量の低減を行い、前記吸気量制御部は、前記スートの堆積量が増加するほど前記低減領域の範囲を拡大することで前記スートの堆積を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、内燃機関の低回転域においてヘリカルポートから気筒内への吸気量を低減するようにしたので、気筒内のスワールを強化し燃焼効率を高めて内燃機関の性能向上を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態に係る吸気装置が適用された内燃機関の構成図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る吸気装置の要部を示す説明図である。
【
図3】第1の実施の形態におけるエンジン回転数および負荷に対する第1吸気バルブの開閉特性を示す制御マップを示す線図である。
【
図4】ヘリカルポートおよびタンジェンシャルポートの双方を開弁した状態、ヘリカルポートを閉弁した状態、タンジェンシャルポートを閉弁した状態におけるスワール比のシミュレーション結果を示す線図である。
【
図5】内燃機関における燃料の燃焼状態のシミュレーション結果を示す線図であり、(A)は燃料燃焼率の線図、(B)はIMEPの線図、(C)はNOxの線図、(D)はスート(煤)の線図である。
【
図6】気筒内のスワールの強度のシミュレーション結果を示す図であり、(A)はケースA、(B)はケースB、(C)はケースCに対応している。
【
図7】第2の実施の形態におけるエンジン回転数および負荷に対する第1吸気バルブの開閉特性を示す制御マップを示す線図である。
【
図8】第3の実施の形態に係る内燃機関の吸気装置の要部の概略構成を示す平面図である。
【
図9】第5の実施の形態に係る内燃機関の構成を示す構成図である。
【
図10】第5の実施の形態に係る内燃機関の吸気装置の動作フローチャートである。
【
図11】第5の実施の形態におけるエンジン回転数および負荷に対する第1吸気バルブの開閉特性を示す制御マップを示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、エンジン(内燃機関)10はディーゼルエンジンであり、複数のシリンダ室(気筒)12が形成されたシリンダブロック14と、シリンダブロック14の上側に設けられたシリンダヘッド16と、シリンダ室12に配設されたピストン18と、ECU22とを含んで構成されている。
なお、
図1において符号28はクランクシャフト、符号30はコンロッドを示す。
【0009】
図1、
図2に示すように、シリンダヘッド16には、2つの吸気ポート32と、吸気ポート32を開閉する吸気バルブ24と、吸気バルブ24をリフト動作させる吸気バルブ用の動弁装置20と、2つの排気ポート34と、各排気ポート34を開閉する排気バルブ26と、排気バルブ26をリフト動作させる不図示の排気バルブ用の動弁装置と、シリンダ室12に燃料を噴射する不図示の燃料噴射弁が設けられている。なお、
図2において、吸気バルブ24、排気ポート34、排気バルブ26の図示は省略している。
吸気ポート32は、ヘリカルポート32Aとタンジェンシャルポート32Bとで構成されている。
ヘリカルポート32Aおよびタンジェンシャルポート32Bの上流側は不図示のインテークマニホールドに連通している。
ヘリカルポート32Aは、シリンダ室12内にシリンダ室12の軸線回りのスワールを生じさせるように形成され、タンジェンシャルポート32Bは、シリンダ室12内にシリンダ室12の軸線と直交する軸線回りのタンブルを生じさせるように形成されている。
本実施の形態では、シリンダ室12をその上方から見て、シリンダ室12内でそれらスワールとタンブルが合流することによって、最終的に矢印Fで示すように反時計方向に旋回するスワールが形成されるようにヘリカルポート32Aおよびタンジェンシャルポート32Bが構成されている。
【0010】
吸気バルブ24は、ヘリカルポート32Aを開閉する第1吸気バルブ24Aと、タンジェンシャルポート32Bを開閉する第2吸気バルブ24Bとで構成されている。
動弁装置20は、ECU22の制御によって第1、第2吸気バルブ24A、24Bをリフト動作させてヘリカルポート32A、タンジェンシャルポート32Bを開閉させるものである。
本実施の形態では、動弁装置20は、第1、第2吸気バルブ24A、24Bの双方を可動とする(開閉させる)両弁可動動作と、第1吸気バルブ24Aを閉弁状態で停止し第2吸気バルブ24Bを可動とする(開閉させる)片弁停止動作とを選択的に切り替えることが可能に構成されている。このような動弁装置20としてカム、ロッカーアームを用いたものなど従来公知の様々な動弁装置が使用可能である。
【0011】
ECU22は、エンジン10の制御を行なうものであり、車両の運転状態を検出する検出部から供給されるエンジン回転数および負荷の情報を取得すると共に、吸気バルブ用の動弁装置20を介して吸気バルブ24の開閉を制御し、排気バルブ用の動弁装置を介して排気バルブの開閉を制御する機能を有している。
本実施の形態では、ECU22は、エンジン10のエンジン回転数が所定の回転数以下および負荷が所定の負荷以下の低回転域において、動弁装置20を制御して両弁可動動作から片弁停止動作に切り替えて、第1吸気バルブ24Aを閉弁することでヘリカルポート32Aからシリンダ室12内への吸気量を低減させる。
なお、ECU22は、上記検出部から供給されたエンジン回転数が所定のしきい値を下回った場合にエンジン10が低回転域にあると判断する。
したがって、本実施の形態では、ECU22および動弁装置20によって吸気量制御部が構成されている。
また、本実施の形態では、内燃機関の吸気装置は、動弁装置20、ECU22、第1、第2吸気バルブ24A、24B、ヘリカルポート32Aおよびタンジェンシャルポート32Bを備えて構成されている。
【0012】
ECU22は、
図3に示す制御マップに基づいて動弁装置20の両弁可動動作と片弁停止動作とを切り替えることで第1吸気バルブ24Aの開閉制御、すなわち、ヘリカルポート32Aからシリンダ室12内への吸気量を低減する制御を行なう。
図3に示すように、制御マップは、エンジン回転数および負荷に対する第1吸気バルブ24Aの開閉特性を示しており、エンジン回転数および負荷に応じて、吸気量の低減を行なう低減領域S1と、吸気量の低減を行わない非低減領域S2とが規定されている。
具体的に説明すると、低減領域S1は、エンジン10の回転数および負荷が低い場合、すなわち、エンジン回転数が所定の回転数以下および負荷が所定の負荷以下である場合に対応しており、エンジン10の吸気行程において第1吸気バルブ24Aを閉弁し、かつ、第2吸気バルブ24Bを開弁する領域(片弁停止動作を行なう領域)を示しており、したがって、非低減領域S2では、シリンダ室12内にはタンジェンシャルポート32Bから供給される吸気のみによりスワールが形成される。
非低減領域S2は、エンジン10の回転数および負荷が中程度以上の場合に対応しており、エンジン10の吸気行程において第1吸気バルブ24Aおよび第2吸気バルブ24Bの双方を開弁する領域(両弁可動動作を行なう領域)を示しており、したがって、非低減領域S2では、シリンダ室12内にはヘリカルポート32Aおよびタンジェンシャルポート32Bの双方から供給される吸気によりスワールが形成される。
【0013】
したがって、制御マップは、エンジン10の回転数および負荷が低減領域S1に該当する場合にヘリカルポート32Aの吸気量を低減させる一方、エンジン10の回転数および負荷が非低減領域S2に該当する場合にヘリカルポート32Aの吸気量を確保するように構成されている。
この理由は、ヘリカルポート32Aを閉じると、吸気に対する抵抗が増加するため、同じ体積効率を維持するには過給圧を上げる必要があり、高負荷、高回転域となるほどヘリカルポート32Aを閉じるとエンジン10の性能が発揮できなくなる不利が生じる一方、低負荷、低回転域では、ヘリカルポート32Aを閉じて吸気に対する抵抗が多少増加しても同じ体積効率を維持するために必要な過給圧の増加分がそれほど高くなく、後述するように、ヘリカルポート32Aを閉じることでシリンダ室12内のスワールを強化することによる利点が大きいためである。
【0014】
次に本実施の形態の内燃機関の吸気装置による作用効果について説明する。
図4は、エンジン10の低回転域において、以下のケースA、B、Cの3つの条件でシリンダ室12内のスワール比を測定した結果を示している。なお、スワール比とはスワールの回転速度とエンジン10の回転速度との比であり、スワール比が高いほどスワールが強いことを示す。
ケースAは、動弁装置20によって第1、第2吸気バルブ24A、24Bの双方を可動とした場合であり、前述した両弁可動動作を行った場合である。
ケースBは、第1吸気バルブ24Aのみを停止させ第2バルブを可動とした場合であり、ヘリカルポート32Aのみを閉じており、第1吸気バルブ24Aを停止させる片弁停止動作を行った場合である。
ケースCは、ケースBとは逆に、第1吸気バルブ24Aを可動させ第2吸気バルブ24Bを停止させた場合であり、タンジェンシャルポート32Bのみを閉じており、第2吸気バルブ24Bを停止させる片弁停止動作を行った場合である。
【0015】
図4から明らかなように、ケースBのスワール比が最も高くスワールが強化されている一方、ケースA、Cのスワール比は低くスワールの強化が不十分である。
したがって、エンジン10の低回転域においては、ヘリカルポート32Aからシリンダ室12内への吸気量を低減することがシリンダ室12内のスワールを強化するために最も有利であることがわかる。
【0016】
図5(A)は、ケースA、B、CにおいてEGR率を40%、50%としたときの燃料燃焼率を比較した図である。なお、燃料燃焼率とは、シリンダ室12内に供給された燃料の量に対する実際に燃焼した燃料の量の割合であり、燃料燃焼率が高いほどエンジン10の性能が高いことを示す。
ケースBの燃料燃焼率が最も高く、ケースA、Cの燃料燃焼率は低い。
これは、ケースBではスワールが最も強化されるため、燃料と空気とが十分に混合されているからである。
【0017】
図5(B)は、ケースA、B、CにおいてEGR率を40%、50%としたときの図示平均有効圧(Indicated mean effective pressure:IMEP)を比較した図である。なお、図示平均有効圧は、1サイクル当たりの仕事量をエンジン10が持つ行程容積で除した値であり、図示平均有効圧が高いほどエンジン10の性能が高いことを示す。
ケースBの図示平均有効圧が最も高く、ケースA、Cの図示平均有効圧は低い。
これは、ケースBではスワールが最も強化されるため、燃料と空気とが十分に混合されているからである。
【0018】
図5(C)は、ケースA、B、CにおいてEGR率を40%、50%としたときの排気に含まれるNOxの発生量を比較した図である。
EGR率にもよるが、ケースBのNOxの発生量が、ケースA、または、ケースCのNOxの発生量よりも若干多い。
これは、ケースBではスワールが最も強化されるため、燃料と空気とが十分に混合されるため、燃料の燃焼温度が最も上昇することでNOxの発生量が増加するためである。
【0019】
図5(D)は、ケースA、B、CにおいてEGR率を40%、50%としたときの排気に含まれるスート(煤)の発生量を比較した図である。
ケースBのスートの発生量が最も少なく、ケースA、ケースCのスートの発生量は多い。
これは、ケースBでは燃料の燃焼温度が上昇するため、スートの発生量が抑制されるためである。
以上のことから、ケースBのようにスワールが強化されることで、エンジン10の性能が向上し、また、NOxの発生量は若干増えるものの、スートの発生量を抑制する上で有利となっていることがわかる。
【0020】
図6は、シリンダをシリンダの軸線と直交する平面で破断した際のシリンダ室12内のスワールの強度のシミュレーション結果を示す図であり、(A)はケースA、(B)はケースB、(C)はケースCに対応している。
図中符号13A、13Bは、それぞれヘリカルポート32A、タンジェンシャルポート32Bがシリンダ室12に接続する開口部を示している。
上方からシリンダ室12内を見てスワールは反時計回りに旋回しており、スワールの流速が速いほど濃度が濃いハッチングを施している。
また、符号Xはスワールの旋回中心を示している。
ケースBは、ケースA、ケースCに比較してスワールが強化されていることがわかる。また、ケースB、ケースAは共にスワールの旋回中心Xが形成されているのに対してケースCでは旋回中心Xが形成されておらずスワールが弱いことがわかる。
【0021】
本実施の形態によれば、エンジン10の低回転域において、ヘリカルポート32Aからシリンダ室12内への吸気量を低減するようにしたので、シリンダ室12内のスワールを強化することができ、スワールを強化し燃焼効率を高めて内燃機関の性能向上を図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、吸気量制御部による吸気量の低減を、動弁装置20を用いて第1吸気バルブ24Aを閉弁することで行なうようにしたので、制御を単純化する上で有利となる。
【0022】
なお、第1吸気バルブ24Aを動作させる動弁装置20に代えて第1吸気バルブ24Aのバルブリフト量を可変制御する可変動弁装置を用いてもよいことは無論である。
また、可変動弁装置を用いた場合は、第1吸気バルブ24Aの閉弁時、閉じ制御を行いゆっくりと第1吸気ポート32を閉じるようにすると、エンジン10の運転状態(トルク)の変化を抑制できるため、乗り心地を維持する上で有利となる。
【0023】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略し異なる部分について重点的に説明する。
第2の実施の形態は、吸気量制御部による吸気量の低減を、エンジン回転数および負荷の少なくとも一方が低下するほど第1吸気バルブ24Aの開度を絞ることでなされるようにした点が第1の実施の形態と異なる。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の動弁装置20に代えて、ECU22の制御によって第1吸気バルブ24Aのバルブリフト量を可変制御する可変動弁装置を用い、したがって、ECU22と可変動弁装置により特許請求の範囲の吸気量制御部が構成されている。
なお、可変動弁装置として、カムを切り替える方式、ロッカーアームのレバー比を変化させる方式、アクチュエータを用いる方式など従来公知の様々な可変動弁装置が使用可能である。
【0024】
第2の実施の形態では、ECU22は、
図7に示す制御マップに従って可変動弁装置を制御して第1吸気バルブ24Aの制御を行なう。
制御マップは、第1の実施の形態と同様に低減領域S1、非低減領域S2を備えているが、低減領域S1が片弁停止動作を行なう吸気停止部分と、第1吸気バルブ24Aの開度を絞る開度絞り部分とで構成されている点が第1の実施の形態と異なっている。
吸気停止部分は、エンジン10の吸気行程において第1吸気バルブ24Aを閉弁し、かつ、第2吸気バルブ24Bを開弁する領域(片弁停止動作を行なう領域)を示しており、したがって、シリンダ室12内にはタンジェンシャルポート32Bから供給される吸気のみによりスワールが形成される。
開度絞り部分は、エンジン10の吸気行程において第1吸気バルブ24Aの開度が絞られ、かつ、第2吸気バルブ24Bを開弁する領域を示しており、非低減領域S2と同様に第2吸気バルブ24Bは可動となっている。
したがって、開度絞り部分では、シリンダ室12内にはタンジェンシャルポート32Bから供給される吸気に加えてヘリカルポート32Aから供給される吸気によってもスワールが形成される。
さらに、開度絞り部分は、エンジン回転数および負荷の少なくとも一方が低下するほど第1吸気バルブ24Aの開度を絞る領域となっている。
【0025】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、負荷あるいはエンジン回転数に応じて第1吸気バルブ24Aの開度が連続的に変化するので、第1吸気バルブ24Aが開弁、閉弁の2段階に切り替わる場合に比較して、シリンダ室12内に供給される吸気量の変化を抑制できるため、エンジン10のトルクの変化を抑制でき、乗り心地の向上を図る上で有利となる。
【0026】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について
図8を参照して説明する。
第3の実施の形態は、ヘリカルポート32Aを開閉する第1吸気バルブ24Aよりも上流のヘリカルポート32Aの箇所にスワールコントロールバルブ34を設けたものである。
ECU22は、不図示のアクチュエータを介してスワールコントロールバルブ34をヘリカルポート32Aを閉じる全閉位置とヘリカルポート32Aを開く全開位置とに切り替える。
このような切り替え制御は、第1の実施の形態と同様に
図3に示す制御マップに従ってなされる。
したがって、吸気量制御部はECU22とスワールコントロールバルブ34を含んで構成され、吸気量制御部による吸気量の低減は、スワールコントロールバルブ34を閉弁することでなされる。
このような第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が奏される。
【0027】
(第4の実施の形態)
次に第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態は、第3の実施の形態の変形例であり、ECU22は、不図示のアクチュエータを介してスワールコントロールバルブ34を全閉位置と全開位置との間で連続的に変化させ、言い換えると、スワールコントロールバルブ34の開度を可変させる。
すなわち、吸気量制御部による吸気量の低減は、エンジン回転数および負荷の少なくとも一方が低下するほどスワールコントロールバルブ34の開度を絞ることでなされる。
このようなスワールコントロールバルブ34の開度の制御は、第2の実施の形態と同様に
図7の制御マップに従ってなされる。
第4の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果が奏される。
【0028】
(第5の実施の形態)
次に第5の実施の形態について説明する。
第5の実施の形態は、排気ガスに含まれるスートを捕集するフィルタ(DPF:ディーゼルパテキュレートフィルタ)が設けられ、吸気量制御部により吸気量の制御を行なうことでスートの堆積の抑制およびフィルタの再生を行なうようにしたものである。
【0029】
図9に示すように、エンジン10のエキゾーストマニホールドに接続された排気管36には、フィルタ38(DPF)と差圧センサ40が設けられている。
フィルタ38は、内燃機関から排出される排気ガスに含まれるスートを捕集するものである。
フィルタ38に堆積したスートは、排気ガスの温度を上昇させることにより燃焼され、これによりフィルタ38は再生される。
差圧センサ40は、フィルタ38の前後の圧力差を検出してECU22に供給するものである。
【0030】
ECU22は、差圧センサ40で検出された圧力差に基づいてフィルタ38に堆積したスートの堆積量を推定すると共に、その推定量が所定のしきい値を上回ったならば、吸気量の制御を行なう。
吸気量制御部は、第1の実施の形態と同様にECU22と動弁装置20で構成されている。
具体的に説明すると、ECU22は、
図11に示すように、エンジン回転数および負荷に応じて吸気量の低減を行なう低減領域S1と低減を行わない非低減領域S2とが規定された制御マップに基づいて吸気量の制御を行なう。
ECU22は、スートの堆積量が増加するほど、
図11に矢印で示すように、制御マップで規定された低減領域S1の範囲を段階的あるいは無段階的に拡大する。
低減領域S1の範囲が拡大されると、負荷およびエンジン回転数が低減領域S1に該当する可能性が高くなり、したがって、第1吸気バルブ24Aが閉弁されてヘリカルポート32Aへの吸気が低減されやすくなる。
そのため、スワールが強化されることで燃料の燃焼が促進され、排気ガスの温度が上昇されるためスートが発生しにくくなり、スートの堆積が抑制される。
また、ECU22は、スートの堆積量が所定のしきい値を上回ったときに、低減領域S1の範囲を最大に拡大することで、ヘリカルポート32Aへの吸気がより一層低減されやすくなる。
そのため、スワールが一層強化されることで燃料の燃焼がより一層促進され、排気ガスの温度が最大限上昇されるため、フィルタ38に堆積されていたスートが焼却除去され、フィルタ38の再生処理がなされる。
また、ECU22は、フィルタ38の再生処理後に制御マップの低減領域S1および非低減領域S2の範囲を初期値に戻す。
【0031】
次に
図10のフローチャートを参照して吸気装置の動作について説明する。
ECU22は、エンジン10の動作中、
図10のフローチャートで示される処理を繰り返して実行する。
すなわち、ECU22は差圧センサ40から検出される差圧データを取得すると(ステップS10),差圧データからフィルタ38のスートの堆積量を推定する(ステップS12)。
次に、ECU22は、推定した堆積量が所定のしきい値を上回ったか否かを判定する(ステップS14)。
ステップS14が否定ならば、
図11に示すように、低減領域S1の範囲を段階的にあるいは無段階的に拡大し(ステップS16)、ステップS10に戻る。
ステップS14が肯定ならば、
図11に示すように、低減領域S1を最大(符号S1max)に拡大する(ステップS18)。
これにより、シリンダ室12内のスワールを最大限強化して燃焼を最大限促進し排気ガスの温度を上昇させフィルタ38に堆積されていたスートを燃焼除去しフィルタ38を再生させる(ステップS20)。
フィルタ38の再生が終了したならば、ECU22は、制御マップの低減領域S1、非低減領域S2を初期値に戻し(ステップS22)、ステップS10に戻る。
【0032】
第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果を奏することは無論のこと、スートがフィルタ38に堆積することを抑制できるので、フィルタ38の再生を行なう頻度を低減させる上で有利となり、フィルタ38の再生に伴うフィルタ38の劣化を抑制する上で有利となる。
また、制御マップの低減領域S1の範囲を拡大するといった簡単な操作でフィルタ38の再生を行なうので、フィルタ38の再生に伴うエンジン10の制御動作の簡素化を図る上で有利となる。
【0033】
なお、第5の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、第1吸気バルブ24Aを閉弁することでヘリカルポート32Aの吸気量を低減する場合について説明した。
しかしながら、第2の実施の形態のように、第1吸気バルブ24Aの開度を絞ることでヘリカルポート32Aの吸気量を低減してもよいし、第3の実施の形態のようにスワールコントロールバルブ34を閉じることでヘリカルポート32Aの吸気量を低減してもよいし、第4の実施の形態のようにスワールコントロールバルブ34の開度を絞ることでヘリカルポート32Aの吸気量を低減してもよい。
【0034】
なお、実施の形態では、本発明の吸気装置がディーゼルエンジンに適用される場合について説明したが、本発明はガソリンエンジンにも適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 エンジン(内燃機関)
12 シリンダ室(気筒)
20 動弁装置(吸気量制御部)
22 ECU(吸気量制御部)
24A 第1吸気バルブ
24B 第2吸気バルブ
32A ヘリカルポート
32B タンジェンシャルポート
34 スワールコントロールバルブ(吸気量制御部)
38 フィルタ
40 差圧センサ
S1 低減領域
S2 非低減領域