(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ガラス原料供給装置およびガラス原料供給装置のフィルタ交換方法
(51)【国際特許分類】
C03B 8/04 20060101AFI20230711BHJP
C03B 37/018 20060101ALI20230711BHJP
B01J 4/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C03B8/04 Q
C03B37/018 Z
B01J4/02 B
(21)【出願番号】P 2019124296
(22)【出願日】2019-07-03
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智哉
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-026429(JP,A)
【文献】特開平09-306846(JP,A)
【文献】特開2000-109195(JP,A)
【文献】国際公開第98/07509(WO,A1)
【文献】特開2003-212562(JP,A)
【文献】特開2003-277072(JP,A)
【文献】特開2004-207713(JP,A)
【文献】特開2001-185500(JP,A)
【文献】特開2002-219351(JP,A)
【文献】特開平02-055293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 8/04
C03B 37/018
B01J 4/00 - 7/02
C23C 16/00 - 16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料を気化させて原料ガスにする気化装置と、
前記原料ガスの流路となる第一配管と、
前記原料ガスの不純物を取り除くフィルタ部と、
不純物を取り除いた前記原料ガスの流路となる第二配管と、
前記原料ガスの流量を制御する流量制御装置と、
第一接続継手と、
第二接続継手と、
を有
するガラス原料供給装置であって、
前記フィルタ部は、第一バルブと、ガスラインフィルタと、第二バルブと、を有し、
前記気化装置は、前記第一配管の一端部に接続され、
前記第一配管の他端部は、前記第一接続継手を介して前記第一バルブの一方の開口部に接続され、
前記第一バルブの他方の開口部は、前記ガスラインフィルタのガスの流入側端部に接続され、
前記ガスラインフィルタのガスの排出側端部は、前記第二バルブの一方の開口部に接続され、
前記第二バルブの他方の開口部は、前記第二接続継手を介して前記第二配管の一端部に接続され、
前記第二配管の他端部は、前記流量制御装置に接続さ
れ、
前記フィルタ部は、前記第一接続継手および前記第二接続継手を介して、前記ガラス原料供給装置に対し着脱可能に設けられている、
ガラス原料供給装置。
【請求項2】
前記第一配管および前記第二配管は、配管の途中にそれぞれ分岐部が設けられており、
前記第一配管の分岐部と、前記第二配管の分岐部とを接続するバイパス配管を有し、
前記バイパス配管は、当該バイパス配管の途中に流路を開閉する第三バルブを有する、
請求項1に記載のガラス原料供給装置。
【請求項3】
ガラス原料を気化させて原料ガスにする気化装置と、
前記原料ガスの流路となる第一配管と、
前記原料ガスの不純物を取り除くフィルタ部と、
不純物を取り除いた前記原料ガスの流路となる第二配管と、
前記原料ガスの流量を制御する流量制御装置と、
第一接続継手と、
第二接続継手と、
を有し、
前記フィルタ部は、第一バルブと、ガスラインフィルタと、第二バルブと、を有し、
前記気化装置は、前記第一配管の一端部に接続され、
前記第一配管の他端部は、前記第一接続継手を介して前記第一バルブの一方の開口部に接続され、
前記第一バルブの他方の開口部は、前記ガスラインフィルタのガスの流入側端部に接続され、
前記ガスラインフィルタのガスの排出側端部は、前記第二バルブの一方の開口部に接続され、
前記第二バルブの他方の開口部は、前記第二接続継手を介して前記第二配管の一端部に接続され、
前記第二配管の他端部は、前記流量制御装置に接続されている、
ガラス原料供給装置において、前記フィルタ部を交換するフィルタ交換方法であって、
前記第一バルブおよび前記第二バルブを閉状態にして、前記第一配管および第二配管の前記フィルタ部側の少なくとも一部に対して、窒素ガスを流してパージを行う第一工程と、
窒素ガスを流しながら、前記フィルタ部を当該ガラス原料供給装置から取り外す第二工程と、
前記フィルタ部と同じ構成で、前記第一バルブおよび前記第二バルブが閉状態となっている新フィルタ部を用意し、当該新フィルタ部を当該ガラス原料供給装置に取り付ける第三工程と、
前記第一バルブおよび前記第二バルブを開状態にして、前記第一配管および第二配管の前記フィルタ部側の少なくとも一部と、前記新フィルタ部内とに対して、窒素ガスによるパージを行う第四工程と、
を含む、ガラス原料供給装置のフィルタ交換方法。
【請求項4】
ガラス原料を気化させて原料ガスにする気化装置と、
前記原料ガスの流路となる第一配管と、
前記原料ガスの不純物を取り除くフィルタ部と、
不純物を取り除いた前記原料ガスの流路となる第二配管と、
前記原料ガスの流量を制御する流量制御装置と、
第一接続継手と、
第二接続継手と、
を有し、
前記フィルタ部は、第一バルブと、ガスラインフィルタと、第二バルブと、を有し、
前記気化装置は、前記第一配管の一端部に接続され、
前記第一配管の他端部は、前記第一接続継手を介して前記第一バルブの一方の開口部に接続され、
前記第一バルブの他方の開口部は、前記ガスラインフィルタのガスの流入側端部に接続され、
前記ガスラインフィルタのガスの排出側端部は、前記第二バルブの一方の開口部に接続され、
前記第二バルブの他方の開口部は、前記第二接続継手を介して前記第二配管の一端部に接続され、
前記第二配管の他端部は、前記流量制御装置に接続されている、
ガラス原料供給装置において、前記フィルタ部を交換するフィルタ交換方法であって、
前記第一バルブおよび前記第二バルブを閉状態にして、前記第一配管および第二配管の前記フィルタ部側の少なくとも一部に対して、窒素ガスを流してパージを行う第一工程と、
窒素ガスを流しながら、前記フィルタ部を当該ガラス原料供給装置から取り外す第二工程と、
前記フィルタ部と同じ構成で、前記第一バルブおよび前記第二バルブが閉状態となっているとともに予め窒素ガスが充填されている新フィルタ部を用意し、当該新フィルタ部を当該ガラス原料供給装置に取り付ける第三工程と、
前記第一バルブおよび前記第二バルブを閉状態
のまま、前記第一配管および第二配管の前記フィルタ部側の少なくとも一部に対して、窒素ガスによるパージを行う
第四工程と、
を含む、ガラス原料供給装置のフィルタ交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス原料供給装置およびガラス原料供給装置のフィルタ交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、原料ガスの供給配管にフィルタが設けられたガラス原料供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平2-82735号公報
【文献】実開昭62-101832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス微粒子堆積体を製造する原料ガスを反応容器に供給するガラス原料供給装置において、ガラス原料の中に不純物が入っている場合がある。そのため、気化した原料ガスを送る配管の途中にフィルタを付けて、不純物をフィルタで除去して、清浄な原料ガスを反応容器へ送っている。
ガラス原料供給装置を稼働し続けると、フィルタ内に不純物が溜ってきて、フィルタが詰まるおそれがある。このため、フィルタが詰まる前に、新しいフィルタに交換する必要がある。このフィルタ交換時に、フィルタ内の残留ガスが外に漏れると、安全衛生上の問題が生じるため、残留ガスを労働安全衛生法で定められた基準以下にしてからでないとフィルタを取り外すことができない。そのため、窒素ガス等によってフィルタ内の残留ガスをパージする必要があるが、残留ガスのパージには時間がかかる。したがって、フィルタ交換のために、長時間、ガラス原料供給装置を停止する必要があった。
【0005】
そこで、本開示は、フィルタ交換の時間を短縮することができる、ガラス原料供給装置およびガラス原料供給装置のフィルタ交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るガラス原料供給装置は、
ガラス原料を気化させて原料ガスにする気化装置と、
前記原料ガスの流路となる第一配管と、
前記原料ガスの不純物を取り除くフィルタ部と、
不純物を取り除いた前記原料ガスの流路となる第二配管と、
前記原料ガスの流量を制御する流量制御装置と、
第一接続継手と、
第二接続継手と、
を有し、
前記フィルタ部は、第一バルブと、ガスラインフィルタと、第二バルブと、を有し、
前記気化装置は、前記第一配管の一端部に接続され、
前記第一配管の他端部は、前記第一接続継手を介して前記第一バルブの一方の開口部に接続され、
前記第一バルブの他方の開口部は、前記ガスラインフィルタのガスの流入側端部に接続され、
前記ガスラインフィルタのガスの排出側端部は、前記第二バルブの一方の開口部に接続され、
前記第二バルブの他方の開口部は、前記第二接続継手を介して前記第二配管の一端部に接続され、
前記第二配管の他端部は、前記流量制御装置に接続されている。
【0007】
また、本開示の一態様に係るガラス原料供給装置のフィルタ交換方法は、
ガラス原料を気化させて原料ガスにする気化装置と、
前記原料ガスの流路となる第一配管と、
前記原料ガスの不純物を取り除くフィルタ部と、
不純物を取り除いた前記原料ガスの流路となる第二配管と、
前記原料ガスの流量を制御する流量制御装置と、
第一接続継手と、
第二接続継手と、
を有し、
前記フィルタ部は、第一バルブと、ガスラインフィルタと、第二バルブと、を有し、
前記気化装置は、前記第一配管の一端部に接続され、
前記第一配管の他端部は、前記第一接続継手を介して前記第一バルブの一方の開口部に接続され、
前記第一バルブの他方の開口部は、前記ガスラインフィルタのガスの流入側端部に接続され、
前記ガスラインフィルタのガスの排出側端部は、前記第二バルブの一方の開口部に接続され、
前記第二バルブの他方の開口部は、前記第二接続継手を介して前記第二配管の一端部に接続され、
前記第二配管の他端部は、前記流量制御装置に接続されている、
ガラス原料供給装置において、前記フィルタ部を交換するフィルタ交換方法であって、
前記第一バルブおよび前記第二バルブを閉状態にして、前記第一配管および第二配管の前記フィルタ部側の少なくとも一部に対して、窒素ガスを流してパージを行う第一工程と、
窒素ガスを流しながら、前記フィルタ部を当該ガラス原料供給装置から取り外す第二工程と、
前記フィルタ部と同じ構成で、前記第一バルブおよび前記第二バルブが閉状態となっている新フィルタ部を用意し、当該新フィルタ部を当該ガラス原料供給装置に取り付ける第三工程と、
前記第一バルブおよび前記第二バルブを開状態にして、前記第一配管および第二配管の前記フィルタ部側の少なくとも一部と、前記新フィルタ部内とに対して、窒素ガスによるパージを行う第四工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るガラス原料供給装置およびガラス原料供給装置のフィルタ交換方法によれば、フィルタ交換の時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係るガラス原料供給装置を示す概略構成図である。
【
図2】ガラス原料供給装置のフィルタ部を示す図である。
【
図4】従来のフィルタ部の交換方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の実施形態の説明)
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係るガラス原料供給装置は、
(1)ガラス原料を気化させて原料ガスにする気化装置と、
前記原料ガスの流路となる第一配管と、
前記原料ガスの不純物を取り除くフィルタ部と、
不純物を取り除いた前記原料ガスの流路となる第二配管と、
前記原料ガスの流量を制御する流量制御装置と、
第一接続継手と、
第二接続継手と、
を有し、
前記フィルタ部は、第一バルブと、ガスラインフィルタと、第二バルブと、を有し、
前記気化装置は、前記第一配管の一端部に接続され、
前記第一配管の他端部は、前記第一接続継手を介して前記第一バルブの一方の開口部に接続され、
前記第一バルブの他方の開口部は、前記ガスラインフィルタのガスの流入側端部に接続され、
前記ガスラインフィルタのガスの排出側端部は、前記第二バルブの一方の開口部に接続され、
前記第二バルブの他方の開口部は、前記第二接続継手を介して前記第二配管の一端部に接続され、
前記第二配管の他端部は、前記流量制御装置に接続されている。
上記ガラス原料供給装置によれば、フィルタ部の前後にバルブ(第一バルブおよび第二バルブ)があるので、これらのバルブを閉状態にして、フィルタ部を取り外すことができる。これにより、フィルタ部の交換時に、フィルタ部内に窒素ガスを流してフィルタ部内の残留ガスを除去する必要がないので、フィルタ部の交換時間を短縮することができる。したがって、フィルタ交換の際にガラス原料供給装置を停止する時間を短くできるので、ガラス原料が供給されるガラス母材の製造装置を停止する時間を短縮することができる。
【0011】
(2)前記第一配管および前記第二配管は、配管の途中にそれぞれ分岐部が設けられており、
前記第一配管の分岐部と、前記第二配管の分岐部とを接続するバイパス配管を有し、
前記バイパス配管は、当該バイパス配管の途中に流路を開閉する第三バルブを有してもよい。
上記ガラス原料供給装置によれば、第一配管側(或いは第二配管側)からのみ窒素ガスを供給しても、バイパス配管を通して、第二配管側(或いは第一配管側)にも窒素ガスを供給することができる。これにより、窒素ガスの供給経路を単純化することができる。
【0012】
また、本開示の一態様に係るガラス原料供給装置のフィルタ交換方法は、
(3)ガラス原料を気化させて原料ガスにする気化装置と、
前記原料ガスの流路となる第一配管と、
前記原料ガスの不純物を取り除くフィルタ部と、
不純物を取り除いた前記原料ガスの流路となる第二配管と、
前記原料ガスの流量を制御する流量制御装置と、
第一接続継手と、
第二接続継手と、
を有し、
前記フィルタ部は、第一バルブと、ガスラインフィルタと、第二バルブと、を有し、
前記気化装置は、前記第一配管の一端部に接続され、
前記第一配管の他端部は、前記第一接続継手を介して前記第一バルブの一方の開口部に接続され、
前記第一バルブの他方の開口部は、前記ガスラインフィルタのガスの流入側端部に接続され、
前記ガスラインフィルタのガスの排出側端部は、前記第二バルブの一方の開口部に接続され、
前記第二バルブの他方の開口部は、前記第二接続継手を介して前記第二配管の一端部に接続され、
前記第二配管の他端部は、前記流量制御装置に接続されている、
ガラス原料供給装置において、前記フィルタ部を交換するフィルタ交換方法であって、
前記第一バルブおよび前記第二バルブを閉状態にして、前記第一配管および第二配管の前記フィルタ部側の少なくとも一部に対して、窒素ガスを流してパージを行う第一工程と、
窒素ガスを流しながら、前記フィルタ部を当該ガラス原料供給装置から取り外す第二工程と、
前記フィルタ部と同じ構成で、前記第一バルブおよび前記第二バルブが閉状態となっている新フィルタ部を用意し、当該新フィルタ部を当該ガラス原料供給装置に取り付ける第三工程と、
前記第一バルブおよび前記第二バルブを開状態にして、前記第一配管および第二配管の前記フィルタ部側の少なくとも一部と、前記新フィルタ部内とに対して、窒素ガスによるパージを行う第四工程と、を含む。
上記ガラス原料供給装置のフィルタ交換方法によれば、フィルタ部の前後にあるバルブ(第一バルブおよび第二バルブ)を閉状態にして、フィルタ部を交換することができる。これにより、フィルタ部の交換時に、フィルタ部内に窒素ガスを流してフィルタ部内の残留ガスを除去する必要がないので、フィルタ部の交換時間を短縮することができる。したがって、フィルタ交換の際にガラス原料供給装置を停止する時間を短くできるので、ガラス原料が供給されるガラス母材の製造装置を停止する時間を短縮することができる。
【0013】
(4)前記新フィルタ部は、予め窒素ガスが充填されており、
前記第四工程は、前記第一バルブおよび前記第二バルブを閉状態にして、前記第一配管および第二配管の前記フィルタ部側の少なくとも一部に対して、窒素ガスによるパージを行ってもよい。
上記ガラス原料供給装置のフィルタ交換方法によれば、予め窒素ガスが充填された新フィルタ部に交換するので、新フィルタ部内に対して窒素ガスによるパージを行う必要がないので、第四工程の時間を短縮できる。これにより、フィルタ部の交換時間をさらに短縮することができる。
【0014】
(本開示の実施形態の詳細)
本開示の実施形態に係るガラス原料供給装置およびガラス原料供給装置のフィルタ交換方法の具体例を、図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
図1は、本開示の実施形態に係るガラス原料供給装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、本例のガラス原料供給装置1は、気化装置10と、原料ガス配管20と、原料ガス配管30(第一配管の一例)と、パージガス配管40と、フィルタ部50と、原料ガス配管60(第二配管の一例)と、MFC70(流量制御装置の一例)と、バイパス配管80とを備えている。ガラス原料供給装置1は、ガラス微粒子堆積体を製造するためのガラス原料を、反応容器100内に配置されるガラス微粒子生成用のバーナ101に供給する装置である。反応容器100では、例えば、VAD法やOVD法により、光ファイバ用の円柱状ガラス母材等が合成される。
【0016】
気化装置10には、液体のガラス原料が密閉された状態で貯留されている。ガラス原料は、例えば、四塩化ケイ素(SiCl4)等である。気化装置10は、液体のガラス原料を気化させて原料ガスを生成する。
【0017】
原料ガス配管20は、その一端部が気化装置10に接続されている。原料ガス配管20には、気化装置10から送り出される原料ガスが流れる。原料ガス配管20は、上記気化装置10が接続される側の端部とは反対側の端部に、原料弁21の一方の開口部が取り付けられている。原料弁21は、例えば供給される空気によって開閉が制御されるエア駆動弁である。原料弁21における上記原料ガス配管20に接続される側の開口部とは反対側の開口部は、原料ガス配管30の一端部に接続されている。原料弁21が閉状態に制御されることにより、原料ガス配管20から原料ガス配管30へ流れる原料ガスの流れが遮断される。
【0018】
原料ガス配管30は、上記原料弁21が接続される側の端部とは反対側の端部がフィルタ部50の流入側に接続されている。原料ガス配管30には、原料ガス配管20から送られる原料ガスが流れる。また、原料ガス配管30は、当該配管の途中に合流部31が設けられている。合流部31には、配管内をパージするパージガス(例えば、窒素ガス等)が供給されるパージガス配管40の一端部が接続されている。合流部31は、原料ガス配管30における原料弁21寄りの位置に設けられている。
【0019】
パージガス配管40には、パージガスの流路を開状態または閉状態にすることが可能なパージ弁41が設けられている。パージ弁41は、例えば供給される空気によって開閉が制御されるエア駆動弁である。パージ弁41が開状態にされることにより、パージガスがパージガス配管40を介して原料ガス配管30に供給される。
【0020】
フィルタ部50は、流入側弁52(第一バルブの一例)と、ガスラインフィルタ51と、排出側弁53(第二バルブの一例)とを有している。
【0021】
流入側弁52は、フィルタ部50において、ガスラインフィルタ51の一次側に設けられている弁である。一次側とは、原料ガスが流れる方向における上流側を意味する。上述した原料ガス配管30における上記反対側の端部は、当該流入側弁52の入力開口部に接続されている。流入側弁52において、上記原料ガス配管30が接続される側の入力開口部とは反対側の出力開口部は、ガスラインフィルタ51における原料ガスが流入される側の端部に接続されている。流入側弁52は、例えば、手動弁により構成されている。流入側弁52が閉状態にされることにより、原料ガス配管30からフィルタ部50に流入される原料ガスの流入が遮断される。
【0022】
ガスラインフィルタ51は、原料ガスに含まれる不純物を取り除くためのフィルタである。ガスラインフィルタ51は、上記流入側弁52が接続される側の端部とは反対側の端部、すなわち原料ガスが排出される側の端部が、排出側弁53の入力開口部に接続されている。ガスラインフィルタ51は、流入側弁52を介して流入される原料ガスを清浄し、清浄された原料ガスを排出側弁53を介して排出する。
【0023】
排出側弁53は、フィルタ部50において、ガスラインフィルタ51の二次側に設けられている弁である。二次側とは、原料ガスが流れる方向における下流側を意味する。排出側弁53は、上記ガスラインフィルタ51が接続される側の入力開口部とは反対側の出力開口部が原料ガス配管60の一端部に接続されている。排出側弁53は、例えば、手動弁により構成されている。排出側弁53が閉状態にされることにより、フィルタ部50から原料ガス配管60に排出される原料ガスの排出が遮断される。
【0024】
原料ガス配管60は、上記排出側弁53が接続される側の端部とは反対側の端部がMFC(Mass Flow Controller)70の流入側に接続されている。原料ガス配管60には、フィルタ部50から排出される原料ガスが流れる。
【0025】
MFC70は、出力側が、原料ガス供給管71を介して、反応容器100のバーナ101に接続されている。MFC70は、反応容器100のバーナ101に供給される原料ガスの流量を制御する装置である。
【0026】
バイパス配管80は、原料ガス配管30と原料ガス配管60との間に接続されるフィルタ部50に対して設けられる迂回のガス流路である。バイパス配管80は、原料ガス配管30に設けられる分岐部32と原料ガス配管60に設けられる分岐部61とを連通させるように設けられている。分岐部32は、原料ガス配管30におけるフィルタ部50寄りの位置に設けられている。分岐部61は、原料ガス配管60におけるフィルタ部50寄りの位置に設けられている。バイパス配管80の途中には、ガス流路を開閉可能なバイパス用弁81(第三バルブの一例)が設けられている。バイパス用弁81は、例えば、手動弁により構成されている。バイパス用弁81が閉状態にされることにより、原料ガス配管30からバイパス配管80を介して原料ガス配管60に送られる原料ガスの流れが遮断される。なお、バイパス用弁81は、上記原料弁21と同様、供給される空気によって開閉が制御されるエア駆動弁(自動弁)で構成してもよい。また、本例ではバイパス配管80が設けられているが、バイパス配管80を備えていない構成としてもよい。
【0027】
図2は、フィルタ部50の取り付け構成を示す図である。
図2に示すように、原料ガス配管30の端部には、流入側継手90A(第一接続継手の一例)が設けられている。また、原料ガス配管60の端部には、排出側継手90B(第二接続継手の一例)が設けられている。原料ガス配管30は、流入側継手90Aを介して流入側弁52の入力開口部に接続されている。また、原料ガス配管60は、排出側継手90Bを介して排出側弁53の出力開口部に接続されている。フィルタ部50は、流入側継手90Aおよび排出側継手90Bを介して、ガラス原料供給装置1に対し着脱可能に設けられている。
【0028】
なお、本例のガラス原料供給装置1では、気化装置10のガラス原料を一つのバーナ101に供給する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、気化装置から送り出される原料ガスが複数系統の原料ガス配管に分岐され、各原料ガス配管に接続されるバーナに原料ガスを供給する構成としてもよい。その場合、各系統にフィルタ部50、MFC70等が設けられる。
【0029】
このように構成されるガラス原料供給装置1は、ガラス微粒子堆積体の製造時において以下のように動作する。パージ弁41を閉じて原料弁21を開き、流入側弁52と排出側弁53とを開き、バイパス用弁81を閉じる。これにより、気化装置10から送り出された原料ガスが、原料ガス配管20と原料ガス配管30とを流れて、フィルタ部50に送り込まれる。フィルタ部50に送り込まれた原料ガスは、ガスラインフィルタ51によって不純物が取り除かれた後に、原料ガス配管60を流れてMFC70に送られる。原料ガスは、MFC70によって流量が適宜制御されながら反応容器100のバーナ101に供給される。これにより、清浄度の高いガラス微粒子堆積体が反応容器100において製造される。
【0030】
ところが、ガラス原料供給装置1を稼働し続けると、取り除かれた不純物がガスラインフィルタ51内に溜り、当該ガスラインフィルタ51が目詰まりを起こすおそれがある。このため、ガスラインフィルタ51が詰まる前に、新しいガスラインフィルタ51に交換する必要がある。
【0031】
次に、
図3を参照して、ガラス原料供給装置1におけるフィルタ部50の交換方法について説明する。
図3は、
図1におけるフィルタ部50周辺部分を示した図である。フィルタ部50の交換方法は、例えば
図3において左から右へと進行する各工程により示される。なお、
図3における各弁の色(白黒)は、黒い場合は開状態、白い場合は閉状態を示すものである。
【0032】
図3の一番左に示される工程は、フィルタ部50を交換する前のパージ工程(以下、前パージ工程という)を表す。当該前パージ工程では、原料弁21を閉状態にして、気化装置10からの原料ガスの供給を遮断する。また、フィルタ部50の流入側弁52を閉状態にしてフィルタ部50と原料ガス配管30との間の流路を遮断するとともに、排出側弁53を閉状態にしてフィルタ部50と原料ガス配管60との間の流路を遮断する。また、バイパス用弁81を開状態にして、原料ガス配管30と原料ガス配管60との間をバイパス配管80により連通させる。そして、パージ弁41を開状態にして窒素ガスをパージガス配管40に供給する。供給された窒素ガスは、原料ガス配管30からバイパス配管80を介して原料ガス配管60へと流れる。これにより、原料ガス配管30、バイパス配管80、および原料ガス配管60が窒素ガスによってパージされる。
【0033】
図3の左から二番目に示される工程は、フィルタ部50を取り外す取外し工程を表す。当該取外し工程では、上記前パージ工程と同様に窒素ガスを流しながら、フィルタ部50をガラス原料供給装置1から取り外す。窒素が流されているため、フィルタ部50が取り外された状態でも、原料ガス配管30内および原料ガス配管60内に大気が流入するのを防ぐことができる。
【0034】
図3の左から三番目に示される工程は、新しいフィルタ部(新フィルタ部)50を取り付ける取付け工程と当該新しいフィルタ部50が取り付けられた後のパージ工程(以下、後パージ工程という)とを表す。当該取付け工程では、取り外したフィルタ部50と同じ構成の新しいフィルタ部50を予め用意しておく。用意された新しいフィルタ部50は、流入側弁52と排出側弁53を共に閉状態にしておく。新しいフィルタ部50は、窒素ガスが当該フィルタ部50内に予め充填されている。上記前パージ工程と同様に窒素ガスを流しながら、新しいフィルタ部50をガラス原料供給装置1に取り付ける。また、当該後パージ工程では、新しいフィルタ部50を取り付けた後、上記前パージ工程と同様に窒素ガスを流し、原料ガス配管30、バイパス配管80、および原料ガス配管60をパージする。
【0035】
なお、当該後パージ工程では、新しいフィルタ部50の流入側弁52と排出側弁53とを開状態にするとともに、バイパス配管80のバイパス用弁81を閉状態にした後、窒素ガスを流して、原料ガス配管30、新しいフィルタ部50、および原料ガス配管60をパージしてもよい。また、例えば、バイパス配管80を備えない構成では、新しいフィルタ部50を取り付けた後、流入側弁52と排出側弁53とを開状態にして、窒素ガスにより原料ガス配管30、新しいフィルタ部50、および原料ガス配管60をパージしてもよい。
【0036】
図3の一番右に示される工程は、フィルタ部50が交換された後の使用開始工程を表す。当該使用開始工程では、新しいフィルタ部50の流入側弁52と排出側弁53とを開状態にして、バイパス配管80のバイパス用弁81を閉状態にする。そして、パージ弁41を閉状態にするとともに、原料弁21を開状態にして、気化装置10から原料ガスを供給する。
【0037】
図4は、従来のガラス原料供給装置におけるガスラインフィルタの交換方法の一例を示す。
図4における交換方法の各工程は、上記ガラス原料供給装置1におけるフィルタ部50の交換方法で説明した
図3の各工程にそれぞれ対応するように表されている。なお、
図4における各弁の色(白黒)は、黒い場合は開状態、白い場合は閉状態を示すものである。
【0038】
図4の一番左に示される
前パージ工程では、原料弁121を閉状態にして原料ガスの供給を遮断し、パージ弁141を開状態にして窒素ガスを流すことにより、ガスラインフィルタ151内に残留する原料ガス(SiCl4)をパージする。SiCl4は、空気に触れると加水分解してSiO2とHClになる。HClは、安全衛生上の問題があるため、ガスラインフィルタ151を取り外す際には、内部に原料ガスが残留しないよう十分(例えば、HCl濃度2ppm未満)に除去しておく必要がある。しかしながら、ガスラインフィルタ151に残留する原料ガスを窒素ガスでパージするには長い時間(例えば、15時間程度)が必要である。
【0039】
図4の左から二番目に示される取外し工程では、ガスラインフィルタ151をガラス原料供給装置から取り外す。このとき、原料ガス配管130に窒素ガスを流すとともに、パージ弁142を開状態にして原料ガス配管160にも窒素ガスを流しながらガスラインフィルタ151を取り外す。
【0040】
図4の左から三番目に示される後パージ工程では、新しいガスラインフィルタ151を取り付けた後、原料ガス配管130側から当該新しいガスラインフィルタ151に窒素ガスを流して、ガスラインフィルタ151内をパージする。交換された新しいガスラインフィルタ151は、通常のガスラインフィルタと同じ構成なので内部に空気が残留している。そこで、当該残留空気を除去するために窒素ガスによるパージが必要になる。そして、このパージにも長い時間(例えば、1時間程度)が必要になる。
【0041】
図4の一番右に示される使用開始工程では、パージ弁141を閉状態にするとともに、原料弁121を開状態にして、気化装置10から原料ガスを供給する。
【0042】
このように、従来におけるガスラインフィルタの交換方法では、残留原料ガスと残留空気とをパージするために長時間が必要であり、その間、ガラス原料供給装置の稼働を停止する必要があった。特に、多数のバーナを使用するOVD法を実施する装置のように大量のガラス原料を供給することが可能な装置では、各バーナにMFCが接続されるので、使用されるガスラインフィルタの数も増加する。このため、ガスラインフィルタの交換頻度が高くなり、ガラス原料供給装置が稼働を停止される時間も長くなる。
【0043】
これに対して、上記実施形態に係るガラス原料供給装置1は、フィルタ部50におけるガスラインフィルタ51の前後にバルブ(流入側弁52および排出側弁53)を備えている。したがって、これらのバルブを閉状態にすることにより、ガスラインフィルタ51に残留している原料ガス(SiCl4)をフィルタ部50内に閉じ込めたままフィルタ部50をガラス原料供給装置1から取り外すことができる。このため、フィルタ部50の取外し時に、フィルタ部50内に窒素ガスを流してフィルタ部50内の残留ガスを除去する必要がない。よって、ガラス原料供給装置1によれば、フィルタ部50の交換時間を短縮することができる。また、フィルタ交換に伴うガラス原料供給装置1の稼働が停止される時間を短くできるので、ガラス原料が供給されるガラス母材製造装置が停止される時間を短縮することができる。
【0044】
また、ガラス原料供給装置1は、原料ガス配管30の分岐部32と原料ガス配管60の分岐部61とを連通させるバイパス配管80を備えている。このため、パージガス配管40を介して原料ガス配管30からのみ窒素ガスを供給することで、バイパス配管80を通して、原料ガス配管60にも窒素ガスを供給することができる。これにより、窒素ガスの供給経路を単純化することができるとともに、容易に原料ガス配管60およびバイパス配管80をパージすることができる。
【0045】
また、フィルタ部50は、原料ガスの流路において、気化装置10とMFC70との間に配置されているので、原料ガスに含まれる不純物がMFC70に入り込むことを抑制することができ、MFC70の故障頻度を低下させることができる。
【0046】
また、本実施形態に係るガラス原料供給装置のフィルタ交換方法によれば、フィルタ部50におけるガスラインフィルタ51の前後に設けられたバルブ(流入側弁52および排出側弁53)を閉状態にすることで、フィルタ部50を交換することができる。このため、フィルタ部50の交換時に、フィルタ部50内に窒素ガスを流してフィルタ部50内の残留ガスを除去する必要がないので、フィルタ部50の交換時間を短縮することができる。また、フィルタ部50を交換する際にガラス原料供給装置1を停止する時間を短くできるので、ガラス原料が供給されるガラス母材製造装置を停止する時間を短縮することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るガラス原料供給装置のフィルタ交換方法によれば、予め窒素ガスが充填された新しいフィルタ部50に交換するので、交換された新しいフィルタ部50内に対して窒素ガスによるパージを行う必要がない。これにより、フィルタ部50が交換された後のパージ時間を短縮することができるので、フィルタ部50の交換時間をさらに短縮することができる。
【0048】
(実施例)
表1に示すように、フィルタ構成が異なるガラス原料供給装置(比較例と実施例)を用意し、各ガラス原料供給装置を用いたフィルタ交換方法(比較例は
図4参照、実施例は
図3参照)における各工程の所要時間を比較した。なお、交換前の所要時間とは、フィルタ取り外しに必要な残留ガス濃度(HCl濃度2ppm未満)を達成するのに必要な時間である。交換後の所要時間とは、新しいフィルタの使用開始に必要な露点温度(-70℃以下)を達成するのに必用な時間である。
【0049】
【0050】
表1に示すように、フィルタ交換前の所要時間を比較例の15時間に対して実施例では1時間に短縮することができる。また、フィルタ交換後の使用開始までの所要時間を比較例の1時間に対して実施例では5分に短縮することができる。これにより、フィルタ交換に必要な合計所要時間を比較例の16時間5分に対して実施例では1時間10分に短縮することができる。
また、フィルタ交換に伴って発生する母材製造の機会損失(比率)を比較例の1に対して実施例では0.05~0.1に減少することができる。さらに、母材の線引時断線頻度(比率)を比較例の1に対して実施例では1/2に減少することができる。また、MFCの故障頻度(比率)を比較例の1に対して実施例では1/5に減少することができる。
【0051】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:ガラス原料供給装置
10:気化装置
21:原料弁
30:原料ガス配管(第一配管の一例)
32,61:分岐部
40:パージガス配管
41:パージ弁
50:フィルタ部
51:ガスラインフィルタ
52:流入側弁(第一バルブの一例)
53:排出側弁(第二バルブの一例)
60:原料ガス配管(第二配管の一例)
70:MFC(流量制御装置の一例)
71:原料ガス供給管
80:バイパス配管
81:バイパス用弁(第三バルブの一例)
90A:流入側継手(第一接続継手の一例)
90B:排出側継手(第二接続継手の一例)
100:反応容器
101:バーナ