(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
B62D 55/253 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
B62D55/253 E
(21)【出願番号】P 2019124727
(22)【出願日】2019-07-03
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 良輔
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-058357(JP,A)
【文献】特開平09-207838(JP,A)
【文献】特開2002-178964(JP,A)
【文献】特開平08-225088(JP,A)
【文献】特開平09-020271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体からなる無端帯状のクローラ本体と、
前記クローラ本体にクローラ周方向に間隔を空けて埋設され、かつ前記弾性体よりも硬質の材料からなる芯材と、
前記クローラ本体に埋設され、かつ前記芯材よりもクローラ外周側を通ってクローラ周方向にのびるコードからなる抗張体とを含む弾性クローラであって、
前記芯材は、
クローラ幅方向にのびる芯材本体と、
前記芯材本体のクローラ周方向の一方側、他方側の側面からそれぞれクローラ周方向に突出する脱輪防止突起と、
前記芯材本体のクローラ内周側の面から突出するクローラ幅方向両側の一対のガイド突起とを含み、
前記脱輪防止突起のうちで、前記芯材本体の最もクローラ外周側の面をクローラ外周側に越える部分であるクローラ外周側部分は、前記抗張体よりもクローラ外周側に張り出す部分を含み、
前記脱輪防止突起の前記クローラ外周側部分は、前記芯材本体のクローラ外周側の面から隆起しかつクローラ周方向に沿ってのびる延長部分を含み、
前記延長部分は、前記芯材本体の前記側面からのクローラ周方向長さが、前記芯材本体のクローラ周方向幅の50~60%であり、
前記脱輪防止突起は、前記芯材本体の一方側の側面から突出するクローラ幅方向両側の一対の第1の脱輪防止突起と、前記芯材本体の他方側の側面から突出するクローラ幅方向両側の一対の第2の脱輪防止突起とを含み、
クローラ周方向で隣り合う一方側の前記芯材の各前記第1の脱輪防止突起は、他方側の前記芯材の各前記第2の脱輪防止突起とはクローラ幅方向の外側で重なり合い、
前記第1の脱輪防止突起は、前記ガイド突起のクローラ幅方向外側面よりも、クローラ幅方向内側に位置
し、
前記第1の脱輪防止突起のクローラ幅方向の外向き面は、クローラ幅方向外側に向かって凸のV字状面、及び前記第2の脱輪防止突起のクローラ幅方向の内向き面は、クローラ幅方向内側に向かって凸のV字状面からなる、
弾性クローラ。
【請求項2】
弾性体からなる無端帯状のクローラ本体と、
前記クローラ本体にクローラ周方向に間隔を空けて埋設され、かつ前記弾性体よりも硬質の材料からなる芯材と、
前記クローラ本体に埋設され、かつ前記芯材よりもクローラ外周側を通ってクローラ周方向にのびるコードからなる抗張体とを含む弾性クローラであって、
前記芯材は、
クローラ幅方向にのびる芯材本体と、
前記芯材本体のクローラ周方向の一方側、他方側の側面からそれぞれクローラ周方向に突出する脱輪防止突起と、
前記芯材本体のクローラ内周側の面から突出するクローラ幅方向両側の一対のガイド突起とを含み、
前記脱輪防止突起のうちで、前記芯材本体の最もクローラ外周側の面をクローラ外周側に越える部分であるクローラ外周側部分は、前記抗張体よりもクローラ外周側に張り出す部分を含み、
前記脱輪防止突起の前記クローラ外周側部分は、前記芯材本体のクローラ外周側の面から隆起しかつクローラ周方向に沿ってのびる延長部分を含み、
前記延長部分は、前記芯材本体の前記側面からのクローラ周方向長さが、前記芯材本体のクローラ周方向幅の50~60%であり、
前記脱輪防止突起は、前記芯材本体の一方側の側面から突出するクローラ幅方向両側の一対の第1の脱輪防止突起と、前記芯材本体の他方側の側面から突出するクローラ幅方向両側の一対の第2の脱輪防止突起とを含み、
クローラ周方向で隣り合う一方側の前記芯材の各前記第1の脱輪防止突起は、他方側の前記芯材の各前記第2の脱輪防止突起とはクローラ幅方向の外側で重なり合い、
前記第1の脱輪防止突起は、前記ガイド突起のクローラ幅方向外側面よりも、クローラ幅方向内側に位置し、
前記第1の脱輪防止突起のクローラ幅方向の外向き面は、クローラ幅方向外側に向かって凸の円弧面、及び前記第2の脱輪防止突起のクローラ幅方向の内向き面は、クローラ幅方向内側に向かって凸の円弧面からなる、
弾性クローラ。
【請求項3】
前記脱輪防止突起のクローラ厚さ方向の中心J1と、前記抗張体のクローラ厚さ方向の中心J2とのクローラ厚さ方向の距離Lzは、前記脱輪防止突起のクローラ厚さ方向の高さhの1/2以下である、請求項
1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
前記第1の脱輪防止突起のクローラ幅方向の内向き面、及び前記第2の脱輪防止突起のクローラ幅方向の外向き面は、それぞれ、クローラ幅方向と直角な面からなる、請求項
1ないし3のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材にクローラ周方向に突出する脱輪防止突起を設けた端帯状の弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム等の弾性体からなるクローラ本体内に、複数の芯材と抗張体とを埋設した弾性クローラが知られている。芯材は、クローラ幅方向の補強材として機能し、クローラ周方向に間隔を空けて配されている。又抗張体は、クローラ周方向の補強材として機能し、前記芯材よりもクローラ外周側を通ってクローラ周方向にのびるコードから構成されている。
【0003】
この種の弾性クローラは、隣り合う芯材間で横ずれ(クローラ幅方向のずれ)が発生し易い。そして横ずれが原因して、芯材側のガイド突起から、車体側の転輪が外れて、脱輪を起こすという問題が生じる。
【0004】
下記の特許文献1には、脱輪防止のために、芯材に、クローラ周方向の一方側に突出する一対の第1突起と、他方側に突出する一対の第2突起とを設けることが記載されている。この弾性クローラでは、クローラ周方向で隣り合う一方側の芯材の第1突起が、他方側の芯材の第2突起にクローラ幅方向の外側で重なり合うことで、芯材間の横ずれが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、突起物への乗り上げ時や旋回時などに作用する外力により、隣り合う芯材間に屈曲や捻れ等が生じてしまうと、第1突起と第2突起との係合が外れて脱輪が発生してしまうことがある。
【0007】
このような屈曲や捻れ等に起因する脱輪対策として、第1突起、第2突起を大型化すること等が案出されるが、芯材重量の増大を招くなど、改善の余地が残されている。
【0008】
本発明は、芯材重量の増加を抑えながら、屈曲や捻れ等に起因する脱輪を抑制しうる弾性クローラを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、弾性体からなる無端帯状のクローラ本体と、
前記クローラ本体にクローラ周方向に間隔を空けて埋設され、かつ前記弾性体よりも硬質の材料からなる芯材と、
前記クローラ本体に埋設され、かつ前記芯材よりもクローラ外周側を通ってクローラ周方向にのびるコードからなる抗張体とを含む弾性クローラであって、
前記芯材は、
クローラ幅方向にのびる芯材本体と、
前記芯材本体のクローラ周方向の一方側、他方側の側面からそれぞれクローラ周方向に突出する脱輪防止突起とを含み、
前記脱輪防止突起のクローラ外周側部分は、前記抗張体よりもクローラ外周側に張り出す部分を含む。
【0010】
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記脱輪防止突起のクローラ厚さ方向の中心J1と、前記抗張体のクローラ厚さ方向の中心J2とのクローラ厚さ方向の距離Lzは、前記脱輪防止突起のクローラ厚さ方向の高さhの1/2以下であるのが好ましい。
【0011】
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記脱輪防止突起の前記クローラ外周側部分は、前記芯材本体のクローラ外周側の面から隆起しかつクローラ周方向に沿ってのびる延長部分を含むのが好ましい。
【0012】
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記延長部分は、前記芯材本体の前記側面からのクローラ周方向長さが、前記芯材本体のクローラ周方向幅の50~60%であるのが好ましい。
【0013】
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記脱輪防止突起は、前記芯材本体の一方側の側面から突出するクローラ幅方向両側の一対の第1の脱輪防止突起と、前記芯材本体の他方側の側面から突出するクローラ幅方向両側の一対の第2の脱輪防止突起とを含み、
クローラ周方向で隣り合う一方側の前記芯材の各前記第1の脱輪防止突起は、他方側の前記芯材の各前記第2の脱輪防止突起とはクローラ幅方向の外側で重なり合うのが好ましい。
【0014】
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記第1の脱輪防止突起のクローラ幅方向の内向き面、及び前記第2の脱輪防止突起のクローラ幅方向の外向き面は、それぞれ、クローラ幅方向と直角な面からなるのが好ましい。
【0015】
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記第1の脱輪防止突起のクローラ幅方向の外向き面は、クローラ幅方向外側に向かって凸のV字状面、及び前記第2の脱輪防止突起のクローラ幅方向の内向き面は、クローラ幅方向内側に向かって凸のV字状面からなるのも好ましい。
【0016】
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記第1の脱輪防止突起のクローラ幅方向の外向き面は、クローラ幅方向外側に向かって凸の円弧面、及び前記第2の脱輪防止突起のクローラ幅方向の内向き面は、クローラ幅方向内側に向かって凸の円弧面からなるのが好ましい。
【0017】
本発明に係る弾性クローラにおいて、前記芯材は、前記芯材本体のクローラ内周側の面から突出するクローラ幅方向両側の一対のガイド突起を含み、前記第1の脱輪防止突起は、前記ガイド突起のクローラ幅方向外側面よりも、クローラ幅方向内側に位置するのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る芯材では、芯材本体のクローラ周方向の一方側、他方側の側面からそれぞれ突出する脱輪防止突起において、この脱輪防止突起のクローラ外周側部分が、抗張体よりもクローラ外周側に張り出す部分を含んでいる。即ち、抗張体は、脱輪防止突起のクローラ厚さ方向の中央側を通っている。
【0019】
ここで、弾性クローラにおいて芯材間に屈曲や捻れ等が生じたとき、抗張体が非伸張であるため、この抗張体に近いほど変形による変位は小さくなる。即ち、脱輪防止突起が、芯材間の屈曲や捻れ等に合わせて動く範囲が小さくなり、脱輪防止突起間の外れが発生し難くなる。その結果、芯材重量の増加を抑えながら、脱輪を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の弾性クローラの一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】芯材のクローラ幅方向の半分を拡大して示す正面図である。
【
図4】(a)は芯材の底面図、(b)はそのA-A線断面図である。
【
図5】芯材の配列状態を概念的に示す略平面図である。
【
図6】(a)、(b)は脱輪防止突起の断面形状の一例を示す断面図である。
【
図7】V字状面を有する脱輪防止突起の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は弾性クローラ1の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の弾性クローラ1は、ゴム等の弾性体からなる無端帯状のクローラ本体2と、クローラ本体2に埋設される複数の芯材3と、クローラ本体2に埋設される抗張体4とを含む。
【0022】
本明細書において、クローラ周方向は、弾性クローラ1の回転方向であり、
図1の符号Xで示される方向に相当する。また、クローラ幅方向は、弾性クローラ1が車両に装着されるときの駆動輪の軸方向であり、
図1の符号Yで示される方向に相当する。さらに、クローラ厚さ方向は、クローラ周方向X及びクローラ幅方向Yに直交する方向であり、
図1の符号Zで示される方向に相当する。クローラ厚さ方向Zのうち、無端帯状の弾性クローラ1の内側はクローラ内周側Zi、外側はクローラ外周側Zoとされる。
【0023】
クローラ本体2は、略一定の幅を有してクローラ周方向Xに連続してのびる。クローラ本体2のクローラ外周側Zoの面2oには、クローラ周方向Xに間隔を有して配列する複数本のラグ5が突設している。ラグ5は、クローラ幅方向Yにのび、不整地走行時のトラクション性を高める。クローラ本体2のクローラ内周側Ziの面2iには、複数の突起6aからなりクローラ周方向Xにのびる2列の突起列6が形成される。この突起列6、6間に、車体側の駆動輪、遊動輪、転輪などが案内される。なお突起6aは、芯材3に設けるガイド突起10により補強されている。
【0024】
芯材3は、クローラ幅方向Yの補強材として機能し、クローラ周方向Xに間隔を隔てて配されている。芯材3は、前記弾性体よりも硬質の材料からなり、この硬質の材料として、例えば鋼、鋳鉄等の金属材料が好適に採用される。なお芯材3の全体が、クローラ本体2に埋設される必要はなく、その一部分、例えばガイド突起10がクローラ本体2から露出していても良い。
【0025】
図2は芯材3の斜視図である。
図2に示すように、芯材3は、クローラ幅方向Yにのびる芯材本体7と、芯材本体7のクローラ周方向Xの一方側、他方側の側面S1、S2からそれぞれクローラ周方向Xに突出する脱輪防止突起8とを含む。
【0026】
芯材本体7は、クローラ幅方向Yの中央に配される係合部7Aと、この係合部7Aのクローラ幅方向Yの両外側に配される翼部7Bとを含む。係合部7Aは、例えば駆動輪の歯溝部と噛み合うように、そのクローラ内周側Ziの面は、クローラ内周側Ziに凸の円弧面20で形成される。
【0027】
芯材3は、芯材本体7のクローラ内周側Ziの面7siからクローラ厚さ方向Zに突出する一対のガイド突起10、10を含む。このガイド突起10、10は、係合部7Aのクローラ幅方向Y両側で立ち上がる。そして、このガイド突起10、10間で駆動輪、遊動輪、転輪を挟んでガイドする。
【0028】
次に、脱輪防止突起8は、本例では、前記一方側の側面S1から突出する一対の第1の脱輪防止突起8A、8Aと、他方側の側面S2から突出する一対の第2の脱輪防止突起8B、8Bとを含む。一対の第1の脱輪防止突起8A、8Aは、クローラ幅方向Yの両側に間隔を隔てて配される。又一対の第2の脱輪防止突起8B、8Bも、クローラ幅方向Yの両側に間隔を隔てて配される。
【0029】
図5は芯材3の配列状態を概念的に示す略平面図である。この
図5では、ガイド突起10が省略して描かれている。
図5に示すように、弾性クローラ1において、クローラ周方向Xで隣り合う一方側の芯材3
1の第1の脱輪防止突起8Aは、他方側の芯材3
2の第2の脱輪防止突起8Bとは、クローラ幅方向Yの外側で重なり合って係合している。これにより、芯材3
1、3
2間の横ずれ(クローラ幅方向Yのずれ)が抑制される。
【0030】
図2に示すように、抗張体4は、芯材3よりもクローラ外周側Zoを通ってクローラ周方向Xにのびるコード11から構成される。抗張体4としては、例えば複数本のコード11をクローラ幅方向Yに並べた帯状のコード配列体を、クローラ周方向Xに巻回することによって形成することができる。又抗張体4としては、1本又は数本のコード11を、クローラ周方向Xに螺旋状に複数回巻回することによって形成することもできる。この抗張体4は、第1の脱輪防止突起8Aよりもクローラ幅方向Yの外側に配される。
【0031】
コード11としては、スチールコード等の金属コードが好適に採用しうるが、例えばアラミド、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレンナフタレート等の有機繊維のコードも採用しうる。
【0032】
図3は芯材3の一部を拡大して示す正面図である。
図3に示すように、本発明において、脱輪防止突起8のクローラ外周側部分12は、抗張体4よりもクローラ外周側Zoに張り出す部分12aを含む。
【0033】
クローラ外周側部分12は、脱輪防止突起8のうちで、芯材本体7のクローラ外周側Zoの面7soをクローラ外周側Zoに越える部分として定義される。又張り出す部分12aは、クローラ外周側部分12のうちで、抗張体4をクローラ外周側Zoに越える部分として定義される。
【0034】
このように脱輪防止突起8が張り出す部分12aを含む場合、抗張体4は、脱輪防止突起8のクローラ厚さ方向Zの中央側を通ることになる。
【0035】
ここで、弾性クローラ1において芯材3、3間に屈曲や捻れ等が生じたとき、抗張体4が非伸張であるため、この抗張体4に近いほど変形による変位は小さくなる。即ち、脱輪防止突起8が、芯材3、3間の屈曲や捻れ等に合わせて動く範囲が小さくなり、脱輪防止突起8A、8B間の係合外れが発生し難くなる。その結果、芯材重量の増加を抑えながら、脱輪を抑制することが可能になる。
【0036】
このような観点から、脱輪防止突起8のクローラ厚さ方向の中心J1と、抗張体4のクローラ厚さ方向の中心J2とのクローラ厚さ方向の距離Lzは、脱輪防止突起8のクローラ厚さ方向の高さhの1/2以下で、できるだけ小さいことが好ましい。本例では、前記中心J1と面7soとが同高さ位置に配される場合が示される。しかし、中心J1が面7soよりもクローラ外周側Zoに位置することもでき、係る場合、距離Lzを0とすることも可能となる。
【0037】
また脱輪防止突起8が、芯材本体7のクローラ幅方向中心Cyに近いほど、捻れによるクローラ厚さ方向Zの脱輪防止突起8のずれ量が小さくなる。その結果、脱輪防止突起8A、8B間の係合外れが発生し難くなる。このような観点から、第1の脱輪防止突起8Aは、ガイド突起10のクローラ幅方向外側面10soよりも、クローラ幅方向内側に位置するのが好ましい。なお外側面10soが傾斜する場合、ガイド突起10の前記外側面10soの延長線と、芯材本体7の前記面7siの延長線との交点位置Pよりも、第1の脱輪防止突起8Aが、クローラ幅方向内側に位置するのが好ましい。
【0038】
図4(a)は芯材3の底面図であり、
図4(b)はそのA-A線断面図である。
図4(a)、(b)に示すように、脱輪防止突起8のクローラ外周側部分12は、芯材本体7のクローラ外周側の面7soから隆起しかつクローラ周方向Xに沿ってのびる延長部分12Aを含む。
【0039】
この延長部分12Aにより、芯材重量の増加を抑えながら、脱輪防止突起8の強度が高められる。延長部分12Aは、芯材本体7の側面Sからのクローラ周方向長さLxが、芯材本体7のクローラ周方向幅Wxの50~60%であるのが好ましい。長さLxが幅Wxの50%を下回ると、充分な強度が得られない恐れがあり、逆に60%を越えると、芯材重量の不必要な増加を招く。
【0040】
図6(a)、(b)に、第1、第2の脱輪防止突起8A、8Bの好ましい断面形状を示す。
図6(a)、(b)に示すように、第1の脱輪防止突起8Aのクローラ幅方向Yの内向き面Ai、及び第2の脱輪防止突起8Bのクローラ幅方向Yの外向き面Boは、それぞれ、クローラ幅方向Yと直角な面15からなるのが好ましい。
これにより第1、第2の脱輪防止突起8A、8Bの係合を外れ難くできる。
【0041】
また
図6(a)に示すように、第1の脱輪防止突起8Aのクローラ幅方向Yの外向き面Aoを、クローラ幅方向外側に向かって凸のV字状面16、及び第2の脱輪防止突起8Bのクローラ幅方向Yの内向き面Biを、クローラ幅方向内側に向かって凸のV字状面16で形成するのが好ましい。
【0042】
なお
図6(b)に示すように、第1の脱輪防止突起8Aのクローラ幅方向Yの外向き面Aoを、クローラ幅方向外側に向かって凸の円弧面17、及び第2の脱輪防止突起8Bのクローラ幅方向Yの内向き面Biを、クローラ幅方向内側に向かって凸の円弧面17で形成するのも好ましい。
【0043】
図7に代表して示すように、第1、第2の脱輪防止突起8A、8B間に係合外れれが起きた場合、第2の脱輪防止突起8BのV字状面16の斜面16sが、第1の脱輪防止突起8AのV字状面16の斜面16aに沿って移動しやすくなる。即ち、第2の脱輪防止突起8Bが第1の脱輪防止突起8Aを乗り越えて、元の係合状態に戻りやすくなるという効果が得られる。なお
図6(b)の円弧面17の場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0044】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0045】
本発明の効果を確認するために、
図1、2に示す構造を有する弾性クローラが表1の仕様に基づいて試作された。そして、各試作品をミニバックホーの走行装置に装着し、突起物への乗り上げ及び旋回を含む走行試験を行い、耐脱輪性について評価した。また実車耐久試験にて耐久性を評価した。比較例及び実施例は、それぞれ脱輪防止突起の断面形状及び断面サイズは同一であり、断面形状として
図6(a)のものを使用している。
【0046】
(1)耐脱輪性:
走行後、弾性クローラが転輪から外れて脱輪が発生した件数を3段階表示した。数値が大なほど優れている。
【0047】
(2)耐久性:
走行後、弾性クローラを解体し、脱輪防止突起の破損数を3段階表示した。数値が大なほど優れている。
【0048】
【0049】
表に示すように、実施例の弾性クローラは、脱輪に対する抑制効果を奏しうるのが確認できる。
【符号の説明】
【0050】
1 弾性クローラ
2 クローラ本体
3 芯材
4 抗張体
7 芯材本体
8 脱輪防止突起
8A 第1の脱輪防止突起
8B 第2の脱輪防止突起
10 ガイド突起
10so 外側面
11 コード
12 クローラ外周側部分
12a 張り出す部分
12A 延長部分
15 直角な面
16V 字状面
17 円弧面
S1、S2 側面