IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

特許7310384光走査装置およびそれを備えた画像形成装置
<>
  • 特許-光走査装置およびそれを備えた画像形成装置 図1
  • 特許-光走査装置およびそれを備えた画像形成装置 図2
  • 特許-光走査装置およびそれを備えた画像形成装置 図3
  • 特許-光走査装置およびそれを備えた画像形成装置 図4
  • 特許-光走査装置およびそれを備えた画像形成装置 図5
  • 特許-光走査装置およびそれを備えた画像形成装置 図6
  • 特許-光走査装置およびそれを備えた画像形成装置 図7
  • 特許-光走査装置およびそれを備えた画像形成装置 図8
  • 特許-光走査装置およびそれを備えた画像形成装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】光走査装置およびそれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/47 20060101AFI20230711BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20230711BHJP
   G03G 15/04 20060101ALI20230711BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20230711BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20230711BHJP
   H04N 1/113 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B41J2/47 101Z
G02B26/10 B
G02B26/10 F
G03G15/04 111
G03G21/14
G03G21/00 310
H04N1/113
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019128622
(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公開番号】P2021014037
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真悟
(72)【発明者】
【氏名】小林 竜也
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/111118(WO,A1)
【文献】特開2018-036308(JP,A)
【文献】特開2018-051916(JP,A)
【文献】特開2018-138378(JP,A)
【文献】特開2005-345994(JP,A)
【文献】特開2009-143108(JP,A)
【文献】特開2016-031467(JP,A)
【文献】特開平06-296397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/47
G02B 26/10
G03G 15/04
G03G 21/14
G03G 21/00
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体にレーザー光を照射して静電潜像を形成する光走査装置であって、
前記像担持体に対応して、前記レーザー光の主走査方向に延びる前記レーザー光の出射口が形成された筐体と、
前記レーザー光に対する透過性を有し、前記レーザー光の主走査方向に延び、且つ、前記レーザー光の出射口を封止する透過性部材と、
前記筐体に環状に張設された線状部材と、
前記線状部材を第1方向および第2方向に走行させる駆動部と、
前記線状部材に固定され、前記駆動部により前記線状部材が環状走行されたときに前記透過性部材の延在方向に移動する清掃ホルダーと、
前記清掃ホルダーに固定され、前記清掃ホルダーの移動に伴い前記透過性部材に対して摺動することにより前記透過性部材を清掃する清掃部材と、
前記清掃ホルダーの移動経路の端部に配置され、前記清掃ホルダーの移動を規制するストッパーと、
前記駆動部に駆動電圧を供給する駆動電圧電源と、
前記駆動部の駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記線状部材を前記第1方向に走行させることにより、前記清掃ホルダーが前記透過性部材の延在方向に沿って移動する往路動作と、
前記往路動作の実行後、前記線状部材を前記第2方向に走行させることにより、前記清掃ホルダーが前記往路動作と逆方向に移動する復路動作と、
の少なくとも一方を含む清掃モードを実行可能であり、
前記清掃モードの実行後に、前記清掃ホルダーを前記清掃モードの最終動作である前記往路動作または前記復路動作と逆方向に所定量だけ移動させる負荷解放動作を実行し、
前記往路動作および前記復路動作は、前記駆動部の駆動トルクが異なる2以上の動作モードを含み、前記負荷解放動作は、前記往路動作および前記復路動作の終了時に設定される最終動作モードと前記駆動部の駆動トルクが同一であり、前記負荷解放動作に続く次の前記清掃モードである前記往路動作および前記復路動作では、前記負荷解放動作と比べて駆動トルクの大きい第1動作モードで駆動されることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記負荷解放動作における前記動作モードの継続時間は、前記清掃モード中の全ての前記動作モードよりも短いことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記負荷解放動作の終了時に、前記清掃ホルダーが前記透過性部材の光線射出範囲外にあるタイミングで前記駆動部を停止させることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記往路動作および前記復路動作における前記各動作モード間の切り替えを、前記清掃ホルダーが前記透過性部材の光線射出範囲外にあるタイミングで実行することを特徴とする請求項乃至請求項3のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記駆動電圧のDUTYを変化させることにより前記清掃モード中および前記負荷解放動作における前記各動作モードの駆動トルクを調整することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項6】
前記駆動部に前記駆動電圧を供給したときに流れる電流値若しくは電圧値を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記電流値若しくは前記電圧値が所定値よりも大きくなったとき、前記清掃ホルダーが前記ストッパーに当接したと判定して前記往路動作または前記復路動作の終了時に前記駆動部を停止させることを特徴とする請求項乃至請求項5のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項7】
複数の前記像担持体に対応して、前記レーザー光の主走査方向に延びる複数のレーザー光の出射口が並設される前記筐体と、
前記複数のレーザー光の出射口をそれぞれ閉塞する複数の前記透過性部材と、
前記清掃ホルダーとして、前記駆動部により前記線状部材が環状走行されたときに前記透過性部材の延在方向に沿って移動する第1清掃ホルダーおよび第2清掃ホルダーと、
前記ストッパーとして、前記透過性部材の延在方向の一方側の端部に配置され、前記第1清掃ホルダーの前記一方側への移動を規制する第1ストッパーと、
前記透過性部材の延在方向の一方側の端部に配置され、前記第2清掃ホルダーの前記一方側への移動を規制する第2ストッパーと、
を備え、
前記往路動作において、前記第1清掃ホルダーは前記一方側に、前記第2清掃ホルダーは前記一方側と反対方向である他方側に移動し、前記復路動作において、前記第1清掃ホルダーは前記他方側に、前記第2清掃ホルダーは前記一方側に移動することを特徴とする請求項乃至請求項6のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項8】
1つ以上の前記像担持体と、
前記像担持体にレーザー光を照射して静電潜像を形成する請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の光走査装置と、
を備えた画像形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置において像担持体に光を照射して静電潜像を形成する光走査装置、および光走査装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機やプリンター等の画像形成装置には、光走査装置が設けられている。光走査装置は、帯電した像担持体に光を照射して、像担持体上に静電潜像を形成する。光走査装置の筐体は、一つの面が開口した収容部と、その開口を覆うカバー部とを含む。収容部の内部に走査光学系が組み込まれ、カバー部には、像担持体に対応して走査光学系から出射される光の出射口が形成されている。更に、出射口が透過性部材で覆われている。透過性部材は、走査光学系から出射される光に対して透過性を有する部材である。
【0003】
透過性部材は、光走査装置の内部へのトナーや埃等の進入を防止するために設けられている。光走査装置の内部に配置された複数の光学部品の一部又は全部にトナーや埃等が付着すると、光学特性が悪化することがある。光学特性の悪化は、用紙等の記録媒体に形成される画像の品質を低下させる。
【0004】
一方で、トナーや埃等が、透過性部材の一部又は全部の外側面に付着した場合にも、光学特性が悪化することがある。このため、透過性部材の外側面を定期的に清掃する必要があり、例えば特許文献1には、透過性部材の外側面を自動で清掃する自動清掃機構が開示されている。この自動清掃機構は、複数の透過性部材の長手方向に沿って配置された各スクリュー軸によって、複数の清掃ホルダーを同一方向に同時に移動させる。各清掃ホルダーは1つの清掃部材をそれぞれ保持しており、各清掃ホルダーがそれぞれの移動経路を移動することにより、各清掃部材が、対応する透過性部材の外側面上を摺動する。これにより、各透過性部材が同時に清掃される。
【0005】
また、特許文献2には、清掃部材をそれぞれ2個保持する2個の清掃ホルダーが線状部材に連結され、線状部材の環状走行に伴い2個の清掃ホルダーが透過性部材に沿って移動するとともに、それぞれの清掃部材が対応する透過性部材上を摺動する光走査装置が開示されている。そして、清掃ホルダーが移動経路の一端においてストッパーに当接することで、線状部材の走行が停止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-143108号公報
【文献】特開2016-31467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の構成では、清掃ホルダーを往復移動させた後、ストッパーに当接させた状態で停止させている。清掃ホルダーがストッパーに当接した状態では、次の清掃動作が実行されるまで線状部材にテンション(負荷)が掛かり続けてしまう。その結果、線状部材の伸びが発生し、最悪の場合は線状部材が破断するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、清掃ホルダーの停止時に線状部材に継続して負荷が加わることによる線状部材の伸びや破断を抑制可能な光走査装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、像担持体にレーザー光を照射して静電潜像を形成する光走査装置であって、筐体と、透過性部材と、線状部材と、駆動部と、清掃ホルダーと、清掃部材と、ストッパーと、制御部と、を備える。筐体は、像担持体に対応して、レーザー光の主走査方向に延びるレーザー光の出射口が形成される。透過性部材は、レーザー光に対する透過性を有し、レーザー光の主走査方向に延び、且つ、レーザー光の出射口を封止する。線状部材は、筐体に環状に張設される。駆動部は、線状部材を第1方向および第2方向に走行させる。清掃ホルダーは、線状部材に固定され、駆動部により線状部材が環状走行されたときに透過性部材の延在方向に移動する。清掃部材は、清掃ホルダーに固定され、清掃ホルダーの移動に伴い透過性部材に対して摺動することにより透過性部材を清掃する。ストッパーは、清掃ホルダーの移動経路の端部に配置され、清掃ホルダーの移動を規制する。制御部は、駆動部の駆動を制御する。制御部は、線状部材を第1方向に走行させることにより、清掃ホルダーが透過性部材の延在方向に沿って移動する往路動作と、往路動作の実行後、線状部材を第2方向に走行させることにより、清掃ホルダーが往路動作と逆方向に移動する復路動作と、の少なくとも一方を含む清掃モードを実行可能である。制御部は、清掃モードの実行後に、清掃ホルダーを清掃モードの最終動作である往路動作または復路動作と逆方向に所定量だけ移動させる負荷解放動作を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の構成によれば、清掃モードの実行後に、清掃ホルダーを逆方向に所定量だけ移動させる負荷解放動作を行うことにより、清掃ホルダーをストッパーから離間させた状態で停止させることができる。従って、線状部材にテンション(負荷)が掛かり続ける状態を回避することができ、線状部材の伸びや破断を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の光走査装置12が搭載される画像形成装置1の全体構成を概略的に示す断面図
図2】本発明の一実施形態に係る光走査装置12のカバー部12cを示す平面図
図3】本実施形態の光走査装置12におけるカバー部12cに設けられた清掃ホルダー51の動作を説明するための平面図
図4】本実施形態の光走査装置12におけるカバー部12cの一部を清掃ホルダー51の移動方向から見た断面図
図5】画像形成装置1に用いられる制御経路の一例を示すブロック図
図6】清掃モードにおける巻き取りモーター55の駆動制御の第1の制御例を示すフローチャート
図7】清掃モードにおける巻き取りモーター55の駆動制御の第2の制御例を示すフローチャート
図8】本実施形態の光走査装置12におけるカバー部12cの一部を清掃ホルダー51の移動方向と直交する方向から見た断面図
図9】モノクロ画像形成装置に用いる光走査装置12における清掃ホルダー51の移動機構を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の光走査装置が搭載される画像形成装置1の全体構成を概略的に示す断面図である。画像形成装置1はタンデム型のカラープリンターである。画像形成装置1は、像担持体として回転可能である感光体ドラム11a~11dを備える。感光体ドラム11a~11dには、有機感光層が形成された有機感光体(OPC感光体)、又はアモルファスシリコン感光層が形成されたアモルファスシリコン感光体等が用いられる。感光体ドラム11a~11dは、マゼンタ、シアン、イエローおよびブラックの各色に対応させてタンデム配置される。
【0013】
感光体ドラム11aの周囲に、現像装置2a、帯電器13aおよびクリーニング装置14aが配設される。同様に、感光体ドラム11b~11dのそれぞれの周囲に、現像装置2b~2d、帯電器13b~13dおよびクリーニング装置14b~14dがそれぞれ配設される。また、現像装置2a~2dの下方に光走査装置12が配設される。なお、本明細書において、下および上は、図面における下および上を示す。
【0014】
現像装置2a~2dは、感光体ドラム11a~11dの右方にそれぞれ配置される。現像装置2a~2dは、感光体ドラム11a~11dにそれぞれ対向しており、感光体ドラム11a~11dにトナーを供給する。なお、本明細書において、右および左は、図面における右および左を示す。
【0015】
帯電器13a~13dは、感光体ドラム11a~11dの回転方向に対し現像装置2a~2dよりも上流側に配置され、感光体ドラム11a~11dの表面にそれぞれ対向する。帯電器13a~13dは、感光体ドラム11a~11dの表面をそれぞれ一様に帯電させる。
【0016】
光走査装置12は、パーソナルコンピューター等から画像入力部に入力された文字や絵柄などの画像データに基づいて、帯電器13b~13dによって一様に帯電された感光体ドラム11a~11dの表面に光を照射(光走査)し、感光体ドラム11a~11dの表面に静電潜像を形成する。
【0017】
光走査装置12の筐体12aは、一つの面が開口した収容部12bと、その開口を覆うカバー部12cとを含む。収容部12bの内部に走査光学系120が組み込まれる。カバー部12cには、感光体ドラム11a~11dに対応して走査光学系120から出射される光(レーザー光)の出射口が形成されている。更に、後述するように、出射口はそれぞれ透過性部材52(図2参照)で覆われている。透過性部材52は、走査光学系120から出射される光に対して透過性を有する。
【0018】
走査光学系120は、レーザー光源(図示せず)およびポリゴンミラーを含む。また、走査光学系120は、感光体ドラム11a~11dに対応して、少なくとも1つの反射ミラーと、レンズとを含む。レーザー光源から出射されたレーザー光が、ポリゴンミラー、反射ミラー群およびレンズ群を介して、帯電器13a~13dよりも感光体ドラム11a~11dの回転方向に対し下流側から、感光体ドラム11a~11dの表面にそれぞれ照射される。これにより、感光体ドラム11a~11dの表面に静電潜像が形成される。これらの静電潜像が、現像装置2a~2dによってトナー像に現像される。
【0019】
無端状の中間転写ベルト17は、テンションローラー6、駆動ローラー25および従動ローラー27に張架されている。駆動ローラー25がモーター(図示せず)によって回転することで、中間転写ベルト17が図1の時計回り方向に循環駆動する。
【0020】
感光体ドラム11a~11dは、中間転写ベルト17の下方で搬送方向(図1の矢印方向)に沿って隣り合うように配列されている。また、感光体ドラム11a~11dは、中間転写ベルト17にそれぞれ接触している。一次転写ローラー26a~26dは、中間転写ベルト17を挟んで感光体ドラム11a~11dとそれぞれ対向する。一次転写ローラー26a~26dは、中間転写ベルト17にそれぞれ圧接されて、感光体ドラム11a~11dと共に一次転写部を形成する。これらの一次転写部において、トナー像が中間転写ベルト17に転写される。詳しくは、一次転写ローラー26a~26dに一次転写電圧が印加されることにより、所定のタイミングで感光体ドラム11a~11dのトナー像が中間転写ベルト17に順次転写される。これにより、中間転写ベルト17の表面にマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のトナー像が所定の位置関係をもって重ね合わされたフルカラートナー像が形成される。
【0021】
二次転写ローラー34は、中間転写ベルト17を挟んで駆動ローラー25と対向する。二次転写ローラー34は、中間転写ベルト17に圧接されて、駆動ローラー25と共に二次転写部を形成する。この二次転写部において、二次転写ローラー34に二次転写電圧が印加されることにより、中間転写ベルト17の表面のトナー像が用紙Pに転写される。トナー像の転写後に、ベルトクリーニング装置31が中間転写ベルト17に残存するトナーを清掃する。
【0022】
画像形成装置1内の下方には給紙カセット32が配設される。給紙カセット32は複数枚の用紙Pを収納可能である。給紙カセット32の右方には、手差し給紙用のスタックトレイ35が配設される。給紙カセット32の左方には、第1用紙搬送路33が配設される。第1用紙搬送路33は、給紙カセット32から繰り出された用紙Pを二次転写部に搬送する。また、スタックトレイ35の左方には、第2用紙搬送路36が配設される。第2用紙搬送路36は、スタックトレイ35から繰り出された用紙を二次転写部に搬送する。更に、画像形成装置1内の左上方には、定着部18と、第3用紙搬送路39とが配設される。定着部18は、画像が形成された用紙Pに対して定着処理を行う。第3用紙搬送路39は、定着処理が行われた用紙Pを用紙排出部37に搬送する。
【0023】
給紙カセット32 に収納されている用紙Pは、ピックアップローラー33bおよび捌きローラー対33a により1枚ずつ第1用紙搬送路33側に繰り出される。
【0024】
第1用紙搬送路33と第2用紙搬送路36とはレジストローラー対33cの手前(上流側)で合流している。レジストローラー対33cは、中間転写ベルト17における画像形成動作と、二次転写部への給紙動作とのタイミングを取って用紙Pを二次転写部に搬送する。二次転写部に搬送された用紙Pに対し、二次転写電圧が印加された二次転写ローラー34によって、中間転写ベルト17上のフルカラートナー像が二次転写される。フルカラートナー像が転写された用紙Pは、定着部18に搬送される。
【0025】
定着部18は、ヒーターにより加熱される定着ベルト、定着ベルトに内接する定着ローラー、および定着ベルトを挟んで定着ローラーに圧接される加圧ローラー等を備える。定着部18は、トナー像が転写された用紙Pを加熱および加圧する。これにより、定着処理が実施される。定着部18においてトナー像が定着された用紙Pは、必要に応じて第4用紙搬送路40で表裏が反転される。その後、用紙Pは再びレジストローラー対33cを介して二次転写部に搬送された後、二次転写ローラー34によって用紙Pの裏面に新たなトナー像が二次転写され、定着部18で定着される。トナー像が定着された用紙Pは第3用紙搬送路39を通って、排出ローラー対19により用紙排出部37に排出される。
【0026】
次に、図2図3、および図4を参照して、光走査装置12について説明する。図2は、光走査装置12のカバー部12cを示す平面図である。図3は、カバー部12cに設けられた清掃ホルダー51の動作を説明するための平面図である。図4は、カバー部12cの一部を清掃ホルダー51の移動方向から見た断面図であり、清掃ホルダー51を正面視している。
【0027】
上述したように、光走査装置12の筐体12aは、収容部12bと、収容部12bに被着されたカバー部12cとを含み、カバー部12cには、4つの感光体ドラム11a~11dに対応して、4つのレーザー光の出射口が並設されている。各出射口の形状は、対応するレーザー光の主走査方向に長い矩形状であり、各出射口は、それらの長手方向が互いに平行となるように形成されている。各出射口は、矩形板状の透過性部材52により封止されている。4つの透過性部材52は、それらの長手方向が互いに平行になるように並設されている。各透過性部材52は、光走査装置12の内部へのトナーや埃等の進入を防止するために設けられている。各透過性部材52は、例えばガラスカバーである。
【0028】
光走査装置12は、第1清掃ホルダー511と第2清掃ホルダー512の2つの清掃ホルダー51を備えている。
【0029】
各清掃ホルダー51は、保持部51aを有する(図4参照)。保持部51aは、隣り合う2つの透過性部材52の間を跨ぐように延在すると共に、2つの清掃部材53を保持する。各清掃ホルダー51は、カバー部12cの外側面(感光体ドラム11a~11d側の面)上に設けられる。各清掃部材53は、各透過性部材52に対応して配置されるように、各保持部51aに保持されている。各清掃部材53は、例えばゴムパッドである。ゴムパッドの材質には、例えばシリコンゴムを使用できる。各清掃ホルダー51は、例えば樹脂で形成されている。なお、各清掃部材53は、ゴムパッドに限定されるものではなく、例えば不織布であってもよい。
【0030】
各清掃ホルダー51は、隣接する2つの透過性部材52間を通るように環状に張設された線状部材54に連結されている。線状部材54は、駆動部である巻き取りモーター55の駆動力により、環状に走行する。線状部材54は、例えばワイヤーである。
【0031】
4つの清掃部材53は、線状部材54の環状走行に伴い、4つの透過性部材52の外側面(感光体ドラム11a~11d側の面)上を摺動する。これにより、各透過性部材52の外側面が、対応する清掃部材53によって同時に清掃される。
【0032】
巻き取りモーター55は正逆回転可能である。これにより、各透過性部材52の清掃処理を繰り返し実施することが可能となる。本実施形態では、1回の清掃処理において、巻き取りモーター55を正逆回転させることにより、各透過性部材52の長手方向に沿って、対応する清掃部材53を往復移動させる。なお、清掃処理は、画像形成装置1の状態がメンテナンスモードとなっているときに、利用者が操作部80(図5参照)やパソコン等の上位機器から処理開始命令を入力することで実行される。また、例えば1万枚程度の印字(画像形成)が実施される度に、定期的に清掃処理が実行されてもよい。
【0033】
本実施形態では、線状部材54の環状走行に伴い、各透過性部材52の長手方向(レーザー光の主走査方向)に沿って、第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512が、互いに反対方向に直線的に移動する。第1清掃ホルダー511の移動経路の一端には第1ストッパー56aが設けられており、第2清掃ホルダー512の移動経路の一端には第2ストッパー56bが設けられている。第1および第2ストッパー56a、56bは、隣り合う2つの透過性部材52の間において、各透過性部材52の長手方向の一方側に設けられている。第1清掃ホルダー511又は第2清掃ホルダー512が、その移動経路の一端まで移動して、対応する第1ストッパー56a又は第2ストッパー56bに当接すると、線状部材54の走行が停止する。線状部材54の走行が停止して、巻き取りモーター55に作用する負荷が増大すると、巻き取りモーター55の回転方向が逆転するか、又は巻き取りモーター55の動作が停止する。第1ストッパー56aおよび第2ストッパー56bの材質には、例えば樹脂を使用できる。第1ストッパー56aおよび第2ストッパー56bを樹脂で形成する場合、第1ストッパー56aおよび第2ストッパー56bは、カバー部12cと一体形成されてもよい。
【0034】
ここで、図2および図3を参照して、1回の清掃処理時における清掃ホルダー51の動作を説明する。本実施形態では、前述したように、1回の清掃処理において、各透過性部材52の長手方向に沿って、対応する清掃部材53が1回往復する。ここでは、清掃処理時に、線状部材54の走行方向が、矢印D1で示す方向(第1方向)から、矢印D2で示す方向(第2方向)に変化する場合について説明する。
【0035】
清掃処理が開始されると、線状部材54が矢印D1(図2参照)で示す第1方向へ走行する。これにより、第1清掃ホルダー511および第2清掃ホルダー512が、図2に示す位置から図3に示す位置まで移動して、第1清掃ホルダー511が、その移動経路の一端において第1ストッパー56aに当接する。この結果、線状部材54の走行が停止して、第1清掃ホルダー511および第2清掃ホルダー512が停止する。このとき、巻き取りモーター55に作用する負荷が増加する。
【0036】
この負荷の増加に応じて、巻き取りモーター55の回転方向が逆転し、線状部材54が矢印D2(図3参照)で示す第2方向(第1方向と逆方向)へ走行する。そして、第1清掃ホルダー511および第2清掃ホルダー512が、図3に示す位置から図2に示す位置まで移動して、第2清掃ホルダー512が、その移動経路の一端において第2ストッパー56bに当接する。この結果、線状部材54の走行が停止して、第1清掃ホルダー511および第2清掃ホルダー512の動作が停止する。このとき、巻き取りモーター55に作用する負荷が増加する。この負荷の増加に応じて、巻き取りモーター55が停止する。
【0037】
また清掃処理時には、各清掃ホルダー51に保持されている2つの清掃部材53が同一方向に移動する。ここで、仮に、1つの清掃ホルダー51に1つの清掃部材53を保持させる場合には、透過性部材52の数だけ清掃ホルダー51が必要になるため、本実施形態のように1つの清掃ホルダー51に複数の清掃部材53を保持させた場合と比べて、清掃ホルダー51を移動させるための線状部材54の長さが長くなる。本実施形態によれば、清掃ホルダー51の数を低減することができると共に、必要な線状部材54の長さを短くすることができ、製造コストを低減することができる。
【0038】
また本実施形態では、4つの張設用滑車57が、カバー部12cの外側面上に回動可能に保持されている。4つの張設用滑車57は、線状部材54を所定の環状形状に張設するために設けられる。また、テンション調整用滑車58が、カバー部12cの外側面上に回動可能に保持されている。線状部材54は、複数の張設用滑車57およびテンション調整用滑車58間に環状に張設される。詳しくは、線状部材54は、4つの張設用滑車57により、隣接する2つの透過性部材52間において、各透過性部材52の長手方向と平行になるように張設される。テンション調整用滑車58は、テンション調整機構の一例である。テンション調整用滑車58は、線状部材54に与える張力を調整するために設けられている。このように、線状部材54を環状に張設するために回転可能な滑車57、58を使用することにより、線状部材54を滑らかに環状走行させることができる。
【0039】
また、線状部材54は、巻き取りドラム59に多数回巻かれており、巻き取りモーター55が巻き取りドラム59を回動させることにより、線状部材54が環状走行する。巻き取りモーター55および巻き取りドラム59は、カバー部12cに形成された凹部60内に配置されている。詳しくは、巻き取りドラム59は、凹部60内において、カバー部12cに回動可能に保持されている。巻き取りモーター55は、凹部60内において、カバー部12cに固定されている。なお、巻き取りモーター55は、収容部12bに固定されてもよい。
【0040】
また、各清掃ホルダー51は、各透過性部材52の長手方向に沿って移動可能にカバー部12cと係合している。以下、各清掃ホルダー51とカバー部12cとの係合の一例について、図2および図4を参照して説明する。
【0041】
図2および図4に示すように、本実施形態では、各清掃ホルダー51に対応して、カバー部12cの外側面に一対のガイドレール(ガイド部材)61が2組設けられている。一対のガイドレール61は、第1ガイド部材の一例である。各ガイドレール61は、各透過性部材52の長手方向に沿って延設されており、各清掃ホルダー51(保持部51a)の両端部が、対応する一対のガイドレール61に係合する。各清掃ホルダー51は、対応する一対のガイドレール61により、各透過性部材52の長手方向に沿って案内される。したがって、各清掃ホルダー51を各透過性部材52の長手方向に沿って安定して移動させることができる。
【0042】
また、各ガイドレール61には、対応する清掃ホルダー51に向かって突出する係止部61aが設けられている。各係止部61aは、各透過性部材52の長手方向に沿って延設される。各清掃ホルダー51の保持部51aの両端部がそれぞれ、光走査装置12の筐体12aから離れる方向(図4の上方向)において、対応する一対のガイドレール61の係止部61aに係止されることで、各清掃ホルダー51の上方向への移動(位置ずれ)が規制される。また、各係止部61aにより、各清掃ホルダー51のカバー部12cからの脱離を防止できるとともに、各透過性部材52に、対応する清掃部材53を安定して密着させることができる。より好ましくは、各清掃ホルダー51の保持部51aの両端部がそれぞれ、対応する一対のガイドレール61の係止部61aに常時当接するように、各係止部61aを設ける。これにより、各清掃部材53を、対応する透過性部材52に押圧させることができる。したがって、各清掃部材53を、対応する透過性部材52に、より安定して密着させることが可能となる。
【0043】
更に本実施形態では、各清掃ホルダー51に対応して、カバー部12cの外側面にガイドリブ(ガイド部材)62が2つ突設されている。ガイドリブ62は、第2ガイド部材の一例である。各ガイドリブ62は、各透過性部材52の長手方向に沿って、隣接する2つの透過性部材52の間に延設されている。一方、各清掃ホルダー51の下端部側に係合部63が設けられており、各係合部63が、対応するガイドリブ62に係合する。したがって、各ガイドリブ62により、対応する清掃ホルダー51が各透過性部材52の長手方向に沿って案内される。これにより、各清掃ホルダー51を各透過性部材52の長手方向に沿って安定して移動させることができる。
【0044】
各ガイドリブ62は、線状部材54に、より近い位置に配置されることが望ましい。これにより、清掃処理時に、各清掃ホルダー51の揺動をより抑制することができる。つまり、各清掃ホルダー51を、各透過性部材52の長手方向に沿って、より安定して移動させることができる。より好ましくは、各ガイドリブ62は、線状部材54の直下に設けられる。これにより、清掃処理時における各清掃ホルダー51の揺動を、より一層抑制することができる。
【0045】
本実施形態では、線状部材54が、各清掃ホルダー51の保持部51aの上端部側に連結されており、各係合部63は、対応する清掃ホルダー51の保持部51aの下端部側に設けられている。これにより、各ガイドリブ62と各係合部63の係合箇所を、対応する清掃ホルダー51と線状部材54との連結箇所の直下に設けることができる。
【0046】
また、本実施形態では、図4に示すように、各係合部63が、対応する清掃ホルダー51から下方に突出する一対の突出部63aを含み、各ガイドリブ62が、対応する一対の突出部63aの間に挟まれる。これにより、各清掃ホルダー51の左右方向への移動を規制することができる。また、各清掃ホルダー51の上下方向に延びる軸回りの揺動(各清掃ホルダー51の移動方向への揺動)を制限することができる。
【0047】
また、本実施形態では、各ガイドリブ62は、カバー部12cより突出する突出部62bと、突出部62bの先端部に突設されている係止部62aとを有する。係止部62aは、突出部62bの先端部より左方向(保持部51aの延在方向の一方向)に延びる。一方、各清掃ホルダー51は、各係合部63の一対の突出部63aのうちの一方の突出部63aから右方向(保持部51aの延在方向の他方向)に延び、ガイドリブ62の係止部62aと係合する係止部63bを有する。これにより、各清掃ホルダー51の上方向への移動を規制することができる。また、各清掃ホルダー51のカバー部12cからの脱離を防止できる。
【0048】
各清掃ホルダー51の保持部51aの両端部をそれぞれ、対応する一対のガイドレール61の係止部61aに常時当接させて、各清掃部材53を、対応する透過性部材52に密着させる場合、各清掃ホルダー51が弓形に変形する可能性がある。各清掃ホルダー51が弓形に変形した場合、各清掃部材53が、各清掃ホルダー51の中央側において、対応する透過性部材52から離れる可能性がある。これに対し、本実施形態では、カバー部12cが係止部62aを、各清掃ホルダー51が係止部63bをそれぞれ備えているため、各清掃ホルダー51が弓形に変形すると、各ガイドリブ62の係止部62aに、光走査装置12の筐体12aから離れる方向において、対応する清掃ホルダー51の係止部63bが係止し、それによって、各清掃ホルダー51の弓形の変形が抑制される。その結果、各透過性部材52に、対応する清掃部材53を安定して密着させることができる。より好ましくは、各透過性部材52が配置される位置よりも下方において、各ガイドリブ62の係止部62aに、対応する清掃ホルダー51(係合部63)の係止部63bを係止させる。これにより、各清掃ホルダー51の弓形の変形を抑制する効果を高めることができる。
【0049】
図5は、画像形成装置1に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、画像形成装置1を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、画像形成装置1全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
【0050】
電圧制御回路71は、モーター駆動電源73と接続され、制御部90からの出力信号によりモーター駆動電源73を作動させる。モーター駆動電源73は電圧制御回路71からの制御信号によって、光走査装置12内の巻き取りモーター55に所定の駆動電圧を印加する。電流検出部75は、巻き取りモーター55に駆動電圧を印加したときに流れる駆動電流を検出する。
【0051】
操作部80には、液晶表示部81、各種の状態を示すLED82が設けられており、画像形成装置1の状態を示したり、画像形成状況や印字部数を表示したりするようになっている。画像形成装置1の各種設定はパソコンのプリンタードライバーから行われる。
【0052】
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き可能な記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、タイマー95、画像形成装置1内の各装置に制御信号を送信したり操作部70からの入力信号を受信したりするI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。
【0053】
ROM92には、画像形成装置1の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、画像形成装置1の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、画像形成装置1の制御途中で発生した必要なデータや、画像形成装置1の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。また、RAM93(或いはROM92)には、光走査装置12の透過性部材52の清掃時において、後述する清掃ホルダー51の各動作モードで巻き取りモーター55に印加される電圧値(DUTY)や巻き取りモーター55の駆動時間等も記憶される。タイマー95は、巻き取りモーター55の駆動時間を計測する。
【0054】
前述したように、本実施形態では第2清掃ホルダー512が第2ストッパー56bに接触したとき巻き取りモーター55を停止させている。そのため、次の清掃動作が実行されるまで線状部材54にテンション(負荷)が掛かり続けてしまう。その結果、線状部材54の伸びが発生し、最悪の場合は線状部材54が破断するおそれがある。
【0055】
そこで、本実施形態では、第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512による透過性部材52の清掃時(以下、清掃モードという)に、清掃モードを構成する第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512の往復動作に続いて、負荷解放動作を行うことにより、清掃モードの終了時に線状部材54に掛かる負荷を開放する。これにより、線状部材54として安価なワイヤーを用いることができ、線状部材54の耐用期間も延長することができる。以下、清掃モードにおける巻き取りモーター55の駆動制御について詳細に説明する。
【0056】
図6は、清掃モードにおける巻き取りモーター55の駆動制御の第1の制御例を示すフローチャートである。必要に応じて図1図5を参照しながら、図6のステップに沿って巻き取りモーター55の第1の制御例について説明する。
【0057】
清掃モードが開始されると、制御部90は電圧制御部71に制御信号を送信し、モーター駆動電源73から巻き取りモーター55に駆動電圧を供給する。これにより、巻き取りモーター55を第1動作モードM1(初期動作モード)で正回転させる(ステップS1)。ここでは、巻き取りモーター55をPWM(Pulse Width Modulation)制御によって駆動制御しており、第1動作モードM1ではモーター駆動電源73からDUTY100%の駆動電圧が供給される。同時に、タイマー95による巻き取りモーター55の駆動時間の計測を開始する。
【0058】
巻き取りモーター55の正回転により、線状部材54は図2の状態から矢印D1方向に走行し、第1清掃ホルダー511は図2の上方向へ、第2清掃ホルダー512は図2の下方向へ、それぞれ移動を開始する。
【0059】
次に、制御部90は、巻き取りモーター55の正回転開始から時間T1が経過したか否かを判定する(ステップS2)。時間T1が経過していない場合は(ステップS2でNo)第1動作モードM1での巻き取りモーター55の正回転を継続する。
【0060】
時間T1が経過している場合は(ステップS2でYes)、制御部90は電圧制御部71に制御信号を送信し、巻き取りモーター55の正回転駆動を第1動作モードM1よりも駆動トルクの小さい第2動作モードM2(最終動作モード)に変更する(ステップS3)。具体的には、モーター駆動電源73から供給する駆動電圧のDUTYを100%から70%に変更する。
【0061】
図3に示すように、第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512が移動経路の一端まで移動すると、第1清掃ホルダー511が第1ストッパー56aに当接する。このとき、巻き取りモーター55に作用する負荷が増大し、巻き取りモーター55に流れる駆動電流値が上昇するため、制御部90は、電流検出部75によって検出された駆動電流値が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。駆動電流値が閾値以上でない場合は(ステップS4でNo)第2動作モードM2での巻き取りモーター55の正回転を継続する。
【0062】
駆動電流値が閾値以上である場合は(ステップS4でYes)、第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512が移動経路の一端まで移動していると判定し、制御部90は電圧制御部71に制御信号を送信して巻き取りモーター55の正回転を停止する(ステップS5)。以上、ステップS1~S5の動作が第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512による往路動作である。
【0063】
次に、制御部90は電圧制御部71に制御信号を送信し、モーター駆動電源73から巻き取りモーター55に駆動電圧を供給する。これにより、巻き取りモーター55を第1動作モードM1で逆回転させる(ステップS6)。具体的には、モーター駆動電源73からDUTY100%の駆動電圧が供給される。同時に、タイマー95による巻き取りモーター55の駆動時間の計測を開始する。
【0064】
巻き取りモーター55の逆回転により、線状部材54は図3の状態から矢印D2方向に走行し、第1清掃ホルダー511は図3の下方向へ、第2清掃ホルダー512は図3の上方向へ、それぞれ移動を開始する。
【0065】
次に、制御部90は、巻き取りモーター55の逆回転開始から時間T1が経過したか否かを判定する(ステップS7)。時間T1が経過していない場合は(ステップS7でNo)第1動作モードM1での巻き取りモーター55の逆回転を継続する。
【0066】
時間T1が経過している場合は(ステップS7でYes)、制御部90は電圧制御部71に制御信号を送信し、巻き取りモーター55の逆回転駆動を第1動作モードM1よりも駆動トルクの小さい第2動作モードM2に変更する(ステップS8)。具体的には、モーター駆動電源73から供給する駆動電圧のDUTYを100%から70%に変更する。
【0067】
図2に示すように、第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512が移動経路の他端まで移動すると、第2清掃ホルダー512が第2ストッパー56bに当接する。このとき、巻き取りモーター55に作用する負荷が増大し、巻き取りモーター55に流れる駆動電流値が上昇するため、制御部90は、電流検出部75によって検出された駆動電流値が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS9)。駆動電流値が閾値以上でない場合は(ステップS9でNo)第2動作モードM2での巻き取りモーター55の逆回転を継続する。
【0068】
駆動電流値が閾値以上である場合は(ステップS9でYes)、第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512が移動経路の他端まで移動していると判定し、制御部90は電圧制御部71に制御信号を送信して巻き取りモーター55の逆回転を停止する(ステップS10)。以上、ステップS6~S10の動作が第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512による復路動作である。
【0069】
次に、制御部90は電圧制御部71に制御信号を送信し、モーター駆動電源73から巻き取りモーター55に駆動電圧を供給する。これにより、巻き取りモーター55を第3動作モードM3で正回転させる(ステップS11)。具体的には、モーター駆動電源73からDUTY100%の駆動電圧が供給される。同時に、タイマー95による巻き取りモーター55の駆動時間の計測を開始する。
【0070】
次に、制御部90は、巻き取りモーター55の正回転開始から時間T2が経過したか否かを判定する(ステップS12)。時間T2が経過していない場合は(ステップS12でNo)第3動作モードM3での巻き取りモーター55の正回転を継続する。
【0071】
時間T2が経過している場合は(ステップS12でYes)第3動作モードM3での巻き取りモーター55の正回転を停止する。ステップS11~S13の動作は、復路動作後に線状部材54のテンション(負荷)を開放する負荷解放動作である。
【0072】
図6に示した第1の制御例によれば、復路動作の終了後に、第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512を往路方向に所定量だけ移動させる負荷解放動作を行うことにより、第2清掃ホルダー512を第2ストッパー56bから離間させた状態で停止させることができる。従って、線状部材54にテンション(負荷)が掛かり続ける状態を回避することができ、線状部材54として安価なワイヤーを用いた場合でも線状部材54の伸びや破断を抑制することができる。
【0073】
また、第1動作モードM1、第2動作モードM2、および第3動作モードM3の駆動トルクの大きさは、M1、M3>M2の順となっているため、負荷解放動作を開始するときの駆動トルクが常に復路動作を終了するときの駆動トルクよりも大きくなる。そのため、負荷解放動作の開始時に巻き取りモーター55がロック状態となる不具合を回避することができる。
【0074】
なお、図6のステップS4、S9において、電流検出部75によって検出された駆動電流値が閾値以上であるか否かで第2動作モードM2での巻き取りモーター55の正回転および逆回転を継続するか否かを判定しているが、駆動電流値に代えて駆動電圧値を検出し、駆動電圧値が閾値以上であるか否かで判定してもよい。
【0075】
図7は、清掃モードにおける巻き取りモーター55の駆動制御の第2の制御例を示すフローチャートである。図7に示す第2の制御例では、図6に示した第1の制御例の第2動作モードM2を時間T2の経過によって終了し(ステップS4、S9)、第3動作モードM3を時間T3の経過によって終了している(ステップS12)。他のステップは第1の制御例と同様である。
【0076】
第2の制御例によれば、第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512の往路動作および復路動作における第2動作モードM2の終了を巻き取りモーター55の駆動時間で判定するため、巻き取りモーター55の駆動電流値や駆動電圧値の検出は不要となる。但し、第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512の停止位置のバラツキを抑制するために、図2および図3に示したように第1ストッパー56a、第2ストッパー56bを設けている。
【0077】
図7に示した第2の制御例においても、第1の制御例と同様に負荷解放動作を行うことにより、第2清掃ホルダー512を第2ストッパー56bから離間させた状態で停止させることができる。従って、線状部材54にテンション(負荷)が掛かり続ける状態を回避することができ、線状部材54として安価なワイヤーを用いた場合でも線状部材54の伸びや破断を抑制することができる。
【0078】
図8は、光走査装置12におけるカバー部12cの一部を清掃ホルダー51の移動方向と直交する方向から見た断面図である。図8において、L1、L2は走査光学系120のレーザー光源(図示せず)から射出される最外角光線を示しており、L1、L2と透過性部材52との交点間の領域が光線射出範囲Rである。
【0079】
上述した第1の制御例、第2の制御例において、第1動作モードM1から第2動作モードM2に変更する場合、動作モードの切り替え位置が図8に示す光線射出範囲Rに重なると、切り替え位置で第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512の移動速度が減速されるか、或いは制御上の制約により第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512が一瞬停止するため、清掃部材53による拭き残しが発生するおそれがある。そこで、動作モードの切り替え位置が光線射出範囲Rに重ならないように時間T1を設定する。第2の制御例ではT1<T2とすることで、第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512が光線射出範囲Rに到達する前に第1動作モードM1から第2動作モードM2に切り替えている。
【0080】
また、時間T1、T2とT3との関係は、T3<T1、T2となっている。この理由は、負荷解放動作(第3動作モードM3)の終了時に第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512の停止位置が図8に示す光線射出範囲Rに重なると、走査光学系120から出射されたレーザー光が第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512で遮光されてしまい、画像の一部が欠損してしまうおそれがあるためである。そこで、第3動作モードM3の継続時間T3を短くして第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512を光線射出範囲Rの手前で停止させている。
【0081】
ところで、上述した第1の制御例、第2の制御例では、負荷解放動作である第3動作モードM3において巻き取りモーター55に印加する駆動電圧のDUTYを第1動作モードM1と同一(100%)としている。この場合、第3動作モードM3の開始時に巻き取りモーター55がロック状態となるのを回避できる利点がある反面、駆動トルクが強すぎて第3動作モードM3の終了時における第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512の停止位置がオーバーシュートしてしまい、光線射出範囲R(図8参照)にかかってしまうおそれがある。
【0082】
そこで、第1清掃ホルダー511、第2清掃ホルダー512の停止位置のオーバーシュートを確実に回避するために、第3動作モードM3において巻き取りモーター55に印加する駆動電圧のDUTYを第2動作モードM2と同一(70%)とすることもできる。この場合、第3動作モードM3の開始時に巻き取りモーター55がロック状態となる可能性があるが、次の清掃モード(往路動作)の開始時は駆動トルクの大きい第1動作モードM1で駆動されるため、巻き取りモーター55がロック状態となるおそれはない。
【0083】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では画像形成装置1としてタンデム式のカラープリンターを例に挙げて説明したが、本発明はカラープリンターに限らず、カラー複写機、ファクシミリ等の電子写真方式のカラー画像形成装置に適用可能である。
【0084】
また、カラー画像形成装置に限らず、モノクロプリンター、モノクロ複合機等の電子写真方式のモノクロ画像形成装置にも適用可能である。モノクロ画像形成装置の場合、感光体ドラムは1つであるため、光走査装置12は、走査光学系120から感光体ドラムに出射されるレーザー光の出射口が1つである。そのため、出射口を封止する透過性部材52も1つのみである。
【0085】
図9は、モノクロ画像形成装置に用いる光走査装置12における清掃ホルダー51の移動機構を示す平面図である。図9に示すように、透過性部材52に沿って往復移動する1つの清掃ホルダー51を設け、清掃ホルダー51の移動方向と直交する幅方向中央に線状部材54を固定する。そして、清掃ホルダー51の幅方向の一端側の透過性部材52に対向する位置に清掃部材53を保持し、清掃ホルダー51の幅方向の他端側にガイドレール61を延設する。清掃ホルダー51の移動方向の一端側(上端側)および他端側(下端側)には、それぞれ第1ストッパー56a、第2ストッパー56bが配置されている。
【0086】
図9の構成においても、上述した第1、第2の制御例により巻き取りモーター55を駆動させることで、線状部材54にテンション(負荷)が掛かり続ける状態を回避することができる。なお、第1の制御例の場合、往路動作および復路動作の終了時に清掃ホルダー51がストッパーに当接している必要があるため、清掃ホルダー51の移動方向の両端側に第1ストッパー56a、第2ストッパー56bを配置しておく必要がある。
【0087】
また、上記実施形態では、第1ストッパー56a、第2ストッパー56bが透過性部材52に沿って移動する往路動作と、往路動作に続いて第1ストッパー56a、第2ストッパー56bが往路動作と逆方向に移動する復路動作と、を1サイクルとして清掃モードを実行する例について説明したが、清掃モードを1回の往路動作のみ、或いは1回の復路動作のみで構成することもできる。その場合も、往路動作の終了後、若しくは復路動作の終了後に負荷解放動作を入れることにより、線状部材54にテンション(負荷)が掛かり続ける状態を回避することができる。
【0088】
また、上記実施形態で示した各構成要素の材質や形状等は、一例であって特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、線状部材54を環状に張設する張設用滑車57が使用されているが、張設用滑車57に代えて、カバー部12cの外側面に複数個の突起を設け、各突起に線状部材54を架け渡してもよい。同様に、テンション調整機構として、テンション調整用滑車58に代えて、カバー部12cの外側面に少なくとも1個の突起を設けてもよい。また、テンション調整機構、巻き取りドラム59は省略することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、像担持体に光を照射して静電潜像を形成する光走査装置に利用可能である。本発明の利用により、レーザー光を透過する透過性部材を清掃する清掃ホルダーの停止時に線状部材に継続して負荷が加わることによる線状部材の伸びや破断を抑制可能な光走査装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 画像形成装置
11a~11d 感光体ドラム
12 光走査装置
12a 筐体
12b 収容部
12c カバー部
51 清掃ホルダー
511 第1清掃ホルダー
512 第2清掃ホルダー
52 透過性部材
53 清掃部材
34 線状部材
55 巻き取りモーター(駆動部)
56a 第1ストッパー
56b 第2ストッパー
57 張設用滑車
58 テンション調整用滑車
73 モーター駆動電源(駆動電圧電源)
75 電流検出部
90 制御部
95 タイマー(時間計測部)
120 走査光学系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9