(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/317 20210101AFI20230711BHJP
H01M 50/325 20210101ALI20230711BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230711BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20230711BHJP
H01G 11/14 20130101ALI20230711BHJP
【FI】
H01M50/317 201
H01M50/325
H01M50/209
H01G11/12
H01G11/14
(21)【出願番号】P 2019146635
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】金本 将季
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3203418(JP,U)
【文献】実公昭43-000279(JP,Y1)
【文献】実開昭51-012928(JP,U)
【文献】実開昭63-069364(JP,U)
【文献】特開2001-15093(JP,A)
【文献】特開2012-221632(JP,A)
【文献】特開2013-187148(JP,A)
【文献】国際公開第2003/043106(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/30-50/392
H01M 50/20-50/298
H01G 11/12
H01G 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子と、前記複数の蓄電素子を収容する外装体とを備える蓄電装置であって、
前記外装体に設けられた、排気口を有する筒状に形成された弁座と、
前記排気口を塞ぐように配置された弁部材であって、前記外装体の内圧を受けることで、前記弁座からのガスの流出を制限する閉状態から、前記弁座からのガスの流出を許容する開状態に遷移可能な弁部材とを備え、
前記排気口は、前記弁座の側壁部において、前記弁座の先端から切欠き状に形成され、かつ、前記側壁部を貫通する側面排気部を含み、
前記弁部材は、内側に突出した補強部であって、前記側面排気部に対応する位置に配置された補強部を有する、
蓄電装置。
【請求項2】
前記弁部材は、前記補強部が、外側から前記側面排気部に挿入された状態で前記弁座に配置されている、
請求項1記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記弁座の前記側壁部には、前記弁座の周方向に複数の前記側面排気部が設けられており、前記複数の前記側面排気部は、前記弁座の前記先端側から見た場合に、回転対称とならない位置に配置されている、
請求項2記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記弁部材は、前記側面排気部を含む前記側壁部の少なくとも一部を覆う外周部を有し、
前記外周部は、前記補強部を除く部分の肉厚が他の部分よりも大きな肉厚部を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記側面排気部は、前記側壁部に形成された、前記弁座の周方向で対向する位置に配置された一対の開口内側面の間に設けられており、
前記一対の開口内側面は、前記側壁部を前記弁座の前記先端側から見た場合において、それぞれが、前記弁座の径方向に対して外側に傾いて形成されており、
前記弁部材の前記補強部は、前記一対の開口内側面に当接する、一対の当接面を有する、
請求項2~4のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記補強部は、前記弁部材の互いに対向する内面を接続する壁状に形成されており、
前記弁座の前記側壁部には、前記弁座の先端から前記先端とは反対側に延設された2つの前記側面排気部が形成されている、
請求項2~5のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装体を備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ソフトシェルコンデンサモジュールを収容する密封外殻を備えるリチウムイオン電池モジュールが開示されている。この密封外殻には単一方向排気構造が設けられている。単一方向排気構造は、外向きに凸伸して上蓋に形成される通気路を備え、通気路にはゴムキャップを被せ設けられる。この構成によれば、密封外殻が水分を遮断してソフトシェルコンデンサモジュールの使用寿命を延長することができる。ソフトシェルコンデンサモジュールが発生する可燃ガスは、密封外殻の単一方向排気構造を通過してリチウムイオン電池モジュールから排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のリチウムイオン電池モジュールのように、外装体のガスを排気する排気口に、弁部材としてのゴムキャップを配置することで、通常時における排気口を介した水等の流入を防止でき、かつ、内圧上昇時に外装体内部のガスを外部に排出できる。
【0005】
しかしながら、排気口に配置する弁部材は、水等の流入を防ぐ際には、外気圧を受け、かつ、水等が衝突することによる衝撃も受ける。従って、弁部材には、外部から受ける力に対する耐性を持たせる必要がある。そのために、弁部材の強度を向上させることが考えられるが、弁部材の強度の向上は、外装体の内圧の上昇に伴う弁部材の開動作を困難にする要因ともなる。そのため、弁部材の強度をどのように向上させるかの決定は蓄電装置の安全性の観点から重要である。
【0006】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、外装体を備える蓄電装置であって、安全性が向上された蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電装置は、複数の蓄電素子と、前記複数の蓄電素子を収容する外装体とを備える蓄電装置であって、前記外装体に設けられた、排気口を有する筒状に形成された弁座と、前記排気口を塞ぐように配置された弁部材であって、前記外装体の内圧を受けることで、前記弁座からのガスの流出を制限する閉状態から、前記弁座からのガスの流出を許容する開状態に遷移可能な弁部材とを備え、前記排気口は、前記弁座の側壁部において、前記弁座の先端から切欠き状に形成され、かつ、前記側壁部を貫通する側面排気部を含み、前記弁部材は、内側に突出した補強部であって、前記側面排気部に対応する位置に配置された補強部を有する。
【0008】
この構成によれば、複数の蓄電素子のいずれかからガスが排出された場合、弁部材が開状態となり、弁座を介して内部のガスを外部に放出することができる。その結果、内圧の過度な上昇によって外装体が損傷すること等が抑制される。また、弁部材には突出状の補強部が設けられている。そのため、例えば、外圧の印加時における弁部材の変形が抑制される。また、突出状の補強部は弁部材の一部に配置されることになるため、内圧の印加時における弁部材の変形能は失われない。これにより、例えば、通常時における弁座の水密性と、異常発生時におけるガスの排出性との両立が図られる。このように、本態様に係る蓄電装置は、安全性が向上された蓄電装置である。
【0009】
前記弁部材は、前記補強部が、外側から前記側面排気部に挿入された状態で前記弁座に配置されている、としてもよい。
【0010】
この構成によれば、外装体の内圧が上昇した場合、側面排気部に挿入された補強部が内圧を受けやすくなり、これにより、弁部材は、内圧の上昇に伴う開状態への遷移を行いやすくなる。さらに、側面排気部は、筒状の弁座の先端から切欠き状に設けられているため、補強部の側面排気部への挿入を伴う弁部材の取付作業が容易になる。また、側面排気部を弁座の軸方向に沿って長く形成することで、補強部を軸方向に長尺状に形成することも可能である。このことは、弁部材の弁座に対する取付強度の向上、または、補強部による弁部材に対する補強効果の向上に寄与する。これにより、蓄電装置の安全性がさらに向上される。
【0011】
前記弁座の前記側壁部には、前記弁座の周方向に複数の前記側面排気部が設けられており、前記複数の前記側面排気部は、前記弁座の前記先端側から見た場合に、回転対称とならない位置に配置されている、としてもよい。
【0012】
この構成によれば、弁部材を弁座に取り付ける場合に、回転位置が規制されるため、弁部材を、外気または水等が衝突しやすい位置等を考慮した所定の回転位置に位置決めすることができる。このことは蓄電装置の安全性の向上に寄与する。
【0013】
前記弁部材は、前記側面排気部を含む前記側壁部の少なくとも一部を覆う外周部を有し、前記外周部は、前記補強部を除く部分の肉厚が他の部分よりも大きな肉厚部を有する、としてもよい。
【0014】
この構成によれば、弁部材の肉厚部の位置を、例えば、外気または水等が衝突しやすい位置に一致させることができる。また、例えば、ガスの排出を効率よく行うという観点から、弁部材の肉厚部の位置を、ガスの排出に有利な位置に一致させることも可能である。これらの効果は、蓄電装置の安全性の向上に寄与する。
【0015】
前記側面排気部は、前記側壁部に形成された、前記弁座の周方向で対向する位置に配置された一対の開口内側面の間に設けられており、前記一対の開口内側面は、前記側壁部を前記弁座の前記先端側から見た場合において、それぞれが、前記弁座の径方向に対して外側に傾いて形成されており、前記弁部材の前記補強部は、前記一対の開口内側面に当接する、一対の当接面を有する、としてもよい。
【0016】
この構成によれば、弁部材に、径方向の外部からの圧力(外圧)がかかった場合、側壁部の開口内側面の抗力の向きは、接線方向よりも外側に傾く。これにより、弁部材の補強部の、側面排気部の内方への移動または変形がより確実に抑制される。また、外圧の上昇に伴い、側壁部の開口内側面と補強部の当接面との密着性は向上する。従って、排気口における水密性が維持または向上される。これにより、蓄電装置の安全性が向上する。
【0017】
前記補強部は、前記弁部材の内面における互いに対向する部分を接続する壁状に形成されており、前記弁座の前記側壁部には、前記弁座の先端から前記先端とは反対側に延設された2つの前記側面排気部が形成されている、としてもよい。
【0018】
この構成によれば、補強部は、内圧の上昇時には、内面の対向する部分を引っ張ることで弁部材の開きを抑制することができ、外圧の上昇時には、内面の対向する部分で突っ張ることで弁部材の内側への変形を抑制することができる。つまり、補強部により、弁部材の過度な変形が抑制され、その結果、蓄電装置の安全性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外装体を備える蓄電装置であって、安全性が向上された蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る蓄電装置を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る通気室及びその周辺の構成を示す斜視図である。
【
図5】実施の形態に係る弁部材を弁座側から見た場合の斜視図である。
【
図6】実施の形態に係る弁部材の補強部と弁座の側面排気部との位置関係を示す図である。
【
図8】実施の形態の変形例1に係る弁座及び弁部材の構成概要を示す図である。
【
図9】実施の形態の変形例2に係る弁部材の構成概要を示す図である。
【
図10】実施の形態の変形例3に係る弁座及び弁部材の構成概要を示す図である。
【
図11】実施の形態の変形例4に係る弁部材を弁座が挿入される側から見た場合の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例を含む)に係る蓄電装置について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0022】
また、以下の説明及び図面中において、複数の蓄電素子の並び方向、蓄電素子の容器の長側面の対向方向、または、当該容器の厚さ方向をX軸方向と定義する。また、1つの蓄電素子における電極端子の並び方向、または、蓄電素子の容器の短側面の対向方向をY軸方向と定義する。また、蓄電装置の外装体における本体部と蓋体との並び方向、蓄電素子とバスバーとの並び方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(以下実施の形態及びその変形例では、直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0023】
また、以下の実施の形態において、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交する、とは、当該2つの方向がなす角が90°であることを意味するだけでなく、実質的に直交すること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0024】
また、以下の説明において、例えば、X軸方向プラス側とは、X軸の矢印方向側を示し、X軸方向マイナス側とは、X軸方向プラス側とは反対側を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。
【0025】
(実施の形態)
[1.蓄電装置の全般的な説明]
まず、
図1及び
図2を用いて、実施の形態に係る蓄電装置1の全般的な説明を行う。
図1は、実施の形態に係る蓄電装置1の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電装置1を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
【0026】
蓄電装置1は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。例えば、蓄電装置1は、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置1は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール及びリニアモーターカーが例示される。また、蓄電装置1は、家庭用または発電機用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0027】
図1及び
図2に示すように、蓄電装置1は、複数の蓄電素子20と、複数の蓄電素子20を収容する外装体10とを備える。本実施の形態では、外装体10には8個の蓄電素子20が収容されている。なお、蓄電装置1が備える蓄電素子20の数は8には限定されない。蓄電装置1は、複数の蓄電素子20を備えればよい。本実施の形態では、X軸方向に並べられた複数の蓄電素子20により1つの蓄電素子ユニット24が構成されている。なお、蓄電素子ユニット24は、図示しないスペーサ及び絶縁フィルム等を有してもよい。
【0028】
外装体10は、蓄電素子ユニット24を収容する本体部12と、蓄電素子ユニット24の上方に配置されるバスバープレート17と、バスバープレート17の上方を覆うように配置される蓋体11とを有している。バスバープレート17には複数のバスバー33が保持されており、複数のバスバー33はバスバーカバー70及び75に覆われている。また、バスバープレート17と蓋体11との間には、制御回路等を含む接続ユニット80が配置されている。
【0029】
外装体10は、蓄電装置1の外殻を構成する矩形状(箱状)の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体10は、蓄電素子ユニット24及びバスバープレート17等を所定の位置に固定し、これらを衝撃などから保護する部材である。外装体10は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ABS樹脂、もしくは、それらの複合材料等の絶縁部材、または、絶縁塗装をした金属等により形成されている。
【0030】
外装体10が有する蓋体11は、本体部12の開口部15を閉塞する矩形状の部材であり、正極側の外部端子91及び負極側の外部端子92を有している。外部端子91及び92は、接続ユニット80及びバスバー33を介して複数の蓄電素子20と電気的に接続されており、蓄電装置1は、この外部端子91及び92を介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。外部端子91及び92は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の導電部材で形成されている。
【0031】
蓋体11はさらに、外装体10の内部及び外部の一方から他方に移動する気体が通過する通気室100と、通気室100に接続された排気管120とを有している。例えば、外装体10の内部のガスは、通気室100に設けられた排気口を介して通気室100の内部に到達し、その後、排気管120を介して、外装体10の外部に放出される。
図1及び
図2では、通気室100は、蓋体11が有する通気室カバー11aによって覆われている。通気室100の構成については、
図3~
図7を用いて後述する。
【0032】
本体部12は、蓄電素子ユニット24を収容するための開口部15が形成された有底矩形筒状のハウジング(筐体)である。
【0033】
蓄電素子20は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子20は、扁平な直方体形状(角形)の形状を有しており、本実施の形態では、上述のように、8個の蓄電素子20がX軸方向に配列されている。
【0034】
なお、蓄電素子20は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子20は、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。また、蓄電素子20は、固体電解質を用いた電池であってもよい。また、本実施の形態では、直方体形状(角形)の蓄電素子20を図示しているが、蓄電素子20の形状は、直方体形状には限定されず、直方体形状以外の多角柱形状、円柱形状、長円柱形状等であってもよい。さらに、ラミネート型の蓄電素子が、蓄電素子20として蓄電装置1に備えられてもよい。
【0035】
本実施の形態では、蓄電素子20は、金属製の容器21を備える。容器21は、互いに対向する一対の長側面21aと、互いに対向する一対の短側面21bとを有する角形のケースである。容器21の内部には、電極体、集電体、及び電解液等が収容されている。本実施の形態では、複数の蓄電素子20のそれぞれは長側面21aがX軸方向に向く姿勢(短側面21bがX軸方向に平行な姿勢)で、X軸方向に一列に並べられている。
【0036】
容器21の蓋板21cには、容器21の内部の電極体と電気的に接続された金属製の電極端子22(正極端子及び負極端子)が設けられている。電極端子22(正極端子及び負極端子)は、容器21の蓋板21cから、バスバープレート17側に向けて(上方、つまりZ軸方向プラス側に向けて)突出して配置されている。容器21の蓋板21cにはさらに、容器21の内部のガスを外部に排出するためのガス排出弁23が設けられている。ガス排出弁23は、例えば容器21の内部の電解液が気化することで容器21の内圧が上昇した場合に、開放すること(開弁すること)で、容器21の内部のガスを容器21の外部に排出する機能を有する。このような機能を有するガス排出弁23は、複数の蓄電素子20のそれぞれに設けられている。本実施の形態では、
図2に示すように、複数の蓄電素子20のそれぞれは、ガス排出弁23がZ軸方向プラス側に向く姿勢で配置されている。
【0037】
バスバー33は、バスバープレート17に保持された状態で、少なくとも2つの蓄電素子20上に配置され、当該少なくとも2つの蓄電素子20の電極端子22同士を電気的に接続する矩形状の板状部材である。バスバー33の材質は特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス鋼等の金属若しくはそれらの組み合わせ、または、金属以外の導電性の部材で形成されていてもよい。本実施の形態では、5つのバスバー33を用いて、蓄電素子20を2個ずつ並列に接続して4セットの蓄電素子群を構成し、かつ、当該4セットの蓄電素子群を直列に接続している。また、8個の蓄電素子20の電気的な接続の態様に特に限定はなく、8個の蓄電素子20の全てが、7個のバスバーによって直列に接続されてもよい。
【0038】
接続ユニット80は、複数のバスバー及び制御基板等を有するユニットであり、蓄電素子ユニット24と、外部端子91及び92とを電気的に接続する。接続ユニット80が有する制御基板は複数の電気部品を有し、これら複数の電気部品により、各蓄電素子20の状態を検出する検出回路、及び、充電及び放電を制御する制御回路等が形成されている。本実施の形態では、接続ユニット80は、バスバープレート17に固定されている。
【0039】
バスバープレート17は、バスバー33を保持する樹脂製の部材である。より詳細には、バスバープレート17は、複数のバスバー33、接続ユニット80、及び、その他配線類等(図示せず)を保持し、これら部材の位置規制等を行うことができる部材である。また、バスバープレート17には、複数のバスバー33のそれぞれを保持し、かつ、複数のバスバー33それぞれの一部を複数の蓄電素子20の側に露出させるバスバー用開口部17aが複数設けられている。
【0040】
また、バスバープレート17は、複数の蓄電素子20の電極端子22が配置されている蓋板21cの表面に接着剤によって固定されている。接着剤の位置は、複数の蓄電素子20の連続した蓋板21cの表面に対して連続的に配置させてもよいし、複数の蓄電素子20の蓋板21cの表面ごとに断続的に配置させてもよい。接着剤の材質は、シート状であるものまたは液状であるもの等を採用することができる。
【0041】
バスバープレート17のY軸方向の中央には、複数の蓄電素子20のガス排出弁23の配列に沿って、X軸方向に延びるともにZ軸方向プラス側に突出する経路形成部19が設けられている。経路形成部19は全てのガス排出弁23をZ軸方向プラス側から覆っている。バスバープレート17の、経路形成部19とバスバー用開口部17aとの間における、経路形成部19のY軸方向プラス側及びY軸方向マイナス側の部分には、X軸方向に延びるともにZ軸方向マイナス側に向いた接着面が形成されている。前述した接着剤は、経路形成部19のY軸方向プラス側とY軸方向マイナス側の両方において、蓋板21cの表面とバスバープレート17の接着面との間にX軸方向に沿って配置される。バスバープレート17の接着面は、接着剤を介して蓋板21cの表面と当接する。これによって、経路形成部19と蓋板21cの表面との隙間により蓄電素子20から排出されるガスの排気経路がX軸方向に沿って形成される。
【0042】
経路形成部19の長手方向の端部には、
図2に示すようにX軸方向プラス側及びX軸方向マイナス側の両方にそれぞれ経路出口18が設けられている。排気経路は、Z軸方向プラス側に経路形成部19の内面が位置し、Z軸方向マイナス側に蓋板21cの表面が位置すること、及び、経路形成部19のY軸方向の両側に前述の接着剤が配置されるなどにより、蓄電素子20から排出されたガスの主だった逃げ道が経路出口18となる。そのため、蓄電素子20から排出されたガスは、経路出口18を優先的に通過して、上述の通気室100及び排気管120を介して外装体10の外部に放出される。経路出口18は、Z軸方向から見て、接続ユニット80と重複せず接続ユニット80から離間した位置に設けられている。よって、蓄電素子20のガス排出弁23から排出された直後のガスが接続ユニット80に向けて排出されないので、経路出口18から排出されたガスによる接続ユニット80へのダメージを低減することができる。
【0043】
このように構成されたバスバープレート17は、外装体10の本体部12に、例えば接着または熱溶着等の所定の手法により固定されている。
【0044】
バスバーカバー70及び75のそれぞれは、複数のバスバー33を上方から覆う樹脂製の部材であり、例えば、複数のバスバー33と接続ユニット80とを電気的に絶縁する役割を担っている。
【0045】
[2.通気室の構成]
以上のように構成された蓄電装置1における通気室100の構成について、特に弁座及びその周辺に着目して、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、実施の形態に係る通気室100及びその周辺の構成を示す斜視図である。
図4は、実施の形態に係る弁座101の拡大斜視図である。具体的には、
図4では、外装体10を、
図3のIV-IV線に平行なYZ平面で切断して弁座101のほぼ全体を図示している。また、
図4では、弁座101の構成を明確に示すように、弁座101から弁部材150が取り外された状態が図示されている。
【0046】
図3及び
図4に示すように、外装体10の蓋体11には、通気室100が設けられており、通気室100には、弁部材150が取り付けられた弁座101が配置されている。弁座101は、蓄電素子20から排出されたガスを経路形成部19による排気経路を介して通気室100の内部に導く部位であり、本実施の形態では排気口110を有する筒状に形成されている。弁座101が有する排気口110は弁部材150によって塞がれている。弁部材150は、本実施の形態では、シリコーンゴム等の耐熱性の高い弾性材料で形成されたキャップ状の部材であり、弁座101の先端に固定される。本実施の形態において、排気口110は、
図4に示すように、弁座101の側壁部102において、弁座101の先端(Z軸方向プラス側の端部)から切欠き状に形成され、かつ、側壁部102を貫通する側面排気部112を有している。つまり、側面排気部112は、弁座101の先端から、当該先端とは反対側に延設されている。側壁部102には、周方向に複数の側面排気部112が形成されている。より詳細には、本実施の形態では、同一形状の4つの側面排気部112が、周方向に均等に並べられている。
【0047】
本実施の形態において、排気口110はさらに、弁座101の先端に設けられた先端排気部111を有している。つまり、筒状の弁座101における先端の開口部が、先端排気部111として機能する。本実施の形態では、弁座101の軸方向(本実施の形態ではZ軸方向と一致)に直交する開口を形成する先端排気部111の周縁と、側面排気部112の上端とは接続されている。つまり、先端排気部111と側面排気部112とは連続して弁座101に設けられている。
【0048】
このように構成された弁座101に、キャップ状の弁部材150が被せられることで、弁座101の排気口110は弁部材150に覆われる。具体的には、弁部材150は、先端排気部111を覆う前面部151と、側面排気部112を含む側壁部102の少なくとも一部を覆う外周部152とを有する。本実施の形態では、外周部152は、側壁部102に形成された4つの側面排気部112の全てを覆っている。この状態では、弾性材料で形成された弁部材150の弾性力(復元力)により、弁部材150は弁座101に密着する。すなわち、弁部材150は、排気口110を塞ぐ閉状態である。この場合、例えば排気管120を介して外部から通気室100内に水が浸入した場合であっても、排気口110から外装体10の内部への水の浸入は抑制される。
【0049】
上記のように弁部材150が閉状態にある場合において、例えば1以上の蓄電素子20からガスが排出された場合を想定する。この場合、外装体10の内圧が上昇して所定の値を超えると、弁部材150の外周部152は、複数の側面排気部112の位置においてガスの圧力(内圧)を受けることで、外側に膨らむように変形する。その結果、弁部材150は、排気口110の少なくとも一部を開放することで、閉状態から開状態に遷移する。これにより、弁座101の排気口110から通気室100内にガスが放出される。通気室100内に放出されたガスは、通気室100と連通する排気管120を介して蓄電装置1の外部に放出される。なお、弁部材150の前面部151に対向する位置に通気室カバー11aが配置されるため、弁部材150の上方への移動は通気室カバー11aによって制限される。例えば、弁部材150と通気室カバー11aの間に隙間がある状態では、弁部材150が外装体10の内圧を受けることで上方に移動して、先端排気部111が開放された場合であっても、通気室カバー11aに押さえられることで弁部材150の移動は制限される。つまり、通気室カバー11aによって、弁部材150の弁座101からの取り外れは防止される。
【0050】
通気室100に設けられた通気孔118は、通常時における外装体10の内部と外部との間の気体のやり取りを行うための孔である。具体的には、通気孔118は、気体を通過させ、かつ、液体を通過させない機能を有する通気防水膜119によって塞がれている。具体的には、通気防水膜119は、例えばゴアテックス(Gore-Tex)(登録商標)、TEMISH(登録商標)などの防水性および通気性(透湿性)を有する防水透湿性素材からなる膜である。これにより、例えば、通常時における蓄電装置1の環境温度の変化等によって外装体10の内圧と外圧との差が生じた場合、通気防水膜119を介して気体のやり取りが行われ、これにより、外装体10の内外の圧力平衡が図られる。また、仮に、排気管120を介して、外部の水が通気孔118の位置に到達した場合であっても、その水は通気防水膜119を通過できないため、外装体10の内部への水の浸入は防止される。
【0051】
このように構成された通気室100は、通気室カバー11aに覆われており、通気室カバー11aは、溶着または接着等の所定の手法によって蓋体11に固定されている。これにより、通気室100の上面開口は、通気室カバー11aによって封止される。
【0052】
[3.弁部材及び弁座の構成]
上記の構成を有する通気室100において、弁座101に取り付けられた弁部材150には、一部に補強部が備えられており、これにより、弁座101に加えられる外圧への耐性の向上等の効果が得られる。この補強部及び補強部に関与する構成について、
図5~
図7を用いて説明する。
【0053】
図5は、実施の形態に係る弁部材150を、弁座101側から見た場合の斜視図である。
図6は、実施の形態に係る弁部材150の補強部155と弁座101の側面排気部112との位置関係を示す図である。具体的には、
図6は、弁座101及び弁部材150の、弁座101の軸方向と直交する断面が図示されており、軸方向における断面の位置は、弁部材150の補強部155が存在する範囲内である。
図7は、実施の形態に係る通気室100の上面図である。
図7では、通気室100を覆う通気室カバー11aを外装体10の蓋体11から取り外して、蓋体11の通気室100を含む一部を図示している。また、
図7において、弁座101及び弁部材150については、弁座101と弁部材150との構造上の関係を示すために、補強部155を通過するXY平面に平行な断面が図示されている。
【0054】
図5に示すように、弁部材150は、内側に突出した補強部155を有している。つまり、補強部150は、弁座101に向けて突出した形状を有している。補強部155は、
図6に示すように、側面排気部112に対応する位置に配置されている。より具体的には、弁部材150は、外周部152の内面から径方向内側に突出して形成されている。さらに、
図7に示されるように、弁部材150が弁座101に取り付けられた場合、補強部155は、外側から側面排気部112に挿入された状態となる。つまり、本実施の形態では、筒状の弁座101の側壁部102に切欠き状に形成された4つの側面排気部112のそれぞれに、1つの補強部155が配置されている。これにより、弁部材150の、圧力に対する耐性の向上等の効果が得られ、その結果、蓄電装置1の安全性が向上する。
【0055】
すなわち、本実施の形態に係る蓄電装置1は、複数の蓄電素子20と、複数の蓄電素子20を収容する外装体10とを備える。蓄電装置1は、外装体10に設けられた、排気口110を有する筒状に形成された弁座101と、排気口110を塞ぐように配置された弁部材150とを備える。弁部材150は、外装体10の内圧を受けることで、弁座101からのガスの流出を制限する閉状態から、弁座101からのガスの流出を許容する開状態に遷移可能である。排気口110は、弁座101の側壁部102において、弁座101の先端から切欠き状に形成され、かつ、側壁部102を貫通する側面排気部112を含む。弁部材150は、内側に突出した補強部155であって、側面排気部112に対応する位置に配置された補強部155を有する。
【0056】
この構成によれば、複数の蓄電素子20のいずれかからガスが排出された場合、外装体10の内圧が上昇することで、弁部材150が開状態となり、これにより、弁座101を介して外装体10の内部のガスを外部に放出することができる。その結果、内圧の過度な上昇によって外装体10が損傷すること等が抑制される。また、弁部材150には突出状の補強部155が設けられている。そのため、例えば、外圧の印加時における弁部材150の変形が抑制される。より具体的には、弁部材150の補強部155は、弁座101の側面排気部112に対応する位置に設けられているため、弁部材150における、外圧によって変形し易い部分の変形が効果的に抑制される。また、突出状の補強部155は弁部材150の一部に配置されることになるため、外装体10の内圧の印加時における弁部材150の変形能は失われない。これにより、例えば、通常時における弁座101の水密性と、異常発生時におけるガスの排出性との両立が図られる。また、例えば、補強部155により、弁部材150の弁座101に対する取付強度の向上も図られる。このように、本態様に係る蓄電装置1は、安全性が向上された蓄電装置である。
【0057】
また、本実施の形態では、弁部材150は、補強部155が、外側から側面排気部112に挿入された状態で弁座101に配置されている。
【0058】
そのため、外装体10の内圧が上昇した場合、側面排気部112に挿入された補強部155が内圧を受けやすくなり、これにより、弁部材150は、内圧の上昇に伴う、閉状態から開状態への遷移を行いやすくなる。さらに、側面排気部112は、筒状の弁座101の先端から切欠き状に設けられているため、補強部155を、弁座101の先端側から側面排気部112に挿入することができる。つまり、補強部155の側面排気部112への挿入を伴う弁部材150の取付作業が容易になる。また、側面排気部112を弁座101の軸方向に沿って長く形成することで、補強部155を軸方向に長尺状に形成することも可能であり、このことは、弁部材150の弁座101に対する取付強度の向上、または、補強部155による弁部材150に対する補強効果の向上に寄与し、これにより、蓄電装置1の安全性がさらに向上する。
【0059】
また、本実施の形態では、弁座101が有する複数の側面排気部112のうちの1つの側面排気部112は、
図7に示すように、排気管120から弁座101に向かう経路R上に配置される。そのため、弁部材150が開状態になった場合に、側面排気部112から排出されるガスは、排気管120に効率よく到達できる。また、弁部材150における経路R上の部分は、排気管120から勢いよく外気または水等が流入した場合に、外気または水等が激しく衝突する部分である。この部分に、側面排気部112が存在する場合、弁部材150は、側壁部102の支えがないことで変形しやすいとも考えられる。しかしながら、本実施の形態では、弁部材150の当該部分に補強部155が配置されているため、弁座101の側壁部102の支えがない部分における、弁部材150の変形が抑制される。
【0060】
以上、実施の形態に係る蓄電装置1について説明したが、蓄電装置1は、
図3~
図7に示す態様とは異なる態様の弁部材及び弁座を備えてもよい。そこで、以下に、蓄電装置1における弁部材及び弁座についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
【0061】
(変形例1)
図8は、実施の形態の変形例1に係る弁座101a及び弁部材150aの構成概要を示す図である。
図8では、
図7と同様に、弁座101a及び弁部材150aの、弁座101aの軸方向と直交する断面が図示されており、軸方向における断面の位置は、弁部材150aの補強部155が存在する範囲内である。
【0062】
図8に示すように、本変形例において、弁座101aの側壁部102には、弁座101aの周方向に複数の側面排気部112が設けられており、複数の側面排気部112は、弁座101aの先端側から見た場合に、回転対称とならない位置に配置されている。
【0063】
つまり、本変形例に係る弁部材150aは、複数の側面排気部112のそれぞれに対応する位置に補強部155が配置されるため、補強部155も弁座101aの先端側から見た場合に、回転対称とならない位置に配置される。その結果、弁部材150aを弁座101aに取り付ける場合に、回転位置が規制される。そのため、弁部材150aを、外気または水等が衝突しやすい位置等を考慮した所定の回転位置に位置決めすることができる。このことは蓄電装置1の安全性の向上に寄与する。
【0064】
(変形例2)
図9は、実施の形態の変形例2に係る弁部材150bの構成概要を示す図である。
図9では、
図8と同様に弁部材150bの断面が図示されており、断面の位置も
図8に準じている。
【0065】
図9に示すように、本変形例において、弁部材150bは、側面排気部112を含む側壁部102の少なくとも一部を覆う外周部152を有し、外周部152は、補強部155を除く部分の肉厚が他の部分よりも大きな肉厚部153を有している。
【0066】
この構成によれば、弁部材150bの肉厚部153の位置を、例えば、外気または水等が衝突しやすい位置(
図7における経路R上など)に一致させることができる。また、例えば、ガスの排出を効率よく行うという観点から、弁部材150bの肉厚部153の位置を、ガスの排出に有利な位置に一致させることも可能である。例えば、肉厚部153が排気管120から遠い位置に配置される姿勢で、弁部材150bを配置する。これにより、弁部材150bにおける比較的に肉厚の薄い部分、つまり、変形しやすい部分が、
図7における経路R上などの排気管120に近い位置に配置される。その結果、外装体10の内圧上昇時において、弁座の排気管120に近い位置からのガスの排出が促され、これにより、排気管120から外部へのガスの排出が効率よく行われる。このことは、蓄電装置1の安全性の向上に寄与する。
【0067】
なお、弁部材150bが有する複数の補強部155は、
図9に示すように、回転対称とならない位置に配置されていてもよい。例えば、弁部材150bにおける複数の補強部155の配置位置を、上記変形例1に係る弁部材150a(
図8参照)と一致させることで、弁部材150bを、上記変形例1に係る弁座101aに取り付けることができる。この場合、軸方向から見た場合における弁部材150bの回転位置は一意に決定される。つまり、肉厚部153は所定の位置に位置決めされる。そのため、例えば、弁座101aに取り付けられた弁部材150bの肉厚部153が、必ず所定の方向に向くように、弁座101aを形成することが可能である。
【0068】
(変形例3)
図10は、実施の形態の変形例3に係る弁座101b及び弁部材150cの構成概要を示す図である。
図10では、弁座101bの軸方向と直交する、弁座101b及び弁部材150cの断面であって、それぞれの特徴的な部分の断面のみが図示されている。
【0069】
図10に示すように、本変形例において、弁座101bが有する側面排気部112は、側壁部102に形成された、弁座101の周方向で対向する位置に配置された一対の開口内側面112aの間に設けられている。一対の開口内側面112aは、側壁部102を弁座101bの先端側から見た場合において、それぞれが、弁座101bの径方向に対して外側に傾いて形成されている。弁部材150cの補強部155は、一対の開口内側面112aに当接する、一対の当接面155aを有している。なお、「弁座101bの径方向」は、具体的には、
図10に示すように、弁座101bの軸Pを通り、開口内側面112aの内側(軸Pに近い側)の端縁を通過する直線(基準線L)で規定される。この場合、その開口内側面112aは、径方向外側に行くほど(軸Pから離れるほど)、基準線Lから外側に離れる向き(他方の開口内側面112aから離れる向き)に傾く部分(傾斜部)を有している。
図10に示す例では、開口内側面112aの全域に傾斜部が形成されている。
【0070】
この構成によれば、弁部材150cに外気または水等が衝突することで、外部からの圧力(外圧)がかかった場合、側壁部102の開口内側面112aの抗力の向きは、接線方向よりも外側に向く。つまり、補強部155の一対の当接面155aを押し返す抗力には、径方向外側に向く成分が含まれる。従って、弁部材150cの補強部155の、側面排気部112の内方への移動または変形がより確実に抑制される。また、外圧の上昇に伴い、側壁部102の開口内側面112aと補強部155の当接面155aとの密着性は向上する。従って、排気口110における水密性が維持または向上される。これにより、蓄電装置1の安全性が向上する。
【0071】
なお、開口内側面112aの全域に傾斜部が形成されている必要はない。例えば、開口内側面112aの内側部分(軸Pに近い部分)は径方向に平行であり、その外側のみに傾斜部が設けられてもよい。また、開口内側面112aの外側部分(軸Pから遠い部分)は径方向に平行であり、その内側のみに傾斜部が設けられてもよい。また、開口内側面112aの傾斜部は、軸方向から見た場合に直線である必要はなく、例えば、内側または外側に凸の湾曲状であってもよい。いずれの場合であっても、弁部材150cの補強部155における当接面155aの形状が、開口内側面112aと密着可能な形状であれば、弁座101bの側面排気部112における水密性の維持または向上は可能である。
【0072】
(変形例4)
図11は、実施の形態の変形例4に係る弁部材150dを、弁座101が挿入される側から見た場合の斜視図である。
図11に示すように、本変形例に係る弁部材150dが有する補強部156は、弁部材150dの内面(外周部152の内面)の互いに対向する部分を接続する壁状に形成されている。このように構成された弁部材150dは、例えば、実施の形態に係る弁座101(
図4参照)に取り付けられる。つまり、弁座101の側壁部102には、弁座101の先端から当該先端とは反対側に延設された2つの側面排気部112が形成されている。より具体的には、本変形例では、
図11に示すように、キャップ状の弁部材150dの内側において、径方向に渡される壁状の2つの補強部156が交差して配置されている。弁座101の側壁部102には、2つの補強部156が挿入される4つの側面排気部112が形成されている。
【0073】
この構成によれば、補強部156は、内圧の上昇時には、弁部材150dの内面の対向する部分を引っ張ることで弁部材150dの開きを抑制することができる。補強部156はさらに、外圧の上昇時には、弁部材150dの内面の対向する部分で突っ張ることで弁部材150dの内側への変形を抑制することができる。つまり、補強部156により、弁部材150dの過度な変形が抑制され、これにより、例えば弁部材150dの劣化が抑制される。その結果、蓄電装置1の安全性が向上される。
【0074】
なお、
図11に示すように、補強部156に、1以上の切断部157が形成されていてもよい。これにより、弁部材150dの外周部152が外側に向けて変形しやすくなる。つまり、弁部材150dの閉状態から開状態への遷移が容易となる。また、補強部156における切断部157の数、補強部156の厚み及び形状、並びに、弁部材150dにおける補強部156の位置等は、例えば、弁部材150dが閉状態から開状態に遷移すべき内圧の大きさに応じて適宜決定されてもよい。
【0075】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電装置について、実施の形態及びその変形例に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態または変形例に施したものも、本発明の範囲内に含まれる。
【0076】
例えば、弁座101等が配置された通気室100の位置は、外装体10の上部である必要はない。例えば、外装体10の側面に通気室100が設けられてもよい。この場合であっても、通気室100と外装体10の外部とを連通させる排気管120が配置されていることで、弁座101の排気口110から排出されたガスを、排気管120を介して外装体10の外部に導くことができる。
【0077】
また、弁部材150が有する補強部155の数は1以上であればよい。補強部155の数及び位置は、弁座101が有する側面排気部112の数及び位置に合わせて決定されてもよい。これにより、弁座101の側壁部102における側面排気部112の位置、つまり、側壁部102が欠かれている部分に、必ず補強部155を配置することができる。その結果、弁部材150において、内側に側壁部102がないことで外圧による内向きの変形が生じやすい1以上の部分を、1以上の補強部155により効果的に補強することができる。
【0078】
また、弁座101は、円筒状の形状であるが、弁座が円筒状であることは必須ではなく、例えば、軸方向から見た場合の形状が、楕円形、長円形、または多角形である筒状の弁座が、外装体10に設けられてもよい。この場合、弁座の形状に応じて、弁部材の形状が決定されればよい。
【0079】
また、外装体10において、弁部材150が取り付けられた弁座101が、外部に露出する状態で設けられてもよい。つまり、弁部材150が開状態となった場合に、弁座101から外装体10の外部に直接的にガスが排出されてもよい。この場合であっても、例えば、蓄電装置1が、蓄電装置1よりも大きな箱体に収容され、その箱体に排気管が設けられることで、蓄電装置1から排出されたガスを所定の位置まで導くことができる。また、外装体10の弁座101及びその周囲のみを覆うカバーに排気管が設けられていることでも、蓄電装置1から排出されたガスを所定の位置まで導くことができる。つまり、外装体10は、通気室100(弁座101及び弁部材150を除く)及び排気管120を備えなくてもよい。この場合、通気室100及び排気管120と同様の機能(弁座101から排出されたガスを収集して所定の位置まで導く機能)を有する構造物が、蓄電装置1とは別体の構造物として配置されてもよい。
【0080】
また、上記説明された複数の構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子を備えた蓄電装置に適用できる。
【符号の説明】
【0082】
1 蓄電装置
10 外装体
11 蓋体
11a 通気室カバー
12 本体部
20 蓄電素子
23 ガス排出弁
100 通気室
101、101a、101b 弁座
102 側壁部
110 排気口
111 先端排気部
112 側面排気部
112a 開口内側面
120 排気管
150、150a、150b、150c、150d 弁部材
151 前面部
152 外周部
153 肉厚部
155、156 補強部
155a 当接面
157 切断部