(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】超音波振動付与装置
(51)【国際特許分類】
B67D 1/08 20060101AFI20230711BHJP
B65D 25/22 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B67D1/08 Z
B65D25/22 Z
(21)【出願番号】P 2019157161
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加納 博明
(72)【発明者】
【氏名】河野 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 正昭
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/017434(WO,A1)
【文献】特許第6546360(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/08
B65D 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に注ぎ口を有する飲料缶であって、一定の内径を有して上下方向に延びる胴体部と、前記胴体部から前記上面に向けて縮径する縮径部とを備える前記飲料缶に取り付けられる超音波振動付与装置において、
前記飲料缶の上部に嵌められる環状の嵌合部と、
前記飲料缶と前記嵌合部との嵌合によって、前記飲料缶の側面のなかの前記注ぎ口の下方周辺に接する位置に配置される超音波発生部と、を備え、
前記飲料缶と前記嵌合部とが嵌合した状態において、前記胴体部の表面と対向する方向であって前記超音波発生部が正面に位置する側面方向から見て、前記超音波発生部は、前記胴体部と前記縮径部との境界部と重な
り、
前記嵌合部は、電池を収容するための第1収容室および第2収容室を有し、
前記第2収容室は、前記嵌合部の中心軸に対して前記第1収容室と反対側に位置し、前記飲料缶と前記嵌合部とが嵌合した状態において、前記第1収容室と前記第2収容室とが前記飲料缶を挟む位置に配置される
超音波振動付与装置。
【請求項2】
前記飲料缶と前記嵌合部とが嵌合した状態において、前記側面方向から見て、前記超音波発生部は、前記胴体部および前記境界部と重なる
請求項1に記載の超音波振動付与装置。
【請求項3】
前記飲料缶と前記嵌合部とが嵌合した状態において、前記側面方向から見て、前記超音波発生部は、前記縮径部および前記境界部と重なる
請求項1に記載の超音波振動付与装置。
【請求項4】
前記飲料缶と前記嵌合部とが嵌合した状態において、前記嵌合部の中心軸に対して前記注ぎ口の中心が位置する方向と、前記中心軸に対して前記超音波発生部が位置する方向とは、互いに異なる
請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波振動付与装置。
【請求項5】
前記飲料缶と前記嵌合部とが嵌合した状態において、前記嵌合部のなかで、前記中心軸に対して前記注ぎ口の中心と同一の方向に位置する部分の上端は、前記嵌合部の他の部分の上端よりも上下方向において下方に位置する
請求項4に記載の超音波振動付与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料に超音波振動を与えるために用いられる超音波振動付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール等の飲料に対して超音波振動を与えることによって、飲料を泡立てる装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の装置は、飲料が入っている容器の側面に超音波振動を与える。これにより、容器から容器内の飲料へ超音波振動が伝わり、その結果、飲料が泡立てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲料の泡立ちをより良くするためには、飲料への超音波の伝播効率を高めることが望ましい。容器が飲料缶である場合、容器の表面における部分形状や部分的な硬さは、容器の側面内において一定ではない。それゆえ、容器の側面内で超音波振動が与えられる位置が変わると、飲料への超音波の伝播効率も変わり得る。したがって、超音波の伝播効率を高める観点では、容器の側面内における超音波振動の付与位置について、なお改良の余地が残されている。
【0005】
本発明は、飲料への超音波の伝播効率を高めることのできる超音波振動付与装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する超音波振動付与装置は、上面に注ぎ口を有する飲料缶であって、一定の内径を有して上下方向に延びる胴体部と、前記胴体部から前記上面に向けて縮径する縮径部とを備える前記飲料缶に取り付けられる。超音波振動付与装置は、前記飲料缶の上部に嵌められる環状の嵌合部と、前記飲料缶と前記嵌合部との嵌合によって、前記飲料缶の側面のなかの前記注ぎ口の下方周辺に接する位置に配置される超音波発生部と、を備え、前記飲料缶と前記嵌合部とが嵌合した状態において、前記胴体部の表面と対向する方向であって前記超音波発生部が正面に位置する側面方向から見て、前記超音波発生部は、前記胴体部と前記縮径部との境界部と重なる。
【0007】
飲料缶の缶胴部は、金属板の塑性加工によって形成されるため、境界部およびその近傍には大きな応力がかかって加工硬化が生じる。それゆえ、境界部およびその近傍は、缶胴部の他の部分と比較して硬い。上記構成によれば、缶胴部のなかで相対的に硬い部分、すなわち、缶胴部のなかで変形しにくい部分と超音波発生部とが接するため、飲料缶の表面の凹み等の変形に起因して飲料缶と超音波発生部との密着性が低くなることが抑えられる。したがって、超音波発生部の発した超音波が、缶胴部を介して飲料缶の内部の飲料に伝わりやすくなり、飲料への超音波の伝播効率が高められる。
【0008】
上記構成において、前記飲料缶と前記嵌合部とが嵌合した状態において、前記側面方向から見て、前記超音波発生部は、前記胴体部および前記境界部と重なってもよい。
上記構成によれば、超音波発生部を飲料缶の側面と接触させるための超音波発生部の配置角度の設定が容易であり、また、超音波発生部と飲料缶の側面との接触面積を確保しやすい。
【0009】
上記構成において、前記飲料缶と前記嵌合部とが嵌合した状態において、前記側面方向から見て、前記超音波発生部は、前記縮径部および前記境界部と重なってもよい。
上記構成によれば、注ぎ口により近い位置で超音波発生部を飲料缶の側面と接触させることができる。そのため、飲料を注いでいるときに、飲料缶の内部にて注ぎ口の付近に溜まっている飲料により近い位置に超音波振動を与えることができる。
【0010】
上記構成において、前記飲料缶と前記嵌合部とが嵌合した状態において、前記嵌合部の中心軸に対して前記注ぎ口の中心が位置する方向と、前記中心軸に対して前記超音波発生部が位置する方向とは、互いに異なってもよい。
【0011】
上記構成によれば、上記2つの方向が一致する形態と比較して、超音波振動付与装置のなかで、上記中心軸に対して注ぎ口の中心と同一の方向に位置する部分の上下方向における配置の自由度が高められる。
【0012】
上記構成において、前記飲料缶と前記嵌合部とが嵌合した状態において、前記嵌合部のなかで、前記中心軸に対して前記注ぎ口の中心と同一の方向に位置する部分の上端は、前記嵌合部の他の部分の上端よりも上下方向において下方に位置してもよい。
【0013】
上記構成によれば、嵌合部のなかで注ぎ口の直下の領域に面する部分が、他の部分と比較して飲料缶の上端から離れる。そのため、注ぎ口から流れ出た飲料が超音波振動付与装置に付着し難い。したがって、超音波振動付与装置の管理に要する負担を軽減することができる。
【0014】
上記構成において、前記嵌合部は、電池を収容するための第1収容室および第2収容室を有し、前記第2収容室は、前記嵌合部の中心軸に対して前記第1収容室と反対側に位置してもよい。
【0015】
上記構成によれば、電池の収容により相対的に重くなる2つの収容室が、上記中心軸を挟んで配置されるため、超音波振動付与装置と飲料缶とからなる構造体の重心が上記中心軸に対する一方側に片寄ることが抑えられる。したがって、上記構造体を水平面に置いた場合に、上記構造体が倒れにくくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、飲料への超音波の伝播効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】超音波振動付与装置の第1実施形態について、飲料缶に取り付けられた超音波振動付与装置の斜視構造を示す図。
【
図2】第1実施形態の超音波振動付与装置の斜視構造を示す図。
【
図3】第1実施形態の超音波振動付与装置の斜視構造を示す図。
【
図4】第1実施形態の超音波振動付与装置の平面構造を、装置の内部構成および飲料缶の注ぎ口と共に示す図。
【
図5】第1実施形態の超音波振動付与装置の断面構造を、飲料缶の一部と共に示す図。
【
図6】第1実施形態の超音波振動付与装置の断面構造を、飲料缶の一部と共に示す図。
【
図7】第1実施形態の超音波振動付与装置における超音波発生部の位置を示す図。
【
図8】第1実施形態の超音波振動付与装置の使用方法を示す図。
【
図9】第1実施形態の超音波振動付与装置の使用方法を示す図。
【
図10】超音波振動付与装置の第2実施形態について、飲料缶に取り付けられた超音波振動付与装置の斜視構造を示す図。
【
図11】第2実施形態の超音波振動付与装置の平面構造を、装置の内部構成および飲料缶の注ぎ口と共に示す図。
【
図12】第2実施形態の超音波振動付与装置の側面構造を、装置の内部構成および飲料缶と共に示す図。
【
図13】第2実施形態の超音波振動付与装置における超音波発生部の位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1~
図9を参照して、超音波振動付与装置の第1実施形態を説明する。第1実施形態の超音波振動付与装置は、発泡飲料の泡立てに用いられる。なお、以下の説明における上下方向は、超音波振動付与装置が取り付けられる飲料缶を水平面上に静置した場合における上下方向である。
【0019】
[超音波振動付与装置の全体構成]
図1を参照して、超音波振動付与装置の全体構成を説明する。超音波振動付与装置10は、発泡飲料の入った飲料缶100の外側に取り付けられる。
【0020】
飲料缶100は、アルミニウムやスチール等の金属板から主に構成され、円筒状の缶胴部110と、缶胴部110が有する2つの筒端の一方を塞ぐ底蓋部120と、上記筒端の他方を塞ぐ上蓋部130とを備える。飲料缶100は、3ピース缶であってもよいし、2ピース缶であってもよい。3ピース缶は、缶胴部110と底蓋部120と上蓋部130とが別々に形成された後、これらの部材が接合されることによって形成される。2ピース缶は、缶胴部110と底蓋部120とが一体に形成されており、缶胴部110と底蓋部120とからなる構造体に上蓋部130が接合されることによって形成される。
【0021】
缶胴部110は、一定の内径で上下方向に延びる胴体部111と、胴体部111の上端から上蓋部130に向けて内径を変化させつつ延びる肩部112とを含んでいる。缶胴部110の内径は、胴体部111において最大となっている。
【0022】
上蓋部130は、例えば、ステイオンタブ式もしくはプルタブ式の缶蓋であり、タブを引き上げることにより開口される1つの注ぎ口130aを有している。すなわち、飲料缶100は、飲料缶100の上面に注ぎ口130aを有している。
【0023】
発泡飲料は、炭酸を含んだ飲料であって、泡の生成が好まれる飲料であればその種類は限定されない。具体的には、発泡飲料は、数%の二酸化炭素が圧入された発泡性の飲料であって、例えば、ビールやノンアルコールビール等である。
【0024】
超音波振動付与装置10は、環状を有する嵌合部20を備えている。嵌合部20が飲料缶100の上部に嵌められることにより、超音波振動付与装置10が飲料缶100に取り付けられる。超音波振動付与装置10が飲料缶100に取り付けられた状態において、嵌合部20は、肩部112と胴体部111とに跨って、飲料缶100の外周面を囲む。
【0025】
[超音波振動付与装置の詳細構成]
図2~
図7を参照して、超音波振動付与装置10の詳細構成を説明する。
図2が示すように、嵌合部20は閉環状を有し、飲料缶100が通される開口部25を区画している。嵌合部20は、例えば樹脂製であって、その内部に、超音波振動付与装置10の駆動に要する各種の電子部品を収容している。
【0026】
超音波振動付与装置10が飲料缶100に取り付けられた状態において、嵌合部20のなかで、飲料缶100における注ぎ口130aの直下の領域に面する部分、言い換えれば、缶胴部110の中心軸に対して、注ぎ口130aと同じ方向に配置される部分が、正面部21である。正面部21の上端は、嵌合部20のうちの正面部21以外の部分の上端よりも下方に位置する。すなわち、開口部25の上縁は、正面部21の部分で他の部分よりも下がるように、落ち窪んでいる。
【0027】
嵌合部20は、嵌合部20の上端にて径方向の内側に張り出し、下方へ延びる延設片30を備えている。延設片30は、嵌合部20の上端付近にのみ設けられており、延設片30が位置する部分では、他の部分よりも開口部25の径が小さくなっている。
【0028】
図3が示すように、超音波振動付与装置10は、超音波を発する超音波発生部40を備えている。超音波発生部40は、嵌合部20に収容されており、超音波発生部40が有する例えば円形の超音波伝播面41が、嵌合部20のなかで、周方向において正面部21と隣り合う部分の内周面から開口部25内に向けて露出している。超音波伝播面41は、延設片30よりも下方に位置する。
【0029】
さらに、超音波振動付与装置10は、超音波振動付与装置10の駆動のオンとオフとを切り替えるための操作部50を備えている。操作部50は、嵌合部20が構成する環の中心軸に対して、正面部21と反対側に位置し、嵌合部20の外周面から、径方向の外側に向けて突出している。
【0030】
また、超音波振動付与装置10は、超音波振動付与装置10の駆動状態を示す表示部80を備えていてもよい。表示部80は、例えばLEDを含み、点灯の有無によって超音波振動付与装置10の駆動がオンであるか否かを示す。表示部80の点灯部分は、例えば、嵌合部20の上面に配置される。
【0031】
図4が示すように、嵌合部20は、その内部に、上述の超音波発生部40と、超音波発生部40を駆動するための駆動信号を生成する駆動部60とを収容している。また、嵌合部20は、その内部に、乾電池等の電力の供給源を収容するための空間を区画する収容部70を有している。
【0032】
超音波発生部40は、圧電素子等からなる超音波振動子を含み、駆動部60から入力される駆動信号に応じて振動することにより、超音波を発生する。超音波伝播面41は、超音波発生部40の最外面であって、超音波振動を与える対象に接触させるための面である。
【0033】
超音波発生部40としては、例えば、円形の防水型超音波センサーが用いられる。超音波発生部40の動作周波数は、例えば、20KHz以上40KHz以下の範囲から選択される。超音波の伝播過程での減衰を考慮すると、超音波発生部40の動作周波数は高い方が好ましい。ただし、発泡飲料を泡立てることの可能な周波数の超音波を出力可能であれば、超音波発生部40の内部構成や外形や動作周波数は限定されない。
【0034】
駆動部60は、超音波発生部40への駆動信号の出力の制御や、当該駆動信号である交流信号の周波数の設定を行う制御回路、制御回路からの信号に基づき直流の入力電圧を交流に変換して出力するDC/ACコンバーター、および、出力側と入力側とのインピーダンスを整合させる整合回路等を含む。
【0035】
収容部70は、電力の供給源として、一次電池を収容してもよいし、二次電池を収容してもよい。本実施形態では、一例として、収容部70が、第1収容室71と第2収容室72とを備え、各収容室71,72に1つずつ乾電池を収容するように構成されている形態を示す。
【0036】
第1収容室71と第2収容室72とは、開口部25を挟んで対向する位置に配置されている。言い換えれば、嵌合部20が構成する環の中心軸Cに対して第1収容室71と反対側に第2収容室72が配置されている。そして、嵌合部20のなかで、第1収容室71を有する部分と、第2収容室72を有する部分との間に、正面部21が位置する。すなわち、第1収容室71と第2収容室72とは、飲料缶100の左右に配置される。
【0037】
また、駆動部60は、中心軸Cに対して、正面部21と反対側に位置する部分に収容されている。すなわち、駆動部60は操作部50の付近に位置する。このように、嵌合部20の内部では、周方向に沿って、第1収容室71、超音波発生部40、第2収容室72、駆動部60が、この順に配置されている。
【0038】
駆動部60と、超音波発生部40と、収容部70に収容される電力の供給源とは、嵌合部20の内部に引き回された配線によって電気的に接続されている。電力の供給源からは、各部の駆動に要する電力が各部へ供給される。超音波振動付与装置10が表示部80を備える場合には、表示部80にも電力が供給される。
【0039】
操作部50は、ユーザーの操作部50に対する操作を電気信号として駆動部60の制御回路に出力する。操作部50は、超音波振動付与装置10の駆動、すなわち、超音波発生部40の駆動とその停止とを指示する操作を受け付ける。例えば、操作部50は、こうした操作を押下の有無として受け付けるスイッチに具体化され、操作部50の操作によって回路の接続が切り替えられることに基づき、操作に応じた信号が駆動部60に出力される。
【0040】
なお、中心軸Cに沿った方向から見た嵌合部20の外形形状は特に限定されない。図面においては、嵌合部20の外形が、第1収容室71および第2収容室72の部分で収容室71,72の形状に沿って外側に膨らむ形状を有する形態を図示している。これに限らず、嵌合部20の外形は、円形、楕円形、矩形等であってもよい。
【0041】
ここで、中心軸Cに沿った方向から見た超音波発生部40の位置について詳細に説明する。中心軸Cは、飲料缶100の缶胴部110の中心軸と一致する。
中心軸Cに沿った方向、すなわち、上蓋部130の上面と対向する位置から見て、中心軸Cに対して正面部21が位置する方向を正面方向、中心軸Cに対して超音波発生部40が位置する方向を配置方向とするとき、正面方向と配置方向とは互いに異なる方向である。飲料缶100を傾けて注ぎ口130aの付近に溜まっている飲料に超音波振動を与える場合において、飲料への超音波の伝播効率を高めるためには、正面方向と配置方向とのなす角αは、0°よりも大きく50°以下であることが好ましい。
【0042】
なお、正面方向は、超音波振動付与装置10が飲料缶100に取り付けられた状態、すなわち、嵌合部20と飲料缶100とが嵌合した状態において、中心軸Cに沿った方向から見て中心軸Cに対して注ぎ口130aが位置する方向であり、詳細には、中心軸Cに対して注ぎ口130aの中心が位置する方向である。また、配置方向は、中心軸Cに沿った方向から見て中心軸Cに対して超音波伝播面41の中心が位置する方向である。
【0043】
このように、嵌合部20と飲料缶100との嵌合によって、超音波発生部40は、注ぎ口130aの下方周辺であって注ぎ口130aの直下からずれた位置で、言い換えれば、注ぎ口130aの斜め下で、飲料缶100の側面と接するように配置される。
【0044】
図5が示すように、超音波振動付与装置10が飲料缶100に取り付けられた状態において、延設片30の下端は、缶胴部110の肩部112に当接する。延設片30よりも下方において、嵌合部20の内周面は、胴体部111に接する。
【0045】
嵌合部20を飲料缶100の上方から飲料缶100に嵌めたとき、延設片30の下端が肩部112に当接することにより、飲料缶100に対して超音波振動付与装置10が係止され、飲料缶100に対する超音波振動付与装置10の上下方向の位置が規定される。これにより、飲料缶100に対する超音波発生部40の上下方向の位置が決まる。超音波振動付与装置10が飲料缶100に取り付けられた状態において、嵌合部20の上端の上下方向の位置は、注ぎ口130aの周囲を除く部分で、缶胴部110の上端の上下方向の位置と一致する。
【0046】
図6が示すように、正面部21には、延設片30が設けられず、正面部21の内周面は、その全体が胴体部111に接する。上下方向において、正面部21の上端の位置は、胴体部111の上端の位置と一致するか、もしくは、胴体部111の上端の位置よりも下方に位置する。
【0047】
図7を参照して、超音波振動付与装置10が飲料缶100に取り付けられた状態での、上下方向における超音波発生部40の位置について詳細に説明する。
超音波発生部40は、胴体部111の上端付近と肩部112の下端付近とに隣接する位置に配置される。すなわち、胴体部111の表面と対向する方向であって、超音波発生部40が正面に位置する方向である側面方向から見たとき、超音波発生部40は、缶胴部110のなかで、胴体部111から肩部112にかかる部分と重なる。
【0048】
詳細には、肩部112は、鉛直方向に対して所定の角度で傾斜する縮径部113と、縮径部113と胴体部111との間に位置する境界部114とを有している。縮径部113は、テーパー形状を有し、縮径部113の内径は、胴体部111から上蓋部130に向けて、すなわち、縮径部113の下端から上端に向けて、徐々に小さくなる。境界部114は、上下方向の断面にて曲率を有して曲がる形状を有しており、胴体部111の上端と縮径部113の下端とを緩やかに繋いでいる。
【0049】
上記側面方向から見て、超音波発生部40の超音波伝播面41は、胴体部111の上端付近と境界部114とに重なる。すなわち、超音波伝播面41は、境界部114もしくはその近傍で、飲料缶100の側面と接する。例えば、超音波伝播面41は、上下方向に沿った平面であり、胴体部111に沿って配置され、胴体部111の上端付近および境界部114の下端と接する。
【0050】
缶胴部110は、絞り加工のように、金属板の塑性加工によって形成される。この加工に際して、境界部114およびその近傍には大きな応力がかかるため、加工硬化が生じる。そのため、境界部114およびその近傍は、缶胴部110の他の部分と比較して、特に、胴体部111の端部付近を除く部分と比較して、硬い。
【0051】
缶胴部110の特に胴体部111には、注ぎ口130aを開けた状態でユーザが飲料缶100を掴んでいるとき等に、変形が生じやすく、その表面に僅かな凹みが形成される場合がある。こうした凹みの部分に超音波伝播面41が位置すると、飲料缶100の側面と超音波伝播面41との間に隙間が形成されて、飲料缶100と超音波伝播面41との密着性が低くなり、超音波が飲料缶100に伝わりにくくなる。
【0052】
本実施形態では、缶胴部110のなかで相対的に硬い部分、すなわち、缶胴部110のなかで変形しにくい部分と超音波伝播面41とが接するため、表面の凹みに起因して飲料缶100と超音波伝播面41との密着性が低くなることが抑えられる。したがって、超音波発生部40の発した超音波が、缶胴部110を介して、飲料缶100の内部の飲料に伝わりやすくなり、飲料に対する超音波の伝播効率が高められる。
【0053】
また、超音波伝播面41は、その面内の中心部において最も強く超音波を発する。上述のように飲料缶100と超音波伝播面41との密着性が低くなることが抑えられる結果、超音波伝播面41の中心部が、缶胴部110と密着しやすくなる。これによっても、飲料に対する超音波の伝播効率が高められる。
【0054】
[超音波振動付与装置の使用方法]
図8および
図9を参照して、超音波振動付与装置10の使用方法を説明する。
超音波振動付与装置10の使用に際しては、ユーザーは、まず、超音波振動付与装置10を飲料缶100に取り付ける。注ぎ口130aは、超音波振動付与装置10の取り付けの前または後に開けられる。
【0055】
図8が示すように、超音波振動付与装置10を飲料缶100に取り付けた後、ユーザーは、超音波振動付与装置10と飲料缶100とを持ち上げて、注ぎ口130aが下側に位置するように超音波振動付与装置10および飲料缶100を傾け、飲料缶100内の飲料を注ぎ口130aから流出させてグラス等の杯200に注ぐ。このとき、超音波振動付与装置10はオフにされている。これにより、杯200に主として液状の飲料Lqが注がれる。
【0056】
超音波振動付与装置10は、飲料缶100の上部の外周のみに位置するため、飲料缶100の中央部および下部は、超音波振動付与装置10から露出されている。したがって、ユーザーは、飲料缶100の中央部付近で飲料缶100のみを掴むことで、超音波振動付与装置10と飲料缶100とからなる構造体を支持することができる。したがって、超音波振動付与装置10と共に飲料缶100を掴む場合と比較して、上記構造体を掴むことが容易であり、上記構造体を操作しやすい。
【0057】
図9が示すように、杯200に適量の飲料Lqが注がれたタイミングで、ユーザーは、操作部50を操作して、超音波振動付与装置10をオンに切り替える。例えば、ユーザーは、飲料缶100に対して正面部21とは反対側から飲料缶100を掴んでおり、この場合、人差し指を伸ばして操作部50を操作することで、超音波振動付与装置10をオフからオンへ容易に切り替えることができる。
【0058】
操作部50からの信号の入力に基づき、駆動部60から超音波発生部40へ駆動信号が出力され、これによって、超音波発生部40が超音波を発する。超音波は超音波伝播面41から缶胴部110に伝わり、さらに、飲料缶100内の飲料に伝わる。
【0059】
この時点で飲料缶100内に残されている飲料は、飲料缶100が傾けられていることにより、飲料缶100内の注ぎ口130a付近に溜まっている。超音波伝播面41が、正面部21と隣接する部分から露出して缶胴部110に接する構成であれば、飲料が注ぎ口130aから注がれるように飲料缶100が傾けられているとき、超音波伝播面41は注ぎ口130a付近の下側に位置し、すなわち、飲料缶100内にて飲料が溜まっている部分の付近に位置する。それゆえ、超音波発生部40から発せられた超音波は、飲料缶100内の飲料に的確に伝わる。
【0060】
超音波振動により、飲料缶100内の飲料が泡立てられ、この泡Fmが注ぎ口130aから出て、杯200に注がれる。これにより、杯200内において液状の飲料Lqの上に泡Fmが乗るように、飲料缶100内の発泡飲料を杯200に移すことができる。
【0061】
本実施形態では、超音波振動付与装置10の発した超音波が、飲料缶100の側面から飲料缶100内の飲料へ伝えられる。そのため、飲料は、超音波振動付与装置10に直接触れることなく泡立てられて、杯200に注がれる。したがって、使用の度に超音波振動付与装置10を洗浄する必要がないため、超音波振動付与装置10の管理に要する負担を軽減することができる。
【0062】
また、飲料缶100における注ぎ口130aの直下の領域に面する正面部21が、飲料缶100の上端から離れているため、正面部21が飲料缶100の上端と接している構成と比較して、注ぎ口130aから流れ出た飲料が正面部21に付着し難い。したがって、超音波振動付与装置10の管理に要する負担をより軽減することができる。本実施形態においては、超音波発生部40を、正面部21ではなく正面部21に隣接する部分に配置することで、注ぎ口130a付近で飲料缶100の境界部114付近に超音波を与えつつも、注ぎ口130aの直下に配置される正面部21を境界部114よりも下方に配置して、超音波振動付与装置10への飲料の付着を抑えることを可能としている。また、正面部21に超音波発生部40が収容される場合と比較して、径方向における正面部21の厚さを小さくすることが可能であるため、これによっても、正面部21に飲料が付着し難くなる。
【0063】
また、本実施形態の超音波振動付与装置10を使用した場合、先に杯200に注がれた飲料は振動を受けず液状のまま保たれる。したがって、杯200に注いだ飲料を泡立てる方式と比較して、最終的に液状となる部分の量の把握が容易であるため、飲料における液体と泡との割合の制御が容易である。また、杯200に飲料を注いだ後に杯200の下部に超音波を与えて飲料を泡立てる方式と比較して、液状の部分からの炭酸の抜けが抑えられるため、飲料の風味の低下を抑えることが可能である。
【0064】
また、本実施形態の超音波振動付与装置10においては、第1収容室71、超音波発生部40、第2収容室72、駆動部60が嵌合部20の周方向に並んで飲料缶100を取り囲み、中心軸Cに対して第1収容室71と反対側に第2収容室72が配置されている。第1収容室71と第2収容室72とは、乾電池を収容した場合に超音波振動付与装置10のなかで相対的に重くなる。そのため、第1収容室71と第2収容室72とが中心軸Cに対して同一の方向に位置していると、超音波振動付与装置10と飲料缶100とからなる構造体の重心が中心軸Cに対する一方側に片寄り、例えば飲料缶100が空になった後に上記構造体を水平面に置くと、上記構造体が倒れやすくなる。これに対し、本実施形態では、中心軸Cに対して第1収容室71と反対側に第2収容室72が位置するため、上記構造体の重心の片寄りが抑えられ、上記構造体が倒れにくくなる。
【0065】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)飲料缶100と嵌合部20とが嵌合した状態において、側面方向から見て、超音波発生部40が境界部114と重なる。こうした構成によれば、缶胴部110のなかで相対的に硬い部分と超音波発生部40とが接するため、飲料缶100の変形に起因して飲料缶100と超音波発生部40との密着性が低くなることが抑えられる。したがって、飲料への超音波の伝播効率が高められる。
【0066】
(2)飲料缶100と嵌合部20とが嵌合した状態において、側面方向から見て、超音波発生部40は、胴体部111および境界部114と重なる。こうした構成によれば、超音波発生部40を飲料缶100の側面と接触させるための超音波発生部40の配置角度の設定が容易であり、また、超音波発生部40と飲料缶100の側面との接触面積を確保しやすい。
【0067】
(3)飲料缶100と嵌合部20とが嵌合した状態において、正面方向と配置方向とが互いに異なるため、これら2つの方向が一致する形態と比較して、正面部21の上下方向における配置の自由度が高められる。そして、正面部21の上端が、嵌合部20の他の部分の上端よりも下方に配置されるため、嵌合部20のなかで注ぎ口130aの直下に面する部分である正面部21が、他の部分と比較して飲料缶100の上端から離れる。それゆえ、注ぎ口130aから流れ出た飲料が超音波振動付与装置10に付着し難くなるため、超音波振動付与装置10の管理に要する負担を軽減することができる。
【0068】
(4)第2収容室72が、嵌合部20の中心軸Cに対して第1収容室71と反対側に位置する。これにより、電池の収容により相対的に重くなる2つの収容室71,72が、中心軸Cを挟んで配置されるため、超音波振動付与装置10と飲料缶100とからなる構造体の重心が中心軸Cに対する一方側に片寄ることが抑えられる。したがって、上記構造体を水平面に置いた場合に、上記構造体が倒れにくくなる。
【0069】
(第2実施形態)
図10~
図13を参照して、超音波振動付与装置の第2実施形態を説明する。以下では、第2実施形態と第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0070】
第2実施形態の超音波振動付与装置11においては、第1実施形態の超音波振動付与装置10と比較して、超音波振動付与装置11が備える各部の配置が異なる。
図10が示すように、超音波振動付与装置11は、閉環状の嵌合部22と、嵌合部22から下方に延びる背面部23とを備えている。嵌合部22は、飲料缶100が通される開口部25を区画し、飲料缶100の上部に嵌められる。超音波振動付与装置11が飲料缶100に取り付けられた状態において、上下方向における嵌合部22の上端の位置は、注ぎ口130aの直下の領域に面する部分も含めて、缶胴部110の上端の位置と一致する。嵌合部22は、例えば、第1実施形態の延設片30と同様の構造体を備えることによって缶胴部110の上部に係止される。
【0071】
背面部23は、嵌合部22が構成する環の中心軸、すなわち、缶胴部110の中心軸に対して、注ぎ口130aと反対側に配置される。背面部23は、上下方向において、飲料缶100の下端の位置まで延びている。嵌合部22と背面部23とは、例えば樹脂製であって、その内部に各種の電子部品を収容可能な空間を区画している。
【0072】
図11が示すように、超音波発生部40は、嵌合部22の内部に収容されている。詳細には、超音波振動付与装置11が飲料缶100に取り付けられた状態において、嵌合部22のなかで、飲料缶100における注ぎ口130aの直下の領域に面する部分、言い換えれば、中心軸Cに対して、注ぎ口130aと同じ方向に配置される部分に、超音波発生部40が収容され、当該部分の内周面から超音波伝播面41が開口部25内に露出する。
【0073】
中心軸Cに沿った方向から見て、中心軸Cに対して注ぎ口130aが位置する方向を正面方向、中心軸Cに対して超音波発生部40が位置する方向を配置方向とするとき、正面方向と配置方向とは一致する。
【0074】
第1実施形態と同様、飲料缶100と嵌合部20とが嵌合した状態において、正面方向は、中心軸Cに沿った方向から見て、中心軸Cに対して注ぎ口130aの中心が位置する方向であり、配置方向は、中心軸Cに沿った方向から見て、中心軸Cに対して超音波伝播面41の中心が位置する方向である。
【0075】
このように、第2実施形態において、超音波発生部40は、嵌合部22と飲料缶100との嵌合によって、注ぎ口130aの直下にて飲料缶100の側面と接するように配置される。
【0076】
また、操作部50は、背面部23の上部から、嵌合部22および缶胴部110の径方向の外側に向けて突出している。すなわち、操作部50は、中心軸Cに対して、超音波発生部40および注ぎ口130aと反対側に位置する。
【0077】
図12が示すように、駆動部60および収容部70は、背面部23の内部に収容される。駆動部60は、操作部50の付近に位置し、駆動部60の下方に収容部70が配置される。
【0078】
図13を参照して、超音波振動付与装置11が飲料缶100に取り付けられた状態での、上下方向における超音波発生部40の位置について詳細に説明する。
超音波発生部40は、肩部112に隣接する位置に配置される。すなわち、胴体部111の表面と対向する方向であって、超音波発生部40が正面に位置する方向である側面方向から見たとき、超音波伝播面41は、肩部112と重なる。
【0079】
詳細には、上記側面方向から見て、超音波発生部40の超音波伝播面41は、縮径部113と境界部114とに重なる。すなわち、超音波伝播面41は、境界部114もしくはその近傍で、飲料缶100の側面と接する。例えば、超音波伝播面41は、縮径部113の斜面に沿って配置され、縮径部113および境界部114の上端と接する。
【0080】
第1実施形態で説明したように、境界部114およびその近傍は、缶胴部110の他の部分と比較して硬い。第2実施形態でも、缶胴部110のなかで相対的に硬い部分、すなわち、缶胴部110のなかで変形しにくい部分と超音波伝播面41とが接するため、表面の凹みに起因して飲料缶100と超音波伝播面41との密着性が低くなることが抑えられる。また、超音波伝播面41の中心部が、缶胴部110と密着しやすくなる。したがって、飲料に対する超音波の伝播効率が高められる。
【0081】
第2実施形態の超音波振動付与装置11は、第1実施形態と同様に使用される。すなわち、ユーザーは、オフ状態の超音波振動付与装置11を飲料缶100に取り付けた後、超音波振動付与装置11と飲料缶100とを持ち上げて、注ぎ口130aが下側に位置するように超音波振動付与装置11および飲料缶100を傾け、液状の飲料を杯に注ぐ。第2実施形態においては、ユーザーは、飲料缶100に対して背面部23の位置する側から、背面部23と飲料缶100とを共に掴むことが好ましい。
【0082】
杯に適量の飲料が注がれたタイミングで、ユーザーは、操作部50を操作して、超音波振動付与装置10をオンに切り替える。これによって、超音波発生部40が超音波を発して飲料缶100内の飲料が泡立てられ、泡が注ぎ口130aから杯に注がれる。
【0083】
第2実施形態では、超音波発生部40が注ぎ口130aの直下で飲料缶100の側面に接するため、飲料が注ぎ口130aから注がれるように飲料缶100が傾けられているとき、超音波伝播面41は、飲料缶100内にて飲料が溜まっている部分の下側に位置する。それゆえ、超音波発生部40から発せられた超音波が、飲料缶100内の飲料に的確に伝わる。
【0084】
また、第2実施形態においては、収容部70が、中心軸Cに対する一方側のみに配置されるため、第1実施形態と比較して、特に飲料缶100の内容量が少なくなっている場合に、超音波振動付与装置11および飲料缶100からなる構造体の重心が片寄りやすい。第2実施形態では、収容部70を有する背面部23が、上下方向において飲料缶100の下端の位置まで延びているため、水平面に上記構造体を置いた場合に、背面部23が水平面に接して水平面から支持される。したがって、上記構造体の重心が片寄った場合であっても、上記構造体が倒れることが抑えられる。
【0085】
以上説明したように、第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(5)飲料缶100と嵌合部20とが嵌合した状態において、側面方向から見て、超音波発生部40は、縮径部113および境界部114と重なる。こうした構成によれば、注ぎ口130aにより近い位置で超音波発生部40を飲料缶100の側面と接触させることができる。そのため、飲料を注いでいるときに、飲料缶100の内部にて注ぎ口130aの付近に溜まっている飲料により近い位置に超音波振動を与えることができる。
【0086】
(変形例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・第1実施形態において、側面方向から見て、超音波発生部40の超音波伝播面41は、縮径部113と境界部114とに重なり、胴体部111と重ならなくてもよい。あるいは、側面方向から見て、超音波伝播面41は、胴体部111と境界部114と縮径部113とに重なってもよい。また、第2実施形態において、超音波伝播面41は、胴体部111と境界部114とに重なり、縮径部113と重ならなくてもよい。あるいは、側面方向から見て、超音波伝播面41は、胴体部111と境界部114と縮径部113とに重なってもよい。
要は、側面方向から見て、超音波伝播面41の少なくとも一部が、境界部114に重なっていればよい。例えば、側面方向から見て、超音波伝播面41の上端が境界部114の下端と重なる形態や、超音波伝播面41の下端が境界部114の上端と重なる形態であってもよい。
【0087】
・第1実施形態および第2実施形態において、超音波伝播面41が境界部114の湾曲部分と接する角度に傾けられていてもよい。
・第1実施形態において、超音波発生部40の一部は、正面部21に収容されていてもよい。また、上下方向において、正面部21の上端は、飲料缶100の缶胴部110の上端と一致していてもよい。
【0088】
・第2実施形態において、側面方向から見て超音波伝播面41が境界部114と重なる範囲内で、嵌合部22のなかで注ぎ口130aの直下の領域に面する部分の上端が、他の部分の上端よりも上下方向において下方に配置されてもよい。すなわち、嵌合部22のなかで注ぎ口130aの直下の領域に面する部分の上端は、缶胴部110の上端から離れた位置に配置されてもよい。
【0089】
・第1実施形態および第2実施形態において、嵌合部20,22は、飲料缶100の上部に嵌合可能であればよく、閉環状に限らず、開環状であってもよい。例えば、第1実施形態において、嵌合部20は正面部21を有さず、正面部21に相当する部分で途切れた環状を有していてもよい。
【0090】
・第1実施形態および第2実施形態において、嵌合部20,22を飲料缶100に係止させるための構造、すなわち、超音波発生部40の上下方向の位置決めのための構造は、延設片30による係止構造に限られない。例えば、超音波振動付与装置10,11が、飲料缶100の上蓋部130や缶胴部110の下部に引っ掛かる構造を有し、当該構造によって飲料缶100に超音波振動付与装置10,11が係止されることに基づき、超音波発生部40の上下方向の位置が規定されてもよい。
【0091】
要は、嵌合部20,22と飲料缶100との嵌合に基づき、缶胴部110の外周面のなかの注ぎ口130aの下方周辺に超音波伝播面41が接し、かつ、上下方向の位置において境界部114が超音波伝播面41と重なるように、超音波発生部40の上下方向の位置が位置決めされればよい。
【0092】
なお、飲料缶100から飲料を注ぐ際に上蓋部130には飲料が付着する場合があるため、超音波振動付与装置10,11への飲料の付着を抑える観点では、超音波振動付与装置10,11は缶胴部110の外周のみに配置されることが好ましい。
【0093】
・第1実施形態において、超音波振動付与装置10は、第2実施形態と同様に、嵌合部20から延びる背面部23を有し、駆動部60および収容部70は、背面部23に収容されていてもよい。また、第2実施形態において、第1実施形態と同様に、駆動部60および収容部70は、嵌合部22の内部に収容されて飲料缶100を取り囲んでもよい。また、駆動部60および収容部70の配置は、第1実施形態および第2実施形態のいずれとも異なってもよい。
【0094】
・超音波振動付与装置10,11を、上下方向における境界部114の位置が異なる複数の種類の飲料缶100に取り付け可能なように、超音波振動付与装置10,11が、超音波発生部40の上下方向の位置を調整可能な機構を備えていてもよい。また、第2実施形態において、背面部23は、上下方向における背面部23の長さを調節可能な機構を備え、上下方向の長さの異なる複数の種類の飲料缶100に対して、背面部23の下端を飲料缶100の下端の位置に合わせることが可能であってもよい。なお、第1実施形態の超音波振動付与装置10であれば、超音波振動付与装置10が有する部分の長さ等の調整を行わずとも、上下方向の長さの異なる複数の種類の飲料缶100に対して、同様に超音波振動付与装置10を取り付けることができる。
【0095】
・飲料缶100において、縮径部113は、上記各実施形態のように連続的に縮径する形状に限らず、段階的に縮径する形状を有していてもよい。言い換えれば、縮径部113は、複数の段状の凹凸を有していてもよく、全体として胴体部111から飲料缶100の上面に向けて縮径していればよい。また、縮径部113は所定の角度で傾斜しつつ縮径する形状に限らず、湾曲しつつ、すなわち、上下方向の断面にて曲率を有して曲がりつつ縮径する形状であってもよい。境界部114は、縮径部113と胴体部111との間で曲率を有して曲がる角部を構成する部分であるが、縮径部113の形状によっては、縮径部113と胴体部111とが直接に繋がっていてもよく、この場合、縮径部113と胴体部111との境界に位置して周方向に延びる線状の部分が境界部114である。
【0096】
・超音波振動が与えられる対象の飲料は、発泡飲料に限定されず、飲料缶100に充填された飲料であればよい。炭酸を含まない飲料であっても、超音波振動の付与によって泡が生じる飲料であれば、超音波振動付与装置10,11による超音波振動の付与の対象にできる。さらには、超音波振動の付与によって視認可能な泡が発生しない飲料であっても、超音波振動の付与が、例えば、風味の向上や口当たりの良さの向上等の種々の目的に寄与する場合には、超音波振動付与装置10,11による超音波振動の付与の対象にできる。こうした対象であっても、飲料への超音波の伝播効率が高められることによって、超音波振動の付与の目的がより好適に実現される。要は、超音波振動の付与によって、視認可能な泡の発生、視認できない微小な泡の発生、表面張力の変化等、飲料の物理状態に変化が生じる飲料であれば、超音波振動付与装置10,11による超音波振動の付与の対象にできる。
【0097】
(実施例)
上述した超音波振動付与装置について、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。超音波発生部の位置を変えた2つの実施例および比較例の超音波振動付与装置を用意し、飲料における泡立ちの程度を評価した。
【0098】
[実施例1]
実施例1は、第1実施形態に対応し、側面方向から見て、超音波発生部の超音波伝播面は、飲料缶における胴体部の上端付近と境界部とに重なる。超音波伝播面は、上下方向に沿った平面であり、胴体部に沿って配置される。実施例1において、正面方向と配置方向とのなす角は、30°である。
【0099】
[実施例2]
実施例2は、第2実施形態に対応し、側面方向から見て、超音波発生部の超音波伝播面は、縮径部と境界部とに重なる。超音波伝播面は、縮径部の傾斜に沿った平面であり、縮径部に沿って配置される。実施例2において、正面方向と配置方向とは同一の方向である。
【0100】
[比較例]
比較例の超音波振動装置においては、側面方向から見て、超音波発生部の超音波伝播面が、境界部よりも下で胴体部のみに重なる。超音波伝播面は、上下方向に沿った平面であり、胴体部に沿って配置される。比較例において、正面方向と配置方向とは同一の方向である。
【0101】
[評価方法]
各実施例および比較例の超音波振動付与装置を、ビールが入った350mlの飲料缶に取り付けた。各実施例および比較例について、超音波振動付与装置をオフにした状態で、飲料缶からコップに内容量の80%、すなわち280mlのビールを注いだ後、超音波振動付与装置をオンに切り替え、さらに、飲料缶からコップに内容量の20%、すなわち70mlのビールを注いだ。コップ内のビールのうち、超音波振動付与装置をオンに切り替えた後に増加した分量の上下方向における高さを、液体の部分と泡の部分とのそれぞれについて計測した。
【0102】
[評価結果]
表1に、各実施例および比較例について、上記増加した分量の高さの計測結果を示す。
【0103】
【0104】
表1が示すように、比較例では、超音波振動付与装置がオン状態であるときに注がれた飲料に、液状の部分が混ざっていることに対し、実施例1および実施例2では、超音波振動付与装置がオン状態であるときに注がれた飲料のすべてが泡であった。比較例によっても、飲料の半分以上を泡立てて放出することができるが、実施例1および実施例2の方が、より良好な泡立てが可能であることが確認された。すなわち、飲料缶の境界部と重なるように超音波発生部を配置することで、飲料への超音波の伝播効率を高めることが可能であることが示された。
【符号の説明】
【0105】
10,11…超音波振動付与装置、20,22…嵌合部、21…正面部、23…背面部、25…開口部、30…延設片、40…超音波発生部、41…超音波伝播面、50…操作部、60…駆動部、70…収容部、71…第1収容室、72…第2収容室、80…表示部 、100…飲料缶、110…缶胴部、111…胴体部、112…肩部、113…縮径部、114…境界部、120…下蓋部、130…上蓋部、130a…注ぎ口、200…杯。