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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
   F21V 29/70 20150101AFI20230711BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20230711BHJP
   F21V 29/56 20150101ALI20230711BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230711BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20230711BHJP
【FI】
F21V29/70
F21V29/503
F21V29/56
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019167772
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021044229
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 悟司
(72)【発明者】
【氏名】金端 祥寛
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143971(JP,A)
【文献】特開2019-072733(JP,A)
【文献】特開平08-103930(JP,A)
【文献】特開2017-210951(JP,A)
【文献】特開2001-108381(JP,A)
【文献】特開平08-159343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 29/70
F21V 29/503
F21V 29/56
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の光源支持体と、
前記光源支持体の外壁面上に載置された複数の発光素子と、
前記光源支持体の内側に、前記光源支持体の軸方向に延伸する筒体と、
前記筒体と前記光源支持体との間に形成された、前記軸方向から見たときに環形状を呈する第一流路と、
前記筒体の内側に形成された、第二流路と
前記光源支持体から前記筒体、又は前記筒体から前記光源支持体に向かって突出するように形成された複数の支持突起とを備え、
前記第一流路と前記第二流路は、前記光源支持体の一端部側で連通され、
前記筒体は、内側に前記第二流路を構成する内筒体と前記内筒体を取り囲むように配置された外筒体とを含み、前記第一流路の外壁を構成する材料よりも熱伝導率が低い材料が含んでなることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記第一流路と前記第二流路との間には空隙が介在するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記支持突起は、前記軸方向に見たときに、少なくとも三つ備えられていることを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記内筒体から前記外筒体、あるいは前記外筒体から前記内筒体に向かって突出するように形成された複数の空隙維持部を備えることを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記空隙維持部は、前記軸方向に見たときに、少なくとも三つ備えられていることを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記光源支持体の前記一端部とは反対側の端部において、前記光源支持体と前記筒体とを固定し、前記内筒体と前記外筒体の前記軸方向における熱膨張差を緩和するための機能を有する保持部材を備えることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記保持部材は、前記内筒体と前記外筒体とが前記軸方向に沿って摺動する機構を備えることを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記保持部材は、前記内筒体と前記外筒体とが前記軸方向に沿って変位可能となるように弾性部材を備えることを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項9】
前記第一流路の外壁と前記内筒体と前記外筒体は、同じ材料で構成されていることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項10】
前記軸方向に見たときに、前記第一流路の流路断面積が、前記第二流路の流路断面積よりも小さく構成されていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置に関し、特にLED素子によって光を照射する光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器やタンク内における流体の殺菌や光化学処理用の光源として、例えば、下記特許文献1に記載されているような、複数のLEDを光源として搭載した、一方向に延伸する長尺な光照射装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-143971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上述のような、容器やタンク内における流体の殺菌や光化学処理に用いる光照射装置について検討していたところ、以下のような課題があることを見出した。以下、図面を参照しながら説明する。
【0005】
LEDは、電力が供給されると発光するとともに発熱し、次第に温度が上昇する。しかし、LEDは、温度が上昇するにつれて発光効率が低下するため、LEDを光源とする光照射装置の多くは、冷却機構が設けられている。
【0006】
例えば、上記特許文献1に記載の光照射装置のような棒状で長尺な光照射装置では、光源であるLEDが配置されている光源支持体の内側に形成された流路に冷却水を通流させる冷却機構が設けられている。
【0007】
図10は、従来構成の光照射装置100の模式的な側面断面図であり、図11は、図10の光照射装置100を、所定のZ座標の位置においてXY平面で切断したときの模式的な断面図である。図10及び図11に示すように、従来の光照射装置100は、冷却水W10が通流する第二流路F20と、冷却水W20がLED111の熱を吸収しながら排出口に向かって通流する第一流路F10が形成されている。以下、本明細書において、光源支持体110の軸方向をZ方向とし、Z方向に直交する面をXY平面として説明する。
【0008】
本明細書では、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0009】
このような構成の冷却機構では、冷却水W10が第二流路F20を通流し、その後、LED111から熱を吸収しながら冷却水W20が第一流路F10を通流する。冷却水W20は、LED111から吸収した熱によって温度が上昇しているため、筒体112を介して熱が伝搬し、第二流路F20を通流する冷却水W10の温度を上昇させてしまう。
【0010】
したがって、第二流路F20を通流する冷却水W10は、LED111から熱を吸収する前から温度が上昇してしまい、LED111から熱を吸収しにくくなって、LED111を冷却する効率が低下してしまう。この結果、LED111の発光効率を低下させ、光照射装置100の照度を低下させるおそれがある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑み、冷却効率を向上させた光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光照射装置は、
筒状の光源支持体と、
前記光源支持体の外壁面上に載置された複数の発光素子と、
前記光源支持体の内側に、前記光源支持体の軸方向に延伸する筒体と、
前記筒体と前記光源支持体との間に形成された、前記軸方向から見たときに環形状を呈する第一流路と、
前記筒体の内側に形成された、第二流路とを備え、
前記第一流路と前記第二流路は、前記光源支持体の一端部側で連通され、
前記筒体は、前記第一流路の外壁を構成する材料よりも熱伝導率が低い材料が含んでなることを特徴とする。
【0013】
上記構成とすることで、第一流路と第二流路との間に、第一流路の外壁を構成する材料よりも熱伝導率が低い材料が介在することになる。したがって、第一流路を通流する、例えば、水等の冷却媒体と第二流路を通流する冷却媒体の間で発生する熱の移動が抑制される。
【0014】
つまり、第一流路を通流する冷却媒体は、第二流路を通流する冷却媒体によって加熱されにくくなり、従来構成よりも冷却媒体が低温を維持したまま第一流路を通流できるため、冷却効率が向上される。
【0015】
なお、第一流路と第二流路の間に介在させる材料は、第一流路の外壁を構成する材料よりも熱伝導率が低い材料であればよく、気体や液体の材料を用いても構わない。
【0016】
さらに、冷却媒体は、第一流路から第二流路を経て排出されるものとしても構わないし、逆に、第二流路から第一流路を経て排出されるものとしても構わない。
【0017】
上記光照射装置は、
前記第一流路と前記第二流路との間には空隙が介在するように構成されていても構わない。
【0018】
空気は、金属と比較すると熱伝導率が非常に小さく、水や樹脂、木材等と比較しても小さい。したがって、上記構成とすることで、第一流路と第二流路との間に介在させることによって、第二流路を通流する冷却媒体の熱が第一流路を通流する冷却媒体に伝わることを、より抑制することができる。なお、空隙は、軸方向に関して筒体全体にわたって形成されていることが好ましいが、筒体の一部に形成されていても構わない。
【0019】
上記光照射装置は、
前記光源支持体から前記筒体、又は前記筒体から前記光源支持体に向かって突出するように形成された複数の支持突起を備えていても構わない。
【0020】
光照射装置が長期にわたって利用されると、光源支持体と、その内側に配置される筒体との間に構成される第一流路は、光源支持体や筒体の撓みや、熱膨張による変形によって、光源支持体と筒体とが直接接触してしまい、冷却媒体が通流しない領域が発生してしまうおそれがある。このような事態が発生すると、局所的にLEDで発生する熱を吸収することができなくなり、一部の発光素子の発光効率の低下、消灯、さらには素子の破壊が発生してしまうおそれがある。
【0021】
そこで、上記構成とすることで、光源支持体や筒体に撓みや変形が生じたとしても、支持突起の先端が筒体の外壁面に接触することによって、光源支持体と筒体との間で一定の離間距離を確保することができる。したがって、冷却媒体が通流しない領域が発生してしまうことを抑制することができる。なお、上述の通り、支持突起は、筒体から光源支持体に向かって突出するものであっても構わない。
【0022】
上記光照射装置において、
前記支持突起は、前記軸方向に見たときに、少なくとも三つ備えられていても構わない。
【0023】
上記構成とすることで、光源支持体と筒体があらゆる方向に変形に対しても、流路を維持するように光源支持体と筒体を支持することができる。さらには、光源支持体の軸方向に見たときに、少なくとも三つの支持突起は、光源支持体の軸を中心とした周方向において、それぞれの間隔が120度となるように配置されていることが好ましい。
【0024】
上記光照射装置において、
前記筒体は、内側に前記第二流路を構成する内筒体と前記内筒体を取り囲むように配置された外筒体とを含んでなるものであっても構わない。
【0025】
筒体は、内筒体と外筒体が離間するように構成することで、簡易的に全体にわたって第一流路と第二流路との間に空隙を介在させることができる。
【0026】
上記光照射装置は、
前記内筒体から前記外筒体、あるいは前記外筒体から前記内筒体に向かって突出するように形成された複数の空隙維持部を備えていても構わない。
【0027】
外筒体と、その内側に配置される内筒体との間に構成される空隙は、内筒体や外筒体の撓みや、熱膨張による変形によって、内筒体と外筒体とが直接接触してしまい、空隙が介在せず、熱伝導率が高い領域が発生してしまう。
【0028】
そこで、上記構成とすることで、筒体は、内筒体や外筒体に撓みや変形が生じたとしても、空隙維持部の先端が外筒体の内壁面に接触することによって、内筒体と外筒体との間で一定の離間距離を確保することができる。したがって、内筒体と外筒体が直接接触する面積を最小限に抑えつつ、全体にわたって第一流路と第二流路との間に空隙を介在させることができる。なお、上記の通り、空隙維持部は、外筒体から内筒体に向かって突出するものであっても構わない。
【0029】
上記光照射装置において、
前記空隙維持部は、前記軸方向に見たときに、少なくとも三つ備えられていても構わない。
【0030】
上記構成とすることで、空隙維持部についても、上述した支持突起と同様に、光源支持体と筒体があらゆる方向に変形した場合においても空隙を維持することができる。さらには、光源支持体の軸方向に見たときに、少なくとも三つの支持突起は、光源支持体の軸を中心とした周方向において、それぞれの間隔が120度となるように配置されていることが好ましい。
【0031】
上記光照射装置は、
前記光源支持体の前記一端部とは反対側の端部において、前記光源支持体と前記筒体とを固定し、前記内筒体と前記外筒体の前記軸方向における熱膨張差を緩和するための機能を有する保持部材を備えていても構わない。
【0032】
上記光照射装置において、
前記保持部材は、前記内筒体と前記外筒体とが前記軸方向に沿って変位可能となるように構成された摺動機構を備えていても構わない。
【0033】
上記光照射装置において、
前記保持部材、前記内筒体と前記外筒体とが前記軸方向に沿って変位可能となるように弾性部材を備えていても構わない。
【0034】
光源支持体や筒体は、発光素子が点灯している間、発光素子が発する熱によって熱膨張が起きる。この時、光源支持体の径方向に向かって発生する熱膨張は、第一流路と第二流路の流路断面積が僅かに変動するのみで大きな影響はないが、光源支持体の軸方向に向かって発生する熱膨張は、光源支持体と筒体とを固定する保持部材に対して負荷を生じさせてしまう。特に、筒体の内筒体と外筒体との熱膨張の差が大きいと、光源支持体の軸方向に対するズレが大きくなり、保持部材が破損してしまうおそれもある。
【0035】
そこで、上記構成とすることで、内筒体と外筒体との熱膨張の差を緩和して、保持部材に係る負荷を軽減させることができ、部材交換等の頻度を少なくすることができる。
【0036】
保持部材は、ある程度の弾力性を有する材料で形成されていることが好ましく、例えば、フッ素樹脂やポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂等を採用し得る。弾性部材は、例えば、フッ素ゴムを含む合成ゴムやシリコーン樹脂等を採用し得る。なお、保持部材は、筒体が熱膨張することで摺動する際に、筒体との間で摩擦が生じることがある。その際に、筒体側に傷が生じないようにするため、保持部材は、筒体を構成する材料よりも柔らかい材料で形成されることが好ましい。
【0037】
上記光照射装置において、
前記第一流路の外壁と前記内筒体と前記外筒体は、同じ材料で構成されていても構わない。
【0038】
第一流路の外壁と内筒体と外筒体とが同じ材料で構成されると、各部材の熱膨張率が同じとなるため、第一流路の外壁を構成する光源支持体と内筒体と外筒体が同じように熱膨張する。したがって、第一流路の外壁と内壁や、内筒体や外筒体との間で、大きな変形の差異が発生しないため、上述したような、部材同士が直接接触しにくくさせることや、装置に対して局所的な負荷を軽減させることができる。
【0039】
さらに、同一の材料で各部材を構成することで、溶接等によって装置全体を一体構成で光照射装置を構成することができ、部材同士の継ぎ目や接続部が少なくなるため、冷却媒体の漏れ対策や定期点検等を軽減させる、あるいは不要とすることができる。さらに、これらを金属で構成する場合は、同一金属であれば、電蝕が起きにくいという効果もある。
【0040】
第一流路の外壁や筒体を構成する材料は、熱伝導性が高く、保持部材を構成する材料よりも固い材料であることが好ましく、例えば、銅やステンレス鋼、チタン等を採用し得る。
【0041】
上記光照射装置は、
前記軸方向に見たときに、前記第一流路の流路断面積が、前記第二流路の流路断面積よりも小さく構成されていても構わない。
【0042】
冷却媒体による冷却効率は、冷却媒体を通流させる流速が速くなるほど高くなる。そして、発光素子で発生する熱は、主に外側に構成されている第一流路を流れる冷却媒体によって吸収される。したがって、冷却効率を向上させるためには、第一流路を流れる冷却媒体の流速を速くする必要がある。
【0043】
そこで、上記構成とすることで、第二流路を流れる冷却媒体の流速に対して、第一流路を流れる冷却媒体の流速が速くなり、発光素子の冷却効率が向上される。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、冷却効率を向上させた光照射装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】光照射装置の一実施形態の模式的な側面断面図である。
図2図1の光照射装置を、所定のZ座標の位置においてXY平面で切断したときの断面図である。
図3図1の光照射装置を、所定のZ座標の位置においてXY平面で切断したときの断面図である。
図4図1の光照射装置を-Z方向に見たときの側面図である。
図5図1の光照射装置の保持部材周辺の拡大図である。
図6】光照射装置の別実施形態の保持部材周辺の拡大図である。
図7】光照射装置の別実施形態の保持部材周辺の拡大図である。
図8】光照射装置の一実施形態の模式的な側面断面図である。
図9図8の光照射装置を、所定のZ座標の位置においてXY平面で切断したときの断面図である。
図10】従来構成の光照射装置の模式的な側面断面図である。
図11図10の光照射装置を、所定のZ座標の位置においてXY平面で切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の光照射装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0047】
図1は、光照射装置1の一実施形態の模式的な側面断面図である。図2は、図1の光照射装置1を、所定のZ座標の位置においてXY平面で切断したときの断面図である。なお、以下の説明においても、上述の説明と同様に、光源支持体10の軸方向をZ方向とし、Z方向に直交する面をXY平面として説明する。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0048】
図1及び図2に示すように、光照射装置1は、光源支持体10と、光源支持体10の外壁面10b上に設けられた複数の発光素子11と、光源支持体10の内側に配置される筒体12と、光源支持体10と筒体12を保持する保持部材13を備える。
【0049】
光源支持体10は、Z方向に見たときに外壁面10bの形状が正八角形、内壁面10aの形状が円形を呈する筒状で、-Z方向に係る端部10e側が閉じた形状をしている。そして、外壁面10bの各辺には、発光素子11を載置するための基板11bが配置されている。図示されてはいないが、基板11bは、発光素子11を発光させるために電力を供給するための配線が形成されている。
【0050】
本実施形態における発光素子11は、LEDであるが、例えば、LDや蛍光体等の他の発光素子であってもよく、これらの発光素子を混在させて配置しても構わない。また、本実施形態における光源支持体10の形状は、Z方向に見たときの外壁面10bの形状が正八角形であるが、他の多角形状や円形状等であっても構わない。
【0051】
光源支持体10の内側には、筒体12が配置され、それぞれ端部10eとは反対側、すなわち+Z方向に係る端部側において保持部材13によって固定されている。筒体12は、内壁面20aを構成する内筒体12aと外壁面30bを構成する外筒体12bとで構成されている。内筒体12aと外筒体12bは、光源支持体10の端部10e側で接続部材12cによって接続され、内筒体12aと外筒体12bとの間には、空隙12sが設けられている。
【0052】
図1及び図2に示すように、光源支持体10の内壁面10aと外筒体12bとの間には、Z方向に見たときに円環形状を呈し、発光素子11から熱を吸収しながら冷却水W2が排水口10hに向かうように+Z方向に通流される第一流路F1が形成されている。そして、内筒体12aの内側には、Z方向に見たときに円形状を呈し、外部から供給された冷却媒体である冷却水W1が-Z方向に通流される第二流路F2が形成されている。なお、本明細書では、冷却媒体が水であるものとして説明するが、冷却機能を有する流体である限り任意である。
【0053】
そして、筒体12を構成する外筒体12bには、光源支持体10に向かって突出するように支持突起12pが形成されている。図2に示すように、支持突起12pは、光源支持体10をZ方向に見たときに、光源支持体10の軸を中心とした周方向に等間隔に三つ形成されている。
【0054】
支持突起12pは、冷却水(W1,W2)の通流や、熱膨張等によって、筒体12に変形が生じた場合に、先端部だけを光源支持体10の内壁面10aに接触させ、光源支持体10の内壁面10aと外筒体12bの外壁面30bが広域にわたって直接接触してしまうことを防止する。つまり、支持突起12pは、第一流路F1が、Z方向に見たときに、光源支持体10の軸からみて周方向において、一部は極端に広く、一部は極端に狭い状態、又は一部が閉じた状態とならないように筒体12を支持する。
【0055】
なお、支持突起12pは、いくつ配置されていてもよく、Z方向に見たときに光源支持体10の軸を中心として周方向において均等に配置されていなくても構わない。また、光源支持体10や筒体12に変形が生じていない静止状態においては、支持突起12pの先端が光源支持体10の内壁面10aに接触していても、接触していなくても構わない。さらに、支持突起12pは、外筒体12bから内筒体12aに向かって突出するよう形成されていても構わない。
【0056】
また、筒体12は、内筒体12aから外筒体12bに向かって突出するように空隙維持部12qが形成されている。図2に示すように、空隙維持部12qは、上述した支持突起12pと同様に、光源支持体10をZ方向に見たときに、光源支持体10の軸を中心とした周方向に等間隔に三つ形成されている。
【0057】
空隙維持部12qは、冷却水(W1,W2)の通流や、熱膨張等によって、内筒体12aと外筒体12bに変形が生じた場合に、先端部だけが外筒体12bの内壁面30aに接触することで、空隙12sを維持する。
【0058】
なお、空隙維持部12qは、いくつ配置されていてもよく、Z方向に見たときに光源支持体10の軸を中心として周方向において均等に配置されていなくてもよく、支持突起12pと同じ数形成されていなくてもよく、光源支持体10の軸から見たときに、支持突起12pと同じ径方向上に形成されていなくても構わない。
【0059】
また、光源支持体10や筒体12に変形が生じていない静止状態においては、先端が外筒体12bの内壁面30aに接触していても、接触していなくても構わない。さらに、空隙維持部12qは、外筒体12bから内筒体12aに向かって突出するよう形成されていても構わない。
【0060】
さらに、筒体12は、光源支持体10の端部10e側では、光源支持体10と離間して配置されるため、第一流路F1と第二流路F2は、光源支持体10の端部10e側において連通している。以上の構成により、冷却水W1が給水口13aから第二流路F2に供給され、第二流路F2を-Z方向に向かって通流した後、発光素子11から熱を吸収しながら第一流路F1を+Z方向に向かって通流して、排水口10hから冷却水W2として排水される。
【0061】
本発明の光照射装置1は、上記とは逆に、冷却水(W1,W2)を通流させても構わない。つまり、上記では給水口13aであった部分を排水口、排水口10hであった部分を給水口として、冷却水W1が給水口から第一流路F1に供給され、発光素子11から熱を吸収しながら第一流路F1を-Z方向に向かって通流した後、第二流路F2を+Z方向に向かって通流し、排水口から冷却水W2として排水される構成でもよい。
【0062】
さらに、第一流路F1は、Z方向に見たときの流路断面積が、第二流路F2よりも小さくなるように形成されている。図3は、図1の光照射装置1を、所定のZ座標の位置においてXY平面で切断したときの断面図である。Z方向に見たときの流路断面積とは、図3においてハッチングで示すように、光照射装置1をZ方向に直交するXY平面において切断した時の、各流路(F1,F2)の断面積をいう。
【0063】
上述したように、第一流路F1の流路断面積を第二流路F2の流路断面積よりも小さくすることで、第二流路F2を流れる冷却水W1の流速に対して、第一流路F1を流れる冷却水W2の流速が速くなり、発光素子11の冷却効率が向上される。
【0064】
本実施形態は、構成の一例として、図1に示すように、第一流路F1の外径φ1(光源支持体10の内壁面10aの直径)を45mm、第一流路F1の内径φ2(外筒体12bの外壁面30bの直径)を40mm、第二流路F2の径φ3(内筒体12aの内壁面20aの直径)を24mmとした。
【0065】
このように構成することで、Z方向に見たときのそれぞれの流路(F1,F2)の流路断面積は、第一流路F1が334mm2、第二流路F2が452mm2となり、Z方向に見たときの第一流路F1の流路断面積が、第二流路F2の流路断面積よりも小さくなっている。なお、光照射装置1のZ方向の長さは4mとした。
【0066】
ここで、光源支持体10、内筒体12a及び外筒体12bは、全て同じ材料でなくても構わないが、冷却水(W1,W2)の漏れ防止のための溶接がしやすいことや電蝕が起こりにくい等の理由から、全て同じ材料で構成されていることが好ましい。また、さらに、光源支持体10の材料は、第一流路F1と第二流路F2との間に介在する空気よりも熱伝導率が高い材料であればよく、上述したように、例えば、銅やステンレス鋼、チタン等を採用し得る。
【0067】
図4は、図1の光照射装置1を-Z方向に見たときの側面図である。図5は、図1の光照射装置1の保持部材13周辺の拡大図である。図4及び図5に示すように、保持部材13は、給水口13aが形成されており、給水口13aの一部に、内筒体12aを支持し、内筒体12aと外筒体12bとがZ方向において摺動可能となるように、内筒体12aに当接するローラー13bを備えている。また、保持部材13は、上述したように、ある程度の弾力性を有する材料で形成されていることが好ましく、例えば、フッ素樹脂やポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂等を採用し得る。
【0068】
内筒体12aや外筒体12bは、発光素子11で発生する熱や、第一流路F1や第二流路F2を通流する冷却水(W1,W2)の熱によって加熱されることで熱膨張が発生する。特に、Z方向においては、内筒体12aと外筒体12bが、端部10e側で係合して固定されているため、保持部材13によって内筒体12aと外筒体12bをも固定してしまうと、内筒体12aと外筒体12bは、Z方向において独立して膨張や収縮ができなくなってしまう。
【0069】
したがって、内筒体12aと外筒体12bにZ方向における熱膨張差が生じると、接続部材12c、あるいは保持部材13に対して大きな負荷がかかり、場合によっては、これらの部材が破損してしまうおそれがある。
【0070】
そこで、上記構成とすることで、内筒体12aと外筒体12bは、Z方向において摺動可能となり、Z方向においてそれぞれ独立して膨張や収縮ができるようになる。つまり、内筒体12aと外筒体12bにZ方向における熱膨張差による接続部材12cや保持部材13に生じる負荷を軽減させることができる。
【0071】
以上の構成とすることで、光照射装置1は、第一流路F1を通流する冷却水W2から第二流路F2を通流する冷却水W1に対する熱の移動が抑えられ、冷却効率が向上される。また、支持突起12p及び空隙維持部12qにより、流路(F1,F2)や、内筒体12aと外筒体12bの間の空隙12sの形状が維持されることで、光照射装置1全体にわたってムラなく発光素子11を冷却することができる。
【0072】
さらに、本実施形態の光源支持体10や筒体12は、同一材料で一体構成として形成されるため、部材同士を連結する部分が少なく、Oリング等の冷却水(W1,W2)の漏れを防止する構造が不要となる。
【0073】
そして、熱膨張による接続部材12cや保持部材13への負荷も軽減され、これらの部材は、破損を生じるおそれが少なくなるため、メンテナンスに要する時間や労力が大幅に軽減された光照射装置1、あるいは定期的なメンテナンスを要しない光照射装置1を構成することができる。
【0074】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0075】
〈1〉 図6は、光照射装置1の別実施形態の保持部材13周辺の拡大図である。図6に示すように、保持部材13は、内筒体12aと外筒体12bとの間に生じるZ方向における熱膨張差を緩和するために、内筒体12aを弾性部材13cによって固定する構成としても構わない。
【0076】
上記構成とすることで、内筒体12aが弾性部材13cによって支持され、内筒体12aと外筒体12bにZ方向における熱膨張差が生じても、接続部材12cや保持部材13に生じる負荷を緩和させることができる。なお、保持部材13は、全体を弾性部材13cで構成しても構わない。なお、弾性部材13cは、上述したように、フッ素ゴムを含む合成ゴムやシリコーン樹脂等を採用し得る。
【0077】
〈2〉 筒体12は、光源支持体10(第一流路F1の外壁面)を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料による一体構成の部材であっても構わない。また、筒体12の内筒体12aと外筒体12bとの間の空隙12sは、光源支持体10(第一流路F1の外壁面)を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料で充填されていても構わない。
【0078】
このように構成することで、第一流路F1と第二流路F2との間に、光源支持体10(第一流路F1の外壁面)を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料が介在するため、第二流路F2を通流する冷却水W2から第一流路F1を通流する冷却水W1への熱の伝搬が軽減される。なお、空隙12sに充填する材料は、固体、液体、気体のいずれの材料であっても構わない。
【0079】
〈3〉 図7は、光照射装置1の別実施形態の保持部材13周辺の拡大図である。図7に示すように、光源支持体10と内筒体12aは、保持部材13側において連結し、一体として構成されていても構わない。
【0080】
〈4〉 図8は、光照射装置1の別実施形態の模式的な側面断面図である。図9は、図8の光照射装置1を、所定のZ座標の位置においてXY平面で切断したときの断面図である。図8及び図9に示すように、筒体12は、第一流路F1の外壁を構成する材料よりも熱伝導率が低い材料で一体として構成されていても構わない。
【0081】
〈5〉 上述した光照射装置1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0082】
1 : 光照射装置
10 : 光源支持体
10a : 光源支持体の内壁面
10b : 光源支持体の外壁面
10e : 端部
10h : 排水口
11 : 発光素子
11b : 基板
12 : 筒体
12a : 内筒体
12b : 外筒体
12c : 係合部材
12p : 支持突起
12q : 空隙維持部
12s : 空隙
13 : 保持部材
13a : 給水口
13b : ローラー
13c : 弾性部材
20a : 内筒体の内壁面
20b : 内筒体の外壁面
30a : 外筒体の内壁面
30b : 外筒体の外壁面
100 : 光照射装置
110 : 光源支持体
111 : LED
112 : 筒体
F1,F10 : 第一流路
F2,F20 : 第二流路
W1,W2,W10,W20 : 冷却水
φ1 :第一流路の外径
φ2 :第一流路の内径
φ3 :第二流路の径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11