(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】混合飼料用の嵩減少材
(51)【国際特許分類】
A23K 10/30 20160101AFI20230711BHJP
【FI】
A23K10/30
(21)【出願番号】P 2019169530
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【氏名又は名称】山田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100164161
【氏名又は名称】三宅 彩
(72)【発明者】
【氏名】和才 昌史
(72)【発明者】
【氏名】新倉 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 加奈
(72)【発明者】
【氏名】黒須 一博
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/038258(WO,A1)
【文献】特開2018-134011(JP,A)
【文献】特開2018-007575(JP,A)
【文献】米国特許第04431675(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材及び/または非木材由来のパルプを有効成分とする混合飼料用の嵩減少材。
【請求項2】
前記の混合飼料の水分含有量が35.0質量%以上である請求項1に記載の嵩減少材。
【請求項3】
木材及び/または非木材由来のパルプを混合飼料に対して2.3質量%以上添加することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の嵩減少材。
【請求項4】
前記のパルプがクラフトパルプである、請求項1~3のいずれか一項に記載の嵩減少材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の嵩減少材を含む混合飼料。
【請求項6】
請求項5に記載の牛用混合飼料。
【請求項7】
水分含有量が35.0質量%以上である混合飼料に、木材及び/または非木材由来のパルプを有効成分とする混合飼料の嵩減少材を含有させることにより、混合飼料の嵩を減少させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材及び/または非木材由来のパルプを有効成分とする混合飼料の嵩減少材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、牧畜分野においては、家畜の乳量の増加、増体重、健康維持などを目的に、牧草などの粗飼料と、栄養価の高いトウモロコシなどの易消化性の炭水化物(デンプン等)を多く含む濃厚飼料を混合して家畜に給与することが多い。
【0003】
牧草とは一般には、マメ科、イネ科などの植物であり、そのままでも飼料となり得るが、通常は牧草を乾燥し干草(乾草、わら類)としたもの、あるいは青刈りした牧草を発酵させた(サイレージ化)ものが粗飼料と呼ばれる。
【0004】
反芻動物が粗飼料を摂取し消化しうるのは、ルーメン(第一胃)を有するためである。ルーメンは、反芻動物が有する複数の胃のうち最大の容積を占め、粗飼料中のセルロース、ヘミセルロースなどの難消化性の多糖類を分解(ルーメン発酵)し得る微生物群(ルーメン微生物)が豊富に含まれている。
【0005】
しかし、粗飼料中のセルロース及びヘミセルロースは、リグニン類と結合し、それぞれリグニン-セルロース複合体及びリグニン-ヘミセルロース複合体として存在している場合が多い。係る複合体はルーメン発酵において十分に分解されないおそれがある。このため、粗飼料は飼料効率が不十分であるという問題点があった。
【0006】
乳用家畜の乳量を維持し、或いは、家畜の増体や健康を維持するためは、飼料摂取量を増加させる必要があるが、家畜が一度に摂取できる飼料の量には限界がある。特に、気温が高い時期や分娩後には家畜の体調が悪化し、飼料の摂取量が減少するため、飼料中の栄養や繊維濃度を高めることが求められている。
【0007】
そこで、混合飼料の嵩を減少させ、飼料中の栄養や繊維濃度を高める方法として、甜菜の搾り粕を粉砕してペレット化したビートパルプペレットを飼料原料として混合する方法が提案されている(特許文献1)。ビートパルプペレットは、干し草などの粗飼料と比較すると空隙が少ないため、混合飼料の嵩を減少させることが出来る。しかしながら、上述したビートパルプペレットは高水分な混合飼料に添加すると給水して膨張し、十分な混合飼料の嵩の減少効果が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は木材および/または非木材由来のパルプを有効成分とする混合飼料の嵩の減少材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、木材および/または非木材由来のパルプが混合飼料の嵩を減少させることを見出した。高水分の混合飼料に木材および/または非木材由来のパルプを添加すると、混合飼料の嵩が減り飼料中の栄養および/または繊維の重量体積濃度を高められることを見出した。さらに、前述のパルプに脱リグニンされたクラフトパルプを用いることで、容量あたりのTDNとNDFをさらに高められることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち本発明は下記の発明を提供するものである。
(1) 木材及び/または非木材由来のパルプを有効成分とする混合飼料用の嵩減少材。
(2) 前記の混合飼料の水分含有量が35.0質量%以上である(1)に記載の嵩減少材。
(3) 木材及び/または非木材由来のパルプを混合飼料に対して2.3質量%以上添加することを特徴とする(1)または(2)に記載の嵩減少材。
(4) 前記のパルプがクラフトパルプである、(1)~(3)のいずれか一項に記載の嵩減少材。
(5) (1)~(4)のいずれか1項に記載の嵩減少材を含む混合飼料。
(6)(5)に記載の牛用混合飼料。
(7) 水分含有量が35.0質量%以上である混合飼料に、木材及び/または非木材由来のパルプを有効成分とする混合飼料の嵩減少材を含有させることにより、混合飼料の嵩密度を減少させる方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、混合飼料の嵩を減少させ栄養および/または繊維の重量体積濃度を高められる嵩減少材を提供することができる。パルプは微細繊維の複合体であり、構造体の内部に水分を保持することができるため、混合飼料中の水分を給水して混合飼料の嵩を減少させることができる。また、脱リグニンされたクラフトパルプは繊維でありながらルーメン内で高い消化率を示すため、容量あたりのTDNとNDFをさらに高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の嵩減少材は、家畜用の混合飼料に適用される。家畜としては、例えば、馬、乳牛及び肥育牛などの牛、羊、山羊などが挙げられる。本発明の嵩減少材を含む混合飼料を家畜に給与する時期、すなわち適用対象である家畜の年齢、体格、健康状態等には特に制限はない。
【0014】
本発明の嵩減少材の原料としては、例えば木材、パルプ(例:木材および/または非木材由来のパルプ、リンターパルプ、リネンパルプ、ラグパルプ、古紙パルプ)などが挙げられ特に限定されるものではないが、原料の種類によらずに、安定的に高純度のセルロースおよび/またはヘミセルロースが得られること、貯蔵性に優れていることから、木材および/または非木材由来のパルプを使用することが好ましい。また、木材および/または非木材由来パルプを原料として用いることにより、間伐材をはじめとする未利用の国産原料のうち食糧と競合しない原料を選んで使用するなどにより、環境問題の解決にもつなげることが期待される。
【0015】
本発明の飼料において好ましい原料は、木材および/または非木材由来のパルプである。木材としては、例えば、広葉樹、針葉樹、雑木、タケ、ケナフ、バガス、パーム油搾油後の空房が使用できる。具体的には、広葉樹としては、ブナ、シナ、シラカバ、ポプラ、ユーカリ、ナラ、イタヤカエデ、センノキ、ニレ、キリ、ホオノキ、ヤナギ、セン、ウバメガシ、コナラ、クヌギ、トチノキ、ケヤキ、ミズメ、ミズキ、アオダモ等が例示される。針葉樹としては、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、ネズコ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、ヒノキ、イチイ、イヌガヤ、トウヒ、イエローシーダー(ベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファー(ベイマツ)、シトカスプルース(ベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンヘムロック、タマラック等が例示される。
【0016】
また、前記非木材としては、例えば、ワラ、バガス、タケ等が例示される。
【0017】
木材および/または非木材由来パルプの製造方法は、特に限定されるものではないが、通常製紙業界で用いられている、クラフト法、サルファイト法などの方法が好ましい。また、クラフト法、サルファイト法などの方法によって製造されたパルプをそのまま用いてもよいし、漂白等の後処理を行ったものを使用することも可能である。
【0018】
クラフト法は、硫酸ナトリウムを用いて蒸解する方法である。クラフト法では、ほとんどの種類の木材、ワラ、バガス、タケ等の非木材を原料として使用することが出来る。また、チップの品質や木皮の混入などの影響も少なく、木材あるいは非木材を構成しているセルロースおよびヘミセルロース以外の主成分であるリグニンをほとんど除去することができる。
【0019】
木材チップからクラフトパルプを製造する場合、木材チップは蒸解液と共に蒸解釜へ投入され、クラフト蒸解に供する。また、MCC、EMCC、ITC、Lo-solidなどの修正クラフト法の蒸解に供しても良い。また、1ベッセル液相型、1ベッセル気相/液相型、2ベッセル液相/気相型、2ベッセル液相型などの蒸解型式なども特に限定はない。すなわち、本願のアルカリ性水溶液を含浸し、これを保持する工程は、従来の蒸解液の浸透処理を目的とした装置や部位とは別個に設置してもよい。好ましくは、蒸解を終えた未晒パルプは蒸解液を抽出後、ディフュージョンウォッシャーなどの洗浄装置で洗浄する。木材チップと薬液の液比は、例えば、1.0~5.0L/kgとすることができ、1.5~4.5L/kgが好ましく、2.0~4.0L/kgがさらに好ましい。
【0020】
また、本発明においては、キノン化合物を含むアルカリ性蒸解液を蒸解釜に添加してもよい。キノン化合物を含むアルカリ性蒸解液を添加する場合は絶乾チップ当たり0.01~1.5質量%が好ましい。キノン化合物の添加量が0.01質量%未満であると添加量が少なすぎて蒸解後のパルプのカッパー価が低減されず、カッパー価とパルプ収率の関係が改善されない。さらに、粕の低減、粘度の低下の抑制も不十分である。また、キノン化合物の添加量が1.5質量%を超えてもさらなる蒸解後のパルプのカッパー価の低減、及びカッパー価とパルプ収率の関係の改善は認められない。
【0021】
使用されるキノン化合物はいわゆる公知の蒸解助剤としてのキノン化合物、ヒドロキノン化合物又はこれらの前駆体であり、これらから選ばれた少なくとも1種の化合物を使用することができる。これらの化合物としては、例えば、アントラキノン、ジヒドロアントラキノン(例えば、1,4-ジヒドロアントラキノン)、テトラヒドロアントラキノン(例えば、1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、1,2,3,4-テトラヒドロアントラキノン)、メチルアントラキノン(例えば、1-メチルアントラキノン、2-メチルアントラキノン)、メチルジヒドロアントラキノン(例えば、2-メチル-1,4-ジヒドロアントラキノン)、メチルテトラヒドロアントラキノン(例えば、1-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン、2-メチル-1,4,4a,9a-テトラヒドロアントラキノン)等のキノン化合物であり、アントラヒドロキノン(一般に、9,10-ジヒドロキシアントラセン)、メチルアントラヒドロキノン(例えば、2-メチルアントラヒドロキノン)、ジヒドロアントラヒドロアントラキノン(例えば、1,4-ジヒドロ-9,10-ジヒドロキシアントラセン)又はそのアルカリ金属塩等(例えば、アントラヒドロキノンのジナトリウム塩、1,4-ジヒドロ-9,10-ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩)等のヒドロキノン化合物であり、アントロン、アントラノール、メチルアントロン、メチルアントラノール等の前駆体が挙げられる。これら前駆体は蒸解条件下ではキノン化合物又はヒドロキノン化合物に変換する可能性を有している。
【0022】
蒸解液は、対絶乾木材チップ重量当たりの活性アルカリ添加率(AA)を10~35質量%とすることが好ましい。活性アルカリ添加率が10質量%未満であるとリグニンやヘミルロースの除去が不十分となり、35質量%を超えると収率の低下や品質の低下が起こる。ここで活性アルカリ添加率とは、NaOHとNa2Sの合計の添加率をNa2Oの添加率として換算したもので、NaOHには0.775を、Na2Sには0.795を乗じることでNa2Oの添加率に換算できる。また、硫化度は20~35%の範囲が好ましい。硫化度20%未満の領域においては、脱リグニン性の低下、パルプ粘度の低下、粕率の増加を招く。
【0023】
クラフト蒸解は、120~180℃の温度範囲で行うことが好ましく、140~160℃がより好ましい。温度が低すぎると脱リグニン(カッパー価の低下)が不十分である一方、温度が高すぎるとセルロースの重合度(粘度)が低下する。また、本発明における蒸解時間とは、蒸解温度が最高温度に達してから温度が下降し始めるまでの時間であるが、蒸解時間は、60分以上600分以下が好ましく、120分以上360分以下がさらに好ましい。蒸解時間が60分未満ではパルプ化が進行せず、600分を超えるとパルプ生産効率が悪化するために好ましくない。
【0024】
また、本発明におけるクラフト蒸解は、Hファクター(Hf)を指標として、処理温度及び処理時間を設定することができる。Hファクターとは、蒸解過程で反応系に与えられた熱の総量を表す目安であり、下記の式によって表わされる。Hファクターは、チップと水が混ざった時点から蒸解終了時点まで時間積分することで算出する。Hファクターとしては、300~2000が好ましい。
【0025】
Hf=∫exp(43.20-16113/T)dt
[式中、Tはある時点の絶対温度を表す]
本発明においては、蒸解後得られた未漂白(未晒)パルプは、必要に応じて、種々の処理に供することができる。例えば、クラフト蒸解後に得られた未漂白パルプに対して、漂白処理を行うことができる。
【0026】
クラフト蒸解で得られたパルプについて、酸素脱リグニン処理を行うことができる。本発明に使用される酸素脱リグニンは、公知の中濃度法あるいは高濃度法がそのまま適用できる。中濃度法の場合はパルプ濃度が8~15質量%、高濃度法の場合は20~35質量%で行われることが好ましい。酸素脱リグニンにおけるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。
【0027】
酸素脱リグニン処理の反応条件は、特に限定はないが、酸素圧は3~9kg/cm2、より好ましくは4~7kg/cm2、アルカリ添加率はパルプ絶乾重量当たり0.5~4質量%、処理温度80~140℃、処理時間20~180分、この他の条件は公知のものが適用できる。なお、本発明において、酸素脱リグニン処理は、複数回行ってもよい。また、酸素脱リグニン処理などを施した後のクラフトパルプのカッパー価は5~15であることが好ましい。
【0028】
さらなるカッパー価の低下、白色度の向上を目的とする場合、酸素脱リグニン処理が施されたパルプは、例えば、次いで洗浄工程へ送られ、洗浄後、多段漂白工程へ送られ、多段漂白処理を行うことができる。本発明の多段漂白処理は、特に限定されるものではないが、酸(A)、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)、過酸等の公知の漂白剤と漂白助剤を組み合わせるのが好適である。例えば、多段漂白処理の初段は二酸化塩素漂白段(D)やオゾン漂白段(Z)を用い、二段目にはアルカリ抽出段(E)や過酸化水素段(P)、三段目以降には、二酸化塩素や過酸化水素を用いた漂白シーケンスが好適に用いられる。三段目以降の段数も特に限定されるわけではないが、エネルギー効率、生産性等を考慮すると、合計で三段あるいは四段で終了するのが好適である。また、多段漂白処理中にエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段を挿入してもよい。
【0029】
本発明においては、カナダ標準濾水度(CSF)が300ml以上のクラフトパルプを使用することが好ましい。反芻動物のルーメンにおける消化速度を緩やかにし、ルーメンにおける反芻を促進するような飼料を製造することが可能になる。好ましい態様において、本発明に用いるクラフトパルプのカナダ標準濾水度は450ml以上であり、500ml以上や550ml以上としてもよい。一般に、クラフトパルプのカナダ標準濾水度は、公知の方法によって低下させることができる。
【0030】
本発明の飼料は、他の飼料と併せて反芻動物に給与することができる。他の飼料成分としては、粗飼料(例えば牧草)、濃厚飼料(例えば、トウモロコシ、麦などの穀類、大豆などの豆類)、ふすま、米糠、おから、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラルなどや添加剤(保存料、着色料、香料等)、等が挙げられる。これらの他の飼料成分は圧縮成型を行う際に、木材パルプに混合させてもよい。
【0031】
本発明の飼料に濃厚飼料を配合する場合、例えば、とうもろこし、米、小麦、大麦、えん麦、マイロなどの穀物を用いることができる。また、粗蛋白質飼料を配合してもよい。粗蛋白質飼料の原料としては、例えば、大豆、大豆粕(加糖加熱処理又は加湿加熱処理等を施した大豆粕を含む)、菜種粕、アマニ粕、コーングルテンミール、濃縮大豆蛋白、小麦グルテン、小麦グルテン酵素分解物などを挙げることができる。特に、大豆粕などの大豆由来粗蛋白質供給原料(ただし、加糖加熱処理又は加湿加熱処理を施したものを除く)は、溶解性蛋白質を多く給与してルーメン内での繊維の消化率を高め、子牛の成育を向上させるといった観点や、DDGS等の粗脂肪の含有量が比較的高いNDF供給原料などの配合により飼料中の粗脂肪の含有量が過度に多くなるのを抑制するため、飼料に配合することが好ましい。
【0032】
本発明においては、飼料に糖類を配合してもよく、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、及びマルトースなどを好適に配合することができる。
【0033】
本発明の飼料は、上述した原料の他に、呈味料、ミネラル、ビタミン、有機ミネラル、牧草、イネ科の植物の飼料原料、結晶アミノ酸、油脂、脂肪酸、脂肪酸カルシウム、吸着材、鉱物、植物抽出物、発酵物、着香料、有機酸、抗生物質、動物質性飼料、微生物成分、漢方薬、酵素剤、オリゴ糖、木質系飼料、粘結剤、他の植物体加工副産物などを含んでもよい。
【0034】
牧草としては、例えば、オーチャードグラス、チモシー、オーツヘイ、アルファルファ、イタリアンライグラス、アカクローバー等を挙げることができ、イネ科の植物に由来する飼料原料としては、例えば、ソルガム、小麦ストロー、稲わら等を挙げることができる。もっとも、牧草やイネ科の植物に由来する飼料原料は、例えば、生後3ヶ月齢以下の子牛にとっては消化が容易でないので、ルーメンの胃壁を刺激する目的で必要に応じて粗飼料として供給し、本発明の飼料成形物を子牛に給与する場合には、含有させないか、含有させるとしても少量とすることが好ましい。
【0035】
本発明の嵩減少材はそのまま混合飼料調製の際に添加することができる。本発明の嵩減少材は混合飼料あたり2.3質量%以上含有するようにする。2.3質量%未満の場合、目的とする嵩の減少効果を得ることができない。本発明の嵩減少材の含有量は混合飼料あたり50.0質量%未満が好ましい。含有量が50.0質量%以上の場合、家畜の混合飼料の摂取量が減少することがある。
【0036】
本発明の嵩減少材を添加する混合飼料の水分含有率は35質量%以上が望ましい。混合飼料の水分含有率が35質量%未満だと、目的とする嵩の減少効果を得ることができない。本発明の嵩減少材を添加する混合飼料の水分含有率は90質量%未満が好ましい。混合飼料の水分含有率が90質量%以上だと、混合飼料から液垂れが発生し、保管および輸送時の作業効率が悪くなる。
【0037】
本発明の嵩減少材を添加する混合飼料の原料の乾物配合比率は、通常はサイレージ0~50質量%、濃厚配合飼料0~70質量%、乾草0~50質量%、食品加工副産物(ビール粕やおからなど)0~80質量%、トウモロコシなどの穀類飼料0~50質量%などを基本構成として、その他栄養成分を添加し、さらに上記した木材および/または非木材由来パルプを2.3~50質量%添加し、チョッパーやミキサーを用いて粗繊維性加工飼料や濃厚飼料を牛が、選び食いができなくなるまで細かく裁断しながら混合する。こうして裁断混合した混合飼料は、そのまま牛に給餌するか、あるいはポリエチレン製の袋に軽度に脱気しながら密封し、一時保管する。また、TMRセンターから酪農家に配送する。具体的な配合比率は、酪農家やTMRセンターが独自に処方する。
【0038】
本発明の飼料の形状は特に限定されないが、製造や取扱い等の容易さなどの点から、粉状又は粒状であることが好ましい。
【0039】
本発明の飼料の用量については、対象動物の種類、年齢、性別、健康状態等に応じて適宜設定し得る。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実験例によって何ら限定されるものではない。なお、本明細書において、濃度や%は特に断らない限り重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0041】
[実施例1]
直径(Φ)が25.4mm~9.5mmのユーカリ材チップ(絶乾300g相当)を耐圧釜に入れ、活性アルカリ添加率14%、硫化度25%、Hファクター830、液比2.5の条件にてクラフト蒸解を行って広葉樹未晒クラフトパルプ(カッパー価:17.4、ISO白色度:34.8%)を得た。この広葉樹未晒クラフトパルプを水道水で洗浄し、濃度10%に調整後、酸素添加率2.1%(絶乾パルプ重量当たり)、水酸化ナトリウム1.4%(絶乾パルプ重量当たり)、100℃、60分にて酸素脱リグニン処理を行い、広葉樹酸素脱リグニンクラフトパルプ(LOKP、カッパー価:11.8、ISO白色度:53.6%)を得た。
表1に示す配合の混合飼料を調製し、水分を35質量%に調整した。JIS Z 8807:2012に定められる比重瓶による密度及び比重の測定方法によって嵩比重を測定した。試験に用いた飼料原料のNDFおよび一般成分は飼料分析基準(平成20年4月1日・19消安第14729号 農林水産省消費・安全局長通知)に則り測定した。また、飼料原料のTDNはNRC乳牛飼養標準 2001年のTDN推定式により推定した。混合飼料のTDNとNDFは各飼料の分析値と配合率から算出した。結果を表2に示した。
【0042】
[実施例2]~[実施例3]
実施例1で製造した広葉樹酸素脱リグニンクラフトパルプを用い、表1に示す配合の混合飼料を調製し、嵩比重、TDN、NDFを測定し、結果を表2に示した。
【0043】
[実施例4]
実施例1で製造した広葉樹酸素脱リグニンクラフトパルプを用い、表1に示す配合の混合飼料を調製し、さらに水分を50質量%に調整し、嵩比重、TDN、NDFを測定し、結果を表2に示した。
【0044】
[比較例1]
広葉樹酸素脱リグニンクラフトパルプを添加しないで、表1に示す配合の混合飼料を調製し、嵩比重、TDN、NDFを測定し、結果を表2に示した。
【0045】
[比較例2]
広葉樹酸素脱リグニンクラフトパルプに替えてビートパルプを用い、表1に示す配合の混合飼料を調製し、嵩比重、TDN、NDFを測定し、結果を表2に示した。
【0046】
[比較例3]
広葉樹酸素脱リグニンクラフトパルプを添加しないで、表1に示す配合の混合飼料を調製し、水分を50質量%に調整し、嵩比重、TDN、NDFを測定し、結果を表2に示した。
【0047】
【0048】
【0049】
表2に示すように、木材クラフトパルプを添加した実施例1~4では、添加していない比較例1~3と比較して嵩比重が増加し、TDN密度とNDF密度が増加した。