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特許7310492フタロシアニン顔料、着色組成物及びカラーフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】フタロシアニン顔料、着色組成物及びカラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20230711BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230711BHJP
   C09B 47/10 20060101ALI20230711BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20230711BHJP
   C09B 67/22 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G03F7/004 505
C09B47/10 CSP
C09B67/20 G
C09B67/22 F
C09B67/22 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019174826
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021051233
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】718000495
【氏名又は名称】東洋ビジュアルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平佐 美幸
(72)【発明者】
【氏名】高井 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏明
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0094141(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0082591(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0083541(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0082588(KR,A)
【文献】国際公開第2017/141860(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G03F 7/004
C09B 47/10
C09B 67/20
C09B 67/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフタロシアニン顔料。

一般式(1)
【化1】

[式中、X~X16はそれぞれ独立に塩素原子、臭素原子、または水素原子を表し、XおよびXのうち少なくとも一つが塩素原子であり、XおよびXのうち少なくとも一つが塩素原子であり、X10およびX11のうち少なくとも一つが塩素原子であり、X14およびX15のうち少なくとも一つが塩素原子であり、かつX~X16のうち、平均値で2個以上8個未満が臭素原子である。
Zは-OP(=O)Rを表し、ここでRおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、または、置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R、Rが互いに結合して環を形成しても良い。]
【請求項2】
着色剤、バインダー樹脂、および有機溶剤を含有する着色組成物であって、該着色剤が、請求項記載のフタロシアニン顔料を含有する着色組成物。
【請求項3】
さらに樹脂型分散剤を含有することを特徴とする請求項記載の着色組成物。
【請求項4】
さらに黄色色素を含有することを特徴とする請求項または記載の着色組成物。
【請求項5】
黄色色素が、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー185、及び、下記一般式(3)で表されるキノフタロン顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項記載の着色組成物。

一般式(3)
【化10】

[一般式(3)中、R~R13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルコキシル基または置換基を有しても良いアリール基を表す。ただし、R~Rのうち少なくとも1つの隣接した一組の基、及び/又は、R10~R13のうち少なくとも1つの隣接した一組の基は、一体となって、置換基を有してもよい芳香環を形成する。]
【請求項6】
さらに光重合性単量体および/または光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項いずれかに記載の着色組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの赤色フィルタセグメント、少なくとも1つの緑色フィルタセグメントおよび少なくとも1つの青色フィルタセグメントを備えるカラーフィルタにおいて、少なくとも1つの緑色フィルタセグメントが、請求項いずれか一項に記載の着色組成物により形成されてなるカラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、新規なフタロシアニン顔料とその製造方法に関する。また、別の実施形態は、上記フタロシアニン顔料を含む着色組成物、および上記着色組成物から形成されるカラーフィルタに関する。上記カラーフィルタは、カラー液晶表示装置、有機EL表示装置、カラー撮像管素子等に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置に用いられているカラーフィルタの上には、一般に液晶を駆動させるための透明電極が、蒸着あるいはスパッタリングにより形成され、さらにその上に液晶を一定方向に配向させるための配向膜が形成されている。これらの透明電極及び配向膜の性能を充分に得るには、その形成工程を一般に200℃以上、好ましくは230℃以上の高温で行う必要があり、カラーフィルタには耐熱性が要求される。
【0003】
また、液晶表示装置の表示性能を表す指標として電圧保持率が挙げられる。液晶は極めて絶縁性の高い材料であり、カラーフィルタ用着色組成物中に残存する極性化合物が液晶セル中に溶出すると、電極間の電圧は低下し、電圧保持率の低下を招き、表示ムラの発生、配向不良等を生じ、液晶表示装置としての性能を低下させる原因となる。そのため、カラーフィルタ用着色組成物には、液晶への非溶解性が要求される。
【0004】
カラーフィルタに要求される重要な品質項目としては、コントラスト比と明度が挙げられる。コントラスト比が低いカラーフィルタを用いると、液晶が制御した偏光度合いを乱してしまい、光を遮断しなければならないとき(OFF状態)に光が漏れたり、光を透過しなければならないとき(ON状態)に透過光が減衰したりするため、ぼやけた画面となってしまう。そのため高品質な液晶表示装置を実現するためには、コントラスト比を高めることが不可欠である。また、明度が低いカラーフィルタを用いると、光の透過率が低いため、暗い画面となってしまい、明るい画面とするためには、光源であるバックライトの数を増量する必要がある。しかし、消費電力を抑制する観点から、カラーフィルタの高明度化がトレンドとなっている。
【0005】
さらに、カラー液晶表示装置や有機EL表示装置の高画質化の観点から、カラーフィルタに対してAdobeRGB規格、DCI規格、及びBT2020規格のような高色域化への要求も高まっている。高色域化の要求に答えるための方法として、カラーフィルタ中の着色剤の濃度を上げるか、着色力が優れている着色剤を選定することが挙げられる。着色剤の濃度を上げる場合は、パターン直線性や形状の悪化などフォトリソ適性が悪化するため、着色剤自体の着色力を向上することが望まれている。基本的に高色域化と光学特性(明度・コントラスト比)はトレードオフの関係にあり、トレードオフを解消する着色組成物の開発が望まれている。
【0006】
緑色フィルタセグメントの形成に用いられる着色剤は、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントレッド58の緑色顔料と、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー185の黄色顔料を併用することが一般的であるが、広色域化、明度、コントラスト比の要求に十分応えられていないのが現状である。より高い明度と広い色再現領域を達成するために、特許文献1~2においては、臭素や塩素、水素の原子数を規定したハロゲン化亜鉛フタロシアニンの提案がなされている。また、特許文献3~4には、緑色色素として、アルミニウムフタロシアニン顔料を用いたカラーフィルタ用組成物が開示されている。
【0007】
しかしながら、高明度かつ高コントラスト比であって、広色域化を達成するカラーフィルタを得るためには、これら先行技術だけでは未だ不十分であり、更なる改善が必要となっている。また、広色域化に伴って、耐熱性等の信頼性、電圧保持率、パターン形状等のフォトリソ適性の難易度も上がるため、要求項目すべてを十分に達成できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-070343号公報
【文献】特開2007-284589号公報
【文献】特開2012-155231号公報
【文献】特開2016-153481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、粘度が低く、耐熱性に優れたフタロシアニン顔料及びそれを用いた着色組成物を提供し、かつカラーフィルタ等に使用した際に色特性(明度)とコントラスト比、着色力に優れ、電気特性が良好な、フタロシアニン顔料およびそれを用いた着色組成物を提供することである。また、その着色組成物を用いた高品質のカラーフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、芳香環の特定の位置に塩素原子を導入した新規なアルミニウムフタロシアニンが上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表されるフタロシアニン顔料に関する。

一般式(1)
【化1】

[式中、X~X16はそれぞれ独立に塩素原子、臭素原子、水素原子を表し、XおよびXのいずれかが塩素原子であり、XおよびXのいずれかが塩素原子であり、X10およびX11のいずれかが塩素原子であり、X14およびX15のいずれかが塩素原子であり、かつX~X16のうち少なくとも一つは臭素原子である。
Zは-OP(=O)Rを表し、ここでRおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、または、置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R、Rが互いに結合して環を形成しても良い。]
【0012】
また、本発明は、フタロシアニン化合物のX~X16のうち、平均値で2~8個が臭素原子である上記フタロシアニン顔料に関する。
【0013】
また、本発明は、着色剤、バインダー樹脂、および有機溶剤を含有する着色組成物であって、該着色剤が、上記フタロシアニン顔料を含有する着色組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、さらに樹脂型分散剤を含有することを特徴とする上記着色組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、さらに黄色色素を含有することを特徴とする上記着色組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、黄色色素が、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー185、及び、下記一般式(3)で表されるキノフタロン顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記着色組成物に関する。
【0017】
一般式(3)
【化10】

[一般式(3)中、R~R13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルコキシル基または置換基を有しても良いアリール基を表す。ただし、R~Rのうち少なくとも1つの隣接した一組の基、及び/又は、R10~R13のうち少なくとも1つの隣接した一組の基は、一体となって、置換基を有してもよい芳香環を形成する。]
【0018】
また、本発明は、さらに光重合性単量体および/または光重合開始剤を含有することを特徴とする上記着色組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、少なくとも1つの赤色フィルタセグメント、少なくとも1つの緑色フィルタセグメントおよび少なくとも1つの青色フィルタセグメントを備えるカラーフィルタにおいて、少なくとも1つの緑色フィルタセグメントが、上記着色組成物により形成されてなるカラーフィルタに関する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のカラーフィルタ用着色組成物を構成する各成分について詳述する。なお、本願における「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。なお、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/またはメタクリロイル」、「アクリル及び/またはメタクリル」、「アクリル酸及び/またはメタクリル酸」、「アクリレート及び/またはメタクリレート」、及び「アクリロイルオキシ及び/またはメタクリロイルオキシ」を表すものとする。
【0021】
本発明のフタロシアニン顔料は、下記一般式(1)で表され、着色組成物に用いられる着色剤として用いることができる。
【0022】
一般式(1)
【化11】


[式中、X~X16はそれぞれ独立に塩素原子、臭素原子、水素原子を表し、XおよびXのうち少なくとも一つが塩素原子であり、XおよびXのうち少なくとも一つが塩素原子であり、X10およびX11のうち少なくとも一つが塩素原子であり、X14およびX15のうち少なくとも一つが塩素原子であり、かつX~X16のうち少なくとも一つは臭素原子である。
Zは-OP(=O)Rを表し、ここでRおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、または、置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R、Rが互いに結合して環を形成しても良い。]
【0023】
本発明におけるフタロシアニン顔料の、「XおよびXのいずれかが塩素原子」、「XおよびXのいずれかが塩素原子」、「X10およびX11のいずれかが塩素原子」及び「X14およびX15のいずれかが塩素原子」とは、フタロシアニン顔料の4つの芳香環それぞれのβ位に1つの塩素原子を導入したアルミニウムフタロシアニンのことである。
【0024】
「フタロシアニン顔料の4つの芳香環それぞれのβ位に1つの塩素原子を導入した」とは、たとえば以下のような構造のものを指す。
【0025】
【化12】
【0026】
フタロシアニン顔料の4つの芳香環それぞれのβ位に1つの塩素原子を導入したアルミニウムフタロシアニンの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、4-クロロフタロニトリルを原料に用い得ることができる。
【0027】
<フタロシアニン顔料の製造方法>
本発明の一般式(1)で表されるフタロシアニン顔料の製造方法を説明する。4つの芳香環それぞれのβ位に1つの塩素原子を導入したアルミニウムフタロシアニンを合成した後、公知の方法により臭素化し、加水分解することで下記一般式(2)で表される化合物が得られる。
続いて、一般式(2)で表されるフタロシアニン顔料と、HOP(=O)Rで表される酸性化合物とを反応させることで、所望とする置換基を有するフタロシアニン顔料を得ることができる。上記酸性化合物におけるR、Rは、一般式(1)におけるR、Rとそれぞれ同義である。
【0028】
一般式(2)
【化13】

[式中、nは臭素の置換数の平均値を表し、1以上12以下の範囲である。フタロシアニン環に結合している塩素原子の位置についてはβ位であれば、他の構造をとっていてもよい。]
【0029】
臭素化の方法としては、例えば“The Phthalocyanines Volume II Manufacture and Applications”(CRC Press,Inc.、1983年)等に記載されているクロルスルホン酸法、溶融法等の方法で製造することができる。
【0030】
クロルスルホン酸法としては、フタロシアニン顔料を、クロロスルホン酸、硫酸等の硫黄酸化物系の溶媒に溶解し、これにハロゲン化剤を仕込みハロゲン化する方法が挙げられる。この際の反応は、温度20~120℃で行うのが好ましく、1~10時間の範囲で行うのが好ましい。
【0031】
溶融法としては、例えば、特開昭51-64534号公報(米国特許第4077974号明細書)にある様に、塩化アルミニウム、臭化アルミニウムの様なハロゲン化アルミニウム、四塩化チタンの様なハロゲン化チタン、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等の様なアルカリ金属ハロゲン化物またはアルカリ土類金属ハロゲン化物〔以下、アルカリ(土類)金属ハロゲン化物という〕、塩化チオニル等、各種ハロゲン化剤の一種または二種以上の混合物からなる10~170℃程度の溶融物中で、フタロシアニン顔料をハロゲン化する方法が挙げられる。
【0032】
臭素化剤としては、臭素(Br)、N-ブロモスクシンイミド、硫酸銀-臭素、テトラメチルアンモニウムトリブロマイド、トリフルオロアセチルハイポブロマイト、ジブロモイソシアヌル酸、2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサ-2,5-ジエンオン、臭化水素-ジメチルスルホキシド、N-ブロモスクシンイミド-ジメチルホルムアミド、2,4-ジアミノー1,3-チアゾールハイドロトリブロマイド、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインなどが挙げられる。臭素数は、臭素化工程での臭素源の添加量により、調整することが可能である。
【0033】
本発明のフタロシアニン顔料は、塩素の置換基数を特定しつつ、さらに当該塩素を特定の位置に有することで、ハロゲン分布が狭くなり、結果として分光の分布が狭く、高着色力な着色組成物を得ることができる。また、塩素と臭素の位置を限定しない塩素化臭素化アルミニウムフタロシアニンよりも対称性が上がることで、電気特性が良好になる。
【0034】
一般式(1)における臭素原子の置換基数の平均値は1以上12以下である。中でも2以上8未満の場合、所望とする諸特性を得ることが容易となる。さらに、着色力と明度の観点から3~6がより好ましい。
【0035】
1およびR2におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-オクチル基、ステアリル基、2-エチルへキシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられ、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
置換基を有するアルキル基の置換基としては、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子、メトキシ基等のアルコキシル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ニトロ基等が挙げられる。また、置換基は、複数あっても良い。したがって、置換基を有するアルキル基としては、例えば、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2-エトキシエチル基、2-ブトキシエチル基、2-ニトロプロピル基、べンジル基、4-メチルべンジル基、4-tert-ブチルべンジル基、4-メトキシべンジル基、4-ニトロべンジル基、2,4-ジクロロべンジル基等が挙げられる。
【0036】
1およびR2におけるアリール基としては、フェニル基、p-トリル基等の単環芳香族炭化水素基や、ナフチル基、アンスリル基等の縮合芳香族炭化水素基が挙げられ、単環芳香族炭化水素基が好ましい。また、炭素数6~12のアリール基が好ましい。
置換基を有するアリール基の置換基としては、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子、アルコキシル基、アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。また、置換基は、複数あっても良い。したがって、置換基を有するアリール基としては、例えば、p-ブロモフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-メトキシフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-ジメチルアミノフェニル基、2-メチル-4-クロロフェニル基、4-メトキシ-1-ナフチル基、6-メチル-2-ナフチル基、4,5,8-トリクロロ-2-ナフチル基、アントラキノニル基等が挙げられる。
【0037】
1およびR2におけるアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3-ジメチル-3-ペンチルオキシ基、n-へキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、ステアリルオキシ基、2-エチルへキシルオキシ基等の直鎖又は分岐アルコキシル基が挙げられ、炭素数1~6のアルコキシル基が好ましい。
置換基を有するアルコキシル基の置換基としては、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子、アルコキシル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ニトロ基が挙げられる。また、置換基は、複数あっても良い。したがって、置換基を有するアルコキシル基としては、例えば、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、2,2-ジトリフルオロメチルプロポキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-ブトキシエトキシ基、2-ニトロプロポキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0038】
1およびR2におけるアリールオキシ基としては、フェノキシ基、p-メチルフェノキシ基等の単環芳香族炭化水素基からなるアリールオキシ基や、ナフタルオキシ基、アンスリルオキシ基等の縮合芳香族炭化水素基からなるアリールオキシ基が挙げられ、単環芳香族炭化水素基からなるアリールオキシ基が好ましい。また、炭素数6~12のアリールオキシ基が好ましい。
置換基を有するアリールオキシ基の置換基としては、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。また、置換基は、複数あっても良い。したがって、置換基を有するアリールオキシ基としては、例えば、p-ニトロフェノキシ基、p-メトキシフェノキシ基、2,4-ジクロロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、2-メチル-4-クロロフェノキシ基等が挙げられる。
【0039】
一般式(1)で表されるフタロシアニン顔料としては、分散性や色特性の観点から、R1、R2のうちの少なくとも1つが、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアリールオキシ基であることが好ましく、R1およびR2がいずれもアリール基、またはアリールオキシ基であることがより好ましく、R1およびR2がいずれもフェニル基またはフェノキシ基であることがさらに好ましい。
一般式(1)におけるZの代表的な例として、下記に示す構造が挙げられるが(*は、一般式(1)中のAlとの置換基の結合位置を表す)、本発明は、これらに限定されるものではない。また例示化合物の環化異性体も本発明の好ましい例として含まれる。
【0040】
【化3】
【0041】
本発明のフタロシアニン顔料の好ましい態様としては、Zが、-OP(=O)(OC652であるものが挙げられる。このフタロシアニン顔料は、顔料としての性質を有し、着色剤、特に緑色着色剤として好適に用いることができる。
【0042】
また、一般式(2)で表されるフタロシアニンは、顔料としての性質を有するため、一般式(1)で表されるフタロシアニン顔料と併用してもよい。一般式(1)で表されるフタロシアニン顔料の出発原料である、一般式(2)で表されるフタロシアニンは、上記酸性化合物との反応効率を向上させるために、反応に先だって、アシッドペースティング法やソルベントソルトミリング法等の方法によって、一般式(2)で表されるフタロシアニンの微細化を行うことが望ましい。一般式(2)で表されるフタロシアニンを予め微細化することによって、それを使用して製造されるフタロシアニン顔料も微細な状態で得ることが容易となる。このように微細化したフタロシアニン顔料を着色組成物として用いた場合、高い明度および高いコントラストを得ることが容易となる。
【0043】
また、一般式(2)で表されるフタロシアニンと上記酸性化合物との反応は、例えば、有機溶媒中で混合撹拌することで進行させることができる。次いで、上記有機溶剤を除去することによって、所望とするフタロシアニン顔料を得ることができる。
【0044】
フタロシアニン顔料の製造の際に用いられる有機溶媒としては、例えば、以下が挙げられる。
メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノールに代表される一価のアルコール系溶媒、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、もしくはトリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール系溶媒、
1-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、2-ピロリジノン、ε-カプロラクタム、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、尿素、もしくはテトラメチル尿素等のようなアミド系溶媒、
その他、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、もしくはトリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級モノアルキルエーテル系溶媒、
エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、もしくはトリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)等のポリエーテル系溶媒、
スルホラン、ジメチルスルホキシド、もしくは3-スルホレン等の含イオウ系溶媒、
ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能系溶媒、
酢酸、マレイン酸、ドコサヘキサエン酸、トリクロロ酢酸、もしくはトリフルオロ酢酸等のカルボン酸系溶媒、
メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロスルホン酸等のスルホン酸系溶媒、
ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等。
一実施形態において、リン酸ジフェニルの溶解が良好であることから、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価のアルコール系溶媒や、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリジノン等の非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。これらの有機溶媒は、単独で、若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
反応終了後に有機溶媒を除去する方法としては、業界公知の方法を用いることができる。一実施形態として、吸引濾過または加圧濾過を行った後、使用した有機溶媒と相溶性があり、かつ低沸点の有機溶媒で洗浄した後、乾燥除去することが望ましい。また、水溶性有機溶媒の場合には、水と混合した後、水洗により除去することが望ましい。
【0046】
<フタロシアニン顔料の微細化>
微細化の方法としては、アシッドペースティング法、ソルベントソルトミリング法等といった一般的な着色剤や顔料の微細化に用いられる業界公知の方法が挙げられる。
【0047】
アシッドペースティング法とは、硫酸中に顔料を加えて溶解した後、大量の水に硫酸溶液を滴下し、析出させることで微細な着色剤を得る方法である。析出させる際に使用する水の量、および温度等を最適化することにより、一次粒子径が非常に微細であり、また、分布の幅がせまく、シャープな粒度分布をもつ顔料粒子を得ることができる。
【0048】
ソルベントソルトミリング法とは、顔料と水溶性無機塩と水溶性有機溶媒との混合物を、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等の混練機を用いて、加熱しながら機械的に混練した後、水洗により水溶性無機塩と水溶性有機溶媒を除去する処理である。水溶性無機塩は、破砕助剤として働くものであり、ソルトミリング時に無機塩の硬度の高さを利用して顔料粒子が破砕される。顔料をソルトミリング処理する際の条件を最適化することにより、一次粒子径が非常に微細であり、また、分布の幅がせまく、シャープな粒度分布をもつ顔料を得ることができる。
水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等を用いることができる。価格の点から、塩化ナトリウム(食塩)を用いるのが好ましい。水溶性無機塩は、処理効率と生産効率の両面から、フタロシアニン顔料の全重量を基準(100重量%)として、50~2000重量%用いることが好ましく、300~1000重量%用いることが最も好ましい。
【0049】
水溶性有機溶媒は、顔料及び水溶性無機塩を湿潤する働きをするものであり、水に溶解(混和)し、かつ用いる無機塩を実質的に溶解しないものであれば特に限定されない。ただし、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶媒が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から、沸点120℃以上の高沸点のものが好ましい。そのような水溶性有機溶媒としては、例えば、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-(イソペンチルオキシ)エタノール、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液状のポリエチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、液状のポリプロピレングリコール等が用いられる。これら水溶性有機溶媒は、フタロシアニン顔料の全重量を基準(100重量%)として、好ましくは5~1000重量%、より好ましくは50~500重量%の範囲で用いる。
【0050】
ソルベントソルトミリング処理する際には、必要に応じて樹脂を添加してもよい。ここで、用いられる樹脂の種類は特に限定されず、天然樹脂、変性天然樹脂、合成樹脂、天然樹脂で変性された合成樹脂等を用いることができる。用いられる樹脂は、室温で固体であり、水不溶性であることが好ましく、かつ上記水溶性有機溶媒に一部可溶であることがさらに好ましい。樹脂の使用量は、フタロシアニン顔料の全重量を基準(100重量%)として、2~200重量%の範囲であることが好ましい。
【0051】
本発明のフタロシアニン顔料は、その使用用途に合わせて、2種類以上のフタロシアニン顔料を併用してもよい。この場合、別々に製造したフタロシアニン顔料同士を混合して使用しても良い。あるいは、同時に2種類以上のフタロシアニン顔料を合成又は微細化することによって製造したものを使用しても良い。
【0052】
<着色組成物>
本発明の着色組成物は、着色剤、バインダー樹脂および有機溶剤を含有し、着色剤が、一般式(1)で表されるフタロシアニン顔料を含有することを特徴とする。一実施形態において、着色組成物は、着色剤として使用する一般式(1)で表されるフタロシアニン顔料に由来する緑色の色味を有する。本発明の着色組成物は、色度調整等のために、一般式(1)で表されるフタロシアニン顔料による効果を損なわない範囲で、着色剤として、追加の色素を含んでもよい。
【0053】
<着色剤>
(緑色色素)
本発明の一実施形態において、着色組成物は、さらに色度調整するために、本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(1)で表されるフタロシアニン顔料以外の緑色色素を含有してもよい。緑色色素としては、特に制限はないが、一般的には、緑色顔料又は緑色染料が挙げられる。
【0054】
緑色顔料としては、例えばC.I.ピグメント グリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、37、45、48、50、51、54、55、58、62、63、特開2008-19383号公報、特開2007-320986号公報、特開2004-70342号公報等に記載の亜鉛フタロシアニン顔料、特許第4893859号公報等に記載のアルミニウムフタロシアニン顔料などを挙げることができるが、特にこれらに限定されない。これらの中でも、高コントラスト比、高明度を得る観点から、好ましくはC.I.ピグメント グリーン7、36、58、62、63である。
【0055】
緑色染料としては、C.I.ソルベントグリーン1、4、5、7、34、35等のC.I.ソルベント染料、C.I.アシッドグリーン1、3、5、9、16、50、58、63、65、80、104、105、106、109等のC.I.アシッド染料、C.I.ダイレクトグリーン25、27、31、32、34、37、63、65、66、67、68、69、72、77、79、82等のC.I.ダイレクト染料、C.I.モーダントグリーン1、3、4、5、10、15、26、29、33、34、35、41、43、53等のC.I.モーダント染料などが挙げられる。
【0056】
(黄色色素)
本発明の着色組成物は、さらに色度調整するために、本発明の効果を損なわない範囲で黄色色素を含有してもよい。黄色色素としては、特に制限はないが、一般的には、黄色顔料又は黄色染料が挙げられる。
【0057】
黄色顔料としては、有機または無機の顔料を、単独でまたは2種類以上混合して用いることができ、発色性が高く、且つ耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料が好ましく、通常は有機顔料が用いられる。有機顔料としては、一般に市販されているものを用いることができ、所望とするフィルタセグメントの色相に応じて、天然色素、無機顔料を併用することができる。
【0058】
以下に、上記着色組成物に使用可能な黄色有機顔料の具体例を示す。黄色顔料としては、C.I.ピグメント イエロー1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、192、193、194、196、198、199、213、214、特開2012-226110号公報に記載の一般式(3)で表されるキノフタロン系顔料等の黄色顔料を用いることができる。特にフィルタセグメントの耐熱性、耐光性、および明度の観点から、黄色色素としては、C.I.ピグメント イエロー138、139、150、185および一般式(3)で表されるキノフタロン顔料からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0059】
一般式(3)
【化6】

[一般式(3)中、R~R13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルコキシル基または置換基を有しても良いアリール基を表す。ただし、R~Rのうち少なくとも1つの隣接した一組の基、及び/又は、R10~R13のうち少なくとも1つの隣接した一組の基は、一体となって、置換基を有してもよい芳香環を形成する。]
【0060】
一般式(3)中、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0061】
また、置換基を有してもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、プチル基、イソプチル基、tert-プチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-オクチル基、ステアリル基、2-エチルへキシル基等の直鎖又は分岐アルキル基の他、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-エトキシエチル基、2-ブトキシエチル基、2-ニトロプロピル基、ペンジル基、4-メチルペンジル基、4-tert-プチルベンジル基、4-メトキシペンジル基、4-ニトロベンジル基、2,4-ジクロロベンジル基等の置換基を有するアルキル基が挙げられる。
【0062】
また、置換基を有してもよいアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソプチルオキシ基、tert-プチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3-ジメチル-3-ペントキシ、n-へキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、ステアリルオキシ基、2-エチルへキシルオキシ基等の直鎖又は分岐アルコキシル基の他、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルオキシ基、2,2-ジトリフルオロメチルプロポキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-ブトキシエトキシ基、2-ニトロプロポキシ基、ベンジルオキシ基等の置換基を有するアルコキシル基が挙げられる。
【0063】
また、置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等のアリール基の他、p-メチルフェニル基、p-ブロモフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-メトキシフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-アミノフェニル基、2-メチル-4-クロロフェニル基、4-ヒドロキシ-1-ナフチル基、6-メチル-2-ナフチル基、4,5,8-トリクロロ-2-ナフチル基、アントラキノニル基、2-アミノアントラキノニル基等の置換基を有するアリール基が挙げられる。
【0064】
黄色染料としては、アゾ染料、アゾ金属錯塩染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、チオインジゴ染料、フタロシアニン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、チアジン染料、カチオン染料、シアニン染料、ニトロ染料、キノリン染料、ナフトキノン染料、オキサジン染料が挙げられる。
【0065】
したがって、黄色染料の具体例としては、C.I.アシッド イエロー2、3、4、5、6、7、8、9、9:1、10、11、11:1、12、13、14、15、16、17、17:1、18、20、21、22、23、25、26、27、29、30、31、33、34、36、38、39、40、40:1、41、42、42:1、43、44、46、48、51、53、55、56、60、63、65、66、67、68、69、72、76、82、83、84、86、87、90、94、105、115、117、122、127、131、132、136、141、142、143、144、145、146、149、153、159、166、168、169,172、174、175、178、180、183、187、188、189、190、191、192、199等が挙げられる。
【0066】
また、C.I.ダイレクト イエロー1、2、4、5、12、13、15、20、24、25、26、32、33、34、35、41、42、44、44:1、45、46、48、49、50、51、61、66、67、69、70、71、72、73、74、81、84、86、90、91、92、95、107、110、117、118、119、120、121、126、127、129、132、133、134等も挙げられる。
【0067】
また、C.I.ベーシック イエロー1、2、5、11、13、14、15、19、21、24、25、28、29、37、40、45、49、51、57、79、87、90、96、103、105、106等が挙げられる。
【0068】
また、C.I.ソルベント イエロー2、3、4、7、8、10、11、12、13、14、15、16、18、19、21、22、25、27、28、29、30、32、33、34、40、42、43、44、45、47、48、56、62、64、68、69、71、72、73、77、79、81、82、83、85、88、89、90、93、94、98、104、107、114、116、117、124、130、131、133、135、138、141、143、145、146、147、157、160、162、163、167、172、174、175、176、177、179、181、182、183、184、185、186、187、188、190、191、192、194、195等も挙げられる。
【0069】
また、C.I.ディスパーズ イエロー1、2、3、5、7、8、10、11、13、13、23、27、33、34、42、45、48、51、54、56、59、60、63、64、67、70、77、79、82、85、88、93、99、114、118、119、122、123、124、126、163、184、184:1、202、211、229、231、232、233、241、245、246、247、248、249、250、251等が挙げられる。
【0070】
一般式(1)で表されるフタロシアニン顔料に黄色色素を併用する場合には、明度と色相の観点から、黄色色素/一般式(1)で表されるフタロシアニン顔料の質量比が90/10~10/90の範囲が好ましい。より好ましくは、80/20~20/80の範囲であり、さらに好ましくは、70/30~25/75の範囲である。
【0071】
(着色剤の微細化)
本発明の着色組成物に用いられる着色剤は、高い明度および高いコントラストを得るため、必要に応じてソルトミリング処理等により、着色剤粒子の微細化を施すことにより、カラーフィルタ用着色剤として好適に使用することができる。着色剤の体積平均一次粒子径は、着色剤担体中への分散性を高めるために、10nm以上であることが好ましい。また、コントラストが高いフィルタセグメントを得るためには、80nm以下であることが好ましい。一実施形態において、より好ましくは20~60nmの範囲であり、さらに好ましくは30~50nmの範囲である。
【0072】
ソルトミリング処理とは、「フタロシアニン顔料の微細化」の項で先に説明したソルベントソルトミリング法と同義である。
【0073】
<バインダー樹脂>
本発明の着色組成物の必須成分であるバインダー樹脂(以下、単に樹脂と記載する場合もある。)は、着色剤を分散、染色、又は浸透させるものであって、熱可塑性樹脂等が挙げられる。また、アルカリ現像型着色レジスト材の形態で用いる場合には、酸性基含有エチレン性不飽和単量体を共重合したアルカリ可溶性ビニル系樹脂を用いることが好ましい。また、さらに光感度を向上させるために、エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂を用いることもできる。
【0074】
特に側鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂をアルカリ現像型着色レジスト材に用いることで、活性エネルギー線で露光し塗膜を形成する際に、樹脂が3次元架橋されることで着色剤が固定され、耐熱性が良好になり、着色剤の熱による退色(分光特性の悪化)を抑制できる。また、現像工程においても着色剤成分の凝集・析出を抑制する効果もある。
【0075】
樹脂としては、可視光領域の400~700nmの全波長領域において分光透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂であることが好ましい。
【0076】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、着色剤を好ましく分散させるためには、2,000~80,000の範囲が好ましく、より好ましくは3,000~40,000の範囲である。また数平均分子量(Mn)は3000~40,000の範囲が好ましく、Mw/Mnの値は10以下であることが好ましい。
【0077】
樹脂をカラーフィルタ用感光性着色組成物として使用する場合には、着色剤吸着基及び現像時のアルカリ可溶基として働くカルボキシ基、着色剤担体及び溶剤に対する親和性基として働く脂肪族基及び芳香族基のバランスが、着色剤の分散性、浸透性、現像性、さらには耐久性にとって重要であり、酸価20~300mgKOH/gの樹脂を用いることが好ましい。酸価が、20mgKOH/g未満では、現像液に対する溶解性が悪く、微細パターン形成するのが困難である場合がある。300mgKOH/gを超えると、微細パターンが残らなくなる場合がある。
【0078】
樹脂は、成膜性及び諸耐性が良好なことから、着色剤の全質量100質量部に対し、20質量部以上の量で用いることが好ましく、着色剤濃度が高く、良好な色特性を発現できることから、1000質量部以下の量で用いることが好ましい。
【0079】
樹脂に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、及びポリイミド樹脂等が挙げられる。中でもアクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0080】
酸性基含有エチレン性不飽和モノマーを共重合したビニル系アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基等の酸性基を有する樹脂が挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂として具体的には、酸性基を有するアクリル樹脂、α-オレフィン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、又はイソブチレン/(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、酸性基を有するアクリル樹脂、及びスチレン/スチレンスルホン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂、特に酸性基を有するアクリル樹脂は、耐熱性、透明性が高いため、好適に用いられる。
【0081】
エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂としては、たとえば以下に示す(i)や(ii)の方法により不飽和エチレン性二重結合を導入した樹脂が挙げられる。
【0082】
[方法(i)]
方法(i)としては、例えば、エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体と、他の1種類以上の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖エポキシ基に、不飽和エチレン性二重結合を有する不飽和一塩基酸のカルボキシ基を付加反応させ、更に、生成した水酸基に、多塩基酸無水物を反応させ、不飽和エチレン性二重結合及びカルボキシ基を導入する方法がある。
【0083】
エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4エポキシブチル(メタ)アクリレート、及び3,4エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。次工程の不飽和一塩基酸との反応性の観点で、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0084】
不飽和一塩基酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o-、m-、p-ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体等のモノカルボン酸等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。
【0085】
多塩基酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。カルボキシ基の数を増やす等、必要に応じて、トリメリット酸無水物等のトリカルボン酸無水物を用いたり、ピロメリット酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物を用いて、残った無水物基を加水分解すること等もできる。また、多塩基酸無水物として、不飽和エチレン性二重結合を有する、テトラヒドロ無水フタル酸、又は無水マレイン酸を用いると、更に不飽和エチレン性二重結合を増やすことができる。
【0086】
方法(i)の類似の方法として、例えば、カルボキシ基を有する不飽和エチレン性単量体と、他の1種類以上の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖カルボキシ基の一部に、エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体を付加反応させ、不飽和エチレン性二重結合及びカルボキシ基を導入する方法がある。
【0087】
[方法(ii)]
方法(ii)としては、水酸基を有する不飽和エチレン性単量体を使用し、他のカルボキシ基を有する不飽和一塩基酸の単量体や、他の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖水酸基に、イソシアネート基を有する不飽和エチレン性単量体のイソシアネート基を反応させる方法がある。
【0088】
水酸基を有する不飽和エチレン性単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-若しくは3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-若しくは3-若しくは4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、又はシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。また、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシド等を付加重合させたポリエーテルモノ(メタ)アクリレートや、(ポリ)γ-バレロラクトン、(ポリ)ε-カプロラクトン、及び/又は(ポリ)12-ヒドロキシステアリン酸等を付加した(ポリ)エステルモノ(メタ)アクリレートも使用できる。塗膜異物抑制の観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、又はグリセロール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0089】
イソシアネート基を有する不飽和エチレン性単量体としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、又は1,1-ビス〔(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定することなく、2種類以上併用することもできる。
【0090】
<有機溶剤>
本発明の着色組成物には、着色剤を充分に着色剤担体中に分散、浸透させ、ガラス基板等の基板上に乾燥膜厚が0.2~5μmとなるように塗布して着色膜を形成することを容易にするために有機溶剤を含有させる。有機溶剤は、着色組成物の塗布性が良好であることに加え、着色組成物各成分の溶解性、さらには安全性を考慮して選定される。
【0091】
有機溶剤としては、例えば、乳酸エチル、ベンジルアルコール、1,3-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ジオキサン、2-ヘプタノン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブタノール、3-メトキシブチルアセテート、4-ヘプタノン、m-キシレン、m-ジエチルベンゼン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、n-ブチルアルコール、n-ブチルベンゼン、n-プロピルアセテート、o-キシレン、o-ジエチルベンゼン、p-ジエチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、γ―ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n-アミル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステル等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独で、又は必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0092】
中でも、着色剤の分散性、浸透性、及び着色組成物の塗布性が良好なことから、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類、ベンジルアルコール、ダイアセトンアルコール、3-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類やシクロヘキサノン等のケトン類を用いることが好ましい。
【0093】
また有機溶剤は、着色組成物を適正な粘度に調節し、目的とする均一な膜厚の着色膜を形成できることから、着色剤100質量部に対して、500~4000質量部の量で用いることが好ましい。
【0094】
<樹脂型分散剤>
本発明の着色組成物は、樹脂型分散剤を含有することができる。分散剤としては、添加着色剤に吸着する性質を有する着色剤親和性部位と、着色剤担体と相溶性のある部位とを有し、添加着色剤に吸着して着色剤担体への分散を安定化する働きをするものである。樹脂型分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシ基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が用いられ、これらは単独又は2種以上を混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0095】
上記樹脂型分散剤のうち少量の添加量で分散体の粘度が低くなり高いコントラスト比を示すという理由から、窒素原子含有グラフト共重合体や、側鎖に3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、含窒素複素環などを含む官能基を有する、窒素原子含有アクリル系ブロック共重合体及びウレタン系高分子分散剤などが良く知られている。本発明で樹脂型分散剤を併用する場合、窒素原子含有アクリル系ブロック共重合体を使用することが好ましい。
【0096】
さらに、酸性置換基を有する樹脂型分散剤を窒素原子含有アクリル系ブロック共重合体と併用することもできる。酸性置換基を有する樹脂型分散剤としては芳香族カルボキシ基を有するものは分散後の着色剤の再凝集を防止する効果が特に大きいため、特に好ましい。芳香族カルボキシ基を有する樹脂型分散剤としては、WO2008/007776号公報、特開2008-029901号公報、特開2009-155406号公報、特開2009-155406号公報、特開2010-185934号公報、特開2011-157416号公報に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
樹脂型分散剤は、着色剤全量に対して5~200質量部程度使用することが好ましく、成膜性の観点から5~100質量部程度使用することがより好ましい。
【0098】
市販の樹脂型分散剤としては、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk-101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155、またはAnti-Terra-U、203、204、またはBYK-P104、P104S、220S、6919、またはLactimon、Lactimon-WSまたはBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE-3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、76500等、BASF社製のEFKA-46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503、等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
【0099】
<熱硬化性化合物>
本発明の着色組成物は、熱硬化性化合物を含有することができる。熱硬化性化合物としては、例えば、エポキシ化合物及び/又は樹脂、オキセタン化合物及び/又は樹脂、ベンゾグアナミン化合物及び/又は樹脂、ロジン変性マレイン酸化合物及び/又は樹脂、ロジン変性フマル酸化合物及び/又は樹脂、メラミン化合物及び/又は樹脂、尿素化合物及び/又は樹脂、フェノール化合物及び/又は樹脂、が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に熱硬化性化合物を用いる場合、耐熱性、耐溶剤性、電圧保持率などの観点から、エポキシ化合物が好ましい。エポキシ化合物としては、エポキシ基を有していれば特に制限はなく、低分子化合物でもよく、樹脂のような高分子量化合物でもよいが、とくに多官能のエポキシ化合物であることが高い架橋密度の塗膜が得られるために好ましい。
【0100】
エポキシ化合物の好ましい重量平均分子量としては、200以上100,000以下が好ましい。より好ましい分子量は300以上10,000以下であり、さらに好ましくは500以上5000以下である。
【0101】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物などがいずれも使用できる。好ましくは、ノボラック型エポキシ化合物、および脂環式エポキシ化合物であり、特に好ましくは脂環式エポキシ化合物である。官能基数は、2官能以上であることが好ましく、より好ましくは、熱架橋性に優れるため、3官能以上である。
【0102】
2官能のエポキシ化合物としては、DIC製のEPICLON830、840、850、860、1050、2050、3050、4050、7050、HM-091、101、ナガセケムテックス製デナコールEX-211、212、252、711、721などが挙げられる。
【0103】
3官能以上の多官能エポキシ化合物としては、ノボラック型エポキシ化合物、高分子脂環族主鎖エポキシ化合物であるEHPE3150(ダイセル化学工業社製)などが挙げられる。ノボラック型エポキシ化合物としては、具体的には、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-4500、EOCN-4600、XD-1000、XD-1000-L、XD-1000-2L、NC-3000、NC-3000-H(以上、日本化薬社製)、YDPN-638、YDCN-700-2、YDCN-700-3、YDCN-700-5、YDCN-700-7、YDCN-700-10、YDCN-704、YDCN-704A(以上、新日鐵化学社製)、N-660、N-665、N-670、N-673、N-680、N-690、N-695、N-665-EXP、N-672-EXP、N-655-EXP-S、N-662-EXP-S(以上、DIC社製)などが挙げられる。また、三官能のエポキシ化合物であるテクモアVG3101(プリンテック社製)、四官能のエポキシ化合物であるTETRAD-C、TETRAD-X(以上、三菱ガス化学社製)なども挙げられる。また、ナガセケムテックス製デナコールEX-313、314、321、411、421、512、521、611、612、614、614B、622なども挙げられる。また、三菱化学製JER1031S、1302H60、604、630、630LSDなども挙げられる。
【0104】
<光重合性単量体>
本発明の着色組成物は必須成分として光重合性単量体を含有する。光重合性単量体としては、紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれる。
【0105】
紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマー、オリゴマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
これらの光重合性化合物は、1種を単独で、又は必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0106】
光重合性単量体の配合量は、着色剤の全質量を基準(100質量部)として、5~400質量部であることが好ましく、光硬化性及び現像性の観点から10~300質量部であることがより好ましい。
【0107】
<光重合開始剤>
本発明の着色組成物には、該組成物を紫外線照射により硬化させ、フォトリソグラフィー法によりフィルタセグメントを形成するために、光重合開始剤を含有する。加えて、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型感光性着色組成物の形態で調製することができる。
【0108】
光重合開始剤としては、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、又は2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、又はベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、又は3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、又は2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、又は2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等のトリアジン系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、又はO-(アセチル)-N-(1-フェニル-2-オキソ-2-(4’-メトキシ-ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン等のオキシムエステル系化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、又は2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物;9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物; ボレート系化合物; カルバゾール系化合物;イミダゾール系化合物;あるいは、チタノセン系化合物等が用いられる。
これらの光重合開始剤は、1種を単独で、又は必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0109】
光重合開始剤の含有量は、着色剤100質量部に対し、2~200質量部であることが好ましく、光硬化性及び現像性の観点から3~150質量部であることがより好ましい。
【0110】
<増感剤>
さらに、本発明の着色組成物には、増感剤を含有させることができる。
増感剤としては、カルコン誘導体、ジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2-ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ-ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、又はミヒラーケトン誘導体、ビイミダゾール誘導体、α-アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’-ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,又は4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
これらの増感剤は、1種を単独で、又は必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0111】
さらに具体的には、大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、及び「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)に記載の増感剤が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、その他、紫外から近赤外域にかけての光に対して吸収を示す増感剤を含有させることもできる。
【0112】
増感剤の含有量は、着色組成物中に含まれる光重合開始剤100質量部に対し、3~60質量部であることが好ましく、光硬化性、現像性の観点から5~50質量部であることがより好ましい。
【0113】
<チオール化合物>
本発明の着色組成物は、連鎖移動剤としての働きをするチオール化合物を含有することができる。チオール化合物は塗膜硬化度を高くするため、耐熱性は電圧保持率の向上に有効である。
チオール化合物としては、チオール基を2個以上有する多官能チオール化合物が良く、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン等が挙げられる。これらの多官能チオール化合物は、1種を単独で、又は必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0114】
チオール化合物の含有量は、カラーフィルタ用着色組成物の全固形分の質量を基準(100質量%)として好ましくは0.1~30質量%であり、より好ましくは0.1~20質量%である。チオール化合物の含有量が0.1質量%未満ではチオール化合物の添加効果が不充分であり、30質量%を越えると感度が高すぎて逆に解像度が低下する場合がある。
【0115】
<酸化防止剤>
本発明の着色組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤は、着色組成物に含まれる光重合開始剤や熱硬化性化合物が、熱硬化やITOアニール時の熱工程によって酸化し黄変することを防ぐため、塗膜の透過率を高くすることができる。そのため、酸化防止剤を含むことで、加熱工程時の酸化による黄変を防止し、高い塗膜の透過率を得る事ができる。
【0116】
本発明における「酸化防止剤」とは、紫外線吸収機能、ラジカル捕捉機能、又は、過酸化物分解機能を有する化合物であればよく、具体的には、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒドロキシルアミン系、サルチル酸エステル系、及びトリアジン系の化合物があげられ、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤等が使用できる。
【0117】
これらの酸化防止剤の中でも、塗膜の透過率と感度の両立の観点から、好ましいものとしては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤又はイオウ系酸化防止剤が挙げられる。また、より好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、又はリン系酸化防止剤である。
【0118】
これらの酸化防止剤は、1種を単独で、又は必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0119】
酸化防止剤の含有量は、カラーフィルタ用着色組成物の固形分質量を基準(100質量%)として、0.1~5.0質量%の場合、明度、感度が良好であるためより好ましい。
【0120】
<アミン系化合物>
また、本発明の着色組成物には、溶存している酸素を還元する働きのあるアミン系化合物を含有させることができる。
このようなアミン系化合物としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、及びN,N-ジメチルパラトルイジン等が挙げられる。
【0121】
<レベリング剤>
本発明の本発明の着色組成物には、透明基板上での組成物のレベリング性をよくするため、レベリング剤を添加することができる。レベリング剤としては、主鎖にポリエーテル構造又はポリエステル構造を有するジメチルシロキサンが好ましい。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンの具体例としては、東レ・ダウコーニング社製FZ-2122、ビックケミー社製BYK-333などが挙げられる。主鎖にポリエステル構造を有するジメチルシロキサンの具体例としては、ビックケミー社製BYK-310、BYK-370などが挙げられる。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンと、主鎖にポリエステル構造を有するジメチルシロキサンとは、併用することもできる。レベリング剤の含有量は通常、着色組成物の全質量を基準(100質量%)として、0.003~0.5質量%用いることが好ましい。
【0122】
レベリング剤として特に好ましいものとしては、分子内に疎水基と親水基を有するいわゆる界面活性剤の一種で、親水基を有しながらも水に対する溶解性が小さく、着色組成物に添加した場合、その表面張力低下能が低いという特徴を有し、さらに表面張力低下能が低いにも拘らずガラス板への濡れ性が良好なものが有用であり、泡立ちによる塗膜の欠陥が出現しない添加量において十分に帯電性を抑止できるものが好ましく使用できる。このような好ましい特性を有するレベリング剤として、ポリアルキレンオキサイド単位を有するジメチルポリシロキサンが好ましく使用できる。ポリアルキレンオキサイド単位としては、ポリエチレンオキサイド単位、ポリプロピレンオキサイド単位があり、ジメチルポリシロキサンは、ポリエチレンオキサイド単位とポリプロピレンオキサイド単位とを共に有していてもよい。
【0123】
また、ポリアルキレンオキサイド単位のジメチルポリシロキサンとの結合形態は、ポリアルキレンオキサイド単位がジメチルポリシロキサンの繰り返し単位中に結合したペンダント型、ジメチルポリシロキサンの末端に結合した末端変性型、ジメチルポリシロキサンと交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマー型のいずれであってもよい。ポリアルキレンオキサイド単位を有するジメチルポリシロキサンは、東レ・ダウコーニング株式会社から市販されており、例えば、FZ-2110、FZ-2122、FZ-2130、FZ-2166、FZ-2191、FZ-2203、FZ-2207が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
レベリング剤には、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、又は両性の界面活性剤を補助的に加えることも可能である。界面活性剤は、2種以上混合して使用しても構わない。
レベリング剤に補助的に加えるアニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0125】
レベリング剤に補助的に加えるカオチン性界面活性剤としては、アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。レベリング剤に補助的に加えるノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのポリオキシアルキレン系の界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤、また、フッ素系やシリコーン系の界面活性剤が挙げられる。
【0126】
<硬化剤、硬化促進剤>
また本発明の着色組成物には、熱硬化性樹脂の硬化を補助するため、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤などを含んでいてもよい。硬化剤としては、フェノール系樹脂、アミン系化合物、酸無水物、活性エステル、カルボン酸系化合物、スルホン酸系化合物などが有効であるが、特にこれらに限定されるものではなく、熱硬化性樹脂と反応し得るものであれば、いずれの硬化剤を使用してもよい。また、これらの中でも、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物、アミン系硬化剤が好ましく挙げられる。上記硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物(例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等)、4級アンモニウム塩化合物(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド等)、ブロックイソシアネート化合物(例えば、ジメチルアミン等)、イミダゾール誘導体二環式アミジン化合物及びその塩(例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等)、リン化合物(例えば、トリフェニルホスフィン等)、グアナミン化合物(例えば、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等)、S-トリアジン誘導体(例えば、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等)などを用いることができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記硬化促進剤の含有量としては、熱硬化性樹脂100質量部に対し、0.01~15質量部が好ましい。
【0127】
<その他の添加剤成分>
本発明の着色組成物には、経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。また、透明基板との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。
【0128】
貯蔵安定剤としては、例えば、ベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸及びそのメチルエーテル、t-ブチルピロカテコール、テトラエチルホスフィン、テトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩等が挙げられる。貯蔵安定剤は、着色剤100質量部に対し、0.1~10質量部の量で用いることができる。
【0129】
密着向上剤としては、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等のシランカップリング剤が挙げられる。密着向上剤は、着色組成物中の着色剤100質量部に対して、0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部の量で用いることができる。
【0130】
<着色組成物の製造方法>
本発明の着色組成物は、着色剤[A]を、樹脂などの着色剤担体及び/又は溶剤中に、好ましくは色素誘導体や樹脂型分散剤などの分散助剤と一緒に、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、又はアトライター等の各種分散手段を用いて微細に分散して製造することができる(着色剤分散体)。このとき、2種以上の着色剤等を同時に着色剤担体に分散しても良いし、別々に着色材担体に分散したものを混合しても良い。染料等、着色剤の溶解性が高い場合、具体的には使用する溶剤への溶解性が高く、攪拌により溶解、異物が確認されない状態であれば、上記のような微細に分散して製造する必要はない。
【0131】
また、感光性の着色組成物(レジスト材)として用いる場合には、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色組成物として調製することができる。溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色組成物は、前記着色剤分散体と、光重合性単量体及び/又は光重合開始剤と、必要に応じて、溶剤、その他の分散助剤、及び添加剤等を混合して調整することができる。光重合開始剤は、着色組成物を調製する段階で加えてもよく、調製した着色組成物に後から加えてもよい。
【0132】
<分散助剤>
着色剤を着色剤担体中に分散する際に、適宜、色素誘導体、樹脂型分散剤、界面活性剤等の分散助剤を含有してもよい。分散助剤は、分散後の着色剤の再凝集を防止する効果が大きいので、分散助剤を用いて着色剤を着色剤担体中に分散してなる着色組成物は、明度及び粘度安定性が良好になる。色素誘導体と樹脂型分散剤に関しては、前記に説明した通りである。
【0133】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、スチレン-アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート等のノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物等のカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0134】
界面活性剤を添加する場合には、着色剤100質量部に対し、好ましくは0.1~55質量部、さらに好ましくは0.1~45質量部である。界面活性剤の配合量が、0.1質量部未満の場合には、添加した効果が得られ難く、含有量が55質量部より多いと、過剰な分散剤により分散に影響を及ぼす場合がある。
【0135】
<粗大粒子の除去>
本発明のカラーフィルタ用着色組成物は、遠心分離、焼結フィルタやメンブレンフィルタによる濾過等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子及び混入した塵の除去を行うことが好ましい。このように着色組成物は、実質的に0.5μm以上の粒子を含まないことが好ましい。より好ましくは0.3μm以下であることが好ましい。
【0136】
<カラーフィルタ>
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。
本発明のカラーフィルタは、赤色フィルタセグメント、緑色フィルタセグメント、および青色フィルタセグメントを具備する。また、カラーフィルタは、さらにマゼンタ色フィルタセグメント、シアン色フィルタセグメント、および黄色フィルタセグメントを具備するものであってもよい。本発明のカラーフィルタは、緑色フィルタセグメントのうち少なくとも1つが、本発明の着色組成物中から形成されてなるものである。
【0137】
<カラーフィルタの製造方法>
カラーフィルタは、印刷法またはフォトリソグラフィー法により、製造することができる。印刷法によるフィルタセグメントの形成は、印刷インキとして調製した着色組成物の印刷と乾燥を繰り返すだけでパターン化ができるため、カラーフィルタの製造法としては、低コストで量産性に優れている。さらに、印刷技術の発展により高い寸法精度及び平滑度を有する微細パターンの印刷を行うことができる。印刷を行うためには、印刷の版上にて、あるいはブランケット上にてインキが乾燥、固化しないような組成とすることが好ましい。また、印刷機上でのインキの流動性の制御も重要であり、分散剤や体質顔料によるインキ粘度の調整を行うこともできる。
【0138】
フォトリソグラフィー法によりフィルタセグメントを形成する場合は、上記溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材として調製した着色組成物を、透明基板上に、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が0.2~5μmとなるように塗布する。必要により乾燥された膜には、この膜と接触あるいは非接触状態で設けられた所定のパターンを有するマスクを通して露光(放射線の照射)を行う。その後、溶剤またはアルカリ現像液に浸漬するかもしくはスプレーなどにより現像液を噴霧して未硬化部を除去して所望のパターンを形成したのち、同様の操作を他色について繰り返してカラーフィルタを製造することができる。さらに、着色レジスト材の重合を促進するため、必要に応じて加熱を施すこともできる。フォトリソグラフィー法によれば、上記印刷法より精度の高いカラーフィルタが製造できる。
【0139】
現像に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
なお、露光感度を上げるために、上記着色レジストを塗布乾燥後、水溶性あるいはアルカリ水溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し酸素による重合阻害を防止する膜を形成した後、露光を行うこともできる。
【0140】
本発明のカラーフィルタは、上記方法の他に電着法、転写法、インクジェット法などにより製造することができるが、本発明の着色組成物はいずれの方法にも用いることができる。なお、電着法は、基板上に形成した透明導電膜を利用して、コロイド粒子の電気泳動により各色フィルタセグメントを透明導電膜の上に電着形成することでカラーフィルタを製造する方法である。また、転写法は剥離性の転写ベースシートの表面に、あらかじめフィルタセグメントを形成しておき、このフィルタセグメントを所望の基板に転写させる方法である。
【0141】
透明基板あるいは反射基板上に各色フィルタセグメントを形成する前に、あらかじめブラックマトリクスを形成することができる。ブラックマトリクスとしては、クロムやクロム/酸化クロムの多層膜、窒化チタニウムなどの無機膜や、遮光剤を分散した樹脂膜が用いられるが、これらに限定されない。また、上記の透明基板あるいは反射基板上に薄膜トランジスター(TFT)をあらかじめ形成しておき、その後に各色フィルタセグメントを形成することもできる。また本発明のカラーフィルタ上には、必要に応じてオーバーコート膜や透明導電膜などが形成される。
【0142】
本発明のカラーフィルタは、シール剤を用いて対向基板と張り合わせ、シール部に設けられた注入口から液晶を注入したのち注入口を封止し、必要に応じて偏光膜や位相差膜を基板の外側に張り合わせることにより、カラー液晶表示装置が製造される。このカラー液晶表示装置は、ツイステッド・ネマティック(TN)、スーパー・ツイステッド・ネマティック(STN)、イン・プレーン・スイッチング(IPS)、ヴァーティカリー・アライメント(VA)、オプティカリー・コンベンセンド・ベンド(OCB)等のカラーフィルタを使用してカラー化を行う液晶表示モードに使用することができる。
【0143】
また、本発明のカラーフィルタは、カラー液晶表示装置以外にカラー撮像素子、有機EL表示装置、電子ペーパー等の製造に使用することもできる。
【実施例
【0144】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。実施例中、特に断りの無い限り「部」とは「質量部」を意味する。
【0145】
なお、本発明のフタロシアニンの同定は、飛行時間型質量分析装置(autoflexIII(TOF-MS)、ブルカー・ダルトニクス社製)を用いて得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致、並びに、元素分析装置(2400CHN元素分析装置、パーキン・エルマー社製)を用いて得られる炭素、水素および窒素の比率と、理論値との一致により行った。
【0146】
顔料中の臭素置換基数の平均値は、顔料を酸素燃焼フラスコ法にて燃焼させ、該燃焼物を水に吸収させた液体を、イオンクロマトグラフ(ICS-2000イオンクロマトグラフィー、DIONEX社製)により分析してハロゲン量を定量し、臭素置換基数の平均値に換算することで得た。
【0147】
<フタロシアニン顔料の製造>
【0148】
[製造例1]
(フタロシアニン顔料(CP-1)の製造)
反応容器中で、n-アミルアルコール1200部に4-クロロフタロニトリル300部と塩化アルミニウム無水物61部を混合攪拌した。これに、DBU(1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)309部を加え、昇温し、130℃で5時間還流した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール12000部、水1000部からなる混合溶媒中へ攪拌しながら注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール1500部、水4000部からなる混合溶媒で洗浄し、乾燥して、262部のβ-テトラクロロアルミニウムフタロシアニンであるフタロシアニン顔料(CP-1)を得た。
【0149】
[製造例2]
(フタロシアニン顔料(CP-2)の製造)
反応容器中で、濃硫酸1000部にフタロシアニン顔料(CP-1)40部を氷浴下にて加えた。その後、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン30部を徐々に加え、25℃で6時間撹拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水9000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、フタロシアニン顔料(CP-2)を得た。得られたフタロシアニン顔料(CP-2)について、臭素置換基数を算出したところ平均2.5個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的物であることを同定した。
【0150】
[製造例3]
(フタロシアニン顔料(CP-3)の製造)
上記フタロシアニン顔料(CP-2)の製造において、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン30部のところを1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン50部に変更した以外は、製造例2と同様にしてフタロシアニン顔料(CP-3)を得た。得られたフタロシアニン顔料(CP-3)について、臭素置換基数を算出したところ平均4.0個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的物であることを同定した。
【0151】
[製造例4]
(フタロシアニン顔料(CP-4)の製造)
上記フタロシアニン顔料(CP-2)の製造において、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン30部のところをN-ブロモスクシンイミド95部に変更した以外は、製造例2と同様にしてフタロシアニン顔料(CP-4)を得た。得られたフタロシアニン顔料(CP-4)について、臭素置換基数を算出したところ平均7.0個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的物であることを同定した。
【0152】
[製造例5]
(フタロシアニン顔料(CP-5)の製造)
上記フタロシアニン顔料(CP-2)の製造において、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン30部のところを1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン102部に変更した以外は、製造例2と同様にしてフタロシアニン顔料(CP-5)を得た。得られたフタロシアニン顔料(CP-5)について、臭素置換基数を算出したところ平均9.5個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的物であることを同定した。
【0153】
[比較製造例1]
(フタロシアニン顔料(CP-6)の製造)
反応容器中で、n-アミルアルコール1250部にフタロジニトリル225部と塩化アルミニウム無水物78部を混合攪拌した。これに、DBU(1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)266部を加え、昇温し、136℃で5時間還流した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール5000部、水10000部からなる混合溶媒中へ攪拌しながら注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール2000部、水4000部からなる混合溶媒で洗浄し、乾燥して、135部の下記化学式(4)で示されるクロロアルミニウムフタロシアニンを得た。
【0154】
【化7】

【0155】
次いで、反応容器中で、クロロスルホン酸1500部に上記クロロアルミニウムフタロシアニン100部を氷浴下にて加えた。その後、トリクロロイソシアヌル酸80部を徐々に加え、25℃で6時間撹拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水9000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、107部の下記化学式(5)で示される塩素化アルミニウムフタロシアニンを得た。得られた塩素化アルミニウムフタロシアニンについて塩素置換数を算出したところ、平均4.0個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。
【0156】
化学式(5)
【化8】
【0157】
次いで、反応容器中で、硫酸1500部に上記塩素化アルミニウムフタロシアニン100部を氷浴下にて加えた。その後、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン42部を徐々に加え、25℃で6時間撹拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水9000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、97部の下記化学式(6)で示されるフタロシアニン顔料(CP-6)を得た。得られたフタロシアニン顔料(CP-6)について臭素置換数を算出したところ、平均4.0個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。
【0158】
化学式(6)
【化9】
【0159】
[実施例1]
(フタロシアニン顔料(P-1)の製造)
反応容器に、1-メチル-2-ピロリジノン200部、製造例2で得られたフタロシアニン顔料(CP-2)10部、ジフェニルホスフェート4.5部を加えた。85℃で、3時間反応させた後、水1600部中にこの溶液を注入した。反応生成物をろ過し、水1600部で洗浄後、減圧下60℃にて一昼夜乾燥させて、11.5部のフタロシアニン顔料(P-1)を得た。得られたフタロシアニン顔料(P-1)について臭素置換数を算出したところ、平均2.5個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。
【0160】
[実施例2~9、比較例1~3]
(フタロシアニン顔料(P-2~12)の製造)
上記フタロシアニン顔料(P-1)の製造において、原料となるフタロシアニン顔料と酸性化合物を表1に記載した組成、配合比にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、それぞれフタロシアニン顔料(P-2~12)を得た。臭素置換数の平均値については表1の通りであり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物であることを同定した。
ただし、実施例9は、参考例である。
【0161】
【表1】
【0162】
[比較例4]
反応容器中で、化学式(4)で示されるクロロアルミニウムフタロシアニン100部をゆっくり濃硫酸1200部に、室温にて加えた。40℃、3時間撹拌して、3℃の冷水24000部に硫酸溶液を注入した。青色の析出物をろ過、水洗、乾燥して、101部のヒドロキシアルミニウムフタロシアニンを得た。
次いで、反応容器中でメタノール1000部に得られたヒドロキシアルミニウムフタロシアニン100部およびジフェニルホスフェート49.5部を加え、40℃に加熱し、8時間反応させた。これを室温まで冷却後、生成物をろ過し、メタノールで洗浄後、乾燥させて、114部のフタロシアニン顔料(P-13)を得た。
【0163】
以下、実施例1~9、比較例1~4で得られたフタロシアニン顔料(P-1~13)の構造式を示す。構造式中、フタロシアニン環に結合している臭素原子の数は、ハロゲン原子の置換基数の平均値である。フタロシアニン顔料(P-1~10、12)のフタロシアニン環に結合している塩素原子の位置についてはβ位であれば、他の構造をとっていてもよい。
【0164】
【化15】
【0165】
【化16】
【0166】
<着色組成物>
以下の実施例は、先に製造したフタロシアニン顔料を用いた着色組成物(顔料分散体)に関する。使用した分散剤及びバインダー樹脂は、以下のようにして製造した。
【0167】
<バインダー樹脂の製造方法>
(アクリル樹脂溶液1の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn-ブチルメタクリレート13.3部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸4.3部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、重量平均分子量(Mw)26000のアクリル樹脂の溶液を得た。
上記樹脂溶液を室温まで冷却した後、上記樹脂溶液の約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定した。次いで、測定値を考慮し、不揮発分が20質量%になるように、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートを添加して、アクリル樹脂溶液1を調製した。
【0168】
<樹脂の評価>
(樹脂の重合平均分子量(Mw))
TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
【0169】
(樹脂の酸価)
樹脂溶液0.5~1.0部に、アセトン80mlおよび水10mlを加えて攪拌して均一に溶解させ、0.1mol/LのKOH水溶液を滴定液として、自動滴定装置(「COM-555」平沼産業製)を用いて滴定し、樹脂溶液の酸価を測定した。そして、樹脂溶液の酸価と樹脂溶液の固形分濃度から、樹脂の固形分あたりの酸価を算出した。
【0170】
<樹脂型分散剤溶液の調製>
市販の樹脂型分散剤であるBASF社製Efka PX4300と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを混合して不揮発分40質量%の溶液を調製し、樹脂型分散剤溶液1を得た。
【0171】
<顔料分散体の製造>
[実施例10]
(顔料分散体(GP-1))
下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM-250 MKII」)で5時間分散した。その後、得られた混合物を孔径5.0μmのフィルタで濾過し、不揮発成分が20質量%の顔料分散体(GP-1)を作製した。
フタロシアニン顔料(P-1) :11.0部
アクリル樹脂溶液1 :17.5部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc) :66.5部
樹脂型分散剤溶液1 : 5.0部
【0172】
[実施例11~18、比較例5~8]
(顔料分散体(GP-2)~(GP-13))
フタロシアニン顔料(P-1)を、表2に示すフタロシアニン顔料に変更した以外は、実施例10と同様の方法で顔料分散体(GP-2)~(GP-13)を作製した。
ただし、実施例18は、参考例である。
【0173】
<顔料分散体の評価>
実施例及び比較例で得た顔料分散体(GP-1)~(GP-13)について、下記評価を行った。結果を表2に示す
【0174】
(塗膜のコントラスト比(CR)評価)
液晶ディスプレー用バックライトユニットから出た光は、偏光板を通過して偏光され、ガラス基板上に塗布された着色組成物の塗膜を通過し、もう一方の偏光板に到達する。この際、偏光板と偏光板の偏光面が並行であれば、光は偏光板を透過するが、偏光面が直交している場合には光は偏光板により遮断される。しかし、偏光板によって偏光された光が着色組成物の塗膜を通過する際に、着色剤粒子によって散乱等が起こり、偏光面の一部にずれが生じると、偏光板が並行のときは透過する光量が減り、偏光板が直交のときは一部光が透過する。この透過光を偏光板上の輝度として測定し、偏光板が並行の際の輝度と、直交の際の輝度との比を、コントラスト比として算出した。

(コントラスト比)=(並行のときの輝度)/(直交のときの輝度)

従って、塗膜中の着色剤により散乱が起こると、並行のときの輝度が低下し、かつ直交のときの輝度が増加するため、コントラスト比が低くなる。
【0175】
なお、輝度計としては色彩輝度計(トプコン社製「BM-5A」)、偏光板としては偏光板(日東電工社製「NPF-G1220DUN」)を用いた。測定に際しては、測定部分に1cm角の孔を開けた黒色マスクを介して測定した。
【0176】
フタロシアニン・顔料分散体(GP-1~13)をそれぞれ、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、次に70℃で20分乾燥し、ついで230℃で60分間加熱、放冷することで塗膜基板を作製した。得られた塗布基板のコントラスト比(CR)を測定した。作製した塗膜基板は、230℃での熱処理後で、膜厚が1.5μmとなるよう調整した。
コントラスト比は、下記基準に従って判定した。結果を表5に示す。
◎:9000以上:極めて良好
○:6000以上~9000未満:良好
△:3000以上~6000未満:実用可能
×:3000未満:不良
【0177】
(塗膜の耐熱性評価)
フタロシアニン・顔料分散体(GP-1~13)をそれぞれ、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、次に70℃で20分乾燥し、ついで230℃で60分間加熱、放冷することで塗膜基板を作製した。作製した塗膜基板は、230℃での熱処理後で、膜厚が1.5μmとなるよう調整した。得られた塗膜の色度を顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP-SP100」)を用い、[L*(1)、a*(1)、b*(1)]を測定した。さらに250℃で60分間熱処理を行った後の色度[L*(2)、a*(2)、b*(2)]を測定し、下記式(1)により、色差ΔE*abを求めた。
式(1)
ΔE*ab=[[L*(2)-L*(1)]2+[a*(2)-a*(1)]2+[b*(2)-b*(1)]2]1/2
【0178】
耐熱性は、下記基準に従って判定した。結果を表2に示す。
◎:ΔE*ab=1以下:極めて良好
○:ΔE*ab=1~3:良好
△:ΔE*ab=3~5:実用可能
×:ΔE*ab=5以上:不良
【0179】
(初期粘度評価)
顔料分散体の粘度は、調整当日25℃において、E型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて回転数20rpmにおける粘度(初期粘度)を測定した。下記の評価結果において、◎は非常に良好であり、○は良好であり、△は粘度が高いものの使用上問題ないレベル、×は使用上問題があるレベルである。
◎:10.0未満[mPa・s]
○:10.0以上~15.0未満[mPa・s]
△:15.0以上~20.0未満[mPa・s]
×:20.0以上[mPa・s]
【0180】
【表2】
【0181】
比較例5のようにフタロシアニン環が臭素で置換されていないβ-テトラクロロアルミニウムフタロシアニンの場合、コントラスト比が低く、初期粘度が悪化したまた、一般式(1)のZが本願特定の構造ではない比較例7では、コントラスト比・耐熱性・初期粘度とも悪かった。一方、実施例10~18では、コントラスト比・耐熱性・初期粘度が優れる結果であった。中でも臭素置換数の平均値が2.5個、4個のものは初期粘度が良好であった。
【0182】
<その他の着色剤の製造方法>
【0183】
(微細化緑色顔料(PG58-1)の製造)
フタロシアニン系緑色顔料C.I.ピグメント グリーン58(DIC社製「FASTOGEN GREEN A110」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次に、この混練物を8000部の温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリーを形成した。このスラリーを濾過し、水洗を繰り返すことによって塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、微細化緑色顔料(PG58-1)を得た。
【0184】
(微細化緑色顔料(PG7-1)の製造)
フタロシアニン系緑色顔料C.I.ピグメント グリーン7(CLARIANT社製「GreenGNX」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次に、この混練物を8000部の温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリーを形成した。このスラリーを濾過し、水洗を繰り返すことによって塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、微細化緑色顔料(PG7-1)を得た。
【0185】
(微細化緑色顔料(PG36-1)の製造)
フタロシアニン系緑色顔料C.I.ピグメント グリーン36(CLARIANT社製「Green8G」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次に、この混練物を8000部の温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリーを形成した。このスラリーを濾過し、水洗を繰り返すことによって塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、微細化緑色顔料(PG36-1)を得た。
【0186】
(微細化黄色顔料(PY150-1)の製造)
ニッケル錯体系黄色顔料C.I.ピグメント イエロー150(ランクセス社製「E-4GN」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次に、この混練物を8リットルの温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリーを形成した。このスラリーを濾過し、水洗を繰り返すことによって塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、微細化黄色顔料(PY150-1)を得た。
【0187】
(微細化黄色顔料(PY138-1)の製造)
キノフタロン系黄色顔料C.I.ピグメント イエロー138(BASF社製「Paliotol Yellow L 0960HD」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次に、この混練物を8リットルの温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリーを形成した。このスラリーを濾過し、水洗を繰り返すことによって塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、微細化黄色顔料(PY138-1)を得た。
【0188】
(微細化黄色顔料(PY139-1)の製造)
イソインドリン系黄色顔料C.I.ピグメント イエロー 139(BASF社製「Paliotol Yellow L 2146HD」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次に、この混練物を8リットルの温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリーを形成した。このスラリーを濾過し、水洗を繰り返すことによって塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、微細化黄色顔料(PY139-1)を得た。
【0189】
(微細化黄色顔料(PY185-1)の製造)
イソインドリン系黄色顔料C.I.ピグメント イエロー185(BASF社「Paliotol Yellow L 1155」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次に、この混練物を8リットルの温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリーを形成した。このスラリーを濾過し、水洗を繰り返すことによって塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、微細化黄色顔料(PY185-1)を得た。
【0190】
(微細化黄色顔料(BY-1)の製造)
特開2012-226110号公報に記載の合成方法に従い、キノフタロン化合物(b)を得た。
【0191】
【化17】
【0192】
続いて、得られたキノフタロン化合物(b)を100部、塩化ナトリウム1200部、およびジエチレングリコール120部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、60℃で8時間混練した。次に、この混練物を温水に投入し、約70℃に加熱しながら1時間撹拌してスラリー状として、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、微細化黄色顔料(BY-1)98部を得た。
【0193】
(微細化黄色顔料(BY-2)の製造)
特許6432077号公報に記載の合成方法に従い、キノフタロン化合物(A-2)を得た。

キノフタロン化合物(A-2)
【化39】
【0194】
上記で得られたキノフタロン化合物(A-2)100部、塩化ナトリウム500部、及びジエチレングリコール250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、120℃で8時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、95部の微細化黄色顔料(BY-2)を得た。
【0195】
(微細化赤色顔料(PR254-1)の製造)
ジケトピロロピロール顔料C.I.ピグメント レッド254(BASF社製「イルガジンレッド D3656 HD」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8000部の温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、190部の微細化ジケトピロロピロール顔料(PR254-1)を得た。
【0196】
(微細化赤色顔料(PR177-1)の製造)
アントラキノン系赤色顔料C.I.ピグメント レッド177(シニック社製「シニレックスレッド SR3C」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8000部の温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、アントラキノン系の微細化赤色顔料(PR177-1)を得た。
【0197】
(微細化青色顔料(PB15:6-1)の製造)
フタロシアニン系青色顔料C.I.ピグメント ブルー15:6(トーヨーカラー社製「LIONOL BLUE ES」、比表面積60m2/g)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8000部の温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、微細化青色顔料(PB15:6-1)を得た。
【0198】
(微細化紫色顔料(PV23-1)の製造)
ジオキサジン系紫色顔料C.I.ピグメント バイオレット23(トーヨーカラー社製「LIONOGEN VIOLET RL」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8000部の温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、紫色微細化紫色顔料(PV23-1)を得た。
【0199】
<その他の微細化顔料分散体の製造>
(微細化顔料分散体(GP-14)~(GP-16)、(YP-1)~(YP-6)、(RP-1)、(RP-2)、(BP-1)、(VP-1)の製造)
フタロシアニン顔料(P-1)を表3に示す微細化顔料に変更した以外は、顔料分散体(GP-1)と同様の方法で顔料分散体(GP-14)~(GP-16)、(YP-1)~(YP-6)、(RP-1)、(RP-2)、(BP-1)、(VP-1)を作製した。
【0200】
【表3】
【0201】
<感光性着色組成物の製造方法>
[実施例19]
(感光性着色組成物(RG-1)の製造)
下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、孔径1.0μmのフィルタで濾過して緑色の感光性着色組成物(RG-1)を得た。
顔料分散体(GP-1) 30.7部
顔料分散体(YP-4) 19.3部
アクリル樹脂溶液1 3.60部
エポキシ化合物(熱硬化性化合物)
(ダイセル製「EHPE-3150」) 0.16部
光重合性単量体(東亞合成社製「アロニックスM402」) 1.10部
光重合性単量体(東亞合成社製「アロニックスM350」) 1.45部
光重合開始剤(BASF社製「イルガキュアーOXE02」) 0.15部
光重合開始剤(BASF社製「イルガキュアー369」) 0.30部
増感剤(日本化薬社製「KAYACURE DETX-S」) 0.05部
チオール化合物(ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート) 0.20部
レべリング剤(ビックケミー社製「BYK-330 」) 0.05部
酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX1010」) 0.10部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 32.84部
3-エトキシプロピオン酸エチル 10.00部
【0202】
[実施例20~35、比較例9~12]
(感光性着色組成物(RG-2~21)の製造)
感光性着色組成物中の顔料分散体の合計含有量はすべて50.00部に固定し、顔料分散体の種類と配合比率を変更する以外は、実施例1と同様にして感光性着色組成物(RG-2~7)を得た。顔料分散体の種類は表3に示す通りとし、顔料分散体の配合比率は、基板作製後の色度がC光源で(x=0.220、y=0.685)になる比率とした。
ただし、実施例27は、参考例である。
【0203】
<感光性着色組成物の評価>
得られた感光性着色組成物について下記方法で評価した。結果を表4に示す。
(明度の評価)
感光性着色組成物(RG-1~21)を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、クリーンオーブン中70℃で15分間加温して溶剤を除去し塗膜を得た。続いて超高圧水銀ランプを用いて、積算光量100mJ/cmで紫外線露光を行い、23℃のアルカリ現像液で現像を行い、塗膜基板を得た。ついでクリーンオーブン中230℃で30分間加熱、放冷後、得られた塗膜基板の明度Y(C)を顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP-SP100」)を用い測定した。尚、緑色塗膜基板は230℃での熱処理後で、C光源で(x=0.220、y=0.685)の色度に合わせた。アルカリ現像液としては、炭酸ナトリウム1.5質量%炭酸水素ナトリウム0.5質量% 陰イオン系界面活性剤(花王社製「ペリレックスNBL」)8.0質量%及び水90質量%からなるものを用いた。明度の評価は下記の3段階で評価した。
◎:35.0以上(極めて良好)
○:34.5以上、35.0未満(良好)
△:34.0以上、34.5未満(不良)
×:34.0未満(極めて不良)
【0204】
(着色力の評価)
明度評価をしたものと同じ塗膜を用いてy(C)=0.685の色度を示したときの膜厚を測定し、下記4段階の基準に従って判定した。x(C)=0.220、y(C)=0.685の色度を与える膜厚が小さいほど、着色力が大きいことを示しており、優れているといえる。
◎:膜厚2.3μm未満(極めて良好)
○:膜厚2.3μm以上、2.4μm未満(良好)
△:膜厚2.4μm以上、2.5μm未満(不良)
×:膜厚2.5μm以上(極めて不良)
【0205】
(耐溶剤性の評価)
感光性着色組成物(RG-1~21)を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、クリーンオーブン中70℃で15分間加温して溶剤を除去し乾燥塗膜を得た。この時、乾燥塗膜が2.5μmになるように塗布した。続いて、超高圧水銀ランプを用いて、積算光量100mJ/cmで100μm幅(ピッチ200μm)ストライプパターンのフォトマスクを介して紫外線露光を行い、23℃のアルカリ現像液で現像を行い、ストライプ状の塗膜基板を得た。ついでクリーンオーブン中230℃で30分間加熱処理を行った。ここで、C光源での色度(L(1),a(1),b(1))を測定した後、NMP(N-メチルピロリドン)に40℃で30分間浸漬し、さらにC光源での色度(L(2),a(2),b(2))を測定した。NMP浸漬前後の色度値を用いて、下記計算式により、色差ΔE*abを算出し、塗膜の耐溶剤性を、下記の3段階で評価した。
計算式:ΔE*ab=[[L*(2)-L*(1)]2+[a*(2)-a*(1)]2+[b*(2)-b*(1)]2]1/2
○:ΔEabが1.5未満(良好)
△:ΔEabが1.5以上、3.0未満(普通)
×:ΔEabが3.0以上(不良)
【0206】
(電圧保持率変化率ΔVHRの評価)
緑色感光性着色組成物(RG-1~21)を有効電極サイズ10mm×10mmのITO透明電極を有するガラス基板上に、スピンコーターを用いて、乾燥皮膜の膜厚が3.2μmになるように塗布し、電極部の塗膜を溶剤で拭き取りした後、積算光量50mJ/cm2で紫外線露光を行い、23℃のアルカリ現像液で現像し、塗膜基板を得た。ついで230℃で20分間加熱、放冷後、測定用のサンプル塗布基板を各二枚作製した。
【0207】
上記サンプル塗布済ガラス基板2枚を、ITO透明電極面同士が向かい合うように対向配置し、セルギャップが9μm になるようにシール剤を用いて小型セルを作製した。この小型セルに液晶液をセルギャップ間に注入して、50℃において、電圧5Vで60μ秒間電圧を印加し、電圧解放後16.67m秒経過後のセル電圧[V1]を、東陽テクニカ製VHR-1Sにて測定した。測定されたセル電圧を平均化し、得られたセル電圧を用いて、下記式より初期VHR( % ) を求めた。
VHR(電圧保持率)(%)=([V1]/5)×100
上記初期VHR測定済セルサンプルを、LED照明15万nit、3時間照射し再度照射後のVHR( % )の測定し、下記式よりΔVHR(電圧保持率変化率)を求めた。
ΔVHR=|初期VHR-露光後VHR|
下記の4段階で評価した。
◎:2%以下
○:2%以上5%未満
△:5%以上10%未満 実用可能
×:10%以上 実用不可
【0208】
【表4】
【0209】
臭素化されていないβ-テトラクロロフタロシアニンである比較例9や、ハロゲンが入っていない比較例12では、明度が低い結果であったまた、一般式(1)のZが本願特定の構造ではない比較例11では、明度と耐溶剤性が劣る結果であった。一方、本発明の実施例19~35では、明度が高く、かつ着色力、ΔVHR に優れる結果となった。また、本発明のフタロシアニン顔料は、他の緑色色素や黄色色素を併用した場合でも良好な結果を示した。
中でも、臭素の平均置換数が2~8個程度のものが、明度と着色力のバランスが良好であることがわかる。
【0210】
<カラーフィルタの作製>
(赤色感光性着色組成物(RR-1))
下記組成の混合物を均一になるように撹拌混合した後、孔径1μmのフィルタで濾過して、赤色感光性着色組成物(RR-1)を作製した。
PR254・顔料分散体(RP-1)・顔料分散体 :30.0部
PR177・顔料分散体(RP-2)・顔料分散体 :20.0部
アクリル樹脂溶液1 : 7.5部
光重合性単量体(東亞合成社製「アロニックスM-402」) : 2.0部
光重合開始剤(BASF社製「イルガキュアー907」) : 1.2部
増感剤(保土谷化学工業社製「EAB-F」) : 0.3部
シクロヘキサノン :39.0部
【0211】
(青色感光性着色組成物(RB-1))
下記組成の混合物を均一になるように撹拌混合した後、孔径1μmのフィルタで濾過して、青色感光性着色組成物(RB-1)を作製した。
PB15:6・顔料分散体(BP-1) :45.0部
PV23・顔料分散体(VP-1) : 5.0部
アクリル樹脂溶液1 : 7.5部
光重合性単量体(東亞合成社製「アロニックスM-402」) : 2.0部
光重合開始剤(BASF社製「イルガキュアー907」) : 1.2部
増感剤(保土谷化学工業社製「EAB-F」) : 0.3部
シクロヘキサノン :39.0部
【0212】
赤色感光性着色組成物(RR-1)をスピンコート法により、予めブラックマトリックスが形成されているガラス基板に塗工した後、クリーンオーブン中で、70℃で20分間乾燥させた。次いで、この基板を室温に冷却した後、超高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して紫外線を露光した。
その後、この基板を23℃の0.2質量%の炭酸ナトリウム水溶液にて30秒間スプレー現像した後、イオン交換水で洗浄し、乾燥した。さらに、クリーンオーブン中で、230℃で30分間加熱処理を行い、基板上にストライプ状の着色画素層を形成した。
次に、本発明の緑色感光性着色組成物(RG-3)を使用し、赤色着色画素層と同様にして緑色着色画素層を形成し、さらに青色感光性着色組成物(RB-1)を使用して青色着色画素層を形成し、カラーフィルタ(CF-1)を得た。各着色画素層の形成膜厚はいずれも2.0μmであった。
【0213】
緑色フィルタセグメントの形成に、本発明の感光性着色組成物(RG-3)を用いることにより、カラーフィルタの高明度化、高コントラスト化、広色域化が可能であり、その他物性にも問題なく好適に使用することができた。