IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーウェーブの特許一覧

<>
  • 特許-プログラマブルコントローラ 図1
  • 特許-プログラマブルコントローラ 図2
  • 特許-プログラマブルコントローラ 図3
  • 特許-プログラマブルコントローラ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】プログラマブルコントローラ
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/28 20060101AFI20230711BHJP
   G05B 19/05 20060101ALI20230711BHJP
   G06F 1/30 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G06F1/28
G05B19/05 N
G06F1/30 305
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019177062
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021056611
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 広志
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-146822(JP,A)
【文献】特開2011-123725(JP,A)
【文献】特開2014-164488(JP,A)
【文献】特開2014-160377(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054349(WO,A1)
【文献】特表2003-533754(JP,A)
【文献】特開2019-071001(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0032095(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0126837(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/28
G05B 19/05
G06F 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア電源が供給されて動作するコア部と、このコア部の周辺回路であり前記コア電源の電圧よりも高い電圧のロジック電源が供給されて動作するロジック部とを有するマイクロプロセッサと、
入力される直流電源より前記ロジック電源を生成するロジック電源回路と、
前記ロジック電源より前記コア電源を生成するコア電源回路と、
前記ロジック電源回路と前記コア電源回路との間に配置される電源間スイッチ回路と、
前記コア電源の電圧が閾値電圧を超えると前記電源間スイッチ回路をオフにするコア側コンパレータとを備え、
前記閾値電圧は、前記コア電源回路の出力電圧の最大値と前記コア部の絶対最大定格電圧との間に設定されているプログラマブルコントローラ。
【請求項2】
前記閾値電圧は、前記出力電圧の最大値と前記絶対最大定格電圧との差の1/2を、前記最大値に加えた値に設定されている請求項1記載のプログラマブルコントローラ。
【請求項3】
前記ロジック電源回路の入力電源側に配置される入力側スイッチ回路と、
前記ロジック電源の電圧が閾値電圧を超えると前記入力側スイッチ回路をオフにするロジック側コンパレータとを備える請求項1又は2記載のプログラマブルコントローラ。
【請求項4】
前記マイクロプロセッサ,前記ロジック電源回路,前記コア電源回路,前記電源間スイッチ回路及び前記コア側並びにロジック側コンパレータが2並列で配置されており、
2つのマイクロプロセッサは、同一の制御プログラムを同時並行して実行し、
制御対象には、前記2つのマイクロプロセッサからの2つの出力信号が論理積条件で出力され、
前記2つのマイクロプロセッサは、それぞれ他のマイクロプロセッサに供給されているコア電源の電圧を監視しており、当該電圧が過電圧状態になると、前記入力側スイッチ回路をオフにする請求項3記載のプログラマブルコントローラ。
【請求項5】
前記入力側スイッチ回路は、2直列で配置され、
前記2つのマイクロプロセッサは、それぞれ他のマイクロプロセッサに供給されているコア電源の電圧を監視しており、当該電圧が過電圧状態になると、前記入力側スイッチ回路の何れか一方をオフにする請求項4記載のプログラマブルコントローラ。
【請求項6】
一方のマイクロプロセッサは、他方のマイクロプロセッサに供給されているコア電源の電圧が過電圧状態になったことを複数回確認すると、前記入力側スイッチ回路をオフにする請求項4又は5記載のプログラマブルコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア部と、このコア部の周辺回路であるロジック部とを有するマイクロプロセッサを備えるプログラマブルコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
プログラマブルコントローラは、マイクロプロセッサが制御プログラムを実行することでシーケンス処理を行う。マイクロプロセッサの内部構成は、ALU(Arithmetic Logic Unit)や命令デコーダ,複数のレジスタ等を備えるコア部と、コア部の周辺回路であり外部回路とのインターフェイスとなるロジック部とに大別される。そして、一般に、コア部に供給される電源とロジック部に供給される電源とは電圧が異なり、前者の方が後者よりも低い電圧となる。したがって、電源回路も各電源に対応して2つ設けることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-99312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電源回路は通常降圧型であるから、ロジック電源回路の出力側にコア電源回路を直列に接続し、ロジック電源の電圧を降圧してコア電源を生成すれば効率が良い。しかしながら、このように構成した際に、コア電源回路の入出力端子間が短絡すると、マイクロプロセッサのコア部に過大な電圧が印加されることになり、マイクロプロセッサが故障するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コア電源回路の入出力端子間が短絡した際に、マイクロプロセッサのコア部が破壊されることを防止できるプログラマブルコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のプログラマブルコントローラによれば、ロジック電源回路は、入力される直流電源よりマイクロプロセッサのロジック部に供給するロジック電源を生成する。コア電源回路は、ロジック電源よりマイクロプロセッサのコア部に供給するコア電源を生成する。電源間スイッチ回路は、ロジック電源回路とコア電源回路との間に配置され、コア側コンパレータは、コア電源の電圧が、コア電源回路の出力電圧の最大値とコア部の絶対最大定格電圧との間に設定されている閾値電圧を超えて過電圧状態になると、電源間スイッチ回路をオフにする。
【0007】
コア電源回路の入出力間が短絡すると、コア電源回路の出力側の電圧が上昇してコア側コンパレータにより電源間スイッチ回路がオフされる。当該スイッチ回路がオフされると、コア電源回路の出力電圧が低下するので、一時的に過電圧状態が解消されて、コア側コンパレータは電源間スイッチ回路をオンにする。以下この状態が繰り返されるので、コア電源電圧は一定のレベルを維持するようになる。コア側コンパレータの閾値電圧を、コア電源回路の出力電圧の最大値とコア部の絶対最大定格電圧との間に設定することで、前記一定のレベルも閾値電圧と同様の値となる。したがって、マイクロプロセッサのコア部は過電圧により破壊されることなく、コア電源回路の出力電圧が一定レベルに維持されることで動作を継続することが可能になる。そして、マイクロプロセッサの動作が継続されている間に、過電圧が発生した状態に対応できるようになる。
【0008】
請求項2記載のプログラマブルコントローラによれば、コア側コンパレータの閾値電圧を、前記出力電圧の最大値と前記絶対最大定格電圧との差の1/2を、前記最大値に加えた値に設定する。これにより、過電圧が発生した際に十分に余裕を持たせて、コア電源電圧がコア部の絶対最大定格電圧に到達する以前に、電源間スイッチ回路をオフすることができる。
【0009】
請求項3記載のプログラマブルコントローラによれば、入力側スイッチ回路を、ロジック電源回路の入力電源側に配置し、ロジック側コンパレータは、ロジック電源の電圧が閾値電圧を超えると入力側スイッチ回路をオフにする。このように構成すれば、ロジック電源の電圧が過大となった際には、ロジック側コンパレータもコア側コンパレータと同様に動作するので、ロジック電源回路の出力電圧も一定のレベルを維持するようになる。したがって、マイクロプロセッサのロジック部も過電圧により破壊されることなく、動作を継続することが可能になる。
【0010】
請求項4記載のプログラマブルコントローラによれば、マイクロプロセッサ,ロジック電源回路,コア電源回路,電源間スイッチ回路及びコア側並びにロジック側コンパレータを2並列で配置し、2つの入力側スイッチ回路は直列に配置する。2つのマイクロプロセッサは、同一の制御プログラムを同時並行して実行し、制御対象には2つのマイクロプロセッサからの2つの出力信号が論理積条件で出力される。これにより、2つのマイクロプロセッサがそれぞれ実行する処理内容が一致していることを条件に、出力信号が制御対象に入力されるので、プログラマブルコントローラの安全性が向上する。
【0011】
そして、2つのマイクロプロセッサは、互い他のマイクロプロセッサに供給されているコア電源の電圧を監視し、当該電圧が過電圧状態になると入力側スイッチ回路をオフにする。これにより、過電圧が発生した側のマイクロプロセッサが動作を継続し続ける状態を解消できる。
【0012】
請求項5記載のプログラマブルコントローラによれば、2つの入力側スイッチ回路を直列に配置し、2つのマイクロプロセッサは、監視しているコア電源の電圧が過電圧状態になると入力側スイッチ回路の何れか一方をオフにする。このように構成すれば、入力側スイッチ回路を二重化することで、安全性をより向上させることができる。
【0013】
請求項6記載のプログラマブルコントローラによれば、一方のマイクロプロセッサは、他方のマイクロプロセッサに供給されているコア電源の電圧が過電圧状態になったことを複数回確認すると、入力側スイッチ回路をオフにする。このように構成すれば、マイクロプロセッサは、例えばノイズ等の影響を受けて過電圧が一時的に発生したような場合を排除して、過電圧の発生を確実に確認できた際に入力側スイッチ回路をオフにできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態であり、プログラマブルコントローラの電気的構成を要旨に係る部分について示す機能ブロック図
図2】コア側コンパレータの閾値電圧の設定を説明する図
図3】マイクロプロセッサA側の過電圧検出に対応した処理を示すフローチャート
図4】実測した各電圧波形を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態のプログラマブルコントローラ1の電気的構成を示す機能ブロック図である。プログラマブルコントローラ1は、2つのマイクロプロセッサ2A,2Bを備えている。マイクロプロセッサ2A,2Bは同一の制御プログラムを並行的に実行し、制御対象に対してはマイクロプロセッサ2A,2Bの出力信号が論理積条件で出力される。ユーザ電源UPには、2つのリレースイッチ3A,3Bが直列に接続されており、マイクロプロセッサ2A,2Bは、それぞれリレースイッチ3A,3Bを制御対象としてこれらのオンオフを制御する。したがって、マイクロプロセッサ2A,2Bが、それぞれリレースイッチ3A,3Bをオンする制御信号を出力した際に、ユーザ電源UPが出力される。すなわち、マイクロプロセッサ2A,2Bは、ユーザ電源UPの供給制御を行う。
【0016】
マイクロプロセッサ2A,2Bは、何れも図示しないコア部とロジック部とを備えている。コア部は、ALUや命令デコーダ,複数のレジスタ等を備える部分であり、ロジック部は、コア部の周辺回路であって外部回路とのインターフェイス等を備える。コア部とロジック部とは、それぞれ動作用電源の電圧が異なる。コア部の動作用電源をコア電源と称し、ロジック部の動作用電源をロジック電源と称する。各電源に対応して、ロジック電源回路4とコア電源回路5とが設けられており、ロジック電源回路4は例えば3.3Vのロジック電源を生成し、コア電源回路5は例えば1.2Vのロジック電源を生成する。また、ロジック電源回路4とコア電源回路5とは、マイクロプロセッサ2A,2Bに対応して個別に設けられている。
【0017】
以下及び図1では、マイクロプロセッサ2A側の構成には符号に「A」を付し、マイクロプロセッサ2B側の構成には符号に「B」を付して示している。但し、特に「A,B」を区別する必要が場合には「A,B」を付さずに示す。
【0018】
ロジック電源回路4には、例えば直流24Vの主電源が第1スイッチ回路6A及び第2スイッチ回路6Bを介して入力される。コア電源回路5Aには、ロジック電源回路4Aの出力電圧VCCAが第3スイッチ回路7Aを介して入力され、コア電源回路5Bには、ロジック電源回路4Bの出力電圧VCCBが第4スイッチ回路7Bを介して入力される。コア電源回路5は、コア電源電圧Vcoreを生成し、マイクロプロセッサ2のコア部に供給する。第1及び第2スイッチ回路6は入力側スイッチ回路に相当し、第3及び第4スイッチ回路7は電源間スイッチ回路に相当する。
【0019】
ロジック側コンパレータ8は、ロジック電源電圧VCCの過電圧監視用であり、コア側コンパレータ9は、コア電源電圧Vcoreの過電圧監視用である。第1~第4の各スイッチ回路6A,6B,7A,7Bのオンオフは、それぞれORゲート10A,10B,11A,11Bを介して制御される。ORゲート10Aには、コンパレータ8Aの出力信号OFF_A0と、マイクロプロセッサ2Aの出力信号OFF_A1とが入力されている。
ORゲート10Bには、コンパレータ8Bの出力信号OFF_B0と、マイクロプロセッサ2Bの出力信号OFF_B1とが入力されている。
【0020】
ORゲート11Aには、コンパレータ9Aの出力信号OFFA_OVと、マイクロプロセッサ2Bの出力信号OFF_B2とが入力されている。ORゲート11Bには、コンパレータ9Bの出力信号OFFB_OVと、マイクロプロセッサ2Aの出力信号OFF_A2とが入力されている。
【0021】
コンパレータ9が過電圧を検出するための閾値電圧は、図2に示すように設定されている。コア電源回路5の出力電圧の最大値が例えば1.243Vであり、マイクロプロセッサ2のコア部の絶対最大定格電圧が例えば1.43Vであるとすると、閾値電圧OV_Vrefを、それらの間の値に設定する。具体的には、例えば両者の差の1/2を出力電圧の最大値に加えた値にする。
(1.43-1.243)/2=0.0935
OV_Vref=1.243+0.0935=1.3365≒1.337(V)
【0022】
尚、図1に示すコンパレータ9は「OV/UV」となっており、図2に示す低電圧UVも検出するウインドウコンパレータのように示されているが、本実施形態では低電圧検出機能については詳細に説明しない。また、コンパレータ8の閾値電圧についても、ロジック電源回路4の出力電圧の最大値と、マイクロプロセッサ2のロジック部の絶対最大定格電圧との関係に応じて同様に設定されている。
【0023】
マイクロプロセッサ2Aは、自身のコア電源電圧VcoreAを監視すると共に、マイクロプロセッサ2B側のコア電源電圧VcoreBも監視している。同様に、マイクロプロセッサ2Bは、自身のコア電源電圧VcoreBを監視すると共に、マイクロプロセッサ2A側のコア電源電圧VcoreAも監視している。また、マイクロプロセッサ2A,2Bは、プロセッサ間通信MCU_COMMを介して相互に情報を送り合うようになっている。
【0024】
次に、本実施形態の作用について図3及び図4を参照して説明する説明する。図3は、マイクロプロセッサ2A側の過電圧検出に対応した処理を示すフローチャートである。初期状態として、第1~第4の各スイッチ回路6A,6B,7A,7Bは何れもオンである。コンパレータ9A及びマイクロプロセッサ2Aにより、コア電源電圧VcoreAの過電圧/低電圧を監視し(S1)、過電圧状態又は低電圧状態を検出すると(YES)、コンパレータ9Aが第3スイッチ回路7Aをオフし、マイクロプロセッサ2Aが信号OFF_2Aを出力して第4スイッチ回路7Bをオフする(S2)。
【0025】
スイッチ回路7Aがオフされても、後述する図4に示すように、コンパレータ9Aの動作によりコア電源電圧Vcoreは略一定レベルで供給されるので、マイクロプロセッサ2Aは動作を継続できる。マイクロプロセッサ2Bは、プロセッサ間通信MCU_COMMによりスイッチ回路7Aがオフされたことを認識すると(S3)、マイクロプロセッサ2A側の過電圧検出回数をカウントするためのMCUAステータスカウンタをインクリメントする(S4)。
【0026】
それから、MCUAステータスカウンタの値が「3」以上か否かを判断する(S5)。上記カウンタの値が「3」に達していなければ(NO)プログラマブルコントローラ1としての通常運転を行う。カウンタの値が「3」に達すると(YES)、マイクロプロセッサ2Bは、信号OFF_B2を出力して第3スイッチ回路7Aをオフにする(S6)。これにより、コア電源回路4Aに入力されるロジック電源が断たれるので、マイクロプロセッサ2Aは動作を停止する。事前に、マイクロプロセッサ2A側のコア電源電圧VcoreAについて、過電圧状態又は低電圧状態が検出されたことを、表示パネル等のユーザインターフェイスに表示させることで、ユーザは故障が発生したモジュールを交換する等の対応を行う。
【0027】
その際に、ユーザがプログラマブルコントローラ1の動作を停止させる操作入力を行えば、マイクロプロセッサ2Bは信号OFF_B1を出力して第2スイッチ回路6Bをオフにする。これにより、マイクロプロセッサ2Bに対する電源の供給も遮断される。尚、マイクロプロセッサ2A側の過電圧検出に対応した処理の場合は、図3中に示す「A,B」が逆になる。
【0028】
図4に示すように、コア電源回路5Aの入出力端子間が短絡すると、a)ロジック電源電圧VCCAは、3.3Vと1.2Vとの間の電位に低下するので、c)コア電源電圧VcoreAが上昇する。これに伴い、b)コンパレータ9Aの出力信号OFFA_OVがハイレベルとなり第3スイッチ回路7Aをオフにする。尚、コア電源回路5Aの出力側の容量は、10μF程度である。
【0029】
第3スイッチ回路7Aがオフになることで、電圧VcoreAの過電圧状態が一瞬緩和されるので出力信号OFFA_OVはローレベルとなり、第3スイッチ回路7Aはオンに戻る。以降は第3スイッチ回路7Aのオフ,オンが繰り返されるハンチング動作となり、その結果、電圧VcoreAは1.392V程度の略一定レベルに維持され、コア部の絶対最大定格電圧に達することはない。
【0030】
以上のように本実施形態によれば、プログラマブルコントローラ1において、ロジック電源回路4は、入力される主電源よりマイクロプロセッサ2のロジック部に供給するロジック電源VCCを生成する。コア電源回路5は、ロジック電源VCCよりマイクロプロセッサ2のコア部に供給するコア電源Vcoreを生成する。スイッチ回路7は、ロジック電源回路4とコア電源回路5との間に配置され、コア側コンパレータ9は、コア電源Vcoreの電圧が、コア電源回路5の出力電圧とコア部の絶対最大定格電圧との間に設定されている閾値電圧OV_Vrefを超えて過電圧状態になると、スイッチ回路7をオフにする。
【0031】
このように構成すれば、コンパレータ9のハンチング動作によりコア電源Vcoreの電圧は一定のレベルを維持するようになり、閾値電圧OV_Vrefを上記の範囲内に設定することで、前記一定のレベルも閾値電圧OV_Vrefと同様の値となる。したがって、マイクロプロセッサ2のコア部は過電圧により破壊されることなく、コア電源Vcoreの電圧が一定レベルに維持されることで動作を継続できる。そして、マイクロプロセッサ2の動作が継続されている間に、過電圧の発生に対応できるようになる。
【0032】
具体的には、閾値電圧OV_Vrefを、コア電源回路5の最大出力電圧と前記絶対最大定格電圧との差の1/2を、前記最大出力電圧に加えた値に設定する。これにより、過電圧が発生した際には十分に余裕を持たせて、コア電源回路5の出力電圧がコア部の絶対最大定格電圧に到達する以前にスイッチ回路7をオフできる。
【0033】
また、スイッチ回路6を、ロジック電源回路4の入力電源側に配置し、ロジック側コンパレータ8は、ロジック電源VCCの電圧が閾値電圧を超えるとスイッチ回路6をオフにする。このように構成すれば、ロジック側コンパレータ8もコア側コンパレータ9と同様に動作するので、ロジック電源VCCの電圧も一定のレベルを維持するようになる。したがって、マイクロプロセッサ2のロジック部も過電圧により破壊されることなく、動作を継続することができる。
【0034】
更に、マイクロプロセッサ2,ロジック電源回路4,コア電源回路5,スイッチ回路7,コンパレータ8及び9を2並列で配置し、第1及び第2スイッチ回路6A,6Bは直列に配置する。マイクロプロセッサ2A,2Bは、同一の制御プログラムを同時並行して実行し、制御対象にはマイクロプロセッサ2A,2Bからの2つの出力信号が論理積条件で出力する。これにより、マイクロプロセッサ2A,2Bがそれぞれ実行する処理内容が一致していることを条件に、出力信号が制御対象に入力されるので、プログラマブルコントローラ1の安全性が向上する。
【0035】
そして、マイクロプロセッサ2A,2Bは、互い他のマイクロプロセッサ2B,2Aに供給されているコア電源VcoreB,Aの電圧を監視し、当該電圧が過電圧状態になるとスイッチ回路6A,6Bをオフにする。これにより、過電圧が発生した側のマイクロプロセッサ2が動作を継続し続ける状態を解消できる。
【0036】
加えて、マイクロプロセッサ2Bは、マイクロプロセッサ2Aに供給されているコア電源VcoreAの電圧が過電圧状態になったことを複数回確認すると、スイッチ回路6Bをオフにするので、例えばノイズ等の影響を受けて過電圧が一時的に発生したような場合を排除して、過電圧の発生を確実に確認できた際にスイッチ回路6Bをオフにできる。
【0037】
ここで、プログラマブルコントローラのような産業機器に適用される規格であるISO13849-1の一般的な水準であるカテゴリ4では、「単一の不具合で安全機能の損失を招かない。」、且つ「単一の不具合は、安全機能に対する次の動作要求時,又はそれ以前に検出される。それが不可能な場合、不具合の蓄積が安全機能の喪失を招いてはならない。」と規定されている。本実施形態の構成は、カテゴリ4を満たすものとなっている。
【0038】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
低電圧検出機能については、削除しても良い。
閾値電圧OV_Vrefは、1.337Vに限らず、適切に過電圧を検出できるように、コア電源回路5の出力電圧の最大値とコア部の絶対最大定格電圧との間で適宜マージンを持たせて設定すれば良い。
ステップS2では、第3スイッチ回路6Aのみオフしても良い。
ステップS5でカウンタ値を比較する値は、「2」以上であれば良い。
第1及び第2スイッチ回路6やロジック側コンパレータ8を削除しても良い。また、入力側スイッチ回路を1つだけにして、マイクロプロセッサ2A,2Bが双方とも1つの入力側スイッチ回路をオフしても良い。
例えばマイクロプロセッサ2B側の構成を削除しても良い。
電源電圧等の具体数値については、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
【符号の説明】
【0039】
図面中、1はプログラマブルコントローラ、2はマイクロプロセッサ、3はリレースイッチ、4はロジック電源回路、5はコア電源回路、6Aは第1スイッチ回路、6Bは第2スイッチ回路、7Aは第3スイッチ回路、7Bは第4スイッチ回路、8はロジック側コンパレータ、9はコア側コンパレータ、10及び11はORゲートを示す。
図1
図2
図3
図4