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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
G02B6/44 381
G02B6/44 366
G02B6/44 371
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019182643
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021060438
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 美昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文昭
(72)【発明者】
【氏名】高見 正和
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/101041(WO,A1)
【文献】特開2002-231066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0240810(US,A1)
【文献】特開2002-357750(JP,A)
【文献】特開2001-021781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバ心線、光ファイバ心線を並べた光ファイバテープ心線、または前記複数本の光ファイバ心線および前記光ファイバテープ心線をまとめた集合コアと、前記集合コアの周囲に設けたケーブル外被と、を備えるスロットレス型の光ファイバケーブルであって、
前記ケーブル外被が、前記集合コアの外側に設けられた内層と、前記内層の外側に設けられた外層と、を有し、
前記外層に用いられる材料の密度が0.942(g/cm)以上であり、前記内層に用いられる材料の密度が0.942(g/cm)未満であり、
前記内層および前記外層を合わせた材料の引張弾性率を前記ケーブル外被の合成引張弾性率としたとき、前記ケーブル外被の合成引張弾性率と前記ケーブル外被の総断面積との積が、60,000(N)以下である、光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記ケーブル外被の総断面積における前記外層の断面積の占める割合が、60(%)以下である、請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記ケーブル外被の総断面積における前記外層の断面積の占める割合が、20(%)以上である、請求項1または請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記光ファイバテープ心線は、並列に配置された複数本の光ファイバ心線間の長手方向に、連結部と非連結部とが間欠的に形成されている、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット等の情報通信の普及による通信の高速化や情報量の増大に加え、双方向通信と大容量通信に対応するために、光ネットワークの構築が進展している。この光ネットワークでは、通信事業者と各家庭とを光ファイバで直接結び、高速通信サービスを提供するFTTH(Fiber To The Home)が開始されており、その通信量は、年々増加している。それに応じ、光ファイバケーブルの小径化、高密度化が求められている。特許文献1には、スロットレス型の光ファイバケーブルの構造が開示されている。スロットレス型の光ファイバケーブルは、スロット型の光ファイバケーブルのようなスロットが無いため、小径化、軽量化、高密度化しやすい、という利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-8923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにスロットレス型の光ファイバケーブルは軽量化しやすいため、空気圧送用の光ファイバケーブル(マイクロダクトケーブルともいう)に適している。しかし、空気圧送用の光ファイバケーブルは、所定圧の空気をダクト内に供給し、ケーブルを押し込みながらダクト内に通線するので、ダクト内を通りやすくすることが望ましい。
【0005】
本開示は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、低温時の損失増加を防止するとともにダクト内を通りやすいスロットレス型の光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る光ファイバケーブルは、複数本の光ファイバ心線、光ファイバ心線を並べた光ファイバテープ心線、または前記複数本の光ファイバ心線および前記光ファイバテープ心線をまとめた集合コアと、前記集合コアの周囲に設けたケーブル外被と、を備えるスロットレス型の光ファイバケーブルであって、前記ケーブル外被が、前記集合コアの外側に設けられた内層と、前記内層の外側に設けられた外層と、を有し、前記外層に用いられる材料の密度が0.942(g/cm)以上であり、前記内層に用いられる材料の密度が0.942(g/cm)未満であり、前記内層および前記外層を合わせた材料の引張弾性率を前記ケーブル外被の合成引張弾性率としたとき、前記ケーブル外被の合成引張弾性率と前記ケーブル外被の総断面積との積が、60,000(N)以下である
【発明の効果】
【0007】
上記によれば、低温時の損失増加を防止するとともにダクト内を通りやすいスロットレス型の光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一態様に係る光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
図2】間欠テープ心線の構造の一例を示す図である。
図3】各試料の諸元と評価結果を説明する表である。
図4】低温時損失変化量とHDPE面積比率との関係を説明する図である。
図5】低温時損失変化量とES積との関係を説明する図である。
図6】曲げ剛性とHDPE面積比率との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示に係る光ファイバケーブルは、(1)複数本の光ファイバ心線、光ファイバ心線を並べた光ファイバテープ心線、または前記複数本の光ファイバ心線および前記光ファイバテープ心線をまとめた集合コアと、前記集合コアの周囲に設けたケーブル外被と、を備えるスロットレス型の光ファイバケーブルであって、前記ケーブル外被が、前記集合コアの外側に設けられた内層と、前記内層の外側に設けられた外層と、を有し、前記外層に用いられる材料の密度が0.942(g/cm)以上であり、前記内層に用いられる材料の密度が0.942(g/cm)未満であり、前記内層および前記外層を合わせた材料の引張弾性率を前記ケーブル外被の合成引張弾性率としたとき、前記ケーブル外被の合成引張弾性率と前記ケーブル外被の総断面積との積が、60,000(N)以下である。スロットレス型の光ファイバケーブルであるので、スロット型の場合に比べて、小径化、軽量化、高密度化しやすくなる。そして、ケーブル外被が内層と外層の2層からなり、外層に用いられる材料の密度が内層よりも高くなっている。具体的には、外層が例えば高密度ポリエチレン(HDPE)で構成されていれば、通常用いられる低密度ポリエチレン(LDPE)に比べて摩擦係数が低くなり、ダクト内を通りやすくなる。また、ダクト内に供給する空気圧を高くしたり、ダクト内に押し込んだりしても、外層が固いので、十分に耐えられる。
また、ケーブル外被の合成引張弾性率とケーブル外被の総断面積との積を60,000(N)以下にするので、外層をHDPEで構成しても、低温時の損失増加を防止することができる。
【0010】
(2)本開示の光ファイバケーブルの一態様では、前記ケーブル外被の総断面積における前記外層の断面積の占める割合が、60(%)以下である。ケーブル外被の総断面積における外層の断面積の占める割合を60(%)以下にするので、外層をHDPEで構成しても、低温時の損失増加を防止することができる。
(3)本開示の光ファイバケーブルの一態様では、前記ケーブル外被の総断面積における前記外層の断面積の占める割合が、20(%)以上である。ケーブル外被の総断面積における外層の断面積の占める割合が20(%)以上であるので、曲げ剛性が0.3(N・m)以上になり、ダクト内を通りやすくなるとともに、空気圧送に十分に耐えることができる。
【0011】
)本開示の光ファイバケーブルの一態様では、前記光ファイバテープ心線は、並列に配置された複数本の光ファイバ心線間の長手方向に、連結部と非連結部とが間欠的に形成されている。間欠テープ心線を用いれば、ケーブル外径を細く維持したまま、光ファイバ心線を高密度に集合させたスロットレス型の光ファイバケーブルを提供することができる。
【0012】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照しながら、本開示による光ファイバケーブルの好適な実施の形態について説明する。
図1は、本開示の一態様に係る光ファイバケーブルの一例を示す断面図、図2は、間欠テープ心線の構造の一例を示す図である。
【0013】
図1に示した光ファイバケーブル10はスロットレス型であり、例えば丸型の集合コア11と、この集合コア11の周囲に形成されたケーブル外被13とを有する。
集合コア11には、例えば12心の間欠テープ心線1が複数枚収容されている。なお、間欠テープ心線の他、単心の光ファイバ心線を複数本束ねた状態で収容することも可能である。
【0014】
間欠テープ心線とは、複数本の光ファイバ心線が平行一列に配列され、隣り合う光ファイバ心線同士を連結部と非連結部により間欠的に連結してなるものである。図2(A)は間欠テープ心線を配列方向に開いた状態を、図2(B)は図2(A)のB-B線矢視断面図をそれぞれ示しており、図示の間欠テープ心線1は、12心のテープ心線が2心毎に間欠的に接続されて構成されている。
【0015】
図2(B)に示すように、各光ファイバ心線2の周囲には、紫外線硬化樹脂等によるテープ被覆5が設けられ、例えば2心を一体化した心線同士が連結部3と非連結部4により間欠的に連結されている。連結部3では、隣り合うテープ被覆5が連なり、非連結部4では、隣り合うテープ被覆5が連結されずに分離されている。
このような、間欠テープ心線を用いれば、集合コア11内で自由に変形できるため、細いケーブル外径を維持したまま、光ファイバ心線2を高密度に集合させることができる。
【0016】
この間欠テープ心線に収容される光ファイバ心線は、例えば、標準外径125(μm)のガラスファイバに被覆外径が250(μm)前後の被覆を施した光ファイバ素線と称されるものの外側に、さらに着色被覆を施したものであるが、これに限られるものでは無く、被覆外径が165(μm)、200(μm)程度の細径ファイバであってもよい。なお、間欠テープ心線は、2心毎に連結部と非連結部を設けなくてもよく、例えば1心毎に連結部と非連結部で間欠的に連結してもよい。
【0017】
なお、複数枚の間欠テープ心線1を撚り合わせてユニットとし、複数のユニットを集合させた状態にしてもよい。また、複数枚の間欠テープ心線をバンドル材などで束ねてもよく、あるいは、上記ユニット毎にバンドル材などで束ねてもよい。
一方、図1に示すように、光ファイバケーブル10の集合コア11は、例えば、吸水テープ12で縦添えまたは横巻きして丸型にまとめられている。
【0018】
吸水テープ12の外側は、2種類のポリエチレン(PE)によって構成されたケーブル外被13で覆われている。
ケーブル外被13(後述の内層14)には、長手方向の強度を保持するための例えば2本のテンションメンバ(抗張力体ともいう)16や、ケーブル外被13をケーブル長手方向に引き裂くための例えば2本の引き裂き紐17が、ケーブル外被13(内層14)の押出成形時に縦添えされて埋設される。
【0019】
テンションメンバ16には、引張り及び圧縮に対する耐力を有する線材、例えば、鋼線やFRP(Fiber Reinforced Plastics)などが用いられており、例えば集合コア11を挟んで両側に設けられている。
引き裂き紐17は、2本のテンションメンバ16の中心を結ぶ線に対して直交する線上の位置に、集合コア11を挟んで両側に1本ずつ設けられている。引き裂き紐17は、例えば、ナイロンやポリエステルなどの樹脂材が用いられた断面円形状の紐状部材であり、集合コア11の径方向に沿って例えば同一直線上に並んでいる。
【0020】
図1に示すように、ケーブル外被13は、内層14と外層15との2層で形成されている。内層14が集合コア11に接触し、外層15は、内層14の外側に設けられ、テンションメンバ16の外側を覆っている。
【0021】
マイクロダクトケーブルはダクト内で空気圧送されるため、ダクト内で圧送距離を延ばすには、ケーブル表面の摩擦係数を低くすることが望ましい。そこで、外層15に用いられる材料は、密度が0.942(g/cm)以上0.98(g/cm)以下であり(例えば0.95(g/cm))、引張弾性率が700~1,200(MPa)のものを用いている。なお、0.942(g/cm)以上の密度のものを高密度ポリエチレン(HDPE)ともいう。
【0022】
このように、ケーブル外被13の外層15がHDPEで構成されており、摩擦係数が低くなるため、ダクト内を通りやすくなる。また、外層15をHDPEで構成すれば、ダクト内に供給する空気圧を高くしたり、ダクト内に押し込んだりしても、外層が固いので、十分に耐えられる。
ただし、ケーブル外被13をHDPEのみで構成すると、引張弾性率が高いため、低温時に収縮して集合コア11内の光ファイバ心線2が圧縮されて曲げが発生し、損失が増加してしまう。この場合、図1に示すような、ケーブル外被13に埋設されるタイプのテンションメンバ16では、テンションメンバを太径にするのも難しく、被覆の収縮に対抗することができない。
そこで、内層14に用いられる材料は、密度が0.91(g/cm)以上0.942(g/cm)未満であり(例えば0.93(g/cm))、引張弾性率が100~600(MPa)のものを用い、低温時に収縮し難くして低温時における損失増加を防いでいる。なお、0.942(g/cm)未満の密度のものを、HDPEと区別するために便宜上、低密度ポリエチレン(LDPE)と称する。
【0023】
図3は、各試料の諸元と評価結果を説明する表である。
外径φ12(mm)やφ16(mm)の光ファイバケーブル10について、内層14のLDPE(引張弾性率が300(MPa))の外被厚、および外層15のHDPE(引張弾性率が1,050(MPa))の外被厚をそれぞれ変更し、表面摩擦係数、低温時損失変化量、合成引張弾性率、さらに、合成引張弾性率×外被総断面積値(ES積ともいう)を求めて、各々の条件のものが、空気圧送用の光ファイバケーブルに適するか否か(適する場合をA、適しない場合をB)、を評価した。
【0024】
表面摩擦係数は光ファイバケーブル10のケーブル表面の摩擦係数である。低温時損失変化量(dB/km)は、光ファイバケーブル10を低温(-40℃)下に放置した場合の損失変化量である。合成引張弾性率(MPa)は、内層14および外層15を合わせて一つの部材に換算した材料の引張弾性率であり、内層14と外層15の断面積比を用いて求めている。ES積(N)は、合成引張弾性率(MPa)と外被総断面積値(mm)との積であり、ケーブル外被13の強さの指標の一つである。合成引張弾性率が本開示による「ケーブル外被の合成引張弾性率」に相当し、外被総断面積値が本開示による「ケーブル外被の総断面積」に相当する。
【0025】
ケーブル外径(光ファイバケーブル10の外径)がφ12(mm)でケーブル内径(集合コア11の外径)がφ8(mm)であり、LDPE外被厚を2(mm)、HDPE外被厚を0(mm)とした場合(試料1と称する)、LDPE断面積は62.8(mm)となり、HDPE断面積は0(mm)、HDPE面積比率は0(%)となる。なお、HDPE面積比率が本開示による「ケーブル外被の総断面積における外層の断面積の占める割合」に相当する。この試料1の場合、ES積は18,850(N)となり、低温時損失変化量は0.05(dB/km)と低かったが、表面摩擦係数が0.5と大きくなり、ダクト内を通りにくくなるので、空気圧送用の光ファイバケーブルには適さない(評価B)と判定した。なお、試料1の場合、曲げ剛性は0.1(N・m)であり、この点でも、通線するには不十分な値であった。
【0026】
一方、ケーブル外径がφ12(mm)でケーブル内径がφ8(mm)であり、LDPE外被厚を1(mm)、HDPE外被厚を1(mm)とした場合(試料2と称する)、LDPE断面積は28.3(mm)となり、HDPE断面積は34.6(mm)、HDPE面積比率は55(%)となる。この試料2の場合、表面摩擦係数が0.15、ES積は44,768(N)となり、低温時損失変化量は0.15(dB/km)となった。この場合、表面摩擦係数が小さくなり、低温時損失変化量は所定の基準値0.2(dB/km)以下であるため、空気圧送用の光ファイバケーブルに適する(評価A)と判定した。なお、試料2の場合、曲げ剛性が0.85(N・m)であり、通線するには十分な値であった。
【0027】
次に、ケーブル外径がφ12(mm)でケーブル内径がφ8(mm)であり、LDPE外被厚を0(mm)、HDPE外被厚を2(mm)とした場合(試料3と称する)、LDPE断面積は0.0(mm)となり、HDPE断面積は62.8(mm)、HDPE面積比率は100(%)となる。この試料3の場合、表面摩擦係数が0.15であるが、ES積は65,973(N)と60,000(N)より大きくなった。このため、低温時損失変化量は0.22(dB/km)となって所定の基準値0.2(dB/km)以下を満たさず、低温時の損失増加を回避できないので、空気圧送用の光ファイバケーブルには適さない(評価B)と判定した。なお、試料3の場合、曲げ剛性が1.5(N・m)であった。
【0028】
ケーブル外径がφ16(mm)でケーブル内径がφ12(mm)であり、LDPE外被厚を2(mm)、HDPE外被厚を0(mm)とした場合(試料4と称する)、LDPE断面積は88.0(mm)となり、HDPE断面積は0(mm)、HDPE面積比率は0(%)となる。この試料4の場合、ES積は26,389(N)であり、低温時損失変化量は0.05(dB/km)であるが、表面摩擦係数が0.5と大きくなり、ダクト内を通りにくくなるので、空気圧送用の光ファイバケーブルには適さない(評価B)と判定した。なお、試料4の場合、曲げ剛性が0.1(N・m)であり、この点でも、通線するには不十分な値であった。
【0029】
一方、ケーブル外径がφ16(mm)でケーブル内径がφ12(mm)であり、LDPE外被厚を1.1(mm)、HDPE外被厚を0.9(mm)とした場合(試料5と称する)、LDPE断面積は45.3(mm)となり、HDPE断面積は42.7(mm)、HDPE面積比率は49(%)となる。この試料5の場合、表面摩擦係数が0.15、ES積は58,410(N)となり、低温時損失変化量は0.18(dB/km)となった。この場合、表面摩擦係数が小さくなり、低温時損失変化量は所定の基準値0.2(dB/km)以下であるため、空気圧送用の光ファイバケーブルに適する(評価A)と判定した。なお、試料5の場合、曲げ剛性が0.7(N・m)であった。
【0030】
続いて、ケーブル外径がφ16(mm)でケーブル内径がφ12(mm)であり、LDPE外被厚を0(mm)、HDPE外被厚を2(mm)とした場合(試料6と称する)、LDPE断面積は0(mm)となり、HDPE断面積は88.0(mm)、HDPE面積比率は100(%)となる。この試料6の場合、表面摩擦係数が0.15であるが、ES積は92,363(N)と60,000(N)より大きくなった。このため、低温時損失変化量は0.25(dB/km)となって所定の基準値0.2(dB/km)以下を満たさず、低温時の損失増加を回避できないので、空気圧送用の光ファイバケーブルには適さない(評価B)と判定した。なお、試料6の場合、曲げ剛性が1.5(N・m)であった。
【0031】
図4は、低温時損失変化量とHDPE面積比率との関係を説明する図である。
HDPE面積比率が下がるに連れて、低温時損失変化量も次第に低下している。そして、HDPE面積比率が60(%)以下になると、低温時損失変化量を所定の基準値(0.2(dB/km))以下に抑えられることが分かる。
このように、HDPE面積比率を60(%)以下にすれば、外層15をHDPEで構成しても、低温時の損失増加を防止することができる。
【0032】
図5は、低温時損失変化量とES積との関係を説明する図である。
ES積が下がるに連れて、低温時損失変化量も次第に低下している。そして、ES積が60,000(N)以下になると、低温時損失変化量を所定の基準値(0.2(dB/km))以下に抑えられることが分かる。
このように、ES積を60,000(N)以下にすれば、外層15をHDPEで構成しても、低温時の損失増加を防止することができる。
【0033】
図6は、曲げ剛性とHDPE面積比率との関係を説明する図である。
HDPE面積比率が上がるに連れて、曲げ剛性も次第に上昇している。そして、HDPE面積比率が20(%)以上になると、曲げ剛性が所定の基準値0.3(N・m)以上になることが分かる。
したがって、HDPE面積比率を20(%)以上にすれば、ダクト内を通りやすくなるとともに、空気圧送に十分に耐えることができる。
【0034】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0035】
1…間欠テープ心線、2…光ファイバ心線、3…連結部、4…非連結部、5…テープ被覆、10…光ファイバケーブル、11…集合コア、12…吸水テープ、13…ケーブル外被、14…内層、15…外層、16…テンションメンバ、17…引き裂き紐、E…合成引張弾性率、S…外被総断面積値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6