(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】燃焼器
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20230711BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20230711BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2019183212
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 隆義
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優介
(72)【発明者】
【氏名】山下 勇人
(72)【発明者】
【氏名】植木 毅
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼耒 徹朗
(72)【発明者】
【氏名】大島 健司
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】小代 卓史
(72)【発明者】
【氏名】長田 康弘
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-106844(JP,A)
【文献】特開2018-195377(JP,A)
【文献】特開2017-212203(JP,A)
【文献】特開2012-113931(JP,A)
【文献】特開2017-212204(JP,A)
【文献】特開2017-147220(JP,A)
【文献】特開2018-169080(JP,A)
【文献】特開2008-166070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システム(1)に用いられ、燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電する燃料電池スタック(2)で消費されなかった燃料ガスを含むオフ燃料と前記燃料電池スタックで消費されなかった酸化剤ガスを含むオフ空気とを燃焼させる燃焼器であって、
前記燃焼器の内部空間(50)を形成する筐体(32)と、
前記内部空間を第1室(51)と第2室(52)とに分割する分割部材(33)と、
前記第1室にオフ空気を供給する第1オフ空気供給口(41)と、
前記第2室にオフ空気を供給する第2オフ空気供給口(42)と、
前記第2室にオフ燃料を供給するオフ燃料供給口(43)と、
前記第2室のうちで前記オフ燃料供給口から吹き出されるオフ燃料が燃焼する燃焼領域(53)またはその近傍に向けて前記第1室からオフ空気を排出するオフ空気排出口(44)と、
前記第2オフ空気供給口から前記第2室に供給されたオフ空気が前記筐体の内壁に沿って流れてまたは直接的に前記燃焼領域に流入することを遮る遮蔽板(60、62)と、を備える燃焼器。
【請求項2】
前記遮蔽板は、前記第2オフ空気供給口から前記第2室に供給されたオフ空気の流れに対し、前記燃焼領域の少なくとも一部を囲うように設けられている、請求項1に記載の燃焼器。
【請求項3】
前記オフ空気排出口は、前記オフ燃料供給口に近い位置に設けられる第1オフ空気排出口(441)と、前記第1オフ空気排出口よりも前記オフ燃料供給口から遠い位置に設けられる第2オフ空気排出口(442)とを有している、請求項1または2に記載の燃焼器。
【請求項4】
前記第1オフ空気排出口は、前記第1オフ空気排出口の中心軸と前記オフ燃料供給口の中心軸とが交差しない位置に配置されている、請求項3に記載の燃焼器。
【請求項5】
前記第1オフ空気排出口は、オフ燃料が燃焼する火炎から離れた位置に向けてオフ空気を排出可能な位置に配置されており、
前記第2オフ空気排出口は、オフ燃料が燃焼する火炎に向けてオフ空気を排出可能な位置に配置されている、請求項3または4に記載の燃焼器。
【請求項6】
前記遮蔽板から突出して前記分割部材に当接するか、または、前記分割部材から突出して前記遮蔽板に当接するように構成された複数の突起部(61)をさらに備える請求項1ないし5のいずれか1つに記載の燃焼器。
【請求項7】
前記遮蔽板は、前記分割部材から前記第2室側に突出し、前記オフ燃料供給口と前記燃焼領域を囲う複数の突出壁(62)として構成されている、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の燃焼器。
【請求項8】
前記分割部材および前記遮蔽板のうち前記燃焼領域の周囲に配置される部位は、前記筐体に比べて単位面積当たりの熱容量が大きい構成とされている請求項1ないし7のいずれか1つに記載の燃焼器。
【請求項9】
燃料電池システム(1)に用いられ、燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電する燃料電池スタック(2)で消費されなかった燃料ガスを含むオフ燃料と前記燃料電池スタックで消費されなかった酸化剤ガスを含むオフ空気とを燃焼させる燃焼器であって、
前記燃焼器の内部空間(50)を形成する筐体(32)と、
前記内部空間を第1室(51)と第2室(52)とに分割する分割部材(33)と、
前記第1室にオフ空気を供給する第1オフ空気供給口(41)と、
前記第2室にオフ空気を供給する第2オフ空気供給口(42)と、
前記分割部材の前記筐体側の部位(333)から前記筐体の内壁に沿って延びるカバー部(70)であって、前記筐体の内壁と前記カバー部との間に前記第1室に連通する扁平流路(71)を形成する前記カバー部と、
前記筐体のうち前記扁平流路が形成される部位に設けられ、前記扁平流路にオフ燃料を供給するオフ燃料供給口(43)と、
前記カバー部のうち前記オフ燃料供給口に対して前記カバー部の板厚方向に重なる位置に設けられ、前記第1室から前記扁平流路を流れるオフ空気と前記オフ燃料供給口から供給されるオフ燃料とを前記第2室に排出するオフ空気排出口(44)と、を備え、
前記扁平流路の少なくとも一部は、前記オフ空気排出口の外側を囲い、前記オフ空気排出口の軸を中心とした周方向の一方から他方に向かい流路面積が次第に小さくなるように形成されている、燃焼器。
【請求項10】
燃料電池システム(1)に用いられ、燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電する燃料電池スタック(2)で消費されなかった燃料ガスを含むオフ燃料と前記燃料電池スタックで消費されなかった酸化剤ガスを含むオフ空気とを燃焼させる燃焼器であって、
前記燃焼器の内部空間(50)を形成する筐体(32)と、
前記内部空間の一部を第1室(51)と第2室(52)とに分割する分割部材(33)と、
前記第1室にオフ空気を供給する第1オフ空気供給口(41)と、
前記第1オフ空気供給口に対して前記分割部材を挟んで設けられ、前記第2室にオフ空気を供給する第2オフ空気供給口(42)と、
前記第1オフ空気供給口に対向する位置に設けられ、前記第1室にオフ燃料を供給するオフ燃料供給口(43)と、を備え、
前記燃料電池スタックで消費されなかった酸化剤ガスを含むオフ空気は、前記第1オフ空気供給口と前記第2オフ空気供給口とから分かれて吹き出されるように構成されており、
前記第1オフ空気供給口から前記第1室に供給されるオフ空気と、前記オフ燃料供給口から前記第1室に供給されるオフ燃料とが衝突するように構成されており、
前記分割部材は、前記第1オフ空気供給口から前記第1室に供給されるオフ空気と前記オフ燃料供給口から前記第1室に供給されるオフ燃料とが衝突する箇所に対し、前記第2オフ空気供給口から前記第2室に供給されるオフ空気が直接流入しないように設けられており、
前記内部空間において前記分割部材が配置されていない箇所で前記第1室と前記第2室とが連通している燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに用いられる燃焼器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガスと酸化剤ガス(例えば空気)との電気化学反応により発電する燃料電池システムが知られている。燃料電池システムは、燃料電池スタックで消費されずに排出されたオフ燃料とオフ空気とを燃焼器で燃焼させる。また、燃料電池システムは、燃焼器で燃焼した燃焼ガスの熱が、燃料電池システムが備える改質器、蒸発器および空気予熱器などで利用される構成とされている。
【0003】
特許文献1に記載の燃料電池システムが備える燃焼器は、オフ空気とオフ燃料とが互いに直交する方向に吹き出されて混合された混合気が燃焼するように構成されている。なお、特許文献1では、燃料電池システムは燃料電池モジュールと呼ばれ、オフ空気は酸化剤排ガスと呼ばれ、オフ燃料は燃料排ガスと呼ばれている。
【0004】
また、特許文献2に記載の燃料電池システムは、燃料電池スタックから排出されたオフ燃料と原燃料ガスとをエジェクタで合流し、改質器を通して再び燃料電池スタックに供給し、発電に使用する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-134370号公報
【文献】特開2018-206685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者らは、燃料電池システムに関する検討の結果、次のような課題を見出した。すなわち、燃料電池システムでは、燃料電池スタックで燃料ガスと空気とが発電に消費され、燃焼器に供給されるオフ燃料中の燃料濃度とオフ空気中の酸素濃度が低くなると、失火などで燃焼が安定しなくなるといった課題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の燃料電池システムのように、燃料電池スタックから排出されるオフ燃料をリサイクルして再び発電に使用する構成の場合、燃焼器に供給されるオフ燃料中の燃料濃度がより低くなるため、その課題が顕著になるおそれがある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、燃焼を安定化することの可能な燃焼器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の燃焼器は、燃料電池システム(1)に用いられ、燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電する燃料電池スタック(2)で消費されなかった燃料ガスを含むオフ燃料と燃料電池スタックで消費されなかった酸化剤ガスを含むオフ空気とを燃焼させるものである。その燃焼器は、筐体(32)、分割部材(33)、第1オフ空気供給口(41)、第2オフ空気供給口(42)、オフ燃料供給口(43)、オフ空気排出口(44)および遮蔽板(60、62)を備える。筐体は、燃焼器の内部空間(50)を形成する。分割部材は、燃焼器の内部空間を第1室(51)と第2室(52)とに分割する。第1オフ空気供給口は、第1室にオフ空気を供給する。第2オフ空気供給口は、第2室にオフ空気を供給する。オフ燃料供給口は、第2室にオフ燃料を供給する。オフ空気排出口は、第2室のうちでオフ燃料供給口から吹き出されるオフ燃料が燃焼する燃焼領域(53)またはその近傍に第1室からオフ空気を排出する。遮蔽板は、第2オフ空気供給口から第2室に供給されたオフ空気が筐体の内壁に沿って流れてまたは直接的に燃焼領域に流入することを遮る。
【0010】
これによれば、第1オフ空気供給口から第1室に供給されるオフ空気(以下、「第1オフ空気」という)は、オフ空気排出口を経由して燃焼領域またはその近傍に供給される。また、オフ燃料は、オフ燃料供給口から燃焼領域に供給される。一方、第2オフ空気供給口から第2室に供給されるオフ空気(以下、「第2オフ空気」という)は、遮蔽板によって燃焼領域への流入が遮られる。そのため、燃焼領域では、第2オフ空気の流入による空気過剰率の増加(すなわち燃料リーン化)が防がれ、第1オフ空気とオフ燃料による空燃比(オフ空気の質量/オフ燃料の質量)が燃焼に適した範囲内に維持される。したがって、この燃焼器は、燃焼領域において燃焼を安定化することができる。その結果、この燃焼器を備えた燃料電池システムは、燃焼器から改質器への熱供給量の不足が防がれるので、改質器による燃焼ガスの生成が良好に行われ、発電効率を向上することができる。
【0011】
請求項9に記載の燃焼器は、燃料電池システム(1)に用いられ、燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電する燃料電池スタック(2)で消費されなかった燃料ガスを含むオフ燃料と燃料電池スタックで消費されなかった酸化剤ガスを含むオフ空気とを燃焼させるものである。その燃焼器は、筐体(32)、分割部材(33)、第1オフ空気供給口(41)、第2オフ空気供給口(42)、カバー部(70)、オフ燃料供給口(43)およびオフ空気排出口(44)を備える。筐体は、燃焼器の内部空間(50)を形成する。分割部材は、燃焼器の内部空間を第1室(51)と第2室(52)とに分割する。第1オフ空気供給口は、第1室にオフ空気を供給する。第2オフ空気供給口は、第2室にオフ空気を供給する。カバー部は、分割部材の筐体側の部位(333)から筐体の内壁に沿って延びるものであり、そのカバー部と筐体の内壁との間に第1室に連通する扁平流路(71)を形成する。オフ燃料供給口は、筐体のうち扁平流路が形成される部位に設けられ、扁平流路にオフ燃料を供給する。オフ空気排出口は、カバー部のうちオフ燃料供給口に対してカバー部の板厚方向に重なる位置に設けられ、第1室から扁平流路を流れるオフ空気とオフ燃料供給口から供給されるオフ燃料とを第2室に排出する。そして、扁平流路の少なくとも一部は、オフ空気排出口の外側を囲い、オフ空気排出口の軸を中心とした周方向の一方から他方に向かい流路面積が次第に小さくなるように形成されている。
【0012】
これによれば、扁平流路の第1オフ空気の流れが、オフ空気排出口の軸を中心とした旋回流となる。そのため、オフ燃料供給口から扁平流路に供給されるオフ燃料と扁平流路を流れる第1オフ空気との混合が促進されると共に、オフ空気排出口から第2室に排出される混合気の軸方向の移動速度を下げることが可能である。したがって、その混合気が燃焼する火炎の吹き消えを抑制し、燃料を安定化させることができる。
【0013】
請求項10に記載の燃焼器は、燃料電池システム(1)に用いられ、燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電する燃料電池スタック(2)で消費されなかった燃料ガスを含むオフ燃料と燃料電池スタックで消費されなかった酸化剤ガスを含むオフ空気とを燃焼させるものである。その燃焼器は、筐体(32)、分割部材(33)、第1オフ空気供給口(41)、第2オフ空気供給口(42)およびオフ燃料供給口(43)を備える。筐体は、燃焼器の内部空間(50)を形成する。分割部材は、燃焼器の内部空間の一部を第1室(51)と第2室(52)とに分割する。第1オフ空気供給口は、第1室にオフ空気を供給する。第2オフ空気供給口は、第1オフ空気供給口に対して分割部材を挟んで設けられ、第2室にオフ空気を供給する。オフ燃料供給口は、第1オフ空気供給口に対向する位置に設けられ、第1室にオフ燃料を供給する。燃料電池スタックで消費されなかった酸化剤ガスを含むオフ空気は、前記第1オフ空気供給口と前記第2オフ空気供給口とから分かれて吹き出されるように構成されている。そして、第1オフ空気供給口から第1室に供給されるオフ空気と、オフ燃料供給口から第1室に供給されるオフ燃料とが衝突するように構成されている。分割部材は、第1オフ空気供給口から第1室に供給されるオフ空気とオフ燃料供給口から第1室に供給されるオフ燃料とが衝突する箇所に対し、第2オフ空気供給口から第2室に供給されるオフ空気が直接流入しないように設けられている。そして、内部空間において分割部材が配置されていない箇所で第1室と第2室とが連通している。
【0014】
これによれば、第1オフ空気供給口から第1室に供給される第1オフ空気と、オフ燃料供給口から第1室に供給されるオフ燃料とが衝突することにより、第1オフ空気とオフ燃料の両方の流速が小さくなり、混合気の淀みが形成される。そのため、その混合気が燃焼する燃焼ガスの流速が燃焼速度より速くなることが防がれる。したがって、火炎リフトが生じることなく、燃焼を安定化させることができる。
【0015】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る燃焼器が用いられる燃料電池システムの構成図である。
【
図2】燃料電池システムが備えるホットモジュールの一部を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る燃焼器の一部を示す斜視図である。
【
図4】
図3に一点鎖線IVで示した面において、燃焼器とその近傍を示す断面図である。
【
図5】
図3に一点鎖線で示したV面において、燃焼器とその近傍を示す断面図である。
【
図6】
図4のVI-VI線断面において、第1室から第2室に排出される第1オフ空気の流れを説明するための図である。
【
図7】燃焼器の内部空間の第2オフ空気および燃焼ガスの流れを説明するための説明図である。
【
図8】第1比較例の燃焼器に関し、
図7にVIII-VIII線で示した箇所における空気過剰率の分布を示すシミュレーション図である。
【
図9】第1実施形態の燃焼器に関し、
図7にVIII-VIII線で示した箇所における空気過剰率の分布を示すシミュレーション図である。
【
図10】第1実施形態の燃焼器と第1比較例の燃焼器に関し、
図6に一点鎖線Xで示した箇所における混合ガスの流速を示すグラフである。
【
図11】第2実施形態に係る燃焼器とその近傍を示す断面図である。
【
図12】第2実施形態に係る燃焼器の一部を示す斜視図である。
【
図13】
図11のXIII方向における燃焼器の一部を示す平面図である。
【
図14】第3実施形態に係る燃焼器とその近傍を示す断面図である。
【
図15】第3実施形態に係る燃焼器の一部を示す斜視図である。
【
図16】
図14のXVI方向における燃焼器の一部を示す平面図である。
【
図17】第4実施形態に係る燃焼器とその近傍を示す断面図である。
【
図18】
図17のXVIII-XVIII線における燃焼器の一部を示す平面図である。
【
図19】燃焼器の扁平流路を流れる第1オフ空気の流れを説明するための図である。
【
図20】第5実施形態に係る燃焼器とその近傍を示す断面図である。
【
図21】第6実施形態に係る燃焼器とその近傍を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム1は、燃料電池スタック2、エジェクタ3、改質器4、蒸発器5、空気予熱器6、燃焼器7および暖機用燃焼器8などを備えている。なお、燃焼器7はオフガスバーナと呼ばれ、暖機用燃焼器8は暖機バーナと呼ばれることもある。
【0019】
燃料電池スタック2には、都市ガスなどの原燃料ガスを水蒸気改質して生成した燃料ガスと、酸化剤ガスとしての空気(詳細には、空気中の酸素)が供給される。
【0020】
都市ガスなどの原燃料ガスは、炭化水素(例えば、メタン)を含むガスである。原燃料ガスは、燃料用ブロア9の駆動により燃料供給経路10を流れ、エジェクタ3を介して改質器4に導入される。その燃料供給経路10のうち燃料用ブロア9とエジェクタ3との間に蒸発器5から延びる水蒸気経路11が接続されている。蒸発器5には、ポンプ12の駆動により水が供給される。蒸発器5に供給された水は、燃焼器7から排出される燃焼ガスの熱により加熱され、水蒸気となって燃料供給経路10を流れる原燃料ガスと混合される。
【0021】
エジェクタ3は、入口13、吸引口14および吐出口15を有している。エジェクタ3の入口13には、原燃料ガスと水蒸気との混合ガスが供給される。エジェクタ3の吸引口14には、リサイクル通路16が接続されている。リサイクル通路16には、燃料電池スタック2で消費されなかった燃料ガスを含むオフ燃料の一部が流れる。エジェクタ3の吐出口15側の通路17には改質器4が接続されている。エジェクタ3は、入口13に供給される原燃料ガスと水蒸気との混合ガスを駆動流として、リサイクル通路16を流れるオフ燃料を吸引口14から吸引し、それらを混合したガスを吐出口15から改質器4へ吐出する。
【0022】
改質器4は、原燃料ガスとオフ燃料と水蒸気との混合ガスおよび触媒が、燃焼器7から排出される燃焼ガスの熱により、水蒸気改質反応が可能な温度に加熱される。そして、原燃料ガスと水蒸気は、改質器4の有する触媒の存在のもとで反応し、水素と一酸化炭素を含む燃料ガスに改質される。その燃料ガスは、燃料電池スタック2の図示しない燃料極に供給される。
【0023】
燃料電池スタック2に供給される酸化剤ガスとして用いられる空気は、空気用ブロア18の駆動により外気から取り込まれる。その空気は、空気供給経路19の途中に設けられた空気予熱器6を流れる際、燃焼器7から排出される燃焼ガスの熱により加熱される。空気予熱器6で加熱された空気は、燃料電池スタック2の図示しない空気極に供給される。
【0024】
燃料電池スタック2は、セルスタックとも呼ばれるものであり、図示しない複数の燃料電池セルの集合体である。燃料電池セルは、例えば、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)であり、電解質を挟んで一方側の面に燃料極(すなわち、アノード)が形成され、他方の面に空気極(すなわち、カソード)が形成された構成となっている。燃料電池スタック2は、燃料極に供給される燃料ガスと、空気極に供給される酸化剤ガスとしての空気(詳細には、空気中の酸素)との電気化学反応により発電する。
【0025】
燃料電池スタック2で消費されなかった酸化剤ガスを含むオフ空気は、オフ空気通路20を経由して燃焼器7に供給される。また、燃料電池スタック2で消費されなかった燃料ガスを含むオフ燃料は、オフ燃料通路21を経由し、その一部が燃焼器7に供給される。
【0026】
オフ燃料通路21の途中の部位とエジェクタ3の吸引口14とは、上述したリサイクル通路16により接続されている。そのため、オフ燃料通路21を流れるオフ燃料の他の一部は、リサイクル通路16を経由してエジェクタ3に吸い込まれる。すなわち、この燃料電池システム1は、エジェクタ3を備えることにより、燃料電池スタック2から排出されるオフ燃料をリサイクルして原燃料ガスと水蒸気と混合し、改質器4を通して再び燃料電池スタック2に供給することで発電に繰り返し使用する構成とされている。
【0027】
燃焼器7は、燃料電池スタック2から供給されるオフ燃料とオフ空気とを高温場で自着火により燃焼させるように構成されている。燃焼器7でオフ燃料とオフ空気とが燃焼して生成された燃焼ガスは、燃焼器7の燃焼ガス出口22から燃焼ガス通路23に排出される。燃焼器7および燃焼ガス通路23は、改質器4、空気予熱器6および蒸発器5に対して燃焼ガスの熱を供給可能に設けられている。そのため、改質器4の有する触媒およびその触媒を流れる源燃料ガスや水蒸気、空気予熱器6を流れる空気、並びに、蒸発器5に供給される水は、燃焼器7および燃焼ガス通路23を流れる燃焼ガスの熱により加熱される。
【0028】
暖機用燃焼器8は、燃料電池システム1の起動時に作動する。暖機用燃焼器8には、都市ガスと空気が供給される。暖機用燃焼器8は、都市ガスと空気との混合ガスを点火プラグ24により着火して燃焼させ、その燃焼ガスの熱により燃料電池スタック2を加熱するものである。なお、暖機用燃焼器8は、燃料電池システム1の起動時に続く発電時には動作を停止する。
【0029】
本実施形態では、上述した燃料電池スタック2、改質器4、蒸発器5、エジェクタ3、空気予熱器6、燃焼器7および暖機用燃焼器8が、ホットモジュール25として構成されている。
【0030】
次に、本実施形態の燃料電池システム1が備えるホットモジュール25の具体的な構成について
図2~
図5を参照して説明する。なお、以下の説明において、「上」、「下」の用語は、説明の便宜上用いるものであり、各部材が設置される方向を限定するものではない。
【0031】
図2に示すように、ホットモジュール25の中央部には、有底筒状に形成された暖機用燃焼器8が設けられている。暖機用燃焼器8では、燃料供給部26に都市ガスが供給され、混合室28に空気が供給される。その都市ガスと空気は混合室28で混合された後、混合室から暖機用燃焼室29に供給される。暖機用燃焼室29では、点火プラグ24の着火により混合ガスが燃焼する。暖機用燃焼室29で燃焼した燃焼ガスは、暖機用燃焼ガス通路30を通って燃料電池スタック2の周囲を流れ、燃料電池スタック2の暖機加熱に用いられる。
【0032】
暖機用燃焼器8の径方向外側に燃焼器7が設けられている。詳細には、暖機用燃焼器8の外縁を軸方向に延長した仮想円筒面(不図示)に対して径方向外側に燃焼器7が設けられている。その燃焼器7は、暖機用燃焼器8の径方向外側に環状に設けられている。
【0033】
暖機用燃焼器8の下側、且つ、燃焼器7の径方向内側には、燃料電池スタック2の空気極から排出されたオフ空気が流れるオフ空気通路20が設けられている。また、燃焼器7の下側には、燃料電池スタック2の燃料極から排出されたオフ燃料が流れるオフ燃料通路21が設けられている。
【0034】
オフ燃料通路21から燃焼器7に供給されるオフ燃料と、オフ空気通路20から燃焼器7に供給されるオフ空気とは、自着火により燃焼器7の内部空間50で燃焼する。燃焼器7の上方には、燃焼器7の燃焼ガス出口22に連通する筒状の燃焼ガス通路23が設けられている。
【0035】
燃焼器7と燃焼ガス通路23の径方向外側に改質器4が設けられている。改質器4には触媒が設けられている。改質器4では、エジェクタ3から供給される燃料ガスと水蒸気とが触媒を上から下へ流れるように構成されている。なお、燃焼器7の上側、且つ、燃焼ガス通路23の径方向内側には、断熱材31が設けられている。
【0036】
燃焼ガス通路23および改質器4の上方には、蒸発器5が設けられている。ホットモジュール25は、燃焼ガス通路23を流れた燃焼ガスが、蒸発器5の下側の流路27を流れた後、外気に排出されるように構成されている。
【0037】
図3~
図5に示すように、燃焼器7は、筐体32、分割部材33、第1オフ空気供給口41、第2オフ空気供給口42、オフ燃料供給口43、オフ空気排出口44、および、遮蔽板60などを有している。
【0038】
筐体32は、燃焼器7の外殻を構成している。筐体32の内側には、内部空間50が形成されている。筐体32は環状に形成されている。そのため、筐体32の内部空間50も環状に形成されている。
【0039】
本実施形態では、筐体32の径方向外側の壁の外側(径方向外側)に、改質器4が設けられている。一方、筐体32の径方向内側の壁の外側(径方向内側)に、オフ空気通路20が設けられている。また、燃焼器7の下側の壁の外側(下側)に、オフ燃料通路21が設けられている。そのため、以下の説明では、説明の便宜上、筐体32の径方向外側の壁を「筐体32の改質器4側の壁34」といい、筐体32の径方向内側の壁を「筐体32のオフ空気通路20側の壁35」という。また、筐体32の下側の壁を「筐体32の下壁36」といい、筐体32の上側の壁を「筐体32の上壁37」という。
【0040】
内部空間50には、内部空間50を第1室51と第2室52とに分割する分割部材33が設けられている。分割部材33は、環状に形成された環状板331と、その環状板331の径方向外側の部位から曲折する筒部332とを有している。環状板331の径方向内側の部位は、筐体32のオフ空気通路20側の壁35に接続している。筒部332は、環状板331の径方向外側の部位と、筐体32の下壁36とを接続している。
【0041】
内部空間50の中で第1室51は、分割部材33の環状板331の下面と、筒部332の径方向内側の面と、筐体32のオフ空気通路20側の壁35の一部と、筐体32の下壁36の一部とによって仕切られた空間である。一方、内部空間50の中で第2室52は、第1室51以外の空間である。具体的には、第2室52は、分割部材33の環状板331の上面と、筒部332の径方向外側の面と、筐体32の改質器4側の壁34と、筐体32の上壁37と、筐体32のオフ空気通路20側の壁35の一部と、筐体32の下壁36の一部とによって仕切られた空間である。
【0042】
筐体32のオフ空気通路20側の壁35には、複数の第1オフ空気供給口41と、複数の第2オフ空気供給口42とが設けられている。複数の第1オフ空気供給口41は、筐体32のオフ空気通路20側の壁35のうち、環状板331が接続する位置よりも下側に設けられている。複数の第1オフ空気供給口41は、燃焼器7の周方向に並んで設けられている。第1オフ空気供給口41は、オフ空気通路20と第1室51とを連通している。そのため、第1オフ空気供給口41は、オフ空気通路20から第1室51にオフ空気を供給することが可能である。なお、以下の説明では、第1オフ空気供給口41から第1室51に供給されるオフ空気を「第1オフ空気」という。
【0043】
複数の第2オフ空気供給口42は、筐体32のオフ空気通路20側の壁35のうち、環状板331が接続する位置よりも上側に設けられている。複数の第2オフ空気供給口42も、燃焼器7の周方向に並んで設けられている。第2オフ空気供給口42は、オフ空気通路20と第2室52とを連通している。そのため、第2オフ空気供給口42は、オフ空気通路20から第2室52にオフ空気を供給することが可能である。第2オフ空気供給口42の開口面積は、第1オフ空気供給口41の開口面積より大きく形成されている。なお、以下の説明では、第2オフ空気供給口42から第2室52に供給されるオフ空気を「第2オフ空気」という。
【0044】
筐体32の下壁36には、複数のオフ燃料供給口43が設けられている。複数のオフ燃料供給口43は、筐体32の下壁36のうち、分割部材33の筒部332が接続する位置よりも径方向外側に設けられている。言い換えれば、複数のオフ燃料供給口43は、筐体32の下壁36のうち、分割部材33の筒部332が接続する位置と、筐体32の改質器4側の壁34との間に設けられている。複数のオフ燃料供給口43は、燃焼器7の周方向に並んで設けられている。オフ燃料供給口43は、オフ燃料通路21と第2室52とを連通している。これにより、オフ燃料供給口43は、オフ燃料通路21から第2室52にオフ空気を供給することが可能である。
【0045】
オフ燃料供給口43から第2室52に供給されたオフ燃料は、燃焼器7の内部空間50の燃焼領域の温度が自着火温度以上であり、且つ、空燃比(オフ空気の質量/オフ燃料の質量)が燃焼可能な範囲にある場合、自着火により燃焼する。燃焼領域53とは、第2室52でオフ燃料が供給されて燃焼する領域をいう。
図5では、燃焼領域53を模式的に破線で示している。
【0046】
分割部材33の筒部332には、複数のオフ空気排出口44が設けられている。複数のオフ空気排出口44は、複数の第1オフ空気排出口441と複数の第2オフ空気排出口442を有している。第1オフ空気排出口441と第2オフ空気排出口442はいずれも、燃焼領域53またはその近傍と第1室51とを連通している。そのため、第1オフ空気排出口441と第2オフ空気排出口442は、第1室51から燃焼領域53またはその近傍に第1オフ空気を供給することが可能である。第1室51の第1オフ空気を第1オフ空気排出口441と第2オフ空気排出口442から分けて排出することで、第1オフ空気排出口441と第2オフ空気排出口442から個別に排出される第1オフ空気の流量を少なくすることが可能である。
【0047】
図3、
図4および
図6に示すように、複数の第1オフ空気排出口441は、筒部332の周方向に並んで設けられている。複数の第1オフ空気排出口441は、オフ燃料供給口43に近い位置(すなわち、筐体32の下壁36に近い位置)に設けられている。複数の第1オフ空気排出口441は、オフ空気排出口44の中心軸とオフ燃料供給口43の中心軸とが交差しない位置に配置されている。言い換えれば、複数の第1オフ空気排出口441は、オフ燃料が燃焼する火炎から離れた位置に向けてオフ空気を排出可能な位置に配置されている。すなわち、複数の第1オフ空気排出口441は、第1室51から燃焼領域53の近傍に第1オフ空気を供給することが可能である。
【0048】
図6では、第1室51から複数の第1オフ空気排出口441を通って燃焼領域53の近傍に吹き出される第1オフ空気の流れを、複数の矢印によって模式的に示している。その複数の矢印に示したように、オフ空気排出口44から吹き出された第1オフ空気は、オフ燃料供給口43から燃焼領域53に吹き出されるオフ燃料に対して直接当たることが防がれている。そのため、火炎の根元の燃料リーン化が抑制され、且つ、拡散燃焼を成立させることが可能となり、燃焼を安定化することができる。
【0049】
図3および
図5に示すように、複数の第2オフ空気排出口442も、筒部332の周方向に並んで設けられている。複数の第2オフ空気排出口442は、複数の第1オフ空気排出口441よりもオフ燃料供給口43から遠い位置に設けられている。複数の第2オフ空気排出口442は、オフ燃料が燃焼する火炎に向けてオフ空気を排出可能な位置に配置されている。詳細には、複数の第2オフ空気排出口442は、第2オフ空気排出口442の中心軸とオフ燃料供給口43の中心軸とが交差する位置に配置されている。このように複数の第2オフ空気排出口442を配置することで、第2オフ空気排出口442から第1オフ空気を火炎中に供給することが可能となる。そのため、火炎中で酸欠が生じることなく燃焼効率を向上し、未燃燃料ガスの発生を低減することができる。
【0050】
さらに本実施形態の燃焼器7は、内部空間50に遮蔽板60を備えている。遮蔽板60は、筒状に形成され、燃焼領域53の径方向外側を囲うように設けられている。詳細には、遮蔽板60は、筐体32の下壁36のうち、複数のオフ燃料供給口43と筐体32の改質器4側の壁34との間の部位に設けられている。遮蔽板60は、筐体32の下壁36から筐体32の上壁37側へ突出している。
【0051】
この遮蔽板60は、第2オフ空気供給口42から第2室52に供給される第2オフ空気が筐体32の内壁に沿って流れて燃焼領域53に流入することを遮るものである。
図7では、第2オフ空気供給口42から第2室52に供給される第2オフ空気の主な流れ方向を矢印Aと矢印Bで示している。また、燃焼領域53でオフ燃料と第1オフ空気とが燃焼した燃焼ガスの主な流れを矢印Cで示している。
【0052】
矢印Aに示したように、第2オフ空気供給口42から第2室52に供給された第2オフ空気の一部は、径方向外側に流れて筐体32の改質器4側の壁34に衝突し、その壁に沿って下側に流れた後、筐体32の下壁36側に沿って径方向内側に流れる。
ここで、遮蔽板60は、第2オフ空気の流れに対し、燃焼領域53の少なくとも一部を囲うように設けられている。すなわち、遮蔽板60は、その第2オフ空気が燃焼領域53に流入することを遮るように設けられている。そのため、筐体32の下壁36側に沿って径方向内側に流れる第2オフ空気は、遮蔽板60によって燃焼領域53に流入することが遮られ、遮蔽板60の径方向外側の面に沿って上側に流れる。
【0053】
なお、矢印Bに示したように、第2オフ空気供給口42から第2室52に供給された第2オフ空気の他の一部は、径方向外側に流れて、燃焼ガス出口22から燃焼ガス通路23に流出する。また、矢印Cに示したように、燃焼領域53で燃焼した燃焼ガスは、燃焼領域53から上側に流れて第2オフ空気と混ざり合い、その一部が第2室52を循環し、他の一部が燃焼ガス出口22から燃焼ガス通路23に流出する。
【0054】
このように本実施形態では、第2オフ空気供給口42から第2室52に供給される第2オフ空気は、遮蔽板60によって燃焼領域53への流入が遮られる。そのため、燃焼領域53では、第2オフ空気の流入によって燃料ガスがリーン化することが防がれ、第1オフ空気とオフ燃料による空燃比が燃焼に適した範囲内に維持される。したがって、この燃焼器7は、燃焼領域53において安定した燃焼状態を得ることが可能である。
【0055】
図8は、第1実施形態に係る燃焼器7に関し、
図7のVIII-VIII線断面における空気過剰率λの分布を示すシミュレーション図である。一方、
図9は、第1比較例の燃焼器に関し、
図8と同じ箇所における空気過剰率λの分布を示すシミュレーション図である。
第1比較例の燃焼器は、第1実施形態に対して、オフ空気排出口44を第1オフ空気排出口441と第2オフ空気排出口442といった多段に分けず、オフ空気排出口44を1段のみとして周方向に連続するように形成したものである。
【0056】
図9に示すように、第1比較例の燃焼器では、燃焼領域53で燃料リッチ(すなわち、空気過剰率λが小)となる箇所が存在している。このことは、第1比較例の構成では、火炎に対してオフ空気が十分に供給されていないことを示している。
これに対し、
図8に示すように、第1実施形態の燃焼器7では、燃焼領域53で燃料リッチとなる箇所が解消されている。このことは、第1実施形態の構成によれば、火炎に対してオフ空気が十分に供給されることを示している。
【0057】
図10は、第1実施形態に係る燃焼器7と第1比較例の燃焼器に関し、
図6に示したX-Xの箇所における混合ガスの流速を示すグラフである。
図10の縦軸は混合ガスの流速を示している。
図10の横軸は、分割部材33の筒部332と遮蔽板60との間の位置を示している。
図10の実線Dは、第1実施形態において、その混合ガスの流速を示している。一方、
図10の実線Eは、第1比較例において、オフ燃料と第1オフ空気との混合ガスの流速を示している。
【0058】
この
図10のグラフに示されているように、第1実施形態の混合ガスの流速は、第1比較例の混合ガスの流速よりも遅くなっている。このように、第1実施形態では、オフ燃料供給口43から燃焼領域53に供給されるオフ燃料に第1オフ空気を直接当てないことで、混合ガスの流速が速くなることを防ぐことが可能である。したがって、第1実施形態の燃焼器7の構成により、火炎の吹き消えを防ぐことができる。
【0059】
以上説明した第1実施形態の燃焼器7は、次の作用効果を奏するものである。
(1)第1実施形態の燃焼器7は、第2オフ空気供給口42から第2室52に供給される第2オフ空気の流れに対し、燃焼領域53の径方向外側を囲うように設けられた遮蔽板60を備えている。この遮蔽板60は、第2オフ空気供給口42から第2室52に供給されたオフ空気が筐体32の内壁に沿って流れて燃焼領域53に流入することを遮ることが可能である。
これにより、第2オフ空気は、燃焼領域53への流入が遮蔽板60によって遮られる。そのため、燃焼領域53では、第2オフ空気の流入による空気過剰率λの増加(すなわち燃料リーン化)が防がれ、第1オフ空気とオフ燃料による空燃比が燃焼に適した範囲内に維持される。したがって、この燃焼器7は、燃焼領域53において安定した燃焼状態を得ることができる。その結果、この燃焼器7を備えた燃料電池システム1は、燃焼器7から改質器4への熱供給量の不足が防がれるので、改質器4による燃焼ガスの生成が良好に行われ、発電効率を向上することができる。
【0060】
(2)第1実施形態では、オフ空気排出口44は、複数の第1オフ空気排出口441と複数の第2オフ空気排出口442とを有している。複数の第1オフ空気排出口441は、オフ燃料供給口43に近い位置に設けられている。複数の第2オフ空気排出口442は、第1オフ空気排出口441よりもオフ燃料供給口43から遠い位置に設けられている。
これにより、第1室51の第1オフ空気を第1オフ空気排出口441と第2オフ空気排出口442から分けて排出することで、第1オフ空気排出口441と第2オフ空気排出口442から個別に排出される第1オフ空気の流量を少なくすることが可能である。そのため、第1オフ空気排出口441から火炎の根元への第1オフ空気の供給量が少なくなるので、初期火炎が燃料リッチ状態に保たれ、燃焼を安定化することができる。さらに、第2オフ空気排出口442から第1オフ空気を火炎中に供給することで、火炎中で酸欠が生じることなく燃焼効率を向上し、未燃燃料ガスの発生を低減することができる。
【0061】
(3)第1実施形態では、第1オフ空気排出口441は、第1オフ空気排出口441の中心軸とオフ燃料供給口43の中心軸とが交差しない位置に配置されている。これにより、オフ燃料供給口43から燃焼領域53に供給されるオフ燃料に対し第1オフ空気を直接当てないことで、火炎の根元の燃料リーン化が抑制され、燃焼を安定化することができる。
また、仮に、オフ燃料供給口43から燃焼領域53に供給されるオフ燃料に対し第1オフ空気を直接当てる構成とした場合、オフ燃料と第1オフ空気との混合ガスの流速が燃焼速度より速くなると、火炎が吹き消えるおそれがある。これに対し、第1実施形態では、オフ燃料供給口43から燃焼領域53に供給されるオフ燃料に第1オフ空気を直接当てず、燃焼領域53の近傍に第1オフ空気を供給している。これにより、拡散燃焼を成立させると共に、火炎の吹き消えを防ぐことができる。
【0062】
(4)第1実施形態では、第1オフ空気排出口441は、オフ燃料が燃焼する火炎から離れた位置(すなわち、燃焼領域53の近傍)に向けてオフ空気を排出可能な位置に配置されている。第2オフ空気排出口442は、オフ燃料が燃焼する火炎(すなわち、燃焼領域53)に向けてオフ空気を排出可能な位置に配置されている。
これによれば、オフ燃料供給口43から燃焼領域53に供給されるオフ燃料に対し第1オフ空気を直接当てず、燃焼領域53の近傍に第1オフ空気を供給することで、火炎の根元の燃料リーン化が抑制され、拡散燃焼を成立させることが可能となる。したがって、燃焼を安定化することができる。
さらに、第2オフ空気排出口442から第1オフ空気を火炎中に供給することで、火炎中で酸欠が生じることなく燃焼効率を向上し、未燃燃料ガスの発生を低減することができる。
【0063】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、遮蔽板60などの構成を変更したものであり、その他の構成については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
図11~
図13に示すように、第2実施形態の燃焼器7は、遮蔽板60の一部から径方向内側に突出する複数の突起部61を備えている。その突起部61の先端は、分割部材33の有する筒部332に当接している。なお、本明細書において、「当接」とは、複数の部材同士が接している状態に加え、複数の部材同士が接合されている状態も含んでいる。複数の突起部61は、遮蔽板60から径方向内側に突出する距離がいずれも同一となるように形成されている。また、複数の突起部61は、遮蔽板60の周方向にほぼ等間隔で設けられている。
【0065】
なお、第2実施形態では、分割部材33の有する筒部332の下端と筐体32の下壁36との間に形成される空間が、第1室51から燃焼領域53およびその近傍に第1オフ空気を排出するオフ空気排出口44に相当する。そのオフ空気排出口44は、周方向に連続するように形成されている。
【0066】
第2実施形態では、遮蔽板60と分割部材33との距離が突起部61の大きさによって正確に定められる。上述したように、複数の突起部61は、遮蔽板60から径方向内側に突出する距離がいずれも同一となるように形成されているので、遮蔽板60と分割部材33との距離は燃焼領域53の各箇所で均一なものとなる。これにより、燃焼領域53の各箇所において第1オフ空気およびオフ燃料の供給量を均一にすることが可能である。したがって、この燃焼器7は、燃焼領域53の各箇所において、空気過剰率λが燃焼に適した範囲内となり、燃焼を安定化することができる。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態も、第1実施形態等に対して、遮蔽板60などの構成を変更したものであり、その他の構成については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0068】
図14~
図16に示すように、第3実施形態の燃焼器7では、遮蔽板60は、分割部材33の筒部332から第2室52側に突出する複数の突出壁62として構成されている。すなわち、遮蔽板60としての複数の突出壁62と、分割部材33の筒部332とは一体に形成されている。その複数の突出壁62の下端部と、筐体32の下壁36とは当接している。複数の突出壁62はそれぞれ、オフ燃料供給口43と燃焼領域53を囲うように設けられている。そのため、複数の突出壁62は、第2オフ空気供給口42から第2室52に供給される第2オフ空気が筐体32の内壁に沿って流れて燃焼領域53に流入することを遮る遮蔽板60として機能する。なお、燃焼領域53の上方は第2室52に開放されている。複数の突出壁62は、その形状および大きさがいずれも同一となるように形成されている。また、複数の突出壁62は、分割部材33の筒部332の周方向にほぼ等間隔に設けられている。
【0069】
第3実施形態では、複数の突出壁62によって周方向に断続的となった筒部332同士間の隙間を経由して、第1室51から燃焼領域53またはその近傍に第1オフ空気が排出される。そのため、分割部材本体38に設けられる筒部332同士間の隙間が、第1オフ空気を排出するオフ空気排出口44に相当する。なお、
図14では、オフ空気排出口44に相当する箇所を一点鎖線で示している。
【0070】
以上説明した第3実施形態では、遮蔽板60としての複数の突出壁62と分割部材33とを一体に形成することで、部品点数を少なくすることが可能となる。したがって、製造コストを低減することができる。
また、分割部材33から突出する複数の突出壁62をいずれも同一形状とすることで、複数の突出壁62により囲まれた複数の燃焼領域53それぞれの容積が均一なものとなる。そのため、燃焼領域53の各箇所において第1オフ空気およびオフ燃料の供給量を均一にすることが可能である。したがって、この燃焼器7は、複数の燃焼領域53の各箇所において、空気過剰率λが燃焼に適した範囲内となり、燃焼を安定化することができる。
【0071】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第1実施形態等に対して、分割部材33の形状を変更したものである。なお、第4実施形態では、第1実施形態等で説明した遮蔽板60を廃止している。
【0072】
図17および
図18に示すように、第4実施形態の燃焼器7は、分割部材33のうち筐体32の下壁36側の部位333から、筐体32の下壁36に沿って径方向外側に延びるように形成されたカバー部70を備えている。カバー部70は、筐体32の下壁36に設けられたオフ燃料供給口43の周囲を覆うように設けられている。筐体32の下壁36とカバー部70との間には、扁平流路71が形成されている。
図18では、その扁平流路71の外縁を破線で示している。扁平流路71の径方向内側(分割部材33の筒部332側)に形成される開口72は、第1室51に連通している。
【0073】
オフ燃料供給口43は、筐体32の下壁36のうち扁平流路71が形成される部位に設けられている。そのため、オフ燃料供給口43は、扁平流路71にオフ燃料を供給する。
カバー部70のうち扁平流路71を形成する部位に、オフ空気排出口44が設けられている。オフ空気排出口44とオフ燃料供給口43とは、カバー部70の板厚方向に重なる位置に設けられている。そのため、オフ空気排出口44は、第1室51から扁平流路71を流れるオフ空気と、オフ燃料供給口43から供給されるオフ燃料とを第2室52に排出することが可能である。
【0074】
扁平流路71の少なくとも一部は、オフ空気排出口44の外側を囲うように形成されている。そして、扁平流路71は、オフ空気排出口44の軸を中心とした周方向の一方から他方に向かい流路面積が次第に小さくなるように形成されている。これにより、
図19の矢印に示すように、扁平流路71の第1オフ空気の流れは、オフ空気排出口44の軸を中心とした旋回流となる。そして、オフ燃料供給口43から扁平流路71に供給されるオフ燃料と旋回流となった第1オフ空気とが混合され、オフ空気排出口44から第2室52に吹き出される。そして、第2室52に吹き出された混合気は自着火により燃焼する。
【0075】
以上説明した第4実施形態の燃焼器7には、筐体32の内壁に沿って延びるカバー部70により扁平流路71が形成されている。その扁平流路71は、オフ空気排出口44の軸を中心とした周方向の一方から他方に向かい流路面積が次第に小さくなる形状とされている。これにより、扁平流路71を流れる第1オフ空気が旋回流となり、オフ燃料供給口43から扁平流路71に供給されるオフ燃料と第1オフ空気との混合を促進することができる。さらに、第4実施形態では、扁平流路71を流れる第1オフ空気を旋回流とすることで、オフ空気排出口44から第2室52に排出される混合気の軸方向の移動速度を下げることが可能である。したがって、火炎の吹き消えを抑制し、燃料を安定化させることができる。
【0076】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。第5実施形態は、第1実施形態等に対して、オフ燃料供給口43の配置などを変更したものである。なお、第5実施形態でも、第1実施形態等で説明した遮蔽板60を廃止している。
【0077】
図20に示すように、第5実施形態の燃焼器7は、分割部材33が、燃焼器7の内部空間50の一部を第1室51と第2室52とに分割している。具体的には、分割部材33は環状に形成されている。分割部材33のうち径方向内側の部位と、筐体32のオフ空気通路20側の壁35とが接続されている。一方、分割部材33のうち径方向外側の外縁と、筐体32の改質器4側の壁34とは離れている。そのため、分割部材33のうち径方向外側の外縁と、筐体32の改質器4側の壁34との間は、第1室51と第2室52とが連通する空間となっている。
【0078】
筐体32のオフ空気通路20側の壁35には、複数の第1オフ空気供給口41と、複数の第2オフ空気供給口42とが設けられている。
複数の第1オフ空気供給口41は、筐体32のオフ空気通路20側の壁35のうち、分割部材33が接続する位置よりも下側に設けられている。第1オフ空気供給口41は、オフ空気通路20から第1室51にオフ空気を供給することが可能である。
【0079】
複数の第2オフ空気供給口42は、筐体32のオフ空気通路20側の壁35のうち、分割部材33が接続する位置よりも上側に設けられている。第2オフ空気供給口42は、オフ空気通路20から第2室52にオフ空気を供給することが可能である。
【0080】
燃焼器7は、筐体32の下壁36から上方に突出する凸壁部45を有している。突出部の内側の空間には、オフ燃料通路21が形成されている。凸壁部45のうち径方向内側の部位に複数のオフ燃料供給口43が設けられている。複数のオフ燃料供給口43は、燃焼器7の周方向に並んで設けられている。オフ燃料供給口43は、オフ燃料通路21と第1室51とを連通している。これにより、オフ燃料供給口43は、オフ燃料通路21から第1室51にオフ空気を供給することが可能である。
【0081】
複数の第1オフ空気供給口41と複数のオフ燃料供給口43とは、互いに対向する位置に設けられている。そのため、第1オフ空気供給口41から第1室51に供給されるオフ空気と、オフ燃料供給口43から第1室51に供給されるオフ燃料とは、第1室51で衝突する。これにより、第1オフ空気とオフ燃料の両方の流速が小さくなり、混合気の淀みが形成される。そのため、その混合気の流速が燃焼速度より速くなることが防がれる。したがって、火炎リフトが生じることなく、燃焼を安定化させることができる。
【0082】
なお、第5実施形態の燃焼器7は、燃料電池システム1の出力変動などによりオフ燃料の流量が変動する場合でも、第1オフ空気とオフ燃料とが衝突することで、混合気の淀みを第1室51に形成することが可能である。したがって、その場合でも、火炎リフトが生じることなく、燃焼を安定化させることができる。
【0083】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。第6実施形態は、第1実施形態等に対して、分割部材33および遮蔽板60の構成の一部を変更したものである。
【0084】
燃料電池システム1では、例えば燃料脈動などにより一時的にオフ燃料の供給が停止して燃焼領域53で意図しない失火が生じた場合、次にオフ燃料の供給が再開しても、再着火するまでの間、発電ができなくなるおそれがある。
【0085】
そこで、
図21に示すように、第6実施形態の燃焼器7では、分割部材33の筒部332のうち第2オフ空気排出口442より下側の部位332aが、分割部材33の他の部位や筐体32に比べて単位面積当たりの熱容量が大きい構成とされている。また、遮蔽板60も、分割部材33の環状板331や筐体32に比べて単位面積当たりの熱容量が大きい構成とされている。単位面積あたりの熱容量を大きくするための具体的構成として、その部材の厚みを厚くすることで質量を大きくしてもよく、または、比熱の大きい材料を使用してもよい。
【0086】
このように、分割部材33および遮蔽板60のうち燃焼領域53の周囲に配置される部位の熱容量を大きくすることで、燃焼領域53で意図しない失火が生じた場合、それらの部位から燃焼領域53への放熱量を増加することが可能である。そのため、その失火した後にオフ燃料の供給が再開すると、燃焼領域53のオフ燃料を早期に自着火させることができる。
【0087】
以上説明した第6実施形態の燃焼器7は、燃焼領域53で意図しない失火が生じた場合でも、次にオフ燃料の供給が再開すると、発電モードに即座に復旧することができる。
【0088】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0089】
(1)上記各実施形態では、燃料電池システム1の備える燃料電池スタック2が固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)により構成されるものとして説明したが、これに限るものではない。燃料電池スタック2は、例えば固体高分子形燃料電池(polymer electrolyte fuel cell:PEFC)など、種々の燃料電池を採用することが可能である。
【0090】
(2)上記各実施形態では、燃料電池システム1の備える燃焼器7は環状に形成されるものとして説明したが、これに限るものではない。燃焼器7の形状は、例えば直方体、立方体など、種々の形状のものを採用することが可能である。
【0091】
(3)上記各実施形態では、燃料電池システム1はエジェクタ3を備えることで、オフ燃料をリサイクルして繰り返し使用するものとして説明したが、これに限るものではない。本発明は、エジェクタ3を備えていない燃料電池システム1に適用することも可能である。
【0092】
(4)上記第1実施形態等では、遮蔽板60は、第2オフ空気供給口42から第2室52に供給された第2オフ空気が筐体32の内壁に沿って流れて燃焼領域53に流入することを遮るものとして説明したが、これに限るものではない。例えば、遮蔽板60は、第2オフ空気供給口42から第2室52に供給された第2オフ空気が直接的に燃焼領域53に流入することを遮るものとしてもよい。
具体的には、例えば、筐体32の上壁37または筐体32の改質器4側の壁34に第2オフ空気供給口42を設けた場合、その第2オフ空気供給口42から供給される第2オフ空気は、直接的に燃焼領域53に流入するおそれがある。その場合、第2オフ空気供給口42と燃焼領域53との間に遮蔽板60を設けることで、その遮蔽板60により、第2オフ空気の流れが直接的に燃焼領域53に流入することを遮ることが可能である。
【0093】
(5)上記第2実施形態では、複数の突起部61は、遮蔽板60の一部が径方向内側に突出して分割部材33に当接するものとして説明したが、これに限るものではない。例えば、複数の突起部61は、分割部材33の筒部332の一部が径方向外側に突出して遮蔽板60に当接するように構成してもよい。このように構成した場合でも、分割部材33の筒部332から複数の突起部61が突出する距離をいずれも同一とすることで、分割部材33の筒部332と遮蔽板60との距離を燃焼領域53の各箇所で均一にすることが可能である。
【0094】
(6)上記第6実施形態では、分割部材33の一部と遮蔽板60の両方の熱容量を大きくした構成について説明したが、これに限らず、分割部材33の一部または遮蔽板60の少なくとも一方の熱容量を大きくした構成としてもよい。
【0095】
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、請求項1に記載の燃焼器は、燃料電池システムに用いられ、燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電する燃料電池スタックで消費されなかった燃料ガスを含むオフ燃料と燃料電池スタックで消費されなかった酸化剤ガスを含むオフ空気とを燃焼させるものである。その燃焼器は、筐体、分割部材、第1オフ空気供給口、第2オフ空気供給口、オフ燃料供給口、オフ空気排出口および遮蔽板を備える。筐体は、燃焼器の内部空間を形成する。分割部材は、燃焼器の内部空間を第1室と第2室とに分割する。第1オフ空気供給口は、第1室にオフ空気を供給する。第2オフ空気供給口は、第2室にオフ空気を供給する。オフ燃料供給口は、第2室にオフ燃料を供給する。オフ空気排出口は、第2室のうちでオフ燃料供給口から吹き出されるオフ燃料が燃焼する燃焼領域またはその近傍に第1室からオフ空気を排出する。遮蔽板は、第2オフ空気供給口から第2室に供給されたオフ空気が筐体の内壁に沿って流れてまたは直接的に燃焼領域に流入することを遮る。
【0096】
第2の観点によれば、遮蔽板は、第2オフ空気供給口から第2室に供給されたオフ空気の流れに対し、燃焼領域の少なくとも一部を囲うように設けられている。
これによれば、第2オフ空気は、遮蔽板によって燃焼領域への流入が遮られる。そのため、燃焼領域では、第2オフ空気の流入による空気過剰率の増加が防がれ、第1オフ空気とオフ燃料による空燃比が燃焼に適した範囲内に維持される。したがって、この燃焼器は、燃焼領域において燃焼を安定化することができる。その結果、この燃焼器を備えた燃料電池システムは、燃焼器から改質器への熱供給量の不足が防がれるので、改質器による燃焼ガスの生成が良好に行われ、発電効率を向上することができる。
【0097】
第3の観点によれば、オフ空気排出口は、オフ燃料供給口に近い位置に設けられる第1オフ空気排出口と、その第1オフ空気排出口よりもオフ燃料供給口から遠い位置に設けられる第2オフ空気排出口とを有する。
【0098】
これによれば、第1室の第1オフ空気を第1オフ空気排出口と第2オフ空気排出口から分けて排出することで、第1オフ空気排出口と第2オフ空気排出口から個別に排出される第1オフ空気の流量を少なくすることが可能である。そのため、第1オフ空気排出口から火炎の根元への第1オフ空気の供給量が少なくなるので、初期火炎が燃料リッチ状態に保たれ、燃焼を安定化することができる。
さらに、第2オフ空気排出口から第1オフ空気を火炎中に供給することで、火炎中で酸欠が生じることなく燃焼効率を向上し、未燃燃料ガスの発生を低減することができる。
【0099】
第4の観点によれば、第1オフ空気排出口は、第1オフ空気排出口の中心軸とオフ燃料供給口の中心軸とが交差しない位置に配置されている。
【0100】
これによれば、オフ燃料供給口から燃焼領域に供給されるオフ燃料に対し第1オフ空気を直接当てないことで、火炎の根元の燃料リーン化が抑制され、燃焼を安定化することができる。
また、仮に、オフ燃料供給口から燃焼領域に供給されるオフ燃料に対し第1オフ空気を直接当てる構成とした場合、オフ燃料と第1オフ空気とが燃焼した燃焼ガスの流速が燃焼速度より速くなると、火炎が吹き消えるおそれがある。これに対し、オフ燃料供給口から燃焼領域に供給されるオフ燃料に第1オフ空気を直接当てず、燃焼領域の近傍に第1オフ空気を供給することで、拡散燃焼を成立させると共に、火炎の吹き消えを防ぐことができる。
【0101】
第5の観点によれば、第1オフ空気排出口は、オフ燃料が燃焼する火炎から離れた位置に向けてオフ空気を排出可能な位置に配置されている。一方、第2オフ空気排出口は、オフ燃料が燃焼する火炎に向けてオフ空気を排出可能な位置に配置されている。
【0102】
これによれば、オフ燃料供給口から燃焼領域に供給されるオフ燃料に対し第1オフ空気を直接当てず、燃焼領域の近傍に第1オフ空気を供給することで、火炎の根元の燃料リーン化が抑制され、拡散燃焼を成立させることが可能となる。したがって、燃焼を安定化することができる。
さらに、第2オフ空気排出口から第1オフ空気を火炎中に供給することで、火炎中で酸欠が生じることなく燃焼効率を向上し、未燃燃料ガスの発生を低減することができる。
【0103】
第6の観点によれば、遮蔽板から突出して分割部材に当接するか、または、分割部材から突出して遮蔽板に当接するように構成された複数の突起部をさらに備える。
【0104】
これによれば、遮蔽板と分割部材との距離が突起部の大きさによって定められるので、遮蔽板と分割部材との距離を燃焼領域の各箇所で均一にすることが可能である。そのため、燃焼領域の各箇所に対する第1オフ空気とオフ燃料の供給量を均一にすることが可能である。したがって、この燃焼器は、燃焼領域の各箇所において、空気過剰率が燃焼に適した範囲内となり、燃焼を安定化することができる。
【0105】
第7の観点によれば、遮蔽板は、分割部材から第2室側に突出し、オフ燃料供給口と燃焼領域を囲う複数の突出壁として構成されている。
【0106】
これによれば、遮蔽板としての複数の突出壁と分割部材とを一体に形成することで、部品点数を少なくすることが可能となる。したがって、製造コストを低減することができる。
また、分割部材から突出する複数の突出壁をいずれも同一形状とすることで、複数の突出壁により囲まれた複数の燃焼領域それぞれの容積が均一なものとなる。そのため、燃焼領域の各箇所において第1オフ空気およびオフ燃料の供給量を均一にすることが可能である。したがって、この燃焼器は、複数の燃焼領域の各箇所において、空気過剰率が燃焼に適した範囲内となり、燃焼を安定化することができる。
【0107】
ところで、燃料電池システムでは、例えば燃料脈動などにより一時的にオフ燃料の供給が停止して燃焼領域で意図しない失火が生じた場合、次にオフ燃料の供給が再開しても、再着火するまでの間、発電ができなくなるおそれがある。
そこで、第8の観点によれば、分割部材および遮蔽板のうち燃焼領域の周囲に配置される部位は、筐体に比べて単位面積当たりの熱容量が大きい構成とされている。
【0108】
これにより、燃焼領域で意図しない失火が生じた場合、分割部材または遮蔽板から燃焼領域への放熱量を増加させることで、オフ燃料の供給がされたときに早期に自着火させることが可能である。したがって、燃焼領域で意図しない失火が生じた場合でも、次にオフ燃料の供給が再開すると、発電モードに即座に復旧することができる。
なお、単位面積あたりの熱容量を大きくするための具体的構成として、その部材の厚みを厚くすることで質量を大きくしてもよく、または、比熱の大きい材料を使用してもよい。
【0109】
第9の観点によれば、燃焼器は、燃料電池システムに用いられ、燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電する燃料電池スタックで消費されなかった燃料ガスを含むオフ燃料と燃料電池スタックで消費されなかった酸化剤ガスを含むオフ空気とを燃焼させるものである。その燃焼器は、筐体、分割部材、第1オフ空気供給口、第2オフ空気供給口、カバー部、オフ燃料供給口およびオフ空気排出口を備える。筐体は、燃焼器の内部空間を形成する。分割部材は、燃焼器の内部空間を第1室と第2室とに分割する。第1オフ空気供給口は、第1室にオフ空気を供給する。第2オフ空気供給口は、第2室にオフ空気を供給する。カバー部は、分割部材の筐体側の部位から筐体の内壁に沿って延びるものであり、そのカバー部と筐体の内壁との間に第1室に連通する扁平流路を形成する。オフ燃料供給口は、筐体のうち扁平流路が形成される部位に設けられ、扁平流路にオフ燃料を供給する。オフ空気排出口は、カバー部のうちオフ燃料供給口に対してカバー部の板厚方向に重なる位置に設けられ、第1室から扁平流路を流れるオフ空気とオフ燃料供給口から供給されるオフ燃料とを第2室に排出する。そして、扁平流路の少なくとも一部は、オフ空気排出口の外側を囲い、オフ空気排出口の軸を中心とした周方向の一方から他方に向かい流路面積が次第に小さくなるように形成されている。
【0110】
これによれば、扁平流路の第1オフ空気の流れが、オフ空気排出口の軸を中心とした旋回流となる。そのため、オフ燃料供給口から扁平流路に供給されるオフ燃料と扁平流路を流れる第1オフ空気との混合が促進されると共に、オフ空気排出口から第2室に排出される混合ガスの軸方向の移動速度を下げることが可能である。したがって、その混合気が燃焼する火炎の吹き消えを抑制し、燃料を安定化させることができる。
【0111】
第10の観点によれば、燃焼器は、燃料電池システムに用いられ、燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電する燃料電池スタックで消費されなかった燃料ガスを含むオフ燃料と燃料電池スタックで消費されなかった酸化剤ガスを含むオフ空気とを燃焼させるものである。その燃焼器は、筐体、分割部材、第1オフ空気供給口、第2オフ空気供給口およびオフ燃料供給口を備える。筐体は、燃焼器の内部空間を形成する。分割部材は、燃焼器の内部空間の一部を第1室と第2室とに分割する。第1オフ空気供給口は、第1室にオフ空気を供給する。第2オフ空気供給口は、第2室にオフ空気を供給する。オフ燃料供給口は、第1オフ空気供給口に対向する位置に設けられ、第1室にオフ燃料を供給する。そして、第1オフ空気供給口から第1室に供給されるオフ空気と、オフ燃料供給口から第1室に供給されるオフ燃料とが衝突するように構成されている。
【0112】
これによれば、第1オフ空気供給口から第1室に供給される第1オフ空気と、オフ燃料供給口から第1室に供給されるオフ燃料とが衝突することにより、第1オフ空気とオフ燃料の両方の流速が小さくなり、混合ガスの淀みが形成される。そのため、その混合ガスが燃焼する燃焼ガスの流速が燃焼速度より速くなることが防がれる。したがって、火炎リフトが生じることなく、燃焼を安定化させることができる。
【符号の説明】
【0113】
1:燃料電池システム、 2:燃料電池スタック、
7:燃焼器、 32:筐体、
33:分割部材、 41:第1オフ空気供給口、
42:第2オフ空気供給口、 43:オフ燃料供給口、
44:オフ空気排出口、 50:内部空間、
51:第1室、 52:第2室、
53:燃焼領域、 60、62:遮蔽板。