(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】精紡機の管替装置
(51)【国際特許分類】
D01H 9/04 20060101AFI20230711BHJP
D01H 9/18 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
D01H9/04 B
D01H9/18 D
(21)【出願番号】P 2019188069
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】芦崎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】林 久秋
(72)【発明者】
【氏名】坪井 将嘉
(72)【発明者】
【氏名】サンディップ パティ
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-126930(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109763216(CN,A)
【文献】独国特許発明第102005042592(DE,B3)
【文献】特開平06-158447(JP,A)
【文献】米国特許第05373689(US,A)
【文献】実開平01-003758(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 9/04
D01H 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡機機台と、
ボビン把持装置を備えたドッフィングバーを昇降させるパンタグラフ機構と、
前記紡機機台の長手方向に軸線が延び前記パンタグラフ機構を駆動させる駆動シャフトと、
前記駆動シャフトを当該駆動シャフトの軸線方向に往復動させる駆動機構と、
前記パンタグラフ機構全体を前記紡機機台に接近する位置と離間する位置とに回動させる回動機構と、を備え、
前記回動機構は、
前記紡機機台の長手方向に軸線が延び前記長手方向に往復動するロッドと、
前記ロッドを往復動させるロッド駆動機構と、
前記ロッド駆動機構を制御する制御装置と、
前記ロッドと連結され、当該ロッドの直動を前記パンタグラフ機構全体の回動に変換する変換機構と、を備える精紡機の管替装置であって、
前記ロッド及び前記ロッド駆動機構を複数備え、
前記複数のロッドは前記紡機機台の長手方向に並設されていることを特徴とする精紡機の管替装置。
【請求項2】
前記ロッド駆動機構の異常の有無を検出する検出装置を前記ロッド駆動機構それぞれに備え、前記制御装置は、前記ロッド駆動機構の異常が前記検出装置によって検出されると、前記検出装置によって異常が検出されていない前記ロッド駆動機構を駆動させない又は駆動を停止させる請求項1に記載の精紡機の管替装置。
【請求項3】
前記ロッド駆動機構によって前記ロッドが初期位置から動作位置に向けて往動することで前記パンタグラフ機構が前記紡機機台から離間する位置に向けて回動し、前記ロッド駆動機構によって前記ロッドが前記動作位置から前記初期位置に向けて復動することで前記パンタグラフ機構が前記紡機機台に対して離間した位置から前記紡機機台に接近する位置に回動し、
前記制御装置が全ての前記ロッド駆動機構を駆動させる制御を行った後、前記検出装置によっていずれかの前記ロッドが前記初期位置にある異常が検出され、かつ異常が検出された状態が一定期間継続した場合、前記制御装置は、前記検出装置による異常が検出されていない前記ロッド駆動機構を駆動させて前記初期位置に戻す請求項2に記載の精紡機の管替装置。
【請求項4】
前記複数のロッド毎に前記ドッフィングバーを備え、前記ドッフィングバーは、前記紡機機台の長手方向に複数並んで備える請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の精紡機の管替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精紡機の管替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紡績工場における自動化が進み、リング精紡機、リング撚糸機等の精紡機においては、満管にともなう玉揚げ及び新たな空ボビンをスピンドルに挿入する管替作業が管替装置により自動的に行われるようになっている。管替装置では、紡機機台のスピンドル列の下方にスピンドルピッチと同一ピッチでペッグが突設されたコンベヤ装置が設けられ、コンベヤ装置とスピンドル列との間にスピンドルピッチと同一ピッチで中間ペッグが突設された受台が設けられている。そして、スピンドルピッチと同一ピッチで配置されたボビン把持装置を備えたドッフィングバーがパンタグラフ機構によりスピンドル列とコンベヤ装置との間で昇降されるとともに、パンタグラフ機構全体を紡機機台に接近する位置と離間する位置とに回動可能に構成されている。
【0003】
管替作業時、ドッフィングバーは、コンベヤ装置上の空ボビンを把持する位置、受台上の中間ペッグに空ボビンを挿入する位置、スピンドル上の満ボビンを把持する位置等へ移動する。ドッフィングバーは、パンタグラフ機構の動作によるドッフィングバーの昇降と、パンタグラフ機構全体を回動装置の動作により紡機機台に接近又は離間するように回動させることで各位置に移動する。
【0004】
パンタグラフ機構全体を紡機機台に接近又は離間するように回動させる回動装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
図10に示すように、回動装置は、紡機機台の長手方向に沿って移動可能に配設されるロッド81と、ロッド81を往復動させるエアシリンダ82と、ロッド81の往復動を図示しないパンタグラフ機構の回動に変換する変換装置83と、を備えている。変換装置83は、パンタグラフ機構の基端を支持する図示しない駆動シャフトに対して一体回動可能に基端部が連結されたレバー84と、レバー84の先端部に第1端部85aが連結されたリンク85と、リンク85の第2端部85bが回動可能に連結された駆動レバー86と、を備える。駆動レバー86は、V形状に屈曲しており、屈曲部86aが紡機機台に回動可能に支持されている。また、駆動レバー86の第1端部86bはロッド81に移動不能に連結され、駆動レバー86の第2端部86cにリンク85の第2端部85bが回動可能に連結されている。
【0005】
エアシリンダ82に対しロッド81が没入した初期位置にある場合、駆動レバー86及びリンク85を介して連結されたレバー84は下がった状態にあり、レバー84に連結されたパンタグラフ機構は、紡機機台に接近する位置にある。エアシリンダ82の駆動によってロッド81が突出位置に移動すると、駆動レバー86が回動し、駆動レバー86の第2端部86cが上昇する。すると、リンク85とともにレバー84が上昇し、レバー84に連結されたパンタグラフ機構は、紡機機台から離間する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、精紡機の設置場所において、例えば精紡機の稼働に伴って環境温度が上昇すると、ロッド81が熱膨張する。
図10の2点鎖線に示すように、ロッド81が軸線方向に熱膨張すると、熱膨張に伴ってロッド81に連結されている第1端部86bの位置が変化し、第1端部86bの位置変化によって、駆動レバー86が回動してしまう。すると、駆動レバー86の回動に伴ってリンク85が上昇し、レバー84が回動してパンタグラフ機構全体が回動してしまう。そして、ロッド81の熱膨張が予め定めた許容範囲を越えると、パンタグラフ機構の回動に伴い、ドッフィングバーが各位置からずれた位置に配置されてしまい、例えば、スピンドルに対する空ボビンの挿入に支障を来すなど不具合が生じてしまう。
【0008】
本発明の目的は、ロッドの熱膨張に伴うパンタグラフ機構の回動量を少なくできる精紡機の管替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するための精紡機の管替装置は、紡機機台と、ボビン把持装置を備えたドッフィングバーを昇降させるパンタグラフ機構と、前記紡機機台の長手方向に軸線が延び前記パンタグラフ機構を駆動させる駆動シャフトと、前記駆動シャフトを当該駆動シャフトの軸線方向に往復動させる駆動機構と、前記パンタグラフ機構全体を前記紡機機台に接近する位置と離間する位置とに回動させる回動機構と、を備え、前記回動機構は、前記紡機機台の長手方向に軸線が延び前記長手方向に往復動するロッドと、前記ロッドを往復動させるロッド駆動機構と、前記ロッド駆動機構を制御する制御装置と、前記ロッドと連結され、当該ロッドの直動を前記パンタグラフ機構全体の回動に変換する変換機構と、を備える精紡機の管替装置であって、前記ロッド及び前記ロッド駆動機構を複数備え、前記複数のロッドは前記紡機機台の長手方向に並設されていることを要旨とする。
【0010】
これによれば、精紡機の設置場所の環境温度の上昇に伴い、ロッドの温度が上昇し、ロッドが軸線方向へ熱膨張する場合がある。ロッドを1本しか備えない精紡機と比べると、同じ環境温度下での各ロッドの熱膨張量を抑えることができる。このため、ロッドの熱膨張に伴って変換機構がロッドの軸線方向へ移動しても、その移動量を、ロッドを1本しか備えない精紡機と比べて少なくでき、ロッドの熱膨張に伴うパンタグラフ機構の回動量を少なくできる。
【0011】
また、精紡機の管替装置について、前記ロッド駆動機構の異常の有無を検出する検出装置を前記ロッド駆動機構それぞれに備え、前記制御装置は、前記ロッド駆動機構の異常が前記検出装置によって検出されると、前記検出装置によって異常が検出されていない前記ロッド駆動機構を駆動させない又は駆動を停止させてもよい。
【0012】
これによれば、複数のロッドが同期して往復動し、各ロッドに連結された変換機構が同期することで、ドッフィングバーが捻れることなくパンタグラフ機構が回動する。しかし、正常なロッド駆動機構と異常なロッド駆動機構とが共存すると、複数のロッドが同期して往復動しなくなり、複数の変換機構も同期しなくなる結果、パンタグラフ機構の同期が取れず、ドッフィングバーに捻れが生じてしまう。そこで、検出装置によってロッド駆動機構の異常が検出された場合、つまり、ロッド間での同期ずれが発生する場合は、正常なロッド駆動機構を駆動させない、又は停止させることによって、複数のロッド駆動機構の位置ずれを抑える。その結果、複数のロッド間での移動量のずれ、つまりロッド間での同期ずれを抑えて変換機構の同期のずれも抑え、パンタグラフ機構のずれを抑えてドッフィングバーの捻れを抑えることができる。
【0013】
また、精紡機の管替装置について、前記ロッド駆動機構によって前記ロッドが初期位置から動作位置に向けて往動することで前記パンタグラフ機構が前記紡機機台から離間する位置に向けて回動し、前記ロッド駆動機構によって前記ロッドが前記動作位置から前記初期位置に向けて復動することで前記パンタグラフ機構が前記紡機機台に対して離間した位置から前記紡機機台に接近する位置に回動し、前記制御装置が全ての前記ロッド駆動機構を駆動させる制御を行った後、前記検出装置によっていずれかの前記ロッドが前記初期位置にある異常が検出され、かつ異常が検出された状態が一定期間継続した場合、前記制御装置は、前記検出装置による異常が検出されていない前記ロッド駆動機構を駆動させて前記初期位置に戻してもよい。
【0014】
これによれば、ロッド駆動機構を駆動させた後、ロッド駆動機構の異常が検出装置によって検出された場合は、正常なロッド駆動機構を駆動させて、全てのロッドを初期位置に位置させる。このため、複数のロッド間での移動量のずれ量を無くして変換機構の同期のずれも無くすことで、パンタグラフ機構のずれを抑えてドッフィングバーの捻れを無くすことができる。
【0015】
また、精紡機の管替装置について、前記複数のロッド毎に前記ドッフィングバーを備え、前記ドッフィングバーは、前記紡機機台の長手方向に複数並んで備えていてもよい。
これによれば、複数のロッドが同期して往復動しない場合、複数の変換機構の間で同期が取れなくなり、パンタグラフ機構の回動量にずれが生じる。しかし、ロッド毎にドッフィングバーが設けられているため、パンタグラフ機構の回動量にずれが生じても、回動量に応じて各ドッフィングバーも移動するため、1本のドッフィングバーのような捻れが生じにくい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロッドの熱膨張に伴うパンタグラフ機構の回動量を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は紡機機台及び管替装置を示す概略正面図、(b)は管替装置を示す概略正面図。
【
図3】(a)はロッドが初期位置にある状態を模式的に示す図、(b)はロッドが動作位置にある状態を模式的に示す図。
【
図4】(a)及び(b)は管替装置の動作を示す概略側面図。
【
図5】パンタグラフ機構全体が回動した状態を示す概略側面図。
【
図6】空ボビンを中間ペッグからスピンドルに移動させる状態を示す概略側面図。
【
図7】(a)は第1ロッド及び第2ロッドが初期位置にある状態を模式的に示す図、(b)は動作位置にある状態を模式的に示す図。
【
図8】(a)は第1エアシリンダに異常が生じた状態を模式的に示す図、(b)は第2ロッドを初期位置に復帰させた状態を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、精紡機の管替装置を具体化した一実施形態を
図1~
図8にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、精紡機としてのリング精紡機10の紡機機台11は、アウトエンドOEとギアエンドGEに架設されたスピンドルレール12を備える。リング精紡機10は、スピンドルレール12上に配設された多数のスピンドル13を備える。多数のスピンドル13は、スピンドルレール12の長手方向へ一定ピッチで配設されている。
【0019】
図2に示すように、リング精紡機10は、スピンドルレール12の下方に、ペッグトレイ14を利用してボビンの移送を行う移送装置15を備える。リング精紡機10は、スピンドルレール12の前側に配設された支持バー16を備える。支持バー16は、スピンドルレール12に沿って延設され、支持バー16の上面にはスピンドルピッチと同ピッチで中間ペッグ17が突設されている。
【0020】
リング精紡機10は、紡機機台11に装備された全錘一斉式の管替装置18を備える。管替装置18について説明する。
図1(a)に示すように、管替装置18は、ボビン把持装置19を備えたドッフィングバー20を昇降させるパンタグラフ機構21を複数備える。各パンタグラフ機構21は、紡機機台11の長手方向に軸線が延びる駆動シャフト22によって駆動される。駆動シャフト22は、アウトエンドOEに配設された駆動機構としてのパワーシリンダ27の作動により往復動されるようになっている。なお、パワーシリンダ27は、図示しないボールねじ機構のスクリューシャフトの往復回動により、移動筒をその長手方向に往復移動させる構成になっている。移動筒の先端には駆動シャフト22が連結されている。
【0021】
各パンタグラフ機構21は、第1リンク131と第2リンク132から構成されるリンク機構を備える。第1リンク131の軸線方向への長さは、第2リンク132の軸線方向への長さより長い。本実施形態では、第2リンク132の軸線方向への長さは、第1リンク131の軸線方向への長さの1/2である。第1リンク131の第1端部131aはドッフィングバー20に連結され、第1リンク131の第2端部131bは移動ブラケット25に連結されている。移動ブラケット25は、駆動シャフト22を中心として回動可能かつ駆動シャフト22の軸線方向に一体移動可能に支持されている。
【0022】
第2リンク132の第1端部132aは、第1リンク131の中央にピン連結され、第2リンク132の第2端部132bは支持ブラケット26にピン連結されている。各支持ブラケット26は、それぞれ固定リング23により駆動シャフト22の軸線方向への移動が規制されている。また、各支持ブラケット26は、駆動シャフト22の摺動を許容する状態に配設されている。パンタグラフ機構21において、駆動シャフト22が往動するとリンク機構によってドッフィングバー20が上昇し、駆動シャフト22が復動するとリンク機構によってドッフィングバー20が下降するようになっている。
【0023】
リング精紡機10は、パンタグラフ機構21全体を紡機機台11に接近する位置と離間する位置とに回動させる回動機構を備える。上記パンタグラフ機構21全体は、駆動シャフト22を中心に紡機機台11の長手方向と直交する方向へ回動可能に構成されている。紡機機台11の長手方向は、駆動シャフト22の軸線方向と一致し、紡機機台11の長手方向と直交する方向は、紡機機台11の前後方向と一致する。
【0024】
図2に示すように、各支持ブラケット26には、レバー28の軸線方向の第1端部28aが連結されている。各レバー28の軸線方向の第2端部28bは、変換機構40に連結されている。
【0025】
次に、パンタグラフ機構21全体を紡機機台11に接近する位置と離間する位置とに回動させる回動機構について説明する。
図1(a)又は
図1(b)に示すように、回動機構は、駆動シャフト22に対して平行に配置される第1ロッド29及び第2ロッド30と、第1ロッド29を往復動させるロッド駆動機構としての第1エアシリンダ31、及び第2ロッド30を往復動させるロッド駆動機構としての第2エアシリンダ32と、を備える。したがって、回動機構は、ロッド及びロッド駆動機構を複数備える。
【0026】
また、回動機構は、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32の駆動を制御する制御装置33と、第1ロッド29及び第2ロッド30の直動をパンタグラフ機構21の回動に変換する
図2又は
図3(a)に示す上記変換機構40と、を備える。制御装置33は、例えば、マイクロコンピュータを主体として構成される。制御装置33が実行する処理は、図示しないメモリに記憶された処理をCPUが実行することにより行われてもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理によって行われてもよい。また、制御装置33は、管替装置18のパワーシリンダ27の駆動、第1エアシリンダ31の駆動、及び第2エアシリンダ32の駆動を制御することでパンタグラフ機構21の回動を制御する。また、制御装置33は、移送装置15の駆動を制御する。
【0027】
紡機機台11において、第1ロッド29及び第2ロッド30は、紡機機台11の下部に配設されている。第1ロッド29及び第2ロッド30は、紡機機台11の長手方向に軸線Lが延びる状態に配設されている。第1ロッド29は、紡機機台11の長手方向におけるアウトエンドOEと紡機機台11の中央の間で延びる状態に配設されている。第2ロッド30は、紡機機台11の長手方向におけるギアエンドGEと紡機機台11の中央との間で延びる状態に配設されている。
【0028】
第1ロッド29と第2ロッド30の軸線Lは、紡機機台11の長手方向へ一直線状に並ぶ。紡機機台11を前面側から見て、第1ロッド29と第2ロッド30は前後方向に互いに重なり合うことなく並設されている。そして、第1ロッド29と第2ロッド30の2本のロッドが紡機機台11の長手方向の全体に亘るように第1ロッド29と第2ロッド30が並設されている。第1ロッド29の軸線方向の両端部のうち、紡機機台11の長手方向中央寄りの端部と、第2ロッド30の軸線方向の両端部のうち、紡機機台11の長手方向中央寄りの端部とは、紡機機台11の長手方向に間隔を空けて互いに向き合っている。
【0029】
第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32は、それぞれ図示しない圧縮空気源に接続されている。そして、圧縮空気源からのエアの供給が制御装置33によって制御され、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32の駆動が制御される。その結果、第1エアシリンダ31によって第1ロッド29が紡機機台11の長手方向に往復動し、第2エアシリンダ32によって第2ロッド30が紡機機台11の長手方向に往復動する。
【0030】
図2又は
図3(a)に示すように、各変換機構40は、第1ロッド29又は第2ロッド30に連結された駆動レバー41と、駆動レバー41を支持するブラケット42と、駆動レバー41とレバー28を連結するリンク44と、を備える。各変換機構40において、ブラケット42は、紡機機台11の下部において、第1ロッド29又は第2ロッド30よりも上側に配設されている。また、各ブラケット42は、各支持ブラケット26に対し、向き合う位置に配設されている。
【0031】
各ブラケット42は、紡機機台11の下部に固定される固定片43と、固定片43の下部において前後方向へ間隔を空けて突出する支持片45とを備える。ブラケット42の一対の支持片45の間に、上記駆動レバー41が回動可能に支持されている。駆動レバー41は、前後方向に見てほぼV形状である。駆動レバー41は、屈曲部41aにおいて、ブラケット42の一対の支持片45に回動可能に支持されている。
【0032】
駆動レバー41のV形状の第1端部41bは、第1ロッド29又は第2ロッド30に固定された軸受46に対し回動可能に連結されている。駆動レバー41のV形状の第2端部41cは、リンク44を介してレバー28の第2端部28bに連結されている。リンク44の軸線方向の第1端部44aは、駆動レバー41の第2端部41cに回動可能に連結され、リンク44の第2端部44bは、レバー28の第2端部28bに回動可能に連結されている。
【0033】
そして、第1ロッド29又は第2ロッド30の往復動により駆動レバー41が回動すると、リンク44が上下動され、リンク44の上下動に伴い、レバー28の先端がリンク44を介して上下動されるようになっている。すなわち、第1エアシリンダ31又は第2エアシリンダ32の駆動により支持ブラケット26がレバー28と一体に駆動シャフト22を中心に回動され、
図5に示すように、パンタグラフ機構21全体が支持ブラケット26とともに駆動シャフト22を中心に回動されるようになっている。
【0034】
図7(a)に示すように、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32において、シリンダチューブT内のストロークエンドまでピストンPが移動し、第1ロッド29及び第2ロッド30が没入した位置を初期位置とする。第1ロッド29及び第2ロッド30が初期位置にある状態においては、レバー28がほぼ水平状態となって、パンタグラフ機構21が垂直状態に保持される。第1ロッド29及び第2ロッド30が初期位置にある状態では、パンタグラフ機構21全体は紡機機台11に最も接近した位置にあり、ドッフィングバー20及びボビン把持装置19も紡機機台11に最も接近した位置にある。なお、駆動シャフト22が最もパワーシリンダ27側へ没入し、かつ第1ロッド29及び第2ロッド30が初期位置にある状態では、ドッフィングバー20は待機位置にあり、待機位置ではドッフィングバー20はペッグトレイ14よりも上方に位置している。
【0035】
図7(b)に示すように、第1ロッド29が第1エアシリンダ31から最大突出し、第2ロッド30が第2エアシリンダ32から最大突出した位置を、第1ロッド29及び第2ロッド30の動作位置とする。第1ロッド29及び第2ロッド30が動作位置にある状態においては、第1ロッド29に連結された各レバー28、及び第2ロッド30に連結された各レバー28は、先端が上方へ向かうように傾き、パンタグラフ機構21全体が最も紡機機台11から離間した位置まで回動され、ドッフィングバー20も最も紡機機台11から離間した位置にある。
【0036】
第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32は、制御装置33によって同期して駆動される。このため、第1ロッド29及び第2ロッド30が初期位置から動作位置に向けて移動するように第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32が制御されると、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32によって、第1ロッド29及び第2ロッド30は同期して往動し、シリンダチューブTから突出する。
【0037】
そして、第1ロッド29に連結された変換機構40と、第2ロッド30に連結された変換機構40も同期して動作する。このため、パンタグラフ機構21全体が同期して回動する。その結果、パンタグラフ機構21全体が紡機機台11から離間する位置に向けて回動する。つまり、第1ロッド29及び第2ロッド30が初期位置から動作位置に向けて往動することでパンタグラフ機構21が紡機機台11から離間する位置に向けて回動する。
【0038】
一方、第1ロッド29及び第2ロッド30が動作位置から初期位置に移動するように第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32が制御されると、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32によって、第1ロッド29及び第2ロッド30は同期して復動し、シリンダチューブTに没入する。
【0039】
そして、第1ロッド29に連結された変換機構40と、第2ロッド30に連結された変換機構40も同期して動作する。このため、パンタグラフ機構21全体が同期して回動する。その結果、パンタグラフ機構21全体が紡機機台11に対して離間した位置から紡機機台11に接近する位置に向けて回動する。つまり、第1ロッド29及び第2ロッド30が動作位置から初期位置に向けて復動することでパンタグラフ機構21が紡機機台11に対して離間した位置から紡機機台11に接近する位置に回動する。
【0040】
なお、第1ロッド29及び第2ロッド30が、初期位置と動作位置の中間位置に保持された状態においては、パンタグラフ機構21全体の回動量が最大と最小の中間値となり、この位置では、ボビン把持装置19が中間ペッグ17の中心軸の延長上に位置するようになっている。
【0041】
上記構成の管替装置18による管替作業は次のようにして行われる。
まず、ドッフィングバー20が待機位置からペッグトレイ14上の空ボビンEの把持位置に下降され、
図4(a)に示すように、ボビン把持装置19により空ボビンEが把持される。次に、
図4(a)の矢印aに示すように、ドッフィングバー20が上昇し、ボビン把持装置19に把持された空ボビンEはペッグ14a上から抜き上げられる。
【0042】
次に、矢印bに示すように、パンタグラフ機構21全体が紡機機台11から離間する方向へ回動された後、矢印cに示すように、ドッフィングバー20が上昇され、
図5に示すように、空ボビンEが中間ペッグ17の上方に位置する状態となる。
【0043】
図4(a)の矢印dに示すように、パンタグラフ機構21全体が紡機機台11に向けて若干回動された後、
図4(a)の矢印eに示すように、ドッフィングバー20が下降され、
図4(b)に示すように、中間ペッグ17に空ボビンEが挿入される。
【0044】
次いで、
図4(a)において、ボビン把持装置19による空ボビンEの把持が解除された後、矢印fに示すように、ボビン把持装置19が満ボビンFの頂部と対応する前方位置まで上昇される。その状態から矢印gに示すように、パンタグラフ機構21全体が紡機機台11に向けて回動されてボビン把持装置19が満ボビンFの頂部と対応する位置に移動される。そして、矢印hに示すように、ドッフィングバー20が満ボビン把持位置まで下降され、満ボビンFがボビン把持装置19に把持される。
【0045】
その後、
図4(b)の矢印iに示すように、ドッフィングバー20が上昇して満ボビンFがスピンドル13から抜き取られ、ドッフィングバー20は満ボビンFがスピンドル13と干渉しない位置まで上昇される。
【0046】
次に、矢印jに示すように、パンタグラフ機構21全体が紡機機台11から離間する方向へ回動された後、矢印kに示すように、ドッフィングバー20が下降されてボビン把持装置19がスピンドルレール12の下方前方に移動される。そして、矢印lに示すように、パンタグラフ機構21全体が紡機機台11に向けて回動されて満ボビンFの底部がペッグ14aの上方に配置された後、矢印mに示すように、ドッフィングバー20がさらに下降されると、
図6に示すように、満ボビンFが移送装置15のペッグ14aに挿入される。
【0047】
次に、
図6には図示しないが、ドッフィングバー20が上昇し、パンタグラフ機構21全体が紡機機台11から離間する方向へ回動された後、ドッフィングバー20が上昇され、その後、パンタグラフ機構21全体が紡機機台11に向けて回動され、ボビン把持装置19が中間ペッグ17に挿入された空ボビンEの上方に位置する状態となる。次に、ドッフィングバー20が空ボビンEの位置まで下降され、ボビン把持装置19により空ボビンEが把持される。次に、
図6の矢印nに示すように、ドッフィングバー20が上昇し、ボビン把持装置19に把持された空ボビンEは中間ペッグ17から抜き上げられる。
【0048】
次に、矢印oに示すように、パンタグラフ機構21全体が紡機機台11から離間する方向へ回動された後、矢印pに示すように、ドッフィングバー20が上昇される。次に、矢印qに示すように、パンタグラフ機構21全体が紡機機台11に向けて回動された後、矢印rに示すように、ドッフィングバー20が下降され、スピンドル13に空ボビンEが挿入される。その後、ドッフィングバー20の上昇、パンタグラフ機構21全体の回動、ドッフィングバー20の下降が所定の順序で行われ、ドッフィングバー20がスピンドル13の下方の待機位置に復帰する。
【0049】
リング精紡機10は、フェールセーフ機構50を備える。
図1(b)に示すように、フェールセーフ機構50は、第1エアシリンダ31の異常の有無を検出する検出装置としての第1センサ51と、第2エアシリンダ32の異常の有無を検出する検出装置としての第2センサ52と、制御装置33と、を備えている。本実施形態では、第1センサ51は、第1ロッド29の位置を検出して第1エアシリンダ31の異常の有無を検出し、第2センサ52は、第2ロッド30の位置を検出して第2エアシリンダ32の異常の有無を検出する。
【0050】
第1センサ51及び第2センサ52は、制御装置33に信号接続されている。第1センサ51は、第1ロッド29が初期位置に位置するように制御装置33によって第1エアシリンダ31が制御されたときに、第1ロッド29の先端を検出する没入用センサ51aを備える。また、第1センサ51は、第1ロッド29が動作位置に位置するように制御装置33によって第1エアシリンダ31が制御されたときに、第1ロッド29の先端の有無を検出する突出用センサ51bを備える。
【0051】
第2センサ52は、第2ロッド30が初期位置に位置するように第2エアシリンダ32が制御されたときに、第2ロッド30の先端を検出する没入用センサ52aを備える。また、第2センサ52は、第2ロッド30が動作位置に位置するように制御装置33によって第2エアシリンダ32が制御されたときに、第2ロッド30の先端の有無を検出する突出用センサ52bを備える。なお、
図1(b)では、第1ロッド29及び第2ロッド30が動作位置にある状態を示している。
【0052】
第1センサ51において、没入用センサ51aは、第1ロッド29の先端を検出するとON信号を制御装置33に出力し、突出用センサ51bは、第1ロッド29の先端を検出するとON信号を制御装置33に出力する。よって、第1ロッド29が初期位置にあるとき、没入用センサ51aはON信号を出力し、突出用センサ51bはOFFのままであり、ON信号を出力しない。そして、第1ロッド29が動作位置にあるときは、没入用センサ51a及び突出用センサ51bがON信号を出力する。したがって、第1ロッド29が動作位置にあるとき、没入用センサ51a及び突出用センサ51bがON信号を出力する状態が正常であり、突出用センサ51bがON信号を出力しない状態が異常となる。
【0053】
同様に、第2センサ52において、没入用センサ52aは、第2ロッド30の先端を検出するとON信号を制御装置33に出力し、突出用センサ52bは、第2ロッド30の先端を検出するとON信号を制御装置33に出力する。よって、第2ロッド30が初期位置にあるとき、没入用センサ52aはON信号を出力し、突出用センサ52bはOFFのままであり、ON信号を出力しない。そして、第2ロッド30が動作位置にあるときは、没入用センサ52a及び突出用センサ52bがON信号を出力する。したがって、第2ロッド30が動作位置にあるとき、没入用センサ52a及び突出用センサ52bがON信号を出力する状態が正常であり、突出用センサ52bがON信号を出力しない状態が異常となる。
【0054】
次に、制御装置33によるフェールセーフ機構50の動作を説明する。なお、
図7(a)に示すように、第1ロッド29及び第2ロッド30は初期位置にあり、各没入用センサ51a,52aがON信号を出力し、突出用センサ51b,52bはOFFのままである。制御装置33は、没入用センサ51a,52aからON信号を受信している。
【0055】
リング精紡機10の動作時、パンタグラフ機構21を紡機機台11から離間させる方向へ回動させるとき、制御装置33は、第1ロッド29及び第2ロッド30を初期位置から動作位置に移動させるために、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32を駆動させる。
【0056】
図7(b)に示すように、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32が正常に動作すると、第1センサ51の突出用センサ51bによって第1ロッド29の先端が検出され、第2センサ52の突出用センサ52bによって第2ロッド30の先端が検出される。したがって、突出用センサ51b,52bは、各ロッド29,30の先端を検出した旨のON信号を制御装置33に出力する。したがって、制御装置33は、没入用センサ51a,52aからのON信号と、突出用センサ51b,52bからのON信号の両方を受信する。制御装置33は、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32が正常に動作していると判定する。
【0057】
一方、第1エアシリンダ31に異常が発生し、第2エアシリンダ32は正常に動作する場合、制御装置33によって、第1ロッド29及び第2ロッド30を初期位置から動作位置に移動させる制御が行われたにも関わらず、第1エアシリンダ31は駆動しない。この場合、
図8(a)に示すように、第1センサ51の突出用センサ51bによって第1ロッド29の先端は検出されず、突出用センサ51bはOFFのままである。一方、第2センサ52の突出用センサ52bは第2ロッド30の先端を検出した旨のON信号を出力する。したがって、制御装置33は、没入用センサ51a,52aからのON信号と、第2センサ52の突出用センサ52bからのON信号を受信するが、第1センサ51の突出用センサ51bからのON信号は受信しない。
【0058】
制御装置33は、第1ロッド29及び第2ロッド30を動作位置に移動させるための第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32の制御を行った後、突出用センサ51bがOFFの状態が一定時間継続した場合、第1エアシリンダ31に異常が発生していると判定する。
【0059】
図8(b)に示すように、制御装置33は、第1エアシリンダ31に異常があると判定すると、異常が検出されていない第2エアシリンダ32を駆動させて第2ロッド30を動作位置から初期位置に戻す。つまり、制御装置33が第1及び第2エアシリンダ31,32を駆動させる制御を行った後、第1センサ51によって第1ロッド29が初期位置にある異常が検出され、かつ異常が検出された状態が一定期間継続した場合、制御装置33は、第2センサ52によって異常が検出されていない第2エアシリンダ32を駆動させる。そして、第2ロッド30が動作位置に到達する前に、第2エアシリンダ32の駆動により第2ロッド30を初期位置に戻す。すると、第1ロッド29及び第2ロッド30の双方が初期位置に位置することになる。
【0060】
次に、管替装置18の作用を説明する。
リング精紡機10の設置場所において、リング精紡機10の稼働に伴い環境温度が上昇すると、第1ロッド29及び第2ロッド30が熱膨張する。
図3(b)に示すように、熱膨張に伴って第1ロッド29及び第2ロッド30に連結されている駆動レバー41の第1端部41bの位置が変化し、第1端部41bの位置変化によって、駆動レバー41が回動してしまう。すると、駆動レバー41の回動に伴ってリンク44が上昇し、レバー28が回動してパンタグラフ機構21が回動してしまう。
【0061】
ここで、変換機構40を構成するロッドを、第1ロッド29と第2ロッド30の2本にせず、紡機機台11の長手方向全体に延びる1本のロッドとした場合を比較例とする。第1ロッド29及び第2ロッド30は、比較例の1本のロッドに比べると軸線方向への長さが短いため、熱膨張量も1本のロッドよりも少なくなり、熱膨張に伴う駆動レバー41の回動量も比較例より少なくなる。このため、第1ロッド29及び第2ロッド30の熱膨張に伴い、駆動レバー41が回動してパンタグラフ機構21が回動しても、その回動量を比較例よりも少なくできる。
【0062】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1ロッド29と第2ロッド30を紡機機台11の長手方向に並設することで、紡機機台11の長手方向全体に延びる1本のロッドとした場合と比べると、ロッドの熱膨張に伴うパンタグラフ機構21の回動量を少なくできる。従って、管替装置18による管替作業の中でパンタグラフ機構21が紡機機台11から離間する方向へ回動して行われる各作業において、パンタグラフ機構21の回動量が一定範囲を越えることを抑制し、各作業を円滑に行うことができる。例えば、スピンドル13に対して空ボビンEを挿入する作業位置において、スピンドル13に対する空ボビンEの位置ずれを小さくして、スピンドル13に空ボビンEをスムーズに挿入できる。
【0063】
(2)パンタグラフ機構21を紡機機台11から離間する方向へ回動させるとき、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32のいずれか一方に異常が発生し、異常の発生したロッドが初期位置のままの場合は、制御装置33は、正常なエアシリンダを駆動させて、第1ロッド29及び第2ロッド30を初期位置に戻す。このため、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32を駆動させた後、第1エアシリンダ31の異常が第1センサ51によって検出された場合は、正常な第2エアシリンダ32を駆動させて、第1ロッド29及び第2ロッド30を初期位置に位置させる。このため、第1ロッド29と第2ロッド30の間での移動量のずれ量を無くして変換機構40の同期のずれも無くすことで、パンタグラフ機構21のずれを抑えてドッフィングバー20の捻れを無くすことができる。これによって、管替装置18の損傷を抑制できる。
【0064】
(3)紡機機台11の長手方向への長さが長くなるほど、ロッドの熱膨張量は大きくなる。このため、ロッドを複数本備えるリング精紡機10とし、各ロッドの熱膨張量を少なくしてパンタグラフ機構21の回動量を少なくする構成は、長手方向への長さが長い紡機機台11ほど有効である。
【0065】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○
図9に示すように、ドッフィングバー20を紡機機台11の長手方向に分割してもよい。例えば、第1ロッド29の往復動によって駆動する変換機構40に連結されたパンタグラフ機構21に第1ドッフィングバー201を連結し、第2ロッド30の往復動によって駆動する変換機構40に連結されたパンタグラフ機構21に第2ドッフィングバー202を連結する。第1ドッフィングバー201と第2ドッフィングバー202は、紡機機台11の長手方向に並設されている。
【0066】
このように構成した場合、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32のいずれか一方に異常が生じると、正常なエアシリンダと異常なエアシリンダとが共存する。そして、第1ロッド29と第2ロッド30が同期して往復動しない場合、変換機構40の間で同期が取れなくなり、パンタグラフ機構21の同期が取れなくなり、パンタグラフ機構21の間で回動量にずれが生じる。すると、ドッフィングバー20が連続している場合、ドッフィングバー20に捻れが生じてしまう。しかし、第1ロッド29に対応して第1ドッフィングバー201を設け、第2ロッド30に対応して第2ドッフィングバー202が設けられているため、パンタグラフ機構21の回動量にずれが生じても、回動量に応じて各ドッフィングバー201,202も移動するため、1本のドッフィングバー20のような捻れが生じにくい。
【0067】
○ 第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32の動作を検出をする検出装置を、ピストンPの位置を検出するセンサとしてもよい。このように構成した場合、第1ロッド29及び第2ロッド30が初期位置から動作位置まで移動する途中で第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32の異常を検出できる。
【0068】
そして、検出装置によって第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32のいずれかの異常が検出された場合は、正常なエアシリンダを停止させることによって、複数のロッドの位置ずれを抑える。
【0069】
又は、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32の動作を検出をする検出装置を、第1ロッド29及び第2ロッド30が初期位置にある段階で第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32の異常を検出できる装置としてもよい。そして、検出装置によって第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32のいずれかの異常が検出された場合は、正常なエアシリンダを駆動させないことによって、複数のロッドの位置ずれを抑える。
【0070】
その結果、複数のロッド間でのずれを抑えて変換機構40の同期のずれも抑え、パンタグラフ機構21のずれを抑えてドッフィングバー20の捻れを抑えることができる。
○ 紡機機台11を前面側から見て、第1ロッド29と第2ロッド30は前後方向に互いに重なり合うことなく並設されていれば、第1ロッド29と第2ロッド30は前後方向及び上下方向の少なくとも一方向へずれていてもよい。この場合、第1ロッド29と第2ロッド30とは、紡機機台11の長手方向の中央寄りに位置する各端部同士が、紡機機台11の長手方向において一部が向き合っていてもよいし、全面が向きあっていなくてもよい。
【0071】
そして、第1ロッド29と第2ロッド30が上下方向及び前後方向の少なくとも一方向へずれている場合、パンタグラフ機構21の上下方向の位置調節や、変換機構40において駆動レバー41の回動量を調節してドッフィングバー20の捻れがないようにする。
【0072】
○ リング精紡機10は、ロッドを3本以上備えるとともに、各ロッド毎にエアシリンダを備えていてもよい。
○ ロッド駆動機構は、油圧シリンダであってもよい。
【0073】
○ 第1ロッド29及び第2ロッド30が往復動するときの向きが同じであれば、第1エアシリンダ31及び第2エアシリンダ32の配置位置は適宜変更してもよい。
○ ロッド駆動機構は、ボールねじを利用した駆動源としてもよい。
【0074】
○ リング精紡機10は、フェールセーフ機構50を備えていなくてもよい。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(1)前記精紡機はリング精紡機である。
【符号の説明】
【0075】
11…紡機機台、18…管替装置、19…ボビン把持装置、20…ドッフィングバー、21…パンタグラフ機構、22…駆動シャフト、27…駆動機構としてのパワーシリンダ、29…第1ロッド、30…第2ロッド、31…ロッド駆動機構としての第1エアシリンダ、32…ロッド駆動機構としての第2エアシリンダ、33…制御装置、40…変換機構、51…検出装置としての第1センサ、52…検出装置としての第2センサ、201…第1ドッフィングバー、202…第2ドッフィングバー。