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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/63 20180101AFI20230711BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20230711BHJP
   F24F 11/50 20180101ALI20230711BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20230711BHJP
【FI】
F24F11/63
F24F11/64
F24F11/50
F24F110:10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019197749
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021071227
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】北島 真枝
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-087670(JP,A)
【文献】特開2010-128519(JP,A)
【文献】特開2005-308617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/63
F24F 11/64
F24F 11/50
F24F 110/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の温度を検出するセンサユニットと、
同センサユニットと通信接続された室内機制御ユニットとを有する室内機を備えた空気調和機において、
前記センサユニットは、複数の温度検出素子を有し前記室内の複数の温度を検出するセンサ部と、温度データを記憶する温度記憶部と、前記室内機制御ユニットからの指示を受け付けて、前記温度記憶部に記憶した前記温度データを前記室内機制御ユニットへ送信する管理部とを備え、
前記温度記憶部は、前記センサ部が検出した有効温度データと、
前記センサユニットが検出可能な温度範囲外の温度データである無効温度データとを温度データとして所定の順番で並ぶアドレスに関連付けて格納し、
前記室内機制御ユニットは、前記温度記憶部に格納された前記温度データを連続的に読み出すために、前記温度記憶部に対して先頭として読み出す前記温度データに関連付けられたアドレスを前記管理部へ送信した場合、
前記管理部から読み出された前記無効温度データが前記所定の順番に基づく順番で受信できない場合、前記送信したアドレスが正しく前記管理部で受信出来ない通信エラーと判定するアドレス検査手段を備えたことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記無効温度データを複数用いる場合、各々の値を異ならせることを特徴とする請求項1記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の表面温度を検出する温度センサユニットを備えた空気調和機に係わり、より詳細には、誤り検出機能が無いシリアル通信方式を用いて温度センサユニットに対して所定のデータを送信した場合、温度センサユニット側で正しく受信したか否かを送信側で判断する機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機は、室内の表面温度を複数の区画に分割し、それぞれの区画の温度を検出する赤外線センサであるサーモパイルユニットを室内機の前面に搭載しているものがある(例えば、特許文献1参照。)。この室内機は検出した各区画の温度に基づいて室内を最適な温度で空調するようにしている。このサーモパイルユニットと室内機を制御する室内機制御部は、安価で手軽である一方、一般的にノイズに弱いとされているIIC (Inter Integrated Circuit)バスにより接続されている。このようなサーモパイルユニットは単機能のデバイスであり、通信機能にチェックサム方式などの誤り検出機能を備えていない。このため、この通信線にノイズが混入して温度データに誤りが発生した場合、意図しない温度データにより空調運転を行うおそれがあった。
【0003】
図7(1)に示すサーモパイルユニット80のサーモパイル82は、温度検出範囲を、縦5区画、横5区画で合計25ブロックに分割して個々のブロック毎に1つの温度検出素子を用いて温度を検出することができる。そしてこのサーモパイル82は、この検出素子0~検出素子25で検出した温度データを温度記憶部81に格納している。なお、検出素子0は図示しない補償用温度検出器(サーモパイル82自身の温度を検出)を示している。
【0004】
温度記憶部81は52個の8ビットのレジスタで構成されている。また、サーモパイル82で検出された温度データの値は16ビットであるため、隣接する8ビットのレジスタを2個使用してこの温度データが格納されている。レジスタには順にアドレス(レジスタアドレス)が付与されている。以降、レジスタアドレスと温度データに関しては16進数で表記する。
【0005】
このレジスタアドレスは例えば素子0から素子25に対応して、02,03、04、05・・・・35となっている。このレジスタアドレスに素子0と対応する温度データと、素子1~素子25で検出された温度データが、それぞれ上位桁、下位桁で合計2バイトの値としてアドレスレジスタ内に格納されている。
【0006】
一方、図7(1)に示すサーモパイルユニット80に対して、図7(2)に示すようにサーモパイルの温度検出可能な温度検出素子の数を減らしたものがある。
図7(2)に示すサーモパイルユニット2のサーモパイル22は、温度検出範囲を、縦4区画、横4区画で合計16ブロックに分割して個々のブロック毎に1つの温度検出素子を用いて温度を検出することができる。そしてこのサーモパイル22は、この検出した各ブロックの温度データを温度記憶部21に格納している。なお、サーモパイル22の素子番号は素子1~素子16であり、対応する温度記憶部21の図ではこの素子番号を割り当てて表記している。
【0007】
温度記憶部21は、サーモパイルユニット80と同様に52個の8ビットのレジスタで構成されている。また、サーモパイル22で検出された温度データの値は16ビットであるため、隣接する8ビットのレジスタを2個使用してこの温度データが格納されている。この温度記憶部21は、温度記憶部81と同じ構成であり、使用しない温度検出素子と対応したレジスタアドレスが未使用となっている。
【0008】
この未使用のレジスタアドレスに格納される温度データは、サーモパイルユニット2が検出可能な温度の範囲外のデータ値である無効温度データである。この無効温度データは、例えば0000やFFFFの値であり、サーモパイル22で検出可能な温度範囲である0044~03FF、実際の温度換算で-20℃~+120℃の範囲外の値となっている。この無効温度データは、アドレスレジスタの04と05、0Eと0F、18と19、22と23、2C~35にそれぞれ予め固定値として格納されている。サーモパイル22で検出された素子1~素子16までの温度データは前述した無効温度データが格納されている以外のレジスタに順次格納されている。
【0009】
このようなサーモパイルユニット80やサーモパイルユニット2は、全てのレジスタのうち必要なレジスタを先頭として、ここから連続的に温度データを読み出すようになっている。このため、温度記憶部に格納された温度データを読み出す図示しない室内機制御部は、最初に読出す先頭のレジスタを示す値である開始レジスタアドレスをサーモパイルユニットに指定する。サーモパイルユニットは、この指定された開始レジスタアドレスで示されるレジスタを先頭として連続的に温度データを室内機制御ユニットへ送信するようになっている。
【0010】
しかしながら、前述したようにサーモパイルユニットは誤り検出機能を備えていない。このため、室内機制御ユニット側からサーモパイルユニット側に送信した開始レジスタアドレスがノイズにより誤ったレジスタを示す値となっても、室内機制御ユニットはそれを判定することができない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2016-173198号公報(段落番号0026~0028)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上述べた問題点を解決し、複数の温度データを検出して室内機制御ユニットへ送信するセンサユニットに通信データの誤り検出機能が備えられていない場合であっても、室内機制御ユニットがセンサユニットに送信した温度データを連続的に読み出すための開始アドレスを正しくセンサユニットが受信したか否かを判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上述の課題を解決するため、
室内の温度を検出するセンサユニットと、
同センサユニットと通信接続された室内機制御ユニットとを有する室内機を備えた空気調和機において、
前記センサユニットは、複数の温度検出素子を有し前記室内の複数の温度を検出するセンサ部と、温度データを記憶する温度記憶部と、前記室内機制御ユニットからの指示を受け付けて、前記温度記憶部に記憶した前記温度データを前記室内機制御ユニットへ送信する管理部とを備え、
前記温度記憶部は、前記センサ部が検出した有効温度データと、
前記センサユニットが検出可能な温度範囲外の温度データである無効温度データとを温度データとして所定の順番で並ぶアドレスに関連付けて格納し、
前記室内機制御ユニットは、前記温度記憶部に格納された前記温度データを連続的に読み出すために、前記温度記憶部に対して先頭として読み出す前記温度データに関連付けられたアドレスを前記管理部へ送信した場合、
前記管理部から読み出された前記無効温度データが前記所定の順番に基づく順番で受信できない場合、前記送信したアドレスが正しく前記管理部で受信出来ない通信エラーと判定するアドレス検査手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の手段を用いることにより、本発明による空気調和機によれば、本発明は、複数の温度データを検出して室内機制御ユニットへ送信するセンサユニットに通信データの誤り検出機能が備えられていない場合であっても、室内機制御ユニットがセンサユニットに送信した温度データを連続的に読み出すための開始アドレスを正しくセンサユニットが受信したか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による空気調和機の室内機の実施例を示す斜視図である。
図2】本発明によるサーモパイルユニットと室内機制御ユニットを示すブロック図である。
図3】通信データ検査部の内部を示すブロック図である。
図4】室内機制御ユニットとサーモパイルユニットとの通信手順を示す説明図である。
図5】本発明による誤り検出方法を説明する説明図である。
図6】温度データの別の読出し方法を説明する説明図である。
図7】サーモパイルユニット内のサーモパイルと温度記憶部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。なお、本発明と直接関係ない冷媒回路やファンモータなどの図示と説明を省略する。
【実施例1】
【0017】
[室内機の説明]
図1は本発明による空気調和機1の室内機10の実施例を示す斜視図である。
室内機10は横長の箱体であり、室内機10の前方右下から斜め上を見上げた状態を示している。室内機10の前面には前方に向かって湾曲した前面パネル5が、室内機10の下面には水平風向板3が、室内機10の左右側面には側面から吸い込んだ空気を前方に送風するファンユニット4が、それぞれ備えられている。また、室内機10の前方下方の左右の中間位置に、室内の温度を検出するセンサユニットであるサーモパイルユニット2が備えられている。このサーモパイルユニット2は室内の温度として、室内の床面や壁面の表面温度を検出する。また、室内機10の内部には室内機制御ユニット6が配置されており、サーモパイルユニット2と通信接続されている。
【0018】
[サーモパイルユニットの説明]
図2は本発明で使用するサーモパイルユニット2と室内機制御ユニット6の内部を示すブロック図である。なお、以後説明するレジスタアドレスと温度データは全て16進数で表記している。なお、サーモパイルユニット2は背景技術で説明した図7(2)のものと同じである。
【0019】
サーモパイルユニット2は、温度検出範囲を、縦4区画、横4区画で合計16ブロックに分割して個々のブロック毎に1つの温度検出素子を用いて温度を検出するサーモパイル(センサ部)22と、サーモパイル22で検出した各ブロックの温度を2バイトのデータとして格納する温度記憶部21と、温度記憶部21に格納した温度データをIIC (Inter Integrated Circuit)バスを用いて室内機制御ユニット6へシリアル通信方式で送信する管理部23と、IICのプロトコルで規定されたデバイスを区別する固有のアドレス(子機ID)を記憶した子機ID記憶部24と、サーモパイル22自体の温度を検出する補償用温度検出器25を備えている。
【0020】
温度記憶部21は、52個の8ビットのレジスタで構成されている。また、サーモパイル22の温度検出素子である素子1~素子16で検出された温度データと、素子0で示される補償用温度検出器25で検出された温度データの値は16ビットであるため、隣接する8ビットのレジスタを2個使用してこれらの温度データが格納されている。以下、これらの温度データを有効温度データと呼称する。この温度記憶部21のレジスタアドレスは、例えば素子0から素子16に対応して所定の順番で並んでおり、02,03、04、05・・・・35となっている。なお、背景技術で説明した図7(1)のサーモパイルユニット80で使用しない温度検出素子と対応したレジスタ(素子名に「―」が表示さされているレジスタ)は未使用となっている。
【0021】
この未使用のレジスタに格納される温度データは、サーモパイルユニット2が検出可能な温度の範囲外のデータ値である無効温度データである。この無効温度データは、例えば0000やFFFFの値であり、サーモパイル22で検出可能な温度範囲である0044~03FF、実際の温度換算で-20℃~+120℃の範囲外の値となっている。この無効温度データはアドレスの04と05、0Eと0F、18と19、22と23、2C~35の所定の順番で並ぶレジスタアドレスで示されるレジスタに関連付けられてそれぞれ予め固定値として格納されている。サーモパイル22で検出された素子1~素子16までの有効温度データは前述した無効温度データが格納されている以外のレジスタに各々のレジスタアドレスと関連付けて格納されている。なお、有効温度データと無効温度データを合わせて温度データと呼ぶ場合がある。
このように温度記憶部21は、有効温度データと無効温度データを温度データとして所定の順番で並ぶアドレスに関連付けて格納している。
【0022】
[室内機制御ユニットの説明]
室内機制御ユニット6は、例えばマイコンからなる室内機制御部61と、記憶部62と、通信データ検査部70と、クロック信号用の通信線8の電圧をプルアップする抵抗64と、データ用の通信線9の電圧をプルアップする抵抗63を備えている。
【0023】
室内機制御部61は、室内機10全体の制御を行うと共に、サーモパイルユニット2との通信制御も行う。室内機制御部61は、サーモパイルユニット2から受信した有効温度データや無効温度データと、受信データを検査するための検査条件を通信データ検査部70に出力する。一方、通信データ検査部70は受信データの検査結果を室内機制御部61へ出力する。室内機制御部61はこの検査結果が異常(通信エラー)の場合、再度通信をやり直すリトライ処理を実行する。
【0024】
[通信データ検査部の説明]
図3は通信データ検査部70の内部を示すブロック図である。
通信データ検査部70は、検査条件を記憶する検査条件記憶部74と、受信データを検査するための比較データ記憶部72と、受信データを一時的に保管する受信データ保管部73と、レジスタアドレスを検査するレジスタアドレス検査部(アドレス検査手段)71と、温度データを検査する温度データ検査部(温度データ検査手段)75を備えている。
【0025】
室内機制御部61は、サーモパイルユニット2の温度記憶部21に記憶された温度データを読み出す場合、開始レジスタアドレスをサーモパイルユニット2の管理部23へ送信し、読み出したいデータの個数だけ受信を連続的に行う。これを詳細に説明すると、室内機制御部61は1バイトの温度データを受信した直後にACKを管理部23へ送信する。すると、これに対応して管理部23は1バイトの温度データを送信する。室内機制御部61は、読み出したい温度データの個数だけこの手順を繰り返す。なお、この通信手順に関しては後で詳細に説明する。
一方、室内機制御部61は、この時に使用する開始レジスタアドレスとデータの個数を検査条件として通信データ検査部70へ出力する。
【0026】
通信データ検査部70は、この検査条件が入力されると、これを検査条件記憶部74に記憶する。例えば図3では開始レジスタアドレスが06、読み出すデータの個数が10個である。検査条件記憶部74は、この記憶した検査条件をレジスタアドレス検査部71と温度データ検査部75へ出力する。一方、室内機制御部61は読み出した(受信した)温度データを記憶部62へ記憶する一方、通信データ検査部70へ出力する。受信データ保管部73はこの入力された受信データを一時的に格納する。
【0027】
比較データ記憶部72は、レジスタアドレス02~2Dに対応して無効温度データである0000の値が事前に所定のレジスタアドレスのレジスタに格納されている。つまり、サーモパイルユニット2から温度データが正常に受信できた場合、かならず所定のレジスタアドレスと対応する温度データは無効温度データである0000に、また、その他のレジスタアドレスと対応する温度データは有効温度データである0044~03FFの範囲の値になっている。
【0028】
このため、レジスタアドレス検査部71は無効温度データが格納されているべき所定の順番のレジスタアドレスの温度データが無効温度データである場合を「正常」と判定し、無効温度データが格納されているべき所定の順番のレジスタアドレスの温度データが有効温度データである場合を「異常」と判定する。
このように、レジスタアドレス検査部71は、管理部23から読み出された無効温度データが所定の順番(レジスタアドレスの順番)に基づく順番で受信できない場合に、「異常」と判定する。
【0029】
一方、温度データ検査部75はその他のレジスタアドレスに格納された温度データの値が有効温度データの範囲内である場合を「正常」と判定し、その他のレジスタアドレスに格納された温度データの値が1つでも無効温度データである場合を「異常」と判定する。
そしてそれぞれの検査部は、この検査結果を「正常/異常」としてそれぞれ出力する。なお、「異常」の場合が通信エラーとなる。なお、レジスタアドレス検査部71の検査方法については後で詳細に説明する。
【0030】
このように、通信データ検査部70は受信したデータのみで受信データの正常/異常を判定できるため、データの誤り検出手段がないセンサユニットであっても受信後に通信エラーの検査が可能である。
【0031】
[データ通信の手順説明]
図4は親機となる室内機制御ユニット6と、子機となるサーモパイルユニット2の通信手順を示す説明図である。
図4において縦方向は上から下に向かって時間の経過を示している。横の項目は室内機制御ユニット6(親機)と、サーモパイルユニット2(子機)と、親機側でのエラー対処方法をそれぞれ示している。なお、図4内のかっこ付き数字は処理の順番を示している。また、図4ではIIC (Inter Integrated Circuit)における通信手順に従って説明する。なお、サーモパイルユニット2(子機)の子機IDは16進数で「3C」である。
【0032】
(1)親機はスタートコンディションを送信する。(2)これを検知した子機側は受信準備を行う。(3)親機は子機IDを送信する。(4)これを受信した子機(サーモパイルユニット2)はそれが自分の子機IDであるか否かを、子機ID記憶部24に格納されている値と比較して確認する。(5)子機はそれが自分の子機IDであるためACKを送信する。子機は自分の子機IDでない場合は無応答とし、自分の子機IDであるが自身がビジー状態など対応が不可能な場合はNACKを送信する。このため、親機はACKが来るまで上記動作を3回繰り返す。
【0033】
(6)ACKを受信した親機は、読み出したいデータの先頭を示すレジスタアドレス(開始レジスタアドレス)を準備する。例えば素子1から10バイトのデータを読み出したい場合、開始レジスタアドレスとして06を準備する。(7)親機はこの開始レジスタアドレスを子機へ送信する。(8)子機はこの開始レジスタアドレスを受信する。(9)子機の管理部23はこの開始レジスタアドレスの値を保持した後、ACKを送信する。このため、親機はACKが来るまで上記動作のリトライを繰り返す。ただし、子機はここでは何かのデータを受信したらACKを送信するだけであり、必ずしも親機が送信したデータと同じものを受信しているとは限らない。つまり、開始レジスタアドレスの値はこの時点で検査が不可能である。
【0034】
(10)ACKを受信した親機はこれを確認する。(11)親機はリピートスタートコンディションを送信する。(12)これを受信した子機は繰り返し処理の準備を行う。(13)親機はデータを読み出す子機IDと、親機における受信状態開始の通知を送信する。(14)これを受信した子機は自分の子機IDか否かを確認する。(15)子機は自分の子機IDであるためACKを送信する。子機は自分の子機IDでない場合は無応答とし、対応が不可能な場合はNACKを送信する。このため、親機はACKが来るまで上記動作をリトライする。
【0035】
(16)ACKを受信した親機は受信データの格納準備を行う。(17)子機は前回受信した開始レジスタアドレスで示されるデータを第1温度データの上位桁として送信する。(18)親機はこの第1温度データを受信する。(19)親機は第1温度データの上位桁を記憶部62に格納する。次に親機はACKを送信する。親機はここでは何かのデータを受信したらACKを送信するだけであり、必ずしも子機が送信したデータと同じものを受信しているとは限らない。
【0036】
(20)ACKを受信した子機は第1温度データの下位桁を準備する。これは開始レジスタアドレスの次のアドレスで示されるデータを意味する。(21)子機は第1温度データの下位桁を送信する。(22)親機はこれを受信する。(23)親機は第1温度データの下位桁を記憶部62に格納する。親機はこの受信データも正しいか否かの検査は行っていない。次に親機はACKを送信する。(24)ACKを受信した子機は第2温度データの上位桁を準備する。以降、同様に親機は温度データの受信を繰り返す。
【0037】
(25)子機は第10温度データの下位桁を送信する。(26)親機は第10温度データの下位桁を受信する。(27)親機は第10温度データの下位桁を記憶部62に格納する。親機は受信するデータの個数を管理しており、データを必要な個数、ここでは10個のデータを受信したら親機はNACKを送信する。(28)これを受信した子機は処理を完了する。
【0038】
[開始レジスタアドレスの検査]
(29)親機は上記の通信でデータの内容が正しく送受信されたか否かを検査するため、通信データ検査部70へ検査条件と受信データを出力する。検査条件は今回検査の対象となる受信データの先頭を示す開始レジスタアドレス:06とデータ個数:10である。受信データは記憶部62に今回格納したデータである。
【0039】
通信データ検査部70は図3に示すように、この検査条件を検査条件記憶部74に、受信データを受信データ保管部73にそれぞれ記憶する。比較データ記憶部72には所定のレジスタアドレスのレジスタに無効温度データ:0000が格納されている。これは図2で示す温度記憶部21と同じ構成である、ただし、温度データは格納されていない。
【0040】
レジスタアドレス検査部71は、検査条件記憶部74に記憶されている条件を用いて比較データ記憶部72内の無効温度データ:0000が格納されているレジスタアドレス(所定のレジスタアドレス)を検出する。検索条件の開始レジスタアドレス:06とデータ個数:10で示される今回の受信範囲はレジスタアドレス:06~0Fであるため、レジスタアドレス検査部71は、比較データ記憶部72内で検索した結果、レジスタアドレスの0Eと0Fで無効温度データ:0000を抽出する。
【0041】
このためレジスタアドレス検査部71は、受信データ保管部73のレジスタアドレスの0Eと0Fと対応するレジスタに無効温度データ:0000が格納されていれば今回の通信におけるレジスタアドレスの値は誤りがないと判断する。もしレジスタアドレスの値が誤った値であれば、0Eと0Fに無効温度データ:0000以外の値が入ることになるため誤りを検出できる。
レジスタアドレス検査部71は、検査した結果(正常又は異常)を室内機制御部61へ出力する。室内機制御部61は、この結果が異常の場合には再度、温度データを受信するリトライ処理を実行する。
【0042】
[温度データ値の検査]
(30)親機の温度データ検査部75は、前述したように検査条件から無効温度データのレジスタアドレスを抽出する。従ってこれ以外のレジスタアドレスが有効温度データを格納しているレジスタアドレスであるため、温度データ検査部75は、レジスタアドレス:06~0Dの温度データを確認し、温度データの値が異常な値でないかを検査する。つまり、温度データ検査部75は、各温度データが取りうる温度範囲;0044~03FFの範囲に入っていれば正常、範囲外であれば異常として検査結果を出力する。この結果により異常の場合に親機は再度、温度データを受信するリトライ処理を実行する。
なお、ノイズが多い場合はリトライ回数が増加して通信処理に時間がかかり、空調制御に支障が出る場合もある。このような場合、ここでのリトライ処理を行わないで次に説明する複数温度データの平均値化処理を実行するようにしてもよい。
【0043】
[複数温度データの平均値化]
(31)親機の室内機制御部61は、サーモパイルユニット2から16素子の全ての温度データの受信を5回連続して実行し、記憶部62へそれぞれ別に記憶する。これらの温度データの中にはノイズによりデータの値が大きく狂ったものは通信データ検査部70により異常データとして排除されている。しかし、例えば数十℃だけ狂ったデータは排除されないので、そのまま空調制御に使用すると意図しない室温管理になってしまう場合がある。
【0044】
このため、室内機制御部61は、連続して検出した5回分の温度データにおけるサーモパイル22の1つの温度検出素子に関して、5回連続で受信した温度データのうち、値の大きさ順に並べた中央の3値の平均値を実際に使用する温度データとしている。室内機制御部61は、これを全ての温度検出素子ごとに実行する。これにより、現在の室温に対して極端な値の温度データを排除することができる。
【0045】
[レジスタアドレスの誤り検出方法の詳細説明]
図5は本発明によるレジスタアドレスの誤り検出方法を説明する説明図である。
図5の表はサーモパイルユニット2(子機)内の温度記憶部21を示している。室内機制御ユニット6(親機)は、サーモパイルユニット2(子機)内の温度記憶部21からデータを読み出す場合に複数のブロックに分割して読み出す。これは読出しに時間がかかるため、全てのデータを読み出してからエラーの検査を行ってエラーを検出した場合、全てのデータの再読み込みになるため時間がかかるからである。小さなブロックであればエラー時の再読出しの時間を短縮できる。
【0046】
このため図5ではレジスタアドレス02~05、06~0F、10~19、1A~23、24~2Dの5つのブロックに分割している。この各ブロック内には1つの無効温度データを格納する所定のレジスタアドレスを含むようにしている。
【0047】
ここで親機がレジスタアドレス:10から10個のデータを読み出す場合、図4の(7)でレジスタアドレス:10を子機へ送信した時、ノイズにより10が1Eに変化した場合、実際に読み出されるデータはレジスタアドレス:1Eから10個となり、全く無関係なデータを受信することになる。レジスタアドレス検査部71は読み出したデータの内、最後の2バイトが無効温度データ:0000でなく、0171なので異常と判断することができる。また、温度データ検査部75は、有効温度データが格納されるべきレジスタに無効温度データ:0000があるため、異常と判断することができる。
【0048】
[レジスタアドレスの別の読出し方法]
図6は温度データの別の読出し方法を説明する説明図である。
図6の表はサーモパイルユニット2(子機)内の温度記憶部21を示している。室内機制御ユニット6(親機)は、温度記憶部21からデータを読み出す場合に複数のブロックに分割して読み出す。図6ではレジスタアドレス02~11、12~1F、20~2Dの3つのブロックに分割している。この各ブロック内には少なくとも1つの無効温度データを格納する所定のレジスタアドレスを含むようにしている。
【0049】
このように1つのブロックにおいて、少なくとも1つの無効温度データを固定したレジスタアドレスに格納することにより、複数の温度データを任意のブロック数に分割して読み出しても前述したような効果を得ることができる。
【0050】
以上説明したように、室内機10に備えられて複数の温度データを検出して室内機制御ユニット6へ送信するサーモパイルユニット2に通信データの誤り検出機能が備えられていない場合であっても、室内機10側の通信データ検査部70で通信データの誤りを検出することができるため、通信データの信頼性を向上させることができる。
【0051】
なお本実施例では無効温度データをすべて0000の値に統一しているが、これに限るものでなく、0001,0002,0003・・・・のように異なる値にすれば、レジスタアドレスがノイズにより変化した時、偶然に他のレジスタアドレスの無効温度データが格納された所定のレジスタアドレスに変化したとしても区別が可能なため、検出精度をさらに向上させることができる。
また、本実施例ではIIC (Inter Integrated Circuit)を用いたデータ送受信プロトコルを説明しているが、これに限るものでなく、通信データの誤り検出機能を備えていない通信方式であればどの様な通信方式であってもよい。
【0052】
また、本実施例では全温度データのうち部分的に受信してエラー検査を行っているが、これに限るものでなく、全温度データを受信した後、エラー検査を行うようにしてもよい。
また、本実施例では通信データ検査部をハードウェアとして説明しているが、これに限るものでなく、ソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 空気調和機
2 サーモパイルユニット(センサユニット)
3 水平風向板
4 ファンユニット
5 前面パネル
6 室内機制御ユニット
8 通信線
9 通信線
10 室内機
21 温度記憶部
22 サーモパイル(センサ部)
23 管理部
24 子機ID記憶部
25 補償用温度検出器
61 室内機制御部
62 記憶部
63 抵抗
64 抵抗
70 通信データ検査部(通信データ検査手段)
71 レジスタアドレス検査部(アドレス検査手段)
72 比較データ記憶部
73 受信データ保管部
74 検査条件記憶部
75 温度データ検査部(温度データ検査手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7