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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】積層型バッテリーパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20230711BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230711BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230711BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230711BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20230711BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20230711BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20230711BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6551
H01M10/6555
H01M50/204 401H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019205616
(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公開番号】P2021077595
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】森田 秀世
(72)【発明者】
【氏名】上原 雄司
(72)【発明者】
【氏名】川村 宏輝
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-116193(JP,A)
【文献】特表2013-524457(JP,A)
【文献】国際公開第2017/064978(WO,A1)
【文献】特開2010-062093(JP,A)
【文献】特開2009-163932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位セルが積層されてなる積層型バッテリーパックであって、
前記複数の単位セルのそれぞれは、樹脂ホルダーと、前記樹脂ホルダーに収容された平型セルと、前記平型セルを覆う金属プレートと、前記樹脂ホルダーと前記平型セルの間に設けられ、前記樹脂ホルダーよりも熱伝導率が低く、且つ、前記樹脂ホルダーよりも可撓性の高いシート部材とを含み、これにより前記平型セルが前記樹脂ホルダーと前記金属プレートによって積層方向に挟まれた構造を有することを特徴とする積層型バッテリーパック。
【請求項2】
前記金属プレートは、前記積層方向から見て前記樹脂ホルダーと重ならない突出部を有することを特徴とする請求項に記載の積層型バッテリーパック。
【請求項3】
前記積層方向に隣接する前記突出部を繋ぐ熱伝導部材を備えることを特徴とする請求項に記載の積層型バッテリーパック。
【請求項4】
前記積層方向に隣接する前記突出部が互いに接続されていることを特徴とする請求項に記載の積層型バッテリーパック。
【請求項5】
前記突出部は、前記積層方向から見て前記樹脂ホルダーと重なる主領域と同一平面を構成する第1の部分と、前記第1の部分に接続され、前記積層方向に延在する第2の部分と、前記第2の部分及び前記積層方向に隣接する別の前記突出部の前記第1の部分に接続された第3の部分とを含み、
前記第1及び第3の部分は、前記第2の部分から見て前記樹脂ホルダーから離れる方向に突出することによって放熱フィンを構成することを特徴とする請求項に記載の積層型バッテリーパック。
【請求項6】
前記樹脂ホルダーは、前記平型セルを前記積層方向と直交する方向から覆う側板部を有し、
前記側板部には段差が設けられており、前記段差に前記金属プレートが位置決めされていることを特徴とする請求項に記載の積層型バッテリーパック。
【請求項7】
積層された前記複数の単位セルが載置されるブラケットをさらに備え、
前記ブラケットは、筐体の支持面と前記複数の単位セルの間に位置する底板部と、前記底板部に接続され、前記積層方向に延在する壁面部を含み、
前記壁面部には、前記平型セルの端子電極と対向する部分に開口部が設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の積層型バッテリーパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層型バッテリーパックに関し、特に、複数の平型セルが積層されてなる積層型バッテリーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の平型セルが積層されてなる積層型バッテリーパックとしては、特許文献1~4に開示された積層型バッテリーパックが知られている。例えば、特許文献1及び2には、金属プレートを介して平型セルを積層した構造を有する積層型バッテリーパックが記載されている。しかしながら、単に金属プレートを介して平型セルを積層すると、仮にある平型セルが異常発熱した場合、金属プレートを介して隣接する平型セルが加熱されてしまうため、隣接する平型セルも異常発熱し、次々と異常発熱が伝播するおそれがあった。
【0003】
これに対し、特許文献3に記載された積層型バッテリーパックは、隣接する平型セル間に断熱シートを有するスペーサを配置し、これにより異常発熱の伝播を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-301877号公報
【文献】特表2012-511802号公報
【文献】特開2010-218716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に用いられているスペーサは、断熱シートを2枚の金属板によって挟み込んだ構造を有しており、構造が複雑であるという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、簡単な構成によって異常発熱の伝播を防止することが可能な積層型バッテリーパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による積層型バッテリーパックは、複数の単位セルが積層されてなる積層型バッテリーパックであって、複数の単位セルのそれぞれは、樹脂ホルダーと、樹脂ホルダーに収容された平型セルと、平型セルを覆う金属プレートとを含み、これにより平型セルが樹脂ホルダーと金属プレートによって積層方向に挟まれた構造を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、積層方向に隣接する平型セル間に樹脂ホルダーと金属プレートが介在することから、樹脂ホルダーによる断熱効果と、金属プレートによる熱容量の増大効果、放熱効果、防火効果などを得ることができる。また、複数の単位セルを筐体の支持面に対して垂直な方向に積層すれば、筐体の支持面に対して水平な方向に平型セルを配列する場合のように、個々の平型セルを安定的に支持するための複雑な支持機構が不要であり、簡単な構成によって個々の平型セルを安定的に支持することが可能となる。
【0009】
複数の単位セルのそれぞれは、樹脂ホルダーと平型セルの間に設けられ、樹脂ホルダーよりも熱伝導率が低く、且つ、樹脂ホルダーよりも可撓性の高いシート部材をさらに含んでいても構わない。これによれば、断熱効果がより高められるとともに、筐体の支持面に対して垂直な方向に単位セルを積層した場合、樹脂ホルダー内における平型セルの位置ずれやガタつきなどを抑えることが可能となる。
【0010】
金属プレートは、積層方向から見て樹脂ホルダーと重ならない突出部を有していても構わない。これによれば、平型セルの熱を突出部から外部に効率よく放熱することが可能となる。この場合、積層方向に隣接する突出部を繋ぐ熱伝導部材を備えていても構わないし、積層方向に隣接する突出部が互いに接続されていても構わない。これらによれば、熱容量が大幅に増大することから、ある平型セルが異常発熱した場合であっても、複数の突出部を介して効率よく放熱される。また、後者の場合、突出部は、積層方向から見て樹脂ホルダーと重なる主領域と同一平面を構成する第1の部分と、第1の部分に接続され、積層方向に延在する第2の部分と、第2の部分及び積層方向に隣接する別の突出部の第1の部分に接続された第3の部分とを含み、第1及び第3の部分は、第2の部分から見て樹脂ホルダーから離れる方向に突出することによって放熱フィンを構成しても構わない。これによれば、より高い放熱効果を得ることが可能となる。さらに、樹脂ホルダーは、平型セルを積層方向と直交する方向から覆う側板部を有し、側板部には段差が設けられており、段差に金属プレートが位置決めされていても構わない。これによれば、平型セルと金属プレートの接触面積が増大することから、金属プレートによる熱容量の増大効果、放熱効果、防火効果などを高めることができる。
【0011】
本発明による積層型バッテリーパックは、積層された複数の単位セルが載置されるブラケットをさらに備え、ブラケットは、筐体の支持面と複数の単位セルの間に位置する底板部と、底板部に接続され、積層方向に延在する壁面部を含み、壁面部には、平型セルの端子電極と対向する部分に開口部が設けられていても構わない。これによれば、壁面部に回路基板を取り付けることができるとともに、仮にある平型セルが異常発熱し、端子電極の近傍から高温のガスが吹き出した場合であっても、高温のガスが壁面部に遮られることなく、開口部を介して外部に放出される。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明による積層型バッテリーパックは、簡単な構成によって異常発熱の伝播を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態による積層型バッテリーパック1の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、積層型バッテリーパック1からトップ筐体3を削除した状態を示す略断面図である。
図3図3は、ブラケット20にセル積層体100を搭載した状態を示す略断面図である。
図4図4は、ブラケット20の構造を示す略断面図である。
図5図5は、単位セルの構造を説明するための略分解斜視図である。
図6図6は、ブラケット20に単位セル101~107を積層した状態を示す略断面図である。
図7図7は、セル積層体100の模式的なyz断面図である。
図8図8は、変形例によるセル積層体100Aの模式的なyz断面図である。
図9図9は、変形例によるセル積層体100Aの主要部を拡大して示すyz断面図である。
図10図10は、第1の変形例による金属プレート140Aの形状を説明するための略斜視図である。
図11図11は、熱伝導部材160を追加した例による積層型バッテリーパックを示す略斜視図である。
図12図12は、第2の変形例による金属プレート140Bの形状を説明するための略斜視図である。
図13図13は、金属プレート140Bを用いたセル積層体100Bの模式的なyz断面図である。
図14図14は、第3の変形例による金属プレート140Cの形状を説明するための略断面図である。
図15図15は、第4の変形例による金属プレート140Dの形状を説明するための略断面図である。
図16図16は、第5の変形例による金属プレート140Eの形状を説明するための略断面図である。
図17図17は、金属プレート140Eを用いたセル積層体100Eの模式的なyz断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による積層型バッテリーパック1の外観を示す略斜視図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態による積層型バッテリーパック1は、ベース筐体2とトップ筐体3をネジ4によって固定した箱形の外観を有している。トップ筐体3に設けられた開口部には一対の端子電極E1,E2が設けられ、ベース筐体2に設けられた開口部にはコネクタPが設けられている。端子電極E1,E2は、積層型バッテリーパック1を充放電するための一対の端子である。また、コネクタPは、積層型バッテリーパック1に対するデータの入出力を行うための端子である。ベース筐体2及びトップ筐体3の材料については特に限定されず、金属材料を用いても構わないし、樹脂材料を用いても構わない。ベース筐体2及びトップ筐体3の材料として金属材料を用いれば、高い信頼性と放熱特性を得ることができる。一方、ベース筐体2及びトップ筐体3の材料として樹脂材料を用いれば、軽量化を図ることができる。ベース筐体2には、電源を使用する機器(搬送車など)に本実施形態による積層型バッテリーパック1を固定するための固定部材5が設けられている。
【0017】
図2は、本実施形態による積層型バッテリーパック1からトップ筐体3を削除した状態を示す略断面図である。
【0018】
図2に示すように、筐体の内部にはセル積層体100が収容されている。ベース筐体2は、xy平面を構成する底板部2Aと、yz平面を構成する側板部2Bと、xz平面を構成する側板部2Cを有しており、セル積層体100は、筐体の支持面を構成する底板部2A上に固定されている。ベース筐体2は、底板部2Aから連続する折り曲げ部2D,2Eと、側板部2Bから連続する折り曲げ部2Fと、側板部2Cから連続する折り曲げ部2Gをさらに備えており、これら折り曲げ部2D~2Gには、ネジ4を螺着するためのネジ穴4aが設けられている。
【0019】
セル積層体100は、ブラケット20に搭載されており、図3に示すように7つの単位セル101~107がz方向に積層された構造を有している。最上層に位置する単位セル107は、カバー150で覆われている。図4に示すように、ブラケット20は、xy平面を構成する底板部21とyz平面を構成する壁面部22からなる部材であり、底板部21にセル積層体100が搭載される。ブラケット20とセル積層体100の固定は、底板部21に設けられたネジ穴21aを用いてネジ止めすることにより行う。また、ブラケット20とベース筐体2の固定は、底板部21に設けられた位置決め穴21bに、ベース筐体2に固定された図示しない固定ピンを挿入することにより行う。ブラケット20の材料については特に限定されないが、金属材料を用いることが好ましい。
【0020】
ブラケット20の壁面部22には、開口部20aが設けられている。ブラケット20にセル積層体100が搭載されると、セル積層体100に設けられた端子電極131,132が開口部20aから露出する。これにより、セル積層体100の一部が異常発熱し、端子電極131,132の近傍から高温のガスが吹き出した場合であっても、高温のガスが壁面部22に遮られることなく、開口部20aを介して外部に放出される。壁面部22には、図2に示す回路基板11が固定される。回路基板11には、セル積層体100と端子電極E1,E2を接続する回路が形成されている。壁面部22と回路基板11の固定は、壁面部22に設けられたネジ穴22aを用いてネジ止めすることにより行う。
【0021】
また、ベース筐体2の側板部2Cには、別の回路基板12が固定されている。回路基板12には、セル積層体100を制御する回路や、セル積層体100の動作状況をモニタする回路などが形成されており、これらの回路はコネクタPを介して外部の機器に接続される。
【0022】
図5は、単位セルの構造を説明するための略分解斜視図である。
【0023】
図5に示すように、単位セルは、樹脂ホルダー110と、樹脂ホルダー110内に敷設されたシート部材120と、シート部材120と接するよう樹脂ホルダー110内に収容された平型セル130と、平型セル130を覆う金属プレート140とを備えている。
【0024】
樹脂ホルダー110は、xy平面を構成する底板部111と、xz平面を構成する側板部112,113と、yz平面を構成する側板部114,115を有する収容体である。側板部113のz方向における高さは、金属プレート140と干渉しないよう、部分的に低くなっている。側板部112,113には、ネジ穴110aを有する突起が設けられており、ネジ穴110aに図示しないネジを螺着することによって複数の単位セル101~107がz方向に連結されるとともに、ブラケット20の底板部21に固定される。また、側板部114には、平型セル130の端子電極131,132を導出するための切り欠き110bと、端子電極131,132を案内するガイド部110cが設けられている。さらに、側板部112,113には、y方向及びz方向に突出した位置決め部116,117が設けられており、側板部115には、x方向及びz方向に突出した位置決め部116,117が設けられている。これにより、単位セル101~107をz方向に積層すると、下方に位置する単位セルの位置決め部116と上方に位置する単位セルの位置決め部117が嵌合し、xy方向における位置決めがされる。これにより、ネジ穴110aにネジを螺着することによって単位セル101~107を連結する前に、単位セル101~107を仮固定することができる。
【0025】
シート部材120は緩衝材であり、樹脂ホルダー110よりも熱伝導率が低く、且つ、樹脂ホルダー110よりも可撓性の高い材料によって構成される。本発明においてシート部材120を用いることは必須でないが、樹脂ホルダー110の底板部111と平型セル130の間にこのような特性を有するシート部材120を介在させることにより、樹脂ホルダー110内における平型セル130の位置ずれやガタつきなどを抑えることが可能となる。つまり、本実施形態による積層型バッテリーパック1は、平型セル130が筐体の支持面に対して垂直な方向(z方向)に積層される構成を有していることから、樹脂ホルダー110と平型セル130の間に可撓性の高いシート部材120を介在させることにより、重力によってシート部材120と樹脂ホルダー110及び平型セル130が密着する。しかも、シート部材120の熱伝導率が樹脂ホルダー110よりも低いことから、z方向に隣接する平型セル130間の断熱特性も高められる
【0026】
平型セル130は、例えばリチウムイオン電池であり、最も面積が大きいxy平面が略矩形状を有している。そして、xy平面(底面)がシート部材120を介して樹脂ホルダー110の底板部111と向かい合い、xz平面(長手方向における側面)が樹脂ホルダー110の側板部112,113と向かい合い、yz平面(単手方向における側面)が樹脂ホルダー110の側板部114,115と向かい合うよう、樹脂ホルダー110に収容される。平型セル130の端子電極131,132は、yz平面(単手方向における側面)から導出されており、切り欠き110bを介して樹脂ホルダー110の側板部114から突出するとともに、ガイド部110cによって支持される。平型セル130の構造については特に限定されないが、複数の正極と複数の負極がセパレータを介して積層された構造を有する積層体が電解液とともに袋状のラミネートフィルム内に封入された構造を有するパウチセルを用いることができる。
【0027】
金属プレート140は、アルミニウムなどの金属からなる板状部材であり、平型セル130のxy平面(上面)を覆う主領域141と、主領域141からy方向に突出した2つの突出部142を有している。これにより、平型セル130は、樹脂ホルダー110の底板部111と、金属プレート140の主領域141によって積層方向に挟まれることになる。金属プレート140の主領域141は、平型セル130のxy平面(上面)と接していることが好ましいが、両者間に僅かな隙間があっても構わない。この場合であっても、平型セル130が発熱した際には、平型セル130の膨張により両者は接触する。金属プレート140は、単位セルの熱容量を増大させるとともに、主領域141によってxy面内における平型セル130の温度分布を均一化させ、突出部142によって平型セル130の熱を外部に放熱する役割を果たす。さらに、平型セル130が異常発熱し発火が生じた場合には、z方向に隣接する平型セル130に高温のガスが吹き付けられるのを防ぐ防火壁としても機能する。本発明において金属プレート140に突出部142を設けることは必須でないが、これを設けることによって放熱特性が大幅に向上する。
【0028】
このような構造を有する単位セル101~107は、図6に示すようにブラケット20上に積層されてセル積層体100を構成する。そして、セル積層体100の最上層に位置する単位セル107は、図3に示すように樹脂からなるカバー150で覆われる。単位セル101~107は、端子電極E1,E2間に直列に接続されても構わないし、並列に接続されても構わない。
【0029】
図7は、セル積層体100の模式的なyz断面図である。
【0030】
図7に示すように、z方向に隣接する平型セル130間には、金属プレート140、樹脂ホルダー110及びシート部材120が介在する。樹脂ホルダー110とシート部材120は、z方向に隣接する平型セル130間の断熱部材として機能し、ある平型セル130が異常発熱した場合であっても、その熱が他の平型セル130に伝達するのを防止する役割を果たす。一方、金属プレート140は、上述の通り、単位セルの熱容量を増大させる役割、平型セル130の温度分布を均一化させる役割、平型セル130の熱を外部に放熱する役割、並びに、防火壁としての役割を果たす。
【0031】
図8は、変形例によるセル積層体100Aの模式的なyz断面図である。また、図9は、変形例によるセル積層体100Aの主要部を拡大して示すyz断面図である。
【0032】
図8及び図9に示すように、変形例によるセル積層体100Aでは、樹脂ホルダー110の側板部112に段差が設けられており、この段差に金属プレート140が位置決めされている。つまり、樹脂ホルダー110の側板部112は、xy平面を構成する上段面112a及び下段面112bと、xz平面を構成する内側面112cを有しており、下段面112bのz方向における高さが上段面112aよりも低くなっている。そして、下段面112a及び内側面112cによって定義される切り欠き部分に金属プレート140のy方向における端部が位置決め配置される。上段面112aは、上層の単位セルに含まれる樹脂ホルダー110の裏面118と接する。これにより、平型セル130の上面の全面が金属プレート140と接触することから、金属プレート140の上述した役割をより効果的に果たすことが可能となる。
【0033】
このように、本実施形態による積層型バッテリーパック1は、金属プレート140を含む単位セル101~107が筐体の支持面に対して垂直な方向に積層された構造を有していることから、樹脂ホルダー110及びシート部材120による断熱効果と、金属プレート140による熱容量の増大効果、放熱効果、防火効果などを得ることができる。しかも、平型セル130を収容した樹脂ホルダー110を、金属プレート140を介して積層し、ネジ止めするだけの簡単な構成によって、個々の平型セル130を安定的に支持することが可能となる。
【0034】
金属プレートの形状については特に限定されず、図10に示す第1の変形例による金属プレート140Aのように、突出部142がy方向における両側から突出する形状であっても構わない。また、図示しないが、突出部142をx方向に突出させても構わない。さらに、トップ筐体3が金属材料からなる場合には、金属プレート140Aの突出部142とトップ筐体3を熱的に接続すれば、筐体全体がヒートシンクとして機能することから、非常に大きな熱容量を得ることが可能となる。
【0035】
また、図11に示すように、z方向に隣接する金属プレート140の突出部142を熱伝導部材160で繋いでも構わない。熱伝導部材160の材料としては、アルミニウムなどの金属を用いることが好ましく、ネジ止めによって突出部142に固定することができる。これによれば、各金属プレート140が熱的に結合することから、ある平型セル130が異常発熱した場合であっても、複数の金属プレート140を介して放熱することができる。この場合、異常発熱していない他の平型セル130にも金属プレート140を介して熱が加わるが、突出部142はz方向から見て樹脂ホルダー110及び平型セル130と重ならない外部領域に位置するため、突出部142における放熱効果によって温度が低下することから、他の平型セル130に加わる熱はそれほど高くならない。
【0036】
また、図12に示す第2の変形例のように、突出部142がz方向に折れ曲がった形状を有する金属プレート140Bを用いても構わない。これによれば、金属プレート140Bを用いたセル積層体100Bのyz断面図である図13に示すように、z方向に隣接する突出部142が互いに接触するため、各金属プレート140を熱的に結合させることができる。z方向に隣接する突出部142同士は、直接接触していても構わないし、熱伝導性の高い部材を介して熱的に接続されていても構わない。
【0037】
図12及び図13に示す例では、1枚の金属プレート140を端部において3回折り曲げ(内側に180°折り曲げ、外側に2回90°折り曲げ)ることによって突出部142を形成しているが、図14に示す第3の変形例による金属プレート140Cのように、押し出し成形法などを用いることによって、折り曲げ加工することなく突出部142を形成しても構わないし、図15に示す第4の変形例による金属プレート140Dのように、1枚の金属プレート140を端部において2回折り曲げ(内側に2回90°折り曲げ)ることによって突出部142を形成しても構わない。但し、突出部142のうち、主領域141と同一平面を構成する部分を第1の部分142aと定義し、第1の部分142aに接続され、z方向に延在する部分を第2の部分142bと定義し、第2の部分142b及びz方向に隣接する別の突出部142の第1の部分142aに接続される部分を第3の部分142cと定義した場合、図12図14に示す金属プレート140B,140Cのように、第1及び第3の部分142a,142cは、第2の部分142bから見て樹脂ホルダー110及び平型セル130から離れる方向(x方向又はy方向)に突出することによって、放熱フィンを構成することが好ましい。これによれば、より高い放熱効果を得ることが可能となる。
【0038】
さらに、図16に示す第5の変形例による金属プレート140Eのように、1枚の金属プレート140を端部において4回折り曲げ(内側に90°折り曲げ、外側に90°折り曲げ、内側に90°折り曲げ、外側に90°折り曲げ)ることによって突出部142を形成しても構わない。ここで、突出部142のうち、主領域141と同一平面を構成する部分を第1の部分142aと定義し、第1の部分142aに接続され、z方向に延在する部分を第2の部分142bと定義し、第2の部分142bに接続され、y方向に延在する部分を第3の部分142cと定義し、第3の部分142cに接続され、z方向に延在する部分を第4の部分142dと定義し、第4の部分142dに接続され、y方向に延在する部分を第5の部分142eと定義した場合、金属プレート140Eを用いたセル積層体100Eのyz断面図である図17に示すように、第1の部分142aは上層の金属プレート140Eの第3の部分142cと接し、第2の部分142bは上層の金属プレート140Eの第4の部分142dと接し、第3の部分142cは下層の金属プレート140Eの第1の部分142aと接し、第4の部分142dは下層の金属プレート140Eの第2の部分142bと接し、第5の部分142eはy方向に突出する。
【0039】
これを実現するためには、y方向の両端に位置する一対の第2の部分142bの外寸とy方向の両端に位置する一対の第4の部分142dの内寸がほぼ一致し、且つ、第2の部分142bのz方向における高さと第4の部分142dのz方向における高さがほぼ一致するよう、金属プレート140Eを設計すれば良い。これにより、上下に位置する金属プレート140E同士の接触面積が大幅に増大することから、より高い放熱性を得ることが可能となる。第5の変形例による金属プレート140Eを用いた場合、異常発熱していない他の平型セル130に熱が加わりやすくなるものの、突出部142における放熱効果により、他の平型セル130に加わる熱はそれほど高くならない。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 積層型バッテリーパック
2 ベース筐体
2A 底板部
2B,2C 側板部
2D~2G 折り曲げ部
3 トップ筐体
4 ネジ
4a ネジ穴
5 固定部材
11,12 回路基板
20 ブラケット
20a 開口部
21 底板部
21a ネジ穴
21b 位置決め穴
22 壁面部
22a ネジ穴
100,100A,100B,100E セル積層体
101~107 単位セル
110 樹脂ホルダー
110a ネジ穴
110b 切り欠き
110c ガイド部
111 底板部
112~115 側板部
112a 上段面
112b 下段面
112c 内側面
116,117 位置決め部
118 裏面
120 シート部材
130 平型セル
131,132 端子電極
140,140A~140E 金属プレート
141 主領域
142 突出部
142a 第1の部分
142b 第2の部分
142c 第3の部分
142d 第4の部分
142e 第5の部分
150 カバー
160 熱伝導部材
E1,E2 端子電極
P コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17