(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ハーネス保護体
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20230711BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230711BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H02G3/04 062
B60R16/02 623U
F16L57/00 A
(21)【出願番号】P 2019226070
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 武志
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-229779(JP,A)
【文献】特開2004-229351(JP,A)
【文献】特開2012-210043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線によって構成されたワイヤハーネスと、
凸部と凹部とが外周に蛇腹状に形成され、前記ワイヤハーネスを覆うコルゲートチューブと、
前記コルゲートチューブの端部における周方向の半周分以上の範囲を覆う状態で形成されるとともに、前記凹部に嵌合される第1嵌合突起が内周に形成された第1プロテクタ部、及び前記コルゲートチューブの端部における周方向の残りの範囲を覆う状態で形成されるとともに、前記凹部に嵌合される第2嵌合突起が内周に形成され、かつ前記第1プロテクタ部に係合される第2プロテクタ部を有するプロテクタと、を備え、
前記コルゲートチューブは、前記コルゲートチューブの形成方向に沿って形成されたスリットによって分断されており、
前記コルゲートチューブの外周には、前記形成方向及び周方向に位置ずれしながら粘着テープが巻かれており、
前記第1プロテクタ部の前記第1嵌合突起の、前記第2プロテクタ部に対向する側の端部には、前記第2プロテクタ部に向けて延出されて、前記粘着テープにおける、前記コルゲートチューブの前記凹部の外周側に位置する部分を
前記粘着テープが巻かれた前記コルゲートチューブの外周に前記第1プロテクタ部が装着されるときに破るための鋭角状の切刃部が形成されて
おり、
前記第1嵌合突起の、前記第2プロテクタ部に対向する先端側の端部には、前記第1プロテクタ部と前記第2プロテクタ部との対向方向に平行に形成された内側面が形成され、前記内側面は、前記第2プロテクタ部に対向する先端側の両端部において前記対向方向に沿って互いに平行に形成されるとともに、前記内側面同士の間隔が前記コルゲートチューブの外周に形成されている前記凸部の直径よりも小さく形成されている、ハーネス保護体。
【請求項2】
前記切刃部は、前記第1嵌合突起の、前記第2プロテクタ部に対向する先端側に向かうほど、前記内側面に対する傾斜角度が小さくなる鋭角形状に形成されている、請求項1に記載のハーネス保護体。
【請求項3】
前記粘着テープは、前記コルゲートチューブの外周において、前記第1嵌合突起と対向する位置よりも、前記形成方向の先端側にまで巻かれている、請求項1又は2に記載のハーネス保護体。
【請求項4】
前記プロテクタは、前記ワイヤハーネスにおける複数の前記電線が束ねられた元側電線束が、複数の前記電線が束ねられた複数の分岐側電線束に分岐する分岐部位に配置されており、
前記コルゲートチューブには、前記元側電線束を覆う元側コルゲートチューブと、複数の前記分岐側電線束のそれぞれを覆う分岐側コルゲートチューブとがあり、
前記第1プロテクタ部及び前記第2プロテクタ部には、前記元側コルゲートチューブの端部の外周を覆う元側開口端部と、複数の前記分岐側コルゲートチューブの端部の外周をそれぞれ覆う複数の分岐側開口端部とが形成されており、
前記切刃部は、前記第1プロテクタ部の前記元側開口端部の内周における前記第1嵌合突起と、前記第1プロテクタ部の複数の前記分岐側開口端部の少なくとも1つの内周における前記第1嵌合突起とに形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のハーネス保護体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネス保護体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いられるワイヤハーネスは、蛇腹状に形成されたコルゲートチューブによって保護されている。また、ワイヤハーネスにおける電線が複数に分岐する部分等においては、コルゲートチューブの端部から外部に配置されるワイヤハーネスの部分がプロテクタによって保護されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたプロテクタは、ワイヤハーネスを構成する電線束を保護する蛇腹状のコルゲートチューブが装着されるプロテクタ本体と、プロテクタ本体の上方開口を覆う蓋体とから構成されている。また、特許文献1においては、ワイヤハーネスの配索作業性を向上させるために、プロテクタ本体のハーネス引出し端部には、コルゲートチューブの凹部を係止してコルゲートチューブの長手方向の移動を規制する突条部と、コルゲートチューブの上方開口側への移動を規制する抜け止め用突起とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両等に用いられるコルゲートチューブにおいては、コルゲートチューブの内部にワイヤハーネスを配置しやすくするために、コルゲートチューブの形成方向(長尺方向)に沿って設けられたスリットによって、コルゲートチューブが周方向に分断されている。そして、コルゲートチューブの内部にワイヤハーネスが配置された後に、コルゲートチューブの外周に粘着テープを巻いて、コルゲートチューブがスリットの部分において開かないようにしている。
【0006】
しかし、特許文献1の場合を含め、コルゲートチューブの端部の外周にプロテクタを装着する構造においては、粘着テープの存在が考慮されていない。そのため、コルゲートチューブの端部の外周にプロテクタを装着するときには、コルゲートチューブの外周に巻かれた粘着テープが、プロテクタの装着を妨げることになる。この場合には、コルゲートチューブの外周にプロテクタを適切に装着できないおそれがある。
【0007】
一方、コルゲートチューブの端部の外周には粘着テープを巻かないことによって、コルゲートチューブの端部の外周へプロテクタを適切に装着することも考えられる。しかし、この場合には、コルゲートチューブの端部に配置されたワイヤハーネスの部分が、コルゲートチューブの端部のスリットから外部にはみ出すおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、プロテクタの装着性を良好に維持して、コルゲートチューブの端部からのワイヤハーネスのはみ出しを防止できるハーネス保護体を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
複数の電線によって構成されたワイヤハーネスと、
凸部と凹部とが外周に蛇腹状に形成され、前記ワイヤハーネスを覆うコルゲートチューブと、
前記コルゲートチューブの端部における周方向の半周分以上の範囲を覆う状態で形成されるとともに、前記凹部に嵌合される第1嵌合突起が内周に形成された第1プロテクタ部、及び前記コルゲートチューブの端部における周方向の残りの範囲を覆う状態で形成されるとともに、前記凹部に嵌合される第2嵌合突起が内周に形成され、かつ前記第1プロテクタ部に係合される第2プロテクタ部を有するプロテクタと、を備え、
前記コルゲートチューブは、前記コルゲートチューブの形成方向に沿って形成されたスリットによって分断されており、
前記コルゲートチューブの外周には、前記形成方向及び周方向に位置ずれしながら粘着テープが巻かれており、
前記第1プロテクタ部の前記第1嵌合突起の、前記第2プロテクタ部に対向する側の端部には、前記第2プロテクタ部に向けて延出されて、前記粘着テープにおける、前記コルゲートチューブの前記凹部の外周側に位置する部分を前記粘着テープが巻かれた前記コルゲートチューブの外周に前記第1プロテクタ部が装着されるときに破るための鋭角状の切刃部が形成されており、
前記第1嵌合突起の、前記第2プロテクタ部に対向する先端側の端部には、前記第1プロテクタ部と前記第2プロテクタ部との対向方向に平行に形成された内側面が形成され、前記内側面は、前記第2プロテクタ部に対向する先端側の両端部において前記対向方向に沿って互いに平行に形成されるとともに、前記内側面同士の間隔が前記コルゲートチューブの外周に形成されている前記凸部の直径よりも小さく形成されている、ハーネス保護体にある。
【発明の効果】
【0010】
前記ハーネス保護体においては、第1プロテクタ部の第1嵌合突起の、第2プロテクタ部に対向する側の端部に、第2プロテクタ部に向けて延出された鋭角状の切刃部が形成されている。切刃部は、粘着テープが巻かれたコルゲートチューブの端部の外周に第1プロテクタ部が装着されるときに、粘着テープにおける、コルゲートチューブの外周の凹部の外周側に位置する部分を破るために使用される。
【0011】
粘着テープが巻かれたコルゲートチューブの端部の外周に第1プロテクタ部が装着されるときには、第1プロテクタ部の第1嵌合突起がコルゲートチューブの外周の凹部に嵌合される。このとき、第1嵌合突起の切刃部が粘着テープの一部を破って、コルゲートチューブの外周の凹部と粘着テープとの間に突き刺さる。そして、第1プロテクタ部に第2プロテクタ部が係合されるときには、第2プロテクタ部の第2嵌合突起が、コルゲートチューブの外周の凹部における、粘着テープが破られた部位に嵌合される。なお、粘着テープの一部は、粘着テープが巻かれたコルゲートチューブの端部を挟んで、第1プロテクタ部に第2プロテクタ部が係合されるときに、第1嵌合突起の切刃部によって破られてもよい。
【0012】
第1嵌合突起の切刃部によって粘着テープの一部が破られることにより、第1プロテクタ部への第2プロテクタ部の係合が容易になり、コルゲートチューブの端部の外周へプロテクタを容易かつ適切に装着することができる。また、第1嵌合突起及び第2嵌合突起が嵌合される、コルゲートチューブの外周の凹部に粘着テープが残っていることにより、プロテクタ内において、コルゲートチューブがスリットの部分において開かないようにすることができる。
【0013】
それ故、前記ハーネス保護体によれば、プロテクタの装着性を良好に維持して、コルゲートチューブの端部からのワイヤハーネスのはみ出しを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態にかかる、ハーネス保護体を示す斜視図。
【
図2】実施形態にかかる、ハーネス保護体の開口端部を、コルゲートチューブの形成方向に平行な断面によって示す説明図。
【
図3】実施形態にかかる、ハーネス保護体の開口端部における各嵌合突起の形成部位を、コルゲートチューブの周方向に平行な断面によって示す説明図。
【
図4】実施形態にかかる、ハーネス保護体の開口端部における各嵌合突起の形成部位を、コルゲートチューブの周方向に平行な断面によって示す説明図。
【
図5】実施形態にかかる、第1プロテクタ部の開口端部を示す斜視図。
【
図6】実施形態にかかる、粘着テープが巻かれたコルゲートチューブを、コルゲートチューブの形成方向に平行な断面によって示す説明図。
【
図7】実施形態にかかる、第1プロテクタ部を、コルゲートチューブの形成方向に平行な断面によって示す説明図。
【
図8】実施形態にかかる、第2プロテクタ部を、コルゲートチューブの形成方向に平行な断面によって示す説明図。
【
図9】実施形態にかかる、コルゲートチューブ、第1プロテクタ部及び第2プロテクタ部を、コルゲートチューブの周方向に平行な断面によって示す説明図。
【
図10】実施形態にかかる、コルゲートチューブが第1プロテクタ部に対向して配置された状態を、コルゲートチューブの周方向に平行な断面によって示す説明図。
【
図11】実施形態にかかる、コルゲートチューブが第1プロテクタ部の挿入穴に押し込まれた状態を、コルゲートチューブの周方向に平行な断面によって示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前述したハーネス保護体にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態>
本形態のハーネス保護体1は、
図1~
図3に示すように、ワイヤハーネス2、コルゲートチューブ3及びプロテクタ4を備える。ワイヤハーネス2は、複数の電線21によって構成されている。コルゲートチューブ3は、ワイヤハーネス2を覆って保護するものであり、コルゲートチューブ3の外周302には、凸部31と凹部32とが蛇腹状に形成されている。プロテクタ4は、第1プロテクタ部4Aと、第1プロテクタ部4Aに係合される第2プロテクタ部4Bとを有する。
【0016】
第1プロテクタ部4Aは、コルゲートチューブ3の端部33における周方向Cの半周分以上の範囲を覆う状態で形成されている。第1プロテクタ部4Aの内面401には、コルゲートチューブ3の外周302の凹部32に嵌合される第1嵌合突起41Aが形成されている。第2プロテクタ部4Bは、コルゲートチューブ3の端部33における、第1プロテクタ部4Aによって覆われていない周方向Cの残りの範囲を覆う状態で形成されている。第2プロテクタ部4Bの内面401には、コルゲートチューブ3の外周302の凹部32に嵌合される第2嵌合突起41Bが形成されている。
【0017】
図1及び
図6に示すように、コルゲートチューブ3は、コルゲートチューブ3の形成方向Lに沿って形成されたスリット303によって分断されている。コルゲートチューブ3の外周302には、形成方向L及び周方向Cに位置ずれしながら粘着テープ35が巻き付けられている。
【0018】
図3、
図5及び
図9に示すように、第1プロテクタ部4Aの第1嵌合突起41Aの、第2プロテクタ部4Bに対向する側の端部には、第2プロテクタ部4Bに向けて延出されて、粘着テープ35における、コルゲートチューブ3の外周302の凹部32の外周側に位置する部分を破るための鋭角状の切刃部411が形成されている。
【0019】
以下に、本形態のハーネス保護体1について詳説する。
(ハーネス保護体1)
ハーネス保護体1は、車両における、モータ、センサ、表示器、オーディオ、ナビゲーション等の種々の電子機器に使用されるワイヤハーネス2を、コルゲートチューブ3及びプロテクタ4によって保護するものである。ハーネス保護体1は、車両における、ワイヤハーネス2が用いられる種々の部位に配置される。
【0020】
ハーネス保護体1は、ワイヤハーネス2の配線が分岐される分岐部位11における、コルゲートチューブ3及びプロテクタ4の配置構造を示す。プロテクタ4は、コルゲートチューブ3の端部33が配置される複数の開口端部52,53を有し、複数の開口端部52,53のそれぞれにおいて、第1プロテクタ部4Aの第1嵌合突起41A及び第2プロテクタ部4Bの第2嵌合突起41Bを有する。
【0021】
プロテクタ4の内面401には、コルゲートチューブ3が挿入される挿入穴51が形成されている。挿入穴51は、分岐部位11の分岐形状に沿った分岐穴形状に形成されている。開口端部52,53は、プロテクタ4における、挿入穴51が開口する端部として形成されている。
【0022】
(方向L,C,T)
本形態のハーネス保護体1においては、コルゲートチューブ3が延びる方向のことを形成方向(長尺方向)Lという。また、コルゲートチューブ3が挿入される、プロテクタ4の挿入穴51が延びる方向のことも形成方向Lという。また、コルゲートチューブ3の中心軸線の周りの方向、及びプロテクタ4の挿入穴51の中心軸線の周りの方向のことを周方向Cという。また、第1プロテクタ部4Aと第2プロテクタ部4Bとが対向する方向を対向方向Tという。
【0023】
コルゲートチューブ3の形成方向Lにおける、プロテクタ4の内部に挿入される側のことを、コルゲートチューブ3の形成方向Lの先端側L1という。また、形成方向Lにおける、先端側L1とは反対側を基端側L2という。
【0024】
(ワイヤハーネス2)
図1及び
図3に示すように、ワイヤハーネス2は、複数の電線21が束ねられた電線束22A,22Bとして形成されている。電線束22A,22Bとは、複数の電線21のまとまりのことをいう。電線束22A,22Bは、必ずしも粘着テープ等によって束ねられている必要はない。
【0025】
ワイヤハーネス2の電線束22Aとしての元側電線束22Aは、車両における、電線21が配線される位置に応じて、複数の電線束22Bとしての分岐側電線束22Bに分岐されて配線される。分岐側電線束22Bは、元側電線束22Aの複数の電線21のうちの一部である複数の電線21の束として形成されている。分岐側電線束22Bは、元側電線束22Aから2つに分岐して形成される以外にも、元側電線束22Aから3つ以上に分岐して形成されていてもよい。
【0026】
(コルゲートチューブ3)
図2及び
図6に示すように、コルゲートチューブ3は、所定の厚みの樹脂が内周側及び外周側に蛇行するように屈曲して形成されたものである。コルゲートチューブ3の外周302の凹部32の内周側には、内周301の凸部が位置し、コルゲートチューブ3の外周302の凸部31の内周側には、内周301の凹部が位置する。
【0027】
コルゲートチューブ3は、凸部31及び凹部32による蛇腹形状を利用して、柔軟に屈曲可能な可撓性を有している。コルゲートチューブ3の周方向Cの1箇所には、ワイヤハーネス2の配置を容易にするために、形成方向(長尺方向)Lに沿ったスリット303が設けられている。スリット303は、コルゲートチューブ3を周方向Cの一部において分断するものである。コルゲートチューブ3は、スリット303を介して周方向Cに変形し、内周301が見えるように開けることが可能である。
【0028】
(粘着テープ35)
図6に示すように、粘着テープ35は、樹脂製のフィルムと、フィルムの裏側に設けられた粘着層とによって形成されている。粘着テープ35は、コルゲートチューブ3の外周302に、コルゲートチューブ3の外周302が露出しないように螺旋状に巻かれている。換言すれば、粘着テープ35は、先に巻かれた粘着テープ35の上に重なりながら、コルゲートチューブ3の周方向Cに螺旋状に巻かれている。
【0029】
本形態の粘着テープ35は、コルゲートチューブ3の外周302において、第1嵌合突起41Aと対向する位置よりも、コルゲートチューブ3の形成方向Lの先端側L1にまで巻かれている。本形態の第1嵌合突起41Aは、第1プロテクタ部4Aの形成方向Lに複数並んで設けられている。そして、粘着テープ35は、形成方向Lの最も先端側L1に位置する第1嵌合突起41Aと対向する位置よりも、形成方向Lの先端側L1にまで巻かれている。換言すれば、本形態の粘着テープ35は、コルゲートチューブ3の形成方向Lの先端位置の近傍まで巻かれている。なお、粘着テープ35は、形成方向Lの最も基端側L2に位置する第1嵌合突起41Aと対向する位置よりも、形成方向Lの先端側L1にまで巻かれている状態であってもよい。
【0030】
(プロテクタ4)
図1~
図3に示すように、プロテクタ4は、樹脂によって構成されており、コルゲートチューブ3の端部33から外部に配置されるワイヤハーネス2の部分を覆って保護するものである。プロテクタ4は、ワイヤハーネス2における複数の電線21が束ねられた元側電線束22Aが、複数の電線21が束ねられた複数の分岐側電線束22Bに分岐する分岐部位11に配置されている。コルゲートチューブ3には、元側電線束22Aを覆う元側コルゲートチューブ3Aと、複数の分岐側電線束22Bのそれぞれを覆う複数の分岐側コルゲートチューブ3Bとがある。
【0031】
プロテクタ4には、コルゲートチューブ3が挿入される挿入穴51が形成されている。プロテクタ4の、コルゲートチューブ3が挿入される挿入穴51の端部には、元側コルゲートチューブ3A及び分岐側コルゲートチューブ3Bの数に応じた開口端部52,53が形成されている。本形態のプロテクタ4を構成する第1プロテクタ部4A及び第2プロテクタ部4Bは、元側コルゲートチューブ3Aの端部33の外周302を覆う元側開口端部52と、複数の分岐側コルゲートチューブ3Bの端部33の外周302を覆う複数の分岐側開口端部53とを有する。複数の分岐側開口端部53は、1つの分岐側開口端部53と、互いに平行に並ぶ3つの分岐側開口端部53とに分かれている。3つの分岐側開口端部53は、1つの分岐側開口端部53よりも小さな大きさで形成されている。
【0032】
元側コルゲートチューブ3A内に挿通された、元側電線束22Aを構成するワイヤハーネス2は、1つの分岐側コルゲートチューブ3B内に挿通された、1つの分岐側電線束22Bを構成するワイヤハーネス2と、3つの分岐側コルゲートチューブ3B内に挿通された、3つの分岐側電線束22Bを構成するワイヤハーネス2とに分岐されている。
【0033】
図7及び
図8に示すように、元側開口端部52及び分岐側開口端部53のそれぞれは、第1プロテクタ部4Aと第2プロテクタ部4Bとに分かれて形成されている。換言すれば、第1プロテクタ部4A及び第2プロテクタ部4Bには、元側開口端部52の一部及び分岐側開口端部53の一部がそれぞれ形成されている。
【0034】
図3及び
図5に示すように、第1プロテクタ部4Aの第1嵌合突起41Aの、第2プロテクタ部4Bに対向する先端側の端部には、第1プロテクタ部4Aと第2プロテクタ部4Bとの対向方向Tに平行に形成された内側面412が形成されている。本形態の第1嵌合突起41Aは、プロテクタ4の挿入穴51の周方向Cに沿って連続して形成されている。そして、第1嵌合突起41Aの内側面412は、第2プロテクタ部4Bに対向する先端側の両端部において、対向方向Tに沿って互いに平行に形成されている。
【0035】
第1嵌合突起41Aは、挿入穴51の周方向Cに沿って連続して形成される以外にも、挿入穴51の周方向Cにおいて断続して形成されていてもよい。換言すれば、第1嵌合突起41Aは、コルゲートチューブ3の外周302の凹部32に嵌合される形状であれば、複数に分割して形成されていてもよい。
【0036】
切刃部411は、第1嵌合突起41Aの、第2プロテクタ部4Bに対向する対向方向Tの先端側に向かうほど、内側面412に対する傾斜角度が小さくなる鋭角形状に形成されている。切刃部411は、第1嵌合突起41Aの、第2プロテクタ部4Bの側の対向方向Tの先端部において、第1プロテクタ部4Aの内面401から離れて、対向方向Tに突出する形状に形成されている。
【0037】
切刃部411は、内側面412と、第1プロテクタ部4Aの内面401から離れたテーパ面413とによって鋭角形状に形成されている。切刃部411を構成する内側面412同士の間の間隔は、コルゲートチューブ3の外周302の凹部32の直径よりも大きく、かつコルゲートチューブ3の外周302の凸部31の直径よりも小さく形成されている。
【0038】
図2、
図4及び
図7に示すように、第1嵌合突起41Aにおける、挿入穴51の周方向Cに沿った円弧状部分は、コルゲートチューブ3の外周302の凹部32(換言すれば外周302の凸部31同士の間)に嵌合される。第1プロテクタ部4Aの内面401における、コルゲートチューブ3の外周302の凸部31に対向方向Tから対向する部位には、第1プロテクタ部4Aの挿入穴51から対向方向Tへコルゲートチューブ3が抜け出すことを防止する抜け防止突起42が形成されている。
【0039】
図2及び
図3に示すように、第2嵌合突起41Bは、第2プロテクタ部4Bにおける、第1プロテクタ部4Aの挿入穴51の形成方向Lにおける、第1嵌合突起41Aと対向方向Tに対向する位置に形成されている。第1嵌合突起41A及び第2嵌合突起41Bは、コルゲートチューブ3の外周302における同じ凹部32に嵌合される。
【0040】
第1嵌合突起41Aは、第1プロテクタ部4Aの各開口端部52,53の形成方向Lにおける複数箇所(本形態においては3箇所)に形成されている。第2嵌合突起41Bは、第2プロテクタ部4Bの各開口端部52,53の形成方向Lにおける複数箇所(本形態においては3箇所)に形成されている。
【0041】
切刃部411は、第1プロテクタ部4Aの内面401における、各開口端部52,53が形成された部位のすべての第1嵌合突起41Aに形成されている。切刃部411は、一部の第1嵌合突起41Aにのみ形成されていてもよい。
【0042】
切刃部411は、コルゲートチューブ3の外周302に巻かれた粘着テープ35を破ることができる種々の形状に形成してもよい。例えば、切刃部411は、プロテクタ4の挿入穴51の形成方向Lにおける幅が、第2プロテクタ部4Bに対向する先端側に向かうほど小さくなる形状に形成してもよい。また、切刃部411は、テーパ面413と、内側面412の先端部との両方が山状に傾斜する鋭角形状に形成されていてもよい。
【0043】
図1、
図3及び
図9に示すように、第1プロテクタ部4Aの外面402と第2プロテクタ部4Bの外面402とには、第1プロテクタ部4Aと第2プロテクタ部4Bとが係合された状態を保持するためのロック部54が形成されている。ロック部54は、第1プロテクタ部4Aの各開口端部52,53の外面402に形成された係止部54Aと、第2プロテクタ部4Bの各開口端部52,53の外面402に形成された、係止部54Aに係止される被係止部54Bとによって構成されている。
【0044】
(ハーネス保護体1の組み付け)
ハーネス保護体1が組み付けられる際には、
図6及び
図9に示すように、ワイヤハーネス2が元側コルゲートチューブ3A及び複数の分岐側コルゲートチューブ3Bの内周301に挿通される。このとき、ワイヤハーネス2は、各コルゲートチューブ3A,3Bのスリット303から、各コルゲートチューブ3A,3Bの内周301に配置することができる。次いで、各コルゲートチューブ3A,3Bの外周302に粘着テープ35が螺旋状に巻かれる。粘着テープ35は、粘着層によって、各コルゲートチューブ3A,3Bの外周302の凸部31に対して貼り付けられる。
【0045】
次いで、
図10に示すように、第1プロテクタ部4Aの元側開口端部52に、粘着テープ35が巻かれた元側コルゲートチューブ3Aの端部33の外周302が対向して配置される。また、第1プロテクタ部4Aの分岐側開口端部53に、粘着テープ35が巻かれた分岐側コルゲートチューブ3Bの端部33の外周302が対向して配置される。
【0046】
次いで、
図11に示すように、第1プロテクタ部4Aの元側開口端部52に、粘着テープ35が巻かれた元側コルゲートチューブ3Aの端部33の外周302が押し込まれる。また、第1プロテクタ部4Aの分岐側開口端部53に、粘着テープ35が巻かれた分岐側コルゲートチューブ3Bの端部33の外周302が押し込まれる。
【0047】
このとき、第1嵌合突起41Aの切刃部411が粘着テープ35の一部を破って、元側コルゲートチューブ3Aの外周302の凹部32と粘着テープ35との間に突き刺さるとともに、第1プロテクタ部4Aの第1嵌合突起41Aが元側コルゲートチューブ3Aの外周302の凹部32に嵌合される。また、第1嵌合突起41Aの切刃部411が粘着テープ35の一部を破って、分岐側コルゲートチューブ3Bの外周302の凹部32と粘着テープ35との間に突き刺さるとともに、第1プロテクタ部4Aの第1嵌合突起41Aが分岐側コルゲートチューブ3Bの外周302の凹部32に嵌合される。
【0048】
また、第1プロテクタ部4Aの第1嵌合突起41Aが各コルゲートチューブ3A,3Bの外周302の凹部32に嵌合されるときには、粘着テープ35における、切刃部411によって破られた部分351が、切刃部411と内面401との間のスペースに避けられる。また、このときには、粘着テープ35における、凹部32の外周側に配置された部分352が、第1嵌合突起41Aによって凹部32内に押し込まれる。
【0049】
次いで、
図2及び
図3に示すように、元側コルゲートチューブ3A及び分岐側コルゲートチューブ3Bが配置された第1プロテクタ部4Aに対して、第2プロテクタ部4Bが係合される。具体的には、元側コルゲートチューブ3Aの外周302及び分岐側コルゲートチューブ3Bの外周302における、第1嵌合突起41Aが嵌合された凹部32に、第2プロテクタ部4Bの第2嵌合突起41Bが嵌合される。また、分岐側コルゲートチューブ3Bの外周302における、第1嵌合突起41Aが嵌合された凹部32に、第2プロテクタ部4Bの第2嵌合突起41Bが嵌合される。
【0050】
このとき、第2プロテクタ部4Bの各第2嵌合突起41Bは、各コルゲートチューブ3A,3Bの形成方向Lにおける、粘着テープ35が破られた部位の周方向Cに位置する凹部32に嵌合される。また、第2プロテクタ部4Bの各第2嵌合突起41Bが各コルゲートチューブ3A,3Bの凹部32に嵌合されるときには、粘着テープ35における、凹部32の外周側に配置された部分353が、第2嵌合突起41Bによって凹部32内に押し込まれる。そして、第1プロテクタ部4Aの係止部54Aによって、第2プロテクタ部4Bの被係止部54Bが係止されて、第1プロテクタ部4Aと第2プロテクタ部4Bとの係合が完了する。
【0051】
また、第1プロテクタ部4Aの各開口端部52,53に各コルゲートチューブ3A,3Bの端部33を配置した後には、第1プロテクタ部4Aに第2プロテクタ部4Bを係合する際に、各コルゲートチューブ3A,3Bを各開口端部52,53に押し込んでもよい。この場合には、第1嵌合突起41A及び第2嵌合突起41Bが、各コルゲートチューブ3A,3Bの外周302の凹部32に嵌合される際に、第1嵌合突起41Aの切刃部411によって粘着テープ35の一部が破られる。
【0052】
(作用効果)
本形態のハーネス保護体1においては、第1プロテクタ部4Aの第1嵌合突起41Aの、第2プロテクタ部4Bに対向する側の端部に、第2プロテクタ部4Bに向けて延出された鋭角状の切刃部411が形成されている。切刃部411は、粘着テープ35が巻かれた各コルゲートチューブ3A,3Bの端部33の外周302に第1プロテクタ部4Aが装着されるときに、粘着テープ35における、各コルゲートチューブ3A,3Bの外周302の凹部32の外周側に位置する部分を破るために使用される。
【0053】
第1嵌合突起41Aの切刃部411によって粘着テープ35の一部351が破られることにより、各プロテクタ部4A,4Bの各嵌合突起41A,41Bが粘着テープ35の一部352,353を各コルゲートチューブ3A,3Bの外周302の凹部32に押し込むことが容易になる。これにより、第1プロテクタ部4Aへの第2プロテクタ部4Bの係合が容易になり、各コルゲートチューブ3A,3Bの端部33の外周302へプロテクタ4を容易かつ適切に装着することができる。
【0054】
また、第1嵌合突起41A及び第2嵌合突起41Bが嵌合される、各コルゲートチューブ3A,3Bの外周302の凹部32よりも、形成方向Lの先端側L1まで、粘着テープ35が巻かれている。これにより、プロテクタ4内において、各コルゲートチューブ3A,3Bがスリット303によって開かないようにすることができる。そのため、特に、ワイヤハーネス2を構成する細い電線21が、スリット303からコルゲートチューブ3A,3Bの外部にはみ出して、スリット303において挟まれないようにすることができる。
【0055】
また、スリット303からの電線21のはみ出しがなくなることにより、ワイヤハーネス2を構成する複数の電線21を、粘着テープ等によって一体化する手間を省くこともできる。換言すれば、各コルゲートチューブ3A,3B内の複数の電線21の周りに、粘着テープ等を巻き付ける手間を省くことができる。
【0056】
それ故、本形態のハーネス保護体1によれば、プロテクタ4の装着性を良好に維持して、コルゲートチューブ3の端部33からのワイヤハーネス2のはみ出しを防止することができる。
【0057】
ハーネス保護体1は、車両以外の、ワイヤハーネス2の保護が必要な電車、航空機等に適用してもよい。
【0058】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。さらに、本発明から想定される様々な構成要素の組み合わせ、形態等も本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 ハーネス保護体
11 分岐部位
2 ワイヤハーネス
21 電線
22A 元側電線束
22B 分岐側電線束
3 コルゲートチューブ
3A 元側コルゲートチューブ
3B 分岐側コルゲートチューブ
301 内周
302 外周
303 スリット
31 凸部
32 凹部
33 端部
35 粘着テープ
4 プロテクタ
4A 第1プロテクタ部
4B 第2プロテクタ部
401 内面
402 外面
41A 第1嵌合突起
41B 第2嵌合突起
411 切刃部
412 内側面
42 抜け防止突起
51 挿入穴
52 元側開口端部
53 分岐側開口端部
54 ロック部
54A 係止部
54B 被係止部
T 対向方向
C 周方向
L 形成方向