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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】接触式プローブ及び座標測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/016 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
G01B5/016
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020008551
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021001865
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019113164
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英一
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-294242(JP,A)
【文献】特開2011-158466(JP,A)
【文献】特開2006-329862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/004 - 5/016
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ軸部と、前記プローブ軸部に固定された接触部とを備える接触式プローブであって、
前記プローブ軸部は、前記接触部を先端に支持する少なくとも1本の支持軸を有し、
前記接触部は、
前記支持軸の長手方向に沿った断面形状が円形又は楕円形である接触部本体と、
前記接触部本体の外周に設けられ、径方向外側に突出する少なくとも1つの突起と、
を有し、
前記突起は、球体で構成され、
前記突起の先端における、前記支持軸の長手方向中心線を含む断面形状の曲率半径は、前記接触部本体の外周縁における前記長手方向中心線を含む断面形状の曲率半径よりも小さ
前記接触部本体は、前記球体が挿入可能な収容凹部が形成され、
前記球体は、前記収容凹部に前記球体の半分を挿入して接着されている、
接触式プローブ。
【請求項2】
前記突起は、前記接触部本体の外周の複数個所に、前記プローブ軸部の長手軸を中心に周方向に関して等間隔で配置されている請求項に記載の接触式プローブ。
【請求項3】
前記接触部本体の前記プローブ軸部側の反対側に、前記プローブ軸部の長手方向に突出する突起が更に配置されている請求項に記載の接触式プローブ。
【請求項4】
プローブ軸部と、前記プローブ軸部に固定された接触部とを備える接触式プローブであって、
前記プローブ軸部は、前記接触部を先端に支持する少なくとも1本の支持軸を有し、
前記接触部は、
前記支持軸の長手方向に沿った断面形状が円形又は楕円形である接触部本体と、
前記接触部本体の外周に設けられ、径方向外側に突出する少なくとも1つの突起と、
を有し、
前記突起の先端における、前記支持軸の長手方向中心線を含む断面形状の曲率半径は、前記接触部本体の外周縁における前記長手方向中心線を含む断面形状の曲率半径よりも小さ
前記突起は、前記接触部本体の外周の複数個所に、前記プローブ軸部の長手軸を中心に周方向に関して等間隔で配置されている、
接触式プローブ。
【請求項5】
前記接触部本体の前記プローブ軸部側の反対側に、前記プローブ軸部の長手方向に突出する突起が更に配置されている請求項に記載の接触式プローブ。
【請求項6】
前記突起は、球体で構成されている請求項4又は5に記載の接触式プローブ。
【請求項7】
前記接触部本体は、外周面が球形状である請求項1~のいずれか1項に記載の接触式プローブ。
【請求項8】
前記プローブ軸部は、
複数の前記支持軸と、
一端部で複数の前記支持軸を互いに異なる向きに支持する主軸と、
を備える請求項1項に記載の接触式プローブ。
【請求項9】
前記接触部本体は、外周面が球形状である請求項8に記載の接触式プローブ。
【請求項10】
複数の前記支持軸は、
前記主軸の先端を含み前記主軸の長手方向に直交する面内で、前記主軸の一先端を通る第1の直線に沿って互いに逆向きに前記主軸に支持された第1支持軸及び第2支持軸と、
前記面内で前記第1の直線に直交する第2の直線に沿って互いに逆向きに前記主軸に支持された第3支持軸及び第4支持軸と、
前記主軸の先端に、前記主軸の長手方向に沿って反主軸側に支持された第5支持軸と、を有する請求項8又は9に記載の接触式プローブ。
【請求項11】
前記突起は、前記支持軸の反主軸側に配置されている請求項10に記載の接触式プローブ。
【請求項12】
前記突起は、ルビー、サファイア、ダイヤモンド、セラミック、超硬合金からなる群から選ばれる1種を含む請求項1~11のいずれか1項に記載の接触式プローブ。
【請求項13】
前記接触部本体と前記突起とは同じ材料で構成される請求項12に記載の接触式プローブ。
【請求項14】
前記突起の先端の曲率半径は、0.05~0.15mmである請求項1~13のいずれか1項に記載の接触式プローブ。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の接触式プローブと、
前記接触式プローブを支持するプローブ支持部と、を備え、
前記接触式プローブの前記接触部に設けた前記突起をワークに接触させつつ相対走査するとともに、前記接触式プローブの位置を計測することで前記ワークの座標を測定する座標測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式プローブ及び座標測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
任意の方向に移動可能な移動ユニットの先端に、プローブを取り付け、プローブ軸部の先端をワークに接触させて走査して、ワークの座標を測定する3次元測定装置が知られている(特許文献1~3)。
このプローブ軸部の先端には、硬質な先端球が設けられており、3次元測定装置は、プローブ軸部に設けた先端球をワークに接触させて走査したときのプローブの座標を検出することでワークの寸法、形状を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-329862号公報
【文献】実開平1-160301号公報
【文献】特開2006-201105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ワークの微小な溝等の狭隘部を含む寸法、形状測定を行う場合には、プローブ軸部に設けた先端球の径が狭隘部の寸法よりも大きいと、先端球をワークの測定対象位置に接触させることが困難となる。従来の3次元測定装置に用いられるプローブにおいてはプローブ軸部の剛性を確保するため、先端球の直径がφ0.3mm程度で、プローブ軸部の径が0.2mm程度のものが最小サイズとなっている。このような最小サイズのプローブを用いても、測定対象の溝の曲率半径が先端球の曲率半径よりも小さい場合には、先端球を溝内に挿入できず、先端球を所望の測定位置に接触させることができない。
【0005】
その場合、先端球やプローブ軸部をさらに小さくすることも考えられるが、最小サイズのプローブ以下にサイズを縮小することは、プローブ自体の機械的強度を著しく低下させてしまう。その結果、先端球をワークに接触させる際に、先端球からの反力をプローブで受けることが難しくなり、場合によってはプローブに変形や破損を生じさせる。また、プローブをそのままのサイズにして、先端球のみを小さくすると、先端球が測定対象の狭い溝内に挿入可能なサイズであっても、先端球を溝内に挿入する過程でプローブ軸部がワークの他の部位と干渉してしまい、先端球が溝の測定面に到達できず測定が不能になってしまう。
【0006】
そこで本発明は、ワークの狭隘な部位であっても、プローブの強度を確保しつつ、簡単で、且つ高精度な測定が可能となる接触式プローブ及び座標測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の構成からなる。
(1) プローブ軸部と、前記プローブ軸部に固定された接触部とを備える接触式プローブであって、
前記プローブ軸部は、前記接触部を先端に支持する少なくとも1本の支持軸を有し、
前記接触部は、
前記支持軸の長手方向に沿った断面形状が円形又は楕円形である接触部本体と、
前記接触部本体の外周に設けられ、径方向外側に突出する少なくとも1つの突起と、
を有し、
前記突起の先端における、前記支持軸の長手方向中心線を含む断面形状の曲率半径は、前記接触部本体の外周縁における前記長手方向中心線を含む断面形状の曲率半径よりも小さい、
接触式プローブ。
(2) 上記(1)に記載の接触式プローブと、
前記接触式プローブを支持するプローブ支持部と、を備え、
前記接触式プローブの前記接触部に設けた前記突起をワークに接触させつつ相対走査するとともに、前記接触式プローブの位置を計測することで前記ワークの座標を測定する座標測定装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワークの狭隘な部位であっても、プローブの強度を確保しつつ、簡単で、且つ高精度な測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、座標測定装置の斜視図である。
図2図2は、第1構成例の接触式プローブの側面図である。
図3図3は、接触式プローブをプローブ軸部の軸方向下側から見た下面図である。
図4図4は、接触式プローブの接触部を垂直二等分した断面図である。
図5図5は、接触式プローブによるワークの座標測定の様子を示す説明図である。
図6図6は、接触式プローブの動作を模式的に示す説明図である。
図7図7は、接触式プローブの接触部とワークの各寸法を示す、ワークの軸方向の一部拡大断面図である。
図8図8は、図7に示すワークを軸方向上側から見た一部拡大平面図である。
図9図9は、接触式プローブを構成する接触部の他の例を示す図であって、(A)は2つの突起を備えた接触部の下面図、(B)は3つの突起を備えた接触部の下面図である。
図10図10は、接触式プローブの第1変形例における接触部の斜視図である。
図11図11は、接触式プローブの第2変形例における接触部の斜視図である。
図12図12は、電気マイクロメータに第2構成例用の接触式プローブを取り付けて測定する様子を示す説明図である。
図13図13は、ダイヤルゲージに第3構成例用の接触式プローブを取り付けて測定する様子を示す説明図である。
図14図14は、第4構成例の接触式プローブの概略斜視図である。
図15図15は、図14に示す接触式プローブのA部の拡大図である。
図16図16は、図14に示す接触式プローブを用いてワークを測定する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ここでは、転がり軸受の外輪を測定対象のワークとした場合を一例として説明するが、測定対象はこれに限らない。
【0011】
<第1構成例>
(座標測定装置の構成)
図1は座標測定装置100の斜視図である。
座標測定装置100は、基台11と、水平ガイド機構21と、支持ブロック25とを備える。
基台11の上面には、水平(XY平面)なステージ面13を有する定盤15が配置される。ステージ面13には固定治具17が固定され、この固定治具17によってワークWがステージ面13上で位置決めされる。
【0012】
ここで、互いに直交するX、Y、Z軸を、ステージ面13がXY平面、上下方向がZ方向として定義する。Y軸は水平ガイド機構21の移動方向、X軸は支持ブロック25の移動方向とする。
【0013】
水平ガイド機構21は、支持ブロック25をX軸方向へ移動自在に支持するガイド部23と、ガイド部23を支持する一対の支柱19とを有する。一対の支柱19の下側は、基台11の定盤15の両脇部で、Y方向に移動自在に支持される。水平ガイド機構21は、不図示の駆動源によってY方向に駆動されることで、支持ブロック25のY方向への移動を可能にする。
【0014】
ガイド部23に支持された支持ブロック25は、不図示の駆動源の駆動によって、X方向への移動を可能にする。
【0015】
支持ブロック25の下方には、測定ヘッド27が昇降可能に支持される。測定ヘッド27は、不図示の駆動源の駆動によってZ方向への移動が可能となっている。これにより、測定ヘッド27は、X,Y,Z方向へ移動自在になっている。
【0016】
測定ヘッド27は、その下端にプローブ支持部29が設けられる。プローブ支持部29の先端には、図2に示すプローブ軸部45と、接触部43とを有する接触式プローブ41が装着される。
【0017】
図1に示すように、接触式プローブ41は、水平ガイド機構21のY方向移動、支持ブロック25のX方向及びZ方向移動によって、3次元空間の任意の位置に移動可能となっている。
【0018】
上記構成の座標測定装置100では、まず、定盤15のステージ面13に、固定治具17を用いてワークWを位置決めし、固定する。そして、固定されたワークWの表面に接触式プローブ41の接触部43を接触させながら、接触式プローブ41をワークWの表面に沿って相対走査させる。これにより、ワークWの寸法、形状が倣い測定される。
【0019】
(接触式プローブの構成)
図2は第1構成例の接触式プローブ41の側面図である。図3は接触式プローブ41をプローブ軸部45の軸方向下側から見た下面図である。
接触式プローブ41は、棒状のプローブ軸部(支持軸)45と、プローブ軸部45の先端に固定された接触部43とを有する。
【0020】
接触部43は、接触部本体61と、接触部本体61の外周に設けられた複数(本構成では合計4つ)の突起71A,71B,71C,71Dとを有する。接触部本体61は、その外周面が球形状であり、プローブ軸部45の長手方向に沿った断面形状は円形となる。突起71A,71B,71C,71Dは、接触部本体61のプローブ軸部45の長手方向中心線を含む断面における最大径部分に配置され、接触部本体61の外周の表面から径方向外側に突出している。これらの複数の突起71A,71B,71C,71Dは、接触部本体61の外周に、プローブ軸部45の長手方向中心線周りの周方向に関して等間隔で配置されている。
【0021】
また、接触式プローブ41は、プローブ軸部45の外径が細径(例えば1mm以下)の場合には、ホルダ51を介してプローブ支持部29に装着してもよい。ホルダ51は、接触式プローブ41のサイズに応じて、適切なサイズのものを選択的に使用する。ホルダ51は、プローブ軸部45より大径の雄ねじが形成された取付部53と、チャック穴57を有するプローブ保持部55とを有する。取付部53を、プローブ支持部29の雌ねじ(図示略)にねじ止めすることで、接触式プローブ41が測定ヘッド27に固定される。チャック穴57には、プローブ軸部45の端部が差し込まれ、プローブ軸部45を着脱自在に支持する。
【0022】
プローブ軸部45は、ここでは円柱形状で示しているが、接触部本体61を支持できれば、角柱形状や円錐形状等の他の形状であってもよい。また、接触部本体61は、球形に限らず、プローブ軸部45の長手方向中心の軸垂直断面が長軸と短軸とを有する形状(例えば、楕円体)等、他の形状であってもよい。接触部本体61は、プローブ軸部45の長手方向に沿った断面形状が楕円となる楕円体であってもよい。接触部本体61は、プローブ軸部45の長手方向の最大幅よりも、長手方向に直交する方向の最大幅が大きい形状であると、より狭い領域に突起を挿入できるため好ましい。
【0023】
上記構成の接触式プローブ41は、ホルダ51を適切なサイズのものと交換することにより、様々な大きさの接触式プローブ41をプローブ支持部29に保持させることができる。
【0024】
プローブ軸部45には、接触部43をワークWに接触させて座標測定する際に、測定圧が負荷される。そのため、プローブ軸部45は、この測定圧によって大きく撓まない程度の剛性が必要となる。一方で、仮に強い外力が作用した場合に自身が変形して、プローブ支持部29への影響を抑制する材料であるのが好ましい。このことから、プローブ軸部45は、適度な剛性及び柔軟性を有する、例えば、銅材等の金属材料で形成するのが好ましい。なお、プローブ軸部45は、銅材以外にも、アルミニウム材で形成してもよく、また、必要に応じてステンレス鋼材で形成してもよい。
【0025】
図3に示す突起71A,71B,71C,71Dは、それぞれ球体73で構成される(以下の説明では、突起71A,71B,71C,71Dを、球体73とも呼ぶことにする。)。各球体73は、接触部本体61に形成された貫通孔に挿入されて固定される。
【0026】
図4は接触式プローブ41の接触部43を垂直二等分した断面図(プローブ軸部の長手方向に沿った断面視の図)である。
接触部本体61には、貫通孔からなる収容凹部65が形成される。収容凹部65は、接触部本体61の球形状の中心Ocを通り、プローブ軸部45の軸方向に直交する径方向に沿って形成される。この収容凹部65は、球体73の外径と同一、又は外径よりも僅かに大きな内径を有している。また、収容凹部65は、接触部本体61の中心Ocに向けて小径となる先細り形状であってもよい。
【0027】
球体73は、収容凹部65に球体73の半分が挿入され、この状態で収容凹部65に接着材によって固定されている。したがって、球体73の残りの半分は、接触部本体61の表面から径方向外側に突出して、突起71A,71B,71C,71Dとなる。球体73の非突出側では、球面の半分が接着材によって収容凹部65の内面に固定される。つまり、球体73は、球の赤道までの半球部分が収容凹部65に挿入されるため、赤道位置の全周にわたって収容凹部65の内壁面と接合し、かつ、接着材が収容凹部65に充填されることで、球体73の非突出側の球面半分が接合面として機能する。よって、球体73を接着材で固定する際に、強固に収容凹部65に固定される。なお、接触部本体61に形成する収容凹部65は、貫通孔に限らず、例えば、球体73の表面に沿う凹面形状の有底穴でもよい。
【0028】
また、接触部本体61には、プローブ軸部45との接続側に嵌合凹部63が形成される。嵌合凹部63には、プローブ軸部45の下端に形成された嵌合凸部47が接着材と共に嵌挿されて、接触部本体61とプローブ軸部45とが接着材によって接合される。また、プローブ軸部45の先端面を凹状面とし、嵌合凹部63及び嵌合凸部47を設けずに双方を接着材で固定してもよい。
【0029】
接触部本体61は、例えば、収容凹部65の加工が容易で、球体73を確実に支持できる剛性を有する材料であるのが好ましく、例えば、ルビーで形成するのが好ましい。その他にも、ステンレス鋼材、銅材、アルミニウム材等の金属材料であってもよい。
【0030】
球体73は、ルビー、サファイア、ダイヤモンド、セラミック、超硬合金からなる群から選ばれる1種を含むのが好ましい。このような硬度の高い材料を用いることで、ワークWとの接触による傷付きを防止できる。また、上記した材料は、レーザにより高精度に加工でき、しかも、他の機械加工方法と比較してサイズの制約を受けにくい。そのため、球体73が微小サイズであっても高精度に加工できる。特に、ルビーからなる接触部本体61に対して、ルビーからなる球体73を用いると、双方の線膨張係数が等しいため、接合後の温度変化による熱歪みの影響を受けにくくなる。また、球体73と接触部本体61とは、測定圧による寸法変化が等しいことも相まって、寸法安定性が高められる。
【0031】
(座標測定手順)
次に、上記の座標測定装置100によるワークWの座標測定の手順について説明する。
図5は接触式プローブ41によるワークWの座標測定の様子を示す説明図である。図6は接触式プローブ41の動作を模式的に示す説明図である。
【0032】
座標測定装置100は、図5に示すように、接触式プローブ41の接触部43をワークWの表面に接触させて位置を検出する。ここで示すワークWは、例えば小径玉軸受(ミニチュアベアリング)を構成する外輪である。このワークWの内周面には、転動体が転動可能に配置される軌道溝Gが形成されている。
【0033】
例えば、このワークWの軌道溝Gの寸法、形状を測定する場合に、接触式プローブ41の接触部43の突起71A,71B,71C,71Dのいずれかを、軌道溝Gの内面に接触させる。具体的には、図6に示すように、固定されたワークWの内側中心位置(原点位置)Oに接触部43を配置した接触式プローブ41を、-X方向(図6の左側)へ移動させ、突起71BをワークWの軌道溝Gの底部に接触させて位置P1(ワークWの円周方向270°位置)を検出する。次に、接触式プローブ41を+X方向(図6の右側)へ移動させ、突起71Bの反対側の突起71DをワークWの軌道溝Gの底部に接触させて位置P2(ワークWの円周方向90°位置)を検出する。さらに、接触式プローブ41を原点位置Oに戻し、+Y方向(図6の上側)へ移動させ、接触部43の他の突起71CをワークWの軌道溝Gの底部に接触させて位置P3(ワークWの円周方向0°位置)を検出する。その後、接触式プローブ41を-Y方向(図6の下側)へ移動させ、突起71Cの反対側の突起71AをワークWの軌道溝Gの底部に接触させて位置P4(ワークWの円周方向180°位置)を検出する。そして、これらの測定した位置P1~P4に基づいて、軌道溝Gの内径や偏心等の、ワークWの寸法や、各種の形状情報を算出する。上記例の検出順は一例であって、これに限らない。例えば、ワークWの形状情報として真円度を測定する場合は、突起71A,71B,71C,71Dの何れか1つを軌道溝Gと接触させた状態でワークWを回転させる。
【0034】
(接触式プローブの各部の寸法)
次に、接触式プローブ41の各部の寸法について説明する。
図7は接触式プローブ41の接触部43とワークWの各寸法を示す、ワークWの軸方向の一部拡大断面図である。図8図7に示すワークWを軸方向上側から見た一部拡大平面図である。
【0035】
図7及び図8に示すように、プローブ軸部45の外径をdとし、接触部本体61の、プローブ軸部45の長手方向に直交する断面(図8のXY平面)における外周縁の直径をDとし、突起71の球体73の直径をDとする。このとき、接触式プローブ41は下記の関係式(1)~(4)を満足する。(式(3)、式(4)においては、D=1とした比である。)
【0036】
<D …(1)
d ≦D …(2)
:D=1:2~4 …(3)
d :D=2~3:3 …(4)
【0037】
例えば、プローブ軸部45の外径dは、0.4~0.6mmである。接触部本体61の外周縁の直径Dは、0.4~1.2mm、好ましくは0.6mmである。球体73の直径Dは、0.1~0.3mmであり、好ましくは0.2mmである。
【0038】
上記例では接触部本体61と突起71A,71B,71C,71Dを球体として説明したが、球体以外であってもよい。その場合、突起71A,71B,71C,71Dの先端の断面形状(プローブ軸部45の長手方向中心線を含む断面形状)の曲率半径rを、接触部本体61の外周縁の断面形状(プローブ軸部45の長手方向中心線を含む断面形状)の曲率半径rよりも小さくする。具体的には、接触部本体61の外周縁における曲率半径rが、0.2~0.6mmであるのに対して、突起71の先端の曲率半径rを、0.05~0.15mmにする。
【0039】
また、図7に示すワークWの軌道溝Gは、径方向の溝深さがD、軸方向断面の曲率半径がr、軸方向の溝幅がWであり、図8に示す軌道溝Gの溝底部における周方向の曲率半径がrである。これに対して、接触式プローブ41の接触部43は、突起71B(他の突起71A,71C,71Dについても同様)の接触部本体61からの突出寸法が軌道溝Gの深さDより大きく、突起71Bの先端の曲率半径rが軌道溝Gの曲率半径rより小さく、突起71Bの径方向(ワークWの径方向)外側から見た最大径が軌道溝Gの溝幅Wよりも小さいことが好ましい。さらに、図8に示す接触部本体61の外周縁の曲率半径rが軌道溝Gの底部における周方向の曲率半径rよりも小さいことが好ましい。
【0040】
これにより、接触部本体61と突起71A,71B,71C,71Dを有する接触部43は、軌道溝Gの縁部に干渉することなく、各突起の先端が軌道溝Gの溝底部に到達でき、溝底部と点接触することが可能になる。
【0041】
また、本構成のワークWの軌道輪は、ワークWの軸方向(Z軸方向)幅をBとしたときに、幅Bの1/2の位置が軌道溝の軸方向中心位置となる。
水平に配置したワークWは、軌道溝の軸方向中心位置における溝底部に突起71Bを接触させた状態において、接触部本体61の下端からステージ面13までの高さhsは、0より大きく、突起71B(71A,71C,71Dも同様)の半径よりも大きいことが好ましい。これによれば、接触部43がステージ面13に干渉することなく、突起71Bが軌道溝Gの軸方向中心位置における溝底部に接触可能となる。
【0042】
(接触式プローブの効果)
本構成の接触式プローブ41は、突起71A,71B,71C,71Dの先端におけるプローブ軸部45の長手方向中心線を含む断面形状の曲率半径rが、接触部本体61の外周縁における長手方向中心線を含む断面形状の曲率半径rよりも小さい。これにより、従来の先端球のサイズと同等の接触部本体61の直径では挿入することができない狭隘な部位であっても、接触部本体61よりも小さい曲率半径の突起71A,71B,71C,71Dであれば、挿入可能となる。これにより、軌道溝Gのような狭隘な部位であっても、溝底部に突起の先端を接触させることができ、座標の測定が可能となる。また、接触部本体61の外周縁が円環状であることで、ワークWと干渉せず、測定可能な範囲を拡大できる。
【0043】
そして、本構成の接触式プローブ41は、ホルダを適切なサイズのものを用いることで、座標測定装置以外の精密な寸法や形状を測定する測定装置にそのまま使用することができる。よって、既存の測定装置をそのまま用いて、プローブのみを交換するだけで、より小型のワークや微小な凹凸の寸法、形状の測定が可能となる。そのため、本構成の接触式プローブ41を、極めて小型の軸受の測定に好適に適用できる。
【0044】
また、本構成の突起71A,71B,71C,71Dは、球体73で構成されるので、ワークとの当たりが安定する。しかも、球体であれば、微小サイズの突起71であっても加工が煩雑とならずに形成できる。球体73は、真球である必要はなく、突出量が既知であれば座標測定装置側で補正(キャリブレーション)することで、簡単に検出位置精度を確保できる。そのため、種々の公知の手法により球体を製造し、得られた球体を接触部本体61に取り付けることで、例えば、突起71A,71B,71C,71Dを削り出し等で形成する機械加工を行う場合と比較して、製造工程が煩雑とならず、低コストで突起を形成できる。
【0045】
また、接触部本体61の外周に、4つの突起71A,71B,71C,71Dがプローブ軸部45の軸線を中心に周方向に関して等間隔で配置されているので、接触式プローブ41を同じ姿勢で4方向へ移動できる。これにより、リング状のワークWの異なる円周方向の4箇所の測定が可能となる。なお、突起71A,71B,71C,71Dの数は、ワークの測定点の数に応じて任意に設定できる。
【0046】
上記の実施形態では、4つの突起71A,71B,71C,71Dが接触部本体61に設けられた場合を例示したが、接触部本体61には、少なくとも1つの突起が設けてあればよい。
図9の(A),(B)は、接触式プローブ41の軸方向下側から見た下面図である。
図9の(A)に示す接触部43Aのように、接触部本体61に、一対の突起71を周方向で180°間隔で設けてもよく、図9の(B)に示す接触部43Bのように、3つの突起71を周方向に120°間隔で設けてもよい。
【0047】
接触部本体61に2つの突起71を設けた場合は、例えば、接触式プローブ41を一軸方向に移動させて環状のワークWの内周における対向する2箇所、又は外周の2箇所に各突起71を接触させて、ワークWの内周寸法、又は外周寸法を測定でき、これらの寸法から、各種の形状情報を抽出できる。また、接触部本体61に3つの突起71を設けた場合は、例えば、平面視三角形状のワークWの内周や外周の各辺に、対応する突起71をそれぞれ接触させて、ワークWの内周寸法や外周寸法、及びその形状を測定することができる。
【0048】
次に、上記の接触式プローブの変形例について説明する。
<第1変形例>
図10は接触式プローブの第1変形例における接触部43Cの斜視図である。
第1変形例では、接触部本体61のプローブ軸部45の取り付け側とは反対側に、プローブ軸部45の長手方向に沿って突出する突起71Eが配置されている。つまり、接触部本体61には、プローブ軸部45の中心軸を中心に周方向に関して等間隔に設けられた4つの突起71A,71B,71C,71Dの他に、接触部本体61の下部に突起71Eが設けられている。
【0049】
この構成によれば、接触式プローブ41をプローブ軸部45の長手方向の下方に移動させて、突起71EをワークWに突き当てることにより、ワークWの上部の微小な溝等の狭隘部を含む寸法や形状が簡単に測定可能となる。これにより座標測定装置の全ての駆動方向で測定が可能となる。
【0050】
<第2変形例>
図11は接触式プローブの第2変形例における接触部43Dの斜視図である。
第2変形例では、接触部本体61に設けられた突起71Fが先細りの針状(円錐形状)に形成されている。この構成によれば、突起71Fの先端をワークWへ確実に点接触させて高精度に位置を検出できる。
【0051】
<第2構成例>
次に、上記構成の接触式プローブを座標測定装置としての電気マイクロメータに適用した構成を説明する。
図12は電気マイクロメータ75に第2構成例用の接触式プローブ41Aを取り付けて測定する様子を示す説明図である。
【0052】
本構成では、電気マイクロメータ75のプローブ支持部75aに接触式プローブ41Aを取り付けている。この構成によれば、ワークWの狭い溝等の狭隘部を測定する場合に、プローブ軸部45Aの先端の接触部43に設けた突起71を、狭隘部内に挿入し、突起71の先端を目的の位置に接触させることができる。これにより、電気マイクロメータ75による測定が、狭隘部においても可能となる。
【0053】
<第3構成例>
次に、上記構成の接触式プローブを座標測定装置としてのダイヤルゲージに適用した構成を説明する。
図13はダイヤルゲージ77に第3構成例用の接触式プローブ41Bを取り付けて測定する様子を示す説明図である。
本構成では、ダイヤルゲージ77のプローブ支持部に接触式プローブ41Bを取り付けている。この構成では、接触部本体61のプローブ軸部45B側と反対側に、プローブ軸部45Bの長手方向に突出する突起71を設けている。この突起71をワークWの狭い溝等の狭隘部に挿入して、突起71の先端を目的の位置に接触させる。これにより、ダイヤルゲージ77による測定が、狭隘部においても可能となる。
【0054】
図13に示すダイヤルゲージ77による測定では、ワークWは軸受の内輪であって、内輪の外周面に形成された軌道溝Gの径を測定している。軌道溝Gの直径方向の一端に、固定側の接触部43に設けた突起71を接触させ、直径方向の他端に前述した接触式プローブ41Bの接触部43に設けた突起71を接触させる。そして、このワークWの計測値と、予め測定しておいたマスターゲージの測定値(基準寸法)とを比較して、ワークWの軌道溝Gの直径Daを求める。これにより、これまで測定が困難であった狭隘部の寸法測定が簡単に可能となり、測定工数の軽減とタクトタイムの短縮が図れる。
【0055】
<第4構成例>
次に、接触式プローブの第4構成例を説明する。
図14は、第4構成例の接触式プローブ41Cの概略斜視図である。
本構成の接触式プローブ41Cは、プローブ軸部45Cと、複数の接触部43Eとを有する。プローブ軸部45Cは、複数の支持軸81A~81Eと、複数の支持軸81A~81Eを互いに異なる向きに支持する主軸83と、を備える。複数の支持軸81A~81Eの先端には、接触部43Eがそれぞれ支持されている。支持軸81A~81Eは、主軸83からの枝軸となって、主軸83の先端83aから放射状に伸びて設けられる。
【0056】
主軸83の先端83aにはターミナル85が固定され、ターミナル85に5本の支持軸81A~81Eが互いに異なる向きに支持されている。支持軸81A~81Eは、ターミナル85を介して主軸83に接続する形態に限らず、主軸83に直接接続されていてもよい。
【0057】
支持軸81A~81Eは、互いに直交する3方向に沿って配置される。つまり、主軸83の先端83aを含み主軸83の長手方向に直交する面内で、第1支持軸81A及び第2支持軸81Bが、主軸83の先端を通る第1仮想直線L1に沿って互いに逆向きに主軸83に支持される。また、上記した面内で、第3支持軸81C及び第4支持軸81Dが、第1仮想直線L1に直交する第2仮想直線L2に沿って互いに逆向きに主軸83に支持される。そして、主軸83の先端83aに、第5支持軸81Eが、主軸83の長手方向に沿って反主軸側に支持される。
【0058】
本構成の接触式プローブ41Cは、図1に示す座標測定装置100のプローブ支持部29に装着する際、支持軸81A,81B、支持軸81C,81D、支持軸81Eが、座標測定装置100のX方向、Y方向、Z方向に沿う向きに設定する。
【0059】
図15は、図14に示す接触式プローブ41CのA部の拡大図である。
第1支持軸81A(他の支持軸81B~81Eも同様)の先端には、接触部43Eが固定される。接触部43Eは、接触部本体61と、突起71とを有する。突起71は、第1支持軸81Aの反主軸側(図15の右側)の接触部本体61の外周面から、第1支持軸81Aの長手方向に沿って、径方向外側に突出している。第1支持軸81Aへの接触部本体61の取り付けと、接触部本体61への突起71の取り付けは、接触部本体61に形成された基端側の収容凹部に第1支持軸81Aの端部を挿入して接着し、突起71となる球体を先端側の接触部本体61の収容凹部に挿入して接着することで行っている。収容凹部は有底穴であってもよく、貫通していてもよい。
【0060】
接触部本体61と突起71の各部の寸法や形状は、図7図8に示す第1構成例の接触式プローブ41の場合と同様である。
【0061】
図16は、図14に示す接触式プローブ41Cを用いてワークWを測定する様子を示す説明図である。
ここで示すワークWは、転がり軸受の内輪である。接触式プローブ41Cの第1支持軸81Aを、ワークWの軸方向と直交する方向から軌道溝Gに向けて接近させ、突起71を軌道溝G内に挿入する。そして、突起71を軌道溝Gの底部に接触させることでワークWの座標測定を行う。
【0062】
一般的な3次元測定機は、接触式プローブが互いに直交する3つの方向に移動可能な構造を有する。そして、ワークWの一度の測定では、ワークWを第1支持軸81Aの接触部43Eによる座標測定点X1、第2支持軸81Bの接触部43Eによる座標測定点X2、第3支持軸81Cの接触部43Eによる座標測定点Y1、第4支持軸81Dの接触部43Eによる座標測定点Y2、第5支持軸81Eの接触部43Eによる座標測定点Z1の合計5回測定する必要がある。
【0063】
本構成の接触式プローブ41Cによれば、上記した座標測定点ごとに専用のプローブ(第1支持軸81A~第5支持軸81E)が配置されため、プローブの先端は初期寸法を長期にわたって維持でき、接触式プローブの耐久性が向上する。これにより、経年劣化を抑制して常に高精度な測定が行える。
【0064】
従来の3次元測定機に使用されているプローブ先端のサイズは、最小でφ0.3mmであるが、その場合の支持軸の径はφ0.2mm程度であり、支持軸の剛性が不足する。このため、例えばワークの溝の中央位置を探すことや、なぞることは不可能に近く、少しの衝撃や負荷があっても、支持軸が撓んでしまう。その結果、必要な精度が得られない場合がある。
【0065】
しかし、上記した本構成の接触式プローブ41A~41Cによれば、接触部本体の外周に突起を設け、この突起をワークに接触させることで、微小領域の測定を可能にする構成であるため、支持軸の径を極端に小さくする必要がなくなり、必要な剛性が得られ、測定精度を向上できる。
【0066】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0067】
例えば、上記実施形態では、それぞれ別体のプローブ軸部45と接触部本体61とを接合させたが、プローブ軸部45と接触部本体61を一体に形成してもよい。
【0068】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) プローブ軸部と、前記プローブ軸部に固定された接触部とを備える接触式プローブであって、
前記プローブ軸部は、前記接触部を先端に支持する少なくとも1本の支持軸を有し、
前記接触部は、
前記支持軸の長手方向に沿った断面形状が円形又は楕円形である接触部本体と、
前記接触部本体の外周に設けられ、径方向外側に突出する少なくとも1つの突起と、
を有し、
前記突起の先端における、前記支持軸の長手方向中心線を含む断面形状の曲率半径は、前記接触部本体の外周縁における前記長手方向中心線を含む断面形状の曲率半径よりも小さい、
接触式プローブ。
この構成の接触式プローブによれば、突起の先端の曲率半径を、接触部本体の外周縁の曲率半径よりも小さくすることで、測定対象となるワークにおける接触部本体では接触不可能な狭い部位に、突起先端を接触させることができる。また、接触部本体の断面形状が円形又は楕円形であることで、ワークとの干渉が生じにくくなり、測定可動範囲が広くなる。
例えば、ワークに形成された微小な溝内を測定する場合、接触部本体が溝内に入り込めなくても、接触部本体から突出する突起を溝内に挿入して、簡単にワークの測定が行える。
【0069】
(2) 前記突起は、球体で構成されている(1)に記載の接触式プローブ。
この構成の接触式プローブによれば、突起を球体で構成することにより、微小な突起を低コストで形成できる。
【0070】
(3) 前記接触部本体は、前記球体が挿入可能な収容凹部が形成され、
前記球体は、前記収容凹部に前記球体の半分を挿入して接着されている(2)に記載の接触式プローブ。
この構成の接触式プローブによれば、収容凹部に球体の半分が挿入され、球体の残りの半分が接触部本体から径方向外側に突出して突起となる。球体の収容凹部に挿入された側では、球の最大周長の赤道が収容凹部に接着されるため、球体を高い接着力で接触部本体に固定できる。
【0071】
(4) 前記接触部本体は、外周面が球形状である(1)~(3)のいずれか1つに記載の接触式プローブ。
この構成の接触式プローブによれば、接触部本体が微小サイズであっても高い寸法精度で製造でき、突起を設ける場合にも加工が容易となる。
【0072】
(5) 前記突起は、前記接触部本体の外周の複数個所に、前記プローブ軸部の長手軸を中心に周方向に関して等間隔で配置されている(1)~(4)のいずれか1つに記載の接触式プローブ。
この構成の接触式プローブによれば、例えば突起が2つの場合には、接触式プローブを一軸移動してリング状ワークの直径方向の2箇所を測定できる。突起が4つの場合では、接触式プローブを4方向に移動することで、リング状ワークの異なる4箇所を測定できる。
【0073】
(6) 前記接触部本体の前記プローブ軸部側の反対側に、前記プローブ軸部の長手方向に突出する突起が更に配置されている(5)に記載の接触式プローブ。
この構成の接触式プローブによれば、接触式プローブをプローブ軸部の長手方向に移動させてワークに突き当てて、座標測定することが可能となり、測定自由度が向上する。
【0074】
(7) 前記プローブ軸部は、
複数の前記支持軸と、
一端部で複数の前記支持軸を互いに異なる向きに支持する主軸と、
を備える(1)~(4)のいずれか1つに記載の接触式プローブ。
この構成の接触式プローブによれば、複数の支持軸を互いに異なる向きで主軸に支持させることで、接触部の突起を測定対象となるワークへ接触させる移動方向の自由度を向上できる。また、ワークに接触させる突起が、主軸から離れた支持軸の先端に配置されるため、ワーク表面の狭い領域に突起を接触させやすくなり、測定対象を拡大できる。
【0075】
(8) 複数の前記支持軸は、
前記主軸の先端を含み前記主軸の長手方向に直交する面内で、前記主軸の一先端を通る第1の直線に沿って互いに逆向きに前記主軸に支持された第1支持軸及び第2支持軸と、
前記面内で前記第1の直線に直交する第2の直線に沿って互いに逆向きに前記主軸に支持された第3支持軸及び第4支持軸と、
前記主軸の先端に、前記主軸の長手方向に沿って反主軸側に支持された第5支持軸と、
を有する(7)に記載の接触式プローブ。
この構成の接触式プローブによれば、互いに逆向きに配置される第1支持軸及び第2支持軸と、これらと直交して、互いに逆向きに配置される第3支持軸及び第4支持軸と、第1支持軸~第4支持軸に直交する第5支持軸と、によって、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に沿ったワークの測定が、それぞれに対応する支持軸の接触部で個別に行える。このため、各支持軸の耐久性が高められ、より高精度な測定が可能となる。
【0076】
(9) 前記突起は、前記支持軸の反主軸側に配置されている(8)に記載の接触式プローブ。
この構成の接触式プローブによれば、支持軸の軸方向に沿って突起をワークに接触させるため、支持軸の撓みを抑えられ、測定精度を向上できる。
【0077】
(10) 前記突起は、ルビー、サファイア、ダイヤモンド、セラミック、超硬合金からなる群から選ばれる1種を含む、(1)~(9)のいずれか1つに記載の接触式プローブ。
この構成の接触式プローブによれば、硬度の高い材料を用いることで、ワークとの接触による傷付きを防止できる。また、レーザによって高精度に加工でき、しかも、他の機械加工方法と比較してサイズの制約を受けにくい。よって、微小サイズの球体であっても容易に加工できる。
【0078】
(11) 前記接触部本体と前記突起とは同じ材料で構成される(10)に記載の接触式プローブ。
この構成の接触式プローブによれば、接触部本体と突起との熱膨張係数、弾性係数が同じであるため、熱膨張や測定圧力による寸法変化が等しく、寸法安定性が良くなる。
【0079】
(12) 前記突起の先端の曲率半径は、0.05~0.15mmである(1)~(11)のいずれか1つに記載の接触式プローブ。
この構成の接触式プローブによれば、接触部が入り込めない微小な凹部等の部位にも、
曲率半径の小さい突起とすることで挿入可能となり、座標測定の適用範囲を拡大できる。
【0080】
(13) (1)~(12)のいずれか1つに記載の接触式プローブと、
前記接触式プローブを支持するプローブ支持部と、を備え、
前記接触式プローブの前記接触部に設けた前記突起をワークに接触させつつ相対走査するとともに、前記接触式プローブの位置を計測することで前記ワークの座標を測定する座標測定装置。
この構成の座標測定装置によれば、ワークに形成された狭隘部の内部に接触部の突起を接触させることで、狭隘部であっても形状を高精度に測定することができる。また、プローブ支持部に本構成の接触式プローブを装着することにより、既存の測定装置であっても、これまで測定が困難であった狭隘部の位置測定が可能になる。
【符号の説明】
【0081】
29 プローブ支持部
41,41A,41B,41C 接触式プローブ
43,43A,43B,43C,43D,43E 接触部
45 プローブ軸部(支持軸)
61 接触部本体
65 収容凹部
71,71A,71B,71C,71D,71E、71F 突起
73 球体
75 電気マイクロメータ
77 ダイヤルゲージ
81A 第1支持軸(支持軸)
81B 第2支持軸(支持軸)
81C 第3支持軸(支持軸)
81D 第4支持軸(支持軸)
81E 第5支持軸(支持軸)
83 主軸
100 座標測定装置
rs 突起の曲率半径
rb 接触部本体の曲率半径
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16